結論
ワイズテーブルコーポレーションは、六本木などの鉄板焼きとイタリアンの高級店「XEX」と、ナポリピッツァの「PIZZA SALVATORE CUOMO」を営む外食の会社だ。筆者の結論は「割高」で、理由は単純だ。年に数億円しか稼がない事業に、100 億円近い値段が付いている。
店の魅力は本物だ。XEX は記念日や接待の需要を持ち、訪日客にも人気がある。2026 年には「てんぷら山の上」を営む会社を傘下に入れ、高級業態の柱を増やした。2026 年 2 月期は両業態とも 2 割前後の増益だった。
ただ、会社全体の営業利益率は 2% に届かない。過去 12 年で 2% を超えた年は無く、コロナ禍では債務超過に陥った。家賃は売上の 1 割を占め、売上が落ちても減らない。自己資本は 9 億円にすぎず、配当も無い。
10 年の中立では、売上は物価の分だけ伸び、利益率は 3% 前後まで戻る。それでも今の値段を正当化するには、利益が今の何倍にもなる必要がある。筆者は、店の魅力と株の値段を分けて考えるべき会社だと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ワイズテーブルは「よい店を持つ、持ちたくない会社」だ。
オーナーとして見た稼ぎは小さい。店の利益は本社の費用と家賃に食われ、株主に残る利益は年に 2〜4 億円ほどだ。しかも景気が悪くなれば一気に赤字になる。10 年先の稼ぎを自信を持って見積もれる事業ではない。
堀はブランドにある。XEX と天ぷら山の上は、立地と料理人で客を呼ぶ。ただ、高級店の人気は移ろいやすく、料理人が去れば価値も去る。人と場所に宿るブランドで、会社が持ち続けられる保証は弱い。
安全域は無い。今の値段は、利益が今の 3 倍以上になる筋書きをすでに前提にしている。財務は薄く、家賃の約束は重い。店で食事を楽しむことと、株を持つことは別の判断だと筆者は考える。仮に利益が会社の計画どおりに伸びても、値段に見合う日は遠い。
何で稼ぐ会社か
事業はレストランの運営だ。売上 130 億円(2026 年 2 月期)のうち、高級業態の XEX グループが 54 億円、カジュアル業態が 77 億円を占める。
XEX グループは、鉄板焼きとイタリアンを組み合わせた「XEX」などの直営 10 店だ。六本木・日本橋など都心の一等地にあり、客単価は 2 万円前後とみられる。持分法の会社が営む「CÉ LA VI TOKYO」もある。2026 年 3 月に山の上ホテルという会社を買い、老舗の「てんぷら山の上」が加わった。神田の旧山の上ホテルの建物とは別の話で、天ぷらの店を営む会社だ。
カジュアル業態は、イタリア人シェフの名を冠した「PIZZA SALVATORE CUOMO」が中心で、直営 38 店と FC 31 店がある。客単価は数千円で、ランチと家族の外食を取り込む。FC からは加盟料とロイヤルティを受け取る。
稼ぎ方の特徴は、セグメントの利益に比べて本社の費用が重いことだ。2 つの業態は合わせて 14 億円近い営業利益を出すが、本社の費用が 11 億円を超え、全社の営業利益は 2.5 億円に縮む。店はすべて借りており、家賃は年 13.5 億円に上る。
優良さと弱いところ
優良さは「店は強いが、会社は弱い」とまとめられる。XEX と天ぷら山の上には、ほかの店が簡単にまねできないブランドと立地がある。高級店は客単価が高く、値上げも比較的通りやすい。
しかし、会社としての稼ぐ力は乏しい。営業利益率は 20 年前の 5% 台が最良で、ここ 12 年は −23% から 2% の間を行き来した。本社の費用が重く、店の利益の大半を食ってしまう。規模が小さいので、仕入れや人の採用で大手に勝てない。
財務も薄い。自己資本は 9 億円、自己資本比率は 17% だ。ROE が 20% を超えて見えるのは、分母の自己資本が小さいからで、事業の強さの証拠ではない。家賃の約束は年 13.5 億円あり、借りた店の契約は借金に近い重さを持つ。
高級外食は景気に弱い。接待や記念日の需要は、景気が悪くなると真っ先に削られる。コロナ禍では 2 期続けて大きな営業赤字を出した。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食の市場は 25 兆円前後で、コロナ禍の落ち込みからほぼ戻った。数量、つまり客の数は人口とともに細る。伸びるのは値段の方で、食材と人件費の上昇を値上げで転嫁する流れが続く。
高級外食には追い風もある。訪日客は年 4,000 万人規模に増え、高級和食や鉄板焼きを目当てにする客が多い。国内の富裕層も、物価が上がる中で高級店への支出を保っている。天ぷら山の上を買ったのは、この流れに乗るためだ。
逆風は人と家賃だ。料理人と接客の人手は足りず、賃金は年 3% を超えて上がる。都心の一等地の家賃も上がる。高級店は人の手と立地で価値を出すので、自動化で費用を下げる余地が小さい。配膳ロボットやセルフレジで人件費を抑えられるファミリーレストランとは事情が違う。
競合は多い。高級業態ではホテルのレストランや個人経営の名店、カジュアルなピッツァではサイゼリヤや地域のピッツェリアが相手になる。ワイズテーブルは規模で劣り、ブランドの魅力だけで戦っている。
10 年を見通すと、高級業態は訪日客と富裕層に支えられて値段を上げ続け、カジュアル業態は人口とともに客が細る。筆者は、会社の利益の伸びは高級業態の店をどれだけ増やせるかにかかると見る。
資本政策と M&A
還元は株主優待だけだ。2026 年 2 月期も 2027 年 2 月期の予想も無配で、自社株買いも無い。優待は年 2 回、100 株以上の株主に自社の店で使える食事券を配り、300 株以上は 3 倍になる。費用の開示は見当たらないが、株主数と原価から年 0.3 億円前後と推定した。中立の 10 年でおよそ 3 億円が株主に渡る。
資本の使い道は、天ぷら山の上のような小さな買収と店の改装だ。2027 年 2 月期の第 1 四半期には、この買収で 2 億円強の負ののれん、つまり安く買えた分の利益が出た。会社の予想する純利益 6.3 億円はこれを含み、本業の稼ぎはその半分ほどだ。
親会社は無い。過去に債務超過を経験し、自己資本の回復が先なので、配当の再開はまだ先とみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
高級外食の需要は強い。訪日客は増え続け、高級和食と鉄板焼きは彼らの目当ての 1 つだ。XEX は都心の一等地にあり、立地とブランドは簡単にまねできない。2026 年 2 月期は高級業態が 28%、カジュアル業態が 19% の増益だった。
天ぷら山の上の取得は、老舗の名前を安く手に入れた好例だ。負ののれんが出たことは、買値が資産の価値を下回った証拠になる。高級業態の柱が 2 本になり、XEX だけに頼る形から抜け出せる。
本社の費用は重いが、売上が伸びれば比率は下がる。会社は 2028 年 2 月期に売上 175 億円、営業利益率 3% を見込む。利益が積み上がれば自己資本は厚くなり、配当の再開も見えてくる。今は利益が小さいから値段が高く見えるだけで、伸びれば割高感は薄れる。
優待も見落とせない。年 2 回の食事券は株主にとって現物の還元で、店のファンが株主として長く支える。高級業態のブランドは、こうした常連の支えで守られている。
慎重な見方
過去 12 年で、この会社の営業利益率が 2% を超えた年は無い。コロナ禍では 2 期で 30 億円を超える営業赤字を出し、債務超過に落ちた。高級外食は景気に弱く、次の不況でも同じことが起きうる。
家賃は年 13.5 億円で、売上が落ちても下がらない。全社の営業利益の 5 倍を超える固定の約束を抱えている。自己資本は 9 億円しかなく、赤字が 2 年続けば再び債務超過に近づく。
会社予想の純利益 6.3 億円には、負ののれん 2 億円強という一度きりの利益が含まれる。本業の利益で見れば、今の値段は利益の 30 倍を大きく超える。利益が 3 倍になっても割安とは言えない。店の人気と会社の稼ぐ力を取り違えた値段だ。
天ぷら山の上も小さな会社で、全社の利益を大きく変えるほどではない。買収で業態を足すたびに本社の費用も増える。規模の小さい会社が業態を増やしても、費用の重さは解けない。値段が下がる余地のほうが大きい。
どちらに重みを置いたか
店のブランドと高級外食の需要は強気の見方に分があるが、値段の議論では慎重な見方が圧倒的に強い。過去 12 年の利益率と家賃の重さを踏まえ、中立を会社の計画並みの利益率に置き、確率は悲観側に厚く寄せた。どの筋書きでも今の値段を大きく下回る。店の魅力を認めても、値段の議論で結論は変わらない。安全域は見当たらない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,102 円69 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 104 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 999 円33 億円、今との差 −66.8%、 期待の年率 −3.0%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,760 円157 億円 | 243 円8 億円 | +66.5% | +5.2% | 400 円13 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,562 円117 億円 | 152 円5 億円 | +23.6% | +2.1% | 743 円24 億円 |
| 中立 | 37% | 2,368 円78 億円 | 91 円3 億円 | −18.2% | −2.0% | 910 円30 億円 |
| やや悲観 | 22% | 494 円16 億円 | 68 円2 億円 | −81.3% | −15.4% | 124 円4 億円 |
| 悲観 | 13% | 182 円6 億円 | 45 円2 億円 | −92.4% | −22.8% | 30 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,102 円69 億円 | 104 円3 億円 | −26.6% | −3.0% | 2,206 円73 億円 |
今の株価時価総額 3,005 円99 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 高級業態がブランドとして育ち、利益率が過去最高に 利益 8 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 4,760 円157 億円
訪日客と国内の富裕層の需要が続き、XEX の鉄板焼きと天ぷら山の上は予約の取れない店になる。高級業態の客数は天ぷらを含めて今の 1.5 倍になり、客単価も物価を上回って上がる。
カジュアル業態のサルヴァトーレ・クオモは、FC の出店で店数を少しずつ増やす。食材と人件費の上昇は値上げで吸収し、本社の費用は物価並みに抑える。営業利益率は 5% と、2000 年代前半の最良期に戻る。
利益が積み上がり、自己資本比率は 4 割近くまで回復する。後半には配当も始まる。優待は続き、株主は食事券という形で受け取りを得る。小さな高級レストランの会社として、ようやく安定した稼ぎを持つ 10 年になる。
- XEX グループ(高級業態・天ぷら山の上):数量 40.0(来店客数(万人・年、推定))× 価格 2.75(客単価(万円・名目))→ 売上 110 億円・営業利益 13 億円。来店 40 万人 × 客単価 2.75 万円、営業利益率 12.0%
- カジュアル業態(PIZZA SALVATORE CUOMO ほか):数量 205(来店客数(万人・年、推定。FC は収入を客数に換算))× 価格 0.55(客単価(万円・名目))→ 売上 113 億円・営業利益 14 億円。来店 205 万人 × 客単価 0.55 万円、営業利益率 12.0%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 38.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 23.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍。全体の PER 18.47 倍、時価総額 140 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 5% は 20 年前の最良期の水準で、それ以降は一度も届いていない。高級業態の客単価と天ぷらの新業態がそろって当たる必要があり、1 割未満にとどめた。
やや楽観 20% 天ぷらが加わり、高級業態が利益を引っ張る 利益 6 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 3,562 円117 億円
天ぷら山の上が高級業態に加わり、XEX と合わせた客数は今の 1.4 倍になる。客単価は物価を少し上回って上がる。訪日客の高級和食の需要が支えだ。
カジュアル業態は店数がほぼ横ばいで、客数は少し減るが、値上げで売上を保つ。営業利益率は 4% 前後に上がり、会社の計画を少し上回る。
配当は後半に少額で始まる。優待も続け、株主は食事券という形で受け取りを得る。自己資本は利益の積み上げで 5 倍ほどに厚くなり、債務超過を経験した会社としては財務の不安が薄れる。高級業態が会社の顔として定着し、カジュアル業態は安定した稼ぎ手として脇を固める 10 年になる。
- XEX グループ(高級業態・天ぷら山の上):数量 37.0(来店客数(万人・年、推定))× 価格 2.70(客単価(万円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 11 億円。来店 37 万人 × 客単価 2.70 万円、営業利益率 11.5%
- カジュアル業態(PIZZA SALVATORE CUOMO ほか):数量 195(来店客数(万人・年、推定。FC は収入を客数に換算))× 価格 0.54(客単価(万円・名目))→ 売上 106 億円・営業利益 12 億円。来店 195 万人 × 客単価 0.54 万円、営業利益率 11.5%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 31.4% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 19.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.76 倍、時価総額 103 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年 2 月期は 2 つの業態とも 2 割前後の増益で、天ぷら山の上の取得で高級業態の柱も増えた。会社の 2028 年 2 月期の計画(営業利益率 3.1%)を少し上回る筋として 2 割を置いた。
中立 37% 店は増えず、値上げで売上を保つ 利益 4 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 2,368 円78 億円
高級業態は天ぷら山の上を加えて客数が今の 1.27 倍になり、客単価は物価並みに上がる。カジュアル業態は店数が増えず、客数は少し減る。売上は物価の分だけ伸びる。
食材と人件費、家賃の上昇は値上げでほぼ吸収できるが、利益率を押し上げるほどではない。本社の費用も物価並みに増え、営業利益率は 3% 前後にとどまる。
配当は始まらず、還元は優待だけだ。利益はすべて自己資本に積まれ、財務は少しずつ厚くなる。ROE は 10% 台で資本コストをわずかに上回るが、利益の額は小さいまま。事業の規模に比べて、今の値段が高すぎる状態は変わらない 10 年になる。
- XEX グループ(高級業態・天ぷら山の上):数量 34.0(来店客数(万人・年、推定))× 価格 2.68(客単価(万円・名目))→ 売上 91 億円・営業利益 10 億円。来店 34 万人 × 客単価 2.68 万円、営業利益率 11.0%
- カジュアル業態(PIZZA SALVATORE CUOMO ほか):数量 185(来店客数(万人・年、推定。FC は収入を客数に換算))× 価格 0.54(客単価(万円・名目))→ 売上 99 億円・営業利益 11 億円。来店 185 万人 × 客単価 0.54 万円、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.8% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.54 倍、時価総額 66 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 12 年の営業利益率は −23%〜2% で、2% を超えた年は無い。会社の計画(2028 年 2 月期 3.1%)並みまでは戻るが、それ以上は根拠が乏しい。中立に 4 割弱を置いた。
やや悲観 22% 人件費と家賃に値上げが追いつかない 利益 1 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 494 円16 億円
景気の後退で接待や記念日の高級外食が減り、XEX の客数は今とほぼ同じにとどまる。カジュアル業態も客数が 1 割以上減る。値上げは客離れを招き、物価並みに通らない。
家賃は売上が落ちても下がらない。年 13 億円を超える家賃と人件費が利益を削り、営業利益率は 1% 台に沈む。不採算の店を閉じる費用もかさむ。
配当はできず、優待も縮める。自己資本はわずかしか積み上がらない。天ぷら山の上は赤字こそ出さないが、全社の利益を支えるほどには育たない。ROE は資本コストを下回り、利益の小ささに見合わない値段がはげ落ちる 10 年になる。
- XEX グループ(高級業態・天ぷら山の上):数量 28.0(来店客数(万人・年、推定))× 価格 2.60(客単価(万円・名目))→ 売上 73 億円・営業利益 7 億円。来店 28 万人 × 客単価 2.60 万円、営業利益率 9.0%
- カジュアル業態(PIZZA SALVATORE CUOMO ほか):数量 165(来店客数(万人・年、推定。FC は収入を客数に換算))× 価格 0.52(客単価(万円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 9 億円。来店 165 万人 × 客単価 0.52 万円、営業利益率 10.0%
倍率:ROE 5.4% が k 8.5% を下回るので、正当化 PER は 1÷k の 10.8 倍が上限。ためた利益の目減りを見て、上限の 7.4 割の 8.0 倍に置いた。
確率:高級外食は景気に弱く、コロナ禍では 2 期続けて営業赤字を出し債務超過に陥った。家賃が売上の 1 割を占める固定費の重さを見て、2 割強を置いた。
悲観 13% 赤字が続き、敷金と保証金だけが残る 利益 −3 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 182 円6 億円
XEX のブランドが古びて客が離れ、天ぷら山の上も期待ほど伸びない。カジュアル業態は FC の契約の更新が減り、客数は 2 割減る。
家賃と人件費が固定費として重くのしかかり、営業赤字が続く。店を閉じるたびに減損と原状回復の費用が出る。自己資本はほぼ消え、増資か身売りが話題になる。
配当は無く、優待も半分に減らす。高級業態の看板を他社に売る話も出るが、料理人と立地に宿るブランドは売り物になりにくい。株主に残る値打ちは、店を閉じた時に戻る敷金・保証金から借入を返した残りしかない。外食の小さな会社が景気の波に飲まれる、ありふれた結末の 10 年だ。
- XEX グループ(高級業態・天ぷら山の上):数量 22.0(来店客数(万人・年、推定))× 価格 2.50(客単価(万円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 2 億円。来店 22 万人 × 客単価 2.50 万円、営業利益率 4.0%
- カジュアル業態(PIZZA SALVATORE CUOMO ほか):数量 150(来店客数(万人・年、推定。FC は収入を客数に換算))× 価格 0.50(客単価(万円・名目))→ 売上 75 億円・営業利益 5 億円。来店 150 万人 × 客単価 0.50 万円、営業利益率 6.0%
倍率:赤字なので PER は当てず、今の自己資本 8.83 億円に PBR 0.68 倍を掛けた。これは床の資産(店を閉じた時に戻る敷金・保証金から借入を引いた額、約 6 億円)と同じで、市場の値付けは使っていない。
確率:2018〜2023 年に 5 期の最終赤字と債務超過を経験した会社だ。高級業態の人気は移ろいやすく、家賃の固定費で赤字が膨らみやすい。悲観に 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
XEX グループ(高級業態・天ぷら山の上)
鉄板焼きとイタリアンの XEX など直営 10 店。2026 年から天ぷら山の上が加わる。
| 数量来店客数(万人・年、推定) | 価格客単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 26.8 | 2.00 | 54 | 5 |
| 10 年後 中立 | 34.0 | 2.68 | 91 | 10 |
取り方:客数の開示は無いので、売上 53.6 億円を客単価 2 万円・年 26.8 万人と推定した。客数は実質の数量、物価は客単価に入れる。10 年は天ぷら山の上の客を足す。
カジュアル業態(PIZZA SALVATORE CUOMO ほか)
ナポリピッツァの直営 38 店と FC 31 店。FC から加盟料とロイヤルティ。
| 数量来店客数(万人・年、推定。FC は収入を客数に換算) | 価格客単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 192 | 0.40 | 77 | 9 |
| 10 年後 中立 | 185 | 0.54 | 99 | 11 |
取り方:客数の開示は無いので、売上 76.8 億円を客単価 0.4 万円・年 192 万人と推定した(FC の収入も客数に換算)。
リスクと懸念
景気の後退と高級外食
接待や記念日の高級外食は、景気が悪くなると真っ先に削られる。コロナ禍では 2 期続けて大きな営業赤字を出し、債務超過に落ちた。XEX の売上が 2 割落ちれば、全社の利益は簡単に消える。
家賃という固定の約束
店はすべて借りており、家賃は年 13.5 億円と全社の営業利益の 5 倍を超える。売上が落ちても家賃は下がらない。2028 年 2 月期からの新しいリース会計では、この約束が負債として表に出て、自己資本比率はさらに低く見える。
薄い自己資本
自己資本は 9 億円、自己資本比率は 17% だ。赤字が 2 年続けば再び債務超過に近づき、増資で株主の取り分が薄まるおそれがある。配当を再開する余力もまだ乏しい。
人手と人件費
高級店は料理人と接客の質で価値を出す。人手が足りず賃金が上がれば、費用は確実に増える。自動化で費用を下げる余地は、ファミリーレストランより小さい。
ブランドの持続
XEX の人気は立地と雰囲気に、天ぷら山の上の価値は老舗の名と料理人に宿る。料理人が去ったり、流行が移ったりすれば、ブランドの値打ちは目減りする。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 3% を超え、2 期続いたら
- 本社の費用の重さが和らいだとみて、やや楽観に重みを移す。
- 配当を再開したら
- 自己資本の回復に自信を持った証拠とみて、還元を厚く置き直す。
- 天ぷら山の上が初年度から黒字で、出店を増やしたら
- 高級業態の第 2 の柱が育つとみて、高級業態の客数の伸びを上げる。
- 景気の後退で XEX の既存店売上が 1 割以上落ちたら
- 家賃の固定費で赤字に近づくとみて、悲観に重みを移す。
- 増資や身売りの話が出たら
- 自己資本の薄さが表に出たとみて、悲観の筋書きが近いと見る。
見ておくもの
- XEX グループとカジュアル業態のセグメント利益
- 本社の費用(全社費用)の推移
- 家賃の総額と店舗数
- 天ぷら山の上の売上と利益
- 自己資本比率と配当の再開
倍率と資本コストの決め方
倍率は k 8.5% と g 4% から正当化 PER で出し、中立は 1÷k の 10.8 倍をわずかに上回る 11.0 倍とした。今の PER 30 倍超は使っていない。優待は推定の年 0.3 億円を還元に足し、自己資本の流れには入れていない。2028 年 2 月期からのリースの計上で数字の形が変わるが、10 年後は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→18.47 倍・やや楽観 PER 11.5→17.76 倍・中立 PER 11→16.54 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.75%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.50%。