結論
東天紅は、上野の「東天紅」で知られる中国料理と宴会場のチェーンだ。婚礼や法人の宴会が稼ぎの柱で、全国の都市部に店を持つ。筆者の結論は「やや割高」である。10年の稼ぐ力から出した価値は、今の時価総額を2割ほど下回る。
コロナの谷を越えて、営業利益率は10%台に乗った。店を絞って売上を減らし、価格改定も通った結果だ。直近の純利益は税金の戻りで膨らんでおり、実力はもう少し小さい。数字の見かけより、中身を見たい会社だ。
弱点は、宴会と婚礼という需要の先細りだ。婚姻件数は50万組を割る水準で、人手と家賃は物価で上がる。2026年の中間決算も、利益は期初の予想を下回った。
帳簿は厚い。自己資本は74億円で、株価はその4割に届かない。ただ、配当性向は6%と低く、30%を握る小泉グループの意向で、現金や含み益が株主に戻るかどうかは決まる。
筆者は、利益の持続性に疑いを持つ。コロナ後の高い利益率が10年続くと見るには、材料が足りない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべきは3つだ。第一に、利益が持続するか。コロナ後の営業利益率10%台は、需要の回復と不採算店の整理の結果で、人手と家賃の上昇に耐えられるかが試される。
第二に、資本の使い道。借入を返しながら、配当は利益の6%だ。利益の大半は会社に残り、自己資本は年に数億円ずつ増える。これが高い収益に結びつくなら良いが、ROEは資本コストに届かない水準だ。
第三に、帳簿の厚みである。上野の本店は自社の土地建物とみられるが、その価値は開示から確かめにくい。含み益を期待して買うのは、期待を先に払うことになる。筆者は、確かめられない価値には安全域を見ない。
それでも、悲観の筋書きで会社が危うくなる心配は小さい。借入は9億円で、利益で返せる。安全域は、財務の軽さにある。稼ぐ力の安全域とは別物だ。
何で稼ぐ会社か
事業は、中国料理のレストランと宴会場の運営だ。看板の「東天紅」に、新しい業態の「LUCIS GARDEN」とカフェバーを加え、秋田から兵庫までの都市で店を開いている。
稼ぎの中心は、婚礼と法人の宴会だ。一人あたりの単価が高く、一件で大きな売上になる。料理が主役の宴会は、ホテルの宴会場と競り合う。通常のレストランは、立地の良い駅ビルや商業施設に入る形が多く、家賃は固定費として重い。
上野の池之端にある本店は、2015年に旧ゴルフ練習場の跡地へ建てた。土地建物を自社で持つとみられる上野本店と違い、駅ビルや商業施設の店は借り物だ。コロナで宴会が消えた2021年2月期には、売上が16億円まで落ちた。その後、2026年2月期は48億円まで戻っている。コロナ前の売上は68億円ほどあったので、店を絞った分だけ事業の規模は小さくなった。顧客は、婚礼を挙げる家族と、忘年会や周年行事を開く企業が中心だ。
店舗数は、秋田から兵庫までの17店ほどだ。1人あたりの単価は、レストランの数千円から、婚礼の数万円まで幅がある。婚礼と宴会の比率が高いほど、売上は少ない件数に集中し、稼働の波も大きい。
優良さと弱いところ
優良とは言えないが、老舗のブランドと宴会の運営力は本物だ。昭和の創業から続く中国料理のブランドは、法人や親族の祝い事で選ばれる安心感を持つ。婚礼や宴会は、客の再来が少なく、立地とブランドが集客を決める。
ただ、堀は深くない。ホテルや専門の婚礼会場、他の中国料理店と客を取り合う。2015年から2020年の営業利益率は、ほぼゼロだった。今の10%台は、不採算店を閉じ、価格を改めた結果で、需要が戻っただけではない。
資本効率は低い。直近のROEは8%台だが、過去10年の中央値はマイナスで、今の水準が続く保証はない。借入は9億円まで減り、利益が出て財務は改善している。人手不足と物価で、人件費と食材費が上がり続ける点は、利益率の最大の敵だ。
経営の資本の使い方は、借入の返済が優先で、設備への投資は慎重だ。コロナ後の整理で、身の丈に合う規模に戻した経営の判断は評価できる。ただ、規模を縮めた会社が、次にどこで成長するのか、筆者にはまだ見えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
宴会と婚礼の市場は、人口の動きと景気に左右される。国内の婚姻件数は2025年に約49万組で、前の年より少し増えたものの、ピークの4割強の水準にとどまる。結婚式を挙げる組も減り、少人数や会食だけの形も増えている。
法人宴会は、コロナ後に戻りつつある。忘年会や周年の催しは、人が集まる価値の回復とともに続くが、若い世代の飲み会離れで、かつての規模には戻りにくい。物価で単価は上がり、数量は実質で緩やかに減る。
中国料理店の競争は、ホテルの宴会場、聘珍樓のような専門店、個人店が入り混じる。人手不足で、調理と接客の人件費が上がり続け、価格転嫁ができる店だけが生き残る。値上げに耐えるブランドを持つかどうかが、10年後の勝敗を分ける。老舗のブランドは、その点で強い。ただ、店の数を増やす余地は小さい。出店を急ぐ理由もない。
都市部の駅ビルや商業施設は、出店の条件が厳しく、家賃も上がる。家賃は固定費なので、客が減った年でも払い続ける。この固定費の重さが、外食と宴会の事業の脆さを生む。コロナ禍の2021年2月期に、売上が16億円まで落ちたのがその実例だ。
資本政策と M&A
株主還元は小さい。2026年2月期の配当性向は6%だ。コロナで無配だった時期の反動で、配当を再開したばかりである。自社株買いの実績は見当たらない。
小泉グループが議決権の3割強を持つ。同社は「事業上の取引関係はなく、独自の経営判断ができる」と説明している。ただ、大株主が経営の最終判断に影響する構図は変わらない。
過去には、2000年に株価をつり上げる目的のTOB騒動があった。これは事件として処理されており、今の経営とは関係ない。
30%を持つ小泉グループは、事業の関係を持たず、経営は独立していると会社は説明する。上場を維持しつつ、大株主の安定が経営の土台になっている。株価が低いままなら、グループによる買い増しや非公開化の観測が出ても不思議ではない。TOBや再編の確率を、外部の試算は10年で3割強とみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
コロナの谷を越えて、利益の体質が変わった。2026年2月期の営業利益率は10.7%と過去最高で、不採算の店を閉じた効果が続く。宴会と婚礼は、物価の上昇で単価を上げやすく、老舗のブランドが値上げを支える。
財務も改善した。純負債は25億円から9億円まで減り、利益が出る間に借入は返せる。自己資本は74億円と時価総額の2.8倍あり、上野の本店には、帳簿に載らない含み益があるはずだ。株価は帳簿の4割にも届かず、割安が長く放置されている。
婚姻件数は2023年を底に持ち直し、2025年は増えた。法人宴会も戻っている。人口減少の中でも、都市部の宴会需要は底堅く、中国料理の会食は祝い事の定番として残る。小泉グループが大株主として経営を支えていることも、安定の材料になる。
経営の判断も的確だ。コロナの谷で、売上が16億円まで落ちても会社は生き延び、不採算店を整理して利益体質に変えた。この修正力は、次の谷でも生きる。
慎重な見方
今の利益率は、天井に近い。2015年から2020年の営業利益率はほぼゼロで、10%台が定着したのは直近の3年だけだ。人件費、食材費、家賃は物価で上がり続け、価格改定が止まれば、利益は先に削られる。2026年の中間決算は、事前の予想を下回って着地した。
宴会と婚礼は、人口の縮小で数量が実質で細る。婚姻件数は50万組を割る水準で、少人数の結婚式や会食だけの形が増え、一件あたりの規模も小さくなる。法人宴会も、若い世代の飲み会離れで、昔の規模には戻らない。
配当性向は6%で、利益の多くは会社に残り、資本効率はコストを下回る。大株主が3割を握る構図で、現金が株主に戻る保証もない。直近の純利益は税金の戻りで膨らんでおり、実力は小さい。「PBR0.35倍」は、稼ぐ力に見合った評価の可能性が高い。
店を増やさず規模も縮めた会社が、物価と人件費の上昇のもとで成長する道は見えない。固定費の重い宴会場は、需要の細りに最も弱い。コロナの谷が、その脆さを一度証明している。
どちらに重みを置いたか
コロナ後の利益の回復は本物だが、10年先まで続く構造かは別だ。需要は細り、費用は物価で上がる。このため、中立を最も重く置き、やや悲観にも厚めの確率を残した。
筆者は、帳簿の厚みと低い配当性向の両方に、同じ重みを置いた。利益が戻れば価値は増えるが、戻る保証が弱い。確率は、楽観を小さく、やや悲観を大きくした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,626 円42 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 191 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 864 円22 億円、今との差 −12.2%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,554 円66 億円 | 350 円9 億円 | +195.2% | +11.4% | 290 円7 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,135 円55 億円 | 273 円7 億円 | +144.7% | +9.4% | 530 円14 億円 |
| 中立 | 33% | 1,868 円48 億円 | 195 円5 億円 | +109.6% | +7.7% | 681 円17 億円 |
| やや悲観 | 27% | 857 円22 億円 | 117 円3 億円 | −1.1% | −0.1% | 263 円7 億円 |
| 悲観 | 8% | 662 円17 億円 | 0 円0 億円 | −32.7% | −3.9% | 53 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,626 円42 億円 | 191 円5 億円 | +84.6% | +6.3% | 1,816 円47 億円 |
今の株価時価総額 984 円25 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 婚礼・宴会の単価が上がり続け、利益率が保たれる 利益 5 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,554 円66 億円
婚姻件数が横ばいで下げ止まり、法人宴会も戻り続ける。老舗のブランドで価格改定を毎年通し、単価は物価を上回って上がる。上野本店を中心に、宴会場の稼働は高く保たれ、家賃の重い店は整理が進む。営業利益率は11%を保ち、人件費の上昇も価格でほぼ吸収する。借入は完済し、手元の現金が積み上がる。婚礼の需要は、結婚する人の数が下げ止まったことで、底を打つ。会社は配当を増やし、還元の水準を上げる。2020年代前半の谷は、遠い記憶になる。上野本店の稼働は高く、法人の予約も早く埋まる。物価の上昇を、単価の引き上げで先取りできる会社になる。
- 中国料理・宴会(レストラン・婚礼・法人宴会):数量 70.0(年間利用客数(万人・推定))× 価格 1.00(1人あたり売上(億円/万人・名目))→ 売上 70 億円・営業利益 8 億円。利用客数1.00倍、1人あたり1.45倍(値上げ定着・高単価の宴会)、営業利益率11%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 65 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:都市部の宴会需要が底堅く、価格改定も続く必要がある。婚姻件数の細りと人件費の上昇を考えると、実現の確度は高くない。
やや楽観 22% 利益率は保たれ、数量はゆるやかに減る 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,135 円55 億円
宴会と婚礼の件数は少しずつ減るが、単価の上昇がそれを上回る。人件費と食材費の上昇は価格でおおむね吸収でき、営業利益率は9%台半ばに保たれる。借入は返し終え、財務は軽くなる。ただ、店の数は増やさず、利益の多くは会社に残る。婚礼を挙げる人が少なくなっても、記念日や法人の需要が穴を埋める。配当は少しずつ上がるが、還元の方針は大きくは変わらない。婚礼の細りは、宴会の高い単価と法人需要でなんとか補う。上野本店の宴会場は高い稼働を保ち、レストランの店は立地の良い数店に絞る。価格改定は毎年、物価に連れて行う。
- 中国料理・宴会(レストラン・婚礼・法人宴会):数量 67.2(年間利用客数(万人・推定))× 価格 0.95(1人あたり売上(億円/万人・名目))→ 売上 64 億円・営業利益 6 億円。利用客数0.96倍、1人あたり1.38倍、営業利益率9.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 51 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:コロナ後に戻した利益率が、人件費の上昇を価格で吸収しながらほぼ保たれる、起こりやすい上振れ。
中立 33% 婚礼が細り、利益率は今より少し下がる 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,868 円48 億円
婚礼と宴会の件数は実質で8%ほど減り、単価は物価並みに上がる。人件費、食材費、家賃は物価で上がり、営業利益率は直近の10%台から8.5%に下がる。過去12年の山(10.7%)以下だ。上野本店を中心に黒字は保ち、借入は返し終える。店舗の入れ替えは建築費の上昇で高くつき、現金は更新に回る。経営の方針は変わらず、会社は地味に長く続く。配当は少しずつ上がるが、利益の大半は会社に残り続ける。経営は規模を追わず、堅実に黒字を守る10年になる。人件費の上昇は、省人化の設備投資と価格改定で、ほぼ吸収できる。客は減っても、1件あたりの売上は着実に増える。
- 中国料理・宴会(レストラン・婚礼・法人宴会):数量 64.4(年間利用客数(万人・推定))× 価格 0.92(1人あたり売上(億円/万人・名目))→ 売上 59 億円・営業利益 5 億円。利用客数0.92倍、1人あたりは物価並みの1.34倍、営業利益率8.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 43 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:婚姻件数の細りと人件費の上昇で、直近の高い利益率は少し下がる。物価並みの価格改定は続ける、最も起こりやすい形。
やや悲観 27% 人件費と家賃が先に上がり、利益率が半分に削られる 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 857 円22 億円
婚姻件数の細りと若い世代の宴会離れで、利用客は実質で15%減る。人件費、食材費、家賃は物価で上がるが、価格は競争で上げきれず、営業利益率は5%まで下がる。固定費の重い宴会場は稼働が落ちると、すぐに利益が薄くなる。値上げをすれば客が離れ、しなければ利益が削られる板挟みが続く。借入は返せるが、新しい投資に回す余裕は乏しい。配当は今の水準を保つのが精いっぱいになる。会社は黒字を保ち、配当も続けるが、投資は最小限になる。店舗の改装も先送りされ、ブランドの鮮度が少しずつ落ちる。人手不足で営業日を減らす店も出て、売上の伸びが止まる。
- 中国料理・宴会(レストラン・婚礼・法人宴会):数量 59.5(年間利用客数(万人・推定))× 価格 0.89(1人あたり売上(億円/万人・名目))→ 売上 53 億円・営業利益 3 億円。利用客数0.85倍、1人あたり1.30倍(値上げが追いつかない)、営業利益率5%
倍率:稼ぐ力から出る価値(約17億円)より、売れる資産(floor_assets_oku)の方が大きいため、そちらを床にして今の自己資本×PBRで置いた。
確率:物価と人件費の上昇に、価格が追いつかない形。コロナ前の営業利益率はほぼゼロだったので、5%でも楽な前提ではない。
悲観 8% 婚礼が急速に縮み、固定費の重さで赤字に落ちる 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 662 円17 億円
婚礼と宴会の需要が急速に縮み、利用客は実質で3割近く減る。人件費、食材費、家賃は物価で上がり続け、価格は追いつかない。営業損益は赤字になり、自前の上野本店以外の店は整理される。会社は事業を絞り、資産の売却を考える段階に入る。ブランドの力だけでは、人手と家賃の上昇を支えきれなくなる。コロナの谷を越えた会社が、もう一度、同じ形の谷にはまる10年になる。ただ、小泉グループが大株主のため、清算や大きな還元が決まるかは少数株主には決められない。株主にとっては、長い待ちの10年になる。上野の土地建物を売って事業を絞る道もあるが、決めるのは大株主だ。
- 中国料理・宴会(レストラン・婚礼・法人宴会):数量 50.4(年間利用客数(万人・推定))× 価格 0.82(1人あたり売上(億円/万人・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 −1 億円。利用客数0.72倍、1人あたり1.20倍、営業利益率-3%
倍率:赤字なので稼ぐ力は使えず、売れる資産(floor_assets_oku)の床で見る。今の自己資本74億円×PBR0.23が床の額に当たる。
確率:婚礼の急な縮小と、人件費・家賃の物価上昇が重なる複合。コロナの谷で売上が3分の1まで落ちた実績があり、事業の脆さは過去に証明されている。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
中国料理・宴会(レストラン・婚礼・法人宴会)
中国料理のレストランと宴会場の運営。婚礼と法人の宴会が稼ぎの中心。
| 数量年間利用客数(万人・推定) | 価格1人あたり売上(億円/万人・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 70.0 | 0.69 | 48 | 5 |
| 10 年後 中立 | 64.4 | 0.92 | 59 | 5 |
取り方:売上48.1億円(開示)を、宴会・婚礼の高い単価とレストランの低い単価を混ぜた1人あたり約0.69万円で割り、利用客数を約70万人と推定(開示で確認できず推定)。単一セグメントで、営業利益5.15億円は開示。
リスクと懸念
婚礼・宴会の数量の細り
婚姻件数は2025年に約49万組で、ピークの4割強にとどまる。少人数の結婚式や会食だけの形が増え、一件あたりの規模も小さくなる。法人宴会も若い世代の飲み会離れで、昔の水準には戻りにくい。宴会場の稼働が落ちると、固定費の重さがすぐ利益に響く。
人件費・食材費・家賃の上昇
調理と接客の人手不足で人件費は物価を上回って上がり、食材費も高止まりする。賃借の店は家賃も物価に連れて上がる。価格改定が一年遅れるだけで、営業利益率は2〜3ポイント削られる。2026年の中間決算は、期初の予想を下回った。
今の高い利益率の持続
2015年から2020年の営業利益率はほぼゼロで、10%台は直近3年だけだ。不採算店の整理と価格改定の効果が一巡すれば、利益率は下がりやすい。直近の純利益は税金の戻りで膨らんでおり、実力は営業利益から見る方が正しい。
大株主の意向と還元の弱さ
小泉グループが議決権の3割強を持ち、配当性向は6%にとどまる。利益の大半は会社に残り、資本効率はコストを下回る。現金や含み益が株主に戻るかは、大株主の考え次第になる。
店舗の更新費
店舗や宴会場の内装・設備は定期的に更新が要る。取得時の値段で償却されるが、更新は建築費の上昇で高くつく。償却を上回る分は現金が出ていき、会計の利益ほど手元の現金は残らない。
事業の脆さ(コロナの実績)
2021年2月期には売上が16億円まで落ち、営業赤字は17億円に達した。宴会と婚礼は、人が集まれなくなると事業が止まる。同じ規模の衝撃は、感染症以外でも起こりうる。
今後の分かれ目
- 次の決算で営業利益率が9%を割ったら
- 価格改定が人件費の上昇に追いつかなかったと見て、中立の利益率を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 婚姻件数と婚礼の組数が2〜3年続けて持ち直したら
- 数量の前提を上方修正し、楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 小泉グループが持株を増やす、またはTOBを提案したら
- 価値の計算は変えず、価格の動きを別に見る。ただし悲観の確率は下げる。
- 配当が増額される、または自社株買いが始まったら
- 現金の戻り方を0.5から上げ、価値を引き上げる。
- 上野本店の土地建物の売却や再開発が発表されたら
- 含み益の大きさを開示で確認し、悲観の床と楽観の筋書きを見直す。
見ておくもの
- 四半期ごとの営業利益率と客単価の推移
- 婚姻件数と婚礼の組数、法人宴会の予約状況
- 配当・自社株買いなど還元方針の変更
- 賃貸等不動産・土地の時価に関する開示
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の純利益÷自己資本が資本コストを下回るため、1÷k(12.5倍)を上限とする式から置いた。今の株価や過去のPER・PBRには寄せていない。今の時価総額は26億円と帳簿の4割以下だが、PBR1倍割れを割安の根拠にしなかった。営業利益率は過去12年の山(10.7%)以下で、中立は8.5%に下げた。数量は実質で減らし、価格は物価並みの1.34倍を中立とし、二重がけはしていない。店舗の償却は物価で増やさず、更新は現金の流出として扱った。新リース会計基準(2028年2月期から)で数字の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.12 倍・やや楽観 PER 10.5→12.12 倍・中立 PER 9.5→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。