結論
愛眼は「メガネの愛眼」の看板で全国に約 210 店を構える、大阪発祥の老舗の眼鏡チェーンだ。主な客は中高年で、遠近両用のレンズと補聴器を、時間をかけた接客で売る。年の売上は 150 億円ほどで、営業利益は 2 億円台にようやく戻ったところだ。
筆者の結論は「割高」だ。手元の現金と預金は 46 億円あり、時価総額とほぼ同じ額になる。帳簿から見れば安い。それでも、事業の稼ぎは資本コストに遠く届かず、無配が続いて現金は株主に戻ってこない。少数株主にとって、この現金は眺めることしかできない資産だ。
眼鏡の市場はジンズや Zoff、眼鏡市場といった低価格の大手に押さえられた。愛眼は値段で勝負せず、高齢の客の目と耳の困りごとに寄り添う道を選んだ。高齢化はこの道の追い風だが、店の数は少しずつ減っている。
変化の芽は株主の側にある。物言う株主として知られるアセット・バリュー・インベスターズが 5% を持った。還元が始まれば、現金の価値は株主に近づく。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、愛眼は「安く見えるが、持って増える会社ではない」。事業には、他社がまねできない強みと呼べるほどの堀が無い。眼鏡は低価格のチェーンに相場を握られ、愛眼の利益は 10 年以上、資本コストを下回り続けた。
資産の面は手厚い。時価総額とほぼ同じ現金と預金、7 億円台の上場株、20 億円を超える敷金を持つ。ただし少数株主は、この現金の使い道を決められない。配当が無い限り、現金は会社の中で低い利回りのまま眠る。
筆者はオーナー利益、つまり株主が受け取れる利益を、現金の利息を除いて年 2 億円前後と見る。資本コスト 8.75% で 10 年を割り引くと、余った現金の半分を足しても、今の時価総額には届かない。値打ちが変わるのは、物言う株主の圧力で還元が始まる時だ。そこまでは、安全域は帳簿の上にしか無い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎのほぼすべてが国内の眼鏡の小売だ。2026 年 3 月期の売上 153 億円のうち、小売が 149 億円、眼鏡の卸が 4 億円弱を占める。海外の眼鏡の販売からは 2024 年度に撤退した。
店はショッピングセンターの中と路面にあり、関西を地盤に全国へ広がる。店の多くは借りた場所で、家賃は毎年必ず払う固定の費用になる。毎年数店を新しく開け、それより多い数を閉じてきた。2026 年 3 月期も 4 店を開き、7 店を閉じた。
売り物の柱は眼鏡で、レンズ付きの値段を上げ、薄型や調光などのレンズの上乗せを勧めて客単価を高めている。準主力は補聴器とサングラスだ。補聴器はお試しの貸し出しやアフターサービスが好調で、前期は 7% 伸びた。
強みは人の技術にある。国家検定の「眼鏡作製技能士」や「認定補聴器技能者」の資格を店員に取らせ、視力と聴力の測定と調整に時間をかける。安い眼鏡を早く渡す低価格チェーンとは、売り方がまるで違う。ネット通販は自社のサイトと楽天市場の店で補う程度だ。
眼鏡の卸は、ほかの眼鏡店にフレームなどを納める小さな事業で、利益はほぼゼロだ。
優良さと弱いところ
優良な事業とは言いにくい。過去 12 年のうち 7 年が営業赤字で、自己資本利益率(ROE)の中央値はマイナスだ。2026 年 3 月期に黒字へ戻したが、営業利益率は 1.5% にすぎない。
弱さの根は、値段を決める力の乏しさにある。眼鏡は 2000 年代に低価格のチェーンが一気に広がり、フレームとレンズの相場が下がった。愛眼は接客と技術で差をつけるが、若い客はジンズや Zoff へ流れた。
守りは堅い。借入はなく、現金と預金が 46 億円ある。自己資本比率は 86% だ。会社が傾く心配はまずない。
筆者が気にしているのは、この堅さが株主の稼ぎにつながっていない点だ。現金は利回りの低い預金に眠り、配当も自社株買いも無い。資本の使い方の弱さが、事業の弱さと同じくらい株主の価値を削っている。利益の薄さを資産の厚さで隠せる会社は、変わる力も弱くなりやすい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の眼鏡の小売市場は 4,000 億円台で横ばいが続く。数量の面では、人口が減る一方、スマートフォンを長く見る生活で近視の人が増え、高齢化で遠近両用のレンズの需要も増える。差し引きで、眼鏡の枚数は大きくは減らない。
値段の面では二極に分かれた。ジンズ、Zoff、眼鏡市場は、フレームとレンズのセットの安い値段で若い客と働く世代を取った。一方で、高齢の客は度数の細かい調整や補聴器の相談に時間をかけたがる。愛眼やパリミキの三城ホールディングスは、この客を相手にする側にいる。
補聴器は伸びる市場だ。日本の補聴器の普及率は欧米より低く、聞こえの衰えを放っておくことが認知症の危険を高めると知られてきた。国家資格を持つ店員が測って調整する売り方は、ネットでは置き換えにくい。
一方で、ショッピングセンターの閉館や改装で店を失う例が増えている。物価が上がる中で人件費と家賃も上がり、薄い利益率は削られやすい。業界の再編も進み、眼鏡市場の運営会社は投資会社の傘下に入った。
10 年先を見ると、眼鏡の店は「安く早く」と「時間をかけて相談」の二つに分かれたまま残ると筆者は見る。愛眼は後者の中で、店の数を守れるかが問われる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、株主の目から見て弱い。2026 年 3 月期は黒字でも無配で、2027 年 3 月期の配当も未定だ。自社株買いの実績も無い。現金と預金は 46 億円あり、時価総額とほぼ同じ額が株主に戻らないまま積まれている。
大株主は創業家の資産管理会社とみられる佐々興産で、1 割を持つ。2026 年 6 月にはアセット・バリュー・インベスターズが 5% を持った。現金の多い低 PBR の会社に還元を迫ってきた運用会社だ。
株主優待はメガネ 30% 割引の券で、会社の費用は年 1 億円に届かないと筆者は見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
高齢化は愛眼のための追い風だ。遠近両用のレンズ、度数の細かい調整、補聴器はどれも時間と技術の要る商品で、低価格のチェーンが苦手とする。国家資格を持つ店員が測って調整する売り方は、10 年後も価値がある。
値上げも通り始めた。レンズ付きの値段を上げ、薄型や調光のレンズを勧めた結果、2026 年 3 月期は粗利率が 1.2 ポイント上がった。2027 年 3 月期の第 1 四半期は売上が 7% 伸び、営業利益も黒字に転じた。客単価を物価より速く上げられれば、利益率は 3% 台に戻せる。
補聴器は、日本では普及率が欧米より低い。聞こえの衰えと認知症の関係が知られれば、市場は数量で伸びる。補聴器の売上が今の 2 倍になれば、利益の柱になる。
資本の面でも変化が見える。アセット・バリュー・インベスターズが 5% を持った。現金 46 億円の一部が配当や自社株買いに回れば、株主の価値は大きく見直される。
慎重な見方
愛眼の客は年をとり続け、若い客は戻ってこない。ジンズや Zoff で眼鏡を買い始めた世代は、年をとっても同じ店で遠近両用を買う。低価格のチェーンも補聴器や遠近両用に力を入れ始めた。愛眼の得意の分野も、いずれ同じ値段の勝負になる。
店の数は減り続ける。ショッピングセンターの閉館や改装で、毎年閉じる店が開く店を上回る。家賃と人件費は物価とともに上がるが、売上は店の減少で伸びない。過去 12 年で 7 年が赤字だった事実は重い。
2026 年 3 月期の黒字も薄い。営業利益は 2 億円台で、セール 1 回の失敗や大型の閉店で吹き飛ぶ。投資有価証券の売却益に頼った年もある。
現金は株主のものになるとは限らない。無配が続き、自社株買いもしない。物言う株主が入っても、創業家の側が応じなければ何も変わらない。赤字に戻れば、現金は閉店の費用と赤字の穴埋めで少しずつ減っていく。
高齢の客は店に通えなくなる日も来る。地方の店ほど客の数が先に細る。
どちらに重みを置いたか
店の数が減ることと、低価格のチェーンに相場を握られていることは、慎重な見方の言うとおりだ。強気の見方の高齢化と補聴器は本物の追い風だが、利益率を 1% 台から大きく押し上げる証拠はまだ一期分しか無い。筆者は確率を慎重な側に寄せ、中立は店が 1 割減り、利益率が今と同じ 1.5% にとどまる姿とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 238 円46 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 29 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 122 円24 億円、今との差 −54.2%、 期待の年率 +0.0%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 450 円87 億円 | 62 円12 億円 | +92.6% | +6.8% | 31 円6 億円 |
| やや楽観 | 18% | 350 円68 億円 | 46 円9 億円 | +49.2% | +4.1% | 71 円14 億円 |
| 中立 | 38% | 262 円51 億円 | 31 円6 億円 | +10.0% | +1.0% | 111 円22 億円 |
| やや悲観 | 25% | 139 円27 億円 | 15 円3 億円 | −42.1% | −5.3% | 39 円7 億円 |
| 悲観 | 13% | 103 円20 億円 | 10 円2 億円 | −57.4% | −8.2% | 15 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 238 円46 億円 | 29 円6 億円 | +0.2% | +0.0% | 267 円52 億円 |
今の株価時価総額 266 円52 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 高齢化と補聴器で客単価が上がり、利益率 3% 台へ 利益 6 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 450 円87 億円
高齢化が客を連れてくる。遠近両用のレンズと補聴器の需要が増え、愛眼の接客と測定の技術が評価される。店の数は閉館で少し減るが、1 店あたりの売上は実質で 1 割近く伸びる。
値上げも定着する。レンズの上乗せと補聴器の比率が上がり、営業利益率は 3.5% に戻る。営業利益は 8 億円近くになり、現金の利息を足して純利益は 6 億円に届く。
物言う株主の働きかけで配当が再開し、10 年で 12 億円を株主に戻す。それでも ROE は 4% にとどまり、資本コストには届かない。厚い現金は会社に残り続ける。
- 眼鏡小売(卸を含む):数量 204(店舗数(期末))× 価格 1.08(1 店舗あたりの年間売上(億円・名目。卸の売上を含む))→ 売上 221 億円・営業利益 8 億円。店舗 0.96 倍・1 店あたり売上 1.51 倍(実質 +8%)・営業利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 87 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げと補聴器の伸びが同時に続く姿。過去 12 年に利益率 3% 台の年は無く、堀も弱いので 6% にとどめた。
やや楽観 18% 店は減るが、補聴器と値上げで利益率 2.5% 利益 4 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 350 円68 億円
店の数は 10 年で 1 割弱減る。それでも 1 店あたりの売上は物価を少し上回って伸びる。補聴器の売上が増え、レンズの上乗せで客単価が上がるからだ。
営業利益率は 2.5% と、過去 12 年のどの年より高い水準で落ち着く。営業利益は 5 億円強、純利益は 4 億円台になる。
配当は少額で再開し、10 年で 9 億円を戻す。現金はほとんど減らず、ROE は 3% にとどまる。事業は安定するが、資本の重さが株主の取り分を薄める姿だ。
ショッピングセンターの閉館は続くが、閉じた店の客の一部は近くの店に移る。
- 眼鏡小売(卸を含む):数量 200(店舗数(期末))× 価格 1.03(1 店舗あたりの年間売上(億円・名目。卸の売上を含む))→ 売上 206 億円・営業利益 5 億円。店舗 0.94 倍・1 店あたり売上 1.44 倍(実質 +5%)・営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 68 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の値上げと第 1 四半期の増益が続いた場合の姿。証拠はまだ一期分なので 2 割弱に置いた。
中立 38% 中立:店が 1 割減り、利益率は 1.5% で横ばい 利益 3 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 262 円51 億円
店の数はショッピングセンターの閉館と不採算店の整理で 1 割ほど減る。1 店あたりの売上は物価並みに上がり、補聴器と遠近両用で実質でもわずかに伸びる。売上は 190 億円近くになる。
利益率は 2026 年 3 月期と同じ 1.5% にとどまる。家賃と人件費の上昇を、値上げでようやく打ち返す形だ。営業利益は 3 億円弱、現金の利息を足して純利益は 3 億円になる。
配当は小さく再開するが、10 年の還元は 6 億円にとどまる。現金は会社に残り、ROE は 2% 程度だ。事業は残るが、株主に見合った稼ぎは出ない。
- 眼鏡小売(卸を含む):数量 190(店舗数(期末))× 価格 0.99(1 店舗あたりの年間売上(億円・名目。卸の売上を含む))→ 売上 188 億円・営業利益 3 億円。店舗 0.89 倍・1 店あたり売上 1.38 倍(実質 +3%)・営業利益率 1.5%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.2% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 51 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:高齢化の追い風と、店の減少・低価格のチェーンとの競争が打ち消しあう、いちばん起こりやすい形として最も厚く置いた。
やや悲観 25% 閉店が続き、営業赤字に戻る 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 139 円27 億円
ショッピングセンターの閉館と改装が続き、店の数は 10 年で 2 割強減る。低価格のチェーンが遠近両用と補聴器に本腰を入れ、愛眼の客単価は物価に届かない。
家賃は売上が落ちても下がらない。人件費も上がり、営業利益率は −0.5% と小さな赤字に戻る。現金の利息で純利益はかろうじて黒字を保つ。
配当は出ず、自社株買いも無い。会社は傾かないが、現金は閉店の費用に少しずつ使われる。株主には何も届かない 10 年になる。
物言う株主の提案も、創業家の側が受け入れず実を結ばない。地方の店から先に客が細り、閉店が加速する。
- 眼鏡小売(卸を含む):数量 164(店舗数(期末))× 価格 0.87(1 店舗あたりの年間売上(億円・名目。卸の売上を含む))→ 売上 143 億円・営業利益 −1 億円。店舗 0.77 倍・1 店あたり売上 1.21 倍(実質 −3%)・営業赤字
倍率:稼ぐ力(純利益 0.4 億円 ÷ k = 5 億円)より売れる資産の床のほうが高いので床で置いた。今の自己資本 122.8 億円に PBR 0.212 倍を掛けた 26 億円。
確率:過去 12 年で 7 年が赤字だった実績から、黒字が続かない姿を 1/4 に置いた。
悲観 13% 悲観:客が細り、閉店と赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 103 円20 億円
愛眼の客は年をとり、若い客は来ない。低価格のチェーンが補聴器と遠近両用でも安い値段を出し、愛眼の強みは値段の勝負に変わる。店の数は 10 年で 4 割近く減る。
家賃と人件費は固定費として残り、営業利益率は −4% まで落ちる。純利益は年 3 億円の赤字が続き、自己資本は 90 億円台まで減る。
現金は閉店の費用と赤字の穴埋めに消えていく。還元は優待の割引券くらいだ。清算されない限り、株主の手に現金は届かない。
買い手を探しても、赤字の続く眼鏡チェーンに高い値は付かない。残った店も改装の資金が回らず、客足はさらに遠のく。
- 眼鏡小売(卸を含む):数量 130(店舗数(期末))× 価格 0.76(1 店舗あたりの年間売上(億円・名目。卸の売上を含む))→ 売上 99 億円・営業利益 −4 億円。店舗 0.61 倍・1 店あたり売上 1.06 倍(実質 −8%)・営業赤字
倍率:赤字で稼ぐ力は測れないので、売れる資産の床で置いた。今の自己資本 122.8 億円に PBR 0.163 倍を掛けた 20 億円。
確率:客の高齢化と低価格のチェーンの攻勢が重なる負け筋。赤字の多い歴史と弱い堀から 13% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
眼鏡小売(卸を含む)
全国約 210 店で眼鏡・補聴器・サングラスを売る。眼鏡の卸(売上 4 億円弱)も含める。
| 数量店舗数(期末) | 価格1 店舗あたりの年間売上(億円・名目。卸の売上を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 213 | 0.72 | 153 | 2 |
| 10 年後 中立 | 190 | 0.99 | 188 | 3 |
取り方:2026 年 3 月期の売上 152.8 億円(小売 149.3 億円・卸 3.5 億円)を期末の店舗数 213 で割り、1 店あたり 0.72 億円とした。客数と客単価は開示が無いので、1 店あたりの売上を価格の側に置き、その中の物価の分(10 年 1.34 倍)と実質の変化(客数・単価の上乗せ)を分けて筋書きに書く。営業利益 2.25 億円は開示。
リスクと懸念
低価格のチェーンが高齢の客を取りにくる
ジンズや Zoff、眼鏡市場は遠近両用や補聴器にも力を入れ始めた。愛眼の得意な中高年の客が値段で比べ始めれば、接客と技術で取ってきた上乗せは削られる。
ショッピングセンターの閉館で店を失う
店の多くは大型商業施設の中にある。施設の閉館やゾーニングの変更で、毎年数店を閉じてきた。開く店より閉じる店が多い状態が続けば、売上の土台が細る。
家賃と人件費の固定費
店は借りた場所が多く、家賃は売上が落ちても下がらない。最低賃金の上昇で人件費も上がる。営業利益率 1.5% の薄い利益は、費用が少し増えるだけで消える。
現金が株主に戻らない
現金と預金 46 億円は時価総額とほぼ同じだが、無配が続き、自社株買いも無い。会社の中に眠る現金は低い利回りで回るだけで、少数株主の価値には届きにくい。
黒字の定着が確かでない
過去 12 年で 7 年が営業赤字だった。2026 年 3 月期の黒字は値上げと粗利率の改善によるが、セールの失敗や大型の閉店が重なれば、すぐに赤字へ戻りうる。
今後の分かれ目
- 配当の再開や自社株買いなど、還元の方針を数字で示したら
- 余った現金の戻り方を厚く見られ、本質価値は上に動く。物言う株主の働きかけが実を結ぶかが分かれ目だ。
- 営業利益率 2.5% 超が 2 年以上続いたら
- やや楽観の筋書きに確率を移せる。値上げと補聴器の伸びが一過性でないことの証拠になる。
- 補聴器の売上が全体の 2 割を超えたら
- 高齢化の追い風が数量で利益に届き始めた証拠で、利益の質も上がる。
- 閉じる店が開く店を大きく上回り、営業赤字に戻ったら
- やや悲観の筋書きに近づく。現金は閉店の費用に回り始める。
- 業界の再編で同業や投資会社から買収の話が出たら
- 厚い現金と土地の価値が買い手の値段に乗りやすい。少数株主に資産の価値が届く数少ない道になる。
見ておくもの
- 月次の既存店売上と客数
- 店舗数の増減(開店・閉店)
- 補聴器の売上の伸び
- 配当の再開と自社株買いの有無
- アセット・バリュー・インベスターズの持株と提案
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE が k 8.75% を下回るので 1÷k を上限に、弱い堀の RONIC と g 4% の正当化 PER から置いた。中立 7.0 倍は今の PER(約 30 倍)や PBR 0.4 倍を見て決めていない。悲観側は今の自己資本と、現金・上場株の税後に戻り方 0.5 を掛けた床から置き、過去の PBR の底は使っていない。家賃は今と同じく営業費用に入れた形でそろえた(2028 年 3 月期から新リース会計で形が変わる)。facts の純現金 21 億円は現金同等物だけなので、3 か月超の定期預金を足した 46 億円で見た。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.5→11.43 倍・やや楽観 PER 7.8→11.43 倍・中立 PER 7→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。