結論
魚喜は、スーパーや商業施設の中で鮮魚と持ち帰りずしを売る、神奈川を地盤にした小さな小売業だ。筆者の結論は「大きく割高」。売上は95億円あるが、営業利益は0.9億円しかなく、時価総額の25億円は稼ぐ力に見合わない。
鮮魚の店舗は、売上の86%を占めるが、利益の大半は本社や物流の費用に消える。店舗の家賃は年に9億円を超え、営業利益の10倍に当たる。売上が1割落ちれば、利益は一気に赤字へ傾く。
売上は10年で3%ずつ減り続けてきた。魚離れと人口減、魚介の値上がりが重なる。会社は商品の自社企画、卸、ネット販売で活路を探すが、まだ数字には表れていない。直近の半期は営業赤字だ。
財務は薄い。現金と借金がほぼ釣り合い、自己資本比率は3割。借入契約には、経常損益を2期連続で赤字にしないという条件がある。10年の期待は資本コストを大きく下回り、今の値段は正当化できない。
筆者がこの会社に認めるのは、現場の改善力だ。ただ、改善の果実は、家賃と人件費の上昇に食われてきた。構造が変わる兆しが見えるまで、評価は厳しくならざるをえない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は買えない会社だ。事業は縮み、利益は薄く、資本は借入に頼る。稼ぐ力に対して、時価総額は10倍以上に膨らんでいる。
オーナー利益(株主が自由に使える利益)は、純利益より小さい。店舗の改装と家賃の更新に、稼いだお金のほとんどを使う。配当を出しても、将来の投資が株主の取り分を食う。
経営は現場の改善に力を入れ、生産性は上がった。それでも、売上が3%ずつ減る事業で、利益を積み上げるのは難しい。資本配分でも、借入に頼る投資が続く。
安全域はない。楽観の筋書きでも今の値段に届かず、悲観では資産の床まで落ちる。わかりやすい事業なので、確信度は高く、「手を出さない」と判断する。事業は消えないが、株主に利益が残る形にならない。持ち続けたいかと問われれば、この値段では「いいえ」と答える。
何で稼ぐ会社か
中核は鮮魚事業だ。スーパーや商業施設の中に、鮮魚店と持ち帰りずし店を38店出している。対面で魚を選んでもらい、その場で刺身や寿司に仕立てるのが売りだ。売上の約4割が神奈川に集中する。
飲食事業は、神奈川・岐阜・広島の回転寿司など8店。不動産事業は、子会社を通じて賃貸の不動産2件を管理する。どちらも規模は小さい。
従業員は290人で、臨時雇用が320人と正社員より多い。人手に頼る商いで、賃金の上昇がそのまま費用に響く。店舗使用料は年に9.4億円で、売上の約1割を家賃に払っている。
仕入は、売上の約半分(41億円)が鮮魚事業の仕入で、前期は8%減った。魚価の高騰と数量の減少が同時に進んでいる。
2026年2月期は、池袋西武店とJR岐阜店を閉めた。設備投資3億円のうち、2.9億円は本社の移転用の土地と建物だ。出店はイオンモールなど、堅実に絞る方針を掲げる。
会社は2023年からの中期経営計画「魚喜ビジョン2025」を終え、自社企画商品、卸、ネット販売を新しい収益の柱に挙げる。ただ、その売上は開示されておらず、鮮魚店の利益に比べれば小さいと見る。
優良さと弱いところ
筆者は、堀(他社がまねできない強み)は「弱い」と見る。対面販売の魚屋は、スーパー自身の鮮魚売り場と直接競う。大手スーパーは調達力が上で、同じ魚をより安く売れる。
数字も弱い。売上は10年で3%ずつ減り、営業利益率は0.5〜1%台で動かない。直近の半期は営業赤字だった。過去10年の最高でも2%で、利益が積み上がる構造にない。店舗の家賃は年9.4億円で、店舗の利益を出しても、本社費と家賃が重く、最後に残る利益が薄くなる。売上が落ちたとき、家賃は落ちない。この固定費の構造が、利益の振れを大きくする。
ただ、鮮魚の店舗利益は前期に14%増えた。労働生産性は中計の目標を上回る伸びで、現場の改善は進んでいる。問題は、店舗利益の6億円のほとんどを本社費と家賃が吸い取る構造だ。
経営は配当に積極的で、配当性向は5割から8割と高い。ただ額は年0.25億円と小さい。大株主は個人と有限会社が上位で、オーナー色が強い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
魚の消費は、国内で減り続けている。家庭の魚介の購入量は長く減少傾向で、肉に押されている。人口減とも重なり、筆者は実質の客数を10年で0.9倍まで減ると見る。
魚の値段は、世界の需要増と漁獲の制約で上がる。会社も、海外需要の高まりと漁獲枠を、利益を圧迫する要因に挙げる。仕入が上がっても、店頭価格を同じだけ上げるのは難しい。
競争の相手はスーパー自身だ。大手スーパーは鮮魚の売り場を持ち、集客の目玉にしている。魚喜はその売り場の中に入る形が多く、立地を貸すスーパーの意向に左右される。
人件費は、最低賃金の上昇で名目年3〜5%増える。店舗の家賃も更新のたびに上がる。大手スーパーや商業施設は、集客力の弱い店を入れ替える力を持つ。この固定費の上昇を、売価と客数で吸収できるかが、業界全体の分かれ目になる。
同業の専門の鮮魚小売は、上場会社がほとんどなく、再編の相手も見つけにくい。
回転寿司の外食では、くら寿司やスシローなどの大手が、魚の調達力と自動化で優位に立つ。魚喜の飲食事業は8店と小さく、規模の面では戦えない。
資本政策と M&A
還元は「経営上可能な限り最大限」と書く。2026年3月期は1株10円で、総額0.25億円、性向は5割。予想も同額だ。利益が薄いため、性向が高くても額は小さい。
内部留保は、既存店の改装と増床に回す方針だ。設備投資は年に数億円で、2026年2月期は本社の移転用の土地・建物に2.9億円を使った。自己資本は9億円しかなく、投資の負担は重い。
借入には、財務制限条項が付く。純資産を一定以上に保つことと、経常損益を2期連続で赤字にしないことだ。直近の半期は営業赤字で、通期の予想は黒字だが、条件への余裕は大きくない。
買収の計画は開示にない。大株主は個人と有限会社で、TOBの可能性は小さい。株主優待は実施していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
鮮魚の店舗利益は前期に14%増え、生産性は中計の目標を2倍上回った。現場の改善は本物で、店舗利益の率は7%台で安定している。
魚価の上昇は逆風だが、対面販売の質を売る店は、値上げを通しやすい。商品の自社企画、卸、ネット販売が実を結べば、新しい収益の柱が育つ。本社を移転して費用を見直す動きもあり、全社費用を抑える余地がある。
財務は借入より現金がやや多く、配当性向も高い。厳選した出店が当たれば、固定費を薄めながら利益が増える。小さな会社だけに、1つの成功が利益を何倍にも動かす。8%を超える利益率が見えれば、評価は大きく変わる。
回転寿司の飲食事業も、出店と業態の工夫で利益が出れば、柱になりうる。会社は雇用年限を75歳まで引き上げ、人手の確保に動いている。人が集まれば、出店のペースを上げる余地も出てくる。
築地や産地の仕入先とのつながりも、長く続く関係として生きている。目利きの力は、スーパーの売り場には真似しにくい。ここに磨きをかけられるかが、利益率を8%台に引き上げる鍵になる。
慎重な見方
売上は10年で毎年3%ずつ減り、魚離れと人口減が止まる兆しはない。営業利益は0.9億円で、家賃の9.4億円に比べて薄すぎる。売上が1割落ちるだけで、赤字に転落する。
直近の半期は営業赤字で、通期予想の黒字は下期の挽回頼みだ。借入契約には、経常損益を2期連続で赤字にしない条件があり、違反すれば借入の返済を求められかねない。
自己資本は9億円で、今の時価総額は2.8倍に膨らんでいる。稼ぐ力は時価総額の1割にも届かない。店舗は閉鎖が続き、減損も出る。人件費と家賃は物価で上がり、仕入の魚価も上がる。三方から利益が削られる構造だ。
自社企画や卸、ネット販売は、売上の開示がなく、成果が見えない。小さな会社が新しい柱を育てる難しさを、筆者は過小評価できない。
株価は、利益の10倍以上の値段で取引されている。期待が高いぶん、1度の減益で大きく下がる。売買が少ない小型株で、下がる時は速い。
配当は性向が高くても額が小さく、株価を支える力は弱い。利益の薄い小売業に、期待だけで値がついている状態だ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がずっと強い。店舗利益の改善は事実だが、本社費と家賃を引いた後の営業利益はごくわずかだ。そのため悲観を17%、やや悲観を30%に厚く置いた。楽観は、新しい収益の柱が育つ条件が多く、5%にとどめた。結果として、期待は今の値段を大きく下回る。現場の改善力は評価するが、家賃と人件費の重さを超えるほどではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 171 円4 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 74 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 120 円3 億円、今との差 −87.9%、 期待の年率 −13.1%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 1,033 円26 億円 | 238 円6 億円 | +27.9% | +2.5% | 64 円2 億円 |
| やや楽観 | 13% | 427 円11 億円 | 139 円4 億円 | −43.1% | −5.5% | 74 円2 億円 |
| 中立 | 35% | 111 円3 億円 | 59 円2 億円 | −82.9% | −16.2% | 60 円2 億円 |
| やや悲観 | 30% | 55 円1 億円 | 59 円2 億円 | −88.4% | −19.4% | 34 円1 億円 |
| 悲観 | 17% | 48 円1 億円 | 32 円1 億円 | −92.0% | −22.3% | 13 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 171 円4 億円 | 74 円2 億円 | −75.4% | −13.1% | 245 円6 億円 |
今の株価時価総額 994 円25 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 5% 自社企画・卸・ネットが実り、本社費も下がる 利益 2 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,033 円26 億円
自社企画の商品、卸、ネット販売が実を結び、客数の減りが止まる。魚価の上昇を店頭に移せて、客単価は物価以上に上がる。会社が掲げる自社企画商品の売上は、数億円規模まで育つ。
本社費の見直しが進み、全社費用の増え方が物価より低く収まる。店舗の利益率は8%台に上がり、営業利益は1億円台後半まで伸びる。
それでも、対面の魚屋が売上を伸ばす姿は描きにくい。小さな成功が積み重なる筋書きで、時価総額を押し上げるほどの稼ぎにはならない。実現すれば会社の評価は変わるが、その確率は低い。
条件は、客数の減少が止まること、魚価の上昇を転嫁できること、全社費用が物価より遅く増えることの3つだ。
- 鮮魚事業(鮮魚店・持ち帰りずし):数量 546(来店客数(万人、推定))× 価格 2,070(客単価(円))→ 売上 113 億円・営業利益 10 億円。利益率8.5%
- 飲食事業(回転寿司ほか):数量 53.0(来店客数(万人、推定))× 価格 2,760(客単価(円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。利益率4.0%
- 不動産事業:数量 1.0(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 50,250(1㎡あたり年間賃料(円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。利益率6.5%。賃料は更新のたびにしか改定されず物価に遅れるため、価格の伸びを物価より低く置いた
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.8% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.28 倍、時価総額 25 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:実現の条件が多い上振れ。5%にとどめた。
やや楽観 13% 客数の減りが緩み、利益率が小さく改善する 利益 1 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 427 円11 億円
客数は10年で1割弱の減少にとどまり、店舗の利益率は7%台後半に上がる。魚価の上昇は店頭に移せる。
飲食事業は小さな黒字を保ち、不動産は横ばい。全社費用は物価でほぼ同じだけ増える。営業利益は1億円を少し超える。
配当は性向5割を保つが、額は小さい。資本コストを大きく下回るROEのまま、「縮み方が緩い10年」にとどまる。現場の改善が続けば、これが現実的な上振れだ。
確率は1割強に置く。会社は店舗の改装と増床に内部留保を回す方針で、設備投資の回収が進めば、利益は少しずつ伸びる。会社は生産性の向上を実績で示しており、客数の落ち込みを緩やかに抑える力はあると見るからだ。
- 鮮魚事業(鮮魚店・持ち帰りずし):数量 520(来店客数(万人、推定))× 価格 2,040(客単価(円))→ 売上 106 億円・営業利益 8 億円。利益率7.8%
- 飲食事業(回転寿司ほか):数量 47.0(来店客数(万人、推定))× 価格 2,680(客単価(円))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。利益率2.5%
- 不動産事業:数量 1.0(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 48,240(1㎡あたり年間賃料(円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。利益率6.0%。賃料は更新のたびにしか改定されず物価に遅れるため、価格の伸びを物価より低く置いた
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 11 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:現場の改善が続き、客数の減少が緩む筋書き。
中立 35% 客数が1割減り、利益は薄いまま横ばい 利益 0 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 111 円3 億円
魚離れと人口減で、客数は10年で1割減る。客単価は物価並みに上がるが、魚価の上昇に押され、店舗の利益率は7%台前半にとどまる。
飲食事業は小さな黒字で、不動産は横ばい。全社費用は物価で増え、営業利益は0.5億円ほどに落ち着く。
配当は性向5割を保つが、額は年0.15億円ほどだ。家賃と人件費が物価で上がる中で、利益は薄いまま、10年が過ぎる。この筋書きが、いちばん起こりやすい。
魚価と人件費、家賃のすべてが物価並みに上がるため、利益率は動かず、売上の減少分だけ利益が削られる。会社は店舗の整理を続け、利益を守る。
- 鮮魚事業(鮮魚店・持ち帰りずし):数量 492(来店客数(万人、推定))× 価格 2,010(客単価(円))→ 売上 99 億円・営業利益 7 億円。利益率7.3%
- 飲食事業(回転寿司ほか):数量 42.0(来店客数(万人、推定))× 価格 2,680(客単価(円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。利益率1.5%
- 不動産事業:数量 1.0(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 48,240(1㎡あたり年間賃料(円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。利益率5.7%。賃料は更新のたびにしか改定されず物価に遅れるため、価格の伸びを物価より低く置いた
倍率:事業の純利益 0 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.5% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 3 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今の利益構造が、そのまま物価分だけ膨らむ中心の筋書き。
やや悲観 30% 売上が2割減り、固定費が重くのしかかる 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 55 円1 億円
客数は2割減り、店頭価格も魚価の上昇に追いつかない。店舗の利益率は6%に落ち、飲食事業は赤字に転じる。
全社費用は物価で増え続け、営業利益はほぼゼロになる。店舗の閉鎖が続き、減損が出る。借入契約の条件への余裕が薄れ、配当は据え置きか減配になる。人件費の上昇が続き、パート・アルバイトの確保にも費用がかさむ。
構造的に地盤を失い、もう優良ではなくなっている筋書きだ。資産の売却で穴を埋める。魚の仕入価格の上昇が続けば、店舗の利益率はさらに下がる。
会社が打ち出す自社企画や卸、ネット販売も、店舗の穴を埋めるには小さい。ここでは、縮む事業の典型的な姿が現れる。
- 鮮魚事業(鮮魚店・持ち帰りずし):数量 430(来店客数(万人、推定))× 価格 1,920(客単価(円))→ 売上 83 億円・営業利益 5 億円。利益率6.0%
- 飲食事業(回転寿司ほか):数量 36.0(来店客数(万人、推定))× 価格 2,500(客単価(円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。利益率-2.0%
- 不動産事業:数量 1.0(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 44,220(1㎡あたり年間賃料(円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。利益率5.0%。賃料は更新のたびにしか改定されず物価に遅れるため、価格の伸びを物価より低く置いた
倍率:営業利益がほぼゼロで稼ぐ力は測れず、床は売れる資産で支える。今の自己資本9.0億円に0.16倍を掛けた(減損後の自己資本8.5億円には0.17倍)。中立より低い。
確率:売上の減少で固定費を吸収できず、営業利益がほぼゼロになる筋書き。
悲観 17% 赤字が続き、借入契約の条件に抵触する 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 48 円1 億円
客数は3分の2まで落ち、店舗の利益率は3%台に下がる。飲食事業は赤字で撤退する。
全社費用と家賃が重く、営業赤字が続く。経常損益が2期連続で赤字になり、借入契約の条件に抵触する。借入の返済を迫られ、店舗の閉鎖と資産の売却が進む。
価値は、わずかな純現金と投資有価証券の床まで落ちる。清算されない限り少数株主は資産の使い道を決められず、床は半分に割り引く。株主への配当は止まり、会社が存続するかも不確かになる。
店舗の閉鎖費用と減損が重なり、自己資本が3割近く減る。構造的に負ける筋書きの中でも、いちばん厳しい形だ。
- 鮮魚事業(鮮魚店・持ち帰りずし):数量 340(来店客数(万人、推定))× 価格 1,800(客単価(円))→ 売上 61 億円・営業利益 2 億円。利益率3.5%
- 飲食事業(回転寿司ほか):数量 25.0(来店客数(万人、推定))× 価格 2,400(客単価(円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。利益率-6.0%
- 不動産事業:数量 0.9(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 40,200(1㎡あたり年間賃料(円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。利益率4.0%。賃料は更新のたびにしか改定されず物価に遅れるため、価格の伸びを物価より低く置いた
倍率:稼ぐ力はなく、床は売れる資産で測る。純現金と上場株の税引き後の約2.6億円の半分の約1.3億円を床とし、減損3億円を引いた後の自己資本6.0億円に0.20倍(約1.2億円)を掛けた。今の自己資本9.0億円には0.13倍。
確率:売上の急減と固定費の重さで赤字が続く筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鮮魚事業(鮮魚店・持ち帰りずし)
スーパーや商業施設の中で、対面で鮮魚・刺身・寿司・惣菜を売る店を38店持つ。売上の86%を占める本業。
| 数量来店客数(万人、推定) | 価格客単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 547 | 1,500 | 82 | 6 |
| 10 年後 中立 | 492 | 2,010 | 99 | 7 |
取り方:売上82.0億円・セグメント利益6.1億円(利益率7.4%)。客単価を約1,500円(推定、開示なし)と置き、来店客数を逆算した(1店あたり年14万人)。店は閉鎖が続き、売上は前期比5.8%減った。
飲食事業(回転寿司ほか)
神奈川・岐阜・広島で回転寿司などの飲食店を8店経営する。
| 数量来店客数(万人、推定) | 価格客単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 44.5 | 2,000 | 9 | 0 |
| 10 年後 中立 | 42.0 | 2,680 | 11 | 0 |
取り方:売上8.9億円・セグメント利益0.1億円(利益率1.6%)。客単価を約2,000円(推定)と置き、来店客数を逆算した。利益は前期から半減した。
不動産事業
子会社のビッグパワーが、賃貸の不動産2件を管理する。
| 数量賃貸面積(万㎡、推定) | 価格1㎡あたり年間賃料(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1.0 | 40,200 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 48,240 | 5 | 0 |
取り方:売上4.0億円・セグメント利益0.2億円(利益率5.7%)。賃貸面積を約1万㎡(推定)、年間賃料を1㎡あたり約4万円と置いた。賃料は更新のたびにしか改定されず物価に遅れるため、10年で1.2倍(中立)と置く。
リスクと懸念
家賃の重さと固定費
店舗使用料は年に9.4億円で、営業利益0.9億円の10倍を超える。売上が1割落ちるだけで営業赤字に傾く。家賃は更新のたびに上がり、売上が落ちても下がらない固定の約束だ。
借入契約の財務制限条項
コミットメントラインには、純資産を一定以上に保つことと、経常損益を2期連続で赤字にしないことが付く。直近の半期は営業赤字で、条件に抵触すれば借入の返済を迫られる。
魚離れと人口減
国内の魚介の購入量は長く減り続けている。会社も魚離れと人口減を業績のリスクに挙げる。売上は10年で3%ずつ減ってきた。
魚価の高騰
世界の魚の需要増と漁獲の制約で、仕入価格は上がる。会社も海外需要と漁獲枠を利益の圧迫要因に挙げる。店頭に転嫁しきれず、利益率が薄くなる。
人件費と人手の確保
従業員290人に臨時雇用が320人いる。最低賃金の上昇と人手不足で、費用は名目年3〜5%増える。75歳までの雇用延長は人手の確保策だが、人件費の負担も重くする。
立地を貸すスーパーへの依存
店舗の多くは、スーパーや商業施設の中にある。貸す側の撤退や条件の変更で、店を閉めざるを得ない。池袋西武店とJR岐阜店の閉鎖がその例だ。
今後の分かれ目
- 店舗の営業利益率が2期続けて8%を超える
- 生産性の改善と値上げが定着している。やや楽観の確率を上げてよい。
- 経常損益が2期連続で赤字になる
- 借入の財務制限条項に抵触し、返済を迫られる。悲観の確率を大きく上げる。
- 自社企画・卸・ネット販売の売上が開示される
- 新しい収益の柱が育っているか確認できる。数字が小さいままなら、楽観は維持しない。
- 売上の減少が年3%から2%以内に止まる
- 客数の減りが緩む。中立の数量を0.9倍から0.95倍に置き直す。
- 大株主が持株を動かす
- 再編やTOBの可能性が生じる。出れば分析の前提が変わる。
見ておくもの
- 鮮魚事業のセグメント利益と利益率(前期7.4%)
- 上期・通期の営業損益(上期は営業赤字)
- 経常損益の2期連続赤字(借入の財務制限条項)
- 店舗数と閉鎖の動き(前期は鮮魚38店)
- 自社企画商品・卸・ネット販売の売上
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROEが資本コストを大きく下回る会社の上限1÷kを出発点に、売上が縮む小売で利益の質が低いことから上限の7〜8割に置いた。今の株価や同業の倍率からは置いていない。10年の利益は、店舗の客数と客単価から積み、全社費用を物価で増やして営業利益を出した。結果は大きな割高に出たが、数字を今の値段に寄せていない。店舗の家賃は固定の約束で、純現金(約1億円)を強いとは見ていない。新リース会計基準(2029年2月期から)で営業利益と負債の形は変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.9→13.28 倍・やや楽観 PER 8.3→11.11 倍・中立 PER 7.8→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。