結論
ノジマは、携帯の店と家電の店を二本柱にする小売りだ。売上は 1 兆円に迫り、営業利益は 580 億円と過去最高を更新した。
筆者の結論は「適正」だ(割安は小さく、日立の少数株主の取り分を除くと差は 1 割を切る)。いちばんの理由は、少ない資本で多く稼ぐ力にある。ROE は 16% で、利益の薄い同業とは別の会社といえる。
稼ぎの中心は携帯の販売代理店だ。ドコモショップの約 4 分の 1 を運営する最大手で、店の粗利がそのまま利益に近い。景気に左右されにくい。ただ、10 年先も店が要るのかが最大の論点になる。
2026 年 4 月には、日立の家電事業の買収を決めた。価格は約 1,100 億円。小売りが作り手に回る大きな賭けだ。運べば利益の柱が 1 本増える。外せば手元の現金を失い、買収の傷が残る。
中立の 10 年後は、ROE が 10% 台に下がると見る。稼いだ利益を使い切れないためだ。それでも資本コストは上回る。事業の価値は今の時価総額より 1 割弱高い。
慎重な見方にも理がある。携帯の手数料は携帯会社が決める。日立の統合に失敗した時の落ち込みは深い。割安といっても、安全域は厚くない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ノジマは「良い会社」の部類に入る。少ない資本で多く稼ぎ、借金は軽い。10 年の ROE は中央値で 18% だ。
持ち続けたいかを問うと、答えは二つに割れる。人を軸にした接客と、携帯店の運営という足場は強い。一方で、利益の半分近くを携帯の手数料に頼る。決めるのは携帯会社で、ノジマではない。
資本の使い道が、これからの分かれ目になる。利益の大半は会社に残る。それを日立のような大きな買収に回せば、成功した時の見返りは大きい。失敗した時の傷も深い。経営は買収の実績を持つが、規模が一桁違う案件は初めてだ。
筆者は、10 年後の営業利益を、日立を除いて 700 億円台、日立を足して 870 億円ほどと見る。名目で伸びても、ROE は 10% 台に下がる。それでも資本コストを上回るので、事業の価値は今の値段より上にある。
安全域は、それなりにある。ただ、日立の統合が見えるまでは、確信を深く置けない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は大きく 3 つある。
1 つ目は携帯の販売代理店だ。ドコモや au の店を全国で 937 店運営し、契約の手数料と端末の販売で稼ぐ。2026 年 3 月期の売上は約 4,000 億円で、利益の中心でもある。以前は本部の費用が重かったが、運営をグループで一本化して店だけが残る形になった。社長は「粗利益がそのまま利益になる」と説明している。筆者は、この構造の変化が利益率を押し上げたと見る。
2 つ目は家電の専門店だ。「ノジマ」の看板で 240 店ほどを持ち、ネット通販も運営する。メーカーや携帯会社の派遣販売員を置かず、自社の社員が客に合う商品を勧める。AI パソコンや美容家電のような単価の高い品が伸びた。
3 つ目はパソコンの VAIO だ。法人向けが中心で、Windows 10 のサポート終了による買い替え需要を取り込んで売上が膨らんだ。この需要には反動が来る。
このほか、ニフティ(接続サービス)・セシール(通販)・メディア・バイオ・海外を持つ。利益は薄く、立て直しの途中にある事業が多い。金融子会社のマネースクウェアは売却して連結から外れた。
次の柱が日立の家電事業だ。冷蔵庫や洗濯機を「作る側」に回る。買収は 2027 年 3 月期中の完了をめざし、今の数字にはまだ入っていない。店の多くは借りたもので、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。
優良さと弱いところ
筆者がまず見るのは堀、つまり他社がまねできない強みだ。ノジマの堀は「人」にある。ノルマもマニュアルも置かず、社員が客の相談に乗って商品を決める。人件費は年に 100 億円ほど増やし、新卒は 1,000 人を超えて採る。費用は重いが、この接客が携帯の契約と単価の高い家電を支えている。
携帯の代理店は規模も効く。ドコモショップの約 4 分の 1 を運営する最大手で、店を増やすほど仕組みが回る。ただし、堀は広くない。手数料は携帯会社が決める。携帯会社が店を減らし、ネット契約へ寄せれば、代理店の出番は細る。
家電の店は、価格を市場に決められる。同じ冷蔵庫はネット通販でも買える。値上げでは稼げず、接客と品揃えで単価を保つしかない。
資本の使い方は優れている。ROE は過去 10 年の中央値で 18%、借金も軽い。ただ、配当は利益の 1 割強と控えめで、現金が積み上がりやすい。その現金を大型買収に使う会社でもある。買収の腕は VAIO で試され、日立で本番を迎える。
創業者の野島廣司氏が経営を率い、持ち株は 14% ほどある。長くオーナーの目が行き届く点は強みだ。買い方が強気な点は、その裏返しの弱みだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の家電量販店の市場は約 10 兆円で、近年は横ばいから微増だ。人口は減る。それでも省エネ家電への買い替えと価格の上昇が売上を支えてきた。10 年後も、数量は微減か横ばいと筆者は見る。
ノジマは、家電の外に稼ぎ場を広げた会社だ。家電の主役は、ヤマダ・ビックカメラ・エディオン・ケーズの 4 社に近い。ノジマの家電店は 240 店ほどで、これらより小ぶりだ。そこで、携帯の代理店という別の土俵で規模を取った。
携帯の代理店は、構造の変わり目にある。携帯会社は手続きをネットに寄せ、店を減らす方向にある。残る店は、人を育てられる大手に集まりやすい。ノジマは最大手として店を買い増し、シェアを上げる側に回っている。一方で、手数料の水準は携帯会社が握る。
家電の店は、ネット通販との競争が続く。家電の EC 化率は 4 割を超え、価格はすぐ比べられる。店は設置工事・保証・相談の要る品で差をつけるしかない。パソコンや美容家電は、その相談が効く品だ。
人件費も重い。最低賃金の上昇で、店の運営費は毎年かさむ。物価が上がれば価格も上げられるが、競争の強い家電では転嫁が遅れやすい。
家電は買い替えを延ばせる耐久財だ。景気が悪いと既存店の売上は落ちる。携帯の手数料は、その点で景気に強い。この 2 つを併せ持つことが、ノジマの強みでもある。
資本政策と M&A
還元は控えめだったが、変わりつつある。2026 年 3 月期は約 2 割の増配で、自社株買いも上限 33 億円で進めている。社長は、業績が悪い年でも増配を続ける方針を示した。それでも配当は利益の 1 割強で、現金は積み上がりやすい。
筆者がいちばん気にするのは、日立の家電事業の買収だ。新会社の 80.1% を約 1,100 億円で取得し、残りは日立が持つ。会社は自己資金で賄えると説明する。今の純現金 328 億円は消え、借金が生まれる。買収の失敗は、のれんの減損として表に出る。
ノジマは、買って育てる会社だ。VAIO・ニフティ・セシール・ストリートホールディングスと買収を重ねてきた。成功した事業もあれば、立て直し中の事業もある。日立は、これまでの買収より規模が一桁大きい。
TOB の可能性は、kabufu の見立てで 10 年以内に 23% ほどだ。ただ、創業者が筆頭株主として 14% ほどを持つ。買われる側になる動きは起きにくいと筆者は見る。
店舗は借りたものが多く、家賃は固定の約束だ。2028 年 3 月期からの新リース会計で、これが借金のように貸借対照表に載る。
【点検 2026-10-19】日立の新会社は 80.1% 取得なので、純利益のうち日立の分の 19.9% は少数株主のものになる。各筋書きの holder_share で除いた(中立 0.96)。
株主優待は年約1.4億円(会社の費用ベース。300株以上に10%割引券。単元株主約2.3万人の対象率・使われ率を低く置いた下限(1.4〜7億円))。優待の費用は販管費として利益から引き済みなので、株主が受け取る分として10年の還元に「年額×10年×続く見込み(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)」を足した(中立+14億円)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ノジマの利益は構造が変わった。携帯店の運営を一本化し、本部の費用が切り離された。店の粗利がそのまま利益になるので、店を増やすほど利益が積み上がる。会社は 2026 年度に、最大 50 店の新規出店と改装を計画する。携帯会社が店を減らすなか、最大手に店が集まる流れは追い風だ。
家電の店も強い。AI パソコンや美容家電のような、相談が要る品はネットでは売れにくい。メーカーの派遣員を置かず、客に合う品を勧める作りは、他社がまねしにくい。接客の質で単価を保てる。
日立の買収は、大きな上振れの種だ。日立の冷蔵庫や洗濯機は、強いブランドを持つ。ノジマの店で得た客の声を製品づくりに戻せば、売る側と作る側が 1 つになる。小売りが利益を取る位置を、一段上げる試みだ。会社は買収を今期の予想に入れておらず、上振れの余地になる。
財務も軽い。フリーキャッシュフローは 575 億円で、金利が上がっても痛まない。
すべてが運べば、10 年後の営業利益は 1,200 億円を超える。ROE は 15% 前後を保つ。
慎重な見方
利益の半分近くが携帯の手数料に頼る構造は、危うい。手数料は携帯会社が決める。携帯会社がネット契約へ寄せ、直営に回帰すれば、代理店の取り分は削られる。携帯店が 10 年先も今の形で続く保証はない。
2026 年 3 月期の好業績は、パソコンの買い替え特需と携帯の追い風が重なった結果だ。VAIO は Windows 10 の終了で膨らんだ売上が、反動で落ちる。営業利益率 5.9% は過去最高に近く、平常の力とは言い切れない。
日立は大きな賭けだ。冷蔵庫や洗濯機は家電量販店の売り場の主力で、ほかの量販店が日立の売り場を絞るかもしれない。小売りがメーカーを持てば、競合は自社に不利な扱いをする。家電単体の利益率は開示がなく、見えない。しかも、少数の持ち分は日立に残る。
人件費の増加は年 100 億円ほど。新卒の大量採用は、景気が悪くなっても減らしにくい固定費だ。店の家賃も固定の約束である。
手元の現金は日立で消え、借金に変わる。金利が上がれば利払いが増える。10 年後の営業利益が 600 億円に届かない可能性は、十分にある。
どちらに重みを置いたか
強気の見方が、わずかに強いと筆者は判断した。過去 10 年の実績が一貫して強く、携帯店と家電の両方で稼ぐ力が確かめられているからだ。
ただし、携帯の手数料と日立の統合という、会社の外と内の 2 つの不確実さは大きい。確率は中立に 3 割台前半を置き、強気側と慎重側はどちらも 3 割台前半とした。ほぼ五分五分だが、構造的に負ける最悪の筋書きは 1 割にとどめた。
日立が成功しても、中立の ROE は 10% 台に下がる。利益のたまり方が速いからだ。倍率は大きく上げられない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,054 円8,880 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 592 円1,722 億円)。 今の値に割り戻すと 1,855 円5,395 億円、今との差 +49.1%、 期待の年率 +11.4%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 5,088 円1.48 兆円 | 977 円2,842 億円 | +387.6% | +17.2% | 728 円2,117 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,178 円1.21 兆円 | 789 円2,296 億円 | +299.3% | +14.8% | 1,093 円3,178 億円 |
| 中立 | 34% | 3,511 円1.02 兆円 | 599 円1,741 億円 | +230.4% | +12.7% | 1,397 円4,064 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,400 円4,070 億円 | 403 円1,172 億円 | +44.9% | +3.8% | 397 円1,153 億円 |
| 悲観 | 10% | 223 円647 億円 | 88 円257 億円 | −75.0% | −12.9% | 31 円90 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,054 円8,880 億円 | 592 円1,722 億円 | +193.1% | +11.4% | 3,646 円1.06 兆円 |
今の株価時価総額 1,244 円3,618 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 12% 携帯と家電の両方が伸び、日立も軌道に乗る 利益 839 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 5,088 円1.48 兆円
携帯会社の店舗縮小が進み、ノジマは最大手として店を買い増す。1,000 店を超え、店の粗利がそのまま利益になる形で利益が積み上がる。
家電の店は、AI パソコンや美容家電のような相談が要る品で単価を保つ。件数は微増し、利益率も 6% を超える。VAIO は法人向けに根を張り、台数の反動は小さくて済む。
日立は、ノジマの店で得た客の声が製品に戻り、高付加価値品の比率が上がって利益率が 8% に届く。冷蔵庫・洗濯機の売り場でも日立が目立つ。営業利益は 1,270 億円ほどに達し、ROE は 15% 前後を保つ。借金は短い期間で返し終え、還元も厚くなる。市場は、資本の効率が高い小売り兼メーカーとして高い倍率を払う。
- キャリアショップ運営(ドコモ・au などの販売代理店):数量 1,060(店舗数(店))× 価格 5.51(1 店あたりの売上(億円。物価の指数で伸びる))→ 売上 5,839 億円・営業利益 397 億円
- デジタル家電専門店(店舗とネット通販):数量 12.2(年間の会計件数(百万件))× 価格 41,400(1 会計あたりの売上(物価の指数で伸びる))→ 売上 5,051 億円・営業利益 313 億円
- プロダクト(VAIO のパソコン):数量 95.0(年間販売台数(万台))× 価格 11(1 台あたりの売上(万円。物価の指数で伸びる))→ 売上 1,003 億円・営業利益 70 億円
- その他(ニフティ・セシール・メディア・バイオ・海外):数量 13.1(年間の取引・契約件数(百万件))× 価格 21,000(1 件あたりの売上(物価の指数で伸びる))→ 売上 2,755 億円・営業利益 165 億円
- 日立家電(買収予定。2027 年 3 月期中に連結の計画):数量 320(年間販売台数(万台))× 価格 14(1 台あたりの売上(万円。物価の指数で伸びる))→ 売上 4,480 億円・営業利益 358 億円
倍率:事業の純利益 839 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍。全体の PER 18.21 倍、時価総額 15,278 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:携帯店の統合が進み、ノジマが取り分を増やす。日立の家電が高い利益を出し、小売りと製造を 1 社で持つ強みが表に出る。収益構造がぐっと変わる筋で、実績の強さは認めても 1 割強にとどめた。
やや楽観 22% 日立が計画どおり進み、ROE は 12% 台を保つ 利益 693 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 4,178 円1.21 兆円
携帯の店は 1,000 店ほどに増え、手数料の取り分も大きくは崩れない。デジタル家電の店は件数を保ち、利益率は 6% 近い水準にとどまる。
VAIO は特需の反動で台数が減るが、法人向けの根は残る。ニフティとセシールの立て直しも少しずつ進む。
日立は、統合の費用がかさむ最初の数年を越え、利益率 6〜7% で安定する。ノジマの店で日立の売り場が広がる効果もある。営業利益は 1,040 億円ほどで、ROE は 12% 台になる。借金は 10 年のうちに返し終える。還元は利益の 3 割台まで高まり、自己資本が増えすぎない。ただし、日立の効果は思ったほど早く出ず、計画の利益水準には届かない。
- キャリアショップ運営(ドコモ・au などの販売代理店):数量 1,000(店舗数(店))× 価格 5.34(1 店あたりの売上(億円。物価の指数で伸びる))→ 売上 5,339 億円・営業利益 352 億円
- デジタル家電専門店(店舗とネット通販):数量 11.5(年間の会計件数(百万件))× 価格 40,800(1 会計あたりの売上(物価の指数で伸びる))→ 売上 4,692 億円・営業利益 277 億円
- プロダクト(VAIO のパソコン):数量 88.0(年間販売台数(万台))× 価格 10(1 台あたりの売上(万円。物価の指数で伸びる))→ 売上 888 億円・営業利益 56 億円
- その他(ニフティ・セシール・メディア・バイオ・海外):数量 12.2(年間の取引・契約件数(百万件))× 価格 20,400(1 件あたりの売上(物価の指数で伸びる))→ 売上 2,483 億円・営業利益 132 億円
- 日立家電(買収予定。2027 年 3 月期中に連結の計画):数量 290(年間販売台数(万台))× 価格 14(1 台あたりの売上(万円。物価の指数で伸びる))→ 売上 3,915 億円・営業利益 254 億円
倍率:事業の純利益 693 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍。全体の PER 17.6 倍、時価総額 12,197 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:携帯店は横ばいから微増、日立は計画どおり。実績の強さを踏まえ 2 割強とした。
中立 34% 携帯と家電は堅調、日立は並みの利益で、ROE は 10% 台に下がる 利益 585 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 3,511 円1.02 兆円
携帯店は携帯会社の店舗縮小と買い増しが釣り合い、980 店ほどで推移する。手数料は物価ほど伸びず、1 店あたりの売上は 2 割ほど増える程度だ。
デジタル家電の店は、件数は人口減で少し減り、金額は物価に沿って上がる。利益率は 5% 台半ばで、今よりわずかに下がる。VAIO は特需の反動で台数が減り、利益は今より小さい。
日立は、販売台数が国内の人口減で微減、海外が補う形になる。統合の費用と家電の薄い利益で、営業利益率は 5% にとどまる。営業利益は 870 億円ほどになる。利益は会社に残りやすく、還元を高めても自己資本は 2 倍以上に増え、ROE は 10% 台に下がる。強気にも悲観にも当たらない、実績に近い 10 年だ。 株主優待の費用は利益から引き済みで、還元には受け取り分(年約1.4億円×10年)を足している。
- キャリアショップ運営(ドコモ・au などの販売代理店):数量 980(店舗数(店))× 価格 5.17(1 店あたりの売上(億円。物価の指数で伸びる))→ 売上 5,066 億円・営業利益 319 億円
- デジタル家電専門店(店舗とネット通販):数量 11.2(年間の会計件数(百万件))× 価格 40,200(1 会計あたりの売上(物価の指数で伸びる))→ 売上 4,502 億円・営業利益 248 億円
- プロダクト(VAIO のパソコン):数量 80.0(年間販売台数(万台))× 価格 9.85(1 台あたりの売上(万円。物価の指数で伸びる))→ 売上 788 億円・営業利益 43 億円
- その他(ニフティ・セシール・メディア・バイオ・海外):数量 11.7(年間の取引・契約件数(百万件))× 価格 20,100(1 件あたりの売上(物価の指数で伸びる))→ 売上 2,350 億円・営業利益 113 億円
- 日立家電(買収予定。2027 年 3 月期中に連結の計画):数量 270(年間販売台数(万台))× 価格 13(1 台あたりの売上(万円。物価の指数で伸びる))→ 売上 3,510 億円・営業利益 176 億円
倍率:事業の純利益 585 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.88 倍、時価総額 9,875 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:携帯・家電が実績に近い形で続き、日立は並みの利益。最も実績に近い筋で、確率の中心とした。
やや悲観 22% 携帯の手数料が削られ、日立は期待を下回る 利益 362 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 1,400 円4,070 億円
携帯会社が手続きをネットへ寄せ、店は 900 店に減る。手数料の取り分も削られ、1 店あたりの売上は物価に届かない。利益率は 5% 台前半に下がる。
家電の店は、ネット通販に押されて件数が 1 割減る。人件費の増加を価格で吸収できず、利益率は 4% 台に落ちる。VAIO は特需の反動のあと、台数が戻らず、利益はほぼ消える。
日立は、他の量販店が売り場を絞り、台数が伸びない。統合の費用が続き、営業利益率は 3% にとどまる。借金は返済が遅れ、利払いが利益を圧迫する。営業利益は 560 億円ほどで、ROE は 7% 台に下がる。稼ぎは資本コストに届かず、倍率は上限の 8 割に置かれる。
- キャリアショップ運営(ドコモ・au などの販売代理店):数量 900(店舗数(店))× 価格 4.75(1 店あたりの売上(億円。物価の指数で伸びる))→ 売上 4,271 億円・営業利益 226 億円
- デジタル家電専門店(店舗とネット通販):数量 10.2(年間の会計件数(百万件))× 価格 39,000(1 会計あたりの売上(物価の指数で伸びる))→ 売上 3,978 億円・営業利益 175 億円
- プロダクト(VAIO のパソコン):数量 65.0(年間販売台数(万台))× 価格 9.06(1 台あたりの売上(万円。物価の指数で伸びる))→ 売上 589 億円・営業利益 21 億円
- その他(ニフティ・セシール・メディア・バイオ・海外):数量 11.0(年間の取引・契約件数(百万件))× 価格 19,500(1 件あたりの売上(物価の指数で伸びる))→ 売上 2,141 億円・営業利益 75 億円
- 日立家電(買収予定。2027 年 3 月期中に連結の計画):数量 235(年間販売台数(万台))× 価格 12(1 台あたりの売上(万円。物価の指数で伸びる))→ 売上 2,820 億円・営業利益 85 億円
倍率:(家賃を営業費用に入れた今と同じ形)ROE 7.4%(純利益 362 億円 ÷ 自己資本 4900 億円)。事業の ROE が k 7.75% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.1 倍が上限。携帯の取り分が削られ、日立が期待を下回る筋なので、やや悲観は上限の 8 割の 9.7 倍に置いた。
確率:携帯の取り分が減り、日立の効果も薄い。慎重な見方は理が通るので、強気側と同じ 2 割強を置いた。
悲観 10% 携帯店が先細り、日立の買収も外れる 利益 83 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 223 円647 億円
携帯会社が店を直営とネットに寄せ、代理店の取り分を大きく削る。ノジマの携帯店は 650 店に減り、手数料の水準も下がる。利益率は 3% 台に落ちる。
家電は、ネット通販が価格を決める汎用品になる。デジタル家電の店は件数が 3 割減り、人件費と家賃が残って利益が消える。VAIO は特需の反動で台数が半減に近づく。
日立は、他の量販店が売り場から日立を外し、台数が落ち込む。買収の代金は利益を生まず、のれんを減損する。借金と利払いが重くのしかかり、純利益は 80 億円ほどにとどまる。もう優良な会社ではなく、株主への還元も大きく絞る。営業の稼ぎでは借金を返せず、資産の売却と事業の縮小で立て直しを図る。
- キャリアショップ運営(ドコモ・au などの販売代理店):数量 650(店舗数(店))× 価格 4.45(1 店あたりの売上(億円。物価の指数で伸びる))→ 売上 2,892 億円・営業利益 101 億円
- デジタル家電専門店(店舗とネット通販):数量 8.2(年間の会計件数(百万件))× 価格 33,000(1 会計あたりの売上(物価の指数で伸びる))→ 売上 2,706 億円・営業利益 41 億円
- プロダクト(VAIO のパソコン):数量 50.0(年間販売台数(万台))× 価格 8.59(1 台あたりの売上(万円。物価の指数で伸びる))→ 売上 429 億円・営業利益 6 億円
- その他(ニフティ・セシール・メディア・バイオ・海外):数量 9.5(年間の取引・契約件数(百万件))× 価格 16,950(1 件あたりの売上(物価の指数で伸びる))→ 売上 1,617 億円・営業利益 32 億円
- 日立家電(買収予定。2027 年 3 月期中に連結の計画):数量 190(年間販売台数(万台))× 価格 11(1 台あたりの売上(万円。物価の指数で伸びる))→ 売上 2,090 億円・営業利益 0 億円
倍率:ROE 3.8%(純利益 83 億円 ÷ 自己資本 2200 億円)の谷の利益。構造的に優良さを失う筋書きで、やや悲観の PER 9.7 倍より低い 7.8 倍(その 8 割)に置いた。売って得る資産の床は、家賃の約束・借入・減損を引くと小さいので別に立てない(従来の判断のまま)。
確率:携帯店が構造的に細り、日立が重荷になる。構造的な負けで、確率は 1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
キャリアショップ運営(ドコモ・au などの販売代理店)
ドコモ・au などの携帯ショップを直営とフランチャイズで運営し、契約の手数料と端末の販売で稼ぐ。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたりの売上(億円。物価の指数で伸びる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 937 | 4.24 | 3,970 | 265 |
| 10 年後 中立 | 980 | 5.17 | 5,066 | 319 |
取り方:売上は約 3,970 億円、店数は 937 店(2026 年 3 月期)。1 店あたり約 4.2 億円。営業利益は開示の経常利益 269 億円から営業外を除いた約 265 億円と置いた(推定)。店数は携帯会社の店舗縮小とノジマの買い増しの差し引きで、中立は 10 年で 5% 増。1 店あたりの売上は、手数料を携帯会社が決めるので物価(1.34 倍)には届かず 1.22 倍と置いた。
デジタル家電専門店(店舗とネット通販)
「ノジマ」の店舗約 240 店とネット通販で、パソコン・美容家電・白物家電などを売る。
| 数量年間の会計件数(百万件) | 価格1 会計あたりの売上(物価の指数で伸びる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.3 | 30,000 | 3,399 | 205 |
| 10 年後 中立 | 11.2 | 40,200 | 4,502 | 248 |
取り方:売上 3,399 億円を 1 会計約 3 万円(推定)で割って約 1,130 万件。営業利益 205 億円は全社の 581 億円から携帯・VAIO・その他を引いた推定。件数は人口減とシェア増の差し引きで、中立は 10 年で 1% 減。1 会計の金額は物価並みの 1.34 倍。
プロダクト(VAIO のパソコン)
パソコン VAIO の開発・販売。法人向けが中心。
| 数量年間販売台数(万台) | 価格1 台あたりの売上(万円。物価の指数で伸びる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 85.0 | 7.88 | 670 | 47 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 9.85 | 788 | 43 |
取り方:売上 670 億円を 1 台約 7.9 万円(推定)で割って約 85 万台。営業利益 47 億円は開示の経常利益 49 億円から置いた。2026 年 3 月期は Windows 10 の終了による買い替えで膨らんだ年で、台数は中立で 10 年に 6% 減。パソコンは部材の値段で価格が決まりやすく、1 台あたりは 1.25 倍と置いた。
その他(ニフティ・セシール・メディア・バイオ・海外)
接続サービスのニフティ、通販のセシール、ストリートホールディングスなどのメディア、バイオ、マレーシア・シンガポールの海外事業。
| 数量年間の取引・契約件数(百万件) | 価格1 件あたりの売上(物価の指数で伸びる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.9 | 15,000 | 1,789 | 80 |
| 10 年後 中立 | 11.7 | 20,100 | 2,350 | 113 |
取り方:売上は全社 9,828 億円から上の 3 つを引いた約 1,790 億円。1 件あたり約 1.5 万円(推定)で割って約 1,190 万件。営業利益 80 億円は推定。件数は立て直しの途上で、中立は 10 年で 2% 減。1 件あたりは物価並みの 1.34 倍。
日立家電(買収予定。2027 年 3 月期中に連結の計画)
日立グローバルライフソリューションズの家電事業(冷蔵庫・洗濯機など)を引き継ぐ新会社の 80.1% を取得する計画。国内と海外の日立ブランド家電を 1 社にまとめる。
| 数量年間販売台数(万台) | 価格1 台あたりの売上(万円。物価の指数で伸びる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 10 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 270 | 13 | 3,510 | 176 |
取り方:2026 年 3 月期の連結には入っていないので now は 0。日立 GLS の 2025 年度の売上収益は 3,608 億円(空調の事業を含む全体。家電だけの数字は未開示)。家電だけで年 270〜280 万台・1 台約 10 万円(推定)、営業利益率 5%(推定)として筋書きを置く。1 台あたりは中立で 1.30 倍。
リスクと懸念
携帯の手数料と店の先細り
利益の半分近くが携帯の代理店にある。手数料は携帯会社が決め、携帯会社は手続きをネットに寄せて店を減らす方向にある。取り分が 1 割削られれば、全社の利益に響く。店を買い増しても、1 店あたりの稼ぎが細れば追いつかない。
日立の統合と資金
日立の家電事業を約 1,100 億円で取得する。家電単体の売上と利益は開示が乏しく、実力が見えにくい。ほかの量販店が日立の売り場を絞る恐れもある。自己資金で払うと純現金は消え、借金が生まれる。失敗はのれんの減損として表に出る。
パソコン特需の反動
VAIO の売上は、Windows 10 のサポート終了による買い替えで大きく膨らんだ。需要が一巡すれば台数は落ちる。2026 年 3 月期の利益の一部は、一時の追い風だった可能性がある。デジタル家電の店でもパソコンの比重は高い。
ネット通販と価格の透明化
家電の EC 化率は 4 割を超え、価格はすぐ比べられる。店が試す場所になれば、客数と粗利が同時に落ちる。ノジマは接客で単価を保つが、その接客は人件費という重い固定費に支えられている。
人件費と家賃の固定費
人件費は年に 100 億円ほど増え、新卒は 1,000 人超を採る。店の家賃も、売上が落ちても払う固定の約束だ。景気が悪くなると、売上が落ちても費用は減らず、利益率が一気に下がる。新リース会計で、借金のように貸借対照表にも載る。
立て直し中の周辺事業
ニフティは営業力に課題があり、セシールは回復の途上にある。ストリートホールディングスなどのメディアも、買収したばかりで成果はこれからだ。買い重ねた事業の立て直しが遅れると、本業の利益を食う。
買収に頼る成長と創業者への依存
ノジマは買って育てる会社で、成長の多くを買収が作ってきた。創業者の野島廣司氏が筆頭株主で、経営の判断にオーナーの色が濃い。判断が当たれば強みだが、大型案件で外すと取り返しにくい。指名委員会等設置会社として統治は整えている。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期に営業利益 590 億円を超え、携帯店の純増が続く
- 携帯の取り分が保たれていると確かめられ、強気側の確率が上がる。10 年の見立ては上向く。
- 日立の家電事業の損益が開示され、営業利益率が 6% を超える
- 買収が利益の柱を増やしたとわかり、日立を高く置く筋書きの確率を上げる。
- 日立の家電が他の量販店の売り場から外れ始める
- 買収の価値が崩れ始めたと判断し、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 携帯会社が代理店の手数料を引き下げる、または店舗を大きく減らす
- 利益の 5 割近くを占める稼ぎの前提が崩れる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 自社株買いと増配が進み、自己資本が積み上がらない
- ROE の低下が和らぎ、倍率を 1〜2 倍高く置ける。
- パソコンの特需が剥がれ、VAIO の売上が 3 割以上落ちる
- 一時の利益が削られ、平常の力の見立てを下げる。
見ておくもの
- 携帯代理店の店数と 1 店あたりの利益
- 携帯会社の代理店手数料の改定
- デジタル家電の既存店売上と客数
- 日立の家電事業の売上・利益と、他の量販店での取り扱い
- VAIO の販売台数(特需の反動)
- 配当・自社株買いと純有利子負債
- ニフティ・セシールの黒字化
- 新リース会計での数字の変わり方
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価ではなく、その時点の ROE と資本コスト 7.75%(基本 7.5% に品質の調整 +0.75%)から、式の上限に対し中立で 9.3 割、やや楽観・楽観で 9 割弱に置いた。ROE が k を上回る筋書きの PER は、1÷k の約 12.1 倍を下限にした。今の株価と PER は根拠にしていない。
今の純現金 328 億円は時価総額の 1 割に届かず、日立の買収で消えるので、余った現金は立てていない。10 年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた。新リース会計(2028 年 3 月期から)で営業利益が少し増え、純有利子負債がリース負債の分だけ増える点は、比べる時に注意が要る。
日立家電の売上・利益は開示が無く、台数 × 単価の推定で置いた。セグメントの営業利益も、開示の経常利益(携帯 269 億・VAIO 49 億)以外は、全社から逆に割り振った推定だ。悲観は市場の値付けでなく、稼ぐ力(純利益 ÷ k)に見合う床で置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75% を足した 8.25%。個別のリスク(日立の統合・携帯手数料の引き下げ)は k に足さず、筋書きの利益率と確率に入れた。赤字や存続の疑いは無いので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。