結論
コーナン商事は、関西と首都圏を地盤にホームセンターを約670店展開する。職人向けの「PRO」業態と、自社企画品(PB)が強みだ。売上は5,000億円を超え、国内ではカインズに次ぐ規模にある。
筆者の結論は「やや割高」だ。理由は、稼ぎの薄さと借金の重さにある。営業利益率は4%台で、ROEは7%台。資本コスト7.5%に届かない。店を増やしても、価値はあまり増えない。
追い風はある。2026年3〜5月は石油由来商品とエアコンの特需で営業利益が4割増えた。ただ、これは一時的な要素が大きい。中計の最終年度(2028年2月期)は、売上5,600億円・営業利益290億円を掲げる。10年先の中立は、店が740前後に増え、営業利益は370億円と置いた。
今年はバローHDと持ち合い、アレンザHDの共同運営にも乗り出した。物流と調達を束ねる狙いは筋がよい。一方で、買収の費用が約250億円かかり、借金は増える。リースの家賃も固定費として重い。
10年の純利益は180億円前後、PERは10倍。還元を足して資本コストで割り戻すと、今の時価総額を1割ほど下回る。構造的に負ける筋書きは厚めに見ておく。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、買って持ち続けたい会社の条件は、強い堀と、少ない資本で稼ぐ力、割安な値段の三つだ。コーナンは、どれも中程度にとどまる。
事業は10年先も残るだろう。住まいと仕事の道具を売る店は、人口が減っても消えない。ただ、利益は薄い。ROEは資本コストに届かず、稼いだ利益を新店に再投資しても、価値はあまり増えない。借金の重さも、安全域を狭くする。資本の配り方は、店の新設とバローHDとの持ち合いを見る限り、まじめだが大胆ではない。
評価できるのは、PROという職人向けの専門性と、還元の姿勢だ。ベトナムやバローHDとの提携は、将来の芽にはなるが、まだ数字に出ていない。
結論として、10年の中立は今の値段とほぼ等しく、確率で重みづけると1割ほど下回る。割安とは言えず、安全域は薄い。借金の多い会社に払う値段は、慎重に置くべきだと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、関西・首都圏・九州などに広がる「ホームセンターコーナン」だ。DIY用品、園芸、日用品、資材、家電まで幅広く売る。売場の大きい郊外店が主力で、既存店は2026年2月期に前年比99.6%とほぼ横ばいだった。
成長の軸は「PRO」業態だ。大工・工務店・設備業者など職人向けに、資材と工具を専門に扱う。一般客より買う量が多く、来店も定期的になる。会社は3年で86店を新設し、居抜き物件も使って投資を抑える計画を掲げる。2028年までにPROを軸に売上600億円を上積みする。
PB(自社企画品)は売上の35.7%、約1,545億円(2026年2月期)。中計では約4割強まで高める。PBは粗利率が高く、利益の質を決める要だ。自社EC(法人向け・個人向け)やアプリ会員の拡大も進め、店舗とネットを組み合わせる。
そのほか、ベトナムで店を展開し、2018年からはホームインプルーブメントひろせと提携してきた。2026年2月には、バローHDとの資本業務提携に基本合意した。アレンザHD(東北・中部・中国のホームセンター)をコーナンが公開買い付け(TOB)で取得し、バローと共同で運営する。コーナンは持分法の関連会社として、売上は連結しない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、PROと立地の厚みにある。職人向けの品ぞろえと在庫は、郊外の一般店よりまねしにくい。ただ、カインズ、DCM、コメリなど規模の近い競合が多い。値段を自分で決められるほどの堀ではない。
資本効率は冴えない。ROEは直近7.1%、営業利益率は4.3%と、過去10年でも低い方にある。2021年2月期の巣ごもり需要で営業利益率は7.0%まで上がったが、そこから戻った。今の稼ぎが特別に強いわけではない。
財務は軽くない。純有利子負債は自己資本を上回る約1,700億円で、自己資本比率は34%だ。アレンザHDの取得とバロー株の取得で、さらに約250億円が出ていく見込みだ。借り換えの金利が上がれば、利益が削られる。
店舗の多くは賃借とみられ、家賃は売上の3%前後(概算)と見ている。景気が悪くなっても家賃は減らない。2028年2月期から新リース会計で借入に近い形で貸借対照表に載り、見かけの自己資本比率は下がる。
よい点もある。累進配当(減らさず増やす)と総還元性向40%以上を掲げ、配当は増配を続ける予定だ。経営が資本を意識していることは確かだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ホームセンター市場は国内で約3.4〜4兆円。人口減とリフォーム需要の鈍さで、数量は伸びない。成長は店の新設と、客単価、PBの比率が決める。上位はカインズ(約5,700億円・非上場)、コーナン(約5,200億円)、DCM(約5,400億円)、コメリ(約3,900億円)が並び、寡占化の途中にある。
競争の中心は価格と品ぞろえだ。ドラッグストア、ニトリ、ネット通販が日用品・家具・家電を削る。ホームセンターが強いのは、資材、工具、園芸、ペットなど、かさばる商品だ。職人向けのPROは、ネットと近隣店が入りにくい。
業界は再編に向かっている。DCMは、ケーヨーとエンチョーを取り込んだ。コーナンも、バローHDと組み、アレンザHDの運営に加わる。調達と物流を共同でやる動きが、各社の利益率を分ける。コーナンは、東北・中部・中国に強いアレンザHDと、地域が重ならない点が強みだ。
足元の追い風は、石油由来商品の需要増とエアコンの買い替えだ。ただ、これは一時の特需で、10年の物差しには使えない。筆者は、数量は実質で横ばい、価格は物価並みという前提を置く。
資本政策と M&A
還元は、累進配当と総還元性向40%以上が基本だ。配当は2027年2月期も増やす予定だ。自社株買いも行い、発行済株式の約19%が自己株になっている。
M&Aは今が節目にある。バローHDとは2026年7月に株を持ち合った(コーナンがバロー株を約30億円、バローがコーナン株2.07%)。アレンザHDのTOBで、コーナンの負担は概算で約220億円とみる。物流と調達を束ねる目的は合理的だが、持分法のため利益は小さく、借金だけが先に増える。
資本の使い方は、店の新設と、提携先への出資に向かう。投資の見返りが資本コストを超えるかどうかが、今後の評価を決める。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
PROは職人の定期的な需要を持ち、ネットとドラッグストアに奪われにくい。3年で86店、売上600億円を上積みする計画は、居抜き活用で投資も軽い。PBの比率も4割強へ高まり、粗利率が上がる。
2026年3〜5月は営業利益が42.8%増えた。特需の要素はあるが、値引きに頼らず売れる商品構成になりつつある。中計の営業利益290億円(売上5,600億円)は、今の230億円の予想から射程に入る。
バローHDとの持ち合いも前向きだ。アレンザHDを含めた3社で物流センターを共同利用し、調達を束ねれば、販管費率は下がる。食品スーパーと一緒に出店する案件も進んでいる。ホームセンター業界の再編で、コーナンは仕掛ける側に立つ。
さらに、物価3%の世界では、売場面積の大きい店舗や、土地・建物の含み益の価値が上がる。営業利益率が過去の平均の5%台に戻るだけで、10年後の利益は今の1.6倍になる。配当は累進で、還元も続く。
慎重な見方
数量は増えない。人口減の中で、既存店は2026年2月期も99.6%で横ばいだ。店の新設の売上600億円は、3年間の累計にすぎず、年にすると200億円。売上5,200億円の4%足らずだ。
営業利益率は4%台で、ROEは7%にとどまる。資本コスト7.5%を下回る稼ぎで、店を増やすほど、価値は減る可能性すらある。今期の増益は、中東情勢による石油由来商品の特需とエアコンの駆け込みで、続かない。
借金は自己資本を上回る。アレンザHDとバロー株の取得で、約250億円の資金が出る。金利が上がれば、利払いが利益を削る。賃借の店舗は、不況でも家賃が減らない。
競争も厳しい。カインズは規模が上で、ニトリ、ドラッグストア、ネット通販が日用品を取りに来る。アレンザHDは持分法の関連会社で、利益は小さく、バローHDが過半数を握る。コーナンが主導できない可能性が高い。
特需で上がった今期の営業利益率を、10年の物差しにしてはならない。直近のROEは7%まで下がり、稼ぐ力は低下の途中にある。借金が重い会社が、金利の上がる世界で利益を伸ばすのは難しい。
どちらに重みを置いたか
追い風は確かにあるが、稼ぎの薄さと借金の重さが、それを上回ると見る。10年の中立は、店が740前後に増えても、営業利益率4.8%、ROE7%どまりだ。資本コスト7.5%に届かない会社の倍率は、上限の1÷k(12.5倍)を超えない。
確率は、慎重な側に少し寄せた。やや悲観を27%、悲観を13%と置き、楽観は6%とした。特需の増益は続かないと見て、強気の見方には厚みを持たせなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 7,051 円2,037 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,089 円604 億円)。 今の値に割り戻すと 4,876 円1,409 億円、今との差 +3.8%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 14,946 円4,318 億円 | 3,116 円900 億円 | +284.3% | +14.4% | 1,084 円313 億円 |
| やや楽観 | 17% | 11,247 円3,249 億円 | 2,769 円800 億円 | +198.2% | +11.5% | 2,383 円688 億円 |
| 中立 | 37% | 8,328 円2,406 億円 | 2,423 円700 億円 | +128.7% | +8.6% | 3,978 円1,149 億円 |
| やや悲観 | 27% | 3,434 円992 億円 | 1,731 円500 億円 | +9.9% | +0.9% | 1,394 円403 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,800 円520 億円 | 519 円150 億円 | −50.7% | −6.8% | 302 円87 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,051 円2,037 億円 | 2,089 円604 億円 | +94.5% | +6.9% | 9,140 円2,640 億円 |
今の株価時価総額 4,700 円1,358 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:PROと提携が効き、利益率が6%に届く 利益 280 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 14,946 円4,318 億円
PROが全国に広がり、職人向けの定期的な需要が客数を支える。店は830まで増え、1店当たりの売上は物価を上回って伸びる。PBの比率が4割を超え、粗利率が上がる。バローHD・アレンザHDとの物流・調達の統合も進み、販管費率が下がる。営業利益率は6.0%まで上がり、中計の目標を超える。借金は利益で返し、還元を続けながら自己資本も増える。ただ、カインズなどとの競争は続き、過去最高の7.0%には届かない。この筋書きでは、10年の純利益の合計は約2,000億円に達し、還元と借金の返済を両立できる。アレンザHDの運営もバローHDとうまく分担し、持分法の利益が少しずつ育つ。
- ホームセンター事業(コーナン・PRO・ベトナム等):数量 830(店舗数(店))× 価格 11(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 9,047 億円・営業利益 543 億円。営業利益率6.0%
倍率:事業の純利益 280 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍。全体の PER 15.42 倍、時価総額 4,318 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:楽観が重なる確率は低い。PBの比率の上昇、PROの出店、バローHDとの調達の統合がすべて当たる場合に限る。
やや楽観 17% やや楽観:中計に近い形で進む 利益 228 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 11,247 円3,249 億円
店は790まで増え、PROと居抜きの出店は計画に近い形で進む。PBの比率は4割強に高まり、粗利率はわずかに改善する。営業利益率は5.4%となり、中計の5.2%をやや上回る。アレンザHDとの提携は、物流の共同利用でコストが少し下がる程度。借金は増え続けず、利払いは営業利益で十分まかなえる。ROEは8.5%と資本コストをわずかに上回るが、新しく出す店の稼ぎは先で薄れる。この筋書きでは、中計の最終年度の営業利益290億円に近い水準を、10年のうちに定着させる。ただ、その先の伸びは物価並みで、利益率の大きな上振れはない。
- ホームセンター事業(コーナン・PRO・ベトナム等):数量 790(店舗数(店))× 価格 11(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 8,414 億円・営業利益 454 億円。営業利益率5.4%
倍率:事業の純利益 228 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.25 倍、時価総額 3,249 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の方向性は妥当で、PBとPROは進捗が見える。ただ、利益率の改善には時間がかかる。
中立 37% 中立:店は増えるが、利益率は低いまま 利益 180 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 8,328 円2,406 億円
店は740まで増え、新店の売上は伸びる。ただ、人口減で既存店は実質で横ばい、1店当たりの売上は物価並みにしか伸びない。営業利益率は4.8%と、過去の平均よりやや低く、中計の5.2%には届かない。借金は増え、金利上昇で利払いが重くなる。PBの比率は高まるが、競争で粗利率の改善は小さい。ROEは7%台にとどまり、資本コストの8%に届かない。バローHDとの提携は、小さなコスト減にとどまる。この筋書きでは、10年間の純利益の合計は約1,550億円、還元は約700億円。残りが自己資本に積み上がり、借金は大きくは減らない。今の稼ぐ力が、そのまま物価分だけ伸びる形になる。
- ホームセンター事業(コーナン・PRO・ベトナム等):数量 740(店舗数(店))× 価格 10(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 7,733 億円・営業利益 371 億円。営業利益率4.8%
倍率:事業の純利益 180 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 2,399 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店を増やしても利益率は上がらず、借金が残る中心の筋書き。慎重な見方をやや重く見て、最大の確率とした。
やや悲観 27% やや悲観:競争で利益率が下がる 利益 104 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 3,434 円992 億円
店は700まで増えるが、ドラッグストア・ニトリ・ネット通販に日用品を削られ、既存店の客数が減る。1店当たりの売上は物価に届かず、営業利益率は3.5%まで下がる。賃借の店舗の家賃は減らず、人件費も物価で上がる。アレンザHDは持分法で小さな利益しか生まず、借金だけが増える。利払いが重く、純利益は100億円程度になる。配当は維持するが、自己資本の積み上がりは遅い。この筋書きでは、中計の目標は未達に終わり、営業利益は今の水準を下回る年が続く。PROの出店も、立地選びを誤った店の閉鎖が出て、純増は小さくなる。
- ホームセンター事業(コーナン・PRO・ベトナム等):数量 700(店舗数(店))× 価格 9.75(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 6,825 億円・営業利益 239 億円。営業利益率3.5%
倍率:ROE 4.1%(純利益104億円÷自己資本2,514億円)。資本コスト7.5%を大きく下回り、新しく投じるお金は価値を生まない。上限は1÷k=12.5倍だが、利益率が薄く借金も重いので、上限の約6割の8.0倍に置いた。
確率:ホームセンターは競争が激しい。借金が重く、特需も続かないので、慎重な見方にはかなり厚みを持たせた。
悲観 13% 悲観:構造的に競争で負け、借金だけが残る 利益 14 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,800 円520 億円
カインズなどとの価格競争に敗れ、PROも他社に模倣される。店は640まで減り、1店当たりの売上は物価に届かず、営業利益率は1.5%まで落ちる。賃借の家賃は固定費として残り、利益を圧迫する。アレンザHDの統合は期待外れに終わり、減損が出る。借金の借り換えで、利払いが営業利益を超える。自己資本は減損で減り、配当は大きく下がる。残るのは、売れる土地・建物の価値だ。この筋書きでは、10年の純利益の合計は100億円程度にとどまる。配当は大きく削るが、それでも利益では賄えず、土地・建物の売却や借入で払う分が出る。
- ホームセンター事業(コーナン・PRO・ベトナム等):数量 640(店舗数(店))× 価格 8.90(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 5,696 億円・営業利益 85 億円。営業利益率1.5%
倍率:ROE 1%未満と谷の利益で、稼ぐ力(事業の純利益÷k)は小さい。土地・建物など売れる資産の税後から借金を引いた約500億円(floor_assets_oku、概算)を床とし、今の自己資本1,734億円に対するPBR 0.30倍で測った。リースの家賃は固定費として残る。EVでも見た結果、EV(時価総額+純有利子負債約1,930億円)は谷の営業利益の20倍を超えて見えるが、利益が薄い年の倍率に意味はなく、借金を引いた後に残る資産で見た。
確率:ホームセンターの競争・借金・M&Aの失敗が同時に重なる複合の筋書き。10年では無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ホームセンター事業(コーナン・PRO・ベトナム等)
関西・首都圏・九州を中心に、DIY・資材・園芸・日用品を扱うホームセンターとPRO業態、ホームインプルーブメントひろせ、ベトナム店を含む全店舗。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 669 | 7.77 | 5,198 | 224 |
| 10 年後 中立 | 740 | 10 | 7,733 | 371 |
取り方:店舗数は669店(業界の比較資料に基づく概算で、直近の開示で確かめていない)。営業収益5,198億円を店数で割ると、1店当たり約7.8億円になる。区分は1つで積む。店数は実質の量。今後の1店当たり売上は、客数が人口減で横ばいと見て、物価の上昇分(10年で1.34倍)を乗せ、PROの客単価の上昇を少し加えた。営業利益率は2026年2月期の4.3%が出発点。
リスクと懸念
借金と金利
純有利子負債は自己資本を上回る約1,700億円で、アレンザHDの取得とバロー株の取得で、さらに約250億円が出る。借り換えで金利が上がれば、利払いが利益を削る。景気が悪くなると、返済の余裕が小さくなる。
薄い利益率
営業利益率は4%台で、ROEは資本コスト8%に届かない。店を増やしても、稼ぎが資本コストを超えなければ価値は増えない。特需が消えれば、利益は元の水準に戻る。
アレンザHD・バローHDとの提携
アレンザHDは持分法で、利益は小さく、取締役の指名権もバローHDが多い。コーナンが主導できず、投資が回収できない可能性がある。統合の効果が出るまでに時間がかかる。
競争の激化
カインズなどの大手と、ドラッグストア、ニトリ、ネット通販が、日用品・家具・家電を取りに来る。値段を自分で決められず、粗利率が下がるリスクがある。
賃借の店舗の固定費
家賃は売上の3%前後(概算)と見て、景気が悪くなっても減らない。2028年2月期から新リース会計で貸借対照表に載り、見かけの自己資本比率が下がる。
特需の反動
2026年3〜5月の増益は、中東情勢による石油由来商品の需要と、エアコンの駆け込みが大きい。次の期に反動が出れば、通期予想の達成に響く。
新店の採算
3年で86店の出店は、居抜きでも新店の売上が立ち上がるまで時間がかかる。立地を誤れば、既存店を食い合い、減損が出る。
今後の分かれ目
- PROの新店が計画を上回って立ち上がり、営業利益率が5%を超えたら
- やや楽観側の確率を上げてよい。中計の営業利益290億円が現実味を持つ。
- PBの構成比が4割を超え、粗利率が上がったら
- 利益の質が上がり、中立の倍率をわずかに引き上げる余地が出る。
- 特需が剥がれ、既存店の売上が前年を割り続けたら
- 中立の数量と利益率を下方修正し、やや悲観側に寄せる。
- アレンザHDで共同の物流・調達の効果が数字に出たら
- 提携の価値を見直し、やや楽観側に寄せる。出なければ、借金だけが重い会社として見る。
- 金利が想定を超えて上がり、借り換えの利払いが利益を削ったら
- 悲観側の確率を上げる。
- 業界の再編が進み、カインズの規模が突出したら
- 価格競争が強まり、やや悲観側に寄せる。
見ておくもの
- 既存店売上高(月次)と粗利率
- PROの新店数と売上
- PBの売上構成比
- 純有利子負債とEBITDA倍率
- アレンザHD・バローHDとの共同調達の進捗
- 営業利益率(中計290億円・5.2%)
倍率と資本コストの決め方
店舗数(実質)×1店当たり売上(物価込みの名目)で積み、今の株価からは置かなかった。倍率は、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限(k 7.5%)を、ROEが資本コスト以下の中立では1÷kの8割に置いた。悲観は、稼ぐ力と売れる資産の税後から置いた。新リース会計で2028年2月期から数字の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ、家賃を営業費用に入れた形でそろえた。アレンザHDの取得による約250億円の資金流出は、純負債と利払いに入れ、持分法の利益は小さいので入れていない。今の値段に寄せていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.7→15.42 倍・やや楽観 PER 11→14.25 倍・中立 PER 10→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%に、借金の分として+0.5%を足した8.0%。純負債がEBITDAの3倍を超え、アレンザHDの取得で約250億円が加わる。堀・寿命・循環は普通と見て、他は足さない。事業は傾いていないので、上乗せ(extra)は置かない。M&Aの実行のリスクは、k に足さず筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。