結論
ワッツは「Watts」「Watts with」を中心に、全国約1,950店を展開する100均の4番手だ。売上は645億円、営業利益は16億円。2026年8月期は営業利益が16%増え、純利益は31%増と、利益が戻る局面にある。
筆者の結論は「適正」だ。割安と言い切れるほどの余裕はない。良い点は2つある。利益率は2.6%と、かつての5%から半分に下がったままで、戻る余地が残っている。会社が配当を増やし、自社株買いにも動いたことも支えだ。
ただし、安全ではない。店の家賃は毎年必ず払う約束で、店舗数は1,900を超える。利益の戻りが続くかどうかは、人件費の上昇をどこまで商品構成の改善で吸収できるかにかかる。売上が落ちても家賃は落ちない。100均の価格は百円という看板に縛られ、人件費の上昇を売値に乗せにくい。
筆者は、中立の10年で営業利益が23億円、利益率2.6%を保つと見る。会社の目標(2035年に営業利益50億円)には届かない。それでも今の値段は、この中立の稼ぎでほぼ説明できる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、100均は「安さで来店を作る、薄利多売の小売」だ。堀は小さく、ブランドも強くない。それでも、毎日使う雑貨を安く売る需要は景気に強く、10年後もこの形の店は残る。
オーナー利益で見ると、投資が軽いのが救いだ。設備投資は売上の1.5%ほどで、利益の大半は株主に返せる。配当と自社株買いを合わせれば、利益の4割ほどが戻っている。
弱みは、家賃という固定の約束だ。現金が厚いように見えても、店舗1,900の賃料は毎年出ていく。売上が落ちる局面で家賃が重くなり、利益が一気に消える。純現金28億円は、この約束を考えると安全域とは呼べない。
経営は、不採算店の撤退と海外の整理で、資本を絞る方向に動いている。これは評価できる。ただ、利益率の目標(5%)は過去に一度達成しただけで、再現できる証拠はまだ薄い。筆者は、目標を信じず、会社が実際に出した2026年の数字を土台にした。
何で稼ぐ会社か
事業は店舗運営が中心だ。国内100均の売上は604億円で、全体の94%。期末の直営店は1,925店。1店あたりの売上は約3.1億円で、既存店売上は前期比4%増えた。百円の商品に加え、二百〜五百円の中価格帯を広げ、粗利を保つ。
国内のその他は売上35億円。雑貨店のBuona Vita(10店)と、ディスカウントストア「リアル」(8店)がある。靴下やアクセサリーが好調で、リアルはセルフレジで効率化を進める。
海外は売上6億円。中国の店は全店を閉じ、ペルーの子会社も2026年7月に売却した。直営をやめて、東南アジアを中心に30か国以上へ卸す形に変えている。
店の運営は人に頼る。連結の従業員は418人だが、臨時従業員が年平均2,800人いる。売上のおよそ1割は、FCや卸の売上だ。
仕入れは国内のメーカーと問屋から円建てで行う。仕入先の多くは海外から輸入した商品を扱うため、為替の影響は間接的に及ぶ。売上総利益率は約39%、販管費率は約36%と、利益は薄い差の積み重ねである。出店は年に約160店、退店は約100店で、入れ替えながら店を増やす。
優良さと弱いところ
強みは、立地を選べる小型店の運営力と、安い単価で来店理由を作る力だ。駅前や商店街の小型店、郊外のロードサイド型、リアルなど、場所に合わせた店を出せる。不採算店を閉じて、利益の出る店を残す仕組みも動いている。
弱みは、規模で競合に劣ることだ。ダイソーは100均市場の6割を占め、セリアは売上でその3分の1強。ワッツはその下の4番手で、仕入れ量の力は小さい。値決めも百円という看板に縛られ、値上げの手段は二百円以上の商品を増やすことに限られる。
財務は、自己資本比率47%、現金62億円。ただし、決算日が金融機関の休みだった影響で、前期末の現金は31億円ほど振れた。有利子負債は33億円(リース債務を含む)で、純現金は見かけほど厚くない。家賃の約束は、これとは別にある。
利益の質は低い。ROEは過去10年の中央値で7%。営業利益率は2012〜2013年の5.0%から、2023年の1.1%まで落ち、いまは2.6%まで戻した。回復の持続が問われている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
100均の市場は、2025年度に約1.1兆円。3年連続で1兆円を超えた。前年比の伸びは2.7%で、前の年の6.8%から鈍っている。大手4社の店舗数は約8,900店で、10年で3,000店増えた。成長の源は、百円より高い商品の拡大、つまり「脱・百円」だ。
一方で、店舗網は飽和に近づいている。ダイソーが約3,800店、セリアとキャンドゥ、ワッツが続く。出店は都市部の小型店や、郊外のロードサイドが中心だが、立地の取り合いが激しい。
費用の面では、最低賃金の上昇が最も重い。店を支えるのは臨時従業員で、賃金は物価以上に上がる。家賃も上がる。売値は百円の看板に縛られ、中価格帯の商品構成を上げ続けないと、利益率が保てない。
競合の動きを見ると、セリアは利益が大きく伸びる一方、キャンドゥは原材料高と人件費で減益だ。同じ100均でも、商品力と店の効率で差が開いている。物流の2024年問題以降、配送費も上がり続けており、小口の多店舗配送を行うチェーンは特に影響を受ける。ワッツは商品の独自性が弱く、価格競争に巻き込まれやすい。
資本政策と M&A
還元は拡大している。2026年8月期の配当は、普通配当と特別配当を合わせて前期より増やし、2027年8月期も同水準を予想する。配当性向は3割前後。2026年10月に最大4億円の自社株買いを始め、初日に約1.55億円を買った。取得した株の一部は消却する予定だ。
株主優待も再開した。8月末に200株以上を持つ株主へ、千五百円相当の防災グッズを贈る。2026年分のみの公表で、年間の費用は1億円に届かない小額とみて、還元には足さない。
投資は年10億円台と小さく、新店の出店が中心だ。海外は撤退し、のれんなどの大きな買収はない。カシオペアという会社が議決権の15%を持つ筆頭株主で、長期保有の安定株主とされる。TOBは出ていない。
会社の目標は、2029年8月期に売上700億円・営業利益23億円、2035年8月期に売上1,000億円・営業利益50億円。10年の還元は、利益が増える中立で55億円とした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026年8月期は、営業利益が16%増え、純利益が31%増えた。既存店売上は4%増で、店舗数も1,951まで増えた。利益率が2.6%まで戻ったのは、不採算店を閉じ、二百円以上の商品を広げた結果で、構造が変わり始めている。
会社は、2029年8月期に営業利益23億円、2035年に50億円という目標を掲げた。海外は赤字の直営をやめ、卸に転換して損益を整えた。身軽になった今、国内の出店と商品の改善に集中できる。
還元も変わった。配当に特別配当を加え、自社株買いを始め、優待も再開した。株価に対する配当利回りは3.5%を超え、同業の中で最も高い。
財務は自己資本比率47%で、借入も小さい。ダイソー、セリアに続く4番手でも、1,900店の網は簡単に作れない。立地の確保と、ローコスト運営の実績がある。
さらに、最低賃金の上昇は競合にも同じように効く。大手が出せない小型店で勝てる。さらに、中価格帯の商品が増えるほど、1店あたりの売上と粗利が上がる。会社の目標が達成できなくても、今の利益率が維持できれば、現在の値段は十分に説明がつく。
慎重な見方
100均の市場は伸びが鈍り、店舗数は飽和に近づいている。成長の源は、百円より高い商品への「脱・百円」だが、これは100均の看板そのものを薄める。高い価格帯は、ニトリや無印、ドラッグストアの雑貨と直接ぶつかる。
利益率2.6%は、2012年の5%から半分のまま。最低賃金の上昇、家賃の上昇、物流費の上昇が続き、売値を上げにくい構造では、利益率はいつでも1%台に戻る。2023年8月期は営業利益が4割減り、利益率は1.1%まで落ちた。
家賃は固定の約束だ。1,900店分の賃料は、利益の何倍にもなる。売上が1割落ちれば、利益はほぼ消える。現金が厚く見えても、この約束を考えれば安全域はない。
会社の目標(2035年に営業利益50億円)は、今の3倍。過去の目標も達成できなかった。仕入れの規模はダイソーやセリアに劣り、商品の独自性も弱い。価格競争に巻き込まれると、4番手は最初に傷む。さらに、100均の店は人手に頼る運営で、採用難と時給の上昇が続く限り、店の運営コストは下がらない。会社の海外戦略も撤退続きで、成長の柱が見えにくい。
どちらに重みを置いたか
足元の利益の戻りと還元の拡大では、強気の見方に分がある。しかし、家賃という固定費と、百円の看板に縛られた値付けは、慎重な見方が重い。10年の中立は、営業利益を23億円、利益率を今と同じ2.6%に置いた。会社の目標には届かない。確率は、やや悲観を26%と厚めにして、利益率が1%台に戻る筋書きを残した。利益の戻りは評価したが、目標の達成は織り込まなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 1,383 円181 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 390 円51 億円)。 今の値に割り戻すと 924 円121 億円、今との差 +22.5%、 期待の年率 +8.9%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,923 円382 億円 | 613 円80 億円 | +369.0% | +16.7% | 283 円37 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,107 円275 億円 | 498 円65 億円 | +245.5% | +13.2% | 469 円61 億円 |
| 中立 | 38% | 1,560 円204 億円 | 421 円55 億円 | +162.7% | +10.1% | 753 円98 億円 |
| やや悲観 | 26% | 592 円77 億円 | 306 円40 億円 | +19.2% | +1.8% | 234 円31 億円 |
| 悲観 | 10% | 230 円30 億円 | 115 円15 億円 | −54.3% | −7.5% | 34 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,383 円181 億円 | 390 円51 億円 | +135.1% | +8.9% | 1,773 円231 億円 |
今の株価時価総額 754 円98 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 脱・百円が定着し、利益率が4%へ 利益 27 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 2,923 円382 億円
二百〜五百円の商品が定着し、客単価が物価を上回って伸びる。店舗は1割増え、立地の良い小型店が増える。不採算店の整理が進み、1店あたりの売上が上がる。利益率は4%まで戻り、会社の2035年の目標(営業利益50億円)の8割に届く。海外卸も東南アジアで伸び、損益が黒字になる。ドラッグストアや雑貨店との競合には、品揃えと価格の両面で勝つ。配当と自社株買いは利益に合わせて増える。この筋書きでは、家賃の負担も売上の伸びで薄まり、固定費率が下がる。会社の目標に近い成果で、10年の間に利益の水準が一段上がる形になる。
- 国内100均(Watts・Watts with など):数量 2.2(直営店舗数(千店。期末))× 価格 433(1千店あたり売上(億円・名目。卸売を含む))→ 売上 934 億円・営業利益 37 億円。店舗1.12倍、営業利益率4.0%
- 国内その他(Buona Vita・リアル)と海外:数量 27.3(店舗・卸売拠点の換算数)× 価格 2.61(1拠点あたり売上(億円・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 2 億円。拠点1.3倍、営業利益率3%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.3 倍、時価総額 379 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率を4%まで引き上げるには、二百円以上の商品比率の上昇、人件費の転嫁、出店の効率化が同時に成功する必要がある。かつて5%を達成した実績はあるが、足元は2.6%で、確率は低く置いた。
やや楽観 18% 利益率3.3%の会社の目標をほぼ達成 利益 20 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 2,107 円275 億円
二百円以上の商品の比率が上がり、利益率は3.3%に届く。店舗は7%増え、既存店売上は物価に沿って伸びる。人件費の上昇は、商品構成の改善と店舗効率の向上で吸収する。海外の卸は黒字を維持し、ペルー売却後の損益も安定する。競合のセリアやダイソーが出店を続けるなか、小型店という独自の立地戦略が通用し続ける。商品の入れ替えも速く、売れ筋の回転が利益を支える。営業利益は約30億円で、会社の2029年の目標(営業利益23億円)を超える水準になる。配当は特別配当を含めて維持し、自社株買いも続く。ROEは9%台で、資本コストをようやく超える。この筋書きでは、不採算店の整理が一巡し、新店が育って、既存店の売上の伸びも安定する。
- 国内100均(Watts・Watts with など):数量 2.1(直営店舗数(千店。期末))× 価格 421(1千店あたり売上(億円・名目。卸売を含む))→ 売上 866 億円・営業利益 29 億円。店舗1.07倍、営業利益率3.3%
- 国内その他(Buona Vita・リアル)と海外:数量 23.1(店舗・卸売拠点の換算数)× 価格 2.53(1拠点あたり売上(億円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。拠点1.1倍、営業利益率2%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.54 倍、時価総額 269 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が掲げる2029年8月期の営業利益率3.3%を達成し、その水準を維持する筋書き。2026年の改善が続いている実績があり、一定の確率を置く。
中立 38% 利益率2.6%を保ち、物価並みに伸びる 利益 15 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,560 円204 億円
店舗は4%増え、既存店は物価並みに伸びる。二百円以上の商品の拡大は続くが、人件費と家賃の上昇で利益率は今と同じ2.6%にとどまる。営業利益は23億円で、今の16億円から4割増える。これは売上が物価と店舗増で3割ほど伸びるためで、利益率は変わらない。海外は卸に絞って小さな黒字を保つ。減価償却は新店舗の分を新しい値段で足し、既存の設備は物価で増やさない。更新の投資は償却を上回る分が現金から出る。純利益は約15億円で、配当と自社株買いは10年で55億円。会社の目標(営業利益50億円)の半分に届かない。
- 国内100均(Watts・Watts with など):数量 2.0(直営店舗数(千店。期末))× 価格 408(1千店あたり売上(億円・名目。卸売を含む))→ 売上 817 億円・営業利益 22 億円。店舗1.04倍、営業利益率2.7%
- 国内その他(Buona Vita・リアル)と海外:数量 21.0(店舗・卸売拠点の換算数)× 価格 2.43(1拠点あたり売上(億円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。拠点1.0倍、営業利益率1.5%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 196 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年の改善を土台に、人件費の上昇と競争で利益率が上がりきらない筋書きが最も自然。営業利益率は2012年の5%から2023年の1.1%まで動いてきた中間に位置する。
やや悲観 26% 賃金上昇と価格競争で利益率が1%台へ 利益 9 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 592 円77 億円
最低賃金が想定を超えて上がり、売値に転嫁できない。競合の出店攻勢で既存店売上が鈍り、利益率は1.8%まで下がる。店舗は微減に向かい、不採算店の撤退が増える。二百円以上の商品も、ニトリやドラッグストアとの競合で伸びない。営業利益は13億円と今の8割で、純利益は8億円台。配当は維持するが、自社株買いは止まる。それでも事業は残り、家賃を払える利益は保つ。店の運営はさらに効率化を迫られ、人員の配置と営業時間の見直しが進む。商品の価格帯を上げる試みも、他社と同じ方向で目新しさを欠く。10年の配当と買い戻しは40億円。それでも赤字には落ちず、不採算店の整理を急いで固定費を絞り込む。
- 国内100均(Watts・Watts with など):数量 1.9(直営店舗数(千店。期末))× 価格 395(1千店あたり売上(億円・名目。卸売を含む))→ 売上 738 億円・営業利益 13 億円。店舗0.97倍、営業利益率1.8%
- 国内その他(Buona Vita・リアル)と海外:数量 18.9(店舗・卸売拠点の換算数)× 価格 2.33(1拠点あたり売上(億円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 0 億円。拠点0.9倍、営業利益率0%
倍率:事業のROEは約4%でk以下、正当化PERの上限は1÷k=12.5倍。稼ぎが細り、堀の持ちを低く見て、上限の約6.4割の8.0倍に置いた。
確率:最低賃金の上昇と家賃の上昇が続き、価格競争が強まれば、2023年のように利益率が1%台に戻りうる。実際に過去12年で一度起きたため、厚めに置いた。
悲観 10% 家賃の重みで利益が消える 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 230 円30 億円
売上が落ちても家賃は落ちない。店舗は15%減り、退店の違約や減損が出る。客単価も物価に追いつかず、利益率は0.3%まで下がる。海外の卸も縮み、国内その他は赤字になる。営業利益は1億円台にとどまり、配当は特別配当をやめて下げる。自社株買いも止まる。事業は残るが、株主の価値は純現金と在庫の回収価値の税後が下支えする水準になる。経営は店舗網の大幅な縮小に踏み切り、卸売や特定の業態に絞った再建を探ることになる。この筋書きでは、リースの約束が重荷になり、新リース会計基準の適用後は負債が大きく見える。店舗の閉鎖には違約金と原状回復の費用がかかり、現金が先に減る。
- 国内100均(Watts・Watts with など):数量 1.6(直営店舗数(千店。期末))× 価格 370(1千店あたり売上(億円・名目。卸売を含む))→ 売上 606 億円・営業利益 2 億円。店舗0.85倍、営業利益率0.3%
- 国内その他(Buona Vita・リアル)と海外:数量 12.6(店舗・卸売拠点の換算数)× 価格 2.24(1拠点あたり売上(億円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 −1 億円。拠点0.6倍、赤字
倍率:利益が1億円に届かない年で、今の自己資本136億円に約0.22倍(減損後の自己資本120億円に0.25倍)。稼ぐ力ではなく、純現金と在庫の売却価値の税後が床になる。市場の値付けからは置いていない。減損で自己資本は120億円に減る。
確率:価格競争、賃金上昇、売上減が同時に来ると、固定費の家賃が利益を消す。構造的に負ける形で、一定の確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内100均(Watts・Watts with など)
全国に約1,900店を直営で構える100均チェーン。百円の商品に加え、二百〜五百円の中価格帯を広げている。売上の94%を占める柱。
| 数量直営店舗数(千店。期末) | 価格1千店あたり売上(億円・名目。卸売を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 1.9 | 314 | 604 | 16 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 408 | 817 | 22 |
取り方:2026/08期の国内100均の売上604.2億円、期末店舗1,925店(決算の報道)。既存店売上は前期比4.0%増。1店あたり売上は約3.1億円。セグメントの営業利益は開示が無く、全体の営業利益16.45億円を売上で按分した推定。店舗数は実質の数量、1店あたり売上は物価と商品構成の名目。
国内その他(Buona Vita・リアル)と海外
雑貨店Buona Vita、ディスカウントストア「リアル」、海外卸売。ペルー子会社は2026年7月に売却し、直営の海外は縮小して卸売に転換。
| 数量店舗・卸売拠点の換算数 | 価格1拠点あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 21.0 | 1.94 | 41 | 0 |
| 10 年後 中立 | 21.0 | 2.43 | 51 | 1 |
取り方:国内その他の売上34.6億円(店舗19)と海外6.3億円の計40.8億円。利益は按分した推定(全体の営業利益率より低いとみた)。
リスクと懸念
家賃という固定の約束
1,900店を超える賃借で、家賃は毎年必ず出ていく。売上が1割落ちれば、営業利益はほぼ消える。新リース会計基準(2028年3月期以降の適用に合わせた開示)で、負債と使用権資産が貸借対照表に載り、見かけの純現金や自己資本比率は変わる。
人件費・最低賃金の上昇
店を支えるのは臨時従業員で、年平均2,800人。最低賃金の上昇は物価以上で、売値を百円に縛られる中、価格に乗せにくい。
競争と仕入れの規模
ダイソーは市場の6割、セリアはその3分の1強。4番手のワッツは仕入れ量で劣り、独自商品も弱い。価格競争や大手の出店攻勢で傷みやすい。
「脱・百円」の限界
二百円以上の商品を増やすと粗利は保てるが、ニトリやドラッグストアの雑貨と直接ぶつかる。100均の看板の魅力が薄れるリスクがある。
為替と仕入れ
仕入れは円建てだが、仕入先の商品の多くは輸入品で、円安は間接的に原価を押し上げる。ドル円150円が続く前提でも、原材料高の転嫁が遅れると粗利が下がる。
海外の撤退
中国は全店閉鎖、ペルーは売却した。卸への転換は損益を整えるが、成長の柱ではなく、新市場の開拓は不確実。
AIエージェント代替は小さい
売り物は商品と店舗で、人の時間を売る事業ではない。発注・在庫管理はAIで効率化できるが、利益の源は店の数と売上にある。
今後の分かれ目
- 既存店売上が前年比で2%を下回って鈍る
- 家賃を負う固定費の重さが出始める合図。やや悲観の確率を上げる。
- 営業利益率が3%を超えて定着する
- 二百円以上の商品の拡大が構造に変わった証拠。中立の上側、やや楽観の確率を上げる。
- 2027年8月期の営業利益が計画の18億円を下回る
- 利益の戻りが一時的だった可能性。やや悲観に寄せる。
- 最低賃金が想定を超えて上がり、臨時従業員の時給が10%を超えて増える
- 人件費が利益を圧迫する。利益率は2%を割るとみて悲観に寄せる。
- 自社株買いや増配が上限を超えて続く
- 還元が利益に見合っている確認。現金の戻り方を見直す。
- ダイソー、セリアが都市部の小型店で出店を加速する
- 立地の取り合いが激化する。出店と退店の差が縮み、店舗数の伸びを下げる。
見ておくもの
- 既存店売上と営業利益率(2026年8月期は2.6%)
- 店舗数(出店と退店の差)
- 最低賃金の改定と臨時従業員の賃金
- 現金と有利子負債、リース債務
- 自社株買いの進捗と配当
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(資本コスト7.75%、ROEがk並みなので上限は1÷k=12.5倍)から置き、中立は上限の約7.6割。今の株価や過去のPERには寄せていない。同業のセリア(k 7.75%)とそろえ、規模と商品力が劣るので倍率は低めにした。会社の中期目標(2035年に営業利益50億円)は織り込まず、2026年8月期の利益率2.6%を中立に置いた。実行済みの自社株買い(約1.55億円、21.76万株)は株数に入れ、自己資本と還元から外した。家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。2028年3月期からの新リース会計基準で営業利益は少し増え、純負債と自己資本比率の見え方が変わる点に注意する。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→14.3 倍・やや楽観 PER 10.5→13.54 倍・中立 PER 9.5→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。