結論
松屋フーズホールディングスは、牛めしの「松屋」、とんかつの「松のや」、ラーメンの「六厘舎」などを持つ外食グループだ。店は約1,600で、国内の直営店が売上の9割を超える。筆者の結論は割高である。最高益の今期でも純利益は約40億円にとどまり、今の時価総額はその利益の約30倍にあたる。
稼ぎの源は、店の数と、1店あたりの売上だ。牛めしの店は約1,200で、すき家の約2,000店に水をあけられている。昨年度は既存店が1割伸びたが、直近の月次では前年を割った。同じ月にすき家は1割以上伸びており、差が開いている。
ラーメンの松富士を91億円で買い、増資で約80億円を集めた。第3の柱を作る一手だが、この会社にとって初めての大型買収だ。成否は見えない。
10年後を中立で置くと、売上は約3,200億円、純利益は約75億円。利益は倍近くになる。それでも自己資本利益率は7%台で、資本コストに届かない。再投資で増やした店の稼ぎが、投じたお金に見合わないということだ。倍率が低くなるのは自然で、総合では本質価値が今の値段の半分に届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は持ち続けたい事業にならない。理由は3つある。
第1に、事業が薄利で、堀が弱い。値段を上げれば客が離れ、上げなければ人件費に食われる。10年たっても、これが変わる材料は乏しい。第2に、資本の使い方がまだ試されていない。増資と買収を同時に行い、稼ぎ方が固まる前に大きくした。第3に、純有利子負債は約240億円あり、家賃と借金という固定の約束も重い。
一方、評価できる点もある。牛めしととんかつの運営力は本物で、昨年度は営業利益率を4%台まで上げた。人件費と調達の効率化が続くなら、利益は10年で倍近くに伸びうる。
それでも、利益が倍になっても自己資本利益率が資本コストに届かないなら、稼いだお金を事業に再投資しても価値は増えない。安全域は、今の値段にはない。払ってよい値段は、10年先の利益の10倍弱である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は単純だ。店を出し、お客に食べてもらい、売上から食材費・人件費・家賃を引いた残りが利益になる。2026年3月期の売上は1,845億円。事業は外食の1つにまとめて開示され、業態別の数字は出ていない。
柱は牛めしだ。松屋を中心に約1,190店あり、グループの店の4分の3を占める。券売機で注文を受け、味噌汁を付ける形で、牛丼御三家の一角を築いた。店は直営が中心で、国内のFC(加盟店)は5店しかない。直営は利益が自社に残る一方、人件費と家賃の上昇をすべて自社で受ける。
第2の柱がとんかつの松のやで、約195店。牛めしと同じ調達網と店づくりを使えるのが強みだ。
第3の柱として、2026年1月にラーメンの松富士を91億円で買った。六厘舎や舎鈴など9ブランド・約120店を持つ。亀製麺も2025年10月に傘下へ入れた。これでラーメン業態は約130店になった。
海外は台湾・上海などの24店と小さく、全体への影響はまだ軽い。売上のほぼ全部が国内の直営店という、割り切った構成だ。
言い換えれば、この会社の利益は、国内の外食の景気と、店の人手の確保にほぼ全部がかかっている。牛めしの食材(牛肉・コメ)は物価と為替で動き、店で働く人の賃金は毎年上がる。仕入れと人件費を自社で抱えるぶん、値上げの力が利益を決める。
優良さと弱いところ
筆者がいちばん気にしているのは、利益の薄さである。営業利益率は直近で4%台、過去10年の自己資本利益率の中央値は5.7%にすぎない。外食の中でも、稼ぐ力は低い方だ。
堀、つまり他社がまねできない強みは、強くない。牛めしは、すき家と吉野家が同じ価格帯で競う。客は味と値段でいつでも乗り換えられる。
強みは、小さな店を安く回す運営力だ。注文から提供までの手間を絞り、店ごとの人手を少なくする。人件費が上がる時代には、この力が効く。昨年度に既存店が1割伸び、営業利益が7割増えたのは、この力と値上げが噛み合った結果だった。
弱みは、好調な年の利益が安定しないことだ。2021年3月期と2022年3月期は営業赤字だった。コロナ禍とはいえ、不況に弱い。借金も増えた。純有利子負債は約240億円になり、買収と増資のあとの財務はまだ固まっていない。
経営は、増資と初の大型買収という新しい動きに入った。資本の使い方を試される局面だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食は、人口が減る国内で、店の数を増やしても客の総数はほぼ増えない市場だ。伸びるのは値上げの分と、競合から奪ったシェアである。
牛めしの市場では、すき家が国内約2,000店で首位を固め、吉野家は約1,250店、松屋は約1,130店で続く。店数の差は、そのまま調達と出店の力の差になる。2026年6月の既存店売上は、すき家が前年を12.5%上回り、吉野家が0.4%増、松屋は4.8%減だった。同じ値上げの時代でも、勝ち負けが分かれている。
構造の変化は3つある。人件費と食材費は年3〜5%のペースで上がる。コメと牛肉の値上がりで、安さを売りにした業態ほど利益率が削られる。そして値上げが通る店と通らない店が分かれる。
松屋の位置は、すき家に追われる立場ではなく、すき家との差を縮めたい立場だ。とんかつは松のやが専門店として育った。ラーメンは、六厘舎のような強いブランドが数店あるが、市場全体は店の入れ替わりが激しい。
外食の需要は、不況で客が減る。下方シフトで牛めしは相対的に強いが、利益の落ち込みは避けにくい。
資本政策と M&A
資本の使い方は、いま大きく変わった。2026年2月に新株1,400,000株を発行し、約80億円を集めた。直前の2026年1月には、松富士を91億円で買っている。買収額に近い規模の資金を、株主から集めた形だ。
筆者は、この組み合わせを割り引いて見る。増資は、買収と店の改装のために自己資本を厚くする手当てだ。ただし1株あたりの利益は薄まる。買収したラーメン事業が資本コストを上回る稼ぎを出さなければ、株主の持ち分は目減りする。
配当は長く横ばいで、純利益に対する割合は1割強にとどまる。自社株買いの開示はない。稼いだ利益は店と買収に回す方針といえる。還元を期待して持つ会社ではない。
M&Aの経験は乏しく、松富士・亀製麺とも統合はこれからだ。新しいブランドをどう育てるか、既存の牛めしとの人材と調達の共有がどこまで進むかが分かれ目になる。
株主優待(現物の還元):年およそ5億円を会社の費用ベースで見込む(食事券(100株で年数千円)×優待株主約4万人×原価率。会社の開示額は確認できず推計)。費用は販管費として利益から引き済みなので、10年の還元には「年額×10×続く見込み」(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)を受け取り分として足した。自己資本の流れには入れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
牛めしの店は国内で約1,200あり、すき家に次ぐ規模を持つ。昨年度の営業利益は7割伸び、最高益になった。券売機と少人数運営で人件費を抑える力があり、値上げと客数の両方を取れる体質に変わってきた。
ラーメンの松富士を取り込んだことで、牛めし・とんかつ・ラーメンという3本柱ができる。ラーメンは、うまく育てば全体の利益率を押し上げる。店の数も、牛めしの調達網と出店のノウハウを使えば増やせる。
海外も、今は24店と小さいが、台湾や上海のほか、東南アジアに広げる余地がある。外食の需要は、人口減の国内より、アジアの方が伸びる。
アジアでの店の伸びが加われば、10年で売上が3,900億円に近づく。そうなれば、営業利益は230億円規模に届く。ここまでの道は、ラーメンと海外の店が牛めし並みに利益を出せるかにかかる。増資で作った自己資本があるので、買収と出店を続けても財務は崩れない。直近の月次は弱いが、一時の不調で、構造が変わったとは言えない。
慎重な見方
牛めしは、すき家との差が開いている。2026年6月の既存店売上は、すき家が12.5%増なのに松屋は4.8%減だった。店数も約1,130店と約2,000店で、調達と出店の力に差がある。昨年度の既存店10.5%増は、値上げと客数の戻りが重なった一度きりの跳ねで、続くとは限らない。
営業利益率は4%台にすぎず、人件費と食材費が3〜5%ずつ上がれば簡単に消える。2021年3月期と2022年3月期は営業赤字だった。景気の谷に弱い体質は変わっていない。
ラーメンの買収は、初めての大型M&Aだ。91億円を払い、ブランド統合と店の拡大を同時に進める。ラーメンは店の入れ替わりが激しく、失敗すればのれんの減損になる。増資で薄まった株主の利益を、買収で取り返せる保証はない。
今の時価総額は、利益の約30倍だ。10年後に利益が倍になっても、自己資本利益率は資本コストに届かない。再投資で価値は増えず、倍率は低くなる。割高の度合いは大きい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強いと判断した。強気の根拠は昨年度の1年の実績に偏っており、直近の既存店の落ち込みがそれを打ち消している。ラーメンの買収は成否が見えない賭けでもある。確率は、悲観とやや悲観を合わせて4割弱に厚く置いた。楽観は1割に満たない。中立でも自己資本利益率は資本コストを下回り、倍率は低くなる。どの筋書きでも、今の時価総額を上回る価値は出にくい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,810 円785 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 787 円162 億円)。 今の値に割り戻すと 2,254 円464 億円、今との差 −59.1%、 期待の年率 −1.8%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,578 円1,767 億円 | 1,214 円250 億円 | +77.7% | +5.9% | 783 円161 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,037 円1,243 億円 | 971 円200 億円 | +27.2% | +2.4% | 1,402 円289 億円 |
| 中立 | 33% | 4,414 円909 億円 | 850 円175 億円 | −4.5% | −0.5% | 1,737 円358 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,347 円277 億円 | 670 円138 億円 | −63.4% | −9.6% | 524 円108 億円 |
| 悲観 | 13% | 840 円173 億円 | 316 円65 億円 | −79.0% | −14.5% | 150 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,810 円785 億円 | 787 円162 億円 | −16.6% | −1.8% | 4,597 円947 億円 |
今の株価時価総額 5,510 円1,135 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:3本柱が回り、ラーメンも育って営業利益率が6%に迫る 利益 130 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 8,578 円1,767 億円
牛めしの店は1,450店まで増え、値上げを通しながら客も大きくは減らさない。人件費が上がる中でも、券売機と少人数運営の効率が効き、牛めしの利益率は7%に乗る。
ラーメンは松富士の各ブランドを松屋の出店網で350店に広げ、営業利益率は8%台に届く。とんかつも300店に増える。
海外は台湾・上海から広がり、80店を超える。
10年後の売上は約3,900億円、営業利益は約230億円。ここまで行けば、買収は成功と呼べる。ただし、それでも自己資本利益率は10%台前半で、倍率は11倍台にとどまる。今の時価総額を上回る価値にはならない。
株主優待は現物の還元で、年およそ5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に50億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 牛めし(松屋ほか):数量 1,450(牛めし業態の店数(店))× 価格 1.67(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 2,414 億円・営業利益 169 億円。店数1450・1店売上の指数1.38・営業利益率7.0%
- とんかつ(松のや):数量 300(とんかつ業態の店数(店))× 価格 1.66(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 499 億円・営業利益 37 億円。店数300・1店売上の指数1.38・営業利益率7.5%
- ラーメン(六厘舎・舎鈴ほか):数量 350(ラーメン業態の店数(店))× 価格 1.99(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 695 億円・営業利益 59 億円。店数350・1店売上の指数1.38・営業利益率8.5%
- すし:数量 30.0(すし業態の店数(店))× 価格 1.09(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 33 億円・営業利益 1 億円。店数30・1店売上の指数1.34・営業利益率3.0%
- 海外・その他:数量 80.0(海外・その他の店数(店))× 価格 3.69(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 295 億円・営業利益 15 億円。店数80・1店売上の指数1.30・営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 130 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.59 倍、時価総額 1,767 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率が6%に近づくには、牛めしの値上げを客離れなしに通し、ラーメンの出店も軌道に乗る両方が要る。直近の既存店が前年割れの会社には厳しい条件で、確率は1割に満たない。
やや楽観 20% やや楽観:牛めしが値上げを通し、ラーメンも着実に増える 利益 99 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 6,037 円1,243 億円
牛めしは1,390店に増え、年3%並みの値上げを通す。客数の減りは小さく、利益率は6%台半ばを保つ。とんかつは270店、ラーメンは300店まで広げ、店の収益が安定する。
買収した事業は、数年の統合を終えたあとに着実に採算が取れる。松屋の仕入れ網と物流を使えるため、食材費の差は一部縮まる。海外は68店ほどで、利益への寄与はまだ小さい。値上げは、客が離れない範囲に限られる。
10年後の売上は約3,500億円、営業利益は約180億円、純利益は約100億円。昨年度の営業利益7割増の勢いが半分続く形だ。自己資本利益率は8%台で、資本コストにわずかに届かない。倍率は10倍ほどに置ける。
株主優待は現物の還元で、年およそ5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に50億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 牛めし(松屋ほか):数量 1,390(牛めし業態の店数(店))× 価格 1.62(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 2,248 億円・営業利益 146 億円。店数1390・1店売上の指数1.34・営業利益率6.5%
- とんかつ(松のや):数量 270(とんかつ業態の店数(店))× 価格 1.62(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 436 億円・営業利益 30 億円。店数270・1店売上の指数1.34・営業利益率6.8%
- ラーメン(六厘舎・舎鈴ほか):数量 300(ラーメン業態の店数(店))× 価格 1.93(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 579 億円・営業利益 43 億円。店数300・1店売上の指数1.34・営業利益率7.5%
- すし:数量 27.0(すし業態の店数(店))× 価格 1.09(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 0 億円。店数27・1店売上の指数1.34・営業利益率1.5%
- 海外・その他:数量 68.0(海外・その他の店数(店))× 価格 3.66(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 249 億円・営業利益 10 億円。店数68・1店売上の指数1.30・営業利益率4.0%
倍率:事業の純利益 99 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.56 倍、時価総額 1,243 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが一定程度通り、買収した事業も採算に乗る筋書き。昨年度の営業利益7割増の勢いが、半分でも続くという慎重な楽観で置いた。
中立 33% 中立:牛めしは頭打ち、とんかつとラーメンで店を増やすが利益率は4%台 利益 75 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 4,414 円909 億円
牛めしの国内店数は1,330店で頭打ちになり、すき家との差は縮まらない。値上げは物価並みに通るが、客数は人口減とともにやや細る。利益率は5.8%と、昨年度よりやや低い水準で落ち着く。
とんかつは240店、ラーメンは260店に広がる。ラーメンは店ごとの利益率が高めで、全体の利益率を支える。
10年後の売上は約3,200億円、営業利益は約140億円、純利益は約75億円。利益は今の2倍だが、売上も大きく増え、利益率は4%台で今とほとんど変わらない。自己資本利益率は7%台で、資本コストに届かない。再投資で価値は増えず、倍率は9倍台にとどまる。
株主優待は現物の還元で、年およそ5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に50億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 牛めし(松屋ほか):数量 1,330(牛めし業態の店数(店))× 価格 1.57(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 2,087 億円・営業利益 121 億円。店数1330・1店売上の指数1.30・営業利益率5.8%
- とんかつ(松のや):数量 240(とんかつ業態の店数(店))× 価格 1.62(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 388 億円・営業利益 23 億円。店数240・1店売上の指数1.34・営業利益率6.0%
- ラーメン(六厘舎・舎鈴ほか):数量 260(ラーメン業態の店数(店))× 価格 1.93(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 502 億円・営業利益 33 億円。店数260・1店売上の指数1.34・営業利益率6.5%
- すし:数量 25.0(すし業態の店数(店))× 価格 1.09(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 0 億円。店数25・1店売上の指数1.34・営業利益率0.0%
- 海外・その他:数量 55.0(海外・その他の店数(店))× 価格 3.58(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 197 億円・営業利益 6 億円。店数55・1店売上の指数1.27・営業利益率3.0%
倍率:事業の純利益 75 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 909 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:牛めしの国内店数は1,300店台で頭打ち、とんかつとラーメンが店を増やし、人件費上昇は値上げで吸収しきれずに利益率は4%台。昨年度の最高益と直近の既存店減の中間に置いた。
やや悲観 26% やや悲観:人件費と食材費に押され、買収の利益も出ない 利益 38 億円 · PER 7.3 倍 · 株価時価総額 1,347 円277 億円
人件費と食材費の上昇に値上げが追いつかず、牛めしの利益率は4.5%まで下がる。すき家に客を奪われ、店の入れ替えも増える。
ラーメンは統合に時間がかかり、思うように出店が進まない。店は220店、利益率は5%にとどまる。のれんの一部も償却を迫られる。とんかつも215店で伸びが鈍り、利益率は4%台に下がる。海外は店を増やせず、小さいままだ。
10年後の売上は約2,700億円、営業利益は約75億円、純利益は約40億円。今の最高益と変わらない水準に戻る形で、自己資本利益率は4%台に下がる。稼ぎが資本コストを下回るため、倍率は7倍まで落ち、再投資するほど価値が目減りする。
株主優待は現物の還元で、年およそ5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.75で10年に38億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 牛めし(松屋ほか):数量 1,250(牛めし業態の店数(店))× 価格 1.47(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 1,840 億円・営業利益 83 億円。店数1250・1店売上の指数1.22・営業利益率4.5%
- とんかつ(松のや):数量 215(とんかつ業態の店数(店))× 価格 1.51(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 324 億円・営業利益 15 億円。店数215・1店売上の指数1.25・営業利益率4.5%
- ラーメン(六厘舎・舎鈴ほか):数量 220(ラーメン業態の店数(店))× 価格 1.80(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 396 億円・営業利益 20 億円。店数220・1店売上の指数1.25・営業利益率5.0%
- すし:数量 15.0(すし業態の店数(店))× 価格 0.89(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 −1 億円。店数15・1店売上の指数1.10・営業利益率-5.0%
- 海外・その他:数量 45.0(海外・その他の店数(店))× 価格 3.30(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 148 億円・営業利益 1 億円。店数45・1店売上の指数1.17・営業利益率1.0%
倍率:ROE 4.4%(純利益 38 億円 ÷ 自己資本 857 億円)。今の利益は残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 8.25% + 1/2 ×(4.4 − 7.75)= 6.08%、g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 9.1 倍。ROE が k を下回り、稼ぎが資本コストに届かない構造的な負けなので、上限の 8 割に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 7.3 倍・時価総額 277 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:営業赤字が過去10年に2期あり、利益が景気に振れやすい。直近の既存店が前年割れで、人件費上昇も続く。慎重な見方が強いため、中立に近い確率を置き、悲観側に厚く配分した。
悲観 13% 悲観:すき家に押されて店と客を失い、ラーメンの買収が減損になる 利益 −20 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 840 円173 億円
すき家が価格と調達の両面で松屋を圧倒し、牛めしの客が離れる。店は1,050店まで減り、利益率は2.5%に落ちる。人件費の上昇は止まらず、家賃は売上が落ちても減らない。
ラーメンの買収は期待した成果を出さない。ブランド統合に失敗し、店は閉じられ、のれんと店舗設備は大きく減損される。とんかつも伸びず、150店で止まる。
10年後の売上は約2,000億円、全体では営業赤字に陥る。ここでは、事業の稼ぐ力ではなく、店の資産と敷金・保証金の売却価値が株価の床になる。今の自己資本の3割ほどの価値しか残らない。
株主優待は現物の還元で、年およそ5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.5で10年に25億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 牛めし(松屋ほか):数量 1,050(牛めし業態の店数(店))× 価格 1.35(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 1,420 億円・営業利益 36 億円。店数1050・1店売上の指数1.12・営業利益率2.5%
- とんかつ(松のや):数量 150(とんかつ業態の店数(店))× 価格 1.33(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 199 億円・営業利益 0 億円。店数150・1店売上の指数1.10・営業利益率0.0%
- ラーメン(六厘舎・舎鈴ほか):数量 150(ラーメン業態の店数(店))× 価格 1.58(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 238 億円・営業利益 0 億円。店数150・1店売上の指数1.10・営業利益率0.0%
- すし:数量 10.0(すし業態の店数(店))× 価格 0.81(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 −1 億円。店数10・1店売上の指数1.00・営業利益率-10.0%
- 海外・その他:数量 30.0(海外・その他の店数(店))× 価格 3.00(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 90 億円・営業利益 −2 億円。店数30・1店売上の指数1.06・営業利益率-2.0%
倍率:赤字で稼ぐ力は 0。床は、売れる資産の税引き後(約 200 億円と推定)に近い、今の自己資本 577 億円の 0.30 倍(約 173 億円)に置いた。ラーメンののれんや店の内装は売れず、価値は敷金・保証金と自社の工場・物流の土地建物などに限られる。家賃は固定費として残る。
確率:すき家との差が広がる、ラーメンの買収が失敗して減損になるという構造の負け。過去に2期の赤字があり、買収と増資を同時に行った直後でもあるため、1割強と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
牛めし(松屋ほか)
牛めしの「松屋」を柱に、カレーなどの定食を加えた祖業。券売機と直営中心の運営で、国内に約1,200店を持つ。
| 数量牛めし業態の店数(店) | 価格1店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,185 | 1.21 | 1,430 | 93 |
| 10 年後 中立 | 1,330 | 1.57 | 2,087 | 121 |
取り方:有価証券報告書は事業を外食の1セグメントで開示しており、業態別の売上は出ていない。2026年3月期の連結売上1,845億円のうち、牛めし約1,430億円と置いた。期中の店数(約1,130店前後)と1店あたり約1.2億円、既存店10.5%増という開示から逆算した推定である。営業利益は利益率6.5%と置いた推定。先の価格は物価3%(10年で1.34倍)を基準に、客数の自然減を引いて中立1.30倍とした。
とんかつ(松のや)
とんかつ専門店「松のや」。牛めしの店づくりと調達網を生かし、第2の柱として育ててきた。
| 数量とんかつ業態の店数(店) | 価格1店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 195 | 1.21 | 235 | 12 |
| 10 年後 中立 | 240 | 1.62 | 388 | 23 |
取り方:業態別売上は開示がなく、店数195店と1店あたり約1.2億円から約235億円と推定した。営業利益率は6%前後と置いた推定。先は物価並みの値上げ(1.34倍)を中立とし、新店の売上が既存店より低いことは出店の数量側で見る。
ラーメン(六厘舎・舎鈴ほか)
つけ麺の「六厘舎」「舎鈴」などを持つ松富士と、亀製麺を2025年10月〜2026年1月に買収して加えた第3の柱。
| 数量ラーメン業態の店数(店) | 価格1店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 132 | 0.38 | 50 | 2 |
| 10 年後 中立 | 260 | 1.93 | 502 | 33 |
取り方:松富士・亀製麺は2026年1月からの連結で、2026年3月期は約3か月分(推定約50億円)しか入っていない。通期では1店あたり約1.4億円(松富士約120店の売上規模からの推定)に当たるため、先の価格は通期の1店売上に物価を乗せた値になり、今の欄より大きく見える。売上の合計に見かけの飛びはない。 数量は実物(店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
すし
すし業態。店数は少なく、まだ利益の柱ではない。
| 数量すし業態の店数(店) | 価格1店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 21.0 | 0.81 | 17 | −2 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 1.09 | 27 | 0 |
取り方:開示は店数21店のみ。1店あたり約0.8億円と推定し、利益は赤字と置いた。小さな事業のため全体への影響は小さい。
海外・その他
台湾・上海などの海外店と、店舗以外の食品販売などの合計。
| 数量海外・その他の店数(店) | 価格1店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 2.83 | 113 | 4 |
| 10 年後 中立 | 55.0 | 3.58 | 197 | 6 |
取り方:海外24店を含む40店。海外の現地法人の売上(上海・台湾で約24億円)に加え、店舗以外の食品販売などを含むため、1店あたりの売上は店舗事業より大きく見える。推定。
リスクと懸念
すき家との差が広がる
すき家は国内約2,000店で、2026年6月の既存店は前年を12.5%上回った。松屋は4.8%減である。調達と出店の力の差が続けば、牛めしの客と利益率が削られる。牛めしは利益の大半を支えており、ここが崩れると全体が揺らぐ。
人件費と食材費の上昇
外食の人件費は年3〜5%のペースで上がり、コメと牛肉の値上がりも続く。値上げを通せなければ、営業利益率4%台はすぐに消える。2021年3月期と2022年3月期には営業赤字があり、不況では利益の落ちが大きい。
ラーメン買収の失敗
91億円を払ったラーメン事業は、会社にとって初の大型M&Aだ。ブランドの統合や店の拡大が進まなければ、のれんの減損になる。ラーメンは店の入れ替わりが激しく、ブランドの寿命も短い。
増資による希薄化と資本の使い方
2026年2月に約80億円を増資で集めた。調達した資金が資本コスト(8%強)を上回る稼ぎを生まなければ、株主の持ち分は薄まったままだ。配当は純利益の1割強と低く、株主への還元も期待しにくい。
固定の家賃と借金
店は賃借が中心で、家賃は売上が落ちても減らない固定費だ。純有利子負債は約240億円ある。2028年3月期から新リース会計基準でリース債務が貸借対照表に載り、純負債と自己資本比率の見え方が変わる。見かけほど財務は強くない。
不況と食の事故
不況では客が減り、2021年3月期のように営業赤字になる。直営中心なので、店の食の事故や労務の問題は、そのまま全店の客離れにつながる。
今後の分かれ目
- 松屋の既存店売上が、半年以上すき家に差をつけられ続けた
- 牛めしの利益率が構造的に下がる合図で、やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- ラーメン事業の店ごとの利益が、買収後2年で牛めしを上回った
- 3本柱が機能し始める合図で、やや楽観に寄せる。出店の速度も上がる。
- 人件費の上昇を値上げで吸収できず、営業利益率が3%を割った
- 中立でも利益が伸びない形になり、悲観の方向へ進む。
- 自社株買いや配当の増額で、還元が純利益の3割を超えた
- 株主への資本の返し方が変わる合図で、倍率の上限を引き上げて見直す。
- ラーメン事業の減損が計上された
- 買収が失敗した合図。のれんの減損は自己資本を直接削り、悲観側の確率を高める。
見ておくもの
- 松屋・すき家・吉野家の月次既存店売上
- 営業利益率(四半期)と人件費率・原価率
- ラーメン業態の店数と1店あたり売上
- 配当・自社株買いの方針変更
- 新リース会計基準の適用時期(2028年3月期)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去の PER・PBR から置いていない。10 年後の自己資本利益率と資本コスト 8.25% から、利益の倍率を正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) で出し、上限の 8 割前後に置いた。自己資本は今の 577 億円に期間の純利益を足し還元を引いて流した。今の PER は約30倍だが、倍率の根拠には使っていない。店は賃借が中心で家賃は営業費用に入った今の形で 10 年後も数字をそろえ、2028年3月期からの新リース会計基準で貸借対照表の形が変わる点は評価に影響させていない。業態別の売上と利益は開示がなく、店数と1店あたり売上からの推定である。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→13.59 倍・やや楽観 PER 11.1→12.56 倍・中立 PER 11.1→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%に quality +0.25%を足した7.75%。事業は黒字で傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。M&Aの実行リスクは k に足さず、やや悲観・悲観の確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 8.25%。