結論
アクサスホールディングスは、徳島と兵庫を地盤にドラッグストアや雑貨店、ウイスキーの専門店を営み、酒や化粧品の輸入卸とビルの賃貸も手がける会社だ。筆者の結論ははっきり割高である。理由は一つ、借金の重さにある。
売上は120億円あるが、営業利益は年に2億円前後しかない。一方で借入は120億円を超え、自己資本は22億円にとどまる。これまでは1%台の低い金利のおかげで、利払いをどうにか払えてきた。金利が3%台に戻れば、利払いは今の2倍を超え、本業の稼ぎをまるごと食う。
稼ぎの柱は賃貸ビルで、ここだけは確かな利益を生む。しかし店と卸は利益が薄く、本社の費用を賄うのがやっとだ。2026年8月期も経常利益の予想を大きく引き下げた。
社長の資産管理会社が議決権の3分の2を持ち、少数株主が経営に注文を付ける余地も小さい。10年先を見渡すと、借金を減らせるかどうかが全てで、株主の取り分は今の時価総額に遠く届かないと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、オーナーとして持ちたい事業ではない。三つの事業のうち、本当に稼ぐのは賃貸ビルだけだ。店と卸は売上こそ大きいが、本社の費用を払うとほとんど何も残らない。
株主のものになる利益、つまり税を払い、事業を続ける投資をした後に手元に残るお金は、ほぼゼロに近い。純利益が出た年の多くは、資産の売却や税の戻りによるものだった。
それでいて、自己資本の5倍を超える借金を抱える。借金は不動産の担保と在庫で支えられているが、金利が上がれば支払いは毎年確実に増える。利益の薄い会社が借金を背負うと、少しの不振で株主の取り分は消える。
安全域、つまり払う値段と価値の差の余裕は、今の値段には無い。価値の多くは借金を返した後の賃貸ビルにあるが、その時価は開示されておらず、確かめようがない。わからないものに値段を払うことは、バリュー投資の考え方に合わない。
何で稼ぐ会社か
事業は小売・卸・不動産の三つだ。小売は売上の約6割を占める。ドラッグストア、雑貨店、スポーツ用品店、文具店、ウイスキーの専門店を、徳島に10店、兵庫に9店など合わせて40店弱構える。ネット通販も子会社で手がける。1店あたりの売上は年2億円ほどで、利益率は2%に届かない。
卸は売上の3分の1強で、酒類や化粧品、雑貨を海外から仕入れて売る。神戸の六甲山に小さな蒸溜所を持ち、自社のウイスキーも造る。2024年にはサプリと化粧品の受託製造のGIVERSを買い、2023年には化粧品の卸など3社を買った。買収で売上は増えたが、利益率は2%前後のままだ。
不動産は、オフィスビルや商業施設、ロードサイドの店舗を貸す事業だ。売上は7億円弱と小さいが、利益は2.6億円あり、全社の稼ぎの大半をここが生む。
問題は本社の費用だ。三つの事業の利益を足すと約5億円になるが、持株会社と管理部門の費用が3億円余りかかり、全社の営業利益は1.6億円まで縮む。そこから借入の利払いを引くと、経常利益はほとんど残らない。
つまりこの会社の値打ちは、賃貸の稼ぎと、店と卸がどこまで本社の費用を賄えるかで決まる。
優良さと弱いところ
優良さの物差しで見ると、この会社に堀、つまり他社がまねできない強みは見当たらない。ドラッグストアや雑貨の店は、地方の大手チェーンや通販と同じ品を同じような値段で売る。卸も輸入品の仲介で、値段を自分で決める力は弱い。
確かな資産は賃貸ビルだ。賃料は景気に左右されにくく、利益率は4割近い。ただし賃料は契約の更新ごとにしか上げられず、物価に遅れて動く。
資本の使い方には疑問が残る。利益が薄いのに買収を重ね、借入は120億円まで膨らんだ。ROEは年によって10%台に見えるが、多くは資産の売却などの特別な利益で、本業の稼ぎではない。自己資本比率は14%で、景気が悪い年が2年続けば財務制限条項に触れかねない。経営は社長の資産管理会社が握り、外の株主の目は届きにくい。
強みを一つ挙げるなら、地方の商業地に持つ物件だ。ただしそれは事業の強さではなく、資産の強さである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の小売は、人口が減る中で店の数が飽和している。地方のドラッグストアはウエルシアやツルハ、コスモス薬品のような大手が安値で出店を重ね、小さな会社の店は客を奪われやすい。雑貨や文具も、ネット通販と均一価格の店に挟まれる。物価が上がる中で値上げが通るのは、ブランドや独自の品を持つ店だけだ。アクサスの店はそこに入らない。
ウイスキーは明るい話題だ。国産のウイスキーは海外の人気が高く、小さな蒸溜所でも熟成した原酒は高く売れる。ただ原酒は寝かせるほど在庫と借入が膨らむ。売上の大きさで見れば、まだ会社全体を動かす事業ではない。
化粧品やサプリの受託製造は、通販のブランドが増えて需要は伸びるが、作り手も多く値段の競争が厳しい。
いちばん効く外の変化は金利だ。短期金利が2%へ向かえば、短期借入が多いこの会社は、他の小売よりも早く利払いの増加を受ける。新しいリースの会計が2027年度から始まると、借りている店の家賃も負債として帳簿に載り、借金の重さはさらに目に見えるようになる。
業界の追い風を受けにくく、逆風は真っ先に受ける立ち位置だ。
資本政策と M&A
配当の総額は年0.6億円ほどだ。利益が出ない年も続けてきたが、借入を減らすことが先になれば減らされうる。自社株買いの実績は無い。株主優待は、1,000株以上を1年以上持つ株主に六甲山のウイスキー1本か水1箱を贈る。費用は年0.1億円に満たないとみられ、還元への上乗せはごく小さい。
M&Aでは買う側だ。2023年に化粧品の卸など3社、2024年にGIVERSを買った。いずれも小さな会社で、利益の押し上げは限られる。
社長が100%持つ資産管理会社が議決権の66%を握る。外から買収を仕掛けられる会社ではなく、非公開化も社長の判断しだいだ。借金を減らすために賃貸ビルを売るかどうかが、資本政策で一番大きな分かれ目になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
見かけほど悪くはない。賃貸ビルは年2.6億円を安定して稼ぎ、帳簿の値段は古い取得価格のままだ。神戸や徳島の商業地の地価が上がれば、含み益は小さくない。借金の多くはこの不動産と在庫で裏付けられている。
店と卸にも伸びしろがある。ウイスキーは国産の人気が海外で高く、六甲山の原酒が育てば、卸の利益率は上がる。GIVERSの受託製造は、通販のサプリや化粧品のブランドが増えるほど注文が増える。2026年8月期の第3四半期までは、営業利益が前の年を3割上回っていた。
不採算の店を閉じて、利益の出る業態に絞る余地もある。店を減らせば在庫も減り、借入を返せる。オーナーが議決権の3分の2を持つので、決めれば動きは速い。
金利が上がっても、賃料も物価とともに上がる。借金を減らしながら利益率を2022年8月期の水準に戻せば、純利益は年3億円を超え、今の時価総額は十分に説明がつく。
今の時価総額は自己資本の2倍に満たない。賃貸の物件の時価が帳簿を大きく上回れば、安い値段とさえ言える。
慎重な見方
借金が全てを決める。借入は120億円を超え、営業利益の50倍以上ある。今の利払いは1%台の金利で年1.6億円だが、3%台に借り換えれば年4億円を超える。営業利益の山だった2022年8月期でも4.4億円しか稼いでいない。金利が戻るだけで、経常利益は毎年赤字になる。
本業の利益は薄く、しかも細っている。売上は10年で1割以上減った。地方のドラッグストアや雑貨店は、大手チェーンと通販に客を奪われ続ける。卸は買収で売上を足したが、利益率は2%前後から上がらない。2026年8月期も経常利益の予想を2.8億円から0.05億円へ大きく引き下げた。
賃貸ビルの含み益は開示が無く、数えようがない。売って借金を返せば、全社の稼ぎの柱も消える。
オーナーが3分の2を持つ会社で、少数株主には何も決められない。自己資本比率14%の会社が赤字を2〜3年続ければ、財務制限条項に触れ、銀行の言うままに資産を手放すことになる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。賃貸ビルの価値は確かにあるが、時価がわからず、借金を返すために売れば稼ぎも消える。一方の金利の重さは、数字で確実に見える。営業利益の山でも利払いの増加をまかなえない構造は、強気の見方では崩せない。確率はやや悲観と悲観の側に厚く寄せ、楽観は1割にとどめた。
賃貸の物件の時価が開示され、借金の返し方の道筋が示されれば、この見方は変わりうる。今はその材料が無い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 31 円10 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 10 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 18 円6 億円、今との差 −85.1%、 期待の年率 −10.3%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 120 円37 億円 | 30 円9 億円 | +21.0% | +1.9% | 15 円5 億円 |
| やや楽観 | 20% | 46 円14 億円 | 16 円5 億円 | −49.5% | −6.6% | 13 円4 億円 |
| 中立 | 35% | 23 円7 億円 | 8 円2 億円 | −75.0% | −12.9% | 11 円3 億円 |
| やや悲観 | 22% | 7 円2 億円 | 5 円2 億円 | −90.2% | −20.7% | 3 円1 億円 |
| 悲観 | 13% | 2 円1 億円 | 2 円1 億円 | −96.6% | −28.8% | 1 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 31 円10 億円 | 10 円3 億円 | −66.4% | −10.3% | 42 円13 億円 |
今の株価時価総額 124 円38 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 店を絞り、ウイスキーと賃料で借金を返す 利益 4 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 120 円37 億円
会社は利益の出ない雑貨と文具の店を閉じ、ドラッグストアとウイスキーの専門店に絞り込む。店の数は一度減った後、関西と四国で採算の良い店を足して42店になる。1店あたりの売上は品ぞろえの見直しで物価を少し上回って伸びる。
卸では六甲山の原酒が熟成し、自社のウイスキーが海外と土産の需要をつかむ。GIVERSの受託製造も通販のブランドの注文を増やし、卸の利益率は3.5%まで上がる。賃料は契約の更新ごとに上がり、建物の償却は取得時の値段のままなので、賃貸の利益率は46%に上がる。
在庫を絞り、借入は90億円まで減る。それでも金利は3%台に上がるので、利払いは年3億円ほど残る。純利益は年3.5億円となり、ROEは資本コストをわずかに上回る。
- 小売(ドラッグストア・雑貨・スポーツ・文具・ウイスキー専門店・通販):数量 42.0(店の数(店))× 価格 2.90(1店あたりの年間売上(億円、通販を含む))→ 売上 122 億円・営業利益 4 億円。42店×1店あたり1.40倍、利益率3.5%
- 卸(酒類・化粧品・雑貨の輸入卸、蒸溜所、受託製造):数量 80.0(卸の取扱量(今の値段の億円で測った実質の量))× 価格 1.38(値段の指数(今=1.0))→ 売上 110 億円・営業利益 4 億円。取扱量1.8倍×値段1.38倍、利益率3.5%
- 不動産(賃貸):数量 100(貸している面積の指数(今=100))× 価格 0.09(面積の指数1あたりの年間賃料(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 4 億円。面積そのまま×賃料1.30倍、償却は据え置きで利益率46%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 10.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.3 倍。全体の PER 10.32 倍、時価総額 36 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:不採算の店を閉じながら業態を絞り、卸のウイスキーと受託製造が伸び、借入も減らす姿。三つが同時にそろう必要があり、過去10年で一度も起きていないので1割。
やや楽観 20% 利益率が少し戻り、借金を少し減らす 利益 1 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 46 円14 億円
店の数は38店のまま、入れ替えで採算の悪い店を少しずつ閉じる。1店あたりの売上は物価並みに伸び、利益率は2022年8月期のころの水準に戻る。卸はウイスキーと受託製造で量を1.5倍に増やし、利益率も少し上がる。
賃料は物価に少し遅れて上がり、償却が増えないので利益率は45%になる。本社の費用は物価で増えるが、管理の統合で一部を吸収する。
借入は在庫の圧縮で100億円まで減るが、金利は3.5%に上がり、利払いは年3.5億円になる。純利益は年1.4億円で、ROEは資本コストに届かない。配当は今の総額を保ち、優待も続く。
- 小売(ドラッグストア・雑貨・スポーツ・文具・ウイスキー専門店・通販):数量 38.0(店の数(店))× 価格 2.85(1店あたりの年間売上(億円、通販を含む))→ 売上 108 億円・営業利益 3 億円。38店×1店あたり1.37倍、利益率2.8%
- 卸(酒類・化粧品・雑貨の輸入卸、蒸溜所、受託製造):数量 65.0(卸の取扱量(今の値段の億円で測った実質の量))× 価格 1.36(値段の指数(今=1.0))→ 売上 88 億円・営業利益 2 億円。取扱量1.47倍×値段1.36倍、利益率2.8%
- 不動産(賃貸):数量 100(貸している面積の指数(今=100))× 価格 0.09(面積の指数1あたりの年間賃料(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 4 億円。面積そのまま×賃料1.26倍、利益率45%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 14 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2022年8月期の利益率まで戻り、借入を100億円に減らす姿。過去に一度は届いた水準なので2割。
中立 35% 本業は横ばい、利払いが利益を食う 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 23 円7 億円
店は採算の悪い所を閉じて35店に減る。1店あたりの売上は物価並みに伸び、利益率は2%台前半で横ばいだ。卸はウイスキーと受託製造で量を2割弱増やすが、利益率は2%前後から抜け出せない。賃貸は賃料が物価に遅れて上がり、償却が増えないぶん利益率は44%に上がる。
本社の費用は人件費とともに増え、全社の営業利益は3億円台にとどまる。借入は賃貸の物件の一部の売却と在庫の圧縮で115億円まで減るが、金利が3.5%を超え、利払いは年4億円に増える。経常利益は赤字になり、純利益も小さな赤字が続く。
配当は数年で今の総額を保てなくなり、優待だけが残る。自己資本は少しずつ削られる。
- 小売(ドラッグストア・雑貨・スポーツ・文具・ウイスキー専門店・通販):数量 35.0(店の数(店))× 価格 2.78(1店あたりの年間売上(億円、通販を含む))→ 売上 97 億円・営業利益 2 億円。35店×1店あたり1.34倍、利益率2.2%
- 卸(酒類・化粧品・雑貨の輸入卸、蒸溜所、受託製造):数量 52.0(卸の取扱量(今の値段の億円で測った実質の量))× 価格 1.34(値段の指数(今=1.0))→ 売上 70 億円・営業利益 2 億円。取扱量1.17倍×値段1.34倍、利益率2.2%
- 不動産(賃貸):数量 100(貸している面積の指数(今=100))× 価格 0.08(面積の指数1あたりの年間賃料(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 4 億円。面積そのまま×賃料1.22倍、償却据え置きで利益率44%
倍率:赤字なのでPERは当てない。稼ぐ力で測れる価値はほぼゼロで、残るのは賃貸の物件と在庫から借金を引いた分だけ。賃料を生む物件があり清算はされないが、ROEがマイナスで、ためた利益の値打ちは帳簿の額を大きく下回るので自己資本の0.45倍。 EVで見ると、時価総額に純負債112億円を足して営業利益3.3億円で割り約36倍で、借金に比べ稼ぎが細すぎる。
確率:店と卸は今の利益率を少し上回る程度で、金利だけが確実に上がる姿。過去10年の営業利益の幅(0〜4億円)の中央に近いので一番厚い。
やや悲観 22% 店が客を失い、赤字が続く 利益 −4 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 7 円2 億円
地方のドラッグストアと雑貨店は、大手チェーンの出店と通販に客を奪われる。店は30店まで減り、1店あたりの売上も物価に追いつかない。家賃は契約で固定され、売上が落ちても減らないので、店の利益率は1%を切る。卸は値段の競争で量が横ばい、利益もほぼ出ない。
借入は返せず120億円のまま、金利は3.8%に上がる。利払いは年4.5億円を超え、毎年3億円台の赤字が続く。財務制限条項に触れ、銀行の求めで賃貸の物件の一部を売却して返済に充てる。自己資本はほとんど残らず、配当は止まる。
賃料の稼ぎは残るが、借金の利息を払うための事業になる。少数株主に回るものは、ほぼ何も無い。
- 小売(ドラッグストア・雑貨・スポーツ・文具・ウイスキー専門店・通販):数量 30.0(店の数(店))× 価格 2.60(1店あたりの年間売上(億円、通販を含む))→ 売上 78 億円・営業利益 1 億円。30店×1店あたり1.25倍、家賃が残り利益率0.8%
- 卸(酒類・化粧品・雑貨の輸入卸、蒸溜所、受託製造):数量 45.0(卸の取扱量(今の値段の億円で測った実質の量))× 価格 1.25(値段の指数(今=1.0))→ 売上 56 億円・営業利益 1 億円。取扱量横ばい×値段1.25倍、利益率1%
- 不動産(賃貸):数量 100(貸している面積の指数(今=100))× 価格 0.08(面積の指数1あたりの年間賃料(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 3 億円。面積そのまま×賃料1.16倍、利益率42%
倍率:赤字が続き稼ぐ力はマイナス。床は今の自己資本22億円に掛け、売れる資産(賃貸の物件・在庫)は借入の返済に回るので、少数株主に残るのは自己資本の1割ほどと見た。 EVで見ると営業利益0.8億円に対し純負債112億円で、事業の価値は借金にほぼ届かない。
確率:大手のドラッグストアと通販に地方の店が押され、利益が消える姿。売上が10年で1割強減ってきた流れの延長で、2026年8月期にも予想を大きく下げたので2割強。
悲観 13% 借金に押しつぶされる 利益 −6 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 2 円1 億円
店の客離れが止まらず、採算の悪い店を次々に閉じて22店になる。家賃の契約が残る店の閉鎖には費用がかかり、残った店も赤字になる。卸は利益が出ず、受託製造も大手との値段の競争に負ける。
銀行は財務制限条項を理由に返済を求め、会社は賃貸の物件の3割を売却する。稼ぎの柱の賃料も細り、それでも金利の高い借入は残る。毎年5億円を超える赤字で自己資本は消え、債務超過の手前まで追い込まれる。株主は、銀行とオーナーの判断で決まる再建の条件をのむしかない。
賃料を生む物件の一部は残るが、その稼ぎはすべて銀行への返済に回る。
- 小売(ドラッグストア・雑貨・スポーツ・文具・ウイスキー専門店・通販):数量 22.0(店の数(店))× 価格 2.40(1店あたりの年間売上(億円、通販を含む))→ 売上 53 億円・営業利益 −1 億円。22店×1店あたり1.16倍、家賃が残り赤字
- 卸(酒類・化粧品・雑貨の輸入卸、蒸溜所、受託製造):数量 35.0(卸の取扱量(今の値段の億円で測った実質の量))× 価格 1.20(値段の指数(今=1.0))→ 売上 42 億円・営業利益 0 億円。取扱量0.8倍×値段1.2倍、収支とんとん
- 不動産(賃貸):数量 70.0(貸している面積の指数(今=100))× 価格 0.08(面積の指数1あたりの年間賃料(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。物件の3割を売却、賃料1.16倍、利益率40%
倍率:赤字で自己資本が消える筋書き。稼ぐ力も売れる資産の残りも少数株主にはほぼ無く、今の自己資本22億円の3%ほどしか残らないと見た。
確率:赤字と金利の上昇が重なり、債務超過に近づく構造的な負け。自己資本比率14%で利払いが営業利益を上回る会社なので、1割強の重さを置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
小売(ドラッグストア・雑貨・スポーツ・文具・ウイスキー専門店・通販)
徳島・兵庫を中心に40店弱の店と通販。化粧品、日用品、雑貨、スポーツ用品、文具、酒を売る。
| 数量店の数(店) | 価格1店あたりの年間売上(億円、通販を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 38.0 | 2.07 | 79 | 2 |
| 10 年後 中立 | 35.0 | 2.78 | 97 | 2 |
取り方:有報の小売の売上78.8億円を店の数38で割った推定(通販の売上も店に割り振った)。利益はセグメント利益1.54億円。
卸(酒類・化粧品・雑貨の輸入卸、蒸溜所、受託製造)
酒類・化粧品・雑貨の輸入卸、六甲山蒸溜所のウイスキー、木材の卸、GIVERSのサプリ・化粧品の受託製造。
| 数量卸の取扱量(今の値段の億円で測った実質の量) | 価格値段の指数(今=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 44.3 | 1.00 | 44 | 1 |
| 10 年後 中立 | 52.0 | 1.34 | 70 | 2 |
取り方:品目が多く数量の開示が無いので、売上44.3億円を今の値段の取扱量と置いた推定。物価の分は値段の指数に入れる。
不動産(賃貸)
オフィスビル、複合商業施設、ロードサイドの店舗を貸す。
| 数量貸している面積の指数(今=100) | 価格面積の指数1あたりの年間賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 100 | 0.07 | 7 | 3 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.08 | 8 | 4 |
取り方:面積の開示が無いので今を100とした指数。売上6.9億円、利益2.61億円(利益率38%)。利益には建物の償却が引かれている。
リスクと懸念
金利の上昇と借り換え
借入は120億円を超え、多くが短期の借入だ。今の金利は1%台だが、短期金利が2%に向かえば、借り換えのたびに利払いが増える。営業利益が年2〜4億円の会社にとって、利払いが年4億円を超えれば赤字が続く。
財務制限条項
運転資金の借入枠には財務制限条項が付いている。自己資本比率は14%しかなく、赤字が2〜3年続けば条項に触れうる。そうなれば銀行の求めで、稼ぎの柱の賃貸の物件を手放すことになりかねない。
地方の店の客離れ
徳島や兵庫のドラッグストアと雑貨店は、大手チェーンの安値の出店と通販に押されている。売上は10年で1割強減った。店の多くは借りており、売上が落ちても家賃は減らない。
買収の効果
2023年と2024年に化粧品の卸や受託製造の会社を買ったが、卸の利益率は2%前後のままだ。利益の薄い会社を借金で買い足すと、借金だけが残る恐れがある。
オーナー支配
社長が100%持つ資産管理会社が議決権の66%を握る。資産の売却、配当、非公開化の判断は社長しだいで、少数株主の意見は通りにくい。
賃貸の物件の価値が見えない
全社の利益の大半を生む賃貸の物件は、時価の開示が確かめられない。含み益が大きければ価値は上振れするが、数えられない。逆に地方の商業施設は、テナントが抜ければ価値も下がる。
今後の分かれ目
- 賃貸の物件を売り、借入を大きく減らす
- 利払いが軽くなり、やや楽観の筋書きに近づく。ただし賃料の稼ぎも減るので、売った値段と帳簿の差を見る。
- 営業利益が年5億円を超えて定着する
- 利払いをまかなえるようになり、やや楽観の筋書きに寄る。
- 借入の平均金利が3%を超える
- 中立から悲観の側に重みを移す。経常利益は毎年赤字になる。
- 財務制限条項に触れたと開示される
- 悲観の筋書きに近い。資産の売却や増資で株主の取り分が削られる。
- オーナーが非公開化を打ち出す
- 少数株主は上乗せの値段を受け取れる可能性がある。条件は社長の判断しだいだ。
見ておくもの
- 借入の残高と平均金利
- 経常利益と営業利益の差(利払い)
- 店の数と既存店の売上
- 賃貸の物件の売却・取得
- 財務制限条項の状況
- 卸の利益率(ウイスキー・受託製造)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去のPER・PBRから置いていない。中立は利払いが増えて赤字になるのでPERを使わず、清算はされないがROEがマイナスなので自己資本の0.45倍に置いた。やや楽観はROEがkに届かず1÷k以下の9倍、楽観は弱い堀の正当化PER約11倍の86%。悲観側は売れる資産が借入の返済に回る前提で今の自己資本に掛けた。10年後の数字は今と同じく家賃を営業費用に入れた形でそろえた(2027年度から新しいリースの会計で家賃が負債に載る)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→10.32 倍・やや楽観 PER 9→10 倍)。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に質の上乗せ2.0%。同じ領域の会社はまだ無い。事業そのものは赤字が続いているわけではないので上乗せ(extra)は置かず、金利の重さは筋書きの利益に入れた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 10.00%。