結論
4℃ホールディングスは、宝飾品の「4℃」で知られる会社だ。近年は、中古の高級腕時計を扱う羅針の買収で売上が 700 億円まで膨らんだ。
筆者の結論は割高である。10 年後の利益に妥当な倍率を掛けて今に引き直すと、本質価値は今の時価総額の 6 割前後にとどまる。
理由は二つある。一つは、事業が三つの別の商売に分かれ、強みが伸びる部分と細る部分が混在することだ。羅針は伸びるが、買収前の利益率を超えるほどの余地は見えにくい。宝飾の 4℃は、2020 年 2 月期から 2024 年 2 月期までに売上が 269 億円から 169 億円に縮み、店も半分に減った。アパレルは売上の 35%を占めるが、利益は薄い。
もう一つは、株主に残る利益の薄さだ。自己資本は 411 億円あるのに、純利益は 18 億円で、ROE は 4%台にとどまる。配当は利益とほぼ同額を払っているため、自己資本が積み上がり、資本の効率は上がらない。
救いもある。のれんの償却が 2030 年代前半に終わるので、見かけの営業利益は 12 億円ほど増える。中古時計は、株高と富裕層の購買に支えられて好調だ。ただし、相場に左右される商売で、波が来る年は必ずある。
立て直しの成果は確かにあるが、払う値段に余裕はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「稼ぐ事業が混ざっているが、全体としては資本の効率が低い」。
羅針は、仕入れの目利きと在庫の回転で稼ぐ商売で、立ち上がりは良い。ただし、中古時計の相場は、株高と円安に支えられた面があり、永続する利益とは言い切れない。
宝飾の 4℃は、ブランドの鮮度を保つのが難しく、10 年で売上が 4 割縮んだ。アパレルは利益が薄い。この二つが、会社全体の資本の効率を押し下げている。
経営の資本配分は、ここ 2 年は評価できる。店を絞り、買収で新しい利益の源を足した。一方で、利益とほぼ同額を配当に回し続け、自己資本が積み上がっている。ためた利益が資本コストを超えて回らなければ、株主には額面を下回る価値にしかならない。
安全域の目で見ると、時価総額は自己資本の 1 倍強で、割安にも見えるが、ROE が資本コストを下回る会社の正しい PBR は 1 倍を下回る。のれんの償却が終わっても、事業の稼ぐ力は変わらない。払う値段に余裕はない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは大きく二つの事業に分かれ、売上の 65%がブランド事業、35%がアパレル事業である。
ブランド事業は、宝飾品の「4℃」「CANAL 4℃」「EAU DOUCE 4℃」と、中古の高級腕時計を扱う羅針からなる。4℃は国内に約 125 店を持ち、若い女性が手ごろな値段で買う宝飾品の店だ。羅針は、銀座などで「GINZA RASIN」を営み、ロレックスなどの中古腕時計を買い取って売る。2024 年 12 月に 105 億円で買収し、同社として過去最大の買収になった。2026 年 2 月期には、売上が約 280 億円に達した。新宿にも店を出した。
アパレル事業は、アスティとアージュの二つだ。アスティは広島の会社で、バングラデシュ、ベトナム、中国などの工場を使って、衣料専門店や量販店向けに服を作って卸す。売上は約 93 億円。アージュは、総合衣料店「パレット」を関西を中心に 105 店展開し、売上は約 150 億円である。
4℃の宝飾は、顧客管理の仕組みと SNS の販促を整え、既存店の売上を回復させてきた。
ただし、のれんの償却が年に約 12 億円あり、営業利益を押し下げている。償却前の営業利益は 41 億円。
配当は自己資本に対する割合を目安にし、利益とほぼ同額を払う。
優良さと弱いところ
優良さは「普通。羅針は伸びるが、堀は深くない」と見る。
強みの第一は、4℃のブランドの知名度だ。ブランドの認知は高い。2024 年以降、店数を絞って既存店を回復させた点は評価できる。
第二は、羅針の立ち上がりの速さだ。買収後、ブランド事業の営業利益は前年の 3 倍以上に増え、会社全体の利益を支えた。新宿の出店も寄与した。ただし、この商売は買取の仕入れ競争に勝ち続ける必要があり、相場に左右される。
第三は、アパレルの海外生産網だ。アスティは生産の約 6 割をバングラデシュの拠点で持つ。大手の衣料専門店向けの受注が増えた。
弱みは三つある。第一に、宝飾の需要が構造的に細る。婚姻数が減り、4℃の売上は 2020 年 2 月期の 269 億円から 2024 年 2 月期の 169 億円まで縮んだ。第二に、アパレルの利益が薄い。パレットは収益店の退店と気候の影響で苦戦している。第三に、ROE が低い。10 年前に 10%だった ROE は、4%台まで下がった。
全体として、ブランドの堀は浅く、10 年先も利益が守られる確度は普通とみる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の宝飾品の小売市場は、矢野経済研究所によると 2025 年に約 1 兆 1,700 億円で、前年から 3.8%伸びた。ただし、伸びの大半は金の高騰による値上げで、数量は伸びていない。婚姻数の減少で、婚約指輪・結婚指輪の需要は細っている。
4℃は、手ごろな値段の宝飾品の領域にいる。競合は、ジュエリーツツミ、スタージュエリー、アガット、ヴァンドーム青山などだ。ツツミが増収を続ける一方、4℃は店を減らし続けてきた。ブランドの鮮度の維持が難しい業態といえる。
中古の高級腕時計の市場は、リユースの活性化と時計相場の上昇で伸びてきた。競合は、コメ兵、大黒屋、シュッピンなどの大手と、Chrono24 や eBay といった越境の流通網である。買取の仕入れ競争が利益を決める。フリマアプリの浸透で、個人が直接売る流れもある。相場が下がれば在庫の評価損が出る。
アパレルは、人口が減る国内の成熟市場だ。衣料の小売は店を減らし、卸は大手の取引先に依存する。アスティの受託製造は、海外の生産網を持つ会社には追い風だが、価格の競争は厳しい。
物価が年 3%で上がる世界では、宝飾品と時計の価格は原材料の高騰で上がりやすい。ただし、需要の価格弾力性が高く、値上げの余地は限られる。
業界の分かれ目は、中古時計の相場が崩れずに伸び続けるか、宝飾の需要が細るペースを羅針の伸びが上回るかである。
資本政策と M&A
還元は、配当が中心で、自己資本に対する割合(DOE)を 4%程度の目安にする。利益とほぼ同額を払う年が続いており、減益の年でも減配を避けてきた。
2024 年 12 月の羅針の買収は 105 億円で、借入を使った。純有利子負債は 116 億円に増えたが、自己資本比率は 59.6%と厚い。のれんの未償却残高は約 77 億円で、年 12 億円ほどずつ償却され、10 年以内に終わるとみる。
中期計画では、2030 年ごろに売上 800 億円・営業利益 55 億円、ROE 10%を目指し、M&A も成長の柱に置く。買収後の羅針の伸びを織り込んだ計画だ。
10 年以内の TOB の確率は、kabufu の参考値で 18.7%。支配株主の持分など株主構成を確認できておらず、ここでは確率に織り込まない。
株主優待は、100 株以上で自社製品の優待券などから選べる。2026 年 2 月基準から、1 年以上の継続保有が条件になった。年間の費用は 1 億円に満たないと推定し、10 年の還元への上乗せは小さいので、ここでは数えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
羅針が加わったブランド事業は、営業利益が前年の 3 倍以上に増えた。新宿の店が加わり、取扱いは伸びている。中古の高級腕時計は、株高と富裕層の購買、海外の需要に支えられ、時計相場の上昇は当面続く。羅針は越境の販売網にも手を伸ばせる。
宝飾の 4℃は、店を 125 店まで絞って既存店を回復させた。ブランドの再生は進んでおり、顧客管理と SNS の販促で客を呼び戻せる。結婚の減少は、カジュアルな自分向けの宝飾の需要が補う。
アスティは、海外生産の網で大手の受注を増やした。バングラデシュなどの工場は、人件費の上昇する国内の競合に対する優位になる。
のれんの償却が終われば、営業利益は見かけ上も 12 億円ほど増える。中期計画の営業利益 55 億円は、羅針の伸びで届く。
配当は自己資本に対する目安どおりに増え、借金も返済が進む。買収を重ねる戦略も続き、新しい利益の源を足せる。ROE も 10%に近づく。
慎重な見方
羅針の好調は、株高と円安に支えられた面がある。中古時計の相場が崩れれば、在庫の評価損が出て、買取の競争も激しくなる。羅針は買収から 1 年強しか実績がなく、利益が続くかは確かめられていない。
宝飾の 4℃は、10 年で売上が 4 割縮んだ。婚姻数が減り、手ごろな値段の宝飾への需要が細っている。ツツミが伸びる一方で、4℃は店を減らし続けた。回復は、店を絞った結果の面が大きい。
アパレルは利益が薄い。パレットは収益店の退店と気候の影響で苦戦し、アスティは大手の取引先に依存する。
のれんの未償却残高は約 77 億円で、羅針の利益が崩れれば減損になりうる。借入で買収したため、純有利子負債は 116 億円ある。
さらに、配当は利益とほぼ同額で、自己資本は積み上がっても ROE は 4%台にとどまる。利益の質が低いまま、配当を払い続けることは、株主にとって価値が増えないことを意味する。
時価総額は自己資本の 1 倍強で割安に見えるが、ROE が資本コストを下回る会社の正しい PBR は 1 倍を下回る。
どちらに重みを置いたか
羅針の立ち上がりと、のれんの償却終了による利益の増加については、強い見方に説得力がある。一方で、宝飾の構造的な縮小、アパレルの薄い利益、ROE の低さ、中古時計の相場の波という慎重な見方の指摘は、数字の裏づけが厚い。
確率は、中立よりやや悲観側に寄せた。羅針の好調は買収後の 1 年強の実績にすぎず、相場の波を 10 年超えられるかは確かめられていないからだ。
中立の営業利益率は 5%台にとどめ、計画の 7%近い水準には届かないと置いた。自己資本は配当後も積み上がり、自己資本の利益率は 6%台で資本コストに届かない。計算の結果、10 年後の中立でも今の時価総額を下回り、総合では割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,831 円394 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 713 円153 億円)。 今の値に割り戻すと 1,308 円281 億円、今との差 −34.7%、 期待の年率 +2.4%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,717 円800 億円 | 976 円210 億円 | +134.2% | +8.9% | 375 円81 億円 |
| やや楽観 | 21% | 2,478 円533 億円 | 883 円190 億円 | +67.7% | +5.3% | 706 円152 億円 |
| 中立 | 34% | 1,915 円412 億円 | 813 円175 億円 | +36.2% | +3.1% | 928 円200 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,071 円230 億円 | 558 円120 億円 | −18.7% | −2.1% | 407 円88 億円 |
| 悲観 | 12% | 783 円169 億円 | 279 円60 億円 | −47.0% | −6.2% | 127 円27 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,831 円394 億円 | 713 円153 億円 | +26.9% | +2.4% | 2,544 円547 億円 |
今の株価時価総額 2,004 円431 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 中古時計が育ち、利益率が過去の山に近づく 利益 61 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 3,717 円800 億円
中古の高級腕時計が、富裕層の購買と海外の需要で伸び続ける。羅針の店は新宿に続いて増え、取扱いは今の 1.8 倍に広がる。時計の値付けも物価並みに上がる。宝飾品の 4℃は、既存店の回復が定着して店数を保つ。アスティのアパレル受託製造は、海外生産の網で受注を増やす。のれんの償却は 2030 年代前半に終わり、営業利益は見かけ上も厚くなる。営業利益率は 7%台に乗り、過去の山の 13%には遠いが、今の 4%台からは大きく改善する。借金は返済が進み、配当は自己資本に対する目安どおりに増える。ただし、これは中古時計の相場が 10 年崩れないことが前提で、そこまで強気に置く確度は低い。
- 4℃(宝飾品):数量 125(4℃の年平均店数(店))× 価格 1.84(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 229 億円・営業利益 18 億円。4℃の年平均 125 店・1 店売上の指数 1.34
- 羅針(中古の高級腕時計):数量 33.7(販売本数(千本))× 価格 0.02(1 本あたりの平均単価(億円))→ 売上 677 億円・営業利益 68 億円。販売本数 33.7 千本・1 本の単価の指数 1.34
- アスティ(アパレルの受託製造):数量 7.5(出荷点数(百万点))× 価格 2,010(1 点あたりの卸単価(円))→ 売上 150 億円・営業利益 14 億円。出荷 7.46 百万点・1 点の単価の指数 1.34
- パレット(アージュの衣料店):数量 105(パレットの年平均店数(店))× 価格 1.90(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 199 億円・営業利益 8 億円。パレットの年平均 105 店・1 店売上の指数 1.34(低価格の衣料は値上げが通りにくく物価より低い)
倍率:事業の純利益 61 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.11 倍、時価総額 800 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中古時計の相場が 10 年崩れず、海外にも広がるという条件がそろう必要がある。強気の言い分の確度は低いとみて 1 割未満にした。
やや楽観 21% 羅針が伸び、のれんの償却が終わって利益が厚くなる 利益 44 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,478 円533 億円
羅針が計画どおりに伸び、取扱いは今の 1.5 倍に届く。のれんの償却が終わり、利益の見かけも実質も改善する。4℃は店を 120 店ほどで保ち、客単価の改定で売上を維持する。アスティは取引先の拡大で緩やかに伸びる。パレットは店を少し減らしながら利益を出す。営業利益率は 6%台に上がり、中期計画の営業利益 55 億円を超えて 60 億円台に届く。借金は返済が進み、配当は自己資本に対する目安どおりに増える。ただし、時計の相場の波と、宝飾の需要の細りが重なる年が一度はあり、利益の伸びは一直線にはならない。
- 4℃(宝飾品):数量 120(4℃の年平均店数(店))× 価格 1.81(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 217 億円・営業利益 15 億円。4℃の年平均 120 店・1 店売上の指数 1.32
- 羅針(中古の高級腕時計):数量 28.0(販売本数(千本))× 価格 0.02(1 本あたりの平均単価(億円))→ 売上 546 億円・営業利益 49 億円。販売本数 28.0 千本・1 本の単価の指数 1.30
- アスティ(アパレルの受託製造):数量 6.8(出荷点数(百万点))× 価格 1,980(1 点あたりの卸単価(円))→ 売上 135 億円・営業利益 12 億円。出荷 6.84 百万点・1 点の単価の指数 1.32
- パレット(アージュの衣料店):数量 102(パレットの年平均店数(店))× 価格 1.81(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 185 億円・営業利益 6 億円。パレットの年平均 102 店・1 店売上の指数 1.28(低価格の衣料は値上げが通りにくく物価より低い)
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 533 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収後の最初の通期で羅針が計画以上に伸び、のれんの償却終了も見えている。ただし宝飾とアパレルの弱さを埋める保証はなく、2 割余りにとどめた。
中立 34% 中立:羅針が伸びるが宝飾とアパレルが足を引っ張る 利益 34 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,915 円412 億円
羅針は取扱いが今の 1.3 倍に伸びるが、買取をめぐる競争と相場の波で、利益率は買収前の水準に戻る程度にとどまる。4℃は店を 115 店ほどに減らし、客単価の改定で売上を保つ。結婚の減少で宝飾の需要は細り、利益は薄い。アスティは横ばい、パレットは店を減らして利益は小さい。のれんの償却は終わるが、アパレルと宝飾の弱さが、羅針の伸びを打ち消す。営業利益率は 5%台に上がるが、中期計画の 7%近い水準には届かない。借金は返済が進み、配当は自己資本に対する目安どおりに続く。自己資本は積み上がり、自己資本の利益率は 6%台で資本コストに届かない。
- 4℃(宝飾品):数量 115(4℃の年平均店数(店))× 価格 1.78(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 205 億円・営業利益 13 億円。4℃の年平均 115 店・1 店売上の指数 1.30
- 羅針(中古の高級腕時計):数量 24.3(販売本数(千本))× 価格 0.02(1 本あたりの平均単価(億円))→ 売上 456 億円・営業利益 39 億円。販売本数 24.3 千本・1 本の単価の指数 1.25
- アスティ(アパレルの受託製造):数量 6.2(出荷点数(百万点))× 価格 1,950(1 点あたりの卸単価(円))→ 売上 121 億円・営業利益 10 億円。出荷 6.22 百万点・1 点の単価の指数 1.30
- パレット(アージュの衣料店):数量 100(パレットの年平均店数(店))× 価格 1.77(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 177 億円・営業利益 4 億円。パレットの年平均 100 店・1 店売上の指数 1.25(低価格の衣料は値上げが通りにくく物価より低い)
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 412 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:羅針の伸びと、宝飾・アパレルの弱さを組み合わせた落としどころ。慎重な言い分のほうが数字の裏づけが厚いので、確率の重心をやや下に置いた。
やや悲観 25% やや悲観:時計の相場が崩れ、宝飾も縮む 利益 12 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,071 円230 億円
中古時計の相場が下がり、買取の競争も強まる。羅針の取扱いは今の水準にとどまり、利益率は 6%に下がる。4℃は店が 100 店まで減り、宝飾の需要の細りが続く。パレットは退店が相次ぎ、ほぼ利益が出なくなる。のれんの減損は小さく済むが、在庫の評価損が出る。営業利益率は 2%台に戻り、今の利益の 7 割まで細る。配当は自己資本に対する目安を保てず、利益に合わせて減る。自己資本は薄く積み上がるだけで、自己資本の利益率は 3%に落ちる。それでも在庫と事業の資産が下支えし、時価総額は在庫と現金の価値に近づく。
- 4℃(宝飾品):数量 100(4℃の年平均店数(店))× 価格 1.64(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 164 億円・営業利益 7 億円。4℃の年平均 100 店・1 店売上の指数 1.20
- 羅針(中古の高級腕時計):数量 18.7(販売本数(千本))× 価格 0.02(1 本あたりの平均単価(億円))→ 売上 323 億円・営業利益 19 億円。販売本数 18.7 千本・1 本の単価の指数 1.15
- アスティ(アパレルの受託製造):数量 5.6(出荷点数(百万点))× 価格 1,800(1 点あたりの卸単価(円))→ 売上 101 億円・営業利益 6 億円。出荷 5.60 百万点・1 点の単価の指数 1.20
- パレット(アージュの衣料店):数量 85.0(パレットの年平均店数(店))× 価格 1.63(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 139 億円・営業利益 1 億円。パレットの年平均 85 店・1 店売上の指数 1.15(低価格の衣料は値上げが通りにくく物価より低い)
倍率:稼ぐ力は純利益 12 億円 ÷ k 8.25% = 約 140 億円だが、ROE が k を大きく下回るので、売れる資産の税引き後(約 220 億円)のほうが大きい。今の自己資本 411 億円に対する PBR 0.54 倍で測った。在庫(時計・宝飾・衣料)の大半は売れるが、のれんは売れず、借入の返済と評価損で目減りする。純有利子負債は 116 億円あるが、純利益ベースの倍率で測っておらず、EV ÷ 営業利益で見ても 17 倍前後に収まる。
確率:中古時計の相場は株高や円安で押し上げられた面があり、波が来る可能性は高い。宝飾の需要の細りも重なる筋書きを 4 分の 1 に置いた。
悲観 12% 悲観:のれんを減損し、在庫の価値だけが残る 利益 −8 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 783 円169 億円
中古時計の相場が崩れ、羅針の取扱いは 3 割減る。買収で積んだのれんは大きく減損され、自己資本が削られる。宝飾の 4℃は店が 80 店まで減り、パレットも大量に退店する。営業損益は赤字になり、配当は大きく削られる。それでも事業が消えるわけではなく、在庫、売掛金、店舗の資産が残る。時価総額は、のれんを除いた資産を割り引いて売った時の価値に近づく。親会社のような支配株主がいないため、再編や売却で価値が引き出される余地はあるが、少数株主に有利に進む保証はない。配当は大きく削られるが、借入の返済は先に払う約束として残る。借り換えの金利が上がる中で、財務の余裕が削られる 10 年になる。
- 4℃(宝飾品):数量 80.0(4℃の年平均店数(店))× 価格 1.51(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 121 億円・営業利益 1 億円。4℃の年平均 80 店・1 店売上の指数 1.10
- 羅針(中古の高級腕時計):数量 13.1(販売本数(千本))× 価格 0.01(1 本あたりの平均単価(億円))→ 売上 187 億円・営業利益 4 億円。販売本数 13.1 千本・1 本の単価の指数 0.95
- アスティ(アパレルの受託製造):数量 4.7(出荷点数(百万点))× 価格 1,500(1 点あたりの卸単価(円))→ 売上 70 億円・営業利益 2 億円。出荷 4.70 百万点・1 点の単価の指数 1.00
- パレット(アージュの衣料店):数量 60.0(パレットの年平均店数(店))× 価格 1.49(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 89 億円・営業利益 −3 億円。パレットの年平均 60 店・1 店売上の指数 1.05(低価格の衣料は値上げが通りにくく物価より低い)
倍率:悲観は赤字で、稼ぐ力はゼロに近い。そこで売れる資産の税引き後(約 170 億円)を床とみて、今の自己資本 411 億円に対する PBR 0.41 倍で測った。のれんは売れず、在庫は投げ売りで 3 割ほど割り引かれる。支配株主がいないため再編の余地はあるが、少数株主に有利になる保証はない。純有利子負債は 116 億円で、EV ÷ 営業利益は意味を持たない水準だが、床は借入を引いた後の額で置いた。
確率:相場の崩れと、買収したのれんの減損が重なる筋書き。羅針は買収後の実績が 1 年強しかなく、構造的に負ける筋書きは 1 割を超える確率で残る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
4℃(宝飾品)
「4℃」「CANAL 4℃」「EAU DOUCE 4℃」などの宝飾品の専門店。店は賃借が多く、家賃は固定の約束。
| 数量4℃の年平均店数(店) | 価格1 店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 127 | 1.37 | 174 | 11 |
| 10 年後 中立 | 115 | 1.78 | 205 | 13 |
取り方:2026 年 2 月期のブランド事業の売上 453 億円から、羅針の約 280 億円(アナリストの推計)を引いた約 174 億円を、年平均 127 店で割った。利益は羅針の約 18 億円を引いた約 11 億円と推定(開示なし)。先の 1 店売上は物価 1.34 倍を基に、宝飾の需要の細りを入れて中立 1.30 倍に置いた。
羅針(中古の高級腕時計)
銀座などの「GINZA RASIN」を中心に、ロレックスなど中古の高級腕時計を買い取って売る。2024 年 12 月に 105 億円で買収した。
| 数量販売本数(千本) | 価格1 本あたりの平均単価(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 18.7 | 0.02 | 280 | 18 |
| 10 年後 中立 | 24.3 | 0.02 | 456 | 39 |
取り方:2026 年 2 月期の売上を約 280 億円、利益を約 18 億円とするアナリストの推計を使い、1 本の平均単価を約 150 万円(ロレックスが中心という開示から筆者が推定)として、販売本数を逆算した。先の本数は店の増加と買取の拡大で中立 1.3 倍、単価は相場が物価ほどは上がらないとして 1.25 倍に置いた。
アスティ(アパレルの受託製造)
海外の工場を使い、衣料専門店や量販店向けに服を作って卸す。
| 数量出荷点数(百万点) | 価格1 点あたりの卸単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 6.2 | 1,500 | 93 | 8 |
| 10 年後 中立 | 6.2 | 1,950 | 121 | 10 |
取り方:アスティの 2025 年度の売上 93 億円を、卸単価を 1 点あたり 1,500(円)と筆者が推定して出荷点数に直した(開示なし)。利益はアパレル事業の約 10 億円のうち 8 億円と推定。先の点数は横ばい、単価は物価の 3 割増に置いた。
パレット(アージュの衣料店)
関西を中心に総合衣料店「パレット」を展開する。FC を含む 105 店。店は賃借で、家賃は固定の約束。
| 数量パレットの年平均店数(店) | 価格1 店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 105 | 1.42 | 149 | 2 |
| 10 年後 中立 | 100 | 1.77 | 177 | 4 |
取り方:アージュの 2025 年 2 月期の売上 148.8 億円を、店数 105 店で割った。利益はアパレル事業の約 10 億円のうち 2 億円と推定(開示なし)。先の 1 店売上を中立で 1.25 倍と物価の 1.34 倍より低く置く理由は、低価格の衣料は値上げが通りにくく、客数の減少が 1 店売上に出るからである(退店と気候の影響も入れた)。
リスクと懸念
中古時計の相場の波
羅針の利益は、時計の相場と株高に支えられている。相場が下がれば在庫の評価損が出て、買取の競争も激しくなる。買収から 1 年強の実績しかなく、利益が続くかは確かめられていない。
のれんの減損
羅針の買収で積んだのれんの未償却残高は約 77 億円ある。羅針の利益が崩れれば減損になり、自己資本が削られる。年 12 億円ほどの償却は、2030 年代前半まで利益を押し下げる。
宝飾の構造的な縮小
婚姻数の減少で、結婚関連の宝飾の需要は細る。4℃の売上は 4 年で 4 割縮んだ。店を絞って回復した面が大きく、ブランドの鮮度の維持が課題として残る。
アパレルの薄い利益
パレットは収益店の退店と気候の影響で苦戦している。アスティは大手の取引先に依存し、価格の競争は厳しい。売上の 35%を占めるのに、利益は 4%と薄い。
低い ROE と配当
自己資本 411 億円に対し純利益は 18 億円で、ROE は 4%台。利益とほぼ同額を配当に回し続けても、自己資本の効率は上がらない。減益の年に減配を避ければ、財務が痛む。
借入と買収
羅針の買収は借入で賄い、純有利子負債は 116 億円に増えた。借り換えの金利が上がれば、利払いの負担が増える。中期計画は M&A を前提にしており、買収が失敗すればのれんの減損が積み上がる。
今後の分かれ目
- 羅針の営業利益率が 2 年続けて 8%を超えたら
- 買収前の水準を超えて定着した証拠で、中立から強気側に重みを移してよい。
- 中古時計の相場が大きく下がり、羅針の在庫評価損が出たら
- やや悲観・悲観側に重みを移す。のれんの減損も視野に入れる。
- 4℃の既存店売上が 2 年続けて前年を下回ったら
- ブランドの回復が一時的だった合図で、宝飾の店数と利益率を引き下げて見直す。
- パレットの退店が 20 店を超えたら
- アパレルの採算が構造的に悪い合図で、悲観側の確率を上げる。
- 配当が減配になったら
- 利益を超えた配当を続ける余力が尽きた合図で、財務の見直しが要る。
- 新たな大型の M&A が発表されたら
- のれんと借入の負担が増えるため、買収先の資本の効率を確かめてから評価する。
見ておくもの
- 羅針の売上・営業利益率(四半期)と取扱い本数
- 中古時計の相場と、同業(コメ兵・大黒屋)の月次
- 4℃の既存店売上と店数
- パレットの店数と営業損益
- のれんの未償却残高と配当(DOE)
倍率と資本コストの決め方
4℃、羅針、アスティ、パレットの 4 区分で、数量(実質)× 単価・1 店売上(名目)を積んだ。自己資本は今の 411 億円に期間の純利益を足して配当を引いて流し、ROE は結果として出た。倍率は式(RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)、g 4.0%)から出した正当化 PER の 7〜10 割に置き、ROE が k 以下では上限を 1÷k にした。市場の倍率は使っていない。営業利益率は過去の山 13%以下に置いた。10 年後はのれんの償却が終わるとみて、営業利益に反映した。悲観の床は売れる資産の税後で置いた。店は賃借が多く、家賃は毎年払う固定の約束で、未経過リース料の額は未確認である。10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形にそろえ、2028 年 2 月期からの新リース会計基準で見かけが変わる点は価値の計算に入れていない。今の株価に寄せてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→13.11 倍・やや楽観 PER 10→12.12 倍・中立 PER 10→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5%に quality +1.25%を足した 8.75%。個別のリスク(中古時計の相場・のれんの減損・宝飾の細り)は k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は黒字で自己資本比率も 60%と厚く、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.25%。