結論
くら寿司は、回転寿司でスシロー、はま寿司に次ぐ 3 番手の大手だ。国内に 540 店あまり、米国と台湾に 140 店あまりを持つ。筆者の結論は割高。個性は本物だが、稼ぐ力が薄すぎて、今の値段は海外の成功を先取りしている。
稼ぎの薄さは数字に出ている。売上は 2,451 億円と 5 期連続で最高を更新したが、営業利益は 55 億円、利益率は 2% 台にとどまる。今期の予想は営業利益 50 億円と、さらに減る。売上の 7 割を稼ぐ国内で、魚介と人件費の値上がりを客に通しきれていない。
伸びしろは海外にある。米国は 2026 年内に 100 店に届く見込みで、上場子会社が初めて黒字になった。台湾は 63 店まで増え、タイにも 2027 年に出る。ただ、米国の店はまだ利益を生む段階に入ったばかりだ。
10 年後の中立は、営業利益が 190 億円ほど、純利益が 130 億円ほどだ。今の 3 倍以上に増やしても、時価総額は 1,500 億円台にとどまる。今の値段はそれをすでに織り込んでおり、還元を足しても届かない。
筆者がいちばん気にするのは、国内の利益率が戻るかどうかだ。戻らなければ、米国の拡大も本社費と家賃に食われる。純現金は 230 億円あるが、賃借の店が多く、見かけほど強い財務ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、くら寿司は「好きだが、払う値段が高い会社」だ。
まず、10 年後もこの事業は続く。回転寿司は庶民の外食として根づいている。ただ、堀は広がっていない。値段で競り合う構造は変わらず、価格を決める力は弱い。持ち主が手に取れるオーナー利益は、営業利益 55 億円からさらに家賃と投資の分を引いた、ごく小さい額だ。
資本の使い方は、出店に回すのが基本だ。ただし、米国の新店が 1 店に数億円を使ったあとで、資本コストを超える稼ぎを出せるかは、まだ示されていない。上場子会社の黒字化は朗報だが、まだ 1 億円の経常利益にすぎない。
安全域は薄い。中立の 10 年後でも、今の時価総額を割る。強気の筋書きをかなり当てても、今の値段に収まる程度だ。筆者が手を出すなら、国内の利益率が戻り、米国の店が資本コストを超える稼ぎを示してからだ。それまでは、この値段に払う理由が見つからない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は店だ。客が来て皿を取り、会計を済ませる。その積み重ねで、国内は売上の約 7 割を占める。
国内は 540 店あまりで、1 店の年間売上は 3 億円強だ。くら寿司の売りは、抗菌の寿司カバーや、皿を入れるとカプセルが出るビッくらポン!といった工夫だ。家族連れが多く、遊びと安心感で来店理由をつくっている。
北米は、NASDAQ に上場する子会社 Kura Sushi USA が運営する。2025 年 10 月期の売上は 421 億円で、全体の約 17% だ。1 店の売上は国内より大きいが、人件費も高く、利益はほとんど出ていなかった。ここへきて、通期で初めて経常黒字になった。上場子会社なので、利益の一部は少数株主に流れる。
アジアは台湾が中心で、売上は 266 億円(約 11%)だ。中国では 2025 年に 3 店を閉めた。2027 年にはタイへ、現地パートナーと合弁で出る。出資は、くら側が 49%、現地側が 51% だ。
店は賃借が多く、店ごとの家賃は固定で出ていく。売上が落ちても家賃は落ちないので、利益率が薄い会社ほど家賃の重さが効く。
優良さと弱いところ
堀は、ブランドの個性と店の網の密度にある。ただ、その堀は幅が狭い。
抗菌カバーやビッくらポン!は、他社がまねできない発明というより、先に始めた者の工夫だ。皿の数で客単価を決める回転寿司の構造では、値段の面でスシローやはま寿司と真正面から競り合う。店数と売上の規模は、首位のスシローに大きく離されている。
価格決定力は弱い。魚介と人件費が上がっても、客に通せる値上げには限度がある。経営は 2 貫を 1 貫にしてネタを大きくする工夫で粘っているが、客の側からは実質の値上げに映る。営業利益率が 2% 台まで下がったことが、その限界を示している。
資本の効率も低い。自己資本利益率は 6% 前後で、2014〜18 年の 13〜15% からは大きく落ちた。借入が少なく純現金があるのは強みだが、賃借の家賃という約束を含めて見れば、見かけほど堅くない。
経営は創業者の田中邦彦氏が率いる。長男の田中信氏が副社長を務める。2024 年 12 月に信氏は持ち株の一部を売ったが、会社の経営への関与は続く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
回転寿司の市場は成熟に向かっている。富士経済の推計では、2025 年に約 8,800 億円と見込まれる。店は約 4,300 店あり、人口は減る。国内で数量が伸びる余地は小さい。
首位は FOOD & LIFE COMPANIES が運営するスシローだ。国内 660 店あまりに、海外を含めた売上は 4,300 億円規模ある。ゼンショーが運営するはま寿司は、国内 660 店あまりで並び、店数ではスシローと肩を並べる。くら寿司は売上で 2 位にあるが、首位とは 1 兆円と数千億円の差ではなく、規模の差が体質の差になっている。
原材料は魚介が中心で、円安と世界の需要で上がりやすい。人件費も最低賃金の上昇で毎年のように上がる。自動化は各社が競って進めており、投資が大きい分、利益率の差になって出る。
成長の主役は海外だ。米国には日本食ブームと、外食の単価の高さがある。1 店の売上が国内より大きく、店を増やすほど規模の利益が出やすい。台湾は成熟してきた。タイなど東南アジアは新しい市場で、合弁で資本を軽くして出る。
循環の位置としては、2020〜22 年の赤字を抜け、利益率の回復の途中にある。ただ、今期は再び減益を予想しており、回復は止まっている。
資本政策と M&A
資本政策は、出店への投資を優先し、株主還元は控えめだ。
利益の多くは国内外の新店と、店の自動化に回る。米国の新店は 1 店に数億円かかり、立ち上がりに時間がかかる。純現金 230 億円も、この投資と家賃の約束に回る。
大型の買収は、ここ数年は見当たらない。成長は自前の出店と、現地パートナーとの合弁が中心だ。タイは現地側が過半を持つ合弁で、資本を軽くして出る。
株主の動きでは、ウォルナットコーポレーションが 29% を持つ筆頭株主だ。副社長の田中信氏は 2024 年 12 月に一部を株式会社トラストへ売り、トラストが 11% 台の第 2 位になった。時価総額は 1,300 億円台で、事業承継や再編の動きが出れば、TOB が話題になる大きさだ。10 年以内の TOB の確率は、kabufu の推計で 16.6% とされる。ただし、確かな動きは確認できない。
株主優待は年およそ 0.4 億円(推定)で、利益から引かれ済み。還元に足しても 1 億円に届かず、差は 1 ポイント未満のため数字は変えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
米国は、日本の回転寿司が通用する数少ない海外市場だ。2026 年第 2 四半期の売上は前年同期比で 23% 伸び、既存店も 8.6% 伸びた。上場子会社は通期で初めて経常黒字に転じ、年内に 100 店に届く。店が増えるほど、本社費の負担が薄まり、利益率が上がる。
国内も、最悪期は脱している。2020〜22 年の赤字から、営業利益は 50 億円台まで戻った。万博のような話題づくりが当たり、売上は 5 期連続で最高を更新した。自動化と大きいネタで単価を守る工夫が効いている。2 貫を 1 貫にしても客が離れないのは、ブランドが強い証拠だ。
タイへの進出は、合弁で資本を軽くする賢い手だ。アジアは台湾での実績があり、同じ型を横に広げられる。国内の利益率が 2018 年の 5% 台まで戻り、米国の店が 9% に近づけば、純利益は 250 億円を超える。創業者の長男が副社長にいる体制も、経営の連続性を支える。
慎重な見方
利益の薄さが、すべてを物語っている。売上は 5 期連続で最高なのに、営業利益率は 2% 台のままで、今期の予想はさらに減益だ。中間決算でも純利益は 6% 減った。売上を増やしても、魚介と人件費の値上がりで利益が残らない。これは構造の問題だ。
値上げの余地もない。2 貫を 1 貫にする工夫は、客から見れば実質の値上げで、使い切ればあとがない。スシローとはま寿司は店数で並び、規模の差が仕入れと自動化投資の差になる。くら寿司は 3 番手で、追いつく道筋が見えない。
米国の黒字化は、1 億円の経常利益という入口にすぎない。1 店に数億円を使う出店が、資本コストを超える稼ぎを出す保証はない。上場子会社なので、利益の一部は少数株主に出ていく。中国では 3 店を閉めた前例もある。店は賃借が多く、家賃は売上が落ちても減らない。売上が 1 割落ちれば、赤字に戻る薄さだ。創業家の持ち分が動く中で、経営の規律が保たれるかも見えにくい。
どちらに重みを置いたか
利益の薄さと値決め力の弱さという慎重な見方が優勢だ。国内の営業利益率は 2% 台で、今期はさらに減益の予想になっている。米国の黒字化は朗報だが、まだ入口にすぎず、資本コストを超える稼ぎには遠い。そこで、やや悲観と悲観の確率を厚くし、楽観は 8% にとどめた。創業家の持ち分の動きのような個別の懸念は、資本コストには足さず、確率で表した。10 年後の中立でも、今の時価総額を下回り、還元を足しても届かない。総合では割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 2,473 円1,966 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 264 円210 億円)。 今の値に割り戻すと 1,378 円1,095 億円、今との差 −18.3%、 期待の年率 +5.0%(資本コスト 7.6%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,393 円5,082 億円 | 528 円420 億円 | +310.3% | +15.2% | 554 円440 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,300 円3,418 億円 | 396 円315 億円 | +178.4% | +10.8% | 1,033 円821 億円 |
| 中立 | 32% | 2,627 円2,088 億円 | 287 円228 億円 | +72.7% | +5.6% | 932 円741 億円 |
| やや悲観 | 26% | 564 円448 億円 | 164 円130 億円 | −56.9% | −8.1% | 189 円150 億円 |
| 悲観 | 12% | 235 円187 億円 | 0 円0 億円 | −86.1% | −17.9% | 28 円22 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,473 円1,966 億円 | 264 円210 億円 | +62.2% | +5.0% | 2,737 円2,175 億円 |
今の株価時価総額 1,687 円1,341 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.6% を下回るほど割高。
楽観 8% 米国が第二の柱になり、国内も利益率を戻す 利益 262 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 6,393 円5,082 億円
米国の出店が計画どおり続き、店数は 340 店規模に育つ。1 店の売上は 10 年で物価並みに伸び、立ち上がった店の利益率は 1 割に近づく。台湾に続いてタイなどアジアも 170 店ほどになり、現地パートナーとの合弁が資本を軽くする。国内は店数が 600 店まで増え、自動化と大きいネタで客単価を守って利益率が 5% 台まで戻る。大阪・関西万博のような話題づくりが毎年のように当たる年も混じる。創業者の田中邦彦氏の後も、米国の上場子会社と日本本体の役割分担が保たれ、株主の取り分も大きく割れない。ただ、ここまで全部当たる 10 年はまれだ。
- 国内くら寿司:数量 600(国内の店舗数(店))× 価格 4.23(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 2,539 億円・営業利益 132 億円。営業利益率 5.2%
- 北米(米国):数量 340(米国の店舗数(店))× 価格 6.64(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 2,257 億円・営業利益 203 億円。営業利益率 9%
- アジア(台湾ほか):数量 170(アジアの店舗数(店))× 価格 6.15(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 1,045 億円・営業利益 94 億円。営業利益率 9%
倍率:事業の純利益 262 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.5% が k 7.55% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍。全体の PER 19.18 倍、時価総額 5,025 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:米国の出店が 10 年とぎれず、国内の利益率も人手不足を自動化で吸収して戻る、という二つがそろう必要がある。直近の営業利益率は 2% 台まで落ちており、連続で当たる確度は高くない。
やや楽観 22% 米国の黒字化が定着し、国内は薄利のまま安定 利益 187 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 4,300 円3,418 億円
米国の出店は年 10 店前後で続き、260 店ほどになる。既存店が伸び、店の利益率は 7% 台に乗る。台湾は店を増やし、タイが小さく加わる。国内は店数が 580 店まで微増にとどまり、来店客数は人口減で細る。値上げと 2 貫を 1 貫にする工夫で単価を保ち、利益率は 4% 台まで戻る。魚介の仕入れ値は上がるが、米国の円安効果も利益に乗る。大きな買収や新業態はなく、地道な積み上げの 10 年になる。会社は 4,900 億円規模の売上を持つ、堅実な中堅チェーンとして評価される。国内の利益率は人手不足を自動化で吸収した分だけ戻り、米国と台湾の利益が全体の底上げに効く。ただ、スシローとはま寿司との規模の差は残る。
- 国内くら寿司:数量 580(国内の店舗数(店))× 価格 4.17(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 2,416 億円・営業利益 106 億円。営業利益率 4.4%
- 北米(米国):数量 260(米国の店舗数(店))× 価格 6.64(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 1,726 億円・営業利益 129 億円。営業利益率 7.5%
- アジア(台湾ほか):数量 135(アジアの店舗数(店))× 価格 6.15(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 830 億円・営業利益 66 億円。営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 187 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.7% が k 7.55% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍。全体の PER 18.03 倍、時価総額 3,372 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:米国は既存店の伸びと黒字化の入口に立っており、上振れの現実的な形。国内の利益率は戻るが前の水準までは届かない、という想定。
中立 32% 国内は成熟、米国とアジアが少しずつ利益を足す 利益 126 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 2,627 円2,088 億円
国内は 570 店でほぼ頭打ちになる。人口が減るので 1 店当たりの来店客数は 10 年で 5% ほど細る。物価分の値上げは通り、1 店の売上は 1.27 倍に伸びる。人件費と魚介の値上がりを自動化で吸収し、営業利益率は 3% 台後半までしか戻らない。米国は 190 店ほどに増え、店の利益率は 5% 台に上がる。アジアは台湾が柱で、110 店ほどになる。10 年後の会社は、売上が 4,300 億円規模、営業利益が 190 億円ほどの中堅の回転寿司チェーンだ。スシローやはま寿司との差は開いたまま、大きく詰まりもしない。
- 国内くら寿司:数量 570(国内の店舗数(店))× 価格 4.13(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 2,356 億円・営業利益 85 億円。営業利益率 3.6%
- 北米(米国):数量 190(米国の店舗数(店))× 価格 6.64(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 1,261 億円・営業利益 69 億円。営業利益率 5.5%
- アジア(台湾ほか):数量 110(アジアの店舗数(店))× 価格 6.15(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 676 億円・営業利益 47 億円。営業利益率 7%
倍率:事業の純利益 126 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 7.55% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.31 倍、時価総額 2,055 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の成熟と米国の拡大が両立する中心の筋書き。直近の減益と米国の黒字化の入口を、どちらにも寄せずに並べた。
やや悲観 26% 値上げが客数を削り、海外は赤字の瀬戸際が続く 利益 52 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 564 円448 億円
国内は値上げのたびに客足が鈍り、来店客数は 10 年で 1 割ほど減る。魚介と米の仕入れは上がり続け、2 貫を 1 貫にする工夫も使い切る。店数は 540 店で打ち止めになり、利益率は 2% 台に張りつく。米国は出店を絞り、130 店で止まる。店の利益率は 3% ほどで、本社費を引くとほとんど残らない。アジアも台湾の競争が強まり、80 店ほどで頭打ちになる。それでも黒字は保ち、配当は続くが、稼ぎは資本コストに届かない。会社は 3,400 億円規模の売上を持つが、利益は営業利益 80 億円ほどにとどまる。株主から見れば、規模の割に報われない 10 年だ。自動化投資を続けても、人件費の値上がりに追いつかない年が多い。
- 国内くら寿司:数量 540(国内の店舗数(店))× 価格 3.91(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 2,109 億円・営業利益 46 億円。営業利益率 2.2%
- 北米(米国):数量 130(米国の店舗数(店))× 価格 6.34(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 824 億円・営業利益 25 億円。営業利益率 3%
- アジア(台湾ほか):数量 80.0(アジアの店舗数(店))× 価格 5.73(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 459 億円・営業利益 23 億円。営業利益率 5%
倍率:ROE 5.6%(純利益 52 億円 ÷ 自己資本 930 億円)で k 7.55% に届かない。RONIC = k + 1/2 ×(5.6 − 7.8)= 6.7%、g 4.0% から正当化 PER = 10.7 倍で、伸びと堀の持ちを低く見てやや悲観は上限の 7.5 割の 8.0 倍に置いた(7 割へ引き上げない)。
確率:直近の営業利益率は 2% 台で、中間の営業利益は大きく減った。国内の客単価が客数を削る形は現実に起きており、慎重な見方がやや強い。
悲観 12% 国内の客離れと米国の撤退で、優良さを失う 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 235 円187 億円
国内は値上げに客が離れ、回転寿司の主役がスシローとはま寿司に固まる。くら寿司の店は 500 店まで減り、閉店と減損が続く。抗菌カバーやビッくらポン!という個性は他社にもまねされ、差にならない。米国は赤字が続き、70 店まで縮んで撤退も視野に入る。アジアは台湾が残るだけで、タイは出ない。売上は 2,500 億円前後と今と変わらず、営業利益は赤字に沈む。株主に残るのは、手元の純現金とわずかな店舗資産だけになる。配当は出せなくなる。創業者が築いた店という資産が残るので、再編や TOB の余地は残る。この筋書きでは、業態そのものは消えないが、個社の優位性は失われる。10 年間の累計の赤字と減損が、自己資本を 560 億円ほどまで削る。
- 国内くら寿司:数量 500(国内の店舗数(店))× 価格 3.65(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 1,823 億円・営業利益 9 億円。営業利益率 0.5%
- 北米(米国):数量 70.0(米国の店舗数(店))× 価格 5.94(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 416 億円・営業利益 −8 億円。営業利益率 -2%
- アジア(台湾ほか):数量 50.0(アジアの店舗数(店))× 価格 5.27(1 店当たり年間売上(億円。名目))→ 売上 264 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 2%
倍率:稼ぐ力は赤字で価値に足せない。純現金 230 億円から谷の赤字と閉店費用を引いた約 190 億円(floor_assets_oku)を床とし、今の自己資本 623 億円に対する PBR 0.30 倍で測った。店の家賃は固定の約束として残り、営業利益に織り込み済みで、店舗設備は売れても小さいので床には入れない。
確率:2020〜22 年に赤字を 3 年出した前例があり、利益率の薄さからみて、構造的に崩れる確率は無視できない。過去の谷の PBR からでなく、稼ぐ力と純現金から床を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内くら寿司
国内 540 店あまりの回転寿司チェーン。抗菌の寿司カバーやビッくらポン!などの工夫で家族客を取る。売上の約 7 割。
| 数量国内の店舗数(店) | 価格1 店当たり年間売上(億円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 542 | 3.25 | 1,764 | 40 |
| 10 年後 中立 | 570 | 4.13 | 2,356 | 85 |
取り方:2025/10 期の日本の売上 1,767 億円(約 72%)を店数 542 店で割った。営業利益は非開示で、全社 55 億円から海外の利益を引いて推定した。先の 1 店当たり売上は、物価 3%(10 年で 1.34 倍)に、人口減で来店客数が 10 年で 5% 細る分を掛け、中立で 1.27 倍とした。店数は市場の飽和で小さく増えるだけと置いた。
北米(米国)
NASDAQ 上場の子会社 Kura Sushi USA が運営する米国のくら寿司。2026 年 5 月末で 91 店、年内 100 店の計画。
| 数量米国の店舗数(店) | 価格1 店当たり年間売上(億円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 85.0 | 4.95 | 421 | 4 |
| 10 年後 中立 | 190 | 6.64 | 1,261 | 69 |
取り方:2025/10 期の北米売上 421 億円(約 17%)を、期末の米国店数の推定 85 店で割った。店数の内訳は海外 143 店から台湾を引いた推定。営業利益は、子会社が初の経常黒字(約 1 億円)になった段階とみて 4 億円と推定した。1 店当たり売上は物価 3% を乗せ、10 年で 1.34 倍とした。 数量は実物(店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
アジア(台湾ほか)
台湾(63 店)を中心とするアジアのくら寿司。2027 年にタイへ現地パートナーと合弁で進出予定。
| 数量アジアの店舗数(店) | 価格1 店当たり年間売上(億円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 58.0 | 4.59 | 266 | 18 |
| 10 年後 中立 | 110 | 6.15 | 676 | 47 |
取り方:2025/10 期のアジア売上 266 億円(約 11%)を台湾の店数の推定 58 店で割った。営業利益は非開示で、全社 55 億円から国内と米国の推定を引いて 18 億円とした。1 店当たり売上は物価 3% を乗せ、10 年で 1.34 倍とした。 数量は実物(店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
リスクと懸念
国内の利益率が戻らない
魚介と人件費の値上がりを客に通しきれず、営業利益率は 2% 台に張りついている。2 貫を 1 貫にする工夫は使い切れば終わりで、客数が割れれば営業利益が一気に落ちる。売上の 7 割を稼ぐ国内の薄利が、会社全体の弱点になっている。
米国の店が資本コストを超えない
米国は店数を増やしている最中で、1 店に数億円を使う。上場子会社は通期で黒字になったが、利益はまだ 1 億円ほどだ。既存店が伸びなくなれば、投資の回収が長引く。上場子会社の少数株主が、利益の一部を取っていく点も重い。
家賃という固定の約束
店の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても減らない。10 年分の約束は純現金の数倍と推定される。利益率が薄い会社ほど、売上の数%の落ち込みが赤字に直結する。新リース会計で貸借対照表に載ると、財務が見かけ上弱く映る。
首位集団との規模の差
スシローとはま寿司は国内店数で並び、くら寿司は売上で 2 位にとどまる。仕入れと自動化投資は規模の差が出る。値段で競り合う構造では、規模の小さい側が先に利益を削られる。
創業家と大株主の動き
2024 年 12 月に副社長が持ち株の一部を売り、筆頭株主はウォルナットコーポレーション、第 2 位は株式会社トラストになった。持ち分の動きが、経営の継続性や資本政策に影響する可能性がある。確かな中身は確認できていない。
食品安全と客の信頼
回転寿司は生魚を扱い、一度の事故や店内の迷惑行為が全店のブランドを傷つける。抗菌カバーなど安心を売りにしてきた会社ほど、信頼を失う打撃が大きい。
今後の分かれ目
- 国内の営業利益率が 4% を超えて安定したら
- 中立の国内の利益率 3.6% が低すぎたことになる。やや楽観と楽観に確率を寄せる。
- 米国の店の利益率が 8% を超え、子会社の黒字が定着したら
- 米国が第二の柱になる筋書きが現実になる。楽観・やや楽観を厚くする。
- 国内の既存店の客数が 2 期続けて前年を割ったら
- 値上げが客数を削る形が定着したことになる。やや悲観・悲観に確率を寄せる。
- 米国で閉店が出て、出店のペースが落ちたら
- 海外の投資が資本コストを超えない可能性が高まる。悲観側に重みを移す。
- 大株主の持ち分が大きく動き、再編や TOB の話が出たら
- 経営の方針が変わる可能性がある。内容を見て、資本政策の前提を見直す。
- 魚介の仕入れ値が円安などで大きく上がったら
- 国内の利益率が圧迫される。やや悲観側に寄せる。
見ておくもの
- 国内既存店の客数と客単価(月次)。値上げで客数が割れていないか
- 営業利益率(直近 2% 台)が 3% 台へ戻るか、2% を割るか
- 米国の店数(年内 100 店)と店の利益率、子会社の通期黒字の持続
- 台湾の既存店と、タイの合弁の出店ペース
- 魚介・米の仕入れ値と、2 貫を 1 貫にする工夫の客の反応
- 大株主(ウォルナットコーポレーション・株式会社トラスト)の持ち分の動きと、創業家の後継
倍率と資本コストの決め方
国内・北米・アジアの 3 つで店数(実質)× 1 店当たり売上(名目)を積み、自己資本は今の値に期間の純利益を足し還元を引いて流した(ROE は結果)。倍率は RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)と g 4.0% の正当化 PER の 8 割前後(楽観〜中立)に置き、今の株価や同業の倍率は見ていない。悲観は市場の PBR の底でなく、稼ぐ力(赤字で 0)と純現金 230 億円から谷の費用を引いた床で置いた。2028 年以降は新リース会計で家賃が借入と減価償却に変わるが、10 年後の数字は今と同じ家賃を費用に入れた形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.9→19.18 倍・やや楽観 PER 13.6→18.03 倍・中立 PER 12.2→16.31 倍)。
資本コスト 7.6% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.3% を足した 7.8%。個別のリスク(創業家の持ち分の動き・米国の上場子会社)は k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は黒字で傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.80% → 7.55%。