結論
タカキューは、「TAKA-Q」の名で紳士服を売る専門店チェーンだ。全国に113店を持ち、婦人服や雑貨の店も小さく営む。筆者の結論は「割高」で、いちばんの理由は、本業がほとんど稼げていないことにある。
2026年2月期の営業利益は0.2億円だった。純利益が11億円に膨らんだのは、持っていた投資有価証券を売った益で、毎年は出ない。売上は10%減って87億円まで縮み、2027年2月期も上半期は前年の9割を割っている。
財務は私的整理を経て落ち着いたが、自己資本20億円の半分は優先株だ。普通株の取り分は10億円ほどで、時価総額はその3倍にあたる。店はほとんど借りており、売上が落ちても家賃は落ちない。
筆者は、赤字寸前の黒字が続く姿を中心に置く。それでも10年後の価値は、今の時価総額の4分の1にも届かない。再建を応援したくなる会社だが、値段の面では冷静に見たい。決算書の黒字の中身を、まず疑ってかかるべきだ。
再建の途中で何度も見直された計画は、売上の縮みを止めるところまで届いていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安さに引かれてはいけない」型だ。PBRは1倍を超えるが、自己資本の半分は優先株で、普通株の取り分は薄い。
オーナーとして持ちたい会社の条件は、少ない元手で毎年安定して稼ぐことだ。タカキューは売上が縮み、本業の利益はゼロに近い。毎年の利益が資本コストに届かない会社では、帳簿の価値は安全域にならない。
再建が実って営業利益が1%台で定着すれば、小さな黒字の会社として値が付く。だが、その姿でも今の時価総額の半分に届かない。悪い筋書きでは、優先株と家賃が先に払われ、普通株は残りの小さな部分になる。安全域は、今の値段には見当たらない。筆者が見たいのは、本業の営業利益が売却益なしで3期続けて黒字になる姿だ。それが見えるまでは、払う値段に余裕のある会社とは言えない。
経営が資本をどう配分するかも評価に入れる。売れる株を売って財務を整えたのは妥当だが、これで資金の選択肢は狭まった。次の一手は、店と商品への投資に回すしかなく、その成果はまだ見えていない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、駅ビルや商業施設、郊外にある紳士服の店だ。「TAKA-Q」でスーツやシャツ、カジュアルを売り、「メイル・アンド・コー」でやや若い客に向けた服を出す。83店と16店で、合わせて売上の大半を占める。
もう一つの柱は、婦人服の「エム・エフ・エディトリアル」と、バッグの「グランバック」だ。12店と2店の小さな部隊で、赤字の年が多い。
お金の流れは小売そのものだ。店はほぼ借りていて、敷金と保証金を差し入れている。家賃は毎月必ず出ていき、季節の服は在庫を抱える。2022年2月期に債務超過になり、金融機関と投資ファンドの支援で立て直した。2024年には優先株を発行して資本を入れた。
売上は10年で3分の1に減った。店を畳み、売れ筋が足りない状態が続いた結果だ。新しい社長は「新しいタカキューをつくる」と掲げ、理念と店の形を作り直している。店の数は113まで絞られ、1店の売上を立て直せるかが次の課題になる。客数の減少を止める品ぞろえと、店の改装に使える資金の両方が要る。ここが再建の第2幕の勝負どころだ。
店の運営は、駅ビルと商業施設のテナントが多い。施設側の条件に左右されやすく、閉店も出店も自社の判断だけでは決められない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、ほぼ無い。紳士服の店は青山商事やAOKIと形が同じで、客は立地と値引きで選ぶ。タカキューは両社より小さく、仕入れの力でも広告でも見劣りする。
値段を決める力も弱い。スーツを着る機会は減り、ユニクロやネット通販が安い服で需要を奪う。原価と人件費が上がっても、客の財布は動かない。
資本効率は低い。過去7年のROEの中央値は1%に届かず、黒字の年も有価証券の売却益に頼った。経営は再建の途上で、資本の使い方を評価できる実績はまだ積めていない。
強みを探すなら、店の数をここまで絞り込めた身軽さと、閉店の実行力だ。ただ、それは守りの力で、稼ぐ力ではない。客を呼ぶ独自の商品や、他社にない売り場があるわけでもなく、再建が終わっても競争の条件は変わらない。経営の側も、先を見て投資するより、足元の資金繰りと店の整理に力を割く時期が長く続いた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
紳士服の市場は、長く縮んでいる。在宅の勤務とビジネスカジュアルが広がり、スーツを着る日が減った。コロナ後に少し戻ったが、構造は変わっていない。
競争は同じ形の店どうしで起きる。青山商事とAOKIの2強が店を絞って利益を守るなか、小さなチェーンは客の取り合いで不利になる。ユニクロやワークマンの機能服、通販の安いスーツも、客を削っていく。
商業施設の側も、客を呼べる店を優先して入れ替える。弱い店は場所を失いやすく、出店の条件も厳しくなる。人件費は物価と最低賃金で上がり続ける。出店の条件も厳しくなる。人件費は物価と最低賃金で上がり続ける。仕入れは円安で重くなる。店を減らして固定費を下げることで、かろうじて黒字を保つ形が続く。
10年のうちに、小さなチェーンどうしの再編や、大手への事業の売却が起きても不思議ではない。タカキューが買う側に回る力はなく、買われる側か、静かに店を減らし続けるかのどちらかだ。いずれの道でも、普通株主が主役になる場面は少ない。
景気との関わりも小さくない。就職や転職の多い年はスーツが売れ、冠婚葬祭の礼服は景気に関係なく一定の需要がある。ただ、この底がしっかりしていても、店の数を支えるほどの量はない。
資本政策と M&A
還元はない。普通株は無配で、A種とB種の優先株にだけ配当が出る。優先株は2024年に約5億円ずつ、投資ファンドと取引銀行が引き受けた。配当率と償還の条件は確かめられていない。
2026年2月期には、持っていた株を売って約11億円の益を得た。売れる資産はこれでだいぶ減った。残るのは店の敷金と保証金だ。
スポンサーには新株予約権も付いており、行使されれば普通株主の取り分は薄まる。優先株の償還が来る時には、現金の流出か新たな借入が要る。株主優待は確かめられず、あっても小さい。普通株主への還元は、再建が終わった後の話になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
再建の山は越えた。債務超過から抜け、借入を整理し、純現金も積んだ。店を113まで絞り、赤字の店は減っている。新しい社長のもとで売れ筋の品ぞろえを作り直せば、店あたりの売上は戻る。
紳士服は縮んでも、スーツを必要とする仕事は残る。大手が店を畳む分の客が小さな店に流れる可能性もある。営業利益が3〜4%まで戻れば、利益は数億円になり、今の値段を正当化できる。
有価証券の売却益で財務の傷を癒やした今こそ、立て直しの2年目に入る。優先株も、利益が出れば償還できる。小さな会社ほど、利益率が1ポイント動くだけで株の価値が大きく変わる。赤字寸前の今は、その変化の入り口に立っているともいえる。
経営体質も変わった。借入と優先株で資本の形を整え、赤字の店を畳む実行力を示した。新しい経営陣が、客の年齢層に合う商品に絞り込めば、大手の取りこぼす客を拾える。
借入の金利が上がる局面でも、純現金に近い財務なら利払いの重さは小さい。店舗網を絞った分、本社と物流の費用も軽くなっており、売上が横ばいになるだけで利益が出る体質には近づいている。
慎重な見方
売上は3年で3割縮み、2027年2月期の上半期もまだ1割減っている。本業の営業利益はゼロに近く、売却益を除けば赤字の会社だ。売れる株はもう売った。
店の家賃は固定で、売上が1割落ちれば利益がすぐに赤字へ戻る。人件費と仕入れは物価で上がり、値上げは客が許さない。紳士服の市場は構造的に縮む。
優先株の元本10億円は、普通株より先に払う約束だ。償還の時に現金か借入が要り、新株予約権が行使されれば普通株の取り分は薄まる。本業が弱いまま再編に巻き込まれれば、普通株主は不利な条件を呑むことになる。再建を支えたスポンサーや銀行は、普通株よりも自分の回収を優先する立場にある。
新しい社長の方針が成果に結びつくのは早くても数年先で、その間に市場はさらに縮む。同じ形の大手2強が店を絞って利益を守るなか、小さなチェーンが価格と品ぞろえで勝つ筋道は見えにくい。
利益の中身も疑わしい。売却益を除けば営業利益は0.2億円で、金利の上昇や家賃の改定が少し重なるだけで赤字に戻る。優先株の配当を払ったあとの普通株の利益は、実質ゼロだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。再建の実績はあるが、売上の縮みが止まらず、営業利益は売却益の陰に隠れた。確率は中立から悲観寄りに置き、楽観とやや楽観を合わせて2割強にとどめた。優先株と家賃が先に払われる構造を考えると、悲観側も軽く扱えず、やや悲観と悲観で3割台後半を置いた。確率の決め方は、利益の幅が小さいことを前提にしている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 33 円14 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 13 円6 億円、今との差 −82.2%、 期待の年率 −7.9%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 116 円48 億円 | 5 円2 億円 | +60.7% | +4.9% | 7 円3 億円 |
| やや楽観 | 17% | 61 円25 億円 | 0 円0 億円 | −19.2% | −2.1% | 10 円4 億円 |
| 中立 | 40% | 31 円13 億円 | 0 円0 億円 | −58.0% | −8.3% | 13 円5 億円 |
| やや悲観 | 25% | 10 円4 億円 | 0 円0 億円 | −87.2% | −18.6% | 2 円1 億円 |
| 悲観 | 12% | 4 円2 億円 | 0 円0 億円 | −95.2% | −26.2% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 33 円14 億円 | 0 円0 億円 | −56.1% | −7.9% | 33 円14 億円 |
今の株価時価総額 75 円31 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 売れ筋が戻り、店が小さく伸びる 利益 4 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 116 円48 億円
売れ筋が戻り、店の数は9割に絞ったうえで、1店の売上が物価を上回って伸びる。紳士服で営業利益率が4%まで上がり、婦人と雑貨も小さな黒字に変わる。優先株は利益で償還し、普通株への配当も再開する。それでも売上は今の3割増しにとどまり、大手の堀には届かない。優先株の元本と家賃を払ったあとの普通株の取り分は、それでも小さい。
10年後の姿を支えるのは、店の数ではなく1店あたりの稼ぎだ。商品開発と接客で客を呼べれば、値上げも通りやすくなる。新しいブランドや自社企画の商品が当たれば、粗利の率が上がる。人手不足の中でも、店の運営を絞ることで人件費の伸びを抑えられる。
- 紳士服(タカキュー・メイル・アンド・コー):数量 89.0(店舗数(店))× 価格 1.12(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 4 億円。店舗数 0.90 倍、1 店の売上 1.40 倍、営業利益率 4.0%
- 婦人服・雑貨(エム・エフ・エディトリアル・グランバック):数量 16.0(店舗数(店))× 価格 0.75(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。店舗数 1.14 倍、1 店の売上 1.40 倍、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.2% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.5 倍。全体の PER 11.47 倍、時価総額 41 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新しい社長のもとで品ぞろえが当たり、客が戻る筋書き。再建の実績があるので捨てないが、市場が縮むため確率は低くした。
やや楽観 17% 小さな黒字が定着する 利益 2 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 61 円25 億円
店は8割まで絞り、残った店の売上は物価並みに伸びる。営業利益率は紳士服で2.5%、婦人と雑貨で1%まで戻る。利益は2億円に届かず、優先株の配当を払うと普通株に残るのは小さい。借入で優先株を償還する余裕はない。売上が縮まないだけで、会社にとっては大きな成果だ。
この筋書きでは、借入や優先株の償還の負担も一定の範囲に収まり、財務の不安は遠のく。営業利益は2億円に届かないが、毎年黒字を出せること自体が信用になり、銀行との関係も安定する。上半期の売上が前年を割る現在の流れが止まり、横ばいに転じることが前提になる。
- 紳士服(タカキュー・メイル・アンド・コー):数量 81.0(店舗数(店))× 価格 1.07(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 87 億円・営業利益 2 億円。店舗数 0.82 倍、1 店の売上 1.34 倍、営業利益率 2.5%
- 婦人服・雑貨(エム・エフ・エディトリアル・グランバック):数量 14.0(店舗数(店))× 価格 0.70(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。店舗数 1.00 倍、1 店の売上 1.30 倍、営業利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 20 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再建の成果で営業利益が2%台に乗る筋書き。売上の縮みが止まるかが分かれ目で、上半期の9割弱の実績が重しになる。
中立 40% 店を減らしながら、薄い黒字を保つ 利益 1 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 31 円13 億円
紳士服の店は10年で4分の1減り、1店の売上は物価の伸びにやや届かない(客数が減る分)。営業利益率は1.5%で、過去12年の山の5%台には遠い。婦人と雑貨は店を2割減らして収支をほぼ均す。利益は1億円弱で、優先株の配当と税を引くと残りは薄い。この姿が10年続くと、会社は存続するが、普通株には大きな値上がりの余地がない。
再建の完了と、小さな黒字の定着。会社は続くが、大きく伸びる理由も見つからない姿だ。家賃と人件費の上昇を、店の絞り込みでかろうじて吸収する。婦人服と雑貨は店を減らして赤字を止め、本社費は物価と同じ速さで増える。償却は小さく、10年の設備投資は店の改装を中心に年1億円前後にとどまる。
- 紳士服(タカキュー・メイル・アンド・コー):数量 74.0(店舗数(店))× 価格 1.02(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 1 億円。店舗数 0.75 倍、1 店の売上 1.28 倍、営業利益率 1.5%
- 婦人服・雑貨(エム・エフ・エディトリアル・グランバック):数量 11.0(店舗数(店))× 価格 0.69(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。店舗数 0.79 倍、1 店の売上 1.28 倍、営業利益率 0.5%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.8% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 10 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店を減らして固定費を抑え、薄い黒字を保つ筋書き。ここ数年の実績に最も近く、10年の中心に置く。
やや悲観 25% 売上が縮み、赤字へ戻る 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 10 円4 億円
店は4割減り、1店の売上は物価の伸びに追いつかない。家賃は売上ほど減らず、営業利益はほぼゼロになる。優先株の配当と税で純利益は小さな赤字で、自己資本は今を割る。再編や事業の売却の話が出るが、普通株の条件は良くない。売上が縮む会社に、買い手は高い値を付けない。
売上が縮み続けるなかで、自己資本は今の水準を割り込む。優先株の償還は先送りされ、新しい資金調達の話も出る。営業利益率は0.5%まで下がり、本社費の物価上昇を吸収できない。店の改装を止めるため、さらに客が離れる悪循環に入る。取引銀行は貸出の条件を厳しくし、優先株の配当の支払いも重荷になる。
- 紳士服(タカキュー・メイル・アンド・コー):数量 59.0(店舗数(店))× 価格 0.96(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 57 億円・営業利益 0 億円。店舗数 0.60 倍、1 店の売上 1.20 倍、営業利益率 0.5%
- 婦人服・雑貨(エム・エフ・エディトリアル・グランバック):数量 8.0(店舗数(店))× 価格 0.59(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。店舗数 0.57 倍、1 店の売上 1.10 倍、営業利益率 -3.0%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロで、PERは使えない。今の自己資本20億円の約2割。そのうち半分が優先株で、普通株の取り分は薄い。
確率:紳士服の縮みが続き、家賃の固定費が利益を食う筋書き。上半期の売上が9割を割る今の流れの延長で、確率を厚くした。
悲観 12% 再建が行き詰まり、優先株が先に払われる 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 4 円2 億円
売上が半分近くまで縮み、店の数は4割に減る。家賃の固定費が重く、営業赤字が毎年続く。優先株と借入が先に払われ、普通株の取り分は小さな部分になる。増資や再編が起き、普通株は大きく薄まる。この筋書きでは、再建のたびに普通株が割を食う形が繰り返される。
最終的には、事業の一部の売却や、スポンサーによる再編を受け入れる形になる。家賃の高い店から順に閉めるが、解約の違約金と原状回復の費用がかさむ。閉店が利益の改善より先に現金を減らす。取引銀行と優先株の保有者が主導する再建計画に入り、普通株主は発言力を失う。
- 紳士服(タカキュー・メイル・アンド・コー):数量 40.0(店舗数(店))× 価格 0.84(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 −1 億円。店舗数 0.40 倍、1 店の売上 1.05 倍、営業利益率 -2.0%
- 婦人服・雑貨(エム・エフ・エディトリアル・グランバック):数量 4.0(店舗数(店))× 価格 0.54(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。店舗数 0.29 倍、1 店の売上 1.00 倍、営業利益率 -8.0%
倍率:稼ぐ力は赤字で、今の自己資本20億円の約7%。優先株と家賃が先に払われ、普通株の取り分は床の売れる資産より小さい。
確率:客離れと家賃の固定費で赤字が積もり、再び支援を仰ぐ筋書き。債務超過の前歴がある会社として、確率を薄くしすぎなかった。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
紳士服(タカキュー・メイル・アンド・コー)
駅ビル・商業施設・郊外の店でスーツ・シャツ・カジュアルを売る。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 99.0 | 0.80 | 79 | 1 |
| 10 年後 中立 | 74.0 | 1.02 | 76 | 1 |
取り方:店数はタカキュー83店とメイル・アンド・コー16店の計99店。売上は開示が全社だけなので、店数に応じた割り振りの推定で、1店約0.8億円。営業利益は本社費を店に割り振った推定。
婦人服・雑貨(エム・エフ・エディトリアル・グランバック)
婦人服のエム・エフ・エディトリアルとバッグのグランバックの小さな店を営む。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 14.0 | 0.54 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 11.0 | 0.69 | 8 | 0 |
取り方:店数はエム・エフ・エディトリアル12店とグランバック2店の計14店。全社売上86.7億円から紳士服の分を引いた約7.5億円と推定し、1店約0.54億円。小さな店で赤字と置いた。
リスクと懸念
売上の縮み
売上は3年で3割縮み、2027年2月期の上半期も前年比で9割を割った。店の閉鎖と売れ筋の不足が続くと、固定費が重くなる。縮みが止まるかが、この会社の分かれ目だ。
固定の家賃
店はほぼ借りていて、家賃は売上が落ちても毎月出ていく。純現金や自己資本比率は見かけほど強くない。2028年2月期から新リース会計で負債の形が変わるが、約束の重さは同じだ。
優先株の元本
A種とB種の優先株は、合わせて約10億円。普通株より先に払う約束で、償還の時に現金か借入が要る。配当と償還の条件は確かめきれておらず、普通株主の取り分は見かけより薄い。
売却益に頼る利益
2026年2月期の純利益11億円は、有価証券の売却益だ。売れる資産はこれでだいぶ減った。次に利益が出る時は、本業の力だけで稼ぐことになる。
新株予約権による薄まり
スポンサーに新株予約権が付いている。行使されれば普通株の数が増え、普通株主の取り分が薄まる。条件は確かめられておらず、筋書きの数字には入れていない。
再建の後戻り
債務超過に陥り、私的整理で再建した前歴がある。再び赤字が積もれば、次の支援は普通株に厳しい条件になりやすい。
今後の分かれ目
- 営業利益が3期続けて1億円を超える
- 縮みが止まったとみて、中立の利益率を上げ、楽観側の確率を厚くする。
- 月次の売上が前年比で9割を割り続ける
- やや悲観の確率を上げる。家賃の固定費が利益を食う。
- 優先株の償還や買い戻しが発表される
- 普通株の取り分が整理され、財務の不安は下がる。ただし借入で払うなら利払いが増える。
- 新株予約権が行使される
- 普通株の数が増え、1株あたりの価値は薄まる。会社全体の価値は変わらない。
- 大手や同業から事業の統合を持ちかけられる
- 普通株の条件は売上と利益の弱さで決まる。悲観側の筋書きで起きやすい。
見ておくもの
- 月次の既存店売上(前年比)
- 営業利益(有価証券の売却益を除く)
- 店舗数と閉店の数
- 優先株の償還の条件
- 家賃を含む販管費の率
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEと資本コスト9.5%から決めた。全筋書きでROEがkを下回り、PERの上限は10倍。縮む市場なので上限の8〜9割に置き、今の株価や過去の評価からは置いていない。10年の価値が今の時価総額を大きく下回るが、赤字寸前の事業に対する自然な結果で、今の株価に寄せて倍率を上げる理由はない。新リース会計で2028年2月期から営業利益と純負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ家賃を営業費用に入れた形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9→11.47 倍・やや楽観 PER 8.5→10.53 倍・中立 PER 8→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 0.5%。k = 基本 7.5% + quality 2.0% + 上乗せ 0.5% = 10.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 10.00% → 9.50%。