結論
ニチリョクは墓地と納骨堂の販売、葬儀を手がける小さな会社だ。霊園の区画を宗教法人から預かって売り、墓石を施工し、葬儀の企画も受ける。筆者の結論は、事業の稼ぐ力が細り、今の時価総額に見合う利益を10年で出す道筋は描きにくい、というものだ。
売上は2026年3月期に17億円まで縮み、営業損失は4億円を超えた。葬儀会館「ラステル新横浜」を15億円で譲渡して借金を減らしたが、稼ぎの源だった会館を手放したことでもある。2027年3月期の第1四半期も営業赤字が続いた。
強みは、墓の販売で宗教法人の信頼を積み上げた実績と、新たに取得した自動搬送式納骨堂「縁の園」(約6,500基)だ。売れる区画が増えれば手数料が積み上がる。ただ、販売できる霊園在庫の減少が成約の減る一因になっており、供給の細りはまだ解けていない。
財務は薄い。純借入は12億円で、純資産の4割にあたる。有価証券報告書には継続企業の前提に関する重要事象等の認識もある。大株主のファンドが4割を握り、増資で資金を入れる可能性もあるため、既存株主の取り分が薄まる懸念は消えない。
中立の見立てでは、売上は20億円弱で小さな黒字に戻る。ただし利益は1億円に届かず、資本コストを稼げない水準だ。筆者は資産の帳簿価格ではなく、この稼ぐ力で値打ちを測る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は買いたい種類の事業ではない。事業の稼ぐ力が細り、10年後に今より強いとは言いにくい。オーナー利益(株主が自由にできる利益)は、いま赤字で、黒字になっても借入の利払いに消えやすい。
時価総額が純資産の4割しかない点は安全域に見えるが、帳簿の中身を疑う必要がある。霊園在庫や不動産は、売れて初めて現金になる。在庫が売れる速さは年に数億円で、帳簿の資産が現金に変わるまでには何年もかかり、減損が出る可能性も高い。
経営の資本の使い方にも、一貫性は見えにくい。会館を売って借金を返し、次は納骨堂を買う。その判断が正しいかは、数年たたないとわからない。大株主が経営を握る会社では、少数株主の取り分を守る約束がないことも気になる。
筆者は、稼ぐ力に基づく価値を中心に置く。帳簿の資産は、悲観の床に使うときだけ売値で測る。そのうえで、わからない事業には高い値を払わない。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく三つある。屋外墓地、納骨堂、葬祭だ。2026年3月期の売上で見ると、葬祭が10億円、屋外墓地が5.6億円、納骨堂が1.4億円になる。
屋外墓地は、宗教法人と業務提携を結び、墓地の募集と販売を代行する。同時に墓石を販売し、施工まで請け負う。1区画あたりの契約額が大きく、広告で見込み客を集め、営業担当が契約に結びつける形だ。石材は輸入が多く、為替に利益が動く。
納骨堂は、宗教法人の堂内の陵墓を募集代行し、手数料を受け取る。在庫を持たない軽い事業で、墓じまいや承継者のいない人の需要に合う。2026年5月に、文京区の自動搬送式納骨堂「縁の園」を事業譲受した。販売できる区画は約6,500基で、差入保証金を伴わないモデルだ。
葬祭は、生花祭壇葬や「ニチリョク安心パック」を提供する。2025年9月に葬儀会館「ラステル新横浜」を譲渡したため、売上は一段下がる見通しだ。今後は施設を持たず、紹介や受託で件数を取る軽い形に寄る。
会社は終活の入口で顧客と接点を持ち、墓じまい、納骨堂、葬儀へと案内する「終活プラットフォーマー」を掲げる。2026年5月には、終活事業を完全子会社へ移し、持株会社へ移る方針を決めた。従業員は80名ほどの小さな組織だ。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社に強い堀はないと見る。墓地の区画は宗教法人のもので、会社は販売の代行者だ。法人との関係が切れれば商品がなくなる。紹介を受ける側の立場にあり、価格を自分で決める力は弱い。
良い点は、長年築いた宗教法人とのつながりと、墓石の施工を含めて一括で提供できる点だ。納骨堂は在庫の負担が軽く、軌道に乗れば利益率が高くなる。
悪い点は多い。売上は10年前の水準から半分近くに縮み、赤字の期が続く。2026年3月期は、営業損失4.2億円に加えて、3.7億円の減損損失を計上した。営業のキャッシュフローは4.5億円の支出だ。販売できる霊園在庫が減り、成約が細る悪循環もある。
財務の面では、シンジケートローンに財務制限条項が付いており、抵触すれば期限の利益を失う恐れがある。差入保証金の回収が長引く問題と、債務保証の履行リスクも記載されている。
経営の資本の使い方は、守りから攻めへの転換を掲げるものの、実績はまだ乏しい。大株主が経営の舵を握る体制では、少数株主の取り分に気を配る必要がある。筆者は、この点を確率の置き方に反映させる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の死亡者数は年に160万人前後で、2040年ごろまで緩やかに増える。葬儀と納骨の需要は、人口が減る国でも件数だけを見ればまだ増える数少ない分野だ。ただ、売れる中身が変わっている。
家族葬と直葬が広がり、葬儀の単価は下がっている。参列者が減り、花祭壇や返礼品の売上が細る。大手の公益社、ティア、燦ホールディングスなどは会館網と価格の分かりやすさで客を取り込み、小さな事業者は価格競争で苦しい。
墓も変わる。承継者がいない家が増え、墓じまいが増え、屋外の墓地は新規の区画が売れにくくなった。代わりに納骨堂、樹木葬、永代供養墓が伸びる。都心の自動搬送式納骨堂は、参拝のしやすさから需要が厚い。
この領域に属する同業は上場会社にほとんどなく、近い「火葬・葬祭」の領域では、件数が増え、価格は物価並みを上限とする置き方になっている。筆者はこれに揃え、屋外墓地は墓じまいと承継者不足で数量を減らし、納骨堂は取得した「縁の園」で数量を増やして置く。
価格は、葬儀が物価に届かず1.30倍、墓は石材の輸入で物価並みの1.34倍とした。人件費は最低賃金の上昇で名目年3〜5%増え、小さな会社には重い。販売できる区画を確保できるかが、10年を通じて最大の制約になる。
資本政策と M&A
配当は無配で、2026年3月期の期末配当も見送った。大株主はバリューアップ・ファンド投資事業有限責任組合で、約4割を握る。運営会社のアリスタゴラ・アドバイザーズとあわせて親会社にあたる。
資本政策では第三者割当増資による希薄化が有価証券報告書のリスクに挙がる。事業譲渡で得た15億円を借入の返済に回し、2026年3月期は長期借入金を6.5億円返した。2026年5月には「縁の園」を譲り受け、成長投資を再開している。
M&Aは売る側にも買う側にもなる会社で、規模が小さい分、一つの案件が財務に響く。時価総額は純資産を大きく下回るため、買収の標的にもなりうる。TOBの発表は確認できていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
「縁の園」が当たれば、会社の姿は一変する。都心の自動搬送式納骨堂は、墓参りの利便性と墓じまいの需要の両方を取り込める。6,500基のうち半分が10年で売れれば、手数料だけで毎年数億円が積み上がる。差入保証金を伴わないモデルなので、資本をほとんど食わない。
葬祭は施設を手放したあとも、紹介と受託で件数を増やせる。死亡者数は2040年ごろまで増えるため、件数の追い風は10年続く。直葬の増加で単価が下がっても、安心パックなどの事前契約で顧客を囲い込める。
会館の売却で借入は減り、利払いの負担も軽くなった。固定費の削減が進めば、売上が20億円台でも営業利益率は10%台に乗る。過去に営業利益率が10%を超えた年は何度もある。
さらに、大株主のファンドが経営再建の専門家なら、不採算の整理と成長への集中が進みやすい。再建が成功すれば、株主の側から見ても資本の効率は上がる。
時価総額が純資産の4割にとどまる点も、市場が事業の再建を織り込んでいない証拠だ。納骨堂の手数料が積み上がれば、利益は数年で黒字に転じ、財務の不安も遠のく。2026年5月に持株会社体制への移行を決めたのは、事業ごとの採算を明確にして、再建を速める準備でもある。
慎重な見方
売上は10年前から半分近くに縮み、赤字の期が続いている。2027年3月期の第1四半期も営業赤字で、経常赤字は営業赤字の2倍に膨らんだ。会社予想の黒字転換には、残りの期間で大きな改善が要るが、その根拠は見えにくい。
販売できる霊園在庫が減っており、供給の細りは新規の取得なしには解けない。屋外墓地は墓じまいが増える構造的な逆風にある。葬祭は直葬の増加と価格競争で単価が下がり、大手の会館網に勝てない。
財務の面では、財務制限条項への抵触、債務保証の履行、差入保証金の回収の遅れが並ぶ。有価証券報告書には継続企業の前提に関する重要事象等が記されている。資金が尽きれば増資に頼ることになり、既存株主の取り分は薄まる。
最後に、大株主が4割を握る支配構造がある。会社が少数株主の利益より支配株主の都合を優先するなら、資産が帳簿の値で株主に戻る保証はない。
持株会社への移行は、終活事業を完全子会社に切り出す再編で、事業の採算は見えやすくなる反面、資産を子会社に移して処分や担保に回す自由度も増す。大株主の意向次第で、少数株主に不利な形の再編が進む恐れは消えない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。赤字の継続、財務制限条項、増資の可能性、支配株主の存在という材料が重なる。強気の見方が頼る「縁の園」は、取得したばかりで実績がなく、売上に表れるのは数年先になる。
そこで確率は、小さな黒字にとどまる中立を最も厚く置き、やや悲観と悲観を合わせて4割強とした。楽観は、新しい納骨堂が当たって再建も進む場合に限り、1割に満たない確率にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 33 円6 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 13 円2 億円、今との差 −79.6%、 期待の年率 −6.0%(資本コスト 10.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 118 円22 億円 | 11 円2 億円 | +104.7% | +7.4% | 9 円2 億円 |
| やや楽観 | 17% | 61 円11 億円 | 3 円1 億円 | +1.5% | +0.1% | 11 円2 億円 |
| 中立 | 33% | 26 円5 億円 | 0 円0 億円 | −58.7% | −8.5% | 9 円2 億円 |
| やや悲観 | 25% | 16 円3 億円 | 0 円0 億円 | −74.2% | −12.7% | 4 円1 億円 |
| 悲観 | 18% | 8 円2 億円 | 0 円0 億円 | −87.1% | −18.5% | 1 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 33 円6 億円 | 1 円0 億円 | −46.0% | −6.0% | 34 円6 億円 |
今の株価時価総額 63 円12 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 納骨堂が当たり、再建が進む 利益 2 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 118 円22 億円
「縁の園」が10年かけて5割以上の区画を売り切り、納骨堂の数量は今の3倍になる。差入保証金を伴わない軽いモデルで、手数料は営業利益率で4割近くに乗る。屋外墓地は墓じまいの流れで減るが、墓石の施工を含む高単価の契約を絞り込み、収益性を上げる。
葬祭は会館を持たない形で件数を保ち、事前契約が単価の下げを補う。本社費は事業の絞り込みで物価の伸びを下回り、営業利益は3億円台に戻る。
借入は完済に近づき、利払いの負担が軽くなる。配当を再開できる水準に達するが、成長投資を優先して還元は小さい。大株主のファンドが再建を主導し、少数株主の取り分も守られる前提だ。
実現には複数の条件が揃う必要があり、確率は1割に満たない。
- 屋外墓地・墓石:数量 407(年間成約件数(件、推定))× 価格 210(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。407件×1件210.3万円、営業利益率 18%
- 納骨堂(手数料):数量 540(年間成約件数(件、推定))× 価格 108(1件あたり手数料(万円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。540件×1件108.3万円、営業利益率 38%
- 葬祭:数量 850(年間施行件数(件、推定))× 価格 137(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。850件×1件137.3万円、営業利益率 10%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 10.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 9.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 9.5 倍。全体の PER 9.52 倍、時価総額 22 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:納骨堂が当たり、再建と財務の改善が同時に必要になる。実績のない現状では1割に満たない確率とした。
やや楽観 17% 納骨堂が育ち小さな黒字が定着 利益 1 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 61 円11 億円
「縁の園」が計画の6割ほどのペースで売れ、納骨堂の数量は2.4倍になる。屋外墓地は横ばいに近い水準で踏みとどまり、墓石の施工で単価を保つ。葬祭は、事前契約が単価の下げを一部補う。
売上は22億円ほどで、営業利益率は8%台まで戻る。固定費は絞られているが、人件費が物価で上がるため、改善の幅は大きくない。
借入は少しずつ減り、利払いが利益を食う状況は和らぐ。配当は再開しても小さな額にとどまる。小さな黒字が毎年出る会社に戻るが、資本コストを上回る稼ぎにはならない。
葬祭の件数は死亡者数の増加に支えられるが、直葬の広がりで単価が伸びず、ここは横ばいに近い。財務制限条項は守れる水準で、増資は避けられる。
- 屋外墓地・墓石:数量 370(年間成約件数(件、推定))× 価格 206(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。370件×1件205.8万円、営業利益率 16%
- 納骨堂(手数料):数量 432(年間成約件数(件、推定))× 価格 106(1件あたり手数料(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。432件×1件105.9万円、営業利益率 36%
- 葬祭:数量 750(年間施行件数(件、推定))× 価格 135(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。750件×1件135.3万円、営業利益率 9%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.7% が k 10.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 9.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 9.5 倍。全体の PER 9.52 倍、時価総額 11 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:縁の園が計画の半分強のペースで売れる筋書き。取得したばかりで実績がなく、2割弱にとどめた。
中立 33% 縮小が止まり小さな黒字へ 利益 1 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 26 円5 億円
屋外墓地は数量が1割減り、価格は物価並みの1.34倍で、売上は6億円台に戻る。納骨堂は「縁の園」の販売で数量が2倍になり、手数料が積み上がる。葬祭は会館を手放した分だけ数量が縮み、価格は葬儀の単価下落で1.30倍にとどまる。
売上は20億円に届かず、営業利益率は5%台で、営業利益は1億円ほどになる。本社費は物価で増えるが、事業の整理で据え置きに近づける。借入の利払いが利益を削り、純利益は5千万円ほどにとどまる。
最初の数年は赤字が続き、自己資本は少し減る。財務制限条項を守れるかが焦点で、守れるなら配当はまだ出せない。10年後の姿は、小さな黒字の会社が借入と折り合いをつけて生き残る形だ。
- 屋外墓地・墓石:数量 333(年間成約件数(件、推定))× 価格 201(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。333件×1件201.3万円、営業利益率 15%
- 納骨堂(手数料):数量 360(年間成約件数(件、推定))× 価格 104(1件あたり手数料(万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。360件×1件104.3万円、営業利益率 35%
- 葬祭:数量 680(年間施行件数(件、推定))× 価格 133(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。680件×1件133.2万円、営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 0 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 1.8% が k 10.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 9.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 9.5 倍。全体の PER 9.52 倍、時価総額 5 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:縮小が止まり小さな黒字にとどまる落としどころ。強気・慎重の中間として最も厚く置いた。
やや悲観 25% 赤字が続き資産を削りながら縮む 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 16 円3 億円
「縁の園」の販売は計画に届かず、屋外墓地の数量は墓じまいで4分の3に減る。葬祭は直葬の増加と大手の会館網に押され、数量は6割に縮む。価格は物価に届かず、1.2倍前後にとどまる。
売上は15億円前後に縮み、営業利益はほぼゼロ。借入の利払いと減損が重く、赤字の期が続く。自己資本は20億円ほどまで細り、財務制限条項に抵触して返済条件の見直しを迫られる。
資産を売って借入を返す流れが進み、事業は小さく縮む。株主の取り分は帳簿の資産より大きく目減りし、売れる資産の値打ちを厳しく見る必要がある。
持株会社化で事業ごとの採算は見えやすくなるが、赤字の事業を抱え続ける余裕はなく、屋外墓地の営業の人員は絞り込まれる。成約が減れば在庫の回転が落ち、減損がさらに積み上がる悪循環になる。
- 屋外墓地・墓石:数量 278(年間成約件数(件、推定))× 価格 195(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。278件×1件195.3万円、営業利益率 10%
- 納骨堂(手数料):数量 216(年間成約件数(件、推定))× 価格 100(1件あたり手数料(万円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。216件×1件100.2万円、営業利益率 30%
- 葬祭:数量 600(年間施行件数(件、推定))× 価格 123(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。600件×1件123.0万円、営業利益率 4%
倍率:利益が出ないため PER は使えず、売れる資産の税後を今の自己資本(29億円)に対する比(約1割)で表した。
確率:赤字が続き、減損と財務制限条項への抵触で資産を削る筋書き。直近の赤字の深さを踏まえ、4分の1とした。
悲観 18% 資金繰りが詰まり増資や整理に追い込まれる 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 8 円2 億円
新しい納骨堂が売れず、販売できる霊園在庫も枯渇する。屋外墓地の数量は半分、葬祭は半分以下に縮み、営業赤字が毎年続く。財務制限条項に抵触して期限の利益を失い、資金繰りが詰まる。
大株主のファンドが増資で支えるか、資産を処分して整理するかの選択を迫られる。増資なら既存株主の取り分は大きく薄まり、整理なら在庫や不動産は安値でしか売れない。債務保証の履行や差入保証金の回収の遅れも、手元の資金を削る。
この筋書きでは、事業の価値はほぼなくなり、残る株主価値は売れる資産から借入と保証債務を引いた残りだけになる。清算されない限り、その使い方は少数株主には決められない。
- 屋外墓地・墓石:数量 185(年間成約件数(件、推定))× 価格 180(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。185件×1件180.2万円、営業利益率 0%
- 納骨堂(手数料):数量 144(年間成約件数(件、推定))× 価格 96(1件あたり手数料(万円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。144件×1件96.2万円、営業利益率 10%
- 葬祭:数量 450(年間施行件数(件、推定))× 価格 118(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。450件×1件117.9万円、営業利益率 -5%
倍率:赤字で PER は使えない。売れる資産から借入・保証債務を引いた残りを、今の自己資本に対する比(約5%)で表した。
確率:継続企業の前提の重要事象等、財務制限条項、増資の可能性が揃う。支配株主の存在もあり、2割弱が妥当。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
屋外墓地・墓石
宗教法人の墓地の募集代行と墓石の販売・施工。
| 数量年間成約件数(件、推定) | 価格1件あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 370 | 150 | 6 | −1 |
| 10 年後 中立 | 333 | 201 | 7 | 1 |
取り方:売上は開示(屋外墓地5.56億・納骨堂1.44億・葬祭10.25億)。件数と単価は開示がなく、売上を件数で割る推定。セグメント利益の開示はなく、営業損失4.2億円を事業と本社費に推定で配分。
納骨堂(手数料)
宗教法人の納骨堂の募集代行の手数料。縁の園を含む。
| 数量年間成約件数(件、推定) | 価格1件あたり手数料(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 180 | 80 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 360 | 104 | 4 | 1 |
取り方:売上は開示(屋外墓地5.56億・納骨堂1.44億・葬祭10.25億)。件数と単価は開示がなく、売上を件数で割る推定。セグメント利益の開示はなく、営業損失4.2億円を事業と本社費に推定で配分。
葬祭
生花祭壇葬・安心パックなどの葬儀の企画・施行。
| 数量年間施行件数(件、推定) | 価格1件あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 103 | 10 | −1 |
| 10 年後 中立 | 680 | 133 | 9 | 1 |
取り方:売上は開示(屋外墓地5.56億・納骨堂1.44億・葬祭10.25億)。件数と単価は開示がなく、売上を件数で割る推定。セグメント利益の開示はなく、営業損失4.2億円を事業と本社費に推定で配分。
リスクと懸念
財務制限条項と資金繰り
シンジケートローンに財務制限条項が付く。赤字が続けば抵触して期限の利益を失う恐れがあり、継続企業の前提の重要事象等も認識されている。
第三者割当増資による希薄化
有価証券報告書に希薄化のリスクが挙がる。増資で資金を入れれば、既存株主の取り分は薄まる。大株主の都合が優先される恐れもある。
霊園在庫の枯渇と減損
販売できる区画が減り、成約が細る。帳簿の在庫や不動産に追加の減損が出る可能性があり、純資産の見かけの厚さを割り引く必要がある。
葬祭の単価下落と大手との競争
直葬や家族葬の広がりで単価が下がる。大手の会館網と価格の分かりやすさに、小さな事業者は勝ちにくい。会館の譲渡で施設の強みも手放した。
差入保証金と債務保証
差入保証金の回収が長引くおそれと、債務保証の履行リスクが記載されている。手元の資金を予想外に削る材料になる。
宗教法人との関係と法規制
墓地の区画は宗教法人のものだ。関係が切れれば商品を失う。墓地埋葬法などの許認可や規制の変更も事業に響く。
石材の輸入と為替
墓石の石材は輸入が多い。ドル円150円の前提が変われば、仕入れ原価が動き、採算が崩れる年もある。
今後の分かれ目
- 「縁の園」の販売が年100基を超えたら
- 納骨堂の手数料が積み上がる。楽観・やや楽観の確率を引き上げ、黒字化の道筋が見える。
- 第2四半期以降も営業赤字が続き、通期予想が下方修正されたら
- やや悲観・悲観に重みを移す。財務制限条項の状況を確認する。
- 第三者割当増資が発表されたら
- 発行価格と株数で既存株主の取り分を再計算する。資金繰りの不安は和らぐが、希薄化の幅が焦点になる。
- ファンドが株の売却や公開買付けに動いたら
- 事業の価値でなく買い手の評価で動く。条件を見て再評価する。
- 霊園在庫の追加取得や宗教法人との新規提携が決まったら
- 供給の細りが解ける。屋外墓地の数量の置き方を見直す。
見ておくもの
- 四半期の営業損益と経常損益の差
- 財務制限条項の充足状況
- 「縁の園」の販売基数
- 霊園在庫の残高と減損
- 大株主の動向
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(ROE が k 以下なので上限 1÷k)から置き、今の株価や同業の倍率は使っていない。中立の PBR が0.14倍と低いのは、ROE 2%の稼ぐ力で測った結果で、霊園在庫が現金に変わる速さは年数億円にとどまるため。今の時価総額が純資産の4割という事実は結果であり、筋書きの出発点にしていない。帳簿の資産は悲観の床にのみ使い、簿価の3〜5割の売値で見た。賃借の拠点のリースは新リース会計基準で形が変わるが、今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→9.52 倍・やや楽観 PER 9→9.52 倍・中立 PER 8→9.52 倍)。
資本コスト 10.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。