結論
エディオンは西日本を地盤とする家電量販店の大手だ。売上は 7,900 億円、店は FC を含めて 1,180 ある。筆者の結論は「割高」で、いちばんの理由は資本の効率にある。自己資本 2,300 億円に対し、純利益は 150 億円ほどにとどまる。
いま最も目を引くのは、ヤマダホールディングスとの経営統合だ。2026 年 6 月に基本合意し、2027 年 10 月に共同の持株会社を作る計画である。ただ統合比率は決まっていない。期待が先に値段へ乗っていると筆者は見る。
足元の事業は悪くない。2026 年 3 月期の営業利益は 258 億円で、前の期より 10% 増えた。猛暑でエアコンが売れ、PC の買い替えも重なった。ただし PC は Windows 10 の終了に伴う特需で、続かない。冷蔵庫・洗濯機・リフォームは前年を割った。
会社は 2030 年度に純利益 200 億円、ROE 8% を掲げる。届いても資本コストの 8.25% には足りない。資本コストを下回る稼ぎしかない会社は、帳簿の自己資本ほどの価値を持ちにくい。
中立の筋書きでは、10 年後の純利益は 200 億円、倍率は 10 倍台にとどまる。配当と自社株買いを足しても、今の時価総額に届かない。今の値段が正当化されるのは、利益率が 4% を超える強気の筋書きだけだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、エディオンは「堅い会社」だが「魅力的な資本の使い手」ではない。事業が突然壊れる心配は小さい。ただ、積み上げた資本に見合う稼ぎが出ていない。
オーナーとして持ち続けたいかを問えば、答えは「値段しだい」だ。自己資本 2,300 億円で純利益が 150 億円なら、その資本は資本コストを下回る稼ぎしか生まない。稼いだお金を配り、積み上げを止めてこそ、株主の取り分が増える。
本質価値は、ならした稼ぐ力で測る。筆者は 10 年後の純利益を 200 億円前後と見る。名目で 3% ほどの伸びだが、資本コストを超える水準ではない。
安全域は薄い。統合の期待が乗った値段は、ヤマダとの交渉がうまく運ぶ前提に立っている。比率がエディオンに不利なら、期待は剥げる。
結論として、確かな堀が無く、資本の効率も低い会社に、今の値段を払う理由は見つけにくい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。エアコン・冷蔵庫・テレビ・PC・スマホを、店とネットで売る。商品を売った差益が利益になる。売上総利益率は 28.7% で、前の期から 0.3 ポイント下がった。
店はエディオン・100 満ボルト・エイデン・デオデオなど複数の屋号で営む。広島・大阪・名古屋を中心に西日本が厚く、近年は出店の少ない地域へも広げている。FC 店を含む 1,180 店のうち、直営の大型店が稼ぎの中心だ。
家電の売れ方は年ごとに揺れる。2026 年 3 月期はエアコンが 3% 増え、PC は 28% 増、ゲームも 24% 増だった。一方で冷蔵庫は 7% 減、洗濯機は 3% 減、リフォームは 8% 減だった。PC 特需の裏で、住まいに関わる大物家電は弱かった。
リフォームや住宅設備は、家電店の客に売り込める「脱家電」の領域だ。ただエディオンは単一の事業として開示しており、この部分の利益は外から見えない。稼ぎの大半は家電の販売だと見るのが自然だ。
店舗は借りて営む店が多い。家賃は売上が落ちても払う固定の約束で、悲観の筋書きでは利益を圧迫する。解約できないリース料の総額は確認できなかったため、筆者は借金と同じ重さの約束として慎重に扱う。
優良さと弱いところ
筆者がまず見るのは堀、つまり他社がまねできない強みだ。エディオンの強みは、西日本の店網と、仕入れ・設置・修理の一式を自前で回す力にある。ただ、これは値段を決める力ではない。同じ冷蔵庫はアマゾンでもヤマダでも買え、値段は画面ですぐ比べられる。
利益率の水準はそこそこだ。営業利益率は 3% 前後で、ヤマダの 1% 割れより高い。2020 年代に入って赤字の期はなく、財務も堅い。自己資本比率は 54% で、純有利子負債は 584 億円と自己資本の 4 分の 1 にとどまる。
資本の効率が弱点だ。自己資本は 2,300 億円まで積み上がったが、ROE は過去 10 年の中央値で 6% 台しかない。8% を超えたのは 2017 年 3 月期と 2021 年 3 月期だけである。積んだ資本ほどには稼げていない。
過去には深い谷がある。2009 年 3 月期は 135 億円、2013 年 3 月期も赤字を出した。家電は景気と買い替えの波を受ける。エアコンや PC の特需が剥げると、利益は簡単に 2 割動く。
経営は、久保允誉会長が長く率いてきた。統合後は新会社の社長に就く予定だ。ヤマダとは数年前にも統合を探ったが、役員構成で折り合えなかった経緯がある。今回も「対等」をめぐる綱引きが続いており、経営の主導権の行方は読みにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の家電量販店の市場は約 10 兆円で、近年は横ばいから微増だ。人口は減るが、省エネ家電への買い替えと価格の上昇が売上を支えてきた。筆者は 10 年後の数量を、微減から横ばいと見る。
競争は上位への集中が進んでいる。ヤマダが約 1.7 兆円で首位、そのあとをビックカメラ・エディオン・ケーズデンキが追う。ノジマは携帯販売で伸び、ビックカメラは訪日客の免税売上が強い。エディオンは市場の約 8% を握るが、独自の稼ぎ方で抜けているわけではない。
外の脅威は EC だ。家電 EC は市場の 4 割を超え、価格の比べやすさが店の利益を削る。店は設置・修理・保証・相談の場として残るが、ショールーム化の圧力は強まる一方である。
再編も進む。ヤマダとの統合が実現すれば、売上 2.5 兆円の圧倒的な首位が生まれる。仕入れでは有利になり、同業はケーズデンキ・ビックカメラとの再編を迫られる可能性がある。ただ、独占禁止法の審査がどう出るかは見えない。
数量と値段の見方は業界の前提に合わせた。数量は人口減で微減、値段は物価並みに上がる。違うのは、エディオンが出店を増やして未出店の地域でシェアを取りにいく点で、その分だけ数量の減り方を緩めた。
資本政策と M&A
資本の使い方は無難だが、効率を高める緊張感は弱い。方針は配当性向 30% 以上と、自社株買いの機動的な実施だ。2026 年 3 月期は配当に 46 億円、自社株買いに 20 億円を充てた。純利益の 4 割強を返している。
2030 年度までの 5 年間で、成長投資に 1,000 億円、株主還元に 600 億円を振り向ける計画だ。還元は純利益の 6 割ほどに当たる。出店とシステムにお金を使いつつ、自己資本の膨らみを抑える狙いだ。
最大の論点はヤマダとの統合である。共同株式移転で持株会社を作り、両社は完全子会社になる。統合比率は監査と第三者の算定を経て決まる。筆者が気にするのは、利益率の高いエディオンが、薄利のヤマダと一緒になる点だ。比率が不利なら、既存の株主は割を食う。
筆頭株主のニトリホールディングスは約 9% を持つ。2022 年に LIXIL の持ち分を買い取った友好的な提携先で、統合の成否に口を出す立場にある。
純有利子負債は金利の上昇で重くなる。10 年で利払いが年 15 億円ほど増える見込みで、純利益の 1 割弱を削る。
株主優待は年約5.6億円(会社の費用ベース。ギフトカード3,000円×株主約18.8万人の下限推計(長期保有の加算は含めず))。優待の費用は販管費として利益から引き済みなので、株主が受け取る分として10年の還元に「年額×10年×続く見込み(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)」を足した(中立+56億円)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
統合はエディオンに強い追い風になる。売上 2.5 兆円の首位が生まれ、メーカーへの仕入れ交渉力が一段と高まる。仕入れ原価が 1% 下がれば、営業利益は 100 億円規模で動く。
両社は会員 3,600 万人を持つ。そのデータで自前商品と PB の開発を進めれば、粗利は押し上がる。リフォームの量販化も狙える。エディオンの営業利益率は 3.3% で、ヤマダとの差を埋める側ではなく、引っ張る側に回る。
単独でも出店が効く。2030 年度までに 30 店を出し、未出店の地域でシェアを取る。会社は経常利益 350 億円の計画を掲げ、2026 年 3 月期の営業利益率はすでに 3.2% だ。猛暑と買い替え需要で、足元の稼ぐ力は上がっている。
金利は上がるが、自己資本比率 54% の財務は耐えられる。還元も 5 年で 600 億円と厚い。利益率が 4% を超えれば、ROE は資本コストを上回り、倍率は 12 倍を超える。
ニトリとの提携で、家具や住まいの関連商品を店で売る余地もある。統合後の経営は、利益率が高いエディオンの社長が率いる。仕入れと自前商品で、ヤマダの利益体質も引き上げられる。
慎重な見方
統合は期待どおりに進まない公算が大きい。両社は数年前にも役員構成で折り合えず、今回も「対等」の綱引きが続く。人事の方針に違いがあると報じられ、統合比率は決まっていない。
仮にまとまっても、利益は増えにくい。ヤマダは営業利益率が 1% 割れで、エディオンの高めの利益率が薄まる。店の統廃合や物流の統合には金と時間がかかり、独占禁止法の審査が条件を縛る可能性もある。
足元の好調も一過性だ。PC 特需は Windows 10 の終了で終わり、冷蔵庫・洗濯機・リフォームはすでに前年を割った。猛暑のエアコンも毎年は続かない。売上総利益率は 0.3 ポイント下がっている。
本質的には、EC に価格を握られる業態だ。ROE は 10 年の中央値で 6% 台、資本コストの 8% に届かない。積み上げた自己資本の 2,300 億円は、この稼ぎでは価値を生まない。倍率が 10 倍を超える根拠が薄い。
統合の期待で値が付いている間に、事業の実力と比べることが大事だ。比率しだいでは、既存の株主が不利益を被る可能性もある。ニトリが賛成するかどうかも読めず、統合は延びるか、壊れうる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強いと判断した。決め手は 2 つある。ROE が資本コストに届かない点と、統合が利益率を下げうる点だ。
統合の期待が値段に乗っているが、比率も条件も決まっておらず、価値には入れにくい。強気の筋書きは確率を 9% に抑え、やや楽観と合わせて 3 割弱とした。やや悲観と悲観は 3 割強とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,434 円2,576 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 960 円1,015 億円)。 今の値に割り戻すと 1,849 円1,957 億円、今との差 −20.7%、 期待の年率 +3.8%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 4,790 円5,069 億円 | 1,329 円1,406 億円 | +162.5% | +10.1% | 551 円583 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,461 円3,662 億円 | 1,140 円1,206 億円 | +97.3% | +7.0% | 920 円974 億円 |
| 中立 | 38% | 2,558 円2,707 億円 | 998 円1,056 億円 | +52.5% | +4.3% | 1,351 円1,430 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,223 円1,294 億円 | 796 円842 億円 | −13.4% | −1.4% | 464 円491 億円 |
| 悲観 | 10% | 576 円609 億円 | 499 円528 億円 | −53.9% | −7.5% | 107 円114 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,434 円2,576 億円 | 960 円1,015 億円 | +45.6% | +3.8% | 3,394 円3,591 億円 |
今の株価時価総額 2,331 円2,467 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 9% 統合と出店がかみ合い、利益率が 4% 台に乗る 利益 330 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 4,790 円5,069 億円
統合がまとまり、仕入れの共同化と自前商品が利益率を押し上げる。営業利益率は 4% 台半ばに乗り、30 店の出店でシェアも上がる。
客数は人口減を出店とシェアで打ち消し、むしろ 8% 増える。客単価は高付加価値の家電が増えて、物価を少し上回る。リフォームの量販化も収益源になる。
営業利益は 530 億円ほどで、ROE は 9% 台に乗る。資本コストを超える稼ぎが定着し、市場は 12 倍台で評価する。還元も厚く、自己資本の膨らみは抑えられる。エディオンの高めの利益率が、統合後の標準になる筋書きだ。
金利の上昇は重荷だが、財務は崩れない。統合で店の重なる地域が整理され、物流の無駄も減る。ニトリとの家具・住まいの提携も、客単価を押し上げる。
- 家電等販売(店舗・EC・FC・リフォーム):数量 34.3(年間の会計件数(百万件))× 価格 34,500(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 11,830 億円・営業利益 532 億円。客数 8% 増・客単価は物価を少し上回る・利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 330 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.26 倍、時価総額 5,036 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:統合のシナジーと出店が両方当たり、営業利益率が 4% 台に乗る。実績の最高は 3.5% で、そこを大きく超える筋書きなので 1 割弱に抑えた。
やや楽観 20% 中計にほぼ届く 利益 262 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 3,461 円3,662 億円
統合は予定どおり進むが、効果は仕入れを中心に小さくとどまる。中期ビジョンの利益率にほぼ届き、営業利益率は 4% 弱になる。
客数は出店で横ばいを保ち、客単価は物価並みに上がる。猛暑と買い替えの特需が時おり利益を押し上げる。
営業利益は 430 億円ほどで、ROE は 8% に近づく。それでも資本コストには届かず、倍率は 11 倍弱にとどまる。還元は純利益の 5 割を超える。
統合の効果は、仕入れと自前商品の一部にとどまる。出店は計画の 3 分の 2 ほどが当たる。物価に合わせた値上げは通るが、値下げ競争の圧力も残る。強気ほどの飛躍はなく、堅実な成長が続く筋書きだ。
- 家電等販売(店舗・EC・FC・リフォーム):数量 32.4(年間の会計件数(百万件))× 価格 34,000(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 11,009 億円・営業利益 429 億円。客数ほぼ横ばい・利益率 3.9%
倍率:事業の純利益 262 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.83 倍、時価総額 3,624 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期ビジョン(2030 年度に経常利益率 3.8%)にほぼ届く。足元の勢いから、実現の可能性は 2 割ある。
中立 38% 堅実だが、資本の効率は資本コストに届かない 利益 200 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,558 円2,707 億円
統合が実現しても、利益への効果は限られる。店の統廃合や人事の摩擦が、仕入れの効果を打ち消す。営業利益率は 3.3% にとどまる。
客数は人口減で 5% ほど減るが、出店で一部を取り戻す。客単価は物価並みに上がる。エアコンや PC の特需は一巡し、ならせば今の力が続く。
営業利益は 330 億円ほど、純利益は 200 億円で、ROE は 6% 台だ。資本コストを下回るため、倍率は 10 倍台にとどまる。還元は続き、自己資本は緩やかに増える。堅いが、価値は増えない 10 年になる。
人件費と家賃の上昇は、値上げでほぼ吸収できる。金利の上昇で利払いが増えるが、財務の余力は十分だ。ヤマダとの統合は、規模の拡大という点では意味があっても、1 社あたりの稼ぎを大きく変えない。 株主優待の費用は利益から引き済みで、還元には受け取り分(年約5.6億円×10年)を足している。
- 家電等販売(店舗・EC・FC・リフォーム):数量 30.2(年間の会計件数(百万件))× 価格 33,500(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 10,104 億円・営業利益 333 億円。客数 5% 減(出店で一部補う)・客単価は物価並み・利益率 3.3%
倍率:事業の純利益 200 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 2,666 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:統合の効果が限られ、営業利益率は 3.3% 前後にとどまる。実績の最高に近く、最も起こりやすい。
やや悲観 23% 値下げ競争と人件費で利益率が 2% 台に戻る 利益 132 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,223 円1,294 億円
統合は混乱し、効果は出ない。EC との値下げ競争が続き、人件費も重い。営業利益率は 2% 台に戻る。
客数は 12% ほど減る。冷蔵庫や洗濯機のような大物家電の買い替えが先へ延びる。値段は物価に追いつかず、客単価は 1.30 倍にとどまる。
営業利益は 230 億円ほどで、ROE は 4% 台に落ちる。倍率は 8 倍台に下がる。家賃と人件費は残り、還元は純利益の 6 割に近づいて自己資本は増えにくい。
ヤマダとの統合は、交渉が長引いて社内の負担が増える。仕入れの共同化は、メーカー側の反発もあって限定的に終わる。店の統廃合は後手に回り、人員の再配置にも手間取る。エディオンの強みだった利益率の高さが、少しずつ失われていく。
- 家電等販売(店舗・EC・FC・リフォーム):数量 27.9(年間の会計件数(百万件))× 価格 32,500(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 9,080 億円・営業利益 227 億円。客数 12% 減・客単価は物価に届かない・利益率 2.5%
倍率:ROE 4.4%(純利益 132 億円 ÷ 自己資本 2,974 億円)。資本コストを大きく下回り、上限は 1÷k = 12.1 倍。値下げ競争で利益の質が落ちるので、上限の 7 割の 8.5 倍に置いた。稼ぐ力(132 億円 ÷ k = 約 1,600 億円)の範囲に収まる。
確率:値下げ競争と人件費で利益率が 2% 台に戻る。過去 10 年のうち半分は 2.5% 以下だったので、2 割強を置いた。
悲観 10% EC に飲まれ、統合も実を結ばない 利益 25 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 576 円609 億円
EC が家電の値段を完全に握り、店は商品を試す場所になる。客数は 25% 減り、客単価の伸びも物価を大きく下回る。
ヤマダとの統合は実を結ばず、あるいは破談して、店の統廃合と減損が続く。家賃と人件費は売上ほどには減らず、営業利益はほぼ消える。
営業利益は 60 億円を割り、純利益は 25 億円ほどになる。減損で自己資本も 1,650 億円に減る。もはや優良な会社ではなく、価値は売れる資産の範囲に収まる。借金と家賃の固定費で、配当も維持しにくくなる。
統合が実現しても、赤字のヤマダの店と物流の整理に追われ、エディオンの利益は食われる。独占禁止法の条件で店の売却を迫られる局面もありうる。10 年の途中で資本の政策を大きく変え、借金で還元を支える局面も出る。
- 家電等販売(店舗・EC・FC・リフォーム):数量 23.8(年間の会計件数(百万件))× 価格 30,000(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 7,143 億円・営業利益 57 億円。客数 25% 減・客単価は物価を大きく下回る・利益率 0.8%
倍率:純利益 25 億円・ROE 1.5% で稼ぐ力(25 億円 ÷ k)は約 300 億円と小さい。家賃が固定費として残り、売れる資産の税後から純有利子負債を引いた約 610 億円(floor_assets_oku)を床とし、今の自己資本 2,344 億円に対する PBR 0.26 倍で測った。EV ÷ 営業利益は、純有利子負債 584 億円を足すと 21 倍だが、谷の利益が小さく意味を持たない。借金の重さは床の薄さで見た。
確率:EC のコモディティ化と統合の失敗が重なる構造的な負け。過去に 2 度赤字の期があり、1 割と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
家電等販売(店舗・EC・FC・リフォーム)
店舗とネットで家電・PC・スマホを売り、設置・保証・リフォームを添える。エディオンは単一の事業として開示している。
| 数量年間の会計件数(百万件) | 価格1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 31.8 | 25,000 | 7,938 | 258 |
| 10 年後 中立 | 30.2 | 33,500 | 10,104 | 333 |
取り方:売上 7,938 億円を、1 会計あたり約 2.5 万円(推定)で割った件数が約 3,175 万件。売上は市場全体(家電量販店 10 兆円規模)の約 8% に当たる。営業利益 258 億円は利益率 3.2%。件数は人口減で微減、出店でシェアを緩やかに上げる。1 会計の金額は物価並みに上がる(10 年 1.34 倍)。
リスクと懸念
統合比率と主導権
統合比率は未定で、市場株価などを踏まえて協議する。エディオンが重視する「対等」と、ヤマダの主導権がぶつかる。数年前にも役員構成で破談した。比率が不利なら株主が割を食い、破談なら期待は剥げる。
統合の効果が出ない
ヤマダは営業利益率が 1% 割れで、エディオンの利益率は薄まりうる。店の統廃合や物流の統合には金と時間がかかる。独占禁止法の審査が条件を付ける可能性もあり、仕入れの共同化の効果は見込みより小さくなりうる。
特需の反動
2026 年 3 月期は PC が 28% 増、ゲームが 24% 増、エアコンが 3% 増だった。Windows 10 の終了に伴う買い替えと猛暑が重なった。反動が出れば、売上と利益は一時的に落ちる。冷蔵庫・洗濯機・リフォームはすでに前年を割っている。
EC との価格競争
家電 EC は市場の 4 割を超え、価格は比べられる。売上総利益率は 2026 年 3 月期に 0.3 ポイント下がった。店に残る価値は設置・保証・相談だが、これを有料にできない限り、利益率は押される。
資本の効率が低いまま
自己資本は 2,300 億円まで積み上がったが、ROE は資本コストに届かない。中期ビジョンの ROE 8% も、資本コストを下回る。還元を厚くして自己資本を絞らなければ、価値は積み上がらない。
家賃と人件費の固定費
店舗は借りて営む店が多く、家賃は売上が落ちても払う約束だ。人件費も物価で上がる。需要が落ちる局面では、固定費が利益を削る。解約できないリース料の総額は確認できなかった。
今後の分かれ目
- 統合比率がエディオンに有利に決まり、最終契約が 2027 年 5〜6 月に結ばれる
- 統合の確率が上がり、仕入れ共同化の効果が見える。強気の筋書きの確率が上がる。
- ヤマダとの交渉が決裂する
- 期待は剥げ、単独の実力で評価される。中立の価値がそのまま効いてくる。
- 営業利益率が 2 年続けて 3.5% を超える
- 中期ビジョンの利益率が現実味を帯び、やや楽観の確率が上がる。ROE も 8% に近づく。
- PC・エアコンの特需が剥げ、既存店の売上が 2 年続けて減る
- 利益率は 2% 台に戻り、慎重な見方が強まる。やや悲観の確率が上がる。
- 自社株買いを大きく増やし、自己資本を絞る
- ROE が資本コストに近づき、倍率の上限が上がる。ただ統合の方針と整合するかは別の問題だ。
見ておくもの
- 統合比率の発表と最終契約(2027 年 5〜6 月)
- 独占禁止法の審査の結果
- 営業利益率(3.5% の定着)
- 既存店売上高と客数
- 売上総利益率の動き
- 冷蔵庫・洗濯機・リフォームの回復
- ニトリの対応
- 自社株買いの金額
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価ではなく、その時点の ROE と資本コスト 7.5%(基本 7.5% に品質 +0.75%)から置いた。中立の ROE は 6% 台で資本コストを下回る。PER の上限は 1÷k の 12.1 倍で、利益の質を見て上限の 8.5 割、10.3 倍にした。強気だけは ROE が資本コストを超えるので 12.6 倍とした。今の PER は統合の期待を含むので根拠にしていない。
結果として中立は今の時価総額を大きく下回り、割高に出る。純有利子負債(584 億円)は純現金ではなく、余った現金は立てていない。
店舗の家賃は固定の約束として、悲観では売上が落ちても残る形で利益率に入れた。10 年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえている。2028 年 3 月期からの新リース会計で、営業利益は少し増え、純有利子負債はリース負債の分だけ増える。比べるときに注意が要る。
統合の期待(比率しだいの上振れ・下振れ)は、価値には入れていない。悲観の床は、有形固定資産の売却と在庫の換金の概算から、純有利子負債を引いた値で置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality +0.75% を足した 8.25%。耐久財で買い替えの波があり循環 +0.25%、EC と競合に値段を比べられて値決め +0.5%、借金は EBITDA の 2 倍未満で 0、寿命は家電の需要が続くので 0。ヤマダとの統合の成否といった個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。