結論
ウイルプラスホールディングスは、BMW・ボルボ・ジープ・プジョーなどの輸入車を売る正規ディーラーを、買収で束ねてきた会社だ。2024 年には中古車の輸出の会社も傘下に入れ、売上は 10 年で 5 倍の約 970 億円になった。筆者の結論は「適正」で、確率で重みを付けた本質価値は今の時価総額をわずかに下回る。
強みは買収の腕だ。後継者のいない地方のディーラーを、純資産に近い値段で次々に買い、整備と保険の客を引き継ぐ。整備の売上は 100 億円に近づき、景気に左右されにくい土台になった。
弱みは利益の薄さと借金だ。営業利益率は 1.5% まで下がり、在庫の車を借金で抱えるので純負債は 110 億円を超える。値段と仕入の条件はメーカーが決め、高い輸入車の新車は売れ行きが鈍い。
10 年で店を増やせば利益は今の 2 倍になり得るが、金利の上昇と輸出先の規制で、利益がほとんど残らない道もある。上と下が大きく開いた、良くも悪くもない値段だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「規律のある買い手だが、買っている物の質は普通」という会社だ。地方のディーラーを純資産並みで買い、整備の客を積み上げる手法は理にかなう。だがディーラーの販売権はメーカーのもので、10 年後の取り分を自分で守る力は弱い。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、純利益から店の改装と試乗車の入れ替えを引いた年 6〜8 億円ほどだ。買収で店を増やすほど在庫と借金も増え、利益の多くは次の買収と運転資金に消える。
経営は創業者が握り、買収の値段には規律がある。ただ、金利が上がる中で借金を膨らませて店を増やす道は、利益の薄い商売では危うい。
安全域、つまり払う値段と本質価値の差は、今の値段ではほとんどない。中立の筋書きどおりなら今の値段は妥当で、利益が細る筋書きでは大きく下がる。
何で稼ぐ会社か
事業は二つある。主力は輸入車ディーラー事業で、売上 581 億円、利益 22 億円だ。BMW、MINI、ボルボ、ジープ、プジョー、ランドローバーのほか、BYD やヒョンデの電気自動車も扱い、福岡・東京・埼玉・四国などに約 60 の店を持つ。中身は新車が 248 億円、中古車が 169 億円、業者向けの販売が 58 億円、整備が 98 億円、保険の手数料が 5 億円だ。
もう一つは中古車の輸出関連事業で、売上 387 億円、利益 4 億円だ。日本の中古車を仕入れてマレーシアなどへ輸出するほか、国内の業者へ卸す。輸出は利益率が高いが、相手国の輸入の枠に左右され、2026 年 6 月期は 2 割減った。代わりに国内の業者向けの販売が 35% 増えたが、こちらの利益は薄い。
持株会社の費用が年 12 億円かかり、両事業の利益 26 億円から引くと営業利益は 14 億円になる。在庫の車 146 億円は主に短期の借入で賄い、店の多くは借りている。2026 年 8 月にはランドローバーの都内の店を 16 億円で譲り受けた。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは弱い。正規ディーラーの看板はメーカーが与えるもので、地域の販売権はある程度守られるが、値段・仕入の条件・店の造りはメーカーが決める。メーカーの方針が変われば、販売権そのものが揺らぐ。
それでも二つの持ち味がある。一つは整備と保険の客で、車を売った後も点検・車検・修理で毎年お金が入る。整備の売上は 1 年で 2 割増え、景気の波を和らげる。もう一つは買収の手際で、後継者の悩みを抱えるディーラーを、純資産に近い値段で引き取ってきた。2026 年 4 月のボルボの 5 店は、受け入れた資産 10.7 億円に対し 11.0 億円で買い、のれんはほとんど出ていない。
資本効率は過去 10 年の ROE の中央値で 13% と悪くないが、直近は 10% を切った。買収のたびに人と準備の費用が先に出て、利益が追いつくまで時間がかかる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の新車の販売は年 250 万台ほどで、人口の減少と車を長く持つ流れで、先は細る。その中で輸入車の割合は 9% 台と少しずつ上がってきた。ただし車の値段が上がり、高い輸入車の新車は買う人が慎重になっている。
ディーラーの業界は、後継者のいない地方の会社が多く、大手による買い集めが進む。VT ホールディングスや同社のような買収の会社には、売り手が途切れない。一方で、メーカーがネットで直接売る形や、ディーラーを手数料の代理店にする形が欧州で広がり、日本にも来れば、ディーラーの取り分は細る。BYD やヒョンデはネットでの販売を前面に出す。
中古車の輸出は、マレーシアなどの輸入の枠と為替に左右される。円安は追い風だが、枠に達すれば売れない年もある。
筆者は中立で、店の数は買収で 10 年に 3 割増え、1 店の売上は物価に少し届かず、ディーラーの利益率は今と同じ 3.8% と見る。輸出関連は数量が横ばいで、利益率は 1.2% にとどまる。整備の売上は店と保有台数に沿って伸び、新車の不振を一部補う。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、配当性向は 4 割弱だ。2027 年 6 月期は増配を予定する。自社株買いは小さく、役員と社員の株式報酬のための信託が株を持つ。株主優待は 1,000 株以上を 1 年以上持つ株主の新車の値引きで、現金の費用は小さく販促に近い。
利益の残りは買収に回る。2026 年 6 月期は 6 件の買収に 23 億円を使い、短期の借入を 51 億円増やした。純負債は自己資本とほぼ同じ 111 億円で、多くは在庫の車の資金だ。
創業者の成瀬隆章氏が 2 割強を持ち、資産管理会社とみられる 3 社と合わせて 4 割強になる。親会社はない。創業者の支配が強く、ためた利益は株主に戻るより買収に向かう。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ディーラー業界の再編は始まったばかりだ。地方の輸入車ディーラーには後継者のいない会社が多く、売り手は途切れない。同社は純資産に近い値段で買い、ボルボの 5 店ではのれんがほとんど出なかった。安く買って整備と保険の客を引き継げば、資本に対する利益は高くなる。
整備は景気に強い。車を売るたびに点検と車検の客が増え、整備の売上は 1 年で 2 割伸びた。新車が売れない年でも、整備と中古車の利益が会社を支える。
今の利益の落ち込みは、買収の準備の費用と人の先取りが重なった一時的なものだ。会社は 2027 年 6 月期に営業利益 6 割増を見込む。買収した店の利益が乗れば、営業利益率は過去の 4% 台に戻り、10 年で営業利益は 50 億円に届く。BYD やヒョンデの電気自動車も早くから扱い、新しいブランドの波にも乗れる。創業者が大株主で、買収の値段の規律は今後も保たれるだろう。今の値段は、その成長をほとんど織り込んでいない。
慎重な見方
ディーラーは、メーカーの看板を借りた店にすぎない。値段も仕入の条件もメーカーが決め、欧州ではメーカーがネットで直接売り、ディーラーを手数料の代理店にする形が広がった。日本に同じ流れが来れば、新車の取り分は細る。
利益は薄く、借金は重い。営業利益率は 1.5% で、在庫の車を短期の借入で抱え、純負債は自己資本とほぼ同じだ。支払利息は 1 年で 5 割増え、金利がさらに上がれば利益の多くが利息に消える。買収で店を増やすほど借金も膨らむ。
輸出は相手国の枠と為替次第で、2026 年 6 月期は海外の売上が 2 割減った。代わりに伸びた国内の業者向けの販売は利益が薄い。
高い輸入車の新車は売れ行きが鈍く、人口は減る。創業者が 4 割強を握り、ためた利益は次の買収に向かう。株主の手元に何が残るのかが見えない。利益の薄い商売で借金を増やして大きくなる道は、一度つまずけば立て直しに長くかかる。過去の ROE の高さは、もう戻らないかもしれない。
どちらに重みを置いたか
買収の手際と整備の客は本物だが、メーカーへの依存と借金の重さも本物だ。中立では店が 3 割増えても、金利と本社の費用で利益の伸びは控えめになる。確率は中立を最も厚くし、借金と輸出の振れを見て悲観側をやや重く置いた。上と下が大きく開き、確率で重みを付けると今の値段に近い。安くも高くもなく、待つ価値はある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 1,795 円163 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 500 円45 億円)。 今の値に割り戻すと 1,104 円100 億円、今との差 +10.2%、 期待の年率 +8.6%(資本コスト 8.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,260 円387 億円 | 848 円77 億円 | +409.8% | +17.7% | 409 円37 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,905 円264 億円 | 677 円62 億円 | +257.5% | +13.6% | 716 円65 億円 |
| 中立 | 38% | 1,913 円174 億円 | 537 円49 億円 | +144.5% | +9.4% | 931 円85 億円 |
| やや悲観 | 22% | 480 円44 億円 | 319 円29 億円 | −20.3% | −2.2% | 176 円16 億円 |
| 悲観 | 12% | 334 円30 億円 | 185 円17 億円 | −48.2% | −6.4% | 62 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,795 円163 億円 | 500 円45 億円 | +128.9% | +8.6% | 2,294 円209 億円 |
今の株価時価総額 1,002 円91 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 再編の勝ち組になる 利益 30 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 4,260 円387 億円
地方の輸入車ディーラーの売り手が続き、同社は純資産に近い値段で毎年数件を買う。10 年で店は 95 に増え、首都圏と関西でも大きな店の網を持つ。整備と保険の客が積み上がり、新車が売れない年も利益を支える。
買収の準備の費用は落ち着き、ディーラーの利益率は過去の 4% 台に戻る。輸出もマレーシアの需要と円安で 2 割増える。営業利益は 50 億円を超え、今の 3 倍半になる。
借金は店と在庫に合わせて増えるが、利益の伸びがそれを上回る。ROE は 12% 台に戻り、資本コストを上回る。株価は利益の伸びとともに大きく上がる。
- 輸入車ディーラー事業:数量 95.0(店舗数(推定))× 価格 13(1 店あたりの売上(億円・名目))→ 売上 1,270 億円・営業利益 57 億円。95 店(+58%)× 1 店の売上 1.38 倍、利益率 4.5%
- 中古車輸出関連事業:数量 31.0(取扱台数(千台・推定))× 価格 20(1 千台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 632 億円・営業利益 11 億円。31 千台(+20%)× 1.36 倍、利益率 1.8%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.06 倍、時価総額 385 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:後継者のいない地方のディーラーを安く買い続け、整備の客と利益率が過去の高さに戻る筋書き。店を 6 割近く増やし、メーカーの直販も来ない前提が要るので 8%。
やや楽観 20% 買収と整備で着実に伸びる 利益 21 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 2,905 円264 億円
毎年 2〜3 件の買収で、店は 10 年で 85 に増える。高い輸入車の新車は伸びないが、中古車と整備が伸び、ディーラーの利益率は 4.2% と今より少し上がる。
輸出は枠と為替で年ごとに振れるが、10 年で 1 割増える。本社の費用は物価とともに増え、金利の上昇で利息も膨らむ。営業利益は今の 2.5 倍ほどになる。
ROE は 10% 前後と資本コストに近い。配当は利益に合わせて増え、残りは次の買収に回る。会社は大きくなるが、利益の薄さは変わらない。株価は利益の伸びに沿って上がり、配当も倍近くになる。
- 輸入車ディーラー事業:数量 85.0(店舗数(推定))× 価格 13(1 店あたりの売上(億円・名目))→ 売上 1,103 億円・営業利益 46 億円。85 店(+42%)× 1.34 倍、利益率 4.2%
- 中古車輸出関連事業:数量 28.4(取扱台数(千台・推定))× 価格 20(1 千台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 562 億円・営業利益 8 億円。28 千台(+10%)× 1.32 倍、利益率 1.5%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.15 倍、時価総額 259 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収で店を 4 割増やし、整備の伸びで利益率が少し戻る筋書き。今の買収の速さが続く形なので 20%。
中立 38% 店は増えるが、利益の伸びは控えめ 利益 15 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,913 円174 億円
買収は続き、店は 10 年で 78 に増える。新車は人口の減少と値段の高さで伸びず、1 店の売上は物価に少し届かない。ディーラーの利益率は今と同じ 3.8% にとどまる。
輸出関連は数量が横ばいで、利益の薄い国内の業者向けが中心になる。本社の費用は物価とともに 16 億円に増え、在庫と買収の借金に金利の上昇が重なって利息は 6 億円になる。営業利益は 27 億円、純利益は 15 億円ほどだ。
ROE は 7% 台で、資本コストの 9% に届かない。配当は続くが、ためた利益の多くは店と在庫に寝る。
- 輸入車ディーラー事業:数量 78.0(店舗数(推定))× 価格 13(1 店あたりの売上(億円・名目))→ 売上 982 億円・営業利益 37 億円。78 店(+30%)× 1.30 倍、利益率 3.8%
- 中古車輸出関連事業:数量 25.8(取扱台数(千台・推定))× 価格 20(1 千台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 504 億円・営業利益 6 億円。26 千台(横ばい)× 1.30 倍、利益率 1.2%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 167 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収で店を 3 割増やすが、本社の費用と金利の上昇が利益の伸びを食う中心の筋書き。最もありそうなので 38%。
やや悲観 22% 金利と輸出の逆風 利益 4 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 480 円44 億円
高い輸入車の新車は売れ行きが戻らず、買収も値段が上がって細る。店は 1 割しか増えず、ディーラーの利益率は 3% に下がる。
マレーシアは輸入の枠を絞り、輸出の数量は 2 割減る。国内の業者向けの販売は利益がほとんど出ない。本社の費用と家賃は売上が落ちても減らず、利息が利益を削る。営業利益は 11 億円、純利益は 4 億円ほどになる。
ROE は 3% 前後に沈み、配当も減る。借金を減らすために買収を止め、会社は守りに入り、店の改装も先送りし、客の足も遠のく。株価は自己資本の 2 割ほどの評価にとどまる。
- 輸入車ディーラー事業:数量 66.0(店舗数(推定))× 価格 12(1 店あたりの売上(億円・名目))→ 売上 780 億円・営業利益 23 億円。66 店(+10%)× 1.22 倍、利益率 3.0%
- 中古車輸出関連事業:数量 20.6(取扱台数(千台・推定))× 価格 19(1 千台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 387 億円・営業利益 2 億円。21 千台(−20%)× 1.25 倍、利益率 0.6%
倍率:ROE 2.6% が k 8.75% を大きく下回り、PER は 1÷k=11.1 倍が上限。金利と輸出の逆風で利益が細り、借金を返す局面なので 8 倍に置いた。
確率:金利の上昇と輸出先の規制、高い輸入車の不振が重なり、利益が今より細る筋書き。純負債が自己資本並みで振れに弱いので 22%。
悲観 12% メーカーの直販で取り分が消える 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 334 円30 億円
欧州で広がったメーカーの直販と代理店の形が日本にも入り、新車の利ざやは手数料に置き換わる。店は閉鎖と統合で 55 に減り、ディーラーの利益率は 2.2% に下がる。
輸出は相手国の規制と円高で 4 割減り、利益はほぼ出ない。本社の費用と家賃は残り、利息を払うと純利益は赤字になる。
価値は稼ぐ力ではなく、在庫の車・現金・土地を売って借金を返した後に残る資産で決まる。株価は自己資本の 4 分の 1 ほどまで沈む。整備の客は残るが、それだけで借金と家賃を賄うのは難しい。会社は残っても、株主の取り分はわずかになる。
- 輸入車ディーラー事業:数量 55.0(店舗数(推定))× 価格 11(1 店あたりの売上(億円・名目))→ 売上 613 億円・営業利益 14 億円。55 店(−8%)× 1.15 倍、利益率 2.2%
- 中古車輸出関連事業:数量 15.5(取扱台数(千台・推定))× 価格 18(1 千台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 279 億円・営業利益 1 億円。15 千台(−40%)× 1.20 倍、利益率 0.3%
倍率:純利益が赤字で PER は使えず、純負債 111 億円を足した EV で見ても営業利益がほぼ 0 で倍率は意味をなさない。価値は床の資産(在庫の車・現金・土地を売って借金を返した残り)で測り、今の自己資本の 0.26 倍に置いた。
確率:メーカーがネットで直接売り、ディーラーを手数料の代理店にする形が日本にも来て、輸出も細る構造的な負けの筋書き。整備の客は残るので 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
輸入車ディーラー事業
BMW・MINI・ボルボ・ジープ・プジョー・ランドローバー・BYD・ヒョンデなどの新車と中古車の販売、整備、保険の代理店。
| 数量店舗数(推定) | 価格1 店あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 60.0 | 9.69 | 581 | 22 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 13 | 982 | 37 |
取り方:店ごとの数字の開示は無いので、グループ 62 店から輸出関連の拠点を除いて約 60 店とし、ディーラー事業の売上 581.1 億円を割って 1 店約 9.7 億円とした。店の数は買収と出店で増やし、1 店の売上は車の値段と整備で物価に沿う。
中古車輸出関連事業
日本の中古車を仕入れてマレーシアなどへ輸出し、国内の業者へ卸す。
| 数量取扱台数(千台・推定) | 価格1 千台あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 25.8 | 15 | 387 | 4 |
| 10 年後 中立 | 25.8 | 20 | 504 | 6 |
取り方:台数の開示は無いので、売上 387.3 億円を 1 千台あたり 15 億円(中古車 1 台の平均の値段の目安)で割り、年 25.8 千台と推定した。海外と国内の業者向けをまとめて扱う。
リスクと懸念
メーカーの直販・代理店の形
欧州ではメーカーがネットで直接売り、ディーラーを手数料の代理店にする形が広がった。日本でも BYD やヒョンデはネットでの販売を前面に出す。この形が主要なブランドに広がれば、新車の利ざやは手数料に置き換わり、ディーラーの取り分は細る。
金利と借金
在庫の車を短期の借入で抱え、純負債は 111 億円と自己資本とほぼ同じだ。支払利息は 1 年で 5 割増えた。金利がさらに上がり、買収で借金を増やせば、薄い営業利益の多くが利息に消える。
輸出先の規制と為替
中古車の輸出はマレーシアなどの輸入の枠に左右され、2026 年 6 月期は枠に早く達して海外の売上が 2 割減った。円高に振れれば価格の優位も消える。利益率の高い輸出が減ると、事業の利益は大きく下がる。
買収の失敗
年に数件の買収を続けるため、人と準備の費用が先に出る。買った店の利益が想定に届かなければ、減損と費用の重さが残る。値段の規律は保ってきたが、売り手が増えて値段が上がれば、資本に対する利益は下がる。
高い輸入車の需要
車の値段が上がり、高い輸入車の新車は買う人が慎重になっている。人口の減少と車を長く持つ流れも続く。新車が売れなければ、下取りの中古車と整備の客の入り口も細る。
今後の分かれ目
- 主要なブランドのメーカーが日本で代理店の形や直販を始めたら
- 悲観の確率を上げ、ディーラーの利益率を下げる。整備の客がどれだけ残るかを見る。
- ディーラーの利益率が 4% 台に戻ったら
- 買収の費用が落ち着いた印と見て、やや楽観の確率を上げる。
- 純負債が自己資本の 1.5 倍を超えたら
- 金利の重さが増したと見て、やや悲観の確率を上げ、借金の分の資本コストを上げる。
- マレーシアの輸入の枠が広がるか、新しい輸出先が育ったら
- 輸出関連の数量と利益率を上に見直す。
- 自社株買いや配当性向の引き上げを打ち出したら
- ためた利益の戻り方を 0.5 から引き上げる。
見ておくもの
- ディーラー事業の利益率と店の数
- 整備の売上の伸び
- 海外の売上(マレーシアの輸入の枠)
- 純負債と支払利息
- 主要なブランドの販売方式の変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト 8.75%(基本 7.5%+循環・値決め力・借金・寿命)から決めた。中立は ROE が k に届かず PER の上限は 1÷k=11.1 倍で、その 8 割に置いた。今の PER(8 倍ほど)や同業の値付けには寄せていない。店の家賃は営業費用に入れた今の形でそろえ、2028 年 6 月期からの新しいリースの会計で純負債と営業利益の見え方が変わることは比べる時に直す。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.57→13.06 倍・やや楽観 PER 9.77→12.15 倍・中立 PER 8.89→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。