結論
ユナイテッドアローズは、東京発のセレクトショップだ。自社ブランドと他社ブランドを組み合わせ、30〜40代を中心とする「感度の高い」顧客に服を売る。2026年3月期は売上が7年ぶりに過去最高となり、営業利益は91億円まで戻った。
筆者の結論は、今の時価総額は本質価値より安いという見方だ。理由は単純で、稼ぐ力が回復した割に、市場が成長の頭打ちを強く織り込んでいるからである。ただし割安の幅は小さく、確率の置き方次第で簡単に縮む。
稼ぎの土台は、顧客との距離の近さにある。会員は164万人。接客のデジタル化で既存店の売上が伸び、粗利率は52%台と10年で最高になった。定価で売れる比率が上がったことが効いている。
一方で、国内の服飾市場は人口とともに細る。伸ばせるのは店の数と客単価、そして海外だけだ。海外は中国で3店、台湾で15店という段階で、黒字化は2030年以降と会社も認める。ここに過大な期待は置けない。
もう1つの転換点が持ち株会社化と買収だ。赤字だったコーエンを2億円で手放し、債権57億円を放棄した。身軽になった資金を、ビジュードエムなど新しい事業の取り込みに回す。成功すれば成長の質が変わるが、失敗すれば資本が削られる。
10年の中立の姿は、売上2,300億円台、営業利益率7%前後、ROE12%。強い堀は認めず、普通の優良専門店として評価した。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を長く持ちたいかと問えば、答えは「条件つきで持てるが、安全域は薄い」になる。
好ましい点は3つある。事業が単純で、顧客と会員の関係が資産になっていること。借金がなく、自己資本比率が6割近いこと。そして、配当と自社株買いで株主に利益を戻す姿勢が見えることだ。
気になる点も3つある。1つ目は、利益が人に宿る事業だということ。接客と目利きが落ちれば、何も残らない。2つ目は、店の家賃が固定の約束で、不況期に利益が急に削られること。3つ目は、買収を「成長の手段」に据えるが、過去の買収で資本を傷めた経験があることだ。
オーナー利益、つまり再投資を引いて株主に残る利益は、純利益61億円より小さいとみる。店の改装と新店、人件費の引き上げに、利益の相当部分を回すためだ。
10年先を考えると、売上は2,300億円台、営業利益率は7%前後というのが筆者の見立てだ。ここまで来ても、ROEは12%で堀は強くない。そのため、利益に払ってよい倍率は11倍ほどで、時価総額は1,100億円台になる。今を大きく上回るが、10年待つ分を割り引くと差は縮み、安全域は十分とは言えない。
「簡単には評価できない事業」であるぶん、確信は高くない。筆者が見ているのは、買収が資本の効率を下げないか、接客の質を落とさずに年収を上げられるかの2点だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、国内のアパレル店舗事業だ。大きく3つに分かれる。
1つ目は、トレンドマーケット事業。ユナイテッドアローズとビューティー&ユースが中心で、売上は839億円。ここが利益の大半を生む。顧客は30〜40代で、価格は中高価格帯だ。
2つ目は、ミッドトレンドマーケット事業。グリーンレーベルリラクシングやシテンなど、より手の届く価格帯の店で、売上は457億円。シテンの出店で前期は12%伸びた。若い顧客の入口にもなる。
3つ目が、その他。海外店、卸、ビューティー、新ブランド、買収した会社が入る。海外は台湾15店、中国3店、タイ2店、シンガポール1店。2025年9月に越境ECも始めた。
売り方は店とネットの2本立てだ。直営の店舗が870億円、ネット通販が405億円で、ネット比率は約26%。アウトレットも272億円ある。会員制度が、店とネットの2本を1人の顧客につないでいる。
店は賃借が基本だ。家賃は売上が落ちても減らない固定の約束であり、この会社の損益のしなやかさを左右する。
連結には、カジュアル衣料のコーエンが入っていた。74店を持っていたが、苦戦が続き、2026年3月に全株を譲渡した。今後の連結は、高感度の事業に絞られる。
2026年10月には持ち株会社に移り、社名をTABAYAホールディングスに変える。会社名と店名が同じだと、非アパレルや新しい客層へ広げる時に足かせになるためだ。
優良さと弱いところ
筆者がこの会社に見る優良さは、「顧客を知っていること」だ。堀、つまり他社がまねできない強みとしては、ここが中心になる。
164万人の会員の購買履歴を持ち、自社ブランドと他社ブランドを組み合わせて売る。仕入れの目利きと接客の力で、定価で買ってもらえる比率が高い。粗利率が52%台に乗ったのは、その証拠だ。
ただし、この強みは服飾の流行と人の腕に支えられており、工場や特許のような固い堀ではない。編集力は人に宿る。売り場の人材が抜けたり、顧客の好みが変わったりすれば、優位は崩れる。強い堀とは見ない。
利益率は高くない。営業利益率は5.5%で、10年前の8.7%に届かない。人件費が上がり続けるなか、会社は販売職の年収を3年で約500万円から550万円台へ引き上げる計画だ。優秀な接客を保つための投資だが、利益率の改善を遅らせる。
資本効率は悪くない。ROEは14%台で、自己資本比率も59%と堅い。ただし店舗の家賃が固定の約束であることを考えれば、見た目ほど財務に余裕があるわけではない。
経営の資本配分は、評価が分かれる。コーエンを買収して長く赤字を抱え、結局57億円の債権を放棄して手放した。この失敗は、新しい買収を評価する際の割引材料だ。一方で、自社株買いと増配を同時に打ち出し、株主を意識する姿勢は強まっている。
弱みは、海外の遅れだ。ユニクロやニトリのような海外の数量成長は、まだ見えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の服飾市場は2024年に8兆5,000億円で、前年比1.7%増と4年連続の拡大だ。ただし、この伸びの大半は値上げによるもので、着る人の数と着る量はほぼ横ばいだ。人口は年0.5%ほど減る。筆者は、実質の需要は10年で横ばいか微減と見ている。
セレクトショップの競争相手は、ビームス、シップス、トゥモローランド、オンワード樫山の各ブランド、それに百貨店だ。この領域は、どこも店の数が飽和しており、客の奪い合いになる。
ここ数年は、物価高のなかで中高価格帯の客が堅調だったのが追い風だった。30〜40代の旅行や外食への出費意欲も強い。ただしこの客層は、景気が悪くなると真っ先に服への出費を絞る。2021年3月期の赤字がその実例だ。
技術の面では、ZOZOTOWNなどのネット販売、ユニクロやGUの上質化、SHEINの超低価格が、中間の価格帯を挟み撃ちにしている。ネット比率はUAでも26%まで上がった。
人件費は最低賃金の上昇で年3〜5%のペースで上がる。接客を売りにする会社ほど、これを避けられない。
この領域で、海外へ伸びる余地がある会社は少数だ。UAは中国と台湾で店を増やしているが、収益化は2030年3月期以降と見ており、10年の数量成長の主役にはなりにくい。
10年後の構図は、国内は店舗数がほぼ横ばいで、客単価の上昇と中高価格帯への集中で稼ぐ姿になる。そのうえで、海外と新しい事業が上積みになるかどうかが分かれ目だ。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから攻めに変わりつつある。
還元は、配当に自社株買いを足す形だ。配当性向は2026年3月期で40%、2027年3月期は記念配当を含めて増配する。2026年5月には上限20億円の自社株買いを決めた。発行済株式の3.6%にあたる。
買収は、これからの主役になる。中期経営計画は、借入枠を最大365億円、負債資本倍率の上限を1倍とし、非アパレルも含めて買収を進める。2026年2月にテルマを、同年7月にビジュードエムを取り込み、靴磨きのブリフトアッシュの運営会社も傘下に入れた。食や宿泊といった領域も視野にある。
一方で、過去の買収の実績は芳しくない。コーエンは長く赤字で、2億円で譲渡し、約57億円の債権を放棄した。新しい買収を「成長の飛び道具」と見すぎるのは危うい。
大株主は信託銀行が中心で、創業者の重松理氏が7.7%を持つ。支配株主はいない。会社が小さく株価が安いため、買収の標的になる可能性は否定できない。10年内の買収の確率は2割ほどとの試算もある。
2026年10月の持ち株会社化は、新しい事業を加えやすくする器づくりだ。
2026 年 5 月決議の自社株買い 20 億円は実行済みとして株数と自己資本の起点に反映したため、10 年の還元からは除いた。
点検済み(2026-10-19):起点(粗利率が高い期)に対し中立の営業利益率 6.75% が 2015〜19 年の範囲内であること、自社株買い 20 億円が実行済みとして起点に入っていること、還元 約 48% を確かめた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の高感度ゾーンで、これだけ顧客と近い会社は他にない。会員は164万人、粗利率は10年ぶりの高水準で、ネットと店の両方で伸びている。人手不足の時代に、接客の質を保てる会社が選ばれる。
中期経営計画の目標は、2029年3月期に売上1,900億円前後、営業利益120億円、長期では売上3,000億円、営業利益300億円だ。この通過点を超える力は、すでに見えている。コーエンという重荷を下ろし、赤字の源がなくなった。
海外は、中国で上海から多店舗化し、台湾ではグリーンレーベルが定着している。海外の売上は3年で2.3倍に増やす計画だ。軌道に乗れば、10年で国内を補う第2の柱になる。
買収の効果は大きい。会社は借入枠365億円を持ち、食・住・美の領域で新しいブランドを取り込める。服以外の事業でも、同じ顧客に違うものを売る力が働けば、利益率は大きく変わる。
さらに、割安さがある。純現金と6割近い自己資本比率に、まだ使っていない借入余力が加わる。ROE15%を目指す会社が、時価総額700億円弱というのは、市場の見落としだ。
これらが揃えば、10年後の売上は2,800億円、営業利益率は9%を超え、PERも15倍近くが妥当になる。
慎重な見方
この会社は10年間、売上と利益が伸び悩んできた。営業利益は2015年3月期の114億円から、2026年3月期の91億円へ減った。回復したのは事実だが、元の水準に戻ったに過ぎない。
国内の服飾市場は、人口減で実質の需要が細る。そのなかで人件費を上げ続ければ、利益率は上がらない。会社は3年で人件費に850億円を投じる計画で、販売職の年収を引き上げる。優秀な人材を守るためだが、増えた分を価格で取り戻せなければ、利益が削られる。
海外は期待先行だ。中国での店はまだ3店で、現地ブランドとSHEINに挟まれる。収益化は2030年以降と会社が認めており、その間は赤字が続く。
買収には慎重にならざるを得ない。コーエンで57億円の債権を放棄した経営が、非アパレルという畑違いの事業をうまく取り込めるのか。借入枠365億円は、失敗すれば財務の傷みに直結する。
店舗の家賃は固定の約束だ。不況や流行の転換で売上が2割落ちれば、利益はほとんど消える。2021年3月期の72億円の赤字が、その怖さを示している。
強い堀がないぶん、倍率は11倍ほどが上限だ。10年後の利益が計画通りでも、今の時価総額の2倍には届かない。
どちらに重みを置いたか
中立に寄せた。強気の言い分は、コーエンの整理で利益の質が上がった点と、粗利率の改善に説得力がある。慎重な言い分は、10年間の利益の停滞と、買収の実績に重みがある。
利益が戻ったのは事実だが、その伸びが国内の成熟した需要を超えるとは言えない。海外と買収の上積みは確率に反映し、楽観を1割、やや楽観を2割強に置いた。
悲観側は、家賃の固定費と接客の人材流出が重なる構造的な負けを想定し、1割強にした。中立の確率は3割台半ばで、ほかの専門店と同じ水準に揃えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,566 円1,751 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,448 円386 億円)。 今の値に割り戻すと 4,093 円1,092 億円、今との差 +59.0%、 期待の年率 +12.0%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 12,370 円3,300 億円 | 2,156 円575 億円 | +464.3% | +18.9% | 1,453 円387 億円 |
| やや楽観 | 22% | 9,618 円2,566 億円 | 1,743 円465 億円 | +341.4% | +16.0% | 2,500 円667 億円 |
| 中立 | 35% | 7,389 円1,971 億円 | 1,440 円384 億円 | +243.0% | +13.1% | 3,090 円824 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,632 円702 億円 | 1,297 円346 億円 | +52.7% | +4.3% | 864 円231 億円 |
| 悲観 | 11% | 431 円115 億円 | 544 円145 億円 | −62.1% | −9.3% | 107 円29 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,566 円1,751 億円 | 1,448 円386 億円 | +211.3% | +12.0% | 8,014 円2,138 億円 |
今の株価時価総額 2,574 円687 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 中高価格帯への集中と海外・買収が両方当たる 利益 161 億円 · PER 19.5 倍 · 株価時価総額 12,370 円3,300 億円
2036年3月期の売上は2,800億円、営業利益率は9%を超える。中高価格帯への集中で、定価で売れる比率がさらに上がり、客単価は物価を上回って伸びる。国内の店は160店近い規模まで増え、ミッドトレンドはシテンが育って新しい柱になる。
海外は台湾に加えて上海での多店舗化が成功し、店の数は100を超える。買収したブランドとビューティーの再建が実り、食や宿泊まで広がった事業が利益を足す。コーエンの重荷はなく、持ち株会社への移行で買った事業の運営も軌道に乗る。
それでも堀は服飾の編集力にとどまり、固いものではない。ROEは18%近くまで上がるが、倍率は式の上限の9割に収まる。長期ビジョンの売上3,000億円に迫るが、届くかどうかは別だ。
- トレンドマーケット(UA・ビューティー&ユース等):数量 142(店舗数(EC売上を店舗に割り戻した換算))× 価格 9.36(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 1,329 億円・営業利益 160 億円。営業利益率12.0%
- ミッドトレンド(グリーンレーベル・シテン等):数量 150(店舗数(EC売上を店舗に割り戻した換算))× 価格 5.00(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 750 億円・営業利益 60 億円。営業利益率8.0%
- 海外・その他(卸・ビューティー・新ブランド・買収事業):数量 200(拠点数(海外店21+国内の新業態・買収事業の店・卸の売場の換算))× 価格 3.64(1拠点当たり年間売上高(億円))→ 売上 728 億円・営業利益 51 億円。営業利益率7.0%
- コーエン(譲渡済み):数量 0.0(店舗数)× 価格 1.79(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。2026年3月に譲渡済み
倍率:事業の純利益 161 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.1% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.5 倍。全体の PER 19.49 倍、時価総額 3,138 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中高価格帯への集中と海外・買収が同時に当たる筋書き。10年で服飾の専門店が複数の事業を成功させる例は少なく、ほかの専門店と同じ1割に置いた。
やや楽観 22% 国内が堅調で海外・買収が上積みになる 利益 127 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 9,618 円2,566 億円
売上は2,500億円台、営業利益率は8%前後に上がる。国内のトレンドマーケットは店の数をわずかに増やし、客単価は物価をやや上回って伸びる。粗利率の改善が定着し、人件費の上昇を価格で吸収できる。
海外は台湾が安定し、中国でも上海の店が黒字化する。買収した数社は小さな黒字を足し、非アパレルは試験段階ながら顧客との関係を深める。M&Aは成功と失敗が混ざるが、全体では資本の効率を落とさない。
10年前に8%台だった営業利益率に戻り、さらにその先へ進む形だ。それでも服飾の流行に左右される構造は変わらず、倍率は上限の8割台半ばに置く。
- トレンドマーケット(UA・ビューティー&ユース等):数量 138(店舗数(EC売上を店舗に割り戻した換算))× 価格 9.10(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 1,256 億円・営業利益 138 億円。営業利益率11.0%
- ミッドトレンド(グリーンレーベル・シテン等):数量 146(店舗数(EC売上を店舗に割り戻した換算))× 価格 4.89(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 714 億円・営業利益 50 億円。営業利益率7.0%
- 海外・その他(卸・ビューティー・新ブランド・買収事業):数量 160(拠点数(海外店21+国内の新業態・買収事業の店・卸の売場の換算))× 価格 3.51(1拠点当たり年間売上高(億円))→ 売上 562 億円・営業利益 34 億円。営業利益率6.0%
- コーエン(譲渡済み):数量 0.0(店舗数)× 価格 1.79(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。2026年3月に譲渡済み
倍率:事業の純利益 127 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.0% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍。全体の PER 18.74 倍、時価総額 2,380 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の堅調さに海外・買収が一部上乗せされる筋書き。粗利率の改善が定着している事実を踏まえ、ほかの専門店よりわずかに高い2割強にした。
中立 35% 国内の成熟のなかで利益率がわずかに上がる 利益 100 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 7,389 円1,971 億円
売上は2,300億円台、営業利益率は7%まで上がる。国内の店はほぼ横ばいで、客単価が物価並みに上がる。粗利率は中高価格帯への集中で小幅に上がるが、人件費の上昇でほとんどが吸収される。
海外は台湾が着実に伸び、上海でも店が増えるが、赤字の期間が長く、利益への貢献は限られる。買収は数件で成果が出るものの、失敗も出る。コーエンのような大きな赤字は繰り返さない。
ROEは12%で、過去10年の中央値と大差ない。強い堀とは認めないため、新しく投じるお金の稼ぎは資本コストを少し上回る程度にとどまり、倍率は11倍ほどに落ち着く。「普通の優良専門店」として評価される10年になる。
- トレンドマーケット(UA・ビューティー&ユース等):数量 135(店舗数(EC売上を店舗に割り戻した換算))× 価格 8.91(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 1,202 億円・営業利益 120 億円。営業利益率10.0%
- ミッドトレンド(グリーンレーベル・シテン等):数量 140(店舗数(EC売上を店舗に割り戻した換算))× 価格 4.78(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 670 億円・営業利益 40 億円。営業利益率6.0%
- 海外・その他(卸・ビューティー・新ブランド・買収事業):数量 135(拠点数(海外店21+国内の新業態・買収事業の店・卸の売場の換算))× 価格 3.36(1拠点当たり年間売上高(億円))→ 売上 454 億円・営業利益 20 億円。営業利益率4.5%
- コーエン(譲渡済み):数量 0.0(店舗数)× 価格 1.79(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。2026年3月に譲渡済み
倍率:事業の純利益 100 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.9% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.79 倍、時価総額 1,779 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の成熟と物価並みの客単価、利益率の小幅な改善を中心に置いた。10年間の利益の停滞を踏まえ、3割台半ばに抑えた。
やや悲観 22% 接客と編集力の優位が薄れ、利益率が戻らない 利益 61 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 2,632 円702 億円
売上は2,000億円弱、営業利益率は5%前後にとどまる。物価高が一巡して中高価格帯の客が慎重になり、ネットと価格の安いブランドへの流出が進む。国内の店は整理に入り、客単価も物価に追いつかない。
人件費は年収引き上げで先に膨らみ、粗利率が上がっても営業利益は増えない。海外は赤字を抱えたまま縮小し、買収した事業も採算が合わず、一部を減損する。
配当は維持するため、還元は利益に対して重くなる。ROEは9%で、資本コストを少し上回る程度だ。
会社は買収と出店への投資を続けるが、回収は遅れる。2021年のような赤字には陥らないものの、利益は10年かけてほぼ横ばいで、成長の物語は説得力を失う。倍率は、上限の7割台半ばまで下がる。
- トレンドマーケット(UA・ビューティー&ユース等):数量 125(店舗数(EC売上を店舗に割り戻した換算))× 価格 8.39(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 1,049 億円・営業利益 89 億円。営業利益率8.5%
- ミッドトレンド(グリーンレーベル・シテン等):数量 130(店舗数(EC売上を店舗に割り戻した換算))× 価格 4.57(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 594 億円・営業利益 24 億円。営業利益率4.0%
- 海外・その他(卸・ビューティー・新ブランド・買収事業):数量 100(拠点数(海外店21+国内の新業態・買収事業の店・卸の売場の換算))× 価格 3.14(1拠点当たり年間売上高(億円))→ 売上 314 億円・営業利益 8 億円。営業利益率2.5%
- コーエン(譲渡済み):数量 0.0(店舗数)× 価格 1.79(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。2026年3月に譲渡済み
倍率:事業の純利益61億円・ROE 9.2%。RONIC=k 7.8%+1/2×(ROE−k)=8.8%、g 4% から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.61倍。堀は普通で、利益の質は服飾の流行と人に左右されるため、上限の約75%の9.5倍に置いた。
確率:接客の優位が薄れ、利益率が戻らない筋書き。10年間の営業利益の停滞と、人件費の上昇圧力を重く見て、慎重側に寄せて2割強にした。
悲観 11% 家賃の固定費が重くのしかかり、優良さを失う 利益 10 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 431 円115 億円
売上は1,300億円台に縮み、営業利益はほぼ消える。服飾の流行が移り、顧客の中心層が離れた。若い世代の獲得も進まず、会員の購買は細っていく。家賃は売上に合わせて下がらず、店の整理と退店費用が利益をさらに削る。
接客の人材が他社に流出し、編集力と品揃えの優位が崩れる。海外は撤退に近い縮小で、買収した事業も失敗に終わる。借入で買った分が財務に重くのしかかる。
ROEは資本コストを大きく下回り、帳簿の資産も減損で目減りする。稼ぐ力は純利益10億円ほどにとどまり、時価総額は今の2割程度に下がる。配当は大きく減り、還元の一部は手元の現金と資産の売却でまかなう。
- トレンドマーケット(UA・ビューティー&ユース等):数量 105(店舗数(EC売上を店舗に割り戻した換算))× 価格 7.42(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 779 億円・営業利益 39 億円。営業利益率5.0%
- ミッドトレンド(グリーンレーベル・シテン等):数量 100(店舗数(EC売上を店舗に割り戻した換算))× 価格 3.93(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 393 億円・営業利益 4 億円。営業利益率1.0%
- 海外・その他(卸・ビューティー・新ブランド・買収事業):数量 60.0(拠点数(海外店21+国内の新業態・買収事業の店・卸の売場の換算))× 価格 2.51(1拠点当たり年間売上高(億円))→ 売上 151 億円・営業利益 −2 億円。営業利益率-1.0%
- コーエン(譲渡済み):数量 0.0(店舗数)× 価格 1.79(1店当たり年間売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。2026年3月に譲渡済み
倍率:事業の純利益10億円・ROE 2.0% は k 7.8% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)は約120億円で、純現金(実行済みの自社株買い後は約 -5 億円)を足して約115億円。今の自己資本421億円に0.32を掛けた形で置いた。過去の谷の値は使っていない。
確率:家賃の固定費と人材流出、買収失敗が重なる構造的な負け。2021年3月期の赤字と、過去の買収の失敗を踏まえ、1割強の確率を置いた。資本コストと同じ理由での上乗せはしていない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
トレンドマーケット(UA・ビューティー&ユース等)
ユナイテッドアローズ、ビューティー&ユースなど中高価格帯の店。30〜40代が中心で、利益の大半を生む。
| 数量店舗数(EC売上を店舗に割り戻した換算) | 価格1店当たり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 130 | 6.45 | 839 | 80 |
| 10 年後 中立 | 135 | 8.91 | 1,202 | 120 |
取り方:事業別売上839億円(決算報道)を、UA単体258店のうちトレンド側の約130店(推定)で割った。店数は国内の飽和で10年ほぼ横ばい、客単価は物価3%と中高価格帯への集中で10年1.38倍(物価1.34倍に品揃えの上質化を少し加えた)。営業利益は本社費配賦後の推定9.5%。
ミッドトレンド(グリーンレーベル・シテン等)
グリーンレーベルリラクシング、シテンなど手の届く価格帯の店。若い顧客の入口でもある。
| 数量店舗数(EC売上を店舗に割り戻した換算) | 価格1店当たり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 128 | 3.57 | 457 | 25 |
| 10 年後 中立 | 140 | 4.78 | 670 | 40 |
取り方:事業別売上457億円を、UA単体258店のうちミッド側の約128店(推定)で割った。シテンの出店で店数は10年で少し増え、客単価は物価並みの1.34倍。営業利益は配賦後の推定5.5%。
海外・その他(卸・ビューティー・新ブランド・買収事業)
海外店、卸、ビューティー、新ブランド、買収した会社の店。成長の上積みと赤字の両方を持つ。
| 数量拠点数(海外店21+国内の新業態・買収事業の店・卸の売場の換算) | 価格1拠点当たり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 2.51 | 251 | 8 |
| 10 年後 中立 | 135 | 3.36 | 454 | 20 |
取り方:UA単体のチャネル別売上1,547億円からトレンドとミッドを引いた差251億円(海外31億円を含む)を、拠点数100(推定)で割った。海外店の増加と買収事業の取り込みで拠点は10年で増え、客単価は物価並みの1.34倍。営業利益は推定3%。
コーエン(譲渡済み)
カジュアル衣料の子会社。2026年3月に全株を譲渡し、今後は連結に入らない。
| 数量店舗数 | 価格1店当たり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 74.0 | 1.34 | 99 | −4 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 1.79 | 0 | 0 |
取り方:連結売上1,646億円から他3つの合計を引いた約99億円を74店で割った(推定)。赤字の子会社で、営業損益は−4億円と推定。10年後はすべての筋書きで連結から外れる。
リスクと懸念
接客と編集力という人への依存
この会社の強みは売り場の人材と仕入れの目利きにあり、工場や特許のような固い堀ではない。人手不足のなかで販売職の年収を3年で約500万円から550万円台へ上げる計画だが、他社に人材が流れれば優位は一気に薄れる。客層の好みが変わった時に、編集の方向を直せるかが問われる。
家賃という固定の約束
店は賃借が中心で、売上が落ちても家賃は減らない。2021年3月期は営業赤字66億円、純損失72億円に落ちた。2028年3月期から新リース会計基準で借入と同じ扱いに変わるため、見かけの自己資本比率や純現金は今より低く見える。堅い財務をそのまま信じるのは危うい。
買収の失敗
中期経営計画は借入枠365億円、負債資本倍率1倍までを使い、非アパレルも含めて買収を進める。過去にコーエンで57億円の債権を放棄した経験があり、畑違いの食や宿泊を取り込めるかは未知数だ。買収額が高すぎれば、利益の増加が資本コストに届かず、価値を壊す。
海外展開の遅れ
海外売上は2026年3月期の31億円から70億円を目指すが、収益化は2030年3月期以降とされる。中国はまだ3店で、上海以外では認知が低い。現地ブランドとSHEINに挟まれれば、赤字が続き、本体の利益を食う恐れがある。台湾に頼る期間が長引く可能性もある。
国内需要の細りと価格の天井
国内の服飾市場は人口減で実質の需要が減る。値上げで金額は伸びているが、中高価格帯の客が物価高に耐えかねれば、客数と点数が落ちる。ネット販売と、ユニクロなど上質化するカジュアルの挟み撃ちも続く。客単価の上昇が止まれば、成長の源がなくなる。
買収の標的になる可能性
時価総額が小さく、支配株主もいない。大株主は信託銀行が中心で、創業者の重松理氏が7.7%を持つ。外部や同業から買収を提案される可能性はあり、価格によっては株主に有利に働くが、経営の方針が突然変わる不確実さも抱える。
今後の分かれ目
- 国内の既存店売上が、物価を上回って3年連続で伸び続けたら
- 粗利率の改善が構造的だと言える。楽観寄りの確率を上げ、営業利益率の中立を7%台後半まで引き上げて見直す。
- 買収した事業の営業利益が、買収後2年で黒字にならなかったら
- 買収の規律に疑いが生じる。慎重側の確率を上げ、資本配分の評価を下げて倍率を見直す。
- 中国の店舗が、上海で採算に乗らないまま増えたら
- 海外の上積みは見込めず、赤字が本体の利益を食う。海外の数量を下げ、悲観寄りに見直す。
- 販売職の年収引き上げが、離職率の低下と既存店の伸びにつながったら
- 人への投資が回収されていると言える。中立の営業利益率を少し上げる。
- 景気が悪化して、中高価格帯の客が服への出費を絞ったら
- 家賃の固定費が利益を大きく削る。2021年のような赤字もありうるため、やや悲観〜悲観の確率を上げる。
- 大型の買収提案や、創業者を含む大株主の動きが表に出たら
- 価格次第で、本質価値より高い値段で株主に報いる可能性がある。ただし提案の中身を見るまで確率は動かさない。
見ておくもの
- 国内の既存店売上高・客数・粗利率の推移
- 買収した事業(テルマ・ビジュードエム・ブーツブラックジャパンなど)の売上と営業利益
- 海外店舗数と海外事業の営業損益(中国・台湾)
- 販売職の年収引き上げと離職率、人件費率
- 新リース会計基準の適用後の借入と自己資本比率
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに店舗数×1店当たり売上高(物価込みの名目)で積み上げ、倍率は式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、堀は普通で残る割合1/2、k 7.8%・g 4%)の上限の7.5〜9割に置いた。今のPERや過去の高値には寄せていない。悲観は稼ぐ力(事業の純利益÷k+純現金)から出し、谷のPBRは使っていない。店舗の家賃は固定の約束なので、悲観では固定費として利益率に残した。新リース会計基準(2028年3月期から)で営業利益と借入の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→19.49 倍・やや楽観 PER 12.9→18.74 倍・中立 PER 11.3→17.79 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。