結論
ラオックスは、家電量販店から訪日客向け免税店に転じ、ギフトのシャディと衣料のバーニーズジャパンを買収して「ライフスタイルの会社」に姿を変えている途中だ。筆者の結論は、10 年では割高である。
理由は単純で、稼ぐ力がまだ見えないからだ。2025/12 期の売上は 575 億円だが、営業利益は 0.7 億円、純利益は赤字。2019 年から 3 年連続で大きな損失を出した前歴もある。
利益を出しているのは、冠婚葬祭などの返礼品を扱うギフト事業だ。これは縮む市場にいる。免税店とバーニーズは損失が続く。時価総額の 3 分の 1 にあたる純現金はあるが、事業に使われて減り続けており、そのまま株主の取り分とは数えにくい。
筆者が見たいのは、リテールの損失がいつ止まるかだ。止まれば現金は守られ、事業の値打ちも見えてくる。止まらなければ、現金が時間をかけて消えていく。株価の割安さに目を奪われず、事業の収支を見ることが先だと筆者は考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「現金の多い赤字事業」で、安全域は薄い。
時価総額の 3 分の 1 は純現金だが、その現金は本業の赤字を埋めるために減っている。2025/12 期の営業と投資で現金は 15 億円ほど減った。現金は、使い方次第で価値が消える資産だ。
買収で事業を替えてきた経営は、資本を稼ぎに変えた実績に乏しい。新しい事業がうまくいくかは、数年たたないと分からない。
ギフトの 11 億円の利益が、免税店とバーニーズの損失を食い止めているにすぎない。筆者は、営業利益が安定して 10 億円を超えるまで、事業の値打ちを高く置けないと見る。
逆に言えば、損失が止まり、現金の使い道が株主に見える形で示されれば、評価は大きく変わりうる。今は、その入り口にも立っていない。事業の入れ替えを重ねてきた経営への信頼が、評価の最後の関門になる。
何で稼ぐ会社か
ラオックスは持株会社で、事業は大きく二つに分かれる。
一つはギフトソリューションで、売上 345 億円、利益 11 億円。冠婚葬祭の返礼品、お中元・お歳暮、法人の記念品などを企画・販売する。2018 年に買収したシャディが中核だ。フォーマルな贈答の縮小と不採算施策の停止で、2025/12 期は売上が 6.9% 減った。
もう一つはリテールで、訪日客向けの免税店と、2023 年に買収した衣料・雑貨のバーニーズジャパンから成る。9 か月の累計で売上 148 億円、損失 6 億円。免税店では訪日客の数は増えても、来店客数が伸び悩んだと説明している。
このほか、不動産などのアセット・サービスと、中国での飲食などを含むトレーディングがある。従業員は連結で約 970 人。
2026/12 期の会社計画は、売上 580 億円、営業利益 6.5 億円。2025/12 期の 0.7 億円から約 10 倍の回復を見込むが、年の前半が赤字で後半に稼ぐ季節性が強く、達成の見通しは年末まで読めない。リテールの中身は、免税店とバーニーズに加え、不動産などのアセット・サービス、中国でのトレーディングと細かい。規模の小さい区分が多く、全体の管理の負担も軽くない。
優良さと弱いところ
優良さは低い。事業の入れ替えが続き、収益の柱がまだ固まっていない。
強みは、シャディのような長い歴史を持つギフトの顧客基盤と、バーニーズのブランドだ。財務も、借入より現金が多い。
弱みは三つある。第一に、ギフトの市場そのものが縮む。第二に、免税店は訪日客の数や政治・為替に左右されやすく、2015 年に 86 億円あった営業利益は数年で消えた。第三に、店舗を借りて営むため、家賃が固定の約束として重い。売上が落ちても家賃は落ちない。
経営は、家電から免税、ギフト、衣料へと主力を替えてきた。柔軟とも言えるが、一貫した堀を築いてきたとは言いにくい。過去 10 年の ROE の中央値はマイナスで、資本を稼ぎに変えた実績に乏しい。
ただし損失の縮小傾向は評価できる。2026/12 期の第 1 四半期の営業損失は前年より小さくなり、構造改革の効果が出始めた兆しがある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ラオックスが立つ市場は、どれも成熟か、変動が大きい。
フォーマルギフトは、結婚式の簡素化と少子化で縮み続ける。ネット通販と法人向けの記念品に軸足を移せるかが分かれ目だ。免税店は、中国をはじめとした訪日客の消費に依存し、為替と二国間の関係で急に増減する。2015 年のような爆買いの山と、2020 年のような谷を経験した。山の利益を当てにした投資は、谷で損失に変わる。
バーニーズのような高級セレクトショップは、百貨店や専門店、ネット通販との競争が激しい。人手不足で販売員の確保も難しく、賃上げの負担が重い。
業界の追い風は訪日客の増加だが、その恩恵は大手百貨店・家電量販店・ドラッグストアに集まりやすく、ラオックスの免税店は来店客数で伸び悩んでいる。
ギフトの側でも、スマートフォンのアプリやネット通販で個人が気軽に贈り物を送れる流れが強まり、従来の百貨店・専門店経由の贈答は細っていく。シャディの顧客基盤をネットと法人に移せるかが課題になる。業界全体で見ても、同じ悩みを持つ百貨店系のギフト会社が、規模の縮小や再編を進めている。
資本政策と M&A
資本政策は、買収で事業を替える方針が中心だ。2018 年にシャディ、2023 年にバーニーズジャパンを買収した。配当は 2025/12 期は小さな額で、2026/12 期はやや増やす予定だが、利益ではなく現金から払う形に近い。
2025/12 期は営業活動で現金が減り、投資でも 11.6 億円が出た。期末の現金同等物は 78.6 億円。株主では中国系の企業が上位とされるが、最新の持株比率は確認できなかったため、現金の戻り方は低めの 0.5 で数えた。株式の売出しと主要株主の異動に関する開示が 2025 年 11 月にあり、株主構成は動いている。
公開買付けの発表は見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額 135 億円に対し、純現金が 49 億円ある。残りの 86 億円で、2026/12 期に営業利益 6.5 億円の計画を持つ事業を手にできる。バーニーズ買収と免税店の再編の成果が出る年だ。
訪日客は増え続けている。2015 年に営業利益 86 億円を出した免税店の実力は、客数さえ戻れば再び出る。バーニーズは百貨店向けの売り場を絞り、赤字は縮小している。2026/12 期の第 1 四半期の営業損失は前年より縮んだ。
ギフトは 11 億円の利益を稼ぐ安定した事業で、法人・通販への移行が進めば縮小に歯止めがかかる。自己資本は 227 億円と時価総額を大きく上回り、PBR 0.6 倍は資産の割安さを示す。
上位株主が中国系で、買収や提携で価値が引き出される可能性もある。ラオックスは過去にも家電、免税、ギフトと姿を変えながら生き残ってきた。店舗網の再編が進めば、損失の出ている店舗を絞るだけでも利益は大きく動く。
慎重な見方
時価総額が自己資本を下回っているのは、稼ぐ力が資本コストに届かないからだ。過去 10 年の営業利益は、黒字が数年だけで、2019 年からは 3 年連続で大きな赤字を出した。事業の入れ替えのたびに損失を出してきた経営が、今回だけ成功する保証は無い。
2026/12 期の営業利益 6.5 億円の計画も、第 1 四半期は 8.6 億円の赤字からのスタートだ。例年、年の前半が赤字で後半が稼ぎ時だが、計画の達成は容易ではない。2025/12 期は予想の 4.3 億円の経常利益に対し、実績は 0.4 億円と 9 割下回った。
免税店は訪日客の政治・為替の影響を直接受ける。バーニーズは固定の家賃が重い。ギフトの縮小は構造的で、これ以上は支えにならない。
現金は事業の穴埋めで減っており、自己資本が資産のまま残る保証も無い。のれんや商標の減損が出れば、PBR 0.6 倍の土台である自己資本そのものが削られる。
どちらに重みを置いたか
稼ぐ力が資本コストに届かず、固定の家賃も重いという慎重な見方が強い。強気の根拠である純現金と訪日客の回復は、計画の実績で示されて初めて数えられる。中立を 4 割、やや悲観と悲観を合わせて 4 割弱に置き、全体を割高の側に寄せた。純現金の厚さは悲観の床として効くため、悲観の深さは限定した。確率は、経営の実行力への評価を反映して悲観側を厚めにしている。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 105 円96 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 39 円35 億円)。 今の値に割り戻すと 71 円65 億円、今との差 −51.5%、 期待の年率 −0.2%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 379 円346 億円 | 88 円80 億円 | +219.5% | +12.3% | 28 円26 億円 |
| やや楽観 | 18% | 186 円170 億円 | 61 円56 億円 | +69.5% | +5.4% | 45 円41 億円 |
| 中立 | 38% | 82 円75 億円 | 39 円36 億円 | −16.6% | −1.8% | 46 円42 億円 |
| やや悲観 | 25% | 49 円45 億円 | 24 円22 億円 | −49.8% | −6.7% | 18 円17 億円 |
| 悲観 | 13% | 38 円35 億円 | 11 円10 億円 | −66.3% | −10.3% | 6 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 105 円96 億円 | 39 円35 億円 | −1.7% | −0.2% | 144 円131 億円 |
今の株価時価総額 146 円133 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 訪日客が再び爆発的に増え、バーニーズの再生も重なって免税店と衣料が稼ぐ 利益 27 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 379 円346 億円
訪日客数が大きく伸び、免税店の客数と客単価がともに回復する。バーニーズジャパンは百貨店向けの売り場を絞って採算が改善し、衣料と雑貨の売上が 5 割増える。リテール全体の営業利益率は 5% 台に乗る。
一方、ギフトはフォーマルな贈答の縮小が続き、取扱件数が 15% 減る。それでも法人向けの記念品や個人向けのカタログギフトに軸足を移し、利益率は 4% 台に改善する。
増えた利益で配当は 10 年で 80 億円に達し、現金の一部は新規出店と事業買収に使われる。ただし 2015 年のような一時的な山で終わる可能性も残る。
- ギフトソリューション(シャディ):数量 408(ギフト取扱件数(万件))× 価格 0.96(万円/件)→ 売上 393 億円・営業利益 18 億円。数量 0.85 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 4.5%
- リテール・その他(免税店・バーニーズ・アセット・サービス):数量 480(購買客数(万人))× 価格 0.98(万円/人)→ 売上 469 億円・営業利益 26 億円。数量 1.50 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 12.34 倍、時価総額 346 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:訪日客の消費が 2015 年の爆買いに近い水準まで戻り、バーニーズの再生も進む筋書き。ここ 10 年の営業利益は 3 億円を超えた年が無く、複数の条件が重なる必要があるので 6% に置いた。
やや楽観 18% 免税店の損失が縮小し、ギフトの利益が緩やかに減るだけにとどまる 利益 14 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 186 円170 億円
免税店の客単価が上がり、バーニーズは赤字を脱して小さな黒字になる。リテールの購買客数は 2 割増える。
ギフトは贈答の簡素化で取扱件数が 2 割減るが、法人向けと通販で支える。値段は物価並みに上がるが、競争で転嫁しきれない。営業利益率は 3% 台を守る。
全体の営業利益は 20 億円弱で、利益率は 3% 台にとどまる。配当は利益の範囲で続く。
バーニーズの黒字化は、売り場の絞り込みと自社通販の拡大が前提になる。免税店も、客単価を上げる高額品の品ぞろえが当たることが条件で、物価の上昇を価格に移せるかが利益率を分ける。
- ギフトソリューション(シャディ):数量 374(ギフト取扱件数(万件))× 価格 0.96(万円/件)→ 売上 361 億円・営業利益 13 億円。数量 0.78 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.6%
- リテール・その他(免税店・バーニーズ・アセット・サービス):数量 384(購買客数(万人))× 価格 0.97(万円/人)→ 売上 373 億円・営業利益 11 億円。数量 1.20 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 170 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:免税店とバーニーズの損失が計画どおり縮小し、ギフトの減少も緩やかにとどまる筋書き。直近は計画未達が続いており、強気の確率は 2 割弱にした。
中立 38% ギフトが縮み、リテールがようやく収支均衡に戻り、全体では小さな黒字が続く 利益 5 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 82 円75 億円
フォーマルなギフトは冠婚葬祭の簡素化と少子化で、取扱件数が 3 割減る。値段は競争で物価に届かず、10 年で 1.3 倍にとどまる。ギフトの利益は 10 億円弱に減る。
リテールは、訪日客の免税需要とバーニーズの衣料が支え合い、収支がようやく均衡する。購買客数は横ばいで、営業利益率は 1% 台に乗る。
本社の費用は物価で増えるが、事業の縮小に合わせて抑える。全体の営業利益は 7 億円前後で、利益率は 1% 台のまま。リース料などの固定費の重さが利益を削り、改善の余地は限られる。
配当は利益の範囲に収まる水準で続くが、現金が大きく積み上がることはない。
- ギフトソリューション(シャディ):数量 336(ギフト取扱件数(万件))× 価格 0.94(万円/件)→ 売上 314 億円・営業利益 9 億円。数量 0.70 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 3.0%
- リテール・その他(免税店・バーニーズ・アセット・サービス):数量 320(購買客数(万人))× 価格 0.96(万円/人)→ 売上 308 億円・営業利益 3 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 75 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026/12 期の会社計画(営業利益 6.5 億円)に近い水準で、10 年を通じて小さな黒字が続く筋書き。過去 10 年の営業利益は 3 億円を超えた年が無いが、構造改革で損失が縮んでいる点を評価し、最も重く置いた。
やや悲観 25% 訪日客の消費が縮み、バーニーズの赤字が続いてギフトも縮む 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 49 円45 億円
訪日客の消費が縮み、免税店の客数が 1 割以上減る。バーニーズは固定の家賃を賄えず、赤字が続く。リテールは小さな赤字に戻る。
ギフトは縮みが速く、取扱件数が 4 割減る。値段を維持できず、利益率は 2% 台に下がる。
全体の営業利益は 2 億円台にとどまり、現金は店舗の整理と赤字の穴埋めで減る。配当は縮小する。
免税店の再編は進めるが、家賃の違約金や在庫の処分に費用がかかる。ギフトは値下げ競争に巻き込まれ、利益率の低下が止まらない。通販への移行に失敗すれば、顧客の高齢化とともに売上が縮んでいく。
- ギフトソリューション(シャディ):数量 298(ギフト取扱件数(万件))× 価格 0.92(万円/件)→ 売上 274 億円・営業利益 7 億円。数量 0.62 倍・価格 1.28 倍(名目)・営業利益率 2.6%
- リテール・その他(免税店・バーニーズ・アセット・サービス):数量 272(購買客数(万人))× 価格 0.93(万円/人)→ 売上 254 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.85 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 -0.2%
倍率:純利益は 1 億円強とほぼゼロで、稼ぐ力は値を支えない。売れる資産の税後約 45 億円のほうが大きいので、床は売れる資産で置き、今の自己資本 227 億円に約 0.2 倍を掛けた。
確率:訪日客の中国人消費が政治・為替で縮み、バーニーズの再生が遅れる筋書き。過去 10 年で営業赤字の年が半分を占めたことを踏まえ、強気側より厚く置いた。
悲観 13% 免税店を畳み、バーニーズの再生に失敗し、ギフトの縮小で赤字に沈む 利益 −8 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 38 円35 億円
免税店の客数が半分に落ち、店舗を畳んでも家賃の違約金と在庫の処分損が残る。バーニーズも売り場の縮小で赤字が続く。リテールは大きな赤字になる。
ギフトは取扱件数が半分になり、利益はほとんど残らない。全体は赤字に転じ、現金が年々減る。
事業としての値打ちは薄く、手元の現金と売れる資産が値段を決める。配当は無配に近くなる。
店舗の整理が終わるまでに数年かかり、その間の損失で自己資本が削られる。持株会社として経営を続けるため、売れる資産を順に手放していく。事業の再編が終わるころには、規模も利益も今よりかなり小さい会社になっている。
- ギフトソリューション(シャディ):数量 240(ギフト取扱件数(万件))× 価格 0.90(万円/件)→ 売上 216 億円・営業利益 1 億円。数量 0.50 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 0.5%
- リテール・その他(免税店・バーニーズ・アセット・サービス):数量 192(購買客数(万人))× 価格 0.90(万円/人)→ 売上 173 億円・営業利益 −7 億円。数量 0.60 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 -4.0%
倍率:稼ぐ力は赤字でゼロ。売れる資産の税後のうち現金の純額が中心で約 35 億円。床は売れる資産で置き、今の自己資本 227 億円に約 0.15 倍を掛けた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.154 倍・時価総額 35 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:訪日客の消費と衣料の再生が同時に外れ、固定の家賃が重く残る筋書き。ラオックスは 2019 年から 3 年連続で大きな純損失を出した前歴があり、1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ギフトソリューション(シャディ)
冠婚葬祭の返礼品、お中元・お歳暮、法人の贈答品などを企画・販売する事業。2018 年にシャディを子会社にして取り込んだ。
| 数量ギフト取扱件数(万件) | 価格万円/件 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 480 | 0.72 | 345 | 11 |
| 10 年後 中立 | 336 | 0.94 | 314 | 9 |
取り方:決算短信のギフトソリューション売上 345.4 億円・セグメント利益 11.3 億円(2025/12、売上は前期比 6.9% 減)を、取扱 480 万件(推定。件数は未開示)で割った平均単価。フォーマルギフトの縮小と不採算施策の停止で減収。
リテール・その他(免税店・バーニーズ・アセット・サービス)
訪日客向けの免税店、2023 年に買収した衣料・雑貨のバーニーズジャパン、不動産などのアセット・サービス、トレーディングを合わせた区分。
| 数量購買客数(万人) | 価格万円/人 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 320 | 0.72 | 230 | −7 |
| 10 年後 中立 | 320 | 0.96 | 308 | 3 |
取り方:連結売上 575.4 億円からギフトソリューション 345.4 億円を引いた約 230 億円を、購買客 320 万人(推定)で割った客単価。リテール事業は 9 か月の累計で売上 148.5 億円・損失 6.2 億円と開示されており、通期のセグメント損失 6.5 億円はそこに第 4 四半期をほぼゼロとみた推定。他の小区分も含むため、数量は目安。
リスクと懸念
訪日客の消費の振れ
免税店の売上は訪日客の人数と政治・為替で急に変わる。2015 年の山と 2020 年の谷が示すとおり、固定の家賃と人件費が重く、売上が落ちると赤字に転じやすい。
バーニーズの再生が遅れる
2023 年の買収後も赤字が続いており、売り場の絞り込みが採算に結びつくかは分からない。再生に失敗すれば、減損が自己資本を削る。
ギフトの市場の縮小
唯一利益を出すギフト事業は、冠婚葬祭の簡素化と少子化で縮む。取扱件数の減少が値上げで吸収できなければ、全体の利益がなくなる。
店舗の家賃の約束
店舗を借りて営むため、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。純現金が多く見えても、リースの約束を引いた実質は小さい。新リース会計基準(2028 年から)で借入の形が変わる点にも注意が要る。
株主構成と資本の使い方
中国系の株主が上位とされ、資本の使い方が株主全体の利益と一致するかは見えにくい。買収を繰り返してきた経営が、現金を新たな買収に使う可能性がある。
今後の分かれ目
- 2 期連続で営業利益が 10 億円を超えた
- 構造改革が実を結んだと見て、中立の営業利益率を 1% 台から 2% 台に引き上げる。強気の確率を上げる。
- 免税店とバーニーズの損失が 2 期続けて縮小し、リテールの損益が黒字に転じた
- 強気の筋書きに近づく。リテールの利益率を上方に直す。
- ギフトの取扱件数が年 10% を超えて減った
- 利益の柱が崩れる。悲観の筋書きに近づく。
- 訪日客の数が前年を 2 割以上下回った
- 免税店の損失が拡大する。やや悲観の確率を上げ、現金の戻り方を見直す。
- 主要株主の持株比率の大きな変動や公開買付けの発表があった
- 分析の前提を見直す。発表の時点で価格は条件に収れんする。
見ておくもの
- リテールとギフトのセグメント損益(四半期ごと)
- 免税店の客数・客単価と訪日客数
- バーニーズジャパンの収支
- 営業・投資のキャッシュフローと現金同等物の推移
- 主要株主の持株比率の変動
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の ROE(2% 台)が資本コスト 8.75% を大きく下回るため、式の上限 1÷k=11.4 倍の 7〜9 割に置いた。今の株価や PBR 0.6 倍は使っていない。純現金は営業・投資で減っており、運転資金とリースの約束を引いて 25 億円だけを余りとし、戻り方 0.5 で数えた。この数字が 1.0 なら中立の時価総額は 13 億円ほど上がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.34 倍・やや楽観 PER 10→11.43 倍・中立 PER 9→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.25% を足して 8.75%。赤字の年はあるが借金は無く、財務の存続に疑いは無いので extra は置かない。