結論
フジオフードグループ本社は、「まいどおおきに食堂」「神楽食堂 串家物語」「つるまる」などを全国に約 700 店展開する外食企業だ。直営と FC(フランチャイズ、加盟店方式)を併用している。
筆者の結論は、今の株価は割高だというものだ。いちばんの理由は、利益が時価総額に比べて小さすぎることにある。2025 年 12 月期は売上が 319 億円あったが、営業利益は 7 億円にとどまった。純利益は 1 億円に届かない。
会社は 2029 年末に 1,000 店を掲げる。出店が計画どおり進んでも、人件費と食材費の上昇を値上げで吸収できなければ、店が増えても利益は増えない。過去がそれを示している。2014 年に 9% 近くあった営業利益率は、コロナ禍で赤字に沈み、2 度の増資で立て直した今も 2% 台だ。
中立では、10 年後の売上は 480 億円ほど、営業利益率は 4% 弱に戻る。それでも純利益は 9 億円台で、時価総額は 80 億円台にとどまる。強気の筋書き(1,100 店・利益率 6%)でも、今の時価総額には届かない。
救いは財務が立て直されたことだ。自己資本は 87 億円まで厚みを取り戻し、存続の心配は遠のいた。ただ家賃の固定負担は重く、売上が 1 割落ちれば営業利益は消える。割安と呼べる日が来るとすれば、利益率が 6% 台に定着してからだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で聞きたいのは、10 年後もこの会社が毎年お金を生み、そのお金を株主のために使えるかどうかだ。
本業の稼ぐ力は、まだ細い。売上 319 億円に対して株主の手元に残る利益は 1 億円に届かない。家賃は借金と同じで、毎年必ず払う固定の約束だ。純有利子負債が 12 億円と小さく見えても、家賃の約束を足せば財務は見かけほど軽くない。
資本の使い方には評価できる面がある。コロナ禍で自己資本が 6 億円まで細ったが、増資で作り直した。借入を返し、赤字店を畳んだ。ただ増資を重ねた経営は、利益を自力で積み上げた経営とは別物だ。
堀は串家物語とつるまるにあるが、主力の食堂は薄い。10 年先に毎年 10 億円の利益が出る姿は見えるが、それでも払える値段は 100 億円に届かない。
安全域とは、払う値段と価値の間の余裕のことだ。今の値段は、計画した 1,000 店と利益率の大幅な回復を先に織り込んでいる。余裕はまったくない。わかりにくい事業ではないが、値段が見合わない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は 3 つの顔に分けるとわかりやすい。
一つ目は「まいどおおきに食堂」だ。ご飯と惣菜を自分で選ぶ定食の食堂で、関西発の店である。今は 260 店台で、直営は約 80 店、残りは FC と運営委託だ。FC 店からは加盟料とロイヤルティ、食材の卸が入る。報道では 2019 年末に約 400 店あったというから、店数は 3 分の 2 に減ったことになる。
二つ目は「神楽食堂 串家物語」だ。客が自分で串を揚げる食べ放題の店で、商業施設に入る。約 100 店のうち直営が 7 割近い。客単価が高く、筆者の推定では 1 店当たりの売上は食堂の 3 倍ほどある。
三つ目は、うどんの「つるまる」、滞在型喫茶の「ピノキオ」、「さち福や」、海外 FC などの束だ。国内店舗の半分近くはこの束に入る。近年の新規出店で目立つのはつるまるで、製麺型の小さな店を増やしている。海外は 2025 年末で 24 店とまだ小さい。
業態別の売上は開示がない。筆者は食堂が約 80 億円、串家物語が約 90 億円、その他が約 150 億円と推定する。利益の稼ぎ頭は串家物語で、食堂は薄利、その他は損益がトントンに近いと見る。
直営が 400 店近くある以上、人件費と家賃が売上の大半を占める。原価率は 35% 前後で安定しているが、人件費と家賃を抑えられなければ利益は残らない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、事業の一部にしかない。
串家物語には来店の理由がある。串を自分で揚げる体験は、価格で比べられにくい。直営で運営の力を磨いてきた点も強みだ。つるまるは製麺型の小さな店で、少ない人手で回せる。食堂のブランドは認知があるものの、定食という中身は、やよい軒や大戸屋、さらには牛丼や回転寿司とも客を取り合う。値段を自分で決められる立場ではない。
資本効率は、数字の見かけほど良くない。2014 年から 2017 年に ROE が 15% を超えたのは、自己資本が 60〜90 億円と小さい時代の話だ。コロナ禍で 2022 年に自己資本が 6 億円まで細り、増資で 87 億円へ作り直した今は、純利益が 1 億円に届かず ROE は 1% だ。
弱みは三つある。利益率が薄いこと。家賃と人件費が固定費で、売上が少し動くと利益が大きく動くこと。主力の食堂が 6 年ほど店を減らし続けたことだ。
経営は、危機を乗り切る力は示した。2 度の増資で希薄化を受け入れ、店を閉めて 2024 年に営業利益を 3 倍にした。ただ増資に頼る体質が残ったことも事実で、利益を自力で積み上げる段階にはまだ入っていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食市場は、日本フードサービス協会の統計で 2023 年に 24 兆円台まで戻った。人口が減るので来店の数は横ばいから微減で、名目の伸びは値上げとインバウンドで決まる。
この会社の主戦場は、定食・和食・食べ放題という中価格帯だ。ここは人件費の上昇を最も受けやすい。最低賃金は年 3〜5% ずつ上がり、パート・アルバイトの確保も難しい。2025 年はコメの高騰が定食に直撃した。会社の営業利益が半減したのは、この波をかぶったからだ。
定食チェーンは、3 社とも店数が頭打ちだ。やよい軒(プレナス)は国内で 360 店前後、大戸屋(コロワイド傘下)は国内 313 店、まいどおおきに食堂は 260 店台と報じられている。同じ業態の店が、同じ客を取り合っている。
うどんは、丸亀製麺(トリドール)やはなまるうどんが大きな先行者だ。つるまるは製麺型で小さく出せるが、規模で劣る。串家物語のような食べ放題の串揚げは競合が少なく、商業施設の人出が戻れば客が増える。ただ商業施設の家賃は固定費として重い。
10 年で見ると、国内の店数は飽和に近い。FC を使って店数を増やし、本部は少ない資本でロイヤルティを稼ぐ形に移れるかどうかが、業界の中での優劣を分ける。海外は FC でアジアに出る計画だが、日本の外食は海外の現地チェーンとの競争になる。
資本政策と M&A
株主還元は配当が中心で、年間で 1.5 億円ほどだ。2025 年は純利益が 1 億円に届かず、配当は利益を上回った。食事券や食品カタログの株主優待もあるが、配当の代わりに近い色がある。自社株買いはしていない。
資金は、増資で調達してきた。2023 年 3 月に約 41 億円、2024 年 12 月に最大 69 億円を集めた。使い道は出店、既存店の改装と業態変更、借入の返済だ。コロナ禍で細った自己資本を戻すには必要だったが、株数は 51 百万株まで増えた。
株主は、有限会社エフエム商業計画が約 13%、藤尾政弘社長個人が約 6% を持つ。2023 年にはダスキンが第三者割当を引き受けた。一方、時価総額は 600 億円で、利益から見ると買収する側には高すぎる。TOB(株式公開買い付け)で買われる可能性は低い。参考値として別の試算は 10 年以内に約 17% と見ているが、筆者は低めに見る。
M&A は、2015 年に辛子明太子の博多ふくいちと資本提携した程度で、大型の買収で成長してきた会社ではない。成長の手段は、あくまで自前の出店と FC だ。
点検済み(割高の見落とし点検 2026-10-19):起点の利益は 1 億円未満の実績で山は無く、2 度の増資後の株数 51 百万株を使い、倍率は ROE÷k に合わせた。余り資産・含み益は無い。
株主優待は株主に渡る現物の配当なので、還元に足した。年の費用は約 2.2 億円(株主約 111,495 人×100 株の年額面 6,000 円×単元以上の割合 0.6×大口の上乗せ 1.2×使われる割合 1.0×原価率 0.45。推定)。10 年で中立 22 億円(続く見込み 1.0)、悲観は 0.5 で 11 億円。費用は販管費に入って利益を既に下げているので、自己資本の流れには足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2024 年の営業利益は 12 億円と前の年の 3 倍になり、既存店の売上は 12 か月すべて前年を上回った。2025 年の減益は、コメ価格の高騰と人件費の上昇が同時に来た一過性の傷だ。価格改定と改装が一巡すれば、利益は戻る。会社が出した 2029 年末の 1,000 店という計画は、FC を使えば無理がない。FC の店が増えるほど、本部は少ない資本でロイヤルティを稼ぎ、利益率は直営よりも安定する。串家物語は商業施設の人出の回復で伸びており、つるまるは製麺型の小さな店で、出店の費用が小さく回収も早い。海外はアジアで中高価格帯の和食を FC で出せば、日本の外食の技術が高く評価される。財務も立て直された。2 度の増資で自己資本は 87 億円になり、純有利子負債はわずか 12 億円だ。借入に追われる心配がないので、利益が出た分だけ出店と改装に回せる。2014 年には営業利益率が 9% 近くあった会社だ。FC 比率が上がり、不採算の店を減らせば、6% 台に戻る余地は十分にある。
慎重な見方
2025 年の営業利益は 7 億円、2026 年の会社予想は 5 億円とさらに小さい。回復の絵は、数字の上では逆向きに動いている。主力の食堂は 2019 年末の 400 店から 260 店台まで減り、定食チェーンはやよい軒も大戸屋も店数が頭打ちだ。食堂の再生が進む証拠は、まだ決算に出ていない。1,000 店という目標は店数の話で、利益の話ではない。FC の店が増えても、本部の売上は 1 店当たりでわずかだ。直営の店が減って FC に変わるほど、売上は小さくなる。人件費と家賃は固定費で、売上が 1 割落ちれば営業利益は消える。最低賃金は物価を上回る速さで上がり続ける。コメの高騰のような食材の波も、また来る。2 度の増資で既存株主は薄まり、配当は利益を上回って出している。時価総額は 600 億円で、営業利益 5 億円の会社にはあまりに大きい。計画が 100% 達成されて、さらに利益率が 2014 年を超えなければ、この値段は説明できない。
どちらに重みを置いたか
利益の水準と値段の隔たりが大きく、慎重な見方が強い。ただ 2024 年に営業利益が 3 倍になった実績と、財務の立て直しは強気の見方にも根拠を与える。そこで確率は、悲観寄りの 39%(やや悲観 26%・悲観 13%)、楽観寄りの 29%(楽観 8%・やや楽観 21%)、中立 32% とした。中立でも純利益は 10 億円に届かず、倍率を式で出した上限の 8 割に置いても、時価総額は 80 億円台だ。強気の筋書きでも今の値段に届かないので、確率をどう動かしても結論は割高から動かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 223 円115 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 85 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 161 円83 億円、今との差 −86.2%、 期待の年率 −12.5%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 632 円324 億円 | 121 円62 億円 | −35.7% | −4.3% | 60 円31 億円 |
| やや楽観 | 21% | 379 円194 億円 | 107 円55 億円 | −58.5% | −8.4% | 102 円52 億円 |
| 中立 | 32% | 224 円115 億円 | 96 円49 億円 | −72.7% | −12.2% | 102 円52 億円 |
| やや悲観 | 26% | 57 円29 億円 | 70 円36 億円 | −89.1% | −19.9% | 33 円17 億円 |
| 悲観 | 13% | 51 円26 億円 | 29 円15 億円 | −93.2% | −23.5% | 10 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 223 円115 億円 | 85 円44 億円 | −73.7% | −12.5% | 308 円158 億円 |
今の株価時価総額 1,171 円601 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 店 1,100 店・利益率 6% に定着 利益 21 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 632 円324 億円
食堂は改装と FC 化で店数を 260 店に保ち、串家物語は商業施設の人出に乗って 140 店まで増える。つるまるなどの小型店と海外 FC が伸び、全体では 2029 年の 1,000 店を通過して 1,100 店に届く。値上げは客数を落とさず通り、コメや人件費の上昇も 2 年遅れで価格に乗る。FC の比率が高まるぶん、本部の利益は店の数ほど固定費を食わなくなり、営業利益率は 6% に定着する。2014 年の 9% には及ばないが、直営の重さを手放した分だけ利益の質は上がる。純利益は 20 億円を超え、増資に頼らず出店を続けられる。配当も利益の 3 分の 1 まで出せる。海外は FC 中心でアジアに店を増やすが、本部の売上への寄与は小さい。ここまで行けば優良な外食に戻るが、ここまで行く確率は高くない。 自己資本の流れと還元の差には、優待の費用は利益から引き済みで還元には受け取り分を足している分が入る。
- まいどおおきに食堂:数量 260(まいどおおきに食堂の店数(食堂のみ、店))× 価格 0.40(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 105 億円・営業利益 9 億円。営業利益率 8.5%
- 神楽食堂 串家物語:数量 140(串家物語の店数(店))× 価格 1.23(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 173 億円・営業利益 17 億円。営業利益率 10%
- その他(つるまる・さち福や・ピノキオ・海外 FC ほか):数量 700(上記以外のブランドの国内外店数(店))× 価格 0.56(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 394 億円・営業利益 24 億円。営業利益率 6%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.3 倍、時価総額 324 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が 6% に定着し、1,000 店も超えるには、人件費とコメの上昇を値上げで吸収し続ける必要がある。2014 年の 9% は店が小さい時の数字で、再現の確度は高くないので 8% に置いた。
やや楽観 21% 1,000 店に届き利益率が 5% に戻る 利益 14 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 379 円194 億円
2025 年に重くなったコメと人件費の負担は、値上げと改装で数年かけて吸収される。食堂は退店に歯止めがかかり、串家物語は 125 店、つるまるを含む束は 560 店まで増える。店は 940 店になり、1,000 店の目標には届かないが近づく。営業利益率は 5% 弱に戻り、2019 年ごろの水準を上回る。FC 比率の上昇で資本の負担は軽くなる。ただし値上げの余地は物価並みで、人件費の上昇も同じ速さで続くため、利益率が 2014 年のような 9% に戻るほどの余裕は出ない。純利益は 14 億円ほど。配当は利益の 4 割弱を出し、自己資本は 130 億円台まで積み上がる。優良外食とまでは呼べないが、堅実に黒字を重ねる会社になる。 自己資本の流れと還元の差には、優待の費用は利益から引き済みで還元には受け取り分を足している分が入る。
- まいどおおきに食堂:数量 255(まいどおおきに食堂の店数(食堂のみ、店))× 価格 0.40(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 103 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 7%
- 神楽食堂 串家物語:数量 125(串家物語の店数(店))× 価格 1.23(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 154 億円・営業利益 13 億円。営業利益率 8.5%
- その他(つるまる・さち福や・ピノキオ・海外 FC ほか):数量 560(上記以外のブランドの国内外店数(店))× 価格 0.55(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 310 億円・営業利益 15 億円。営業利益率 4.8%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.07 倍、時価総額 194 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2024 年に営業利益が 3 倍になった実績があり、改装と FC 化で薄利から抜ける道は現実的。ただ 2025 年に再び利益が半減したため、中立より少し低く置いた。
中立 32% 店は微増・利益率は 4% 弱で止まる 利益 9 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 224 円115 億円
店は 700 店から 800 店に増える。ただし中身は入れ替わる。食堂は 245 店まで減り、串家物語は 115 店に増え、つるまるなどの束は 440 店に増える。値上げは物価並みに通るが、人件費も同じ速さで上がるため、利益率の回復は限られる。営業利益率は 4% 弱で止まり、純利益は 9 億円台にとどまる。2014 年の 9% には戻らない。家賃と人件費が固定費として重く、売上が少し落ちるだけで利益が削られる体質は残る。配当は少しずつ増えるが、利益の半分近くを出す程度だ。自己資本は 110 億円台になり、ROE は 8% 前後で資本コストにわずかに届かない。会社は黒字を続けるが、株主に目立つ超過利益を残さない。 株主優待は年およそ 2.2 億円(会社の費用ベースの推定)。続く見込み 1.0 で 10 年 22 億円を還元に足した(費用は利益から引き済み)。 自己資本の流れと還元の差には、優待の費用は利益から引き済みで還元には受け取り分を足している分が入る。
- まいどおおきに食堂:数量 245(まいどおおきに食堂の店数(食堂のみ、店))× 価格 0.39(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 96 億円・営業利益 6 億円。営業利益率 6%
- 神楽食堂 串家物語:数量 115(串家物語の店数(店))× 価格 1.23(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 142 億円・営業利益 11 億円。営業利益率 7.5%
- その他(つるまる・さち福や・ピノキオ・海外 FC ほか):数量 440(上記以外のブランドの国内外店数(店))× 価格 0.55(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 242 億円・営業利益 9 億円。営業利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 115 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:黒字は続くが、利益率の回復は物価並みの値上げと同じ速さの人件費上昇で相殺される、というのが最も起こりやすい姿。確率はいちばん厚く置く。
やや悲観 26% 値上げが追いつかず薄利のまま 利益 4 億円 · PER 6.8 倍 · 株価時価総額 57 円29 億円
値上げをすると客が離れ、しなければ利益が削られる状態が続く。食堂は 225 店に減り、串家物語は 105 店で頭打ち。つるまるなどの束も出店が鈍り、360 店止まりになる。1 店当たりの売上は物価にも届かず、営業利益率は 2% 台にとどまる。コメや食材の高値、最低賃金の上昇、家賃の固定負担が重なり、自動化の投資も利益を押し上げるほどには効かない。純利益は 4 億円台で、配当を出すと内部留保がほとんど増えない。2 度の増資で作り直した自己資本は残るが、新しい店を出しても資本コストを稼げず、増資の再来も意識される。倒産の心配はなくても、株主にとっては長く報われない 10 年になる。 自己資本の流れと還元の差には、優待の費用は利益から引き済みで還元には受け取り分を足している分が入る。
- まいどおおきに食堂:数量 225(まいどおおきに食堂の店数(食堂のみ、店))× 価格 0.38(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 86 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 4.5%
- 神楽食堂 串家物語:数量 105(串家物語の店数(店))× 価格 1.20(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 126 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 5.5%
- その他(つるまる・さち福や・ピノキオ・海外 FC ほか):数量 360(上記以外のブランドの国内外店数(店))× 価格 0.54(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 193 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 2%
倍率:ROE 4.5%(純利益 4.3 億円 ÷ 自己資本 95 億円)が資本コスト 8% に届かない。ためた利益は額面より低い価値でしか評価できないので、上限は 1÷k の 11.8 倍。この筋書きは値上げが通らず、谷の年に家賃が固定費として残り、利益の持ちも短い。新しい店は資本コストを稼げず、伸びも止まるので、上限の 6 割弱の 6.8 倍に置いた。稼ぐ力は純利益 4.3 億円 ÷ k 8% = 約 51 億円が上限。
確率:過去 20 年に赤字が 7 期あり、直近も 2026 年の営業利益は 5 億円の予想と薄い。コスト高を転嫁しきれない姿は十分あり得るので、中立に近い厚みを置いた。
悲観 13% 主力ブランドが崩れ赤字に沈む 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 51 円26 億円
主力の食堂が、やよい軒や大戸屋などの定食チェーンとの競争で立地を失い、190 店まで減る。FC の加盟店が離れ、食材の卸の売上も細る。串家物語は商業施設の人出が戻らず、赤字店を畳んで 90 店になる。つるまるなどの束も多くが不採算で、270 店に縮む。1 店当たりの売上は物価に追いつかず、人件費と家賃の固定費が利益を飲み込み、営業利益は赤字すれすれまで落ちる。店を閉めるたびに原状回復費と減損が出て、自己資本は 60 億円近くまで減る。配当は縮むが、赤字の年も現金の取り崩しと資産の売却で最低限は出し続ける。再度の増資も現実味を帯びる。それでも「まいどおおきに食堂」のブランドと FC 契約、串家物語の運営ノウハウは残り、別の事業者に売ることで価値の一部を取り戻す道はある。 株主優待は縮む前提(続く見込み 0.5)で、還元に 11 億円を足した。 自己資本の流れと還元の差には、優待の費用は利益から引き済みで還元には受け取り分を足している分が入る。
- まいどおおきに食堂:数量 190(まいどおおきに食堂の店数(食堂のみ、店))× 価格 0.36(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 68 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 2%
- 神楽食堂 串家物語:数量 90.0(串家物語の店数(店))× 価格 1.12(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 101 億円・営業利益 3 億円。営業利益率 3%
- その他(つるまる・さち福や・ピノキオ・海外 FC ほか):数量 270(上記以外のブランドの国内外店数(店))× 価格 0.51(1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ))→ 売上 137 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0%
倍率:営業利益はほぼゼロで純利益は赤字。稼ぐ力は事業の純利益で測れず、売れる資産の床で置いた。今の自己資本 87 億円に対する PBR 0.30 倍=約 26 億円で、総資産(約 245 億円)の約 1 割にあたる。返ってくる敷金・保証金、店舗設備の売却、ブランドと FC 契約の譲渡を、原状回復費と違約の負担で値引いた額の見立てだ。
確率:食堂の店数が 6 年で 3 分の 2 に減り、同業の定食チェーンも頭打ち。主力が崩れる確率は無視できないが、串家物語とつるまるが残るため、筋書きの複合は 13% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
まいどおおきに食堂
ご飯と惣菜を自分で選ぶ定食の食堂。FC が主体で、直営は約 80 店。食材の卸とロイヤルティも稼ぐ。
| 数量まいどおおきに食堂の店数(食堂のみ、店) | 価格1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 265 | 0.30 | 80 | 4 |
| 10 年後 中立 | 245 | 0.39 | 96 | 6 |
取り方:開示は業態別の店舗数だけで、売上と利益は無い。2024 年末の店舗数(食堂 278 店)と近年の閉店報道から今を約 265 店とし、全社売上 319 億円のうち直営約 80 店の売上と FC のロイヤルティ・食材卸を合わせて約 80 億円と推定、1 店当たり約 0.30 億円(FC 店は会社の売上が小さいので平均が下がる)。10 年後の 1 店当たりは物価 1.34 倍が基本だが、FC 比率が上がる分だけ中立で 1.30 倍に置いた。店数は退店が続く前提で減らす。
神楽食堂 串家物語
客が自分で串を揚げる食べ放題の店。商業施設に入り、直営が中心。1 店当たりの売上は食堂よりずっと大きい。
| 数量串家物語の店数(店) | 価格1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 0.92 | 92 | 7 |
| 10 年後 中立 | 115 | 1.23 | 142 | 11 |
取り方:串家物語は 2024 年末で 100 店(直営 68・FC 32)。直営が中心なので 1 店当たりの会社売上は食堂より大きく、約 0.92 億円と推定(約 92 億円)。客単価と客数は商業施設の人出に左右される。10 年後の 1 店当たりは物価並みの 1.34 倍が基本。店数は商業施設への出店余地で決まり、中立は 100 店から 115 店。
その他(つるまる・さち福や・ピノキオ・海外 FC ほか)
うどんの製麺型店「つるまる」、滞在型喫茶、さち福や、海外 FC、FC 向けの卸などの束。国内店舗の約半分を占める。
| 数量上記以外のブランドの国内外店数(店) | 価格1 店当たりの年間の会社売上(億円。FC 店はロイヤルティ・卸のみ) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 337 | 0.44 | 147 | 1 |
| 10 年後 中立 | 440 | 0.55 | 242 | 9 |
取り方:全社 702 店から食堂 265 店・串家物語 100 店を引いた約 337 店(つるまる、さち福や、ピノキオ、海外直営・FC など)で、売上の残り約 147 億円を割って 1 店当たり約 0.44 億円と推定。FC の店が増えると平均が下がるので、10 年後の 1 店当たりは中立で 1.25 倍と物価より低く置いた。店数は、つるまるなど小型の店と FC の増加で 10 年で約 440 店。
リスクと懸念
人件費の上昇
最低賃金は年 3〜5% ずつ上がり、パートとアルバイトの確保も難しい。直営が 400 店近くある以上、人件費の上昇は営業利益に直接効く。値上げで吸収できなければ、店が増えても利益は増えない。自動化の投資にも限りがある。
コメと食材の高値
2025 年のコメ高騰は、定食に直撃した。会社は 8 月に営業利益の予想を半分以下に引き下げた。原価率は 35% 前後で安定しているが、主食と食材の波はまた来る。価格改定のたびに客数が落ちる危険もある。
家賃の固定費と新リース会計
筆者の推定では、直営の家賃は年 25 億円ほど、残りの契約で約 130 億円の約束がある。営業利益の 3 倍を超える額だ。売上が 1 割落ちれば利益が消え、赤字の店を畳むと原状回復費が出る。2028 年 12 月期からは新リース会計で、この約束が貸借対照表に載る。
食堂の店数減
まいどおおきに食堂は 2019 年末の約 400 店から 260 店台に減ったと報じられた。定食チェーンは大戸屋もやよい軒も頭打ちで、業態として需要が縮んでいる可能性がある。改装で歯止めをかける計画の成否は、まだ見えない。
商業施設への依存
串家物語は商業施設に入る店が多く、施設の人出と家賃条件に左右される。人出が戻れば伸びるが、施設の改装や撤退で店を失うこともある。店の大きさから、家賃の負担は食堂より重い。
増資の再来と希薄化
2023 年と 2024 年の 2 度の増資で、発行済み株式は 51 百万株に増えた。自己資本は立て直したが、利益が積み上がらないまま出店や改装を続ければ、また外部の資金に頼ることになる。既存株主の取り分はそのたびに薄まる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 年続けて 5% を超えたら
- コスト高を値上げで吸収できる体質に変わった証拠。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 2026 年の営業利益が会社予想の 5 億円を下回ったら
- コメと人件費の上昇が一過性でない。やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- まいどおおきに食堂の店数が下げ止まり、純増に転じたら
- 主力ブランドの再生が進んだとみて、中立からやや楽観へ確率を寄せる。
- FC 比率が上がり、直営の家賃負担が軽くなったら
- 売上が小さくなっても利益率は上がる。1 店当たりの収益より、本部の利益の水準で見直す。
- 3 度目の増資が発表されたら
- 利益で出店を賄えていないと見る。やや悲観・悲観に寄せる。
- 串家物語の既存店の売上が商業施設の人出の伸びを下回ったら
- 体験型の来店理由が薄れたとみて、串家物語の利益率を下げる。
見ておくもの
- 営業利益率(四半期)と 2026 年の会社予想(営業利益 5 億円)に対する進捗
- まいどおおきに食堂の店数と、直営・FC の内訳
- つるまるの出店数と 1 店当たりの売上
- 2029 年末 1,000 店の計画の進捗(直営と FC の別)
- 増資・借入・配当の方針の変化
倍率と資本コストの決め方
店数(実質)× 1 店当たりの売上(名目)を、食堂・串家物語・その他に分けて積み、営業利益率は筋書きごとの競争と人件費・家賃の構造から置いた。倍率は、自己資本を『今+純利益の合計−還元』で流して出した ROE と資本コスト 8%、長期成長率 4.0% から正当化 PER を出し、その 8 割前後に置いた。今の株価や過去の倍率は使っていない。悲観は売れる資産の床で置いた。10 年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえ、2028 年 12 月期からの新リース会計で営業利益が少し増え、純有利子負債がリース負債の分だけ増える点は含めていない。今の値段が倍でも半分でも結論は動かない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.7→15.3 倍・やや楽観 PER 10.5→14.07 倍・中立 PER 10→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。外食は景気で客数が動き、家賃が固定費のため利益が大きく振れる。値段はコメと人件費の上昇を転嫁しきれず、市場に決められている。事業は黒字で傾いていないので、上乗せ(extra)は置かない。承継や増資などの個別のリスクは k に足さず、筋書きの確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。