結論
ホットランドホールディングスは、たこ焼きの「築地銀だこ」を軸に、酒場、油そば、とんかつへ店を広げる外食企業だ。国内に約 740 店、海外に約 70 店を持つ。
筆者の結論は割高である。10 年後の利益に妥当な倍率を掛けて今に引き直すと、本質価値は今の時価総額の 3 分の 1 ほどにとどまる。
一番の理由は、利益が薄いことだ。2025 年 12 月期は売上が 510 億円まで伸びたのに、営業利益率は 3.5%だった。買収の費用と米国の先行投資が重なったとはいえ、過去 12 年の営業利益率は 2%台から 6%台の間に収まる。中期計画は 2030 年に売上 1,000 億円・営業利益率 6.5%を掲げる。これは過去の山と同じ高さだ。
二つ目の理由は、成長を店への投資で買っていることだ。2026 年 4 月の公募増資で約 80 億円を集め、株数は 2 割近く増えた。資金は新しい店と改装に回る。新しい店が資本コストを超えて稼ぐ証拠は、まだ薄い。
強みもある。たこ焼きに絞った小さな店は出しやすく、原料の調達から機械まで自前で持つ。国内の専門店では最大手だ。ただし、堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるほどの値決めの力はない。既存店の客数は前の年を割っている。
財務は増資で固まった。10 年で見れば、利益は伸びるが、増えた株と投資の重さが 1 株の価値を押さえる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「良い商売だが、まだ堀と呼べるほど深くない」。
事業の本質は、小さな区画で、単純な調理で、手早く売ることだ。出店の費用は軽く、成功する店は短い期間で投資を回収する。この型は、再投資の機会が長く続く限り、株主に利益をもたらす。
一方、株主に残る利益、つまり再投資を引いたオーナー利益は、見た目の営業利益より薄い。新しい店の改装と出店に毎年お金が要り、その額は純利益に近い。さらに家賃と人件費が毎年の固定の約束として残る。
経営の資本配分は、これから試される。買収と米国、そして公募増資と、お金を使う話が重なった。うまくいけば優良な成長企業になるが、規律が崩れれば、のれんの減損と薄まった株だけが残る。
安全域の目で見ると、増資後の時価総額は、中期計画の 2030 年の利益が実現して、さらにその先も伸びることを前提にしている。筆者は、その計画の達成確率を過去の実績より高く置く根拠を見つけられていない。払う値段に余裕はない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は飲食事業で、売上の 96%、利益のほぼ全部を占める。
主力の築地銀だこは、国内に約 420 店ある。店の多くは駅ビルや商業施設の小さな区画で、調理は焼き機と少人数で回る。国内は直営が半分強、業務委託の店(PC)が 2 割強、フランチャイズ(FC)が 2 割強という組み合わせで、FC の店は本部に原料と使用料が入る形だ。
銀だこを育てた型を、別の業態にも当てている。ハイボールとたこ焼きを出す「銀だこハイボール酒場」と「おでん屋たけし」は、夜の客単価が高く、利益率が相対的に厚い。油そばの「東京油組総本店」は食事の客を取る。2025 年 1 月に買収した「厚切りとんかつ よし平」は、小さな外食会社を買い、ホットランドの出店力で 50 から 100 店へ増やすロールアップの第一弾だ。
製販事業は、スーパー向けの冷凍たこ焼きとミックス粉、コールドストーンのアイスの自動販売機を扱う。売上は 20 億円で、飲食を補う位置にある。群馬の温泉・サウナ施設を営むリゾート事業は、まだ赤字だ。
海外は、香港、タイ、インドネシアなどでフランチャイズ中心に出し、米国は直営の旗艦店で構える。2024 年にはロサンゼルス・ドジャースの球場に出店した。米国は今、費用が先に出る段階で、2025 年の利益を押し下げた。
2025 年 4 月に持株会社へ移り、新業態を育てる体制に変えた。創業者の一族が約 3 割の株を持つオーナー企業でもある。
優良さと弱いところ
優良さは「普通より少し上、ただし堀は浅い」と見る。
強みの第一は、単品に絞った出店の速さだ。たこ焼きは調理が単純で、人の育成が短く済み、小さな区画で成り立つ。専用の焼き機を自社で作り、原料のたこも世界の産地から集めている。この垂直の仕組みは、国内の専門店で最大手という地位を支えている。
弱みの第一は、値決めの力が限られることだ。たこ焼きは、おやつや軽食の位置にあり、高い値段をつけると客が離れる。2026 年 5 月の銀だこの既存店は、売上が前年比で 1.7%増だったのに、客数は 2.8%減った。値上げで売上を保っているが、客が減るのは止まっていない。
第二は、利益の薄さだ。営業利益率は 2025 年に 3.5%で、過去 12 年の最良は 6.5%だった。人件費と家賃は固定の約束として毎年残り、売上が落ちる年は利益が一気に削られる。赤字の年は過去 14 年に 4 回ある。
第三は、資本の使い方が試される途中にあることだ。買収と米国への投資、そして公募増資と、お金を使う話が続く。うまく回れば堀が広がるが、まだ結果は出ていない。
単品の人気に頼る点も弱い。ブランドの鮮度が落ちれば、駅ナカの小さな店はすぐに家賃を負担に感じる。堀は強いと言えず、10 年先まで利益が守られる確度は普通とみる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食の市場は、日本フードサービス協会によると 2023 年に約 24 兆円まで戻った。ただし、人口が減るため、客数は伸びない。伸びるのは客単価、つまり値上げの分だ。
物価が年 3%で上がる世界では、外食は店の人件費と食材費も同じだけ上がる。値上げが通る店は残り、通らない店は利益を削られる。この差が、これからの 10 年を分ける。
たこ焼きの専門店は、外食全体から見ればごく小さな市場だ。筆者の推定では、店頭の売上で千億円台にとどまる。銀だこは国内に約 420 店を持つ。店数と売上から推定すると、専門店の中では 3 割前後を占める最大手だ。競合は、くくる、たこ八といった専門チェーン、地方の個店、そしてコンビニやスーパーの冷凍・総菜だ。専門店どうしの値下げ競争は激しくなく、むしろ代わりになるのは「安く済ませる軽食」全般である。
成長の領域は三つある。一つは、酒場。ハイボールとたこ焼きの組み合わせは、昼夜の客層を広げた。二つ目は、訪日客の多い観光地や商業施設の出店。三つ目は、海外のフランチャイズだ。アジアでは家賃も人件費も国内より低く、小さな店が合う。
逆風は、人件費の上昇と、輸入原料の高騰だ。たこの価格は産地の漁獲と為替で動き、150 円の世界では輸入コストが物価以上に上がりやすい。パートの確保も年々難しくなっている。自動化できる範囲は、焼き機の周りにはあるが、店頭の接客は残る。
業界の最大の分かれ目は、客数が減る中で、値上げと新業態の出店で売上と利益を伸ばし続けられるかどうかだ。
資本政策と M&A
還元は、安定した配当を基本にしている。成長投資、財務の強化、株主還元の均衡を方針に掲げ、配当は年 2 回で、直近は 2 年続けて同額だ。自社株買いの方針は確認できない。
2026 年 4 月には、新株約 410 万株の公募増資を行った。オーバーアロットメント分を含めて約 80 億円が入り、使い道は新規出店と改装の設備投資とされる。株数は約 2 割増え、純負債は増資前の 64 億円から、ほぼ無借金に変わった。
買収は、2025 年 1 月のよし平が第一弾だ。のれんは 15 億円で、10 億円台の買収を繰り返すのが方針とみる。大型の買収は想定しにくい。
創業者の一族が約 3 割の株を持ち、乗っ取り的な TOB の可能性は低い。小麦粉を納めるニップンも 5%を持つ。
株主優待は、100 株以上で年 2 回、食事券を出す。年間の費用は 1 億円に満たないと推定し、10 年の還元への上乗せは小さいので、ここでは数えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2025 年に決めた中期計画は、達成が見える。国内では酒場、油そば、とんかつの三つの新業態が育ち、2030 年に国内の店が 1,000 店に届く。新しい店は、小さな区画と短い育成期間で、投資を早く回収する。
銀だこは、訪日客の増加で観光地の売上が伸び、客単価を上げても客数が戻る。ハイボール酒場は、夜の客を広げ、利益率の高い店が全体の平均を押し上げる。
米国は、ドジャースの球場に出した旗艦店が見本になり、北米と欧州で 20 店に増える。現地での製造を強めることで、原料の輸入コストも下がる。ASEAN ではフランチャイズが 80 店まで伸び、使用料と原料の販売で、本部に安定した利益が入る。
ロールアップも続く。5 から 20 店の外食会社を買い、ホットランドの出店力で 100 店に増やす型を、よし平に続いて数社に広げる。売上が 1,000 億円を超えれば、本部の費用に規模の利益が出て、営業利益率は 6.5%の計画を超えていく。
増資で得た資金で出店を早め、自己資本の利益率も上がる。株数が増えた分は、利益の伸びで取り戻す。
慎重な見方
営業利益率が 3.5%しかない会社に、中期計画の 6.5%を当てはめるのは強気すぎる。過去 12 年に 6.5%を超えた年はなく、2014 年の山のあとは、赤字と薄利を繰り返した。
客数は既に落ちている。2026 年 5 月の既存店は、売上が増えたのに客数が減った。値上げで客が離れる局面で、さらに人件費が上がれば、利益は店の固定費に食われる。
新業態は、まだ銀だこほどの実績がない。酒場もとんかつも、競争が激しい市場に入る。買収したよし平ののれんは 15 億円で、買収を重ねれば減損の元になる。
米国と海外は、先行投資が利益を食っている。2025 年の営業利益が 3 割減ったのは、買収の費用と米国の投資のためだった。計画どおりに回収できる保証はない。
2026 年上期は、営業利益が前年から 15%減り、経常利益の増加は為替予約の評価益に頼った。通期の計画は据え置きだが、下期は前年を割るとの試算がある。
増資で株数が 2 割近く増え、1 株あたりの利益は薄まった。新しい資金が稼げないまま、店の家賃と人件費だけが残るなら、増資は価値を作らない。
どちらに重みを置いたか
新業態の出店の速さと、単品業態を横に広げる型の強さについては、強気の言い分に説得力がある。一方で、客数の減少、過去の利益率の低さ、増資による希薄化という慎重な言い分のほうが、数字の裏づけは厚い。
確率は、中立よりやや悲観側に寄せた。中期計画の利益率を 10 年続けて超えるには、値上げが通り続けることと、新業態が銀だこ並みに稼ぐことの両方が要るからだ。
中立の営業利益率は 5〜6%にとどめ、中期計画の 6.5%には届かないと置いた。計算の結果、10 年後の中立でも今の時価総額を下回り、還元を足しても差は埋まらない。総合では割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,193 円309 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 169 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 654 円170 億円、今との差 −59.7%、 期待の年率 −1.7%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,109 円806 億円 | 309 円80 億円 | +110.7% | +7.7% | 273 円71 億円 |
| やや楽観 | 21% | 1,859 円482 億円 | 231 円60 億円 | +28.9% | +2.6% | 439 円114 億円 |
| 中立 | 33% | 1,280 円332 億円 | 177 円46 億円 | −10.2% | −1.1% | 481 円125 億円 |
| やや悲観 | 26% | 401 円104 億円 | 123 円32 億円 | −67.7% | −10.7% | 136 円35 億円 |
| 悲観 | 12% | 231 円60 億円 | 46 円12 億円 | −82.9% | −16.2% | 33 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,193 円309 億円 | 169 円44 億円 | −16.0% | −1.7% | 1,363 円353 億円 |
今の株価時価総額 1,622 円421 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 中計を超え、新業態が銀だこに並ぶ柱になる 利益 55 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 3,109 円806 億円
国内の店は 1,150 店まで増え、酒場、油そば、とんかつが銀だこに並ぶ柱になる。客単価を上げても客数がついてくる店が増え、1 店あたりの売上は物価を上回って伸びる。海外は 350 店規模に達し、米国の旗艦店が採算に乗る。ASEAN と欧州のフランチャイズは、使用料と原料の販売を積み上げる。買収は、よし平に続く数社に広がり、本部の費用は売上より遅く増える。営業利益率は 7%台に達し、過去の山を初めて超える。2026 年の増資で得た資金が、稼ぐ力に変わった 10 年である。株数が増えた分は、利益の伸びで取り戻す。
- 国内の飲食(築地銀だこ・酒場・油そば・とんかつほか):数量 1,150(国内の飲食店の年平均店数(店))× 価格 0.88(1 店あたり年間売上(億円。本部に入る額))→ 売上 1,007 億円・営業利益 76 億円。年平均 1150 店・1 店売上の指数 1.40
- 海外の飲食(香港・ASEAN のFC、米国の直営):数量 350(海外の飲食店の年平均店数(店))× 価格 0.63(1 店あたり年間売上(億円。本部に入る額))→ 売上 221 億円・営業利益 18 億円。年平均 350 店・1 店売上の指数 1.20
- 製販・リゾート:数量 60.0(出荷・入館(百万食換算。リゾートは 1 人を 10 食で換算))× 価格 134(1 食あたり単価(円))→ 売上 80 億円・営業利益 6 億円。出荷・入館 60(百万食換算)・単価の指数 1.34
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍。全体の PER 14.66 倍、時価総額 806 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画を超えて 10 年続くには、値上げ、新業態、米国が全部そろう必要があり、過去の実績からは遠い。強気の言い分の確度は低いとみて 1 割未満にした。
やや楽観 21% 中計にほぼ届き、国内千店で成長が鈍る 利益 36 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 1,859 円482 億円
中期計画の 2030 年の目標にほぼ届き、国内の店は 1,000 店前後で止まる。ここから先は、いい立地が減り、新しい店の売上は既存より小さくなる。値上げは物価並みに通り、客数は少しずつ減る。海外は 260 店に伸び、アジアの使用料が安定した収入になるが、米国は赤字を脱する程度にとどまる。ロールアップは年に 1 社ほどのペースで続く。営業利益率は 6%台に乗り、過去の山に並ぶ。ただし、利益率の改善は店の自動化と家賃の交渉に頼る部分が大きく、10 年続けて高い水準を保つのは簡単ではない。増資で集めた資金も、おおむね計画どおりに店へ回り、のれんの減損は小さくとどまる。配当は少しずつ増える。
- 国内の飲食(築地銀だこ・酒場・油そば・とんかつほか):数量 1,000(国内の飲食店の年平均店数(店))× 価格 0.83(1 店あたり年間売上(億円。本部に入る額))→ 売上 832 億円・営業利益 57 億円。年平均 1000 店・1 店売上の指数 1.33
- 海外の飲食(香港・ASEAN のFC、米国の直営):数量 260(海外の飲食店の年平均店数(店))× 価格 0.59(1 店あたり年間売上(億円。本部に入る額))→ 売上 153 億円・営業利益 8 億円。年平均 260 店・1 店売上の指数 1.12
- 製販・リゾート:数量 45.0(出荷・入館(百万食換算。リゾートは 1 人を 10 食で換算))× 価格 134(1 食あたり単価(円))→ 売上 60 億円・営業利益 4 億円。出荷・入館 45(百万食換算)・単価の指数 1.34
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.39 倍、時価総額 482 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2030 年までの出店は足元のペースの延長で、実現はあり得る。ただし利益率が過去の山を超えるのは簡単でなく、2 割余りにとどめた。
中立 33% 中立:国内は店数が頭打ち、利益率は 5〜6%で定着 利益 27 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 1,280 円332 億円
国内の店は 900 店で頭打ちになり、増える店と閉まる店がほぼ釣り合う。値上げは物価の分をほぼ通すが、客数は人口とともに細り、1 店あたりの売上は物価並みの 3 割増にとどまる。酒場は伸びるが、駅ナカの小さな銀だこ店は少しずつ減る。海外は 170 店まで増えるものの、米国は黒字が薄く、全体の利益への寄与は小さい。製販は自動販売機で伸びる。営業利益率は 5〜6%に落ち着き、過去の山の 6.5%に届かない。人件費の上昇は自動化と値上げで吸収するが、利益率を押し上げる余力は残らない。新しい資金は店に使い切り、自己資本の利益率は資本コストと同じ水準にとどまる。
- 国内の飲食(築地銀だこ・酒場・油そば・とんかつほか):数量 900(国内の飲食店の年平均店数(店))× 価格 0.81(1 店あたり年間売上(億円。本部に入る額))→ 売上 732 億円・営業利益 46 億円。年平均 900 店・1 店売上の指数 1.30
- 海外の飲食(香港・ASEAN のFC、米国の直営):数量 170(海外の飲食店の年平均店数(店))× 価格 0.60(1 店あたり年間売上(億円。本部に入る額))→ 売上 103 億円・営業利益 4 億円。年平均 170 店・1 店売上の指数 1.15
- 製販・リゾート:数量 33.0(出荷・入館(百万食換算。リゾートは 1 人を 10 食で換算))× 価格 134(1 食あたり単価(円))→ 売上 44 億円・営業利益 2 億円。出荷・入館 33(百万食換算)・単価の指数 1.34
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.3 倍。全体の PER 12.29 倍、時価総額 332 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の見通しの中心と、国内の頭打ち・新業態の部分的な成功を組み合わせた落としどころ。慎重な言い分のほうが数字の裏づけが厚いので、確率の重心をやや下に置いた。
やや悲観 26% やや悲観:客数減が続き、新業態も伸びきれない 利益 13 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 401 円104 億円
客数の減少が止まらず、値上げの余地が狭まる。1 店あたりの売上は物価の 2 割増にとどまり、人件費の上昇がそのまま利益率を削る。国内の店は 780 店まで減り、新業態のうち、とんかつと油そばは銀だこ並みの利益を出せない。海外は 110 店に増えるが、米国は赤字が続き、旗艦店の整理が始まる。のれんの減損が出て、買収は止まる。営業利益率は 3%台に戻り、過去の平均並みになる。2026 年の増資で集めた資金は、回収の遅い店に使われ、株数が増えた分を取り戻せない。配当は据え置かれ、利益は成長を失う 10 年になる。
- 国内の飲食(築地銀だこ・酒場・油そば・とんかつほか):数量 780(国内の飲食店の年平均店数(店))× 価格 0.75(1 店あたり年間売上(億円。本部に入る額))→ 売上 586 億円・営業利益 26 億円。年平均 780 店・1 店売上の指数 1.20
- 海外の飲食(香港・ASEAN のFC、米国の直営):数量 110(海外の飲食店の年平均店数(店))× 価格 0.58(1 店あたり年間売上(億円。本部に入る額))→ 売上 64 億円・営業利益 0 億円。年平均 110 店・1 店売上の指数 1.10
- 製販・リゾート:数量 28.0(出荷・入館(百万食換算。リゾートは 1 人を 10 食で換算))× 価格 120(1 食あたり単価(円))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。出荷・入館 28(百万食換算)・単価の指数 1.20
倍率:ROE 5.0%(純利益 13 億円 ÷ 自己資本 262 億円)は k 8.25% に届かず、正当化 PER の上限は 1÷k = 11.8 倍。ROE が k を下回り、利益の質も落ちるため、上限の 7 割へは引き上げず 8 倍(上限の 6.8 割)に置いた。
確率:既存店の客数が既に前年を割り、利益率が過去 12 年の平均を大きく上回る前提も置きにくい。客数減が続く筋書きを 4 分の 1 に置いた。
悲観 12% 悲観:薄い利益率のまま家賃と人件費に削られる 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 231 円60 億円
たこ焼きの流行が去り、駅ナカの小さな店が家賃を払えなくなる。客単価を上げても客数が戻らず、国内の店は 600 店まで減る。新業態は競合に押され、のれんと店の固定資産の減損が相次ぐ。米国の店は撤退し、海外は 70 店にしぼむ。売上が落ちても家賃は減らないため、営業利益率は 1%未満に落ち、実質的に稼ぐ力を失う。配当は大きく削られ、増資で集めた資金のうち使い切れなかった分が現金で残る。それでも店の需要が消えるわけではなく、再編や事業売却を通して一部の価値が引き出される余地は残る。創業家は約 3 割の株を持つため、外部からの買収で少数株主が報われる展開は考えにくく、価値の戻り方は鈍い。
- 国内の飲食(築地銀だこ・酒場・油そば・とんかつほか):数量 600(国内の飲食店の年平均店数(店))× 価格 0.69(1 店あたり年間売上(億円。本部に入る額))→ 売上 413 億円・営業利益 8 億円。年平均 600 店・1 店売上の指数 1.10
- 海外の飲食(香港・ASEAN のFC、米国の直営):数量 70.0(海外の飲食店の年平均店数(店))× 価格 0.50(1 店あたり年間売上(億円。本部に入る額))→ 売上 35 億円・営業利益 −2 億円。年平均 70 店・1 店売上の指数 0.95
- 製販・リゾート:数量 20.0(出荷・入館(百万食換算。リゾートは 1 人を 10 食で換算))× 価格 110(1 食あたり単価(円))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。出荷・入館 20(百万食換算)・単価の指数 1.10
倍率:悲観の稼ぐ力は純利益 2 億円 ÷ k 8.25% = 約 24 億円と小さい。そこで売れる資産の税引き後(約 60 億円)を床とみて、増資前の自己資本 113 億円に対する PBR 0.53 倍で測った(増資で入った資金の分は売れる資産に数えた)。増資後の純有利子負債はほぼゼロで、EV(時価総額と純有利子負債の和)で見ても、EV ÷ 営業利益は約 20 倍で結論は変わらない。店の内装は売れず、価値は敷金の返還、製造設備、リゾートの土地建物、残った現金にしかない。家賃は固定の約束として残る。
確率:流行の入れ替わりが速い軽食業態で、駅ナカの店は家賃が固定の約束になる。構造的に負ける筋書きは 1 割を超える確率で残る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の飲食(築地銀だこ・酒場・油そば・とんかつほか)
築地銀だこを中心に、ハイボール酒場、おでん屋たけし、東京油組総本店、よし平などを直営・業務委託・FCで展開する国内の飲食店。店は賃借で、家賃は固定の約束。
| 数量国内の飲食店の年平均店数(店) | 価格1 店あたり年間売上(億円。本部に入る額) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 716 | 0.63 | 448 | 27 |
| 10 年後 中立 | 900 | 0.81 | 732 | 46 |
取り方:2025 年 12 月期の飲食事業の売上 493 億円から、海外分を約 45 億円と推定して引いた 448 億円を、期首 689 店と期末 744 店の平均 716 店で割った。利益は飲食セグメントの 18 億円を、海外の先行投資の赤字 9 億円と国内 27 億円に筆者が分けた(開示は無く推定)。先の 1 店売上は物価 1.34 倍を基に、客数の減少と新業態の混ざりを入れて中立 1.30 倍に置いた。
海外の飲食(香港・ASEAN のFC、米国の直営)
香港、タイ、インドネシアなどのフランチャイズと、米国の直営の旗艦店。FC の店は本部に入る額が小さい。
| 数量海外の飲食店の年平均店数(店) | 価格1 店あたり年間売上(億円。本部に入る額) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 76.0 | 0.53 | 40 | −9 |
| 10 年後 中立 | 170 | 0.60 | 103 | 4 |
取り方:海外の売上を直営 27 店とFC 47 店への原料販売・使用料から約 40 億円と推定し(開示は無い)、期首 78 店と期末 74 店の平均 76 店で割った。利益は米国の先行投資で赤字と見て約 9 億円の損と置いた。先の 1 店売上は、FC 中心で本部の取り分が小さいことから、中立で物価より低い 1.15 倍に置いた。
製販・リゾート
スーパー向けの冷凍たこ焼き・ミックス粉、コールドストーンの自動販売機、群馬の温泉・サウナ施設。
| 数量出荷・入館(百万食換算。リゾートは 1 人を 10 食で換算) | 価格1 食あたり単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 22.5 | 100 | 23 | 0 |
| 10 年後 中立 | 33.0 | 134 | 44 | 2 |
取り方:製販 20 億円とリゾート 2.5 億円の合計 22.5 億円を、2,250 万食に換算して置いた(単価の指数は 100 を起点)。利益は製販の 1 億円からリゾートの赤字 0.84 億円を引いた約 0.2 億円。
リスクと懸念
客数の減少と値上げの限界
既存店の客数は前年を割り、売上は値上げで保っている。銀だこは軽食で、高い値段をつけると客が他に流れる。物価が年 3%で上がる中、値上げが通らなくなれば、利益は店の固定費に食われる。
利益率の薄さと固定費
営業利益率は 2025 年に 3.5%で、過去 12 年の最良も 6.5%だ。家賃と人件費は毎年払う約束で、売上が落ちると利益が一気に消える。新リース会計基準(2028 年 3 月期以降)で、店の賃借が貸借対照表に載り、見かけの負債と自己資本比率が変わる点にも注意が要る。
増資後の資本配分
2026 年の公募増資で株数は約 2 割増えた。資金は新規出店と改装に回るが、新しい店が資本コストを超えて稼ぐ証拠はまだ薄い。回収が遅い店が増えれば、株主の価値は薄まったままになる。
米国と海外の先行投資
米国の旗艦店は費用が先に出ており、2025 年の営業利益を押し下げた。現地製造の強化や ASEAN のFC拡大が、計画どおりに採算に乗る保証はない。海外は為替と現地の景気の影響も受ける。
買収とのれん
よし平ののれんは 15 億円で、買収を重ねる方針だ。統合に失敗すれば減損の元になる。創業家主導の意思決定は速い反面、規律が働くかは外から見えにくい。
原料と為替
たこは輸入が中心で、産地の漁獲と為替で値が動く。会社は為替予約を使うが、2026 年上期の経常利益の増加は予約の評価益に頼っており、本業の改善とは別に見る必要がある。
単品の人気への依存
利益のほぼ全部を築地銀だこが支えている。軽食のブランドは鮮度が落ちると店の入れ替えが速く、駅ナカの小さな店が家賃を負担に感じるようになる。新業態が代わりの柱に育つかは未確認だ。
今後の分かれ目
- 銀だこの既存店客数が前年比でプラスに戻ったら
- 値上げが通り続けている証拠で、中立から強気側に重みを移してよい。
- 酒場・油そば・とんかつの新店の売上が、銀だこ並みの水準で安定したら
- 新業態が第二の柱になる筋書きの確率を上げる。国内の店数の天井が上がる。
- 営業利益率が 2 年続けて 6%を超えたら
- 中期計画の利益率が現実になりつつあり、中立の利益率を引き上げて見直す。
- 米国の店の閉鎖やのれんの減損が出たら
- やや悲観・悲観側に重みを移す。海外の拡大が規模だけで終わっていると見る。
- 増資で得た資金の使い道が、出店ではなく大型の買収に変わったら
- 資本配分の規律が変わった合図で、買収の失敗を織り込む悲観側の確率を上げる。
- 原料のたこの価格が大きく下がったら
- 原価率が下がり利益率の追い風になる。中立の利益率を上に見直す余地が出る。
見ておくもの
- 銀だこの月次の既存店売上・客数(前年比)
- 中期計画(2030 年に売上 1,000 億円・営業利益率 6.5%)の毎年の進捗
- 新業態(酒場・油そば・とんかつ)の新店の初年度売上
- 米国と海外の営業損益、店の閉鎖
- 増資資金の使途と、のれんの減損の有無
倍率と資本コストの決め方
国内・海外・製販の 3 区分で、店数(実質)× 1 店売上(名目)を積んだ。自己資本は増資後の起点 189 億円に期間の純利益を足して還元を引いて流し、ROE は結果として出た。倍率は式(RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)、g 4.0%)から出した正当化 PER の 7〜10 割に置き、市場の倍率は使っていない。営業利益率は過去の山 6.5%以下に置いた。悲観の床は売れる資産の税後で置いた。店は賃借が多く、家賃は毎年払う固定の約束で、未経過リース料の額は未確認である。10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形にそろえ、2028 年 3 月期からの新リース会計基準で見かけが変わる点は価値の計算に入れていない。今の株価に寄せてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→14.66 倍・やや楽観 PER 10.9→13.39 倍・中立 PER 10→12.29 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5%に quality +1.0%を足した 8.5%。個別のリスク(増資後の資本配分・買収の実行・米国)は k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は黒字で、増資で財務も固まったので、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。