結論
ミスターマックスは、北部九州と関東で 59 店を展開するディスカウントストアだ。日用品、食品、ホームセンター用品、家電を安く売る。売上は約 1,480 億円、営業利益率は 3% で、小売としては標準的だ。
筆者の結論は、10 年先の価値は今の時価総額とほぼ釣り合い、適正というものだ。会社は強い。既存店は伸び、自社ブランドの比率が上がって利益率が改善している。ただ、借金が時価総額の 7 割を超え、家賃は毎年払う固定の約束だ。利益の少しの変化が、株主の取り分に大きく響く。このため、うまくいけば大きく報われ、崩れれば大きく削られる、振れ幅の広い株になる。
追い風は、物価高で「安く買いたい」客が増えたことだ。今期の第 1 四半期は営業利益が 3 割近く増えた。会社は 2029 年 2 月期に営業利益 100 億円を掲げるが、前の計画は営業利益 65 億円に対し実績が 30 億円だった。数字の読みは割り引く必要がある。
金利の上昇も効く。借入の利払いは今の低い水準から、借り換えのたびに 3.5% へ上がる。10 年で純利益を 1 割ほど削る。
株主構成も特徴だ。Waiz Holdings が約 34% を持つ筆頭株主で、2022 年から買い増してきた。買収の話が出る可能性は小さくない。ただ、それは筆者の価値の評価には入れていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ミスターマックスは、地域に根ざした堅実な小売だが、株主に残る利益は薄い。
良い点は三つある。既存店が伸び、利益率が改善している。自社ブランドを増やして、利益率を自力で上げている。九州の顧客基盤が厚い。
気になる点は三つある。ひとつは、稼いだお金が店に消えることだ。設備投資が減価償却を大きく上回り、営業による現金より多く使うので、株主に自由に残るお金は小さい。ふたつめは、借金だ。純有利子負債は約 180 億円で、金利が上がるたびに利益が目減りし、家賃も固定されている。みっつめは、利益が薄いことだ。営業利益率は 3% 台で、人件費が上がれば簡単に吹き飛ぶ。
株主のものになる利益は、純利益から成長のための店と改装の投資を差し引くと、ほぼ残らない。配当は出ているが、借入で補っている面がある。
払う値段に安全域があるかと問えば、今は薄い。時価総額 240 億円に、借金 180 億円と家賃の約束がのる。中立の筋書きなら価値は今の値段を上回る。だが、借金と家賃で崩れる筋書きの重みを織り込むと、ちょうど釣り合う。
何で稼ぐ会社か
ミスターマックスは、福岡市に本社を置き、北部九州と関東を中心に 59 店を営む。うち 25 店は、自社が開発するショッピングセンターの形で、テナントも入る。売場面積は合計で約 33 万平方メートルだ。
品ぞろえは、日用品・食品・ペット・DIY・家電・衣料と幅広い。特徴は、自社ブランド(PB)の比率が売上の 22% まで上がったことだ。仕入れてそのまま売るより粗利が高く、前期は 1.3 ポイント上がった。粗利益率は 21.9% で、スーパーよりやや低く、ホームセンターよりやや高い水準だ。
顧客は、郊外に住む家族連れが中心だ。1 店あたりの来店は 1 日 2,500 人ほどと推定する。従業員は正社員が約 720 人、パート・アルバイトが年平均で約 1,800 人。店舗の運営は、人手と家賃と光熱費が主な費用になる。
2024 年に物流子会社を設立し、他社の荷物も請け負う。ネット販売は売上の約 1% で、中期計画では 2029 年 2 月期に 10% を目指す。海外は、中国に作った子会社を 2025 年に清算して撤退した。出店は 2029 年 2 月期までに 25 店を計画し、北部九州と首都圏中心部に集中する。
優良さと弱いところ
ミスターマックスの強みは、北部九州の顧客に深く根ざした店づくりと、自社ブランドによる利益率の改善にある。ショッピングセンターを核にした大型店は、郊外の家族連れの 1 回の買い物をまるごと取る。自社ブランドは 4 年で比率が 2 割を超え、荒利を押し上げた。
財務は、強くはない。自己資本比率は 44%、純有利子負債は約 180 億円で、営業利益の 4 倍に当たる。利払いは今は小さいが、借り換えのたびに上がる。店舗の土地・建物の賃借も多く、年間の賃借料は約 47 億円にのぼる。売上が落ちても家賃は減らない。
弱みは三つある。ひとつは、利益率の低さと波だ。営業利益率は 12 年で 0〜4.6% の幅があり、前の中期計画は大きく未達だった。ふたつめは、競合の強さだ。九州には、ディスカウントとスーパーを一体にしたトライアル、ドン・キホーテ、ドラッグストア勢がいる。みっつめは、成長戦略の実行力だ。中国の子会社は清算し、M&A は掲げるだけで実績がない。
筆者は、堀は浅い会社と見る。地域の足場は固いが、価格競争に巻き込まれやすく、値段を決める力は弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ディスカウント小売の需要は、物価高と節約志向が追い風になる。ホームセンター市場は 3.4 兆円〜4 兆円で、店舗数は 5,000 店を超える。国内の人口が減る中、新店を出すほど、既存店の客を奪い合う形になる。
競争は二つの方向から強まる。ひとつは大手の寡占化だ。ホームセンターは「1 兆円」を目指す統合と共同購買が進み、仕入れの規模で小さな会社が不利になる。もうひとつは、ディスカウントの拡大だ。ドン・キホーテ(パン・パシフィック)は国内で出店を続け、トライアルは九州から全国へ広がる。ミスターマックスと客層も立地も重なる。
人件費は、最低賃金の上昇とパートの不足で年 3〜5% 上がる。ミスターマックスは、パート比率が高いため影響を受けやすい。値上げが通るかは、客が離れるかどうかで決まる。ディスカウント業態は、物価高で「安さ」を求める客が増えるので、値上げを通しやすい面がある。
ネット通販は、物販の 1 割ほどまで普及した。店舗を持つ小売には長期の天井要因だが、日用品や重い商品は店頭で買う傾向が残る。
10 年の市場は、国内の来店客数が人口とともにゆるやかに減る一方、出店と客の囲い込みで、会社は数量をやや増やせる、とみる。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向 30% を目安に、期末に年 1 回配る形だ。前期の性向は 33%、DOE(純資産配当率)は 2.3% で、今期は配当を増やす予想だ。自社株買いは確認できない。自己株は約 25 億円分ある。
利益の約 7 割を内部に残し、新店と改装に回す。今期の設備投資の予定は 75 億円で、新店 42 億円、改装 24 億円だ。営業による現金の稼ぎは年 40 億円ほどで、投資が稼ぎを上回り、借入が増える構造だ。
中期計画は、M&A などに 205 億円を見込む。ただ、中国の子会社を清算した例や、前の計画の大幅な未達を考えると、実行力は未知数だ。M&A で価値を壊さないか、筆者が最も注意している点だ。
株主は、Waiz Holdings が約 34% を持ち、2022 年に東証の立会外取引で買い集めた。2024 年 10 月に筆頭株主が創業家の平野泰啓氏から移った。取引先持株会が 9% 弱を持つ。支配に近い株主がいるため、買収されるか、非上場化に向かう可能性は無視できない。推定では 10 年で 3 割ほどだ。
新リース会計基準が 2028 年 2 月期から適用され、家賃の一部が貸借対照表に載る。純有利子負債は、リース負債の分だけ増えて見える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ミスターマックスは、いま好循環の中にいる。既存店売上は前期 6.4% 増え、今期の第 1 四半期も営業利益が 3 割近く増えた。自社ブランドの比率は 22% まで上がり、粗利が構造的に改善している。物価高で、安さを求める客が増える中、ディスカウント業態は追い風だ。
出店も本格化している。2029 年 2 月期までに 25 店を計画し、北部九州と首都圏の中心部で集中して出す。新店は 4 店が確定し、年間の出店数は過去最多になる。物流子会社と EC も立ち上がり、小売以外の収益が育つ。
会社は 2029 年 2 月期に売上 2,000 億円、営業利益 100 億円を掲げる。今の 44 億円から 2 倍超だ。同業のコーナンやコメリは、営業利益率 5〜6% を実現している。ミスターマックスが 5% に届けば、利益は 10 年で 2 倍近くになる。
株主構成も好材料だ。Waiz Holdings が 34% を持ち、買い増しているので、経営と株主の利害が重なる。買収の提案が出れば、時価総額への上乗せも期待できる。
慎重な見方
利益率の改善は、まだ途中の話にすぎない。営業利益率は 12 年のうち 4% を超えたのは 1 年だけで、前の中期計画は営業利益 65 億円に対して実績 30 億円だった。今の 100 億円という目標も、同じ道をたどる恐れが高い。
借金が重い。純有利子負債は約 180 億円で、時価総額の 7 割を超える。利払いは今は小さいが、借り換えのたびに 3.5% へ上がり、10 年で純利益を 1 割ほど削る。家賃は年 47 億円で、売上が落ちても減らない。景気が悪くなれば、営業利益は一気に目減りする。
競合も強い。トライアルとドン・キホーテが九州と関東で出店を続け、客を奪い合う。仕入れの規模で劣り、自社ブランドで追いかけても、値段を決める力は弱い。
投資も重い。設備投資は減価償却を上回り、営業による現金より多く使うので、借入が増える。中国の子会社は清算し、M&A の実績は無い。
時価総額 240 億円は、利益の 8 倍ほどに見える。だが、借金 180 億円を足した全体の値段で見ると、営業利益の 9 倍を超える。今の値段は、うまくいく筋書きをかなり織り込んでいる。
どちらに重みを置いたか
直近の勢いでは強気の見方が上回る。ただ、10 年という長さでは、借金・固定の家賃・過去の計画の未達という慎重な見方の指摘が重い。
確率は中立に 38% を置き、強気側(楽観とやや楽観)は 26%、悲観側(やや悲観と悲観)は 36% とした。同じ領域の会社より悲観をやや厚くしたのは、純有利子負債が時価総額の 7 割を超え、金利上昇と家賃の固定費が利益を直接削るためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,484 円495 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 319 円106 億円)。 今の値に割り戻すと 923 円308 億円、今との差 +30.0%、 期待の年率 +9.8%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,566 円1,190 億円 | 579 円193 億円 | +483.7% | +19.3% | 249 円83 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,377 円793 億円 | 426 円142 億円 | +294.7% | +14.7% | 560 円187 億円 |
| 中立 | 38% | 1,713 円572 億円 | 342 円114 億円 | +189.4% | +11.2% | 781 円260 億円 |
| やや悲観 | 26% | 476 円159 億円 | 213 円71 億円 | −3.0% | −0.3% | 179 円60 億円 |
| 悲観 | 10% | 203 円68 億円 | 135 円45 億円 | −52.4% | −7.1% | 34 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,484 円495 億円 | 319 円106 億円 | +153.9% | +9.8% | 1,803 円601 億円 |
今の株価時価総額 710 円237 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 出店と自社ブランドが当たり、営業利益率 5% に近づく 利益 83 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 3,566 円1,190 億円
北部九州と首都圏中心部への出店が成功し、店舗数は 59 から 80 店ほどへ増える。自社ブランドの比率は 35% まで上がり、粗利益率が改善する。来店客数は 10 年で 3 割強増え、客単価は物価と商品構成で 1.37 倍になる。売上は 2,800 億円、営業利益率は 4.8% で、営業利益は 130 億円ほどになる。
ネット販売と他社物流の請負も育ち、小売以外の利益が加わる。会社は配当性向を 35% まで高める。借入は増えるが、利益の増え方が上回り、純有利子負債の対営業利益は 2 倍台に下がる。
- 店舗(ディスカウントストア):数量 7,295(年間来店客数(万人、推定))× 価格 0.37(1 人あたり買い上げ額(万円・名目))→ 売上 2,699 億円・営業利益 130 億円。数量 1.35 倍 × 値段 1.37 倍、営業利益率 4.8%
- ネット販売ほか:数量 158(年間受注件数(万件、推定))× 価格 0.62(1 件あたり買い上げ額(万円・名目))→ 売上 98 億円・営業利益 3 億円。数量 4.00 倍 × 値段 1.37 倍、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 83 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.28 倍、時価総額 1,190 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店 25 店の成功、自社ブランドの拡大、競合の抑え込みがすべて成功する必要があり、前の計画の未達を考えると確率は低い。
やや楽観 20% 出店が進み、自社ブランドで利益率が 4% 近くへ 利益 59 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 2,377 円793 億円
新店が順調に立ち上がり、店舗数は 70 店弱へ増える。来店客数は 10 年で 2 割強増え、客単価は物価並みの 1.35 倍になる。売上は 2,500 億円。自社ブランドの比率は 30% まで上がり、営業利益率は 3.9% へ改善し、営業利益は 95 億円になる。
借入は増えるが、営業による現金も増え、純有利子負債の営業利益比は 2 倍台に下がる。配当性向は 33% 程度を保つ。ネット販売は売上の 3% ほどに育つ。トライアルなどとの競争は続くが、既存店は小幅の増加を保つ。
新店の多くは、開店から 3 年ほどで既存店並みの売上に育つが、開店直後は人件費と減価償却が先に出て、利益率を押し下げる。改装も計画どおり進み、古い店の売上を下支えする。会社は借入に頼りすぎず、営業による現金の範囲で出店を進める姿勢を保つ。
- 店舗(ディスカウントストア):数量 6,593(年間来店客数(万人、推定))× 価格 0.37(1 人あたり買い上げ額(万円・名目))→ 売上 2,406 億円・営業利益 94 億円。数量 1.22 倍 × 値段 1.35 倍、営業利益率 3.9%
- ネット販売ほか:数量 119(年間受注件数(万件、推定))× 価格 0.61(1 件あたり買い上げ額(万円・名目))→ 売上 72 億円・営業利益 2 億円。数量 3.00 倍 × 値段 1.35 倍、営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 59 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.37 倍、時価総額 793 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の改善(既存店の伸び・自社ブランド・1Q の利益率 4.2%)が続く、会社の成長の筋書きに近い。
中立 38% 出店は進むが、競争と人件費で利益率は 3% 台前半にとどまる 利益 44 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,713 円572 億円
店舗数は 59 から 70 店ほどへ増え、来店客数は 10 年で 14% 増える。ただ、新店は既存店の客を一部奪うため、1 店あたりの来店は 5% ほど減る。客単価は物価並みの 1.34 倍で、売上は 2,300 億円になる。
自社ブランドは比率が上がり、粗利は少し改善するが、人件費の上昇が相殺する。営業利益率は 3.2% で、営業利益は 72 億円。借入は新店と改装で増え、純有利子負債は 200 億円を超え、利払いは 7 億円ほどに上がる。純利益は 44 億円になる。
配当性向は 32% 前後で、会社は「堅実な地域のディスカウント小売」の位置にとどまる。
- 店舗(ディスカウントストア):数量 6,160(年間来店客数(万人、推定))× 価格 0.36(1 人あたり買い上げ額(万円・名目))→ 売上 2,230 億円・営業利益 71 億円。数量 1.14 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 3.2%
- ネット販売ほか:数量 99.0(年間受注件数(万件、推定))× 価格 0.60(1 件あたり買い上げ額(万円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 1 億円。数量 2.50 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 572 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の実績に最も近い。出店で売上は伸びるが、競争と人件費の上昇で利益率は小幅の改善にとどまる、中心の筋書き。
やや悲観 26% 大手との価格競争で、粗利が削られ利益率が 2% に 利益 20 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 476 円159 億円
トライアルとドン・キホーテが九州と関東で出店を続け、客を奪う。来店客数は 10 年で 2% 減り、価格競争で客単価は 1.28 倍にとどまる。売上は 1,860 億円。
人件費は物価以上に上がるが、値上げが通りにくく、営業利益率は 2.0% へ下がる。営業利益は 37 億円。借入は新店で増え、利払いは 6 億円ほどに上がり、純利益は 20 億円まで減る。家賃の年 50 億円は減らず、固定費の重さが効く。
出店を絞り、改装で守る。配当性向は 30% の目安を保つ。優良な地域小売から、利益の薄い普通の小売へ後退する。
- 店舗(ディスカウントストア):数量 5,296(年間来店客数(万人、推定))× 価格 0.35(1 人あたり買い上げ額(万円・名目))→ 売上 1,832 億円・営業利益 37 億円。数量 0.98 倍 × 値段 1.28 倍、営業利益率 2.0%
- ネット販売ほか:数量 59.4(年間受注件数(万件、推定))× 価格 0.58(1 件あたり買い上げ額(万円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 0 億円。数量 1.50 倍 × 値段 1.28 倍、営業利益率 1.0%
倍率:ROE 4% 弱で k を大きく下回る。RONIC=8.25%+1/3×(3.7%−8.25%)=6.7%、g 3.5% から正当化 PER=約 10.0 倍。価格競争で利益率が落ちる構造の負けなので、上限の 7.5 割の 7.5 倍に置いた。
確率:トライアルとドン・キホーテの出店、人件費の上昇、前の中期計画の未達という具体的な懸念が重なる筋書き。同じ領域の会社と同水準に置いた。
悲観 10% 価格競争と固定の家賃で、利益が消える 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 203 円68 億円
トライアル、ドン・キホーテ、ドラッグストア勢が価格を下げ、客が離れる。来店客数は 10 年で 12% 減り、客単価は物価に届かない 1.22 倍。売上は 1,590 億円。
人件費は上がるが値上げが通らず、営業利益率は 0.8% に落ちる。営業利益は 13 億円で、利払い 8 億円を引くと、純利益はほぼ消える。家賃の年 50 億円は減らず、固定費が利益を食う。
新店の多くで減損が出て、自己資本は 150 億円ほど目減りする。借入の返済のため、不採算店を閉め、土地建物を売る。配当は大きく減らす。\残るのは、地元の一部の店と、自社ブランドで守る日用品の売上だ。出店 25 店の計画は途中で止まり、M&A に充てるはずだった資金は借入の返済へ回る。会社は規模を縮めて、生き残りを図る姿になる。
- 店舗(ディスカウントストア):数量 4,755(年間来店客数(万人、推定))× 価格 0.33(1 人あたり買い上げ額(万円・名目))→ 売上 1,565 億円・営業利益 13 億円。数量 0.88 倍 × 値段 1.22 倍、営業利益率 0.8%
- ネット販売ほか:数量 39.6(年間受注件数(万件、推定))× 価格 0.55(1 件あたり買い上げ額(万円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍 × 値段 1.22 倍、営業利益率 0.0%
倍率:利益がほぼ消え、ROE は 1% 弱で k を大きく下回る。稼ぐ力ではなく、売れる資産の税後から置く。今の自己資本 384 億円に 0.2 倍を掛けた約 77 億円は、店舗の土地・建物 498 億円の 4 割と現金・有価証券を足し、借入とリース約 155 億円を引いた額に近い。在庫は仕入債務と相殺した。
確率:競合の浸透、出店の失敗、固定の家賃と借入の金利上昇が同時に来る複合の筋書き。借入が時価総額の 7 割と重いので、領域の平均並みの 1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
店舗(ディスカウントストア)
九州・中国・関東の 59 店。ホームセンター・食品・日用品・家電などを安く売る。
| 数量年間来店客数(万人、推定) | 価格1 人あたり買い上げ額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 5,404 | 0.27 | 1,459 | 44 |
| 10 年後 中立 | 6,160 | 0.36 | 2,230 | 71 |
取り方:店舗の売上 1,459 億円を、客単価約 0.27 万円とみて年間約 5.4 億人の来店に分けた(推定。開示は無い)。来店客数は実質の数量で、物価の 3% と商品構成(自社ブランド比率の上昇)は客単価に入れる。営業利益は全社 44.5 億円のうちネット販売の分をわずかに除いた額とした。
ネット販売ほか
インターネット販売など店舗以外の売上。
| 数量年間受注件数(万件、推定) | 価格1 件あたり買い上げ額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 39.6 | 0.45 | 18 | 0 |
| 10 年後 中立 | 99.0 | 0.60 | 60 | 1 |
取り方:ネット販売ほかの売上 17.8 億円を、1 件あたり約 0.45 万円とみて約 40 万件に分けた(推定)。件数は実質、物価は単価に入れる。利益は開示が無く、売上の 1% ほどと置いた。
リスクと懸念
借金と金利の上昇
純有利子負債は約 180 億円で、営業利益の 4 倍に当たる。借入は借り換えのたびに 3.5% 前後へ上がり、利払いは今の約 2 億円から 6〜7 億円へ増える。10 年で純利益を 1 割ほど削る見込みだ。
家賃の固定費
年間の賃借料は約 47 億円で、土地・店舗の長期リースは主に 20 年だ。売上が落ちても減らない固定の約束で、景気後退のときは営業利益が一気に目減りする。新リース会計基準で、2028 年 2 月期から貸借対照表に載り、見かけの借金も増える。
大手ディスカウントとの競争
九州にはトライアル、ドン・キホーテ、ドラッグストア勢がいて、出店を続ける。客層も立地も重なり、価格競争に巻き込まれやすい。仕入れの規模で劣り、値段を決める力は弱い。
中期計画の達成度
前の計画は 2024 年 2 月期の営業利益 65 億円に対し、実績は 30 億円だった。今の計画は 2029 年 2 月期に 100 億円を掲げる。出店 25 店と M&A が計画どおり進むかが分かれ目で、実績に乏しい。
人件費の上昇
パートが年平均で約 1,800 人と多く、最低賃金の上昇が直接コストに響く。人件費は名目で年 3〜5% 上がる。値上げが通らなければ、利益率はすぐ削られる。
M&A と投資の失敗
中期計画は M&A などに 205 億円を見込むが、中国の子会社は 2025 年に清算した。買収で価値を壊す危険がある。新店の投資も、減価償却を上回る水準が続く。
株主構成と流動性
Waiz Holdings が約 34% を持つ筆頭株主で、取引先持株会が 9% 弱を持つ。売買できる株は限られ、株価は需給で振れやすい。買い手が現れれば上昇するが、少数株主の発言力は小さい。
今後の分かれ目
- 既存店売上が 2 期続けて前年を上回り、営業利益率が 4% 台に乗ったら
- 強気側の筋書きに確率を移す。自社ブランドの比率と粗利益率が続いているかを見る。
- トライアルやドン・キホーテが近隣に新店を出し、既存店売上が前年を割ったら
- やや悲観側へ寄せる。客数の減り方を先に見る。
- 純有利子負債が 250 億円を超え、利払いが営業利益の 2 割を超えたら
- 借金の重みで悲観側に寄せる。出店ペースの見直しが出るかを見る。
- M&A が実行され、規模が 100 億円を超えたら
- 買収の対象と価格を見て、価値を壊していないか判断する。実績が無いので、確率の上振れには使わない。
- Waiz Holdings が 3 分の 1 を超えて買い増し、または TOB を公表したら
- 提案の値段を、本質価値と比べる。非上場化なら少数株主の取り分を別に見る。
- 配当性向の引き上げや自社株買いが決まったら
- 借入が重いので、還元よりも借入の返済を優先すべきか、資本配分の姿勢を見直す。
見ておくもの
- 既存店売上と営業利益率(今期の会社予想は 3.2%、1Q は 4.2%)
- 自社ブランドの比率(前期 22.2%)と粗利益率
- 新店の立ち上がりと既存店への影響(和白・小郡・福山東川口・益城)
- 純有利子負債と利払いの推移
- Waiz Holdings の持株比率と、買収の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER や過去の PBR に寄せず、利益で測った。正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で、k は基本 7.5% に値決め力+0.25%・借金+0.5% を入れた 8.25%、g は 3.5%、RONIC は ROE が k に届かないので k を下回る値で置いた。上限の 8〜9 割に置いた。借入は今の約 180 億円を 3.5% の借り換えで置き、利払いの増加を純利益に入れた。減価償却は今 30 億円で、物価では増やさず、新店分だけ新しい値段で足して 10 年後は 50 億円台とみた。設備投資は償却を上回る分を借入で賄う。新リース会計(2028 年 2 月期から)は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえ、家賃は悲観で固定費として残した。今の株価を見て筋書きを変えていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→14.28 倍・やや楽観 PER 10.4→13.37 倍・中立 PER 9.8→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。