結論
物語コーポレーションは、郊外の大型店で食べ放題の焼肉を出す「焼肉きんぐ」を柱に、丸源ラーメン、寿司・しゃぶしゃぶのゆず庵などを育ててきた外食会社である。店を出す商圏を絞って同じ地域に複数の業態を並べ、採用も物流も効率よく回す。これが他社に見えにくい強みだ。
筆者の結論は、今の値段は割高である。事業の質は高い。しかし10年後の利益を現実的に置くと、今の時価総額を上回れない。直近の既存店売上が毎月二けた近く伸びるのは異例で、これを物差しにはできない。
成長の源泉は店の数だ。国内は主力3業態で店を増やす余地がまだあり、海外とFCも広がる。中立では10年後に売上が3,400億円前後、純利益が160億円強になる。ただ国内の人口は減り、人件費と牛肉の値上がりは続く。利益率が今より上がる理由は乏しい。
稼いだお金を新しい店に回し続けるため、自己資本は膨らみ、ROEは今の18%台から11%台へ下がる。新しく出す店の稼ぎは、今の店ほど高くはない。
還元は配当が中心で厚くはない。それでも17期連続の増配という実績は評価できる。割安に見える局面は、焼肉ブームが冷めて株価が崩れた先にこそあるだろう。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、物語は「良い事業だが、値段が合わない」会社になる。
事業の質は高い。業態を作る力、郊外の商圏に集中する出店、値上げの出し方のうまさは、長く持ち続けたいと思わせる。経営は資本の使い方が堅実で、17期連続の増配も誠実さの表れだ。
ただ、稼ぎが10年後も同じ強さで続くかは分からない。外食は人手と食材の値上がりに常に追われ、焼肉は牛肉の相場に左右される。流行が一巡すれば、客は別の店へ移る。
筆者がいちばん気にしているのは、稼ぎの大半を1つの業態が生んでいる点だ。1つの看板が崩れると全体が崩れる。
安全域とは、悪い方に転んでも損が小さい値段のことだ。物語は悪い筋書きで、時価総額が今の1割以下になりうる。いい事業でも、この値段で持つには余裕が足りない。
今の利益が残る前提で測っても、10年後の価値は今の時価総額を下回る。事業を愛することと、値段を払うことは別だと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は国内直営の主力3業態だ。
焼肉きんぐは、肉を食べ放題で出す郊外ロードサイドの大型店である。コース料金は税込で4千円台と安くはない。それでも客が来るのは、肉の品質、デザートや麺まで含む品ぞろえ、店員が焼き方を教える接客に、値段を超える価値があるからだ。丸源ラーメンは肉そばを看板にしたラーメン店、ゆず庵は寿司としゃぶしゃぶの食べ放題店で、どれも同じ郊外の大型店という作りを共有する。
周辺の稼ぎは3つある。FCは加盟店への食材供給とロイヤルティで、国内に約260店ある。専門店・新業態は小型店や新しい食の形で、2030年に100店・売上100億円を目標に掲げる。海外は中華圏・東南アジア・北米で、店は100店を超えた。
2026年6月期の期末店舗数は919店。売上は1,517億円、営業利益は121億円だった。事業は飲食店の単一セグメントで、開示は6カテゴリだ。
1つの商圏に複数の業態を並べる集中出店が効いている。広告費も配送費も、店長を育てる手間も、同じ地域でまとめて済む。
本社は愛知県豊橋市にあり、社長は加藤央之氏が務める。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは「業態を作り続ける力」にある。
焼肉きんぐは国内の焼肉チェーンで売上首位とされる。牛角は店数こそ多いが、郊外の大型店で食べ放題という形は物語が磨いてきた。丸源やゆず庵も同じ型で育てた。1つの看板に頼らない点は、業態の寿命が短い外食では大きな強みだ。
値段の決め方もうまい。値上げをしても名物メニューや接客を足して、客に値上げの理由を見せる。2025年6月期は値上げ幅を抑えつつ既存店売上が伸びた。値上げで客が逃げるという外食の悩みを、ここは避けている。
配膳ロボットやタッチパネルで浮いた人手は、削らずに接客へ回す。人件費を減らすことより、体験を良くして客を増やすことに使うやり方だ。
弱みは3つある。売上の大半が焼肉に偏る。肉の仕入れ値は世界の相場に左右される。そして直近の好調で期待が高く、少し崩れただけでも利益が大きく振れる。
ROEは10年中央値が16%台と、外食の中でも高い。経営は資本を店に回す規律がある。堀は強いが、焼肉という1つの需要に集まりすぎている点が気になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食は成熟した市場だが、焼肉は例外的に元気だ。
国内の外食市場は人口減で数量が伸びにくい。値上げが通る業態と通らない業態に分かれ、人件費の上昇で小さな店は耐えられない。焼肉店の倒産は2025年度に57件と過去最多で、安さで勝負する店ほど苦しい。
勝つのは、体験の価値で値段を支える大手だ。焼肉では物語のほか牛角(レインズ)、あみやき亭、安楽亭、叙々苑などが競う。牛角は国内で約480店、安楽亭は140店台まで減らした。店数を競う時代から、1店ごとの稼ぎで競う時代に移っている。
数量と価格の見通しはこうだ。国内の来店客は人口と同じく緩やかに減る。しかし物語は店を増やして取り込む。1店当たりの売上は物価並みの値上がりが基本で、2026年5月の月次の伸びは異例の高さで、続かない。
原価も効いてくる。人気部位の牛肉は2020年比で7割上がったという。円安は輸入牛を高くするが、海外で稼ぐ円換算の売上には追い風になる。
海外は成長の余地が大きい。中華圏、東南アジア、北米で現地の食文化に合わせる必要があり、国内ほど簡単には儲からない。だから筆者は、海外の1店当たりの稼ぎを国内の半分以下で置いた。
資本政策と M&A
還元は配当が主役で、17期連続で増やしてきた。配当性向は2割ほどで、中計では累進配当を掲げる。自社株買いは2020年6月期からの累計で約70億円と控えめだ。2026年2月にも市場外で買っている。
お金は新しい店に回す。2026年6月期から3年で営業のお金は約510億円、投資は約490億円、還元は約58億円を見込む。つまり稼いだお金のほとんどを店と海外に使う。
M&Aで規模を買うタイプではない。業態を自分で作る方針だ。買収で価値を壊す心配は小さい一方、新業態が育たなければ投資が空振りになる。
自己資本比率は5割を超え、純有利子負債はほぼゼロ。ただ店舗の家賃は毎年払う固定の約束で、この数字ほど身軽ではない。
物語は時価総額が2千億円台で、買収される確率は高くない。上場を保ちながら自力で伸ばす会社だ。
株主優待は株主に渡る現物の配当なので、還元に足した。年の費用は約 1.5 億円(株主約 103,090 人×100 株の年額面 7,000 円×単元以上の割合 0.7×大口の上乗せ 1.2×使われる割合 0.85×原価率 0.3。推定)。10 年で中立 15 億円(続く見込み 1.0)、悲観は 0.5 で 8 億円。費用は販管費に入って利益を既に下げているので、自己資本の流れには足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
焼肉きんぐは、食べ放題の外食で唯一ここまで客を増やした業態である。値上げをしても既存店の客数が伸び、2026年5月の既存店売上は13%増と勢いが止まらない。体験の価値で選ばれる店は、人件費が上がっても値上げを受け入れてもらえる。
店はまだ増やせる。焼肉だけで国内に数百店の余地があり、丸源、ゆず庵、新業態を同じ商圏に重ねれば、1つの地域での存在感が増して採用も物流も楽になる。2030年に売上2,200億円、経常利益率10%という目標は、直近の実績から見ても射程に入っている。
新業態は100店・売上100億円を目指す。物語はこれまで何度も当ててきた会社で、次の看板が育てば焼肉への偏りも薄まる。
海外は中華圏、東南アジア、北米の3地域に広げている。FCは食材とロイヤルティで利益率が高く、店を増やすほど稼ぎが上積みされる。
自動化への投資が続き、ロボットやタッチパネルで人の手を接客に回せる。人件費の上昇を体験の価値で吸収し、利益率は今より上がる。
10年後には売上が4千億円台、純利益が300億円近くになり、強い成長が評価されて高い倍率がつく。
慎重な見方
直近の勢いは、焼肉ブームのピークを映している可能性が高い。既存店売上が2桁で伸びる状態は長続きせず、客数の伸びが止まれば、増やし続けた店が重荷になる。家賃は売上が落ちても毎年払う固定の約束だ。
牛肉の仕入れ値は上がり続けている。円安が続けば原価率が悪化し、値上げで吸収すれば客が離れる。最低賃金の上昇とパートの確保難も、郊外の大型店には重い。焼肉店の倒産が過去最多という事実は、業界全体が苦しいことを示す。
国内の人口は減る。店を増やせば同じ地域で自社の店が共食いを始める。同じ商圏に複数の業態を重ねる戦略は、強みであると同時に、もろさでもある。
新業態は当たりが続くとは限らない。小型店は店ごとの売上が小さく、100店・100億円という目標でも利益は薄い。海外は1店当たりの稼ぎが国内の半分にも届かない恐れがあり、現地の競合や食材調達で手間取る例が多い。
稼いだお金のほとんどを店と海外に回すため、ROEは18%台から11%台へ下がる。成長のために資本を食う会社は、成長率が鈍れば倍率も縮む。
10年後に今の値段を支えるだけの利益は出ない。
どちらに重みを置いたか
事業の質と店を増やす力は強い見方が優勢だ。しかし利益率の維持と、直近の勢いが続くかという点では慎重な見方の指摘が的を射ている。外食は人件費と食材の値上がりに追われ、焼肉への偏りも大きい。
このため確率は、中立の32%を中心に、慎重な側をやや厚く置いた。楽観は10%、悲観は11%にとどめ、極端な筋書きには寄せていない。中立でも10年後の時価総額は今を下回り、還元を足しても差は埋まらない。総合では割高と判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 7,147 円2,744 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 833 円320 億円)。 今の値に割り戻すと 3,945 円1,515 億円、今との差 −33.5%、 期待の年率 +3.0%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 15,245 円5,854 億円 | 1,320 円507 億円 | +179.3% | +10.8% | 1,657 円636 億円 |
| やや楽観 | 24% | 10,769 円4,135 億円 | 1,047 円402 億円 | +99.2% | +7.1% | 2,836 円1,089 億円 |
| 中立 | 32% | 7,966 円3,059 億円 | 854 円328 億円 | +48.7% | +4.0% | 2,822 円1,084 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,993 円765 億円 | 622 円239 億円 | −55.9% | −7.9% | 601 円231 億円 |
| 悲観 | 11% | 277 円106 億円 | 305 円117 億円 | −90.2% | −20.7% | 64 円25 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,147 円2,744 億円 | 833 円320 億円 | +34.6% | +3.0% | 7,980 円3,064 億円 |
今の株価時価総額 5,930 円2,277 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:焼肉の勢いが続き、新業態も当たる 利益 298 億円 · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 15,245 円5,854 億円
焼肉きんぐは国内で店を増やし続け、10年間で主力の店は740店近くまで広がる。既存店の客数も値上げの中で保たれ、1店当たりの売上は物価を上回って伸びる。丸源とゆず庵も同じ型で店を増やす。
新業態は当たりが続いて300店を超え、2つ目、3つ目の看板に育つ。FCは食材とロイヤルティで厚い利益を積み、海外は中華圏と東南アジア、北米で600店規模に達する。
自動化で人手を接客に回せるため、人件費が上がっても営業利益率は今より上がる。売上は4,700億円近く、純利益は300億円ほどになり、強い成長が評価される。焼肉への偏りが薄まる10年だ。
- 主力(焼肉・ラーメン・ゆず庵の国内直営):数量 740(国内直営の主力3業態の期中平均店数(店))× 価格 3.67(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 2,713 億円・営業利益 298 億円。営業利益率11.0%
- 専門店・新業態:数量 330(新業態・専門店の期中平均店数(店))× 価格 3.18(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 1,048 億円・営業利益 84 億円。営業利益率8.0%
- フランチャイズ(FC):数量 560(FC加盟店の数(店))× 価格 0.45(1加盟店当たりの収入(億円))→ 売上 251 億円・営業利益 38 億円。営業利益率15.0%
- 海外:数量 600(海外店舗の期中平均店数(店))× 価格 1.12(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 670 億円・営業利益 60 億円。営業利益率9.0%
倍率:事業の純利益 298 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.2% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍。全体の PER 18.79 倍、時価総額 5,599 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業態開発が当たり続ける筋書き。直近の勢いは異例で、焼肉への偏りも残るため1割にとどめた。
やや楽観 24% やや楽観:店は順調に増え、利益率は保たれる 利益 217 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 10,769 円4,135 億円
焼肉きんぐ、丸源、ゆず庵は店を着実に増やし、主力は680店ほどになる。値上げは物価並みに通り、既存店の客数もほぼ保たれる。
新業態は250店ほどに育ち、FCは480店規模に増える。海外は550店と拡大するが、1店当たりの稼ぎは国内に届かない。
人件費と牛肉の値上がりは自動化と値上げでほぼ吸収し、営業利益率は今とほぼ同じ8%近くを保つ。純利益は220億円ほどで、中計の年10%成長にやや届かないが、堅実な成長企業として評価される。この筋書きでは、業態開発の力が10年にわたって利益に結びつく。焼肉への偏りは残るが、ラーメンとゆず庵、新業態が少しずつ下支えする。海外は赤字を出さず、緩やかに利益を足す。
- 主力(焼肉・ラーメン・ゆず庵の国内直営):数量 680(国内直営の主力3業態の期中平均店数(店))× 価格 3.56(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 2,422 億円・営業利益 237 億円。営業利益率9.8%
- 専門店・新業態:数量 250(新業態・専門店の期中平均店数(店))× 価格 3.02(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 756 億円・営業利益 53 億円。営業利益率7.0%
- フランチャイズ(FC):数量 480(FC加盟店の数(店))× 価格 0.43(1加盟店当たりの収入(億円))→ 売上 208 億円・営業利益 30 億円。営業利益率14.5%
- 海外:数量 550(海外店舗の期中平均店数(店))× 価格 1.07(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 588 億円・営業利益 44 億円。営業利益率7.5%
倍率:事業の純利益 217 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.2% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.89 倍、時価総額 3,882 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業態開発の力が利益に結びつく確率は十分あるが、利益率の上積みは限られるので中立より薄くした。
中立 32% 中立:店は増えるが、利益率は今を超えない 利益 164 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 7,966 円3,059 億円
国内の主力は640店ほどまで増えるが、後半は伸びが鈍る。商圏が埋まり、人口の減少も効く。1店当たりの売上は物価並みに上がる。
新業態は180店規模、FCは420店、海外は400店まで増える。海外の1店当たりの稼ぎは国内より小さい。
人件費と牛肉の値上がりは続くが、値上げと自動化でほぼ相殺される。営業利益率は今の8%から7%ほどに下がる。直近の高い水準は10年続かない。
売上は3,400億円ほど、純利益は160億円強になる。成長は続くが、利益の厚みは今ほどではない。物語は堅実な外食大手として定着する10年になる。 株主優待は年およそ 1.5 億円(会社の費用ベースの推定)。続く見込み 1.0 で 10 年 15 億円を還元に足した(費用は利益から引き済み)。
- 主力(焼肉・ラーメン・ゆず庵の国内直営):数量 640(国内直営の主力3業態の期中平均店数(店))× 価格 3.51(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 2,246 億円・営業利益 202 億円。営業利益率9.0%
- 専門店・新業態:数量 180(新業態・専門店の期中平均店数(店))× 価格 2.93(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 528 億円・営業利益 32 億円。営業利益率6.0%
- フランチャイズ(FC):数量 420(FC加盟店の数(店))× 価格 0.42(1加盟店当たりの収入(億円))→ 売上 177 億円・営業利益 25 億円。営業利益率14.0%
- 海外:数量 400(海外店舗の期中平均店数(店))× 価格 1.12(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 446 億円・営業利益 27 億円。営業利益率6.0%
倍率:事業の純利益 164 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.9% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.05 倍、時価総額 2,796 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の見方(業態開発力)と慎重な見方(利益率の頭打ち)の落としどころ。最も確率を厚くした。
やや悲観 23% やや悲観:勢いが一巡し、利益率が下がる 利益 67 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,993 円765 億円
焼肉ブームが落ち着き、主力の店は560店で止まる。既存店の客数が減り、値上げもしにくくなる。同じ商圏に自社の店が重なり、共食いが目立つ。
新業態は110店に絞られ、赤字の店の整理が進む。海外は230店に届くが、1店当たりの稼ぎが小さく利益にほとんど貢献しない。
牛肉と人手の値上がりが利益率を押し下げ、営業利益率は4%に届かない。売上は2,600億円、純利益は70億円にとどまる。店の数は多くても、新しく出す店の稼ぎが資本コストに届かない会社になる。株主への還元は続くが、増配の勢いは鈍り、市場の見方は成長株から普通の外食株へ移る。
- 主力(焼肉・ラーメン・ゆず庵の国内直営):数量 560(国内直営の主力3業態の期中平均店数(店))× 価格 3.40(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 1,907 億円・営業利益 114 億円。営業利益率6.0%
- 専門店・新業態:数量 110(新業態・専門店の期中平均店数(店))× 価格 2.74(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 301 億円・営業利益 6 億円。営業利益率2.0%
- フランチャイズ(FC):数量 340(FC加盟店の数(店))× 価格 0.41(1加盟店当たりの収入(億円))→ 売上 139 億円・営業利益 17 億円。営業利益率12.0%
- 海外:数量 230(海外店舗の期中平均店数(店))× 価格 1.02(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 235 億円・営業利益 5 億円。営業利益率2.0%
倍率:ROE 6.7%でkに届かず、新しく投じるお金は超過利益を生まない。事業の稼ぎが先細りするので、PERは資本コストから出る上限(1÷k=12.8倍)より低い9.5倍に置いた。
確率:直近の異例の伸びが一巡する確率を、人件費・牛肉高・焼肉店の倒産増を踏まえてやや厚く置いた。
悲観 11% 悲観:看板が崩れ、構造的に優良さを失う 利益 14 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 277 円106 億円
食べ放題の焼肉が飽きられ、主力の店が480店ほどまで閉店で減る。牛肉の仕入れ値は高止まりし、値上げをすれば客が逃げ、据え置けば利益が消える。家賃は固定の約束で残り、売上が落ちても利益を食い続ける。
新業態は当たりが続かず、60店に縮む。海外は撤退が相次ぎ、赤字が積み上がる。FCは加盟店の閉店で収入が細る。
売上は1,800億円ほどで、営業利益はほとんど残らない。優良企業の面影は消え、事業の稼ぐ力だけが評価される。店という資産は残るが、リースの約束が重く、売って現金に換える分は小さい。再建のために業態の整理や海外からの撤退が進み、株主への還元も止まる10年になる。 株主優待は縮む前提(続く見込み 0.5)で、還元に 8 億円を足した。
- 主力(焼肉・ラーメン・ゆず庵の国内直営):数量 480(国内直営の主力3業態の期中平均店数(店))× 価格 3.14(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 1,508 億円・営業利益 60 億円。営業利益率4.0%
- 専門店・新業態:数量 60.0(新業態・専門店の期中平均店数(店))× 価格 2.41(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 145 億円・営業利益 −7 億円。営業利益率-5.0%
- フランチャイズ(FC):数量 250(FC加盟店の数(店))× 価格 0.36(1加盟店当たりの収入(億円))→ 売上 90 億円・営業利益 7 億円。営業利益率8.0%
- 海外:数量 100(海外店舗の期中平均店数(店))× 価格 0.93(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 93 億円・営業利益 −5 億円。営業利益率-5.0%
倍率:ROE 1.9%(純利益 14 億円 ÷ 自己資本 726 億円)の谷の利益。構造的に優良さを失う筋書きで、やや悲観の PER 9.5 倍より低い 7.6 倍(その 8 割)に置いた。売って得る資産の床は、家賃の約束・借入・減損を引くと小さいので別に立てない(従来の判断のまま)。
確率:焼肉への偏りと固定の家賃を考えると、流行が終わる構造的な負けは1割を超える確率で見ておく。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
主力(焼肉・ラーメン・ゆず庵の国内直営)
国内直営の焼肉きんぐ、丸源ラーメン、ゆず庵。郊外ロードサイドの大型店で、物語の稼ぎの中心。
| 数量国内直営の主力3業態の期中平均店数(店) | 価格1店当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 475 | 2.62 | 1,244 | 123 |
| 10 年後 中立 | 640 | 3.51 | 2,246 | 202 |
取り方:2026年6月期の売上1,517億円のうち、国内直営の主力3業態(焼肉・ラーメン・ゆず庵)を約82%(中計の売上構成比の推移から推定)、1,244億円と置いた。数量は期中平均の直営店数(2025年末の約440店と2026年末の約510店の中間)約475店、価格は1店当たり売上(億円)で約2.62億円。店数の伸びと、既存店+5%の増収を両方含む。
専門店・新業態
専門店と新しい食の形。2030年に100店・売上100億円を目標にする。
| 数量新業態・専門店の期中平均店数(店) | 価格1店当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 52.0 | 2.19 | 114 | 5 |
| 10 年後 中立 | 180 | 2.93 | 528 | 32 |
取り方:売上の約7.5%、114億円と推定。数量は期中平均の店数約52店(2025年の42店から増加)、価格は1店当たり売上で約2.2億円。小型店が多く、1店当たりは主力より小さい。 数量は実物(店数・加盟店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
フランチャイズ(FC)
国内外のFC加盟店への食材供給とロイヤルティ。店を持たず、利益率が高い。
| 数量FC加盟店の数(店) | 価格1加盟店当たりの収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 255 | 0.31 | 80 | 11 |
| 10 年後 中立 | 420 | 0.42 | 177 | 25 |
取り方:売上の約5.3%、80億円と推定。FC店は国内に約260店。数量は加盟店数(約255店)、価格は1加盟店当たりの食材供給とロイヤルティ収入(億円)で約0.31億円。 数量は実物(店数・加盟店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
海外
中華圏・東南アジア・北米の直営・合弁店。国内より1店当たりが小さい。
| 数量海外店舗の期中平均店数(店) | 価格1店当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 85.0 | 0.93 | 79 | 1 |
| 10 年後 中立 | 400 | 1.12 | 446 | 27 |
取り方:売上の約5.2%、79億円と推定(2025年6月期は47億円)。数量は期中平均の海外店数約85店(2025年59店から2026年5月の112店へ増加)、価格は1店当たり売上で約0.93億円。現地の店は国内より小さい。
リスクと懸念
焼肉への偏りと流行の一巡
売上の大半を焼肉きんぐが占める。食べ放題の焼肉は今は強いが、客が別の業態へ移れば全体が崩れる。外食は流行の寿命が短く、同じ商圏に自社の店を重ねる戦略は、客足が鈍ると共食いに変わる。
牛肉の仕入れ値と円安
人気部位の牛肉は2020年比で大きく上がった。円安が続けば原価率が悪化し、値上げで吸収すれば客数が減る。焼肉の値上げは客に価値を見せる必要があり、これまではうまくやってきたが、永遠には続かない。
人件費と人手の確保
最低賃金は上がり続け、パートの確保も難しい。郊外の大型店は人手を多く使う。配膳ロボットで人手を接客に回しているが、人件費の上昇ペースが業績を上回れば、利益率が下がる。
固定の家賃と過剰出店
店を借りて営むため、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。年に100店ほど出す計画は、勢いが止まったときに閉店のコストを生む。新リース会計の導入で、借金の見え方も変わる。
新業態と海外の収益化
新業態は100店・100億円を目指すが、当たる保証はない。海外は店の数が増えても1店当たりの稼ぎが国内より小さく、中華圏・東南アジア・北米で現地の競合や食材調達の壁に当たる。
異物混入・食中毒などの安全リスク
大型チェーンは1つの品質問題が全店・全ブランドに広がる。食べ放題の店は肉を生で扱う場面が多く、1件の事故がブランド全体の信頼を傷つける。一括調達の仕組みは、問題が起きたときの影響範囲を広げる。
今後の分かれ目
- 既存店売上が前年を下回る月が2〜3か月続いたとき
- 直近の勢いは一巡したと見る。中立より慎重な側に確率を寄せ、出店ペースが重荷になるかを確かめる。
- FY28の連結売上1,945億円・経常利益170億円の中計を達成し、さらに上積みされたとき
- 楽観の確率を上げてよい。業態開発と出店が利益に結びつく証拠が揃う。
- 新業態の1店当たり利益が主力に近づき、店数が100店に届いたとき
- 焼肉への偏りが薄まる。中立から楽観への移行を考える。
- 牛肉の仕入れ値がさらに大きく上がり、値上げが客数減を招いたとき
- 利益率が構造的に下がる。やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- 海外の店数が増えても1店当たりの売上が伸びないとき
- 海外は成長の柱にならない。海外の置き方を下げ、利益の伸びを国内中心に直す。
- 新リース会計の導入で借金やROEの見え方が変わったとき
- 事業の稼ぎは変わらない。同じ形(家賃を営業費用に入れた形)にそろえて比べ直す。
見ておくもの
- 焼肉・ラーメン・ゆず庵の既存店売上と客数(月次)
- 年間の新規出店数と閉店数、1店当たり売上
- 牛肉などの原価率と人件費率
- 専門店・新業態の店数と1店当たり利益
- 海外の店数と海外売上比率
- FY28の中期計画の進み具合
倍率と資本コストの決め方
店数(実質)と1店当たり売上(物価が乗る名目)で4区分に積み上げ、自己資本は今の値に純利益の合計を足して還元を引いて流した。ROEは結果として出る。倍率は資本コスト7.8%、長期の成長4.0%、新しく投じる分の稼ぎ(7.8%+1/2×(ROE−7.8%))から正当化PERを出し、中立は上限の8割に置いた。今の株価や過去の倍率は使っていない。悲観は市場の倍率でなく、その筋書きの稼ぐ力で置いた。形は今と同じく家賃を営業費用に入れた形でそろえ、新リース会計(2028年6月期以降)で営業利益と借金の見え方が変わっても、10年の数字は同じ形で置く。時価総額が倍でも半分でも筋書きは変わらない作りにした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16→18.79 倍・やや楽観 PER 14.1→17.89 倍・中立 PER 12.4→17.05 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+0.3%を足して7.8%。承継や新業態の失敗など個別のリスクは筋書きと確率で表し、k には足さない。事業は黒字で傾いておらず上乗せ(extra)は置かない。