結論
ヴィア・ホールディングスは「やきとりの扇屋」「日本橋紅とん」「一軒め酒場」などの低価格の居酒屋を、全国で287店営む会社だ。
筆者の結論は割高である。一番の理由は、普通株の前に並ぶ優先株の重さだ。C種・D種・E種を合わせると額面で約55億円あり、今の普通株の時価総額46億円を上回る。
本業は回復の途中にある。2026年3月期の売上は174億円、営業損益はほぼゼロで、純損失は5億円だった。会社は2027年3月期に営業利益3億円を見込む。客単価は4%上がったが、客数は2%減った。
2025年にはグロースパートナーズの組合から15億円の出資を受けた。E種優先株は今の株価の8割ほどの価額で普通株に替えられ、同じ価額の新株予約権も付く。両方で普通株は8割近く増える。さらにD種優先株も普通株に替えられる。
10年の中立では、会社全体の純利益は3〜4億円、株式全体の価値は30億円台と筆者は見る。そこから今の株主に届くのは4割ほどで、今の値段の3分の1に満たない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず事業の質、次に自分の取り分を見る。この会社はどちらにも難がある。
事業は、安い居酒屋という、誰でも始められる商売だ。値上げをすれば客が減り、人件費と家賃は確実に上がる。10年後も店は残るだろうが、今より強くなっている姿は描きにくい。
取り分の問題はもっと大きい。会社の価値が増えても、まず優先株に払い、そのあと薄まった普通株に残りが来る。株主のものになる利益、つまりオーナー利益のうち、今の株主に届くのは4割ほどしかない。
今の株価は、会社全体を利益の50倍を超える値で買うのと同じだと筆者は計算する。立て直しが成功しても、その果実の多くは優先株と新しい出資者に行く。安全域は無い。オーナーとして持ちたい事業でも、払いたい値段でもない。
立て直しの成否を見極めてからでも、遅くはない会社だと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は単純だ。駅前や繁華街の小さな店で、焼き鳥やもつ焼き、手頃な酒を出す。客単価は2千円台が中心で、仕事帰りに一人でも寄れる店が売り物である。
主な店は三つある。「やきとりの扇屋」は郊外と駅前の焼き鳥店、「日本橋紅とん」はもつ焼きの立ち飲みに近い業態、「一軒め酒場」は安さを前に出した大衆酒場だ。2026年3月期末で直営が262店、FC(加盟店が出す店)が25店ある。1年で18店減った。
売上はほぼすべてが店の飲食代だ。1店あたりの年間売上は約6,000万円で、店は小さく回転で稼ぐ。仕入れは鶏肉、豚のもつ、酒で、アサヒビールが筆頭株主として酒を納める関係にある。
費用の重いのは人件費と家賃だ。最低賃金の上昇で人件費は毎年上がる。会社はスマートフォンでの注文を広げ、店の人手を減らそうとしている。店はほぼすべて借りており、家賃は売上の1割前後と筆者は見る。売上が落ちても家賃は払い続ける固定の約束だ。
FCの加盟店からはロイヤリティと食材の売上が入る。FCは25店と少なく、本部の稼ぎを支えるほどではない。稼ぎはあくまで直営の店の出来で決まる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは弱い。焼き鳥ともつ焼きは誰でも出せる料理で、鳥貴族や串カツ田中、町の個人店と同じ客を取り合う。一軒め酒場の安さも、ほかの大衆酒場がすぐにまねる。
値段を決める力も限られる。2026年3月期は客単価を4%上げたが、客数は2%減った。値上げのたびに客が少しずつ離れる業態である。
資本の効率は長く悪い。2018年3月期から8期のうち6期が赤字で、コロナの期には自己資本がマイナスになった。そこを優先株で埋めたため、今の自己資本12億円の中身は、ほとんどが優先株の払い込みである。普通株の取り分は帳簿の上ではほぼ残っていない。
経営は外の力を借りて立て直しを急ぐ。グロースパートナーズの出資と支援で、M&Aによる規模の拡大を狙う。ただ、借入は26億円あり、利益に対して重い。家賃の約束を足せば、財務は見かけ以上に細い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
居酒屋は外食の中で最も弱い業態の一つだ。若い世代ほど酒を飲まず、会社の飲み会も減った。業種のノートでも、外食は景気の谷で売上が2〜3割落ちる業態と置いた。居酒屋はその中でも振れが大きい。
一方で、低価格の居酒屋には追い風もある。物価高で、高い店から安い店へ客が移る。一人で軽く飲む客も増えた。扇屋や紅とんの小さな店は、この流れに合う。
費用の側は向かい風が続く。最低賃金は年3%以上上がり、鶏肉や豚の値段も物価並みに上がる。人手が集まらず、店を開けられない時間が出る店もある。注文のスマートフォン化や調理の機械化で吸収できる会社と、できない会社に分かれる。
業界の再編も進む。コロワイドやワタミ、チムニーのような同業は店を減らし、業態を替えてきた。中小の居酒屋チェーンは後継者難で売りに出る。ヴィアが掲げるM&Aは買い手として安く店を集める好機だが、買った店を立て直す力が問われる。
10年の中立では、居酒屋の店の数は業界全体で少しずつ減り、残った店が値上げで売上を保つ形を置く。数量は細り、価格は物価並みに上がる。勝ち残るのは、人手を減らす仕組みを先に作った会社だ。
資本政策と M&A
資本の形が、この会社を見る上で一番大事だ。普通株の前に優先株が三つある。C種は年8.5%で額面が膨らむ高い資金で、半分を2025年に返した。D種は額面約32億円で、普通株に替える権利が付く。E種はグロースパートナーズの15億円で、今の株価の8割ほどの価額で普通株に替えられる。
E種の転換と新株予約権の行使で、普通株は今の1.8倍近くになる。会社の届出書は、両方で79%の希薄化と書く。D種の転換が加われば、今の株主の取り分は4割ほどになると筆者は見る。
普通株の配当は長く出ていない。株主への還元は、店で使える割引券の優待が中心だ。2026年3月から優待を広げ、100株で年8千円相当の券を配る。会社の費用は年0.6億円前後と推定し、還元に足した。
M&Aは予約権の資金約15億円を充てる計画だ。安く買えれば店の数は戻るが、高く買えば借入と優先株の重さが増す。買収される側としては、優先株が多く、買い手には扱いにくい会社である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
立て直しの道筋は見えている。2026年3月期は既存店の売上が2%伸び、客単価は4%上がった。会社は2027年3月期に営業利益3億円を見込み、スマートフォンでの注文と本部の一本化で人件費と本部費を削る。売上174億円の会社で、利益率が2〜3%戻るだけで利益は大きく変わる。
物価高は低価格の居酒屋に客を運ぶ。高い店から安い店へ、大人数の宴会から一人の軽い飲みへ。扇屋や紅とんの小さな店は、その受け皿になる。
グロースパートナーズの出資は、お金だけでなく経営の支援も伴う。高い配当のC種を半分返し、残りの資金でM&Aを進める。後継者のいない居酒屋チェーンは安く買え、店の数は戻る。予約権が行使されれば、さらに15億円が入る。財務の重さは、利益が戻れば時間とともに薄れていく。
筆頭株主のアサヒビールとの取引も、仕入れの安定に効く。店の数を戻し、利益率を過去の山の5%台まで戻せれば、会社全体の価値は今の倍を超える。
慎重な見方
居酒屋の市場そのものが縮んでいる。若い世代は飲まず、会社の宴会は戻らない。客数は2%減り、値上げで補う形は長く続かない。人件費は年3%以上上がり、家賃は売上が落ちても変わらない。8期のうち6期が赤字だった事実は、利益が戻ってもすぐ消えうることを示す。
そして何より、普通株の取り分が細い。優先株は額面で約55億円あり、今の普通株の時価総額より大きい。E種と予約権は今の株価の8割ほどの価額で普通株になり、株数は8割近く増える。D種も普通株に替わりうる。会社の価値が上がるほど、優先株と新しい出資者の取り分が増える仕組みだ。
M&Aも危うい。安い居酒屋を買い集めても、人手不足と家賃の重さは同じだ。借入は26億円あり、利益に対して重い。うまくいかなければ、また優先株や増資で穴を埋めることになり、今の株主はさらに薄まる。
家賃の約束は数十億円に及び、貸借対照表には載っていない。2028年3月期からの新しいリースの会計で、それが借金に近い重さとして見えるようになる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。本業の回復はありうるが、それは強気の見方でも利益率2〜3%の話だ。そのうえ優先株と新株の仕組みが、回復の果実の多くを今の株主以外に渡す。確率は中立から悲観側に厚くし、楽観でもやっと今の値段に届く程度と見た。
回復の兆しは既存店の客単価に出ているが、客数の減りを止めた証拠はまだ無い。筆者は、黒字が2〜3年続き、優先株の整理が進むまで、強気の重みを上げない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 35 円16 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 7 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 18 円8 億円、今との差 −83.7%、 期待の年率 −9.1%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 115 円52 億円 | 17 円8 億円 | +22.2% | +2.0% | 8 円4 億円 |
| やや楽観 | 17% | 77 円35 億円 | 12 円5 億円 | −17.9% | −1.9% | 15 円7 億円 |
| 中立 | 37% | 36 円16 億円 | 8 円4 億円 | −59.5% | −8.6% | 16 円7 億円 |
| やや悲観 | 25% | 5 円2 億円 | 3 円1 億円 | −92.9% | −23.2% | 2 円1 億円 |
| 悲観 | 15% | 1 円0 億円 | 1 円1 億円 | −98.0% | −32.4% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 35 円16 億円 | 7 円3 億円 | −61.6% | −9.1% | 41 円19 億円 |
今の株価時価総額 108 円49 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 立て直しが成功し、M&Aで店も利益も戻る 利益 9 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 115 円52 億円
スマートフォンでの注文と調理の機械化で、店の人手が2割減る。物価高で安い居酒屋に客が移り、客数も底を打つ。
予約権の15億円で、後継者のいない居酒屋チェーンを安く買う。店は330店まで増え、1店の売上も物価を少し上回って伸びる。
営業利益率は5%台に戻り、会社全体の純利益は9億円台になる。C種は返し終え、普通株の配当も始まる。それでも株数はE種と予約権とD種の転換で倍近くになっており、今の株主に届くのは会社の価値の4割ほどだ。会社全体の価値が100億円近くになって、やっと今の値段に並ぶ。
予約権の行使で入る15億円は自己資本を厚くし、M&Aの元手になる。
- 居酒屋(直営・FC):数量 330(店舗数(直営+FC、店))× 価格 0.85(1店あたりの年間売上(億円、名目))→ 売上 281 億円・営業利益 15 億円。M&Aで店が増え、利益率は過去の山に近い
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.0% が k 10.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 18.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 12.97 倍、時価総額 122 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率5%台はこの会社の過去の山(2003年3月期5.5%)に近い。M&Aの成功と客数の回復が同時に要り、確率は小さい。
やや楽観 17% 本業が黒字に定着し、店の数は横ばいを保つ 利益 7 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 77 円35 億円
合理化が効き、営業利益率は4%台まで戻る。M&Aで買った店が閉めた店を埋め、店の数は300店ほどで落ち着く。1店の売上は物価並みに伸びる。
会社全体の純利益は6〜7億円になり、優先株の配当を払っても利益が残る。予約権は行使され、E種とD種も普通株に替わる。
普通株の配当は少額で始まる。優待の割引券も続く。ただ株数が倍近くに増えた後の話で、今の株主の取り分は4割ほどだ。事業としては持ち直しても、今の値段の半分ほどにしか届かない。
予約権の行使で入る15億円は自己資本に加わり、店の改装とM&Aに使われる。財務の重さは少しずつ薄れる。
- 居酒屋(直営・FC):数量 300(店舗数(直営+FC、店))× 価格 0.82(1店あたりの年間売上(億円、名目))→ 売上 247 億円・営業利益 11 億円。店は横ばい、利益率4.5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.6% が k 10.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.16 倍、時価総額 80 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の2027年3月期の計画(営業利益3億円)を出発点に、合理化が続く形。客数の細りが続く中で利益率4%台まで戻すのは、過去の実績から見て難しめだ。
中立 37% 小さな黒字は保つが、店は少しずつ減る 利益 4 億円 · PER 10.4 倍 · 株価時価総額 36 円16 億円
値上げで客単価は物価並みに上がるが、客数は年に1〜2%ずつ細る。不採算の店を閉め、M&Aで少し補い、店は280店ほどになる。
営業利益率は3%前後で落ち着く。人件費の上昇をスマートフォンでの注文で吸収し、家賃の上昇を値上げで返す形で、利益は増えも減りもしない。
会社全体の純利益は3〜4億円で、借入の利払いと優先株の配当でかなりが消える。予約権は行使され、E種とD種も普通株に替わる。今の株主の取り分は4割ほどになり、価値は今の値段の3分の1に満たない。
予約権の15億円は自己資本に加わるが、その分だけ株数も増える。会社は生き延びるが、今の株主の取り分は細いまま残る。
- 居酒屋(直営・FC):数量 280(店舗数(直営+FC、店))× 価格 0.80(1店あたりの年間売上(億円、名目))→ 売上 224 億円・営業利益 7 億円。店は少し減り、利益率3%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 10.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.4 倍。全体の PER 10.4 倍、時価総額 37 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:既存店の客数は2%減、客単価は4%増という今の形が続くとみた。合理化で黒字は保つが、人件費と家賃の上昇に追いつくのがやっとだ。
やや悲観 25% 客数の細りが止まらず、利益は薄いまま 利益 1 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 5 円2 億円
客数の減りが年3%を超え、値上げでも売上を保てない。店は240店まで減り、1店の売上も物価ほどは伸びない。
営業利益率は1%台にとどまり、純利益は1億円前後だ。株価は行使の価額を割り、予約権は行使されない。E種は普通株に替わらず、優先株のまま普通株の前に残る。
資金が細り、M&Aも思うようには進まない。家賃と借入の約束は残り、普通株の配当は出ない。優待の割引券も縮める。今の株主に残るのは、優先株を払った後の小さな残りだ。
人手不足で開けられない時間帯が増え、1店の売上はさらに細る。立て直しの看板は残っても、中身は縮む会社になる。
- 居酒屋(直営・FC):数量 240(店舗数(直営+FC、店))× 価格 0.76(1店あたりの年間売上(億円、名目))→ 売上 182 億円・営業利益 2 億円。店は2割減、利益率1%台
倍率:ROE 6%前後で資本コストに届かないので、PERの上限は1÷k=10.5倍。家賃と借入の固定の約束が重く、利益が薄いので6倍に置く。
確率:8期のうち6期が赤字だった過去と、居酒屋の需要の細りから、黒字が定着しない形は十分に起こりうる。
悲観 15% 赤字に戻り、優先株と増資で普通株が消えかける 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1 円0 億円
景気の谷と飲酒の機会の減りが重なり、売上は今より2割以上落ちる。店は200店まで減るが、家賃と人件費はすぐには減らない。
営業赤字が続き、自己資本は再びマイナスに近づく。銀行は追加の貸し出しを渋り、会社はまた優先株か増資で穴を埋める。E種とD種は優先株のまま普通株の前に残る。
普通株の配当は無く、優待もさらに縮む。10年後の時価総額は今の数%まで縮む。会社が残っても、今の株主に届く価値はほとんど無い。
2021年3月期に自己資本がマイナスになった過去は、この筋書きが絵空事ではないことを示す。店の設備は売っても安く、床は薄い。
- 居酒屋(直営・FC):数量 200(店舗数(直営+FC、店))× 価格 0.70(1店あたりの年間売上(億円、名目))→ 売上 139 億円・営業利益 −3 億円。売上2割減、営業赤字
倍率:赤字なのでPERは使わない。今の自己資本12.4億円は大半が優先株の払い込みで、借入と家賃の約束を引くと床は薄い。0.15倍に置く。
確率:外食の谷では居酒屋の売上が2〜3割落ちる。家賃と人件費が固定で残り、自己資本が薄いこの会社は赤字に戻れば存続の問題になる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
居酒屋(直営・FC)
やきとりの扇屋・日本橋紅とん・一軒め酒場などの低価格の居酒屋。FCの加盟店からの収入を含む。
| 数量店舗数(直営+FC、店) | 価格1店あたりの年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 287 | 0.61 | 174 | −1 |
| 10 年後 中立 | 280 | 0.80 | 224 | 7 |
取り方:期末の店舗287(直営262・FC25)で連結売上174億円を割り、1店あたり0.606億円。FCの店は加盟店からの収入だけが売上に入るので、直営の1店の売上はこれより少し高い。1店の売上は客数×客単価で、価格は物価並み、客数の細りは1店の売上の伸びを物価より少し下げて表す。
リスクと懸念
優先株の重さと希薄化
C種・D種・E種の優先株は額面で約55億円あり、今の普通株の時価総額を上回る。E種の転換と新株予約権の行使で普通株は8割近く増え、D種の転換でさらに薄まる。会社の価値が増えても、今の株主の取り分は4割ほどだ。
客数の細り
2026年3月期の既存店の客数は前年の98%だった。若い世代の飲酒離れと宴会の減りで、居酒屋の需要は構造的に細る。値上げで客単価を上げる形は、客数をさらに削る入口にいる。
人件費と家賃の固定費
最低賃金は年3%以上上がる。店はほぼすべて借りており、家賃は売上が落ちても払い続ける約束だ。新しいリースの会計(2028年3月期から)で、借金に近い重さが貸借対照表にも見えるようになる。
M&Aの失敗
新株予約権の資金約15億円をM&Aに充てる計画だ。安い居酒屋を買い集めても、人手不足と家賃の重さは同じである。高く買って立て直せなければ、減損と借入の重さが残る。
借入と資金繰り
有利子負債は26億円で、純負債はEBITDAの4.8倍ある。金利が3%台に上がれば利払いが増える。2021年3月期には自己資本がマイナスになり、継続企業の前提の注記が付いた過去がある。
今後の分かれ目
- 2027年3月期に営業利益3億円を達成する
- 黒字の定着に近づき、中立からやや楽観の筋書きに重みが移る。ただ普通株の取り分の細さは変わらない。
- 株価が新株予約権の行使の価額(今の株価の8割ほど)を下回り続ける
- 新株予約権は行使されず、M&Aの資金が入らない。E種も優先株のまま残り、やや悲観の筋書きに寄る。
- D種優先株の普通株への転換が始まる
- 株数が増え、今の株主の取り分が薄まる。転換の株数を見て、取り分の見積もりを直す。
- M&Aで居酒屋チェーンを買う
- 買った値段と相手の利益で判断する。利益の5倍前後で買えれば楽観寄り、借入を増やして高く買えば悲観寄りだ。
- 既存店の客数が前年を上回る月が続く
- 物価高で安い居酒屋に客が移る形が本物になる。中立の利益率を上に見直す材料になる。
見ておくもの
- 既存店の客数と客単価(月次)
- 店舗数(直営・FC)と出店・閉店
- 営業利益率と人件費率
- 新株予約権の行使とE種・D種の転換の株数
- C種の残りの償還
- 有利子負債とM&Aの発表
- 株主優待の内容
倍率と資本コストの決め方
倍率は会社全体のROEと資本コスト10%から式で出した。中立はROEがkにわずかに届かないので1÷k=10.5倍を上限に9.5倍とし、今の株価や過去の値付けは使っていない。今の株主の取り分は、E種・予約権・D種の転換の株数から係数(0.39)で表した。悲観側は今の自己資本に床の倍率を掛けた。10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。新しいリースの会計(2028年3月期から)で営業利益と負債の見え方は変わる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.1→12.97 倍・やや楽観 PER 9.2→12.16 倍・中立 PER 9.5→10.4 倍)。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+2.0%で9.5%。GC注記は2024年に解消され、2027年3月期は黒字の予想なので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 10.00%。