結論
リテールパートナーズは、山口県の丸久、福岡のマルキョウ、大分のマルミヤストアなどを束ねる食品スーパーの持株会社だ。営業収益は約2,800億円。ただし営業利益率は2%台で、手元に残る利益は小さい。筆者の結論は、事業は堅いが儲けが薄く、今の値段には先の還元まで織り込まれているため、やや割高というものだ。
最大の問いは、人件費と仕入れの値上がりを売価に転嫁し続けられるかにある。直近の四半期は増収でも営業利益が4分の1減った。人が足りず賃金は上がり、値上げは客数を削る。この板挟みは、規模の小さい地方チェーンほど重い。
一方で土台は強い。自己資本比率は約67%、純現金があり、潰れる心配は小さい。生鮮食品は人口が減っても食べる量が急には減らない。10年後も店は残り、利益は物価に沿って緩やかに伸びる。筆者はそう見ている。
ただし、儲けの質には注意が要る。自己資本に対する利益の割合(ROE)は5%台で、資本コストを下回る。ためた利益を店や設備に回しても、それ以上の稼ぎにならない。配当は利益の3分の1ほどで、残りは積み上がって利回りを薄める。
中立の筋書きでは、10年後の純利益は約65億円、時価総額は約700億円とみる。その間の配当を足しても、今の値段からの上積みは小さい。割安と言うには、利益率の改善か、思い切った還元か、統合による効率化のどれかが要る。いまはそのどれも計画に見えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業の安全性は高いが、オーナーとして持ち続ける理由は弱い。食品スーパーは必需の事業で、10年後にも残る。そこは評価する。
気になるのは、稼いだ利益が再投資で十分に増えない点だ。自己資本の利益率が資本コストを下回る会社は、利益をためるほど1株の価値が薄まる。店を増やしても、改装しても、投じたお金の利回りは資本コストに届きにくい。オーナー利益のうち、本当に自由に使える額はごく小さい。
値付けの力が弱いことも、長期保有に向かない。賃金が上がる局面で、値上げの許される範囲に頼る商売は、利益が物価に追いつかないことがある。堀の中身は地域の密度だけである。
安全域の目では、今の値段は、10年の中立の価値から還元を足しても届かない。筆者は、この会社を悪い会社とは見ない。ただ、よい値段で買わなければ満足な成果は出ない会社だと見ている。経営が資本の使い方を見直し、ROEを資本コスト以上に引き上げる計画を示せば、評価は変わる。
何で稼ぐ会社か
同社は純粋持株会社で、食品スーパーを営む事業会社を傘下に置く。中核は山口県を地盤とする丸久(「アルク」業態を含む)と、福岡のマルキョウ、大分・九州のマルミヤストアと新鮮市場だ。2025年には宮崎の永野を子会社にして、九州南部へ足場を広げた。グループの店舗数は約280店規模とみられる。
稼ぎ方は単純だ。生鮮・総菜・日配品を仕入れて店で売り、粗利率は23〜24%台。そこから人件費、家賃、水道光熱費、販促を引くと、営業利益率は2%強しか残らない。売上が大きく見えても、利益は小さい薄利の商売である。
差をつける道具は3つある。1つは自社ブランド(PB)で、粗利率が高い。2つ目は食肉加工の戸村フーズなど川上の自社機能。3つ目は総菜・生鮮のセンター化と、店舗作業の省力化だ。アプリでの決済やポイントも、客を囲い込む手段として整えている。
中期経営計画は2027年2月期までの3年間で、新規出店20店超と改装50店を掲げた。ただ、当初の営業収益2,960億円・経常利益98億円という目標は届かず、予想は2,885億円・77億円にとどまる。計画より店舗の稼ぎが伸びなかった形だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、狭い範囲に限られる。丸久は山口県内で店の密度が高く、地元の客と産地の関係が長い。この地域密着が堀の中身だ。ただし、堀が深いとは言えない。隣県では、大手のイオン系やゆめタウン、ディスカウントのトライアル、ドラッグストアが生鮮にまで手を伸ばしている。
値決め力は弱い。利益率が低いのは、安く売らないと客が来ないからだ。物価が上がる局面では仕入れも人件費も上がる。値上げを一度に転嫁すると客数が落ち、転嫁が遅れると利益が削れる。この綱渡りが利益率の天井を低くしている。
資本効率も弱い。ROEは過去10年の中央値で5〜6%。2018年に一度だけ30%に跳ねたのは、統合に伴う一時の利益とみられ、事業の稼ぐ力ではない。利益が薄く、自己資本が厚いので、数字は構造として上がりにくい。
良い点もある。景気で売上が大きく崩れない。営業赤字の期は過去にない。財務が堅く、借金に追われることもない。筆者はこの会社を、潰れないが太らない、地味な公共インフラのような事業と見る。経営は統合で規模を取る力を示してきたが、統合の利益を利益率に変えた実績は、まだ乏しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の食品スーパーは、人口が減る中で、売上の量は横ばいから微減、金額は物価で押し上がる。業界の客数は減り、客単価が上がる構図が続く。山口と九州北部は人口減が早く、生鮮の量が先に細る。
競争は4方向から来る。イオングループなど大手の総合型。トライアル、コスモス薬品のような低価格の新勢力。ドラッグストアの食品拡大。ネットスーパー。どれも地方でじわじわ店数を増やしている。地元チェーンは、鮮度・品ぞろえ・人のつながりで守る立場だ。
再編は続く。アークス、バロー、USMHのように、地方チェーンが持株会社に集まる流れだ。規模が大きくなるほど仕入れと物流で有利になる。リテールパートナーズはこの流れの中で、地方の集約役を担う位置にいる。
最大のコストは人件費だ。最低賃金は毎年上がり、パート・アルバイトの確保も難しくなった。セルフレジ、電子棚札、センターでの加工など省力化が、これからの利益を左右する。投資が先に出て、効果が後から来る産業である。電気代と物流費の上昇も、同じように利益を削る。
食品の値上げは続いたが、家計は買い控えで応じた。買上点数が減り、客単価の上昇が売上を支える形だ。この形が崩れると、売上も利益も一気に細る。
資本政策と M&A
配当は利益の3分の1ほどで、2026年2月期の性向は33%だった。自社株買いの実績は確認できない。純現金は約58億円と、時価総額の1割に届かない(3か月超の定期預金など約65億円を足しても約120億円で、月商1.5か月に当たる約350億円の運転資金に届かないので、余った現金は立てない)。余剰と呼べるほどの現金はない。
店舗の新設や改装は、利益の中から出している。借金は少なく、借り換えの金利が上がっても利益への影響はごく小さい。賃借の店舗は家賃が固定の約束になるため、見かけの財務の強さほど身軽ではない。新リース会計基準が2028年2月期から入ると、貸借対照表の形は変わるが、事業の稼ぎは変わらない。
統合は同社の成長の手段だった。永野の取得で宮崎に進出し、同様の買収は今後も続くと見る。買う側として小さな会社を足す道もあれば、大手に飲まれる道もある。10年以内にTOBや買収が起きる確率は2割強という機械的な見積もりもあるが、筆者は確実な話としては扱わない。
資本政策への注文は1つ。ROEが資本コストを下回るなら、配当性向を引き上げるか、自社株買いで自己資本を絞る方が株主に報いる。現状は、積み上げて薄く運用している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
山口・福岡・大分・宮崎と、点だった地盤が線につながる。仕入れと物流を束ねる効果が出れば、粗利率は上がり、営業利益率は3%台に乗る。永野の買収に続き、小さな地方チェーンの取り込みが進めば、店数は300店に届く。
PBは粗利率が高く、売上に占める比率が上がるほど利益率を押し上げる。センターでの加工とセルフレジなどの省力化が人件費の上昇を吸収する。賃金が上がっても、値上げで客が逃げない地域の店は、客単価の上昇だけで増収を続けられる。
会社がROEを意識し、配当性向を4割へ上げ、自社株買いも加われば、自己資本の膨らみは抑えられる。純現金が厚く借金がないので、還元の余力は十分にある。大手が九州の食品スーパーを買う局面が来れば、買収の上振れもあり得る。
加えて、2024年に始まった第3次計画の出店と改装が実を結べば、新しい店の稼ぎが連結の利益率を引き上げる。永野の買収で九州南部に拠点ができ、同じ仕入れと物流の網に乗せられる点も、強気の材料になる。
慎重な見方
営業利益率は直近の四半期で4分の1も落ちた。人件費は毎年のように上がり、パートの確保は難しい。値上げは客数を削り、転嫁しきれない分は、そのまま利益から出ていく。2%強の利益率では、1ポイント動けば利益が半分になる。
相手は強い。トライアルの低価格、イオン系の総合力、ドラッグストアの食品攻勢が、同じ商圏で同時に迫る。人口減が早い山口と九州では、店あたりの客数が先に減る。中期計画の当初目標(2027年2月期の経常利益98億円)は、予想の77億円まで大きく後退した。計画を達成する力に疑問が残る。
ROEは5%台で、資本コストを割る。積み上がる自己資本は利益を薄めるだけだ。買収した会社の統合効果が利益率に出ないなら、買収は価値を足さない。今の値段が先の配当と成長を織り込んでいるなら、割高と見るのが自然である。
加えて、賃借の店は家賃が固定の約束で、売上が落ちたときに利益が一気に削れる。新リース会計基準で数字の形が変わるだけで、事業の稼ぐ力は変わらない。見かけの財務の強さに安心はできない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が強い。利益率が薄く、ROEが資本コストを下回るという構造は、10年で変わりにくい。強気の筋書きが成り立つには、統合効果と還元強化の両方が要る。どちらも現時点で計画には見えない。
このため確率は中立に厚く置きつつ、やや悲観と悲観に合わせて34%を置いた。悲観は、競合の攻勢で店あたり客数が大きく減る筋書きに10%。強気側は計29%にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,251 円934 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 461 円191 億円)。 今の値に割り戻すと 1,437 円596 億円、今との差 +2.2%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 7.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,468 円1,438 億円 | 723 円300 億円 | +198.3% | +11.5% | 335 円139 億円 |
| やや楽観 | 21% | 2,975 円1,234 億円 | 603 円250 億円 | +154.6% | +9.8% | 751 円312 億円 |
| 中立 | 37% | 2,504 円1,039 億円 | 482 円200 億円 | +112.5% | +7.8% | 1,105 円458 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,390 円577 億円 | 338 円140 億円 | +23.0% | +2.1% | 415 円172 億円 |
| 悲観 | 10% | 884 円367 億円 | 169 円70 億円 | −25.0% | −2.8% | 105 円44 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,251 円934 億円 | 461 円191 億円 | +93.0% | +6.8% | 2,712 円1,125 億円 |
今の株価時価総額 1,405 円583 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 統合で規模を取り切った10年 利益 97 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 3,468 円1,438 億円
統合と省力化が効き、地方の集約役として一段上の利益率に乗る。九州と山口で小さなチェーンの取り込みが続き、店数は300店に届く。PBと総菜の比率が上がって粗利率が改善し、センター化とセルフレジが人件費の上昇を吸収する。値上げは客数を落とさず、客単価の伸びが売上を支える。
配当性向は4割へ上がり、自社株買いも加わって自己資本の膨らみが抑えられる。ROEは資本コストをわずかに超える。大手が九州で再編を仕掛ける局面では、買収の上振れもあり得る。ただし、それでも利益率は3%台前半にとどまり、高収益の事業にはならない。
- 食品スーパー事業(食肉加工などを含む):数量 294(店舗数 × 1 店あたり客数指数(今 = 1。店))× 価格 14(1 店あたり年間営業収益(億円))→ 売上 3,993 億円・営業利益 128 億円。営業利益率3.20%
倍率:事業の純利益 97 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 7.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 1,329 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:統合の効果が利益率に出て、同時に還元も厚くなる必要がある。計画未達が続く現状では、確度は低い。
やや楽観 21% 買収と省力化で緩やかに改善 利益 81 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 2,975 円1,234 億円
店数は292店まで増え、永野のような買収が数件続く。PBと省力化で粗利率と人件費率が少しずつ改善し、営業利益率は2%台後半に乗る。山口の地盤は崩れず、福岡と大分でも既存店は物価に沿って伸びる。
還元は配当性向を3〜4割へ緩やかに高める程度で、自己資本は積み上がる。ROEは6%台で資本コストに届かない。競争は続くが、人口減の影響を買収と出店で相殺できる。中期計画の目標には届かないものの、会社が無理なく伸びる穏やかな10年になる。山口の地盤での店の密度と、九州での新しい拠点が、同じ仕入れの網で結びつき、少しずつ効率が上がっていく。配当は利益の伸びに合わせて増える。
- 食品スーパー事業(食肉加工などを含む):数量 284(店舗数 × 1 店あたり客数指数(今 = 1。店))× 価格 13(1 店あたり年間営業収益(億円))→ 売上 3,819 億円・営業利益 107 億円。営業利益率2.80%
倍率:事業の純利益 81 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 7.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 1,110 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収と省力化が緩やかに効く、業界の上位レンジ。人手不足で改善が遅れる可能性が高く、中立より低く置いた。
中立 37% 物価並みに伸びて利益率は横ばい 利益 65 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 2,504 円1,039 億円
店数は285店ほどへ小幅に増え、1店あたりの客数は人口減で6%ほど減る。値上げは物価並みに通り、売上は年2〜3%ずつ伸びる。賃金の上昇は値上げと省力化でほぼ吸収され、営業利益率は今の2%台前半を保つ。
配当性向は3分の1のまま、自社株買いはない。純利益は65億円まで伸びるが、自己資本も1,300億円へ膨らみ、ROEは5%にとどまる。トライアルやドラッグストアとの競争は続くが、致命傷にはならない。地味な、潰れない地方チェーンのまま10年を過ごす筋書きだ。永野のような小さな買収は数件あっても、利益率を変えるほどの規模にはならない。物価が上がる分だけ名目の利益は増えるが、実質では横ばいに近い。
- 食品スーパー事業(食肉加工などを含む):数量 275(店舗数 × 1 店あたり客数指数(今 = 1。店))× 価格 13(1 店あたり年間営業収益(億円))→ 売上 3,661 億円・営業利益 86 億円。営業利益率2.35%
倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 7.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 890 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の中心値。物価並みの値上げと人口減の相殺という、最もありそうな10年を厚く置いた。
やや悲観 24% 賃金上昇に値上げが追いつかない 利益 41 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,390 円577 億円
賃金の上昇に値上げが追いつかず、営業利益率が1%台に下がる。トライアルなどの低価格店とドラッグストアに客を取られ、1店あたり客数が人口減以上に落ちる。不採算店の閉店で店数は270店ほどに減り、値上げも控えざるを得ない。
統合の利益は出ず、買収した会社の立て直しに時間がかかる。純利益は40億円ほどに落ち、配当は据え置きでも性向が上がる。自己資本は厚いままで、ROEは3%台に沈む。優良とは言えなくなるが、事業そのものは続く。九州の店は薄利のまま維持され、地盤の山口でも、新店の出店ペースは落ちる。利益の伸びを期待できる材料は乏しい。
- 食品スーパー事業(食肉加工などを含む):数量 262(店舗数 × 1 店あたり客数指数(今 = 1。店))× 価格 13(1 店あたり年間営業収益(億円))→ 売上 3,453 億円・営業利益 55 億円。営業利益率1.60%
倍率:ROE 3.3%(純利益 41 億円 ÷ 自己資本 1237 億円)が資本コスト 7.3% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 13.7 倍。堀が浅く値決め力も弱い食品スーパーで、新しく投じるお金の稼ぎは資本コストに届かないため、上限の 7.3 割の 10.0 倍に置いた。
確率:賃金上昇と地方の人口減が重なり、人手不足が利益率を削る。直近の減益と計画未達から、強気側より厚く置いた。
悲観 10% 競争に負けて利益が消える 利益 13 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 884 円367 億円
低価格店・ドラッグストア・ネットに客が移り、店あたり客数が大きく減る。値上げは通らず、人件費は上がり続けて、営業利益率は1%を割る。閉店が相次いで店数は200店台前半まで減る。家賃は固定の約束として残り、売上が落ちても減らない。
買収した会社ののれんや店舗に減損が出て、自己資本は削られる。配当は縮小し、純利益は10億円台に落ちる。事業は続くが、稼ぐ力は小さく、価値は店舗や土地などの売れる資産で測る局面になる。大手に吸収される道も現実味を帯びる。ただし、生鮮と日配は人が食べる限り売れ続けるため、店を畳めば現金が戻る資産の価値が、株の下値を支える。
- 食品スーパー事業(食肉加工などを含む):数量 235(店舗数 × 1 店あたり客数指数(今 = 1。店))× 価格 13(1 店あたり年間営業収益(億円))→ 売上 3,004 億円・営業利益 18 億円。営業利益率0.60%
倍率:ROE 1.3% と谷の利益で、稼ぐ力(事業の純利益 13 億円 ÷ k 7.3%)は約 178 億円と小さい。店舗の土地・建物は売れば現金になるので、売れる資産の税後に純現金を足した約 400 億円(floor_assets_oku)を床とし、今の自己資本 917 億円に対する PBR 0.40 倍で測った。
確率:競合の攻勢で店あたり客数が大きく減り、構造的に負ける筋書き。必需品でも個社の優位は崩れる。業界の標準的な確率に合わせた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品スーパー事業(食肉加工などを含む)
丸久・マルキョウ・マルミヤストア・永野などの食品スーパー。生鮮・総菜・日配品を売る。食肉加工や牧場は小さいので同じ欄で扱う。
| 数量店舗数 × 1 店あたり客数指数(今 = 1。店) | 価格1 店あたり年間営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 280 | 9.94 | 2,782 | 65 |
| 10 年後 中立 | 275 | 13 | 3,661 | 86 |
取り方:営業収益 2,782 億円を、グループの店舗数(報道で 2025/02 末に約 276 店、永野 8 店の追加で約 280 店。正確な数は未確認の推定)で割って 1 店あたり営業収益を逆算した。客数は人口減で 10 年に 6% ほど減り、店数は 2% 増と置いて数量は 275。価格は物価並みの 1.34 倍。
リスクと懸念
人件費と仕入れの上昇を転嫁できない
最低賃金は毎年上がり、パートの確保も難しい。営業利益率は2%強と薄く、1ポイントの転嫁の遅れで利益が半分近く消える。直近の四半期は増収でも営業利益が25%減った。値上げは客数を削るため、転嫁には限界がある。
低価格店・ドラッグストアとの競争
トライアルなどのディスカウント、ドラッグストアの食品拡大、大手総合型が同じ商圏に出てくる。地方の小さなチェーンは仕入れの規模で劣り、価格では勝てない。客数が人口減以上に落ちると、利益率の低さと固定の家賃が重くのしかかる。
中期計画の未達と資本効率
2027年2月期の経常利益目標98億円は、予想77億円にとどまる。計画の達成力に疑問が残る。ROEは5%台で資本コストを下回り、利益をためるほど価値が薄まる。資本政策が変わらなければ、再評価は起きにくい。
地方の人口減
山口県と九州北部は人口減が全国平均より早い。食べる量は急には減らないが、店あたりの客数は少しずつ細る。出店や買収で相殺し続けないと、売上の量は縮む。
買収の統合が進まない
永野の取得などで店数は増えたが、統合の効果が利益率に出るには時間がかかる。買った会社の立て直しに手間取れば、減損や利益率の低下につながる。買収のたびに運営の複雑さも増す。
固定の家賃と新リース会計
賃借の店舗の家賃は、売上が落ちても減らない固定の約束だ。2028年2月期から新リース会計基準で貸借対照表の形が変わり、見かけの純現金や自己資本比率は薄く見える。リースの約束の額は、利益の薄さに対して無視できない大きさになりうる。
今後の分かれ目
- 四半期の営業利益が2期続けて前年を下回ったら
- 転嫁の遅れが構造的とみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 粗利率とPB比率が改善し、営業利益率が2.5%を超えて定着したら
- やや楽観側へ確率を移す。統合の効果が出ているとみる。
- 配当性向の引き上げや自社株買いが発表されたら
- ROEが資本コストへ近づく。還元の厚い筋書きの確率を上げる。
- 大手や同業が九州・山口で大型の買収・統合を仕掛けたら
- TOBなどの上振れ要因として楽観側を見直す。同時に競争の激化も織り込む。
- トライアルなど低価格店が主要商圏で出店を加速したら
- 店あたり客数の前提を下げ、やや悲観側に寄せる。
- 既存店の客数が前年を下回り続けたら
- 値上げの限界が来たとみて、利益率の前提を引き下げる。
見ておくもの
- 四半期の営業利益率と粗利率(PB比率)
- 既存店の客数・客単価
- 人件費率と最低賃金の動き
- 中期計画の次の目標と配当方針
倍率と資本コストの決め方
店数×客数指数(実質)× 1 店あたり営業収益(名目)で売上を積み、利益率は物価で動かさず、自己資本は今の値 + 純利益の合計 − 還元で流した(ROE は結果)。中立の ROE は資本コスト以下なので、正当化 PER は 1÷k とし、同じ領域で ROE が資本コストを下回る会社と揃えて上限の 8 割に置いた。今の株価や同業の倍率からは置いていない。直営の賃借店舗の家賃は営業費用に入っており、悲観では固定費として利益率を押し下げた。新リース会計基準(2028/03 期から BS に載る)で形が変わるが、数字は今と同じ家賃を費用に入れた形でそろえた。リースの約束の額は有価証券報告書で確かめられていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.3→13.7 倍・やや楽観 PER 11.6→13.7 倍・中立 PER 11→13.7 倍)。
資本コスト 7.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality −0.2% を足した 7.3%。食品は景気で需要が揺れにくく循環は −0.5%、値決め力は弱いが入札型でもなく 0、純現金で借金は 0。山口・九州北部は人口減が早く、小さなチェーンの寿命は +0.3% とした。個別の統合の実行などは k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は傾いておらず上乗せは置かない。