結論
スリーエフは、一都三県で「ローソン・スリーエフ」328店を束ねる本部、エル・ティーエフの株を51%持つ会社だ。残る49%はローソンが持つ。筆者の結論は、やや割安である。手元の現金は会社の値段とほぼ同じだけあり、本部の稼ぎがほぼただで付いてくる。ただ、その現金は創業家が半分を握る会社の中にあり、株主に全部が戻る保証は無い。
本業はこの数年で立ち直った。ブランドを切り替えた時の改装の費用が終わり、2026年2月期の営業利益は14億円と過去最高になった。ただ、本部の利益の49%はローソンの取り分で、親会社の株主に残る純利益は4億円ほどにとどまる。
筆者がいちばん気にしているのは、ローソンとの本部の契約が2034年9月に満了することだ。ローソンは2025年4月に資本の提携を解き、持っていたスリーエフ株も手放した。契約が同じ条件で続けば、現金と本部の稼ぎで今の値段は支えられる。条件が悪くなるか、ローソンが本部を引き取れば、残るのは現金だけになる。
現金の厚さが下を支え、契約の不確かさが上を抑える。契約が続く見込みのほうが高いとみるので値打ちは今の値段を1割ほど上回るが、安全域、つまり見込み違いへのゆとりは厚くない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、スリーエフは「現金の箱に、他人の看板で稼ぐ本部が付いた会社」だ。現金は会社の値段に近い。本部の稼ぎは親会社の取り分で年4億円前後ある。数字だけ見れば安い。
だが、オーナーとして持ちたいかは別の問いになる。稼ぎはローソンとの契約の上にあり、契約は8年後に満了する。ローソンは資本の手を引いた。看板も商品も相手のもので、相手が条件を変えれば、スリーエフに交渉の札は少ない。
現金も、株主のものになるかは家の判断次第だ。創業家は配当を少しずつ上げてきたが、自社株買いはせず、現金を手元に置き続けている。
筆者は、この会社の値打ちを「契約が続く確率」と「現金が戻る割合」の掛け算で見る。どちらも外からは確かめにくい。筆者の掛け算では今の値段を1割ほど上回るが、安全域と呼べるほどの厚いゆとりは無い。契約の更新の中身か、還元の方針が数字で出た時に見直したい。
何で稼ぐ会社か
スリーエフは1981年に横浜で生まれたコンビニのチェーンだ。2016年にローソンと手を組み、2018年1月までに全店を「ローソン・スリーエフ」の看板に替えた。いまの稼ぎは、その本部である子会社のエル・ティーエフが生む。
エル・ティーエフはローソンと「企業フランチャイズ」の契約を結ぶ。ローソンの商品と仕組みを使い、神奈川155店、東京86店、千葉61店、埼玉26店の計328店を束ねる。直営は18店で、残りは加盟店だ。加盟店の売上から本部が受け取る取り分が、収入の柱になる。
2026年2月期の営業総収入は151億円で、エル・ティーエフが137億円を占める。エル・ティーエフの純利益は10億円を超えるが、その49%はローソンに帰属する。親会社には残る51%が入る。
親会社自身は、新しい形の店「gooz(グーツ)」を3店営む。本社の費用とgoozの赤字で、親会社の単体は小さな損失を出している。
客は一都三県の住宅地とオフィス街の人々だ。商品と物流と店の仕組みはローソンのものを使う。スリーエフの仕事は、加盟店の指導と、店の場所の確保、そして直営店の運営にある。値段と品ぞろえを決めるのはローソンの側で、スリーエフ自身の看板の力はもう無い。
優良さと弱いところ
強みは、手元の厚い現金と、本部の取り分という安定した稼ぎだ。連結の現金は48億円で、借入は無い。コンビニは生活に欠かせない店で、景気の谷でも売上の落ち方は浅い。
弱さは、稼ぎがローソンの契約の上に乗っていることだ。商品も仕組みもローソンのもので、スリーエフが値段を決める力は無い。本部の契約は2016年9月から18年で、2034年9月に満了する。ローソンは2025年4月に資本の提携を終え、4.77%のスリーエフ株も手放した。関係が細っているとも読める。
資本の稼ぎは、現金を除けば高い。本部の利益は、店と人と少しの設備で生まれるからだ。ただ、帳簿の自己資本の大半は現金で、全体のROE(自己資本利益率)は9%台にとどまる。
経営は創業家が握る。資産管理会社のJMK瑞穂が36%を持ち、一族の持株を合わせると約5割に達する。2015年から2023年まで赤字の年が多く、ブランドの切り替えで店を半分近く失った過去もある。立ち直りは本物だが、その功績の多くはローソンの仕組みに負う。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
コンビニの店の数は全国で5万5千店ほどで、もう増えない。上位のセブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンの3社がほぼ全部を握る。店の数が増えない分、1店あたりの売上を物価とともに上げる競争になっている。
ローソンは2024年にKDDIが株の半分を持つ形になり、三菱商事と共同で経営する。通信と金融の顧客の基盤を店に結ぶ戦略で、地域の本部を外に置く形は少数派だ。スリーエフのように地域の会社と組んだ本部は、ほかにも地方に数社あるが、ローソンが資本を引いた例はこの会社が先になる。
一都三県は人口の減りが最も遅い地域で、コンビニの客数は地方より保たれる。一方で、ドラッグストアが食品を安く売り、都市の小さな食品スーパーも増える。コンビニの客数は横ばいがやっとで、1店の売上の伸びは値上げの分にとどまる。
店を回す人の費用も重い。加盟店の時給は最低賃金とともに年5%前後上がる。加盟店の利益が細れば、契約の満了の時に店を閉じる店主が増える。本部の取り分は加盟店の売上と粗利に連動するので、加盟店の数が減ると本部の稼ぎも細る。
10年の構図は、ローソンの仕組みに乗って物価並みに1店の稼ぎを伸ばしつつ、店の数がじわじわ減る形だ。そのうえに、2034年の契約の満了という会社に固有の山が来る。
資本政策と M&A
還元は配当だけだ。2026年2月期の配当の総額は1.4億円で、純利益の約36%にあたる。2022年から2026年の5年で見ると、純利益の合計6億円に対し配当は4億円余りを払った。自己資本は2018年からほぼ横ばいで、利益をため込んできたわけではない。自社株買いはしていない。株主優待は2020年に廃止し、配当に一本化した。
現金48億円のうち、エル・ティーエフの持つ分の49%はローソンの持分にあたる。運転の資金と負債を引くと、親会社の株主にとって事業に要らない現金は35億円ほどとみる。
株主の顔ぶれは変わりつつある。ローソンが抜けた後、光通信系の投資組合が6.5%、UH Partnersの組合が4%を持った。還元を求める株主が1割を超えた。創業家が5割を持つ以上、現金の使い道を決めるのは家だが、外の圧力は配当の引き上げに働くとみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現金だけで会社の値段に近い。そのうえ本部は年に10億円を超える純利益を生み、親会社の取り分だけで4億円ある。現金を除けば、本部をほぼただで買える計算になる。
本部の稼ぎは立ち直った。ブランドの切り替えの改装の費用が終わり、2026年2月期の営業利益は過去最高の14億円だった。中長期の計画の利益の目標も1年前倒しで達した。コンビニは生活の店で、景気に強い。
契約の満了も、悪い話とは限らない。一都三県の328店は、ローソンにとって手放しにくい地盤だ。更新されれば稼ぎは続く。ローソンが本部を引き取るなら、51%の持分にそれなりの値段が付き、現金に変わる。
株主も動いている。光通信系とUH Partnersの組合が合わせて1割を持ち、還元を求める。1株の配当はこの3年で8割上がった。現金の一部が自社株買いか特別配当で戻れば、値段は大きく見直される。
借入は無く、金利が上がれば現金の利息が増える。物価が上がれば、加盟店の売上に連動する本部の取り分も増える。
慎重な見方
ローソンは2025年4月に資本の提携を解き、スリーエフ株も売った。契約の満了の8年前に資本の縁を切ったのは、関係を深める気が無い印と読める。KDDIと組んだローソンは、通信と金融を店に結ぶ戦略を進める。地域の本部に利益の半分を渡す形は、その戦略と相性が悪い。
更新されても、条件はローソンが決める。本部の取り分を削られれば、エル・ティーエフの利益率は今の10%から大きく下がる。引き取りの値段も、交渉の札を持たないスリーエフに有利には決まらない。
店の数も細る。加盟店の契約は10年で、自動では更新されない。人の費用が上がり、店主の高齢化が進めば、満了の時に閉じる店が増える。2016年から2018年の切り替えでは、店の数を大きく減らした過去もある。
現金は厚いが、創業家が5割を持つ会社の中にある。自社株買いは一度もせず、現金は増え続けた。株主に戻らない現金は、帳簿の額ほどの値打ちを持たない。親会社の単体はgoozと本社の費用で赤字で、契約が切れれば、現金を少しずつ食う会社が残る。
どちらに重みを置いたか
両者の言い分はほぼ拮抗するが、契約の満了という会社の存続に関わる山がある分、慎重な見方を少し重く見た。中立を最も厚くし、やや悲観と悲観を合わせて35%に置いた。現金の厚さが下を支えるので、悲観でも値打ちはゼロにならない。契約の更新の中身と、還元の方針の変化で見直す。同じ領域のミニストップと比べて悲観を厚くしたのは、稼ぎが1本の契約に乗るからだ。現金が厚いので、悲観の深さは自社株の値段を大きくは割らない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,230 円93 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 195 円15 億円)。 今の値に割り戻すと 660 円50 億円、今との差 +18.9%、 期待の年率 +9.9%(資本コスト 8.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,018 円153 億円 | 264 円20 億円 | +311.2% | +15.2% | 183 円14 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,766 円134 億円 | 238 円18 億円 | +261.0% | +13.7% | 401 円30 億円 |
| 中立 | 37% | 1,489 円113 億円 | 211 円16 億円 | +206.4% | +11.8% | 629 円48 億円 |
| やや悲観 | 22% | 602 円46 億円 | 158 円12 億円 | +37.1% | +3.2% | 167 円13 億円 |
| 悲観 | 13% | 246 円19 億円 | 106 円8 億円 | −36.7% | −4.5% | 46 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,230 円93 億円 | 195 円15 億円 | +156.8% | +9.9% | 1,425 円108 億円 |
今の株価時価総額 555 円42 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 契約が同じ条件で更新され、店を保ったまま還元も厚くなる 利益 7 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 2,018 円153 億円
ローソンが2034年に本部の契約を同じ条件で更新する筋書きだ。一都三県の328店は、ローソンにとっても手放しにくい地盤であり、本部の運営を地域の会社に任せる形は続く。
店の数は新しい店で閉じる店を埋め、335店に増える。1店の稼ぎは物価をわずかに上回って伸び、本部の利益率は11%近くに上がる。営業利益は20億円を超える。
還元を求める株主の声もあり、配当は利益の4割に上がる。現金は手元に残るが、家の判断で特別配当が時々出る。親会社の株主に残る純利益は6億円台に乗る。
光通信系などの株主が1割を持ち、還元の声は年々強まる。自社株買いはまだ無いが、現金の一部が戻り始めれば、会社の値打ちは現金と本部の稼ぎの合計に近づく。
- コンビニ本部(ローソン・スリーエフ):数量 335(店の数(期末))× 価格 63(1店あたりの年間の営業総収入(百万円))→ 売上 209 億円・営業利益 23 億円。335店×1店1.36倍、10.8%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 63.1% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 35.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 18.71 倍、時価総額 139 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ローソンが資本を引いた後で、同じ条件の更新と店の数の維持が両方そろう筋は狭い。外の株主の圧力で還元が厚くなる可能性も含めて8%とした。
やや楽観 20% 契約は更新され、店の数は少し減るが1店の稼ぎが伸びる 利益 6 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 1,766 円134 億円
契約が2034年にほぼ今の条件で更新される筋書きだ。ローソンは本部の取り分を少しだけ見直すが、地域の本部の形は残る。
店は325店とわずかに減る。客数は横ばいで、1店の売上は物価並みに伸びる。本部の利益率は10%台を保ち、営業利益は18億円になる。親会社の本社の費用とgoozの赤字は物価とともに少し膨らむ。
現金は利息を生み、純利益は5億円台になる。配当は利益の4割弱を保ち、自社株買いは行わない。創業家の持株も変わらない。
物価の上昇は本部の取り分を名目で押し上げる。加盟店の売上と粗利に連動する収入なので、値上げの分はそのまま本部にも入る。人の費用の上昇は主に加盟店の側が負う。
- コンビニ本部(ローソン・スリーエフ):数量 325(店の数(期末))× 価格 61(1店あたりの年間の営業総収入(百万円))→ 売上 199 億円・営業利益 20 億円。325店×1店1.33倍、10.2%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 56.1% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 32.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 18.45 倍、時価総額 120 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ローソンにとっても一都三県の地盤は大事で、更新される見込みは低くない。店の数の小さな減りを物価が埋める筋として20%とした。
中立 37% 契約は続くが、店がじわじわ減り本部の取り分は細る 利益 5 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 1,489 円113 億円
契約は2034年に更新されるが、条件はやや厳しくなる筋書きだ。ローソンは自社の通信と金融の戦略に合わせて、本部の取り分の一部を見直す。
加盟店の契約が満了するたびに、人の費用に耐えられない店が閉じる。店は310店に減る。1店の売上は値上げで伸びるが、客数は少し細り、物価にわずかに届かない。本部の利益率は9.5%に下がり、営業利益は16億円ほどになる。
親会社の株主に残る純利益は4〜5億円で、ROEは7%前後だ。配当は利益の4割弱を保つ。現金は手元に残り続け、家はそれを使わない。
本部の利益の49%はローソンの取り分のままで、親会社の株主の取り分は増えない。現金の利息は年に1億円近くまで増え、本社の費用の膨らみをほぼ打ち消す。
- コンビニ本部(ローソン・スリーエフ):数量 310(店の数(期末))× 価格 60(1店あたりの年間の営業総収入(百万円))→ 売上 185 億円・営業利益 18 億円。310店×1店1.30倍、9.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 47.9% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 28.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 18.08 倍、時価総額 101 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:コンビニの店の数は全国で増えず、加盟店の契約の満了で閉じる店が出る。更新の条件も少し厳しくなる、という落としどころとして37%とした。
やや悲観 22% 更新の条件が大きく悪くなり、本部の利益が半分近くに減る 利益 2 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 602 円46 億円
2034年の更新で、ローソンが本部の取り分を大きく削る筋書きだ。地域の本部に利益の半分を渡す形は、ローソンの戦略と合わない。スリーエフは代わりの看板を持たず、条件をのむしかない。
店も280店に減る。加盟店の利益が細り、契約の満了で閉じる店が増えるからだ。本部の利益率は7%に落ち、営業利益は9億円ほどになる。親会社の株主に残る純利益は2億円台だ。
配当は減り、現金は手元に残る。株主に戻らない現金は、帳簿の額ほどには評価されない。
親会社の本社の費用とgoozの赤字は物価とともに膨らみ、細った本部の利益をさらに削る。ROEは資本コストに届かず、会社の値打ちは稼ぐ力と現金の一部で決まる。
- コンビニ本部(ローソン・スリーエフ):数量 280(店の数(期末))× 価格 56(1店あたりの年間の営業総収入(百万円))→ 売上 157 億円・営業利益 11 億円。280店×1店1.22倍、7.0%
倍率:現金を除いた事業のROEは約6%で資本コストを下回る。稼ぐ力(事業の純利益÷k)で見て1÷kの12.5倍の7割強の9.0倍。余った現金は谷で食う分を引いた26億円に戻り方0.75を掛けて足す。
確率:ローソンが資本の提携を解いたのは、更新の時に条件を見直す布石とも読める。交渉の札を持たないスリーエフが大きく譲る筋として22%とした。
悲観 13% ローソンが本部を引き取り、現金と小さな店だけが残る 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 246 円19 億円
ローソンが2034年に本部の契約を更新せず、店を自社の直接の加盟店に切り替える筋書きだ。エル・ティーエフの稼ぎは満了に向けて細り、最後は持分を安い値段で手放す。
10年の終わりには、スリーエフに残るのは現金と、gooz などわずかな店だけになる。本社の費用が利息を上回り、純利益は赤字になる。配当は大きく減る。
現金は厚いが、創業家は会社を清算しない。少数株主は現金の使い道を決められない。株主に残るのは、細る現金を少しずつ食う会社の持分で、帳簿の自己資本の半分にも届かない値段にとどまる。
エル・ティーエフの持分の売却の代金は入るが、交渉の札を持たないので値段は安い。本部の稼ぎを失った会社では、現金は事業の再建か、家の判断で寝かされる。
- コンビニ本部(ローソン・スリーエフ):数量 240(店の数(期末))× 価格 53(1店あたりの年間の営業総収入(百万円))→ 売上 127 億円・営業利益 3 億円。満了に向け240店×1.15倍、2.5%
倍率:赤字で稼ぐ力は床にならない。今の自己資本41.4億円に0.45倍を掛けた約19億円とみる。売れる資産の床(現金と持分の売却の税後)に戻り方0.5を掛けた額とほぼ同じ。
確率:資本の提携の終了は、契約を更新しない選択肢も開いた。ローソンが本部の運営を自社に戻し、スリーエフの稼ぎがほぼ消える筋として13%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンビニ本部(ローソン・スリーエフ)
子会社エル・ティーエフ(51%)が一都三県のローソン・スリーエフ328店を束ね、加盟店の取り分と直営店の売上を得る。親会社のgoozを含む。
| 数量店の数(期末) | 価格1店あたりの年間の営業総収入(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 328 | 46 | 151 | 16 |
| 10 年後 中立 | 310 | 60 | 185 | 18 |
取り方:店の数は有報の2026年2月末の328店。連結の営業総収入150.84億円を店の数で割った1店あたり約46百万円(加盟店からの取り分と直営18店の売上の混ざった値)。利益はエル・ティーエフの経常利益15.7億円から本部の営業利益を約15.6億円と推定し、親会社の本社費とgoozの損失約1.5億円は調整に置いた。
リスクと懸念
2034年の契約の満了
エル・ティーエフとローソンの企業フランチャイズの契約は2016年9月から18年で、2034年9月に満了する。ローソンは2025年4月に資本の提携を解いた。更新されないか、条件が大きく悪くなれば、会社の稼ぎのほとんどが消える。
ローソンの戦略の変化
ローソンはKDDIと三菱商事の共同の経営に移り、通信と金融を店に結ぶ戦略を進める。地域の本部に利益の半分を渡す形は少数派で、本部の取り分の見直しを求められうる。
加盟店の減り
加盟店の契約は10年で自動では更新されない。時給の上昇と店主の高齢化で、満了の時に閉じる店が増えれば、本部の取り分は店の数とともに細る。
現金が株主に戻らない
現金は会社の値段に近いが、創業家が5割を持ち、自社株買いをしたことが無い。現金が手元に残り続ければ、帳簿の額ほどの値打ちは株主に届かない。
親会社の単体の赤字
本社の費用と新しい店のgoozの赤字で、親会社の単体は損失を出している。本部の稼ぎが細れば、この費用が現金を少しずつ食う。
今後の分かれ目
- ローソンとの契約の更新が、今に近い条件で発表されたら
- 最大の山を越えたとみて、やや楽観と楽観の確率を上げる。
- ローソンがエル・ティーエフの持分の買い取りを提案したら
- 値段次第で現金に変わる。持分の値段が本部の稼ぎの5倍を超えれば上側を見直す。
- 自社株買いか特別配当で現金を戻す方針を出したら
- 現金の戻り方を引き上げ、上側の確率を見直す。
- 店の数が2期続けて年10店以上減ったら
- 加盟店の細りが早いとみて、やや悲観に重みを移す。
- 本部の営業利益率が8%を割ったら
- 取り分の見直しが始まった印として、悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- ローソンとの契約の更新の交渉
- ローソン・スリーエフの店の数
- エル・ティーエフの経常利益
- 配当と自社株買いの方針
- 光通信系・UH Partnersなど外の株主の持株
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPBRを見ずに、現金を除いた事業のROEとk 8.75%の式で決めた。中立のROEがkを上回るので、PERは1÷kの12.5倍を下限とした。余った現金35億円は、ローソンの持分と運転資金を引いた額に、創業家の支配を見て戻り方0.75を掛けた。利益率は今の水準を山とし、中立では下げた。リースは小さいが、2028年2月期からの新リース会計基準で数字の形が変わる部分は今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→18.71 倍・やや楽観 PER 13.7→18.45 倍・中立 PER 12.5→18.08 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。