結論
ジーイエットは、旧マックハウスの名で知られたカジュアル衣料の専門店だ。2024 年の公開買い付けで投資ファンドの傘下に入り、社名を変えた。2026 年にはユナイテッドアローズから子会社コーエンを取得し、買取と AI の新規事業にも手を広げている。筆者の結論は「割高」である。営業赤字が 8 期続き、株主の取り分がほぼ見えない。
2026 年 2 月期の営業損失は 24 億円で、売上の 2 割を超えた。会社は 2027 年 2 月期の黒字化を掲げたが、2026 年 8 月に営業損失 17 億円へ修正した。店舗の減少と夏物の不振、新規事業の遅れが理由だ。
10 年後の中立でも、1 株あたりの価値は今の半分以下にとどまる。増資で株数が増える見込みで、既存の株主の持ち分は薄まる。強気の筋書きでも、今の値段にようやく届く程度だ。
筆者がいちばん気にしているのは、赤字の止まる時期ではなく、止まるまでに株主の持ち分がどれだけ薄まるかだ。取得と新規事業で話題が増えたが、本業の収益力は変わっていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず事業が 10 年後にどうなっているかを問う。専門店の衣料は、数量が縮み、競合は大手が強く、10 年後に利益が出ている姿を自信を持って描けない。わからない事業は、確信度を下げる。
次に、株主が自由に使える利益だ。8 期続けて営業赤字で、株主に残る利益はない。現金は営業損失で消えていく。
資本の使い方は、疑問が多い。本業が赤字のうちに、新規事業と他社の取得に資金を回している。財務の余裕がなくなれば、増資で株主の持ち分が薄まる。
最後に安全域だ。時価総額は 24 億円と小さいが、営業損失はその 1 年分で 24 億円ある。10 年後の中立でも、価値は今を下回る。値段が安いのではなく、事業の先が見えないのだ。筆者は、赤字が止まる証拠が出るまで、この会社に資金を預けたくない。
何で稼ぐ会社か
主力は、全国の郊外と駅ビルで展開するカジュアル衣料の専門店だ。メンズのカジュアルを中心に、ジーンズなどを低価格で売る。店は 100 を超える規模で、年々数を減らしてきた。かつては 350 億円あった売上は、10 年で 3 分の 1 に縮み、2026 年 2 月期は 116 億円だった。
2026 年には、ユナイテッドアローズの子会社コーエンを取得した。コーエンは、郊外のショッピングセンターを中心に、カジュアルウェアを売る会社だ。取得の際に、負ののれんの益 6.6 億円を計上する見込みだ。
もう一つの柱は新規事業だ。中古品の買取と AI の事業を、2026 年に立ち上げた。AI オペレーションズの株 80% を取得したと報じられている。暗号資産に関わる収益は、2026 年 8 月に、売上に含めない方針へ変えた。
2026 年 8 月には、アパレルのブランドを持つ CLANE DESIGN の株を 19.0% 取得した。持分法の関連会社になる。ブランドの運営と商品企画の知見を得て、アパレル事業を強める狙いだ。
優良さと弱いところ
堀はない。低価格のカジュアル衣料は、ユニクロ、しまむら、GU などの大手が、仕入れと物流の規模で圧倒的に強い。マックハウスの店は、立地とブランドで勝てず、売上の縮小が 10 年続いた。値段を決める力も弱い。
収益力を示す数字は厳しい。営業利益率は 2015 年から 2018 年まで 0 から 2% で、2019 年以降は赤字が 8 期続く。直近の 2026 年 2 月期は、売上の 20.6% にあたる営業損失を出した。
財務は、自己資本比率 25% と薄い。純現金は 9 億円あるが、営業損失が毎年出る限り、これは減っていく。2026 年 2 月期に新株を出した。
経営は、投資ファンドが筆頭株主で、衣料の経験が深い体制とは言えない。新規事業に手を広げているが、本業が赤字のうちは、資金の使い方に疑問が残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
カジュアル衣料は、人口の減少と、ファストファッション・通販の台頭で、専門店の数量が構造的に縮んでいる。低価格を武器にしていたマックハウスの客は、ユニクロやしまむらに流れた。安売りの余地がなくなり、物価の上昇を価格に転嫁することも難しい。
郊外のショッピングセンター向けの店は、天候で売上が大きく振れる。2026 年の夏物は、前年との気温差と梅雨明けの遅れで不振だった。店の家賃と人件費は固定で、売上が落ちても減らない。
コーエンは、ユナイテッドアローズが手放した事業だ。売る側が手放した理由は開示されていないが、手放された事業を立て直す難しさは残る。
買取や AI の新規事業は、市場そのものは成長している。ただし、衣料の小売りで培ったノウハウが生きる分野ではなく、競争相手は専業の大手だ。
業界全体の数量は、実質で毎年 2〜3% 縮むと見る。価格は物価に届かない。
追い風があるとすれば、物価の上昇で消費者が低価格の店に流れることだが、その受け皿はすでに大手が押さえている。残るのは、店舗の整理と費用の削減による縮小再生の道だ。人手不足と家賃の上昇で、店の運営費も上がり続ける。
資本政策と M&A
配当はない。赤字が続く間、還元の原資はない。
資本政策は、増資と M&A に傾いている。2024 年の公開買い付けで、投資ファンドが筆頭株主になった。2026 年 2 月期に新株を出した。コーエンの取得、AI オペレーションズの取得、CLANE DESIGN の 19% の取得と、短い期間に手を広げている。
筆者は、この動きに慎重だ。本業の営業損失が 24 億円ある会社が、取得を重ねる狙いが読めない。資金の出し手は誰か、どの資産が事業の核なのかが見えにくい。
今後、営業損失を賄うために増資が必要になる可能性が高い。既存の株主の持ち分は、その分だけ薄まる。TOB は、すでに 2024 年に行われており、再び起きる可能性は低い。
借入は少なく、純現金の状態だが、これは営業損失で急速に減る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
コーエンの取得で、郊外のショッピングセンター向けの店と、マックハウスの店が一つになる。仕入れと物流を統合すれば、重複していた費用が減り、粗利が改善する。会社は 2027 年 2 月期の当初、営業利益 3.5 億円を計画していた。2026 年 8 月に営業損失 17 億円へ修正されたが、これは取得した会社の閉店と整理の費用を先に出したためで、一過性の部分が大きい。
自己資本は 18 億円で、現金も 17.6 億円ある。借入が少なく、財務に余裕がある。筆頭株主の投資ファンドが支える体制は、資金繰りの安心になる。買取や AI の新規事業は、衣料の小売りの縮小を補う成長の芽だ。
時価総額は 24 億円と、売上の 2 割にも届かない。営業損失が止まるだけで、会社の価値は何倍にもなりうる。CLANE DESIGN のようなブランドの運営知識を取り込めば、商品企画の質も上がる。コーエンの店は、郊外のショッピングセンターに強く、マックハウスの店と客層が重ならない。二つの店の強みを生かし、売上の落ち込みに歯止めをかけられれば、固定費の重さが逆に利益の源泉になる。
慎重な見方
営業赤字は 2019 年から 8 期続き、2026 年 2 月期は 24 億円と、売上の 2 割を超えた。会社は 2027 年 2 月期の黒字化を掲げたが、2026 年 8 月には営業損失 17 億円へ修正した。計画が外れるのは、この会社の通例になっている。
コーエンは、ユナイテッドアローズが手放した事業だ。売る側が手放した事業を買って、赤字が減る保証はない。負ののれんの益は、事業が割安で買えた印であると同時に、利益の質の低さを示す。店舗は固定費が重く、天候と流行で売上が振れる。ファストファッションと通販との競争は、構造的に厳しくなる一方だ。
営業損失の資金は、現金 17.6 億円では足りず、増資が避けられない。既存の株主の持ち分は薄まる。新規事業は、暗号資産関連の収益を売上に含めない方針に変えたことで、これまでの説明の信頼性も揺らいだ。売上の縮小、赤字の継続、希薄化と、株主に不利な要因が重なっている。
どちらに重みを置いたか
弱気の見方が強い。営業赤字が 8 期続き、直近の予想修正でも黒字化が遠のいた。強気の筋書きは、統合の効果と閉店の費用が一過性で済むことを前提にするが、過去 8 年の間に、その実績は出ていない。確率は、強気の側を 17% に抑え、慎重な側の合計を 5 割強に置いた。結果として、中立でも今の値段を大きく下回り、増資による持ち分の希薄化がさらに価値を削る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 19 円15 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 9 円7 億円、今との差 −69.8%、 期待の年率 −3.4%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 111 円84 億円 | 13 円10 億円 | +326.2% | +15.6% | 6 円5 億円 |
| やや楽観 | 12% | 56 円42 億円 | 5 円4 億円 | +107.8% | +7.6% | 7 円5 億円 |
| 中立 | 28% | 23 円17 億円 | 0 円0 億円 | −20.6% | −2.3% | 6 円5 億円 |
| やや悲観 | 30% | 2 円2 億円 | 0 円0 億円 | −92.3% | −22.7% | 1 円1 億円 |
| 悲観 | 25% | 0 円0 億円 | 0 円0 億円 | −99.7% | −44.6% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 19 円15 億円 | 1 円1 億円 | −29.2% | −3.4% | 21 円16 億円 |
今の株価時価総額 29 円22 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 5% コーエンとの統合が当たり、利益が出る専門店に変わる 利益 7 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 111 円84 億円
コーエンの郊外ショッピングセンター向けの店とマックハウスの店を統合し、不採算の店を閉じて、店舗数は 220 に落ち着く。仕入れと物流が一本化され、粗利が改善する。値上げは物価並みに通り、1 店あたりの売上は大きく戻る。買取や AI の新規事業も、小さいながら黒字になる。営業利益は 9 億円前後、売上に対する率で 3% 台と、2015 年から 2017 年に出していた 2% 前後を上回る。借入はなく、利益は自己資本に積み上がり、配当も出せるようになる。ただし、この筋書きは、直近の 8 年間に誰も実現できなかった姿である。その結果、売上は 250 億円台に戻り、新規事業も軌道に乗る。
- アパレル・ライフスタイル(マックハウス・コーエン):数量 220(店舗数(店、推定))× 価格 1.15(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 253 億円・営業利益 13 億円。220 店 × 1 店 1.15 億円(今の 1.43 倍)、営業利益率 5%
- 新規事業(買取・AI・その他):数量 10.0(事業ユニット数(件、推定))× 価格 0.98(1 ユニットあたり売上(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。10 件 × 1 件 0.98 億円、営業利益率 12%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.6% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.65 倍、時価総額 88 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:8 期連続の営業赤字から 10 年かけて営業利益率 3% 台まで戻る筋書き。売上の縮小が続いてきた会社で、連続して当たる確度は低いので 5% にとどめた。
やや楽観 12% 店は絞られ、黒字が定着する 利益 4 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 56 円42 億円
店舗は 200 に整理され、閉店の費用も出尽くす。コーエンの運営が軌道に乗り、売上は 200 億円台に戻る。値段は物価に追いつかず、1 店あたりの売上は今の 1.34 倍にとどまる。粗利は仕入れの一本化で少し改善するが、家賃と人件費の上昇で営業利益率は 2% 台にとどまる。本社費は物価と共に増える。純利益は赤字の繰越しで税が軽く、4 億円ほどになる。配当は小さく再開する。株主構成は、筆頭株主の投資ファンドの出口の問題が残る。それでも、売上と利益の水準は、2015 年ごろの会社に近い程度にとどまる。
- アパレル・ライフスタイル(マックハウス・コーエン):数量 200(店舗数(店、推定))× 価格 1.07(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 214 億円・営業利益 9 億円。200 店 × 1 店 1.07 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 4%
- 新規事業(買取・AI・その他):数量 8.0(事業ユニット数(件、推定))× 価格 0.91(1 ユニットあたり売上(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。8 件 × 1 件 0.91 億円、営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.7 倍。全体の PER 11.68 倍、時価総額 47 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:コーエンの取得で規模が戻り、店の入れ替えで営業黒字に戻る筋書き。会社が 2027/02 期当初に置いた黒字化計画(営業利益 3.5 億円)の延長だが、2026 年 8 月に赤字へ修正されたので、厚くはしない。
中立 28% 規模は戻るが、利益は小さく、増資で持ち分が薄まる 利益 2 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 23 円17 億円
コーエンの取得で店舗は増えるが、不採算の閉店が続き、10 年後は 190 店ほどに落ち着く。単価は同業の安売りと競争で物価に届かず、1 店あたりの売上は今の 1.25 倍にとどまる。営業利益は 2 億円台、売上に対して 1% 台で、黒字ではあるが薄い。最初の 2 年は営業赤字と閉店費用で、手元の現金が減り、増資で資金を補う。既存株主の持ち分はその分だけ薄まる。配当は出せない。ファストファッションや大手の専門店に対し、値段でも品ぞろえでも決め手がない。店の整理が進み、10 年後には固定費の重さがようやく和らぐが、利益が出る会社とまでは言えない。
- アパレル・ライフスタイル(マックハウス・コーエン):数量 190(店舗数(店、推定))× 価格 1.00(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 190 億円・営業利益 7 億円。190 店 × 1 店 1.0 億円(今の 1.25 倍)、営業利益率 3.5%
- 新規事業(買取・AI・その他):数量 6.0(事業ユニット数(件、推定))× 価格 0.87(1 ユニットあたり売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。6 件 × 1 件 0.87 億円、営業利益率 3%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 20 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:8 期連続の営業赤字、2026 年 8 月の通期予想の赤字への修正、新規事業の遅れを踏まえ、利益率は会社の当初の黒字計画を割り引いた。
やや悲観 30% 赤字が長引き、増資を重ねて持ち分が大きく薄まる 利益 −6 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 2 円2 億円
店舗の閉鎖では赤字が止まらず、店舗数は 150 まで減る。コーエンの統合も、ブランドの食い合いで売上が伸びず、コストの重複が残る。ファストファッションと通販に客が流れ、1 店あたりの売上は今の 1.2 倍までしか上がらない。営業損失が毎年出て、増資を重ねるたびに、既存の株主の持ち分は薄まっていく。買取や AI の新規事業は、立ち上がらないまま整理される。配当は出ない。会社は存続するが、株主の取り分は小さい。店舗数の減少が続くかぎり、固定費を薄めることができず、赤字から抜け出せない。経営は閉店と費用の削減に追われ、品ぞろえや売り場の改善に手が回らなくなる。
- アパレル・ライフスタイル(マックハウス・コーエン):数量 150(店舗数(店、推定))× 価格 0.96(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 144 億円・営業利益 −3 億円。150 店 × 1 店 0.96 億円(今の 1.2 倍)、営業利益率 −2%
- 新規事業(買取・AI・その他):数量 4.0(事業ユニット数(件、推定))× 価格 0.78(1 ユニットあたり売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。4 件 × 1 件 0.78 億円、営業利益率 −5%
倍率:赤字で稼ぐ力から値が付かないので、今の自己資本 18 億円に 0.3 倍を掛けた床(減損と赤字で自己資本が減る分は PBR に反映済み)。
確率:営業赤字が 2018 年から連続し、2026 年 8 月にも予想を赤字へ修正した。店舗の縮小と新規事業の遅れが続く筋書きをやや厚くした。
悲観 25% 資金が尽き、増資と整理で株主の取り分がほぼ消える 利益 −6 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 0 円0 億円
コーエンの取得も傷を広げ、店舗の閉鎖と減損が相次ぐ。店舗数は 80 まで縮み、売上は 70 億円台に落ちる。営業損失が毎年数億円続き、手元の現金が尽きる。支援者による大型の増資か、事業の売却で急場をしのぐが、既存の株主の持ち分は 4 割にまで薄まる。筆頭株主の投資ファンドが支援をやめれば、整理に入る。配当はなく、残る価値はほとんどない。最終的に、残るのは店の一部とブランドだけで、株主に回る価値はほとんど残らない。筆頭株主の支援も途切れ、取引先への支払い条件も厳しくなって、悪循環に入る。在庫を抱えた店の閉鎖は、値引き販売と減損を呼び、損失をさらに広げる。
- アパレル・ライフスタイル(マックハウス・コーエン):数量 80.0(店舗数(店、推定))× 価格 0.88(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 70 億円・営業利益 −4 億円。80 店 × 1 店 0.88 億円(今の 1.1 倍)、営業利益率 −5%
- 新規事業(買取・AI・その他):数量 2.0(事業ユニット数(件、推定))× 価格 0.65(1 ユニットあたり売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。2 件 × 1 件 0.65 億円、営業利益率 −15%
倍率:稼ぐ力は赤字で値が付かず、床は売れる資産の税後。今の自己資本 18 億円に 0.05 倍を掛けた。
確率:営業損失が 24 億円と自己資本を上回る規模で、現金の流出が続けば資金が尽きる。構造的な負けの筋書きとして 25% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アパレル・ライフスタイル(マックハウス・コーエン)
カジュアル衣料の専門店。2026 年にコーエンを取得。売上の約 97%。
| 数量店舗数(店、推定) | 価格1 店あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 140 | 0.80 | 112 | −21 |
| 10 年後 中立 | 190 | 1.00 | 190 | 7 |
取り方:2026/02 期(単体)の売上 115.9 億円のうち、衣料の店舗が約 112 億円と推定し、店舗数を約 140、1 店あたり 0.8 億円とした(店数は開示を開かず推定)。営業利益は全体 -23.8 億円のうち、衣料が -21 億円、新規事業が約 -1.8 億円、本社費が約 -1.0 億円と推定。コーエンの取得は 2026/02 期の数字に入っておらず、10 年の筋書きに店舗数として入れた。
新規事業(買取・AI・その他)
中古品の買取、AI オペレーションズなど 2026 年に立ち上げた事業。売上の約 3%。
| 数量事業ユニット数(件、推定) | 価格1 ユニットあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 6.0 | 0.65 | 4 | −2 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 0.87 | 5 | 0 |
取り方:売上のうち衣料以外を 3.9 億円と推定し、6 つの小さな事業ユニットに 1 つあたり 0.65 億円とした。営業損失 -1.8 億円は立ち上げ費用を含めた推定。開示が薄く、推定。
リスクと懸念
営業赤字の長期化
営業赤字は 2019 年から 8 期続き、2026 年 2 月期は 24 億円と、売上の 2 割を超えた。2026 年 8 月の予想修正でも、2027 年 2 月期の営業損失は 17 億円で、下期も赤字の見込み。黒字化の目途は立っていない。
資金繰りと増資
現金は期末で 17.6 億円。営業損失が続けば、数年で尽きる。増資は避けにくく、既存株主の持ち分は薄まる。2026 年 2 月期にも新株が出ている。
コーエン統合の失敗
ユナイテッドアローズが手放した事業の取得で、閉店や減損が続く恐れがある。取得に伴う負ののれんの益は、将来の費用の裏返しになりうる。ブランドの重複で、売上が食い合う懸念もある。
新規事業の説明の信頼性
買取と AI の事業は、立ち上げが遅れている。暗号資産関連の収益を売上から外す方針変更もあり、事業の実態がつかみにくい。
競合の構造的な優位
ユニクロ・しまむら・GU・通販の規模に対し、仕入れ・物流・値段のいずれでも追いつけない。店舗の家賃と人件費は固定で、売上が落ちると損失が膨らむ。
筆頭株主の出口
2024 年の公開買い付けで筆頭株主になった投資ファンドが、いつ、どう持分を手放すかは読めない。支援が止まれば、整理に進む懸念がある。
今後の分かれ目
- 営業損益が 2 四半期続けて黒字になったら
- 統合の効果が出始めたと見て、やや楽観側の筋書きの確率を上げる。
- 追加の第三者割当増資が発表されたら
- 既存株主の持ち分が薄まるため、holder_share を下げて価値を見直す。
- 店舗数が年間で 2 割以上減ったら
- 縮小再生の局面に入ったと見て、数量の前提を下げる。
- コーエンの売上と利益が会社全体と別に開示されたら
- 取得の採算が確認できるため、セグメントごとに利益率を見直す。
- 継続企業の前提に関する注記が付いたら
- 悲観の筋書きが近づいたと見て、確率を上げる。
- 筆頭株主が持分を売却したら
- 支援の後退として、悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 営業損益と店舗数(四半期)
- 手元の現金と増資の有無
- コーエンの業績と統合の進み具合
- 筆頭株主の持株の動き
倍率と資本コストの決め方
今の株価(時価総額 24 億円)に寄せず、店舗数 × 1 店あたり売上で 10 年を積んだ。k は基本 7.5% に quality +2.0% を足し、事業が傾いている分として 1.0% を上乗せした 10.5%。中立は ROE が k を下回るので PER の上限は 1÷k=9.5 倍で、その約 7 割に置いた。増資による持ち分の希薄化は holder_share で別に入れた。店舗の賃借は固定費で、悲観でも家賃は落ちない。新リース会計(2028/02 期から)は営業利益と純負債の見かけを変えるが、価値は今の形(家賃を営業費用に入れる)でそろえた。同じ領域のコックスは黒字で k 8.5%・中立 PER 9.5 倍だが、赤字が続くこの会社と物差しは揃えていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.9→12.65 倍・やや楽観 PER 7.8→11.68 倍・中立 PER 6.7→10.81 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。