結論
アルビスは、北陸を中心に 68 店を持つ食品スーパーだ。2026 年 9 月にライフコーポレーションが公開買付け(TOB)を発表し、買付価格は発表前の終値より 5 割高い。筆者の結論は、独立した事業の本質価値は、この買付価格を下回るというものだ。
2026 年 3 月期の営業収益は 1,009 億円、営業利益は 21 億円で、営業利益率は 2.1% だった。ROE は 4% で、資本コストの 7.5% に届かない。さらに 9 月に今期の営業利益を 20 億円に下方修正した。既存店の客数が減り、食品を強める低価格型ドラッグとの競争が重い。
強みは、北陸 3 県の食品スーパー首位級の位置と、土地の厚みだ。土地は帳簿で 122 億円あり、自己資本比率は 56% と堅い。一方、借入金は 116 億円に増え、店舗投資が営業キャッシュフローを上回っている。
10 年の中心は、客数が細り客単価で支え、営業利益が 32 億円、利益率が 2.3% に落ち着く道だ。ライフとの統合で調達が統一され、利益率が 3% に届く道は 1 割弱と見る。TOB の価格は、この独立の価値を上回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「堅い商売だが、持ち主に残る利益が小さい会社」である。
食品スーパーは毎日使われ、不況に強い。その中で、北陸で首位級の位置と、土地を持つ強さがある。ただし、営業利益率が 2% 台では、持ち主に残る純利益は 13 億円ほどだ。店を建て替えるたびに投資が出て、利益の多くが設備に消える。
資本の使い方も見たい。ROE は 4% で、資本コストを下回る。自己資本の 330 億円を使って、資本コストに届く利益を作れていない。配当と自己株式の取得で株主に戻す姿勢は評価できるが、投資が借入金で賄われている点は気になる。
買付価格は、自己資本の 0.96 倍だ。稼ぐ力から見る本質価値より高く、土地の含み益を見込んでも、少数株主にとって悪くない価格と見る。ただし、これは投資の勧めではなく、独立した事業の価値と価格の比較である。
何で稼ぐ会社か
アルビスは、富山県射水市に本社を置く食品スーパーだ。2026 年 3 月期の営業収益は 1,009 億円。富山、石川、福井の北陸 3 県を中心に、岐阜、愛知を加えた 5 県で 68 店を運営する。
強みは生鮮と総菜で、自社のプロセスセンターで加工する。2025 年 11 月には海産のプロセスセンターを稼働させ、魚総菜の製造と一次加工を店舗から切り離した。PB 商品と、300 品目を安く出す食卓応援企画で節約志向に応える。週末は買い物金額から 5% を割り引く「ハピマル」も続ける。
店の形は、標準店に加えて、小商圏向けの「アルビスくらす」へ移している。2025 年 8 月に富山市で小商圏の 1 号店を開き、建替えと改装を進める。移動スーパーは 24 台、公式の通販サイトも開設した。
中京は、愛知に 2021 年に入り、岐阜で 2025 年 3 月に北方町店を開いた。店数は 1 桁と見るが、筆者の推定で 5 店前後だ。
第四次中期経営計画(2024 年度から 3 年)は最終年度を迎えた。「私のお店と言ってもらえるアルビスファンを増やす」を方針に、10 年後の姿として VISION2034 を掲げる。数値目標は本稿で確かめていない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、弱い〜中程度だと見る。
強みは、地域に根ざした店と生鮮・総菜の力だ。北陸 3 県の食品販売高では、食品スーパーとして首位級の位置にある(2021 年の報道)。プロセスセンターを持ち、原価の改善を続ける。店の立地と土地を自分で持つ店も多く、土地は帳簿で 122 億円ある。
弱みは、利益率が薄く、価格を自分で決めにくいことだ。2026 年 3 月期の営業利益率は 2.1% で、過去 12 年の最高も 3.4% にとどまる。食品に力を入れる低価格型ドラッグ(クスリのアオキ、ゲンキー、コスモス薬品)が、北陸でも客を奪う。
資本効率は低い。ROE は過去 10 年の中央値で 5% 台、2026 年 3 月期は 4% だった。店舗投資が年 60 億円と営業キャッシュフローを上回り、借入金が 116 億円まで増えた。
経営は、配当性向を 4 割台に保ち、2026 年 3 月期は自己株式も 7 億円取得した。株主に優しい姿勢だが、稼ぐ力そのものを上げる課題は残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
北陸の食品スーパーは、人口が減る成熟市場だ。食料品の需要は景気に左右されにくく、不況でも落ち込みは浅い。ただし客数は少しずつ細り、売上は客単価の上昇で支える形になる。
2026 年は、賃金の上昇を上回る物価高で、生活防衛の節約志向が強い。客は買い上げ点数を減らし、PB や特売に移る。アルビスの第 1 四半期の既存店売上は 1.7% 減、7〜8 月は 1.6% 減で、減少の中心は客数だった。粗利率も 29.7% と、前年より 0.5 ポイント下がった。
競争は 3 つある。同業のスーパー同士の価格競争。食品を強める低価格型ドラッグ(クスリのアオキ、ゲンキー、コスモス薬品)。ネット通販だ。北陸では、バローなど県外の大手の進出もある。ドラッグは調剤と日用品で客を集めた上で、食品を特売で出すため、スーパーの客数を直接奪う。
費用は、最低賃金とパートの時給が毎年上がり、電気料も高止まりしている。電子棚札、セルフレジ、プロセスセンターで吸収できる会社と、できない会社に分かれる。アルビスは、標準化と原価改善で吸収を図るが、営業利益率は 2% 前後で動かない。
再編は進む。地方のスーパー同士の統合が続き、ライフがアルビスを買うのは、その一例になる。首都圏・近畿圏のライフにとっては、初の同業 M&A だ。
資本政策と M&A
資本政策は、配当が中心だ。2026 年 3 月期の配当は総額で 5.8 億円、配当性向は 44% だった。自己株式も 7 億円取得した。今期の配当予想も同水準で、配当性向は 43% になる。
一方、投資は重い。店舗の建替えと改装、プロセスセンターで、投資のキャッシュフローは 60 億円と、営業キャッシュフローの 49 億円を上回った。長期借入金を 80 億円借り入れ、借入金は 116 億円に増えた。自己資本比率は 56% と堅いが、純有利子負債は 31 億円ある。
株主優待は、100 株の株主に、商品券か北陸の名産品を年 2 回出す制度だ。額面は継続保有で増え、1 回あたり数千円分にとどまる。費用は年 1 億円に届かないと見るが、株主数の開示は確かめていない。
2026 年 9 月、ライフが TOB を発表した。買付けは 9 月 9 日から 11 月 10 日まで。総額は約 263 億円で、ライフが 83.38% を取得する。筆頭株主の三菱商事(16.62%)は応募せず残る。アルビスは賛同し、成立後は株式併合で非公開化する。成立すれば、期末配当は出さず、優待も廃止する。
買付価格は、発表前日の終値の 51% 増で、時価総額では約 316 億円に当たる。自己資本に対しては 0.96 倍で、帳簿より少し安い。確率モデルが 10 年以内の TOB を 2 割ほどと見ていたところに、実際の提案が出た形だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ライフとの統合で、調達と商品が一本化される。ライフは首都圏・近畿圏で 317 店、営業収益 8,813 億円、営業利益率が約 3% の大手だ。共同仕入れ、水産の調達、PB、販促の共有をアルビスにも持ち込む。
アルビスの粗利率は 29.7% と、前年より 0.5 ポイント下がった。ライフの調達力が効けば、ここを戻せる。営業利益率が 3% に届けば、営業利益は 46 億円になる。
中京は、出店が進むほど固定費が薄まる。ライフが屋号を維持し、アルビスの名前で出店を続けるとしている。北陸の地域密着と、ライフの仕入れが組めば、低価格型ドラッグに対抗する材料になる。
自己資本は 330 億円と厚く、土地も 122 億円ある。ライフの傘下で資金調達も楽になり、店舗投資の負担が軽くなる。
加えて、三菱商事がライフとアルビスの両方の株主であり、調達や商品の面で後押しする土台がある。買付価格が自己資本とほぼ同じ水準であることも、事業を守る意思の表れと読める。
慎重な見方
足元の利益は、下がり続けている。2027 年 3 月期の営業利益は、9 月に 20 億円へ下方修正された。第 1 四半期から既存店の売上が 1〜2% 減り、粗利率も落ちた。
北陸は人口が減る。食品に力を入れる低価格型ドラッグが、特売で客を集める。スーパーは値上げが通らず、客数が毎年減る。人件費と電気料は上がり続けるため、営業利益率は 2% を割る。
店舗投資は重い。建替えと改装で年 60 億円を使い、借入金が 116 億円まで増えた。稼ぐ力が落ちれば、金利の上昇が追い打ちをかける。ライフに買われても、統合の効果が出るまでには時間がかかり、PB や調達の統一が客に響くとは限らない。
中京の出店は黒字化しておらず、費用だけ先に出る。ライフ傘下での再編で、不採算店を閉じる動きが出る恐れもある。
買付価格にも注意が要る。発表前の終値の 5 割増だが、自己資本には届かず、稼ぐ力から見た価値を上回る。買う側が高い値を払う以上、統合で元を取る圧力が現場にかかる。
どちらに重みを置いたか
強気と慎重の見方では、慎重を重く見た。ライフの調達力は本物だが、利益率は足元で下がっており、統合の効果は実績ではなく見込みにすぎない。人件費と電気料の上昇、低価格型ドラッグとの客の取り合いも、統合では消えない。
一方、土地と堅い需要が下値を支える。そこで強気を 8%、やや強気を 2 割、悲観を 12% に置いた。期待値は、買付価格を下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,956 円247 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 815 円68 億円)。 今の値に割り戻すと 2,002 円167 億円、今との差 −46.9%、 期待の年率 +0.0%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,087 円425 億円 | 1,292 円108 億円 | +69.2% | +5.4% | 510 円43 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,194 円351 億円 | 1,065 円89 億円 | +39.5% | +3.4% | 1,052 円88 億円 |
| 中立 | 38% | 3,413 円285 億円 | 885 円74 億円 | +14.0% | +1.3% | 1,633 円137 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,446 円121 億円 | 586 円49 億円 | −46.1% | −6.0% | 447 円37 億円 |
| 悲観 | 12% | 790 円66 億円 | 275 円23 億円 | −71.8% | −11.9% | 128 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,956 円247 億円 | 815 円68 億円 | +0.0% | +0.0% | 3,770 円315 億円 |
今の株価時価総額 3,770 円315 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% ライフとの統合が実り、利益率が 3% に届く 利益 32 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 5,087 円425 億円
ライフとの統合が実り、営業利益は 46 億円まで増える。営業利益率は 3.1% で、ライフの約 3% と並ぶ。
北陸は客数が横ばいで、客単価が物価並みに 1.34 倍になる。共同仕入れと PB の拡大が粗利率を押し上げ、プロセスセンターの原価改善も続く。電子棚札などの導入で、人件費の上昇は吸収できる。
中京は出店が進み、客数が 2.8 倍になる。店が増えても利益率は 3% で、北陸と並ぶ。
還元は純利益の半分で、配当を中心に進める。ROE は 7% 台で、なお資本コストに届かない。
この道では、成長の中身は価格と出店であり、数量そのものは増えない。利益率が上がる理由は、調達と物流の統一という、実行に時間のかかる改善に限られる。
- 北陸(富山・石川・福井):数量 3,515(年間の来店客数(万人))× 価格 36.2%(客単価(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,272 億円・営業利益 39 億円。客数の指数 1.00、客単価の指数 1.34、営業利益率 3.1%
- 中京(岐阜・愛知):数量 622(年間の来店客数(万人))× 価格 36.2%(客単価(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 225 億円・営業利益 7 億円。客数の指数 2.80、客単価の指数 1.34、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 425 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ライフの調達・PB・物流と組み、営業利益率がライフ並みの 3% に届く強気の道。足元は下方修正が続いており、ここまでの改善は実績の裏づけがないため、確率は 1 割弱にとどめる。
やや楽観 20% 統合の効果が一部出て、中京の出店も育つ 利益 26 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,194 円351 億円
統合の効果が一部出て、中京の出店も育ち、営業利益は 38 億円まで増える。営業利益率は 2.7% になる。
北陸の客数は 1.5% 減にとどまり、客単価は物価に少し届かない 1.32 倍になる。調達の統一で粗利率が上がるが、人件費の上昇が半分を食う。
中京は出店で客数が 2.5 倍になり、利益率は 2.5% で黒字を保つ。還元は純利益の 47% とした。ROE は 6% で、資本コストには届かない。
この道は、統合の効果が実績として見えた場合に当たる。ただし人件費の上昇が利益の増加を半分食うため、利益率の伸びは緩やかにとどまる。
- 北陸(富山・石川・福井):数量 3,462(年間の来店客数(万人))× 価格 35.6%(客単価(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,234 億円・営業利益 33 億円。客数の指数 0.98、客単価の指数 1.32、営業利益率 2.7%
- 中京(岐阜・愛知):数量 555(年間の来店客数(万人))× 価格 35.6%(客単価(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 198 億円・営業利益 5 億円。客数の指数 2.50、客単価の指数 1.32、営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 351 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:統合の効果が出て、利益率が 2% 台後半まで戻る道。中京の出店も黒字化する。強気より起こりやすい。
中立 38% 客数は細り客単価で支え、利益率は 2% 台前半 利益 21 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,413 円285 億円
客数は細り客単価で支え、営業利益は 32 億円、営業利益率は 2.3% に落ち着く。足元の 2.1% からわずかに上がる。
北陸の既存店の客数は年 1% ずつ減るが、新店と建替えで 10 年では 3% 減にとどまる。客単価は 1.30 倍で、物価の 1.34 倍にわずかに届かない。節約志向で買い上げ点数が減り、PB へ移るためだ。売上は 1,197 億円になる。
中京は 5 店ほどから 11 店ほどへ増え、客数が 2.2 倍になる。売上は 171 億円、利益率は 2% で、北陸より低い。
ライフとの共同調達で粗利率は少し上がる。人件費と電気料の上昇がそれを打ち消す。還元は配当を中心に純利益の 45% ほどで、優待は費用が年 1 億円に届かず、影響は小さい。ROE は 5% 台で、資本コストの 7.5% に届かない。
- 北陸(富山・石川・福井):数量 3,410(年間の来店客数(万人))× 価格 35.1%(客単価(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,197 億円・営業利益 28 億円。客数の指数 0.97、客単価の指数 1.30、営業利益率 2.4%
- 中京(岐阜・愛知):数量 488(年間の来店客数(万人))× 価格 35.1%(客単価(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 171 億円・営業利益 3 億円。客数の指数 2.20、客単価の指数 1.30、営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 285 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最も起こりやすい道。人口減で既存店の客数は細るが、新店と建替えで総数は保ち、客単価で売上を支える。人件費の上昇と共同調達の効果が打ち消し合い、利益率は 2% 台前半に落ち着く。
やや悲観 22% 低価格型ドラッグに客を奪われ、利益率が 1% 台に落ちる 利益 13 億円 · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 1,446 円121 億円
低価格型ドラッグに客を奪われ、営業利益は 20 億円まで落ちる。営業利益率は 1.6% になる。
北陸の客数は 8% 減り、客単価は 1.25 倍と物価に届かない。ドラッグが食品の特売を重ね、値上げが通らない。人件費と電気料は物価で上がる。
中京は出店が続くが、客数の伸びは 1.8 倍にとどまり、利益率は 1% まで落ちる。還元は純利益の 4 割に縮める。
一方、土地を持ち、生鮮と総菜の力は残る。赤字には落ちない。倍率は上限の 7 割に置いた。
この道では、ライフ傘下でも統合の効果は出ず、客の取り合いで負ける。それでも需要の堅さが、事業の下支えになる。
- 北陸(富山・石川・福井):数量 3,234(年間の来店客数(万人))× 価格 33.8%(客単価(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,091 億円・営業利益 19 億円。客数の指数 0.92、客単価の指数 1.25、営業利益率 1.7%
- 中京(岐阜・愛知):数量 400(年間の来店客数(万人))× 価格 33.8%(客単価(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 135 億円・営業利益 1 億円。客数の指数 1.80、客単価の指数 1.25、営業利益率 1.0%
倍率:事業の純利益13億円・ROE 3.2% は k 7.5% 以下なので、上限は 1÷k=13.3倍。利益が薄く、客数の減少が続くため、上限の約7割の9.3倍に置いた。PBR は 0.3 倍台と低いが、土地は事業に使うので床にはしない。
確率:食品を強める低価格型ドラッグとの競争が続き、既存店の客数が毎年減る道。値上げが通らず、人件費と電気料だけが上がる。起こりやすさは中立に次ぐ。
悲観 12% 客数が崩れ、出店も止まって利益が消える 利益 4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 790 円66 億円
客数が崩れ、出店も止まり、営業利益は 6 億円まで落ちる。営業利益率は 1% を割る。
北陸の客数が 18% 減り、客単価は 1.18 倍にとどまる。人口減と、食品に力を入れる低価格型ドラッグの攻勢が重なる。値引きで客を守ろうとして、粗利率が下がる。
中京は出店を止めて、客数は 1.2 倍にとどまり、赤字に沈む。固定費の重い店舗網が残り、利益が出ない。還元は純利益の 3 割まで縮める。
価値は、土地と投資有価証券の売れる値の約 8 割に置いた。稼ぐ力では、それより低い額しか出ないからだ。
この道は、北陸の人口減と競合の攻勢が同時に来る、最も厳しい筋書きだ。ただし、食料品の需要そのものは残るため、事業が消えるわけではない。
- 北陸(富山・石川・福井):数量 2,882(年間の来店客数(万人))× 価格 31.9%(客単価(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 918 億円・営業利益 7 億円。客数の指数 0.82、客単価の指数 1.18、営業利益率 0.8%
- 中京(岐阜・愛知):数量 266(年間の来店客数(万人))× 価格 31.1%(客単価(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 83 億円・営業利益 −1 億円。客数の指数 1.20、客単価の指数 1.15、営業利益率 -1.0%
倍率:営業利益が6億円で、稼ぐ力は純利益4億円÷k 7.5%=約50億円にとどまる。売れる資産の税引後は約80億円。今の自己資本330億円に0.2倍を掛け約66億円に置いた(売れる資産の約8割)。
確率:構造的な負けの筋書き。北陸の人口減に競合の攻勢が重なり、客数が 2 割近く減って、中京の出店も止まる。土地を持つため倒産は遠いので、1 割強にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
北陸(富山・石川・福井)
北陸 3 県の食品スーパー。生鮮・総菜と PB、プロセスセンターが強み。
| 数量年間の来店客数(万人) | 価格客単価(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,515 | 27.0% | 949 | 22 |
| 10 年後 中立 | 3,410 | 35.1% | 1,197 | 28 |
取り方:推定。会社は単一セグメントで地域別の開示が無い。営業収益 1,009 億円のうち北陸を 949 億円、中京を 60 億円と置き、客単価を 0.27 万円前後(食品スーパーの一般的な水準からの推定。会社の開示は未確認)として、約 3,515 万人に分けた。営業利益は全社 21.5 億円から中京の赤字を戻した推定。
中京(岐阜・愛知)
岐阜・愛知の食品スーパー。2021 年に愛知 1 号店を開き、出店を続ける。
| 数量年間の来店客数(万人) | 価格客単価(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 222 | 27.0% | 60 | −1 |
| 10 年後 中立 | 488 | 35.1% | 171 | 3 |
取り方:推定。店数は 5 店前後と見て、売上を 60 億円、客単価を 0.27 万円前後として、約 222 万人に分けた(会社は地域別の開示をしていない)。開店して間もない店は費用が先に出るため、営業利益はほぼゼロかわずかな赤字と推定した。
リスクと懸念
低価格型ドラッグとの競争
食品を強める低価格型ドラッグが、北陸でも特売で客を集める。客数が戻らなければ、既存店の売上が 1〜2% 減る状態が続く。
人件費と電気料の上昇
最低賃金とパートの時給が毎年上がり、電気料も高止まりしている。値上げが通らなければ、営業利益率が 2% を割る。
店舗投資と借入金
建替えと改装で投資が年 60 億円あり、営業キャッシュフローを上回る。借入金が 116 億円まで増え、金利の上昇が利益を削る。
人口減
北陸の人口は減り続ける。既存店の客数は年 1% ずつ細り、出店で補えなければ売上が縮む。
TOB 後の統合
成立後は上場を廃止し、ライフが 83.38% を持つ。統合の効果が出ない、または不採算店を閉じる動きが出る恐れがある。
中京の出店
愛知・岐阜の出店は黒字化が見えておらず、費用だけ先に出る。競合が多く、北陸のような首位の位置がない。
今後の分かれ目
- TOB が成立せず、買付期間が延長されたら
- 買付価格と独立した価値の差が意識される。独立の価値は買付価格を下回るため、株価は下がりうる。
- 営業利益率が 2.5% を超えて 2 期以上続いたら
- ライフとの調達統一が効いた証拠になる。強気とやや強気の確率を上げる。
- 既存店の客数が 3 期連続で前年を超えたら
- 低価格型ドラッグとの競争に勝ち始めた合図になる。客数の指数を上げる。
- 北陸で低価格型ドラッグの出店がさらに増えたら
- 客数が一段と細り、やや悲観に近づく。
- 中京の店が黒字になり、出店が加速したら
- 成長の柱が育つ。中京の客数の指数を 2.5 倍以上に上げる。
- 金利が上がり、借入金の利払いが年 2 億円を超えたら
- 店舗投資の負担が利益を削る。純利益を下方に直す。
見ておくもの
- TOB の成否と、買付後のスクイーズアウトの時期
- 既存店の客数・客単価・粗利率
- 営業利益率と、ライフとの調達統一の効果
- 低価格型ドラッグの出店と食品の特売
- 店舗投資額と借入金の水準
- 中京の出店数と収益
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE が資本コスト 7.5% を下回る筋書きでは、上限の 1÷k=13.3 倍に対する割合で置いた。今の PER や、買付価格から出る倍率には寄せていない。買付価格は自己資本の約 0.96 倍で、独立の価値との比較に使うだけだ。土地の含み益は時価が未確認で、純資産に足していない。賃借の店舗の家賃は固定費として残り、新リース会計基準(2028 年 3 月期から)で貸借対照表に載ると、借入金が増えたように見えるが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.7→13.33 倍・やや楽観 PER 12→13.33 倍・中立 PER 11.3→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。