結論
セキチューは、群馬県の高崎に本社を置くホームセンターのチェーンだ。店は群馬と埼玉、栃木などに約30ある。筆者の結論は割高である。地盤はカインズの地元で、値段の競争から逃げられない。ホームセンターの稼ぎは売上の1%ほどで、利益の半分近くは持っている土地を他社に貸す賃料が生んでいる。
2026年2月期の営業利益は6.2億円で、売上の2%に満たない。会社は経常利益率3%を当面の目標に掲げるが、中期の計画は無い。過去12年で営業利益率が3%に届いたのは、コロナの特需の1年だけだ。
筆者は10年後の自己資本利益率(ROE)を3%台とみる。資本コストの8%台に遠く届かない。店の多くは自社の土地と建物で、帳簿の自己資本は厚い。だが、資産の値打ちは清算されない限り株主に届かない。
創業家の資産管理会社が45%を持ち、他社が買いに来る道も細い。今の値段は、株主のものになる細い利益に比べて高いと考える。土地を持つ堅さは悲観の深さを和らげるが、値打ちを生むのは土地ではなく、土地の上の商売だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、セキチューは「土地を持つが、本業では稼げない地方のホームセンター」だ。店の土地と建物は自社のもので、家賃に追われない。閉じた店の跡を貸して賃料を得る形も堅実だ。
筆者がいちばん気にしているのは、本業の値段の力の無さだ。カインズの地元で、大手と同じ商品を売る限り、値段は相手が決める。ホームセンターの利益率は1%ほどで、人件費と光熱費が物価以上に上がれば、すぐに削られる。
帳簿の自己資本は厚いが、ROEが資本コストに届かない会社では、ためた利益は帳簿の額ほどの値打ちを持たない。資産の値打ちは、店を閉じて売る決断が無い限り株主には届かない。
オーナーとして持ちたいのは、大手との共同の仕入れか、土地の売却と還元の方針が数字で出た時だ。安全域は、今の値段には無いと考える。土地の値打ちは悲観の深さを和らげる程度にとどまる。
何で稼ぐ会社か
セキチューは1975年に群馬県の大間々(今のみどり市)でホームセンターの1号店を開いた。売上は約319億円で、従業員は正社員310人とパートで店を回す。
本業はホームセンターで、売上の97%を占める。店は「高崎店ほか24店」のホームセンターに、カー用品のオートウェイ4店、自転車の店、工具の買取と販売の店を加えた約30だ。売上の半分は木材や工具、塗料などのDIYの用品で、3割弱が日用品などの家庭用品、2割弱がカー用品と自転車とレジャーの用品だ。
2つ目は不動産の賃貸だ。持っている土地と建物を他社に貸し、年に8.5億円の賃料を得る。2026年2月期は15%増えた。売上は小さいが、利益率は高く、会社の利益の半分近くを生むとみる。
店の多くは自社の土地と建物で、借りている店は少ない。そのため家賃の固定の約束は軽いが、建物の更新の投資は自社で負う。出店の新しい計画は無く、古い店を閉じて建て替える形で店を入れ替える。
客の多くは地元の家庭と、近くで仕事をする職人だ。木材の加工や工具の貸し出しなど、店でしか受けられない手間のかかる仕事が、ネット通販との違いになる。カー用品と自転車の店は、ホームセンターの客を別の用事でも呼び込む役を担う。
優良さと弱いところ
強みは、土地と建物を自社で持つことだ。家賃の負担が軽く、閉じた店の跡を他社に貸して賃料を得られる。借入は純額で31億円と、自己資本の4分の1ほどにとどまる。
弱さは、値段を決める力が無いことだ。地盤の群馬は、業界最大手のカインズが生まれた土地で、近くにはベイシアやコメリ、ジョイフル本田の大きな店が並ぶ。大手は規模で仕入れの値段を下げ、自社の安い商品を持つ。セキチューの30の店では、その仕入れの差は埋められない。
資本の稼ぎも薄い。過去10年のROEの中央値は3%台で、2019年2月期には店の減損で16億円の赤字を出した。創業家の資産管理会社が45%を持ち、経営は安定するが、資本の使い方を外から問う力は弱い。中期の計画も示していない。経常利益率3%という目標はあるが、届かない年が長く続いている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ホームセンターの市場は4兆円前後で、店の数は5,000を超え、もう増えない。人口が減る地方では客数も細る。上位のカインズ、DCM、コーナン、コメリは統合と共同の仕入れで規模を広げ、「1兆円」を目安に再編が続く。物価の高い時代は、自社の安い商品を持つ大手に有利に働く。
北関東は、ホームセンターの激戦地だ。カインズとベイシアのグループ、ジョイフル本田、コメリが同じ商圏に大きな店を構える。中堅の地元のチェーンは、品ぞろえの深さか、職人向けの資材の専門性で差をつけるしかない。
ネット通販も、日用品と工具で客を奪う。一方、木材や園芸の土、重い資材は、ネットで買いにくく店の強みが残る。セキチューの売上の半分がDIYの用品である点は、ネットへの耐性として働く。
筆者は、10年で地方の中堅は大手の傘下に入るか、共同の仕入れに加わるとみる。セキチューは創業家が過半近くを持ち、その決断は家の意向次第だ。
人と電気の費用も重い。パートの時給は最低賃金とともに年に5%前後上がり、広い売場の照明と空調の電気代も下がらない。売場の広い商売ほど、この費用の上昇に弱い。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2026年2月期の配当は普通配当に特別配当を加え、総額1.7億円で、純利益の4割ほどだった。自社株買いはしていない。株主優待は500株以上の株主に商品券などを贈るが、費用は年に0.1億円に満たないとみる。
財務は堅いが、現金は少ない。現金は8億円で、純負債は31億円ある。上場株を9億円ほど持ち、取引の関係の維持のためとしている。店の土地と建物は自社で持つ。
大株主は、創業家の資産管理会社のサウス企画が45%を持つ。取引先と従業員の持株会が合わせて15%、衣料のしまむらが5%を持つ。創業家の意向なしに、他社が会社を買うことはできない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
土地と建物を自社で持つ強さは大きい。家賃の負担が軽く、物価の高い時代に家賃の値上げに追われない。閉じた店の跡を貸す賃料は2026年2月期に15%増え、建物の償却は取得した時の額のまま増えないので、賃料の伸びはそのまま利益になる。
売上の半分は木材や工具、塗料などのDIYの用品で、ネット通販に奪われにくい。職人とプロの客が多く、店の近さと品ぞろえの深さで選ばれる。
業界の再編は追い風になりうる。北関東に30の店と土地を持つ会社は、大手にとって地盤を広げる値打ちがある。共同の仕入れに加われば、利益率は一気に上がる。しまむらも株主に入っている。
2026年2月期は営業利益が増え、特別配当も出した。会社は経常利益率3%を目標に掲げ、還元にも前向きだ。借入も自己資本の4分の1ほどで、金利の上昇に耐えられる。
店の土地を自社で持つので、閉じる店が出ても跡地を貸すか売るかを選べる。借りた店で営む同業より、構造の変化に身軽に動ける。
慎重な見方
地盤はカインズの地元だ。カインズ、ベイシア、コメリ、ジョイフル本田が同じ商圏に大きな店を構え、規模で仕入れの値段を下げ、自社の安い商品を持つ。30の店のセキチューは、値段で勝てない。
ホームセンターの利益率は1%ほどしかない。人件費と光熱費は物価以上に上がり、値上げは大手と比べられて通りにくい。群馬と埼玉の北部は人口が減り、客数も細る。過去12年で営業利益率が3%に届いたのは、コロナの特需の1年だけだ。
2019年2月期には店の減損で16億円の赤字を出した。店の更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、借入の金利も上がる。
創業家が45%を持ち、再編の決断は家の意向次第だ。中期の計画も無く、資本の稼ぎを上げる道筋は見えない。
賃料の伸びも、空いた店の跡を貸せる間だけだ。郊外の大きな土地の借り手は限られ、景気が冷えれば賃料はすぐに止まる。特別配当も利益が細れば続かない。売場の広い店の建て替えには1店で10億円を超える投資が要り、その費用は建築費の上昇で膨らんでいく。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。土地を持つ強さと賃料の伸びは本物だが、本業の値段の力の無さと、大手に囲まれた地盤の構造は10年で変わりにくい。中立を最も厚くし、やや悲観と悲観を合わせて36%に置いた。同じ領域の会社と比べて悲観を少し厚くしたのは、地盤がカインズの地元だからだ。大手との提携か土地の売却の方針で見直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,036 円56 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 324 円18 億円)。 今の値に割り戻すと 684 円37 億円、今との差 −35.9%、 期待の年率 +2.4%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,351 円128 億円 | 552 円30 億円 | +171.8% | +10.5% | 174 円9 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,598 円87 億円 | 442 円24 億円 | +91.0% | +6.7% | 408 円22 億円 |
| 中立 | 38% | 1,097 円60 億円 | 331 円18 億円 | +33.8% | +3.0% | 543 円29 億円 |
| やや悲観 | 25% | 538 円29 億円 | 258 円14 億円 | −25.5% | −2.9% | 199 円11 億円 |
| 悲観 | 11% | 219 円12 億円 | 110 円6 億円 | −69.1% | −11.1% | 36 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,036 円56 億円 | 324 円18 億円 | +27.4% | +2.4% | 1,360 円74 億円 |
今の株価時価総額 1,068 円58 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% 大手との提携か再編で仕入れが強くなり、利益率が過去の山を超える 利益 11 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,351 円128 億円
セキチューが大手のホームセンターと共同の仕入れを組むか、再編の一角に入る筋書きだ。業界は「1兆円」を目安に統合が進み、地方の中堅は大手の仕入れと自社の安い商品を使えるようになる。セキチューの店は群馬と埼玉、栃木の郊外にあり、大手にとっても地盤を広げる値打ちがある。
仕入れの値段が下がり、ホームセンターの利益率は2.5%に上がる。店は31に増え、1店の売上は物価並みに伸びる。持っている土地の一部は貸して、賃料の収入も増える。営業利益は16億円を超える。
配当は増え、特別配当も続く。創業家の持株は変わらず、会社の独立は保たれる。
- ホームセンター(カー用品・自転車を含む):数量 31.0(店の数(期末・推定))× 価格 1,433(1店あたりの年間の売上(百万円))→ 売上 444 億円・営業利益 11 億円。31店×1店の売上が物価並み、2.5%
- 不動産賃貸:数量 46.0(貸している床と土地の面積(千㎡・推定))× 価格 27(1千㎡あたりの年間の賃料(百万円))→ 売上 12 億円・営業利益 6 億円。貸す面積が増え、賃料は物価並み、償却は増えず45%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 128 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホームセンターの利益率を過去12年の山(2021年2月期の3.0%)近くまで上げるには、仕入れの規模を大きく変える提携や再編が要る。創業家が45%を持ち、その決断は読めないので6%とした。
やや楽観 20% 店の改装と特別配当で、利益と還元を少しずつ厚くする 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,598 円87 億円
会社が「スクラップ&ビルド」、つまり古い店を閉じて新しい店に建て替える手を着実に進める筋書きだ。店の数は29のまま、売場をプロの職人向けの資材と園芸に寄せ、1店の売上は10年で1.3倍になる。
ホームセンターの利益率は1.6%に上がり、持っている土地を貸す賃料も伸びる。建物の償却は取得した時の額のまま増えないので、賃貸の利益率は上がる。営業利益は11億円台になり、会社の目標の経常利益率3%に近づく。
配当は利益の4割を保ち、特別配当も時々出す。自社株買いは行わない。創業家の持株と、しまむらとの関係は変わらない。
- ホームセンター(カー用品・自転車を含む):数量 29.0(店の数(期末・推定))× 価格 1,391(1店あたりの年間の売上(百万円))→ 売上 403 億円・営業利益 6 億円。29店×1店1.30倍、1.6%
- 不動産賃貸:数量 44.0(貸している床と土地の面積(千㎡・推定))× 価格 26(1千㎡あたりの年間の賃料(百万円))→ 売上 11 億円・営業利益 5 億円。44千㎡×1.30倍、償却は増えず44%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 87 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年2月期は営業利益が5%増え、特別配当も出した。会社の当面の目標の営業収益経常利益率3%に近づく筋として20%とした。
中立 38% カインズの地元で細く稼ぎ、賃料が利益を下支えする 利益 5 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,097 円60 億円
セキチューが今の形のまま、地元の郊外で細く稼ぎ続ける筋書きだ。群馬と埼玉の北部は人口が減り、客数は10年で5%ほど細る。値段は物価並みに上がるが、カインズとの比べられやすさで上げ幅は少し小さい。1店の売上は10年で1.25倍にとどまる。
店は1つ閉じて28になる。人件費と光熱費は物価以上に上がり、ホームセンターの利益率は1%前後にとどまる。持っている土地を貸す賃料は上がり、償却は増えないので、賃貸が利益の半分を稼ぐ。営業利益は8億円ほどになる。
借入の金利が上がり、利払いは年に1億円ほど増える。純利益は5億円ほどで、ROEは3%台にとどまる。配当は利益の4割ほどを保つ。
- ホームセンター(カー用品・自転車を含む):数量 28.0(店の数(期末・推定))× 価格 1,337(1店あたりの年間の売上(百万円))→ 売上 374 億円・営業利益 4 億円。28店×1店1.25倍(客数の細りで物価に届かない)、1.0%
- 不動産賃貸:数量 42.4(貸している床と土地の面積(千㎡・推定))× 価格 25(1千㎡あたりの年間の賃料(百万円))→ 売上 11 億円・営業利益 4 億円。面積は今のまま、賃料1.25倍、償却は増えず42%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 59 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年のホームセンターの利益率は多くの年で1〜2%台にとどまった。地盤の人口の減りと大手との競争に、物価の分の値上げと賃料の伸びが打ち消し合う落としどころとして38%とした。
やや悲観 25% 大手の値下げに押され、ホームセンターがほぼ稼がなくなる 利益 3 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 538 円29 億円
カインズやコメリ、ベイシアの値下げに押され、セキチューのホームセンターがほとんど稼がなくなる筋書きだ。客数は2割近く減り、値段も物価に届かない。1店の売上は10年で1.15倍にとどまり、店は25に減る。
ホームセンターの利益率は0.4%に落ち、利益のほとんどを賃料が稼ぐ。営業利益は5億円ほどで、利払いの増加で純利益は3億円を切る。配当は特別配当をやめ、普通配当だけになる。
店の土地と建物は持ち続けるが、閉じた店の跡は借り手が見つかりにくい。資産はあっても、清算されない限り株主の取り分は細い利益に見合う値段になる。
- ホームセンター(カー用品・自転車を含む):数量 25.0(店の数(期末・推定))× 価格 1,230(1店あたりの年間の売上(百万円))→ 売上 308 億円・営業利益 1 億円。25店×1店1.15倍、0.4%
- 不動産賃貸:数量 42.4(貸している床と土地の面積(千㎡・推定))× 価格 24(1千㎡あたりの年間の賃料(百万円))→ 売上 10 億円・営業利益 4 億円。賃料1.18倍、40%
倍率:ROEは2%前後で資本コストを大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で見て、1÷kの12.0倍の7割の8.4倍。店の土地と建物を売る方針は無く、創業家が45%を持つので、資産の値打ちは床に入れない。
確率:2018〜2020年2月期は利益率が1%台前半に沈み、2019年2月期には店の減損で16億円の赤字を出した。同じ形が10年の終わりに続く筋として25%とした。
悲観 11% 店の減損と赤字が続き、店を半分近くに減らす 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 219 円12 億円
ホームセンターが構造的に負ける筋書きだ。ネット通販とカインズの値下げで客を取られ、店の売上は物価にほとんど届かない。店は20に減り、ホームセンターは赤字に沈む。
赤字の店の減損で自己資本は大きく減る。配当は大きく減らし、閉じた店の土地は売って借入を返す。賃料の収入は残るが、空いた土地の借り手は少ない。
創業家は会社を手放さず、同業への売却も選ばない。株主に残るのは、細い賃料の稼ぎと、売れる土地の一部だけだ。清算されない限り、帳簿の自己資本の1割ほどの値段にとどまる。土地はあっても、稼がない土地は株主を守らない。
- ホームセンター(カー用品・自転車を含む):数量 20.0(店の数(期末・推定))× 価格 1,123(1店あたりの年間の売上(百万円))→ 売上 225 億円・営業利益 −3 億円。20店×1店1.05倍、−1.5%
- 不動産賃貸:数量 40.0(貸している床と土地の面積(千㎡・推定))× 価格 22(1千㎡あたりの年間の賃料(百万円))→ 売上 9 億円・営業利益 3 億円。賃料1.10倍、35%
倍率:赤字で稼ぐ力は床にならない。今の自己資本119億円に0.10倍を掛けた約12億円とみる。店の土地は売れるが、創業家が45%を持ち少数株主は清算を求められないので床に数えない。
確率:2019年2月期に16億円の赤字を出した実績がある。大手との競争に構造的に負け、ホームセンターが赤字に沈む筋として11%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ホームセンター(カー用品・自転車を含む)
群馬・埼玉・栃木などの郊外のホームセンターとカー用品・自転車・工具買取の店。
| 数量店の数(期末・推定) | 価格1店あたりの年間の売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 29.0 | 1,070 | 310 | 3 |
| 10 年後 中立 | 28.0 | 1,337 | 374 | 4 |
取り方:有報の「高崎店他24店」とオートウェイ4店から約29店とし、ホームセンターの売上310.19億円を割った1店あたり約10.7億円。利益は全社の営業利益6.19億円から賃貸の推定3.4億円を引いた推定。
不動産賃貸
自社の土地・建物を他社のテナントに貸す。
| 数量貸している床と土地の面積(千㎡・推定) | 価格1千㎡あたりの年間の賃料(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 42.4 | 20 | 9 | 3 |
| 10 年後 中立 | 42.4 | 25 | 11 | 4 |
取り方:面積の開示が無いため推定。賃料8.48億円を、郊外の店舗用の賃料1千㎡あたり年20百万円で割った約4.2万㎡。利益は賃貸用資産27.5億円の償却などを引いて約4割と推定。
リスクと懸念
大手との値段の競争
地盤の群馬と埼玉の北部には、カインズ、ベイシア、コメリ、ジョイフル本田の大きな店が並ぶ。大手の値下げと自社の安い商品に押され、ホームセンターの利益率1%が削られる。
人件費と光熱費
パートの時給と電気代は物価以上に上がる。値上げが大手と比べられて通らなければ、薄い利益はすぐに消える。
店の減損
2019年2月期に店の減損で16億円の赤字を出した。客数の細る店が増えれば、また減損が起こりうる。
建物の更新の投資
店の多くは自社の建物で、建て替えと改装の費用は建築費の上昇で膨らむ。償却は取得した時の額のままなので、会計の利益より現金の出が大きくなる。
再編の決断が家の意向次第
創業家の資産管理会社が45%を持つ。大手との提携や売却で株主の価値が上がる場面でも、その決断は家の意向で決まる。
今後の分かれ目
- 大手のホームセンターと共同の仕入れや資本の提携を結んだら
- 仕入れの値段が下がるとみて、やや楽観と楽観の確率を上げる。
- 営業収益経常利益率3%の目標を2期続けて達成したら
- 値段と費用の管理の証拠として、中立の利益率を見直す。
- 既存店の売上が2期続けて前年を下回ったら
- 大手に押され始めた証拠として、やや悲観に重みを移す。
- 閉じた店の土地を売って還元に回す方針を示したら
- 資産が株主に届く道が開いたとみて、上側の確率を見直す。
- 店の減損で純利益が赤字になったら
- 悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 既存店の売上と客数
- ホームセンターの営業利益率
- 不動産賃貸の収入
- 大手との提携・再編の動き
- 特別配当の有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPBRを見ずに、ROEとk 8.3%から決めた。中立のROEは3%台で資本コストに遠く届かないので、PERは1÷kの12.0倍の7.5割に置いた。同じ領域のナフコ・コーナンと同じ置き方で、kは地盤の競争の分だけ高い。利益率は過去12年の山(3.0%)より低く置いた。店の多くは自社の土地と建物で、2028年2月期からの新リース会計基準で数字の形が変わる部分は小さいが、10年後の数字は今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.8→12.05 倍・やや楽観 PER 9.6→12.05 倍・中立 PER 9→12.05 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。