結論
カッパ・クリエイトは、回転寿司「かっぱ寿司」を全国に約300店構える会社だ。コロワイドの完全子会社が株式の半分を持つ、親子上場の形をとる。筆者の結論は、今の時価総額は稼ぐ力に比べて高すぎる、というものだ。
かっぱ寿司はかつて業界の首位だった。2011年にスシローに抜かれ、今は店舗数でもはま寿司・スシロー・くら寿司の後ろにいる。国内の回転寿司市場は8,000億円台に育っているが、同社のシェアは7%ほどにとどまる。
弱さは数字に出ている。2026年3月期の営業利益は5億円、純損益は赤字だった。既存店の客数は2024年12月から14か月続けて前年を割り、同業が好調ななかで同社だけが落ちた。2027年3月期の第1四半期も営業赤字で、会社の通期予想には重い宿題が残る。
理由は規模の差だ。魚もコメも買う量が小さく、原材料高がそのまま利益を削る。値上げで客が逃げるため、価格を決める力も弱い。
10年後の中立は、毎年黒字を出せる普通の中堅チェーンだ。それでも純利益は15億円ほどで、今の時価総額の数十分の1にすぎない。上振れの筋書きでも今の値段には届かない。
外食は店舗網という資産を持つので、事業が消えることはない。ただ、稼ぎの小さな会社に高い倍率はつかない。10年で測った本質価値は今の時価総額を大きく下回り、割高と判断する。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を10年持ち続けたいとは思わない。理由は三つある。
第一に、事業の質だ。値段を決める力がなく、買い付けの規模も小さい。景気の波とコメ・魚の相場に利益が左右され、利益の予測が立ちにくい。わからない事業には、確信を下げて向き合う。
第二に、資本の使い方だ。過去10年の赤字は8期で、貯めた利益が積み上がっていない。新しく店に投じたお金が、資本コストを超えて稼ぐ保証がない。配当が止まっているのは、その現れだ。
第三に、オーナーの利益の少なさだ。10年後の中立でも、年の純利益は15億円ほどにしかならない。家賃は毎年払う約束で、悪い年はそこから食い込む。
良い面もある。純有利子負債はほぼゼロで、約300店という資産は残る。コロワイドとの連携が調達コストを下げる余地もある。立て直しが本物になれば、利益は数倍に跳ねる。
ただ、その上振れが見えるのは数年先の決算を見てからだ。今は、払う値段に対して、安全域がない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は国内の回転寿司「かっぱ寿司」だ。連結売上は約730億円で、回転寿司事業がそのうち約600億円を占める。全国に約300店あり、関東・東北・中部・近畿が中心で、北海道・四国・沖縄には出ていない。
客に出す形は、タッチパネルで注文し、高速レーンで届く方式だ。2015年からこの「すし特急」を広げた。看板はサラダ軍艦で、1皿の価格を低く抑えて数で稼ぐ。平日限定でおにぎりやポテトを大きく値引きするなど、安さの打ち出しも続けている。
一部の店では予約制の食べ放題「食べホー」も出す。ただ主力ではなく、客単価を大きく押し上げるほどの規模ではない。
残りの約140億円は、子会社を通じた外販などの事業だ。会社の開示は粗く、中身は詳しく確かめられていない。本稿では回転寿司と、その他の二つに分けて見る。
店は借りて営む。家賃は毎年必ず払う固定の約束で、売上が落ちても減らない。店の数と1店あたりの客数が、そのまま利益の大小を決める。
親会社のコロワイドは、牛角や大戸屋なども持つ外食の大手だ。同社は2014年にTOB(公開買付け)と第三者割当増資でカッパ・クリエイトを傘下に入れた。2024年には韓国の子会社の株式と商標権を譲り受け、2025年にはインドネシアにも法人をつくった。海外はまだ種まきの段階で、利益への寄与は読めない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、同社には乏しい。筆者はそう見ている。
回転寿司は、ネタの調達力と自動化投資の力くらべだ。トップのスシローは売上が4,000億円を超え、はま寿司やくら寿司も2,000億円台に乗せる。同社の約600億円では、買う量で勝てない。2026年3月期は売上総利益率が約1ポイント落ち、原材料高を吸収できなかった。
値決めの力も弱い。安さで客を集める業態で、値上げに踏み切れば客が競合へ移る。既存店の客数が14か月続けて前年を割った事実が、それを物語る。
資本効率は低い。過去10年のうち赤字は8期あり、ROE(自己資本利益率)の中央値はマイナスだ。直近の好調期でも、2024年3月期の約14%、2025年3月期の約10%にとどまる。
経営の信用にも傷がある。2021年に前社長が、はま寿司の売上データを不正に取得した疑いで逮捕され、2023年に有罪判決を受けた。2024年には控訴が棄却され、はま寿司は5億円の賠償を求めて提訴している。
強みは、コロワイドのグループという後ろ盾と、約300店の店舗網だ。調達や物流で連携の余地はある。ただ、それが利益率を持続的に押し上げた実績は、まだ数字に出ていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の回転寿司市場は伸びている。富士経済によると、2024年は8,318億円で前年比6%増、2025年は8,773億円の見込みだ。ただし伸びの多くは値上げ、つまり価格の分だ。
人口は減るので、客の数は長い目で横ばいか微減になる。店舗数は4,000店台で、上位4社の出店余地はすでに狭い。成長は、上位の店が小さな店のシェアを奪う形で進む。
上位の位置は、はま寿司が約680店、スシローが約670店、くら寿司が約560店で、かっぱ寿司は約300店だ。売上は、スシローがグループで4,000億円超、はま寿司とくら寿司が約2,500億円とされる。同社との差は、調達力と自動化投資の差になる。
外食全体に共通する逆風もある。最低賃金の上昇とアルバイト不足で、店の運営費は年3〜5%のペースで上がる。コメや魚の高騰も重なる。値上げが通る強い店と、通らない弱い店で、利益率の差が開く時期だ。
景気の谷では、外食は消費の中でも削られやすい。ただ、低価格の回転寿司は、高い外食からの乗り換え客を一部受け止める。落ち込みは外食の中では浅い。
同社は、上位3社を追う立場から、勝てない立場に寄りつつある。ここ数年の差の開き方は、市場の成長を同社だけが取り逃している形だ。10年のうちに立て直せるかが、価値を分ける最大の点になる。
資本政策と M&A
還元は止まっている。2026年3月期は期末配当を見送り、年間の配当はゼロだった。2027年3月期の配当も未定のままだ。自社株買いの実績もない。
株主はコロワイドの完全子会社であるSPCカッパが約50%を持つ。2014年の買収で、コロワイドはTOBをかけ、第三者割当増資も引き受けた。親が過半を握るので、少数株主にとっては、経営の方向を自分で決められない構造だ。
この構造は、二つの方向に働く。一つは、親が追加の資金や調達の連携で子を支える場合だ。もう一つは、親が子を完全子会社に戻す場合で、そのとき少数株主は、その時点の値段で追い出される。時価総額が高い今は、買い取りの値段を親が高いと感じやすく、短期で起きる確率は低い。
自己資本は約100億円で、自己資本比率は35%だ。純有利子負債はほぼゼロだが、店の家賃は固定の約束で、見かけほど財務は強くない。
新しいリース会計基準が2028年3月期から入ると、家賃の約束が貸借対照表に載り、純有利子負債が増え自己資本比率は下がる。本稿は今と同じ形、つまり家賃を営業費用に入れた形でそろえて見ている。
点検済み(割高の見落とし点検 2026-10-19):起点の純損益は減損 7.15 億円を除いて約 2 億円にならし、中立の営業利益は会社予想の延長、株数は台帳と一致、親会社の完全子会社化は価値に入れていない。
株主優待は株主に渡る現物の配当なので、還元に足した。年の費用は約 2.1 億円(株主約 155,055 人×100 株の年額面 6,000 円×単元以上の割合 0.7×大口の上乗せ 1.3×使われる割合 0.75×原価率 0.33。推定)。10 年で中立 21 億円(続く見込み 1.0)、悲観は 0.5 で 10 億円。費用は販管費に入って利益を既に下げているので、自己資本の流れには足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
かっぱ寿司は約300店という店舗網を持つ。2021年の不祥事から5年たち、経営の体制は入れ替わっている。コロワイドグループの調達力と物流を使えば、コメと魚のコストを下げる余地は大きい。
2015年から広げた高速レーンと、タッチパネルの注文は、人手の少ない店でも回る形だ。人件費が上がる環境では、この設備の差が利益に効く。食べ放題「食べホー」のような客単価を上げる仕掛けも、まだ広げる余地がある。
2027年3月期の会社計画は、売上798億円・営業利益14億円と、はっきり回復を見込む。売上総利益率が戻り、既存店の客数が下げ止まれば、損益は大きく反転する。固定費が重い業態なので、客数が戻ったときの利益の伸びは大きい。
海外では、韓国とインドネシアで足場を築き始めている。国内の飽和を、海外の出店で補えれば、10年後の成長は別の形になる。
回転寿司の市場そのものは伸びる。8,000億円台の市場で、シェアを少し戻すだけで、売上は大きく動く。親会社も、子会社の再生を急ぐだけの資金力を持つ。
慎重な見方
今の問題は、一時的な逆風ではなく、構造的な差だ。既存店の客数は14か月続けて前年を下回り、同業が好調なときに同社だけが落ちた。市場の追い風を取れない会社に、上振れを期待する根拠は薄い。
売上総利益率は、2026年3月期に約1ポイント、2027年3月期の第1四半期には約2ポイント落ちた。コメと魚の高騰を、同社は値上げで転嫁できていない。値上げすれば客が逃げることを、既存店の数字が示している。
2027年3月期の会社計画は、営業利益14億円への回復だ。しかし第1四半期は7億円の赤字で、残りの3四半期で20億円を稼ぐ必要がある。過去の実績に照らして、達成は難しい。
過去10年で赤字は8期ある。直近の黒字期でも、営業利益率は2%台が最高だ。この水準では、家賃と人件費の上昇を吸収できない。
店は借りて営むので、客数が落ちても家賃は減らない。売上が1割落ちると、利益はほぼ消える。
親会社が助けるとしても、それは少数株主のためではない。配当は止まり、時価総額は稼ぎの何十倍にも膨らんでいる。この値付けは、立て直しが成功した姿を先に織り込みすぎだ。
どちらに重みを置いたか
立て直しの実現性は、数字の面では慎重な見方のほうが強い。客数の14か月連続の前年割れ、売上総利益率の低下、そして第1四半期の赤字が揃っているからだ。
一方、強気の指摘にも意味がある。固定費が重い業態なので、客数が戻れば利益は大きく跳ねる。親会社の後ろ盾もある。ただ、そうなるには、まず数字で下げ止まりを確認する必要がある。
確率は、やや悲観と悲観に厚く寄せた。それでも、個別のリスクは資本コストには足していない。中立は毎年黒字を出す普通の中堅チェーンとし、倍率は式の上限を超えないよう置いた。
10年で測ると、本質価値は今の時価総額を大きく下回る。割高だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 313 円155 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 78 円39 億円)。 今の値に割り戻すと 187 円92 億円、今との差 −88.1%、 期待の年率 −13.0%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,001 円494 億円 | 195 円96 億円 | −23.9% | −2.7% | 84 円41 億円 |
| やや楽観 | 18% | 616 円304 億円 | 128 円63 億円 | −52.6% | −7.2% | 134 円66 億円 |
| 中立 | 32% | 366 円181 億円 | 83 円41 億円 | −71.4% | −11.8% | 144 円71 億円 |
| やや悲観 | 29% | 36 円18 億円 | 43 円21 億円 | −95.0% | −25.8% | 23 円11 億円 |
| 悲観 | 14% | 31 円15 億円 | 20 円10 億円 | −96.7% | −29.0% | 7 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 313 円155 億円 | 78 円39 億円 | −75.1% | −13.0% | 391 円193 億円 |
今の株価時価総額 1,570 円775 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 立て直しが本物になり、シェアを取り戻す 利益 34 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 1,001 円494 億円
立て直しが本物になる。調達と物流でコロワイドグループの力を引き出し、売上総利益率が戻る。既存店の客数は2〜3年で下げ止まり、10年では2026年より約1割増える。食べ放題や海外の足場も、小さいながら利益に乗る。
国内の回転寿司の市場は値上げの分だけ伸びるので、シェアを少し取り戻せば、回転寿司の売上は900億円近くになる。人手を減らす設備の差が効き、回転寿司の営業利益率は6%に届く。ただし、上位3社の水準にはなお及ばない。
親会社は子会社を完全子会社に戻さず、上場を保ったまま支える。配当は2028年から再開し、利益の4割近くを還元する。10年のあいだ、不祥事も大きな減損も起きない。 自己資本の流れと還元の差には、優待の費用は利益から引き済みで還元には受け取り分を足している分が入る。
- 回転寿司(かっぱ寿司):数量 4,900(年間来店客数(万人))× 価格 1,809(客単価(円))→ 売上 886 億円・営業利益 53 億円。客数約1割増・営業利益率6%
- その他(外販・ベンダー等):数量 1,900(取扱量(万人前・寿司1人前換算))× 価格 1,072(1人前あたりの単価(円))→ 売上 204 億円・営業利益 10 億円。その他も増収・5%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 13.97 倍、時価総額 475 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:立て直しが10年間続けて成功し、不祥事も起きない必要がある。最近の客数の動きは逆で、確度は低い。
やや楽観 18% 赤字を抜け、堅実な中堅に戻る 利益 23 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 616 円304 億円
原材料高の吸収が進み、赤字の年は2026年と2027年で終わる。客数は小さな回復にとどまり、10年後は今より約2%増える。回転寿司の営業利益率は4.5%まで上がり、過去の黒字期の最高を上回る。
値上げは物価並みに通る。ただ、上位3社が先に値上げを通すので、同社は後追いになり、勢いのある成長は期待できない。外販などその他の事業は、横ばいに近い。
配当は2029年に再開する。海外は小さな黒字で、利益への寄与は限られる。堅実だが、勝ち組には入れない10年になる。
新しいリース会計が入っても、10年後の数字は家賃を費用に入れた今の形でそろえて見る。 自己資本の流れと還元の差には、優待の費用は利益から引き済みで還元には受け取り分を足している分が入る。
- 回転寿司(かっぱ寿司):数量 4,500(年間来店客数(万人))× 価格 1,809(客単価(円))→ 売上 814 億円・営業利益 37 億円。客数約2%増・営業利益率4.5%
- その他(外販・ベンダー等):数量 1,800(取扱量(万人前・寿司1人前換算))× 価格 1,072(1人前あたりの単価(円))→ 売上 193 億円・営業利益 9 億円。その他は横ばい・4.5%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.63 倍、時価総額 290 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:原材料高が一巡し、赤字から抜ける現実的な上振れ。ただ上位との差は残るので、確率は中立より低い。
中立 32% 毎年黒字を出す普通の中堅チェーン 利益 15 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 366 円181 億円
毎年黒字を出せる普通の中堅チェーンに落ち着く。2027年は会社の計画に届かず、黒字化は少し遅れる。客数は人口の減少と競合への流出で、10年で約6%減る。値上げは物価並みに通り、売上は930億円ほどまで伸びる。
回転寿司の営業利益率は3%。直近の好調期の2.4%より少し高いが、調達の連携と設備投資で原材料高を吸収する前提だ。その他の事業は4%で、本社費を引くと全社の営業利益は27億円ほどになる。
店は約300店のまま増えない。配当は少額で再開するが、自社株買いは行わない。海外は小さな黒字だ。親子上場も続き、上場を保ったまま10年が過ぎる。
人件費とコメ・魚の上昇は続くが、値上げと調達の連携でほぼ相殺できる。大きな減損も、大きな賠償も出ない。 株主優待は年およそ 2.1 億円(会社の費用ベースの推定)。続く見込み 1.0 で 10 年 21 億円を還元に足した(費用は利益から引き済み)。 自己資本の流れと還元の差には、優待の費用は利益から引き済みで還元には受け取り分を足している分が入る。
- 回転寿司(かっぱ寿司):数量 4,150(年間来店客数(万人))× 価格 1,809(客単価(円))→ 売上 751 億円・営業利益 23 億円。客数約6%減・営業利益率3%
- その他(外販・ベンダー等):数量 1,700(取扱量(万人前・寿司1人前換算))× 価格 1,072(1人前あたりの単価(円))→ 売上 182 億円・営業利益 7 億円。その他は横ばい・4%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 171 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:原材料高を値上げと調達の連携で吸収し、毎年黒字を出す中心の筋書き。同領域の中立の確率に合わせた。
やや悲観 29% 原材料高と客数減で稼ぐ力が細る 利益 4 億円 · PER 4.5 倍 · 株価時価総額 36 円18 億円
原材料高と人件費の上昇が続き、値上げは物価に届かない。客数は上位3社に流れ、10年で約15%減る。店の閉鎖が少しずつ進み、固定の家賃だけが重く残る。
回転寿司の営業利益率は1%まで落ち、全社の営業利益は10億円に届かない。赤字の年も何度か出る。配当はほとんど出せず、自己資本の積み上がりも遅い。
コロワイドは支えるが、追加の資金は少数株主のためには使われない。海外も黒字化できない。生き残りはするが、稼ぐ力は今の水準を割る10年になる。
既存店の客数が戻らないまま、上位3社が値上げと自動化投資で差を広げ続ける。同社は追随の余力がなく、店の改装も後回しになる。 自己資本の流れと還元の差には、優待の費用は利益から引き済みで還元には受け取り分を足している分が入る。
- 回転寿司(かっぱ寿司):数量 3,750(年間来店客数(万人))× 価格 1,728(客単価(円))→ 売上 648 億円・営業利益 6 億円。客数約15%減・営業利益率1%
- その他(外販・ベンダー等):数量 1,500(取扱量(万人前・寿司1人前換算))× 価格 1,040(1人前あたりの単価(円))→ 売上 156 億円・営業利益 5 億円。その他は縮小・3%
倍率:ROE 2.8%(純利益 4 億円 ÷ 自己資本 145 億円)。今の利益は残るとして、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 8.75% + 残る割合 1/2 ×(2.8 − 8.5)= 5.6%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 6.4 倍。ROE が資本コストに届かないので、PER の上限は 1÷k(約 11.8 倍)になる。店の数と客数に伸びしろが乏しく、家賃の約束が毎年残る点から、上限の 7.0 割の 4.5 倍に置いた。自己資本の大半は店の設備・在庫・敷金で、売ればこの帳簿を大きく割るので、帳簿の PBR は床にしない。
確率:客数の前年割れが14か月続き、規模でも劣るので、やや悲観は同領域の他社より厚く置いた。
悲観 14% 構造的に負け、親会社に引き取られる 利益 −16 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 31 円15 億円
構造的な負けが定着する。客数は上位3社に奪われ続けて10年で約3割減り、値下げ競争のなかで1人あたりの単価も物価に届かない。店は数十店閉まるが、家賃の約束は閉店後も残る。
営業赤字が続き、減損が重なって自己資本は大きく削られる。配当はゼロのままだ。コロワイドは子会社を完全子会社に戻すか、事業を縮める。少数株主にとっては、その時点の安い値段で手放す形になる。既存店の売上は毎年落ち、人件費の上昇を値上げで吸収できない。仕入れは小さな規模のままで、コメと魚の高騰が利益を直接削る。
ただし、事業そのものは消えない。店舗網を使う買い手は現れうる。稼ぐ力は戻らないが、土地と設備の値打ちが全部消えるわけでもない。 株主優待は縮む前提(続く見込み 0.5)で、還元に 10 億円を足した。 自己資本の流れと還元の差には、優待の費用は利益から引き済みで還元には受け取り分を足している分が入る。
- 回転寿司(かっぱ寿司):数量 3,000(年間来店客数(万人))× 価格 1,620(客単価(円))→ 売上 486 億円・営業利益 −12 億円。客数約3割減・赤字
- その他(外販・ベンダー等):数量 1,100(取扱量(万人前・寿司1人前換算))× 価格 960(1人前あたりの単価(円))→ 売上 106 億円・営業利益 −1 億円。その他も縮小・赤字
倍率:赤字が続き、稼ぐ力は事業の純利益では測れない。今の自己資本 102 億円に対する PBR 0.15 倍で測った。店舗は借りており、売れる資産の多くは設備と在庫にとどまるので、純現金に上乗せする床は立てない。家賃の約束が残るぶん、帳簿の自己資本を満額で見ない。
確率:個別の傾きは資本コストでなく確率で表す。客数と利益率が続けて落ちる構造的な負けが、同業の中でいちばん起きやすい会社として、同領域では厚めに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
回転寿司(かっぱ寿司)
全国に約300店を構える回転寿司チェーン。タッチパネルと高速レーンで、低価格の皿を数で稼ぐ。
| 数量年間来店客数(万人) | 価格客単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,415 | 1,350 | 596 | 2 |
| 10 年後 中立 | 4,150 | 1,809 | 751 | 23 |
取り方:回転寿司事業の売上は約596億円(2025年3月期)。客単価は千円台半ばと推定し、売上を割って年間来店客数を約4,400万人とした(1店あたり1日約400人。会社の開示ではなく推定)。国内の回転寿司市場8,773億円(2025年見込み)に対するシェアは約7%。先の客数は、人口の減少と競合への流出で、中立は10年で約6%減とした(実質の量)。客単価は値上げで物価並みの1.34倍を基本にし、強く落ちる筋書きだけ競争で下げた。
その他(外販・ベンダー等)
子会社を通じた外販などの事業。開示が粗く、連結売上から回転寿司を引いた残りとして見る。
| 数量取扱量(万人前・寿司1人前換算) | 価格1人前あたりの単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,700 | 800 | 136 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,700 | 1,072 | 182 | 7 |
取り方:連結売上約732億円から回転寿司の約596億円を引いた約136億円をその他の売上とみた。1人前を千円弱と仮置きし、取扱量を約1,700万人前と逆算した(推定。この事業の中身は開示が粗く確かめきれていない)。先の量は中立で横ばい、単価は物価並みの1.34倍。
リスクと懸念
原材料高を値上げで転嫁できない
コメと魚の高騰は続いている。2026年3月期は売上総利益率が約1ポイント、2027年3月期の第1四半期は約2ポイント落ちた。低価格が売りの業態で値上げをすれば、客が競合へ移る。調達の規模が小さい同社は、他社よりこの圧力を受けやすい。
客数の前年割れが止まらない
既存店の客数は2024年12月から14か月続けて前年を割った。同業が好調ななかでの落ち込みで、市場の問題でなく同社固有の問題と読める。平日の値引き企画やコラボ商品でも、流れは変わっていない。止まるまでは、利益の回復を前提にできない。
固定の家賃と人件費
店は借りて営む。家賃は毎年必ず払う約束で、売上が落ちても減らない。最低賃金の上昇でアルバイトの人件費も年3〜5%のペースで上がる。客数が落ちる局面では、この二つが利益を直接削る。2028年3月期から新リース会計で借金のように見える額も増える。
親子上場と少数株主の立場
コロワイドの完全子会社が株式の約50%を持つ。親の都合で資金の使い方や取引条件が決まりうる。完全子会社化の際は、その時点の値段で手放すことになる。配当は止まっており、少数株主に還元が戻る確かな道筋はない。
不祥事の後遺症
2021年に前社長が、はま寿司の売上データを不正に取得した疑いで逮捕され、2023年に有罪判決が出て、2024年に控訴も棄却された。はま寿司は5億円の賠償を求めて提訴している。信用の傷は残り、賠償の結末次第では損失が出る。
上位3社との差が開く
スシローはグループで4,000億円超、はま寿司とくら寿司は約2,500億円。調達と自動化投資の力くらべで、約600億円の同社は後れを取りやすい。上位が投資を重ねるほど、差は広がる方向に働く。
海外はまだ小さな種まき
2024年に韓国の子会社を譲り受け、2025年にインドネシアに法人をつくった。ただ、海外の売上や利益の開示は乏しく、国内の客数減を補う規模にはまだ遠い。出店が先行して赤字が膨らむ恐れもある。
今後の分かれ目
- 既存店の客数が前年を超える月が半年続いたら
- 客数の下げ止まりが見えたとして、やや楽観寄りに確率を移す。
- 2027年3月期の第2四半期までに営業赤字が解消せず、通期予想を下げたら
- 立て直しの前提が崩れたとして、やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- 売上総利益率が2期続けて改善したら
- 調達の連携か値上げが効いている証拠として、中立〜やや楽観の利益率を引き上げて見る。
- コロワイドが完全子会社化を発表したら
- 少数株主はその時点の買い取り値段で手放すことになる。筋書きよりも提示された値段を見る。
- 配当を再開し、自社株買いも始めたら
- 利益が安定して出ていると読み、還元の合計を厚く見直す。
- はま寿司との訴訟で大きな賠償が確定したら
- 特別損失として自己資本が減る。やや悲観寄りに見直す。
- 海外の出店で黒字の店が増えたら
- 国内の数量の天井を補う材料として、楽観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 既存店の客数と客単価の月次(会社の月次レポート)
- 売上総利益率の四半期推移とコメ・魚の仕入れ価格
- 2027年3月期の通期予想の達成度(営業利益14億円)
- コロワイドの資本政策(完全子会社化の動き、調達の連携)
- はま寿司との訴訟の結末
倍率と資本コストの決め方
回転寿司は来店客数(実質)×客単価(名目)、その他は取扱量×単価で積み、自己資本は今の値+期間の純利益−還元で流して、倍率はRONIC(k 8.75%+1/2×(ROE−k))とg 4.0%の式から出した。今の時価総額から逆算していない。利益が小さいので、楽観でも今の時価総額には届かない。10年後も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえ、新リース会計での数字の形の変化は織り込んでいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.9→13.97 倍・やや楽観 PER 12→12.63 倍・中立 PER 10.1→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。同じ領域のくら寿司(+0.3%)より厚いのは、値決めが弱く、規模の差が開き、客数が落ちているため。コロワイド(+1.2%)よりは薄いのは、純有利子負債がほぼゼロで事業が傾くほどではないため。親子上場やガバナンスのリスクは k に足さず、確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.75%。