結論
餃子の王将は、餃子と中華の定番を出す直営店約550店と、FC約180店を持つ中華チェーンである。創業は1967年の京都で、関西を地盤に全国へ広げてきた。
筆者の結論は割高である。味と店の運営は本物の強みだが、今の時価総額は、その強みが10年先まで利益を伸ばし続ける姿を先に払っている。いちばんの理由は、直営の店数がここ数年ほとんど増えていないことだ。
稼ぎの源は単純である。店の数に、1店あたりの売上がかかる。1店あたりの売上は、値上げで物価並みに伸びる。ただ客数は人口とともに細り、人件費は毎年5%前後で上がる。直近の四半期は営業利益が半分に落ちた。
財務は強い。純現金が200億円を超え、自己資本比率は7割台半ばだ。ただ店は固定費の塊で、純現金は見かけほど自由に使えない。
中立では、10年後の営業利益は150億円ほどで、利益は物価に沿って伸びる。それでも今の時価総額には届かない。強気の根拠は1000店構想だが、過去の実績は慎重に見る材料になる。
バリュー投資の観点から
餃子の王将は、バリュー投資の観点で見ると、悪くはないが安くもない会社である。
まず事業の質。店長に任せる運営と、自社で作る食材の仕組みは、長く続けてきた本物の強みだ。過去10年、一度も赤字になっていない。ただ堀は強くない。中華の定番は競合が多く、値上げすれば客数が減る。
次に資本の使い方。直営店は自前で出す店が中心で、1店出すたびに設備と人を先に払う。利益のうち、株主の手元に残るのは再投資を引いた分だけだ。純現金が厚いのはよいが、それは家賃と運転資金の裏づけでもある。2025年の自社株買いは、使い道のない現金を返す動きと見るので評価する。
3つ目は安全域。10年先の利益を中立で置いても、今の値段は先に払いすぎている。1000店構想が実現すれば話は変わるが、過去数年の直営の店数は動いていない。事業を理解できる点は強みだが、払う値段には余裕がない。
筆者が持ち続けたいと思えるのは、今より大きく値下がりした時である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は2本立てである。第一は直営店の運営で、売上の約92%を占める。第二はFC店への食材販売で、約8%を占める。
直営店は約550店。餃子や炒飯、ラーメンなど、中華の定番を手ごろな値段で出す。店長に大きな権限があり、店ごとに品ぞろえやイベントを変える。「一つとして同じ店がない」と言われる運営だ。本部が決めたとおりに作るチェーンとは、考え方が違う。
食材は自社の工場で作って店に送り、調理は店で行う。この仕組みが、味の再現と原価の管理を支えている。FC店には同じ食材を卸し、その販売額が本部の売上になる。
店の立地は郊外から駅前まで広い。関西では旗艦店が強く、東日本はこれから伸ばす地域だ。2026年5月には東京に「調理道場」を新設し、東日本の出店を担う人を育てる拠点にした。
数量で見れば、直営は店数、FCも店数が基本の単位になる。1店あたりの売上が、値上げと客数で決まる。直営の店は1店あたり約2億円を売り、これが10年で物価並みに上がるのが基本である。利益は、店ごとの人件費・食材費・家賃を引いた残りで決まる。
優良さと弱いところ
強みは3つある。第一に、店長の裁量が大きく、店ごとの個性が客を呼ぶことだ。第二に、食材を自社で作る仕組みで、味と原価が安定する。第三に、財務が厚く、不況でも潰れる心配がほぼない。
収益力は外食の中で上位だ。営業利益率は9%前後で、過去10年のROE(自己資本利益率)の中央値は約10%になる。直近は人件費などの上昇で利益率が少し落ちた。
堀、つまり他社がまねできない強みは、強くはない。餃子の味はまねされやすく、日高屋や大阪王将、餃子の満洲、リンガーハットなど、似た客を取り合う相手が多い。値上げをすると客数が減るので、値決めの力は普通である。
弱みは単一業態と国内集中だ。中華の店という1つの型に、売上の大半を預けている。人件費の上昇は毎年重く、ベースアップ(賃金の底上げ)は2025年度に8.2%、2026年度も5.9%を予定する。値上げで吸収できなければ、利益率を直接削る。
直営の店数は過去数年ほとんど増えていない。1000店構想は看板であって、実績はまだ伴っていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食市場は大きいが、国内の数量は頭打ちである。日本フードサービス協会によれば、2023年の外食市場は約24兆円で、コロナ前の水準への戻りが続いた。ただ人口は減り、店は飽和に近づいている。
中華のチェーンは、日高屋のような駅前の安い店、大阪王将のようなFC中心の店、餃子の満洲、リンガーハットなどがひしめく。王将は直営約550店とFC約180店、全店の売上は1,300億円前後と推定する。外食市場全体のほぼ0.5%にあたる。
1000店まで伸びても全店の売上は2,500億円ほどで、市場の1%に届かない。つまり市場の天井が成長を止めることはなく、止めるのは店長の養成と出店できる立地の数だ。
足元の逆風は2つある。1つはコストで、人件費、原材料、包材、店舗の建築費が上がっている。もう1つは需要で、前年はテレビ露出で売上が伸びたが、その反動とデリバリー需要の一巡が出た。2026年4〜6月は売上が約5%減り、営業利益は半分に落ちた。8月の既存店は客数が1.5%減、客単価が1.6%増で、売上は小さく減った。
外食全体で見ても、人件費の上昇を値上げで吸収できる会社と、できない会社の差が広がる局面である。
資本政策と M&A
還元は、配当と自社株買いの両方を使う。配当性向は約4割で、2027年3月期も同じ水準を予想する。
2025年5月には、450万株・約155億円の自社株買いを一度に実施した。ToSTNeT-3(東証の取引システム)での買付で、同月に500万株を消却した。この結果、自己資本は742億円から651億円に減り、ROEの低下を抑える形になった。
純現金は約215億円で、時価総額の約14%にあたる。ただ毎年の家賃、月商約100億円の運転資金、出店の投資を考えれば、事業に必要な分が大半と見る。
M&A(買収)は、中華の専業という性格上、ほとんどない。成長は出店で行う。国内1000店舗を掲げる中期経営計画の柱は、東日本の出店と人づくりである。
10年以内にTOB(株式公開買付け)で買われる確率は、kabufuの参考値で約18%ある。ただ時価総額が1,500億円規模で、買い手が見合うかは別の問題になる。
株主優待は、100株で年5千円、300株で8千円、1,000株以上で1.6万円〜4.2万円の優待券(電子チケット)。年1.5億円と見込む(2026年3月末の有報(個人その他の株主 68,981 人・約27.3万単元)から受け取る約6.6万人の額面合計を約4.3億円とみて、利用率0.8×原価率0.4×係数1.1)。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立・やや楽観・楽観1.0、やや悲観0.75、悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。年額は推定で、株主数の開示と優待条件から出した(2倍程度のずれはありうる)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
王将は味と運営で、長く愛されてきた。店長の裁量が大きく、店ごとの個性が客を呼ぶ。自社の工場で作る食材は、味を安定させ、原価も管理する。この仕組みはまねしにくい。
財務はほぼ無借金で、純現金が200億円を超える。不況でも潰れる心配がなく、出店の原資に困らない。2025年には約155億円の自社株買いを行い、資本を大事にする姿勢も見せた。
成長の余地は東日本にある。関西では1店あたりの売上が高く、関東・東北にはまだ空白がある。2026年に新設した調理道場で人づくりが進めば、出店のペースは上がる。国内1000店という目標が実現すれば、全店の売上は2,500億円ほどになり、今の1.9倍ほどだ。
コスト上昇も、吸収できる。厨房の省力化と値上げを重ねれば、営業利益率9%台を守れる。直近の落ち込みはテレビ露出の反動で、8月は直営全店の売上が同月の過去最高を更新した。需要は崩れていない。1000店構想が少しずつでも進めば、利益は店数の増加と値上げの両方で積み上がる。
慎重な見方
直営の店数は、ここ数年ほとんど増えていない。1000店構想は看板だが、実績が伴っていない。東日本の新店は関西ほど売れず、出店が進むほど平均の収益力は下がる。
人件費の上昇は止まらない。ベースアップは2025年度に8.2%、2026年度も5.9%を予定する。値上げで吸収しようとすれば、客数が減る。直近の1四半期は、売上が約5%減って営業利益が半分になった。8月の既存店も客数は1.5%減だ。
競合は多い。日高屋、大阪王将、餃子の満洲、リンガーハットなど、似た客を取り合う相手がそろう。味の差は小さく、値決めの力は強くない。
財務の強さも見かけほどではない。店は固定費の塊で、家賃と人件費は売上が落ちても減らない。純現金215億円は、運転資金と出店の投資に使う前提の金だ。
2025年の自社株買いで、純現金は331億円から215億円に減った。同じペースの還元は続けられない。今の値付けは、これらを無視した成長を前提にしている。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は味と財務で、これは本物である。慎重な見方の根拠は、直営の店数が増えていない事実と、直近の利益の落ち込みで、こちらの方が数字に表れている。
確率は中立を中心に、やや悲観をやや厚めに置いた。ただ事業は長く黒字で、財務も厚いため、悲観の確率は11%にとどめた。結果は、中立でも10年後の時価総額と還元の合計が今を上回るが、割り引くと今の値段に届かず、総合では割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,050 円1,602 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,178 円619 億円)。 今の値に割り戻すと 2,437 円1,280 億円、今との差 −17.8%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 6.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 5,450 円2,863 億円 | 1,523 円800 億円 | +135.3% | +8.9% | 628 円330 億円 |
| やや楽観 | 23% | 4,393 円2,308 億円 | 1,335 円701 億円 | +93.2% | +6.8% | 1,317 円692 億円 |
| 中立 | 33% | 3,621 円1,902 億円 | 1,220 円641 億円 | +63.3% | +5.0% | 1,598 円839 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,295 円680 億円 | 1,110 円583 億円 | −18.9% | −2.1% | 577 円303 億円 |
| 悲観 | 11% | 396 円208 億円 | 591 円311 億円 | −66.7% | −10.4% | 109 円57 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,050 円1,602 億円 | 1,178 円619 億円 | +42.7% | +3.6% | 4,228 円2,221 億円 |
今の株価時価総額 2,964 円1,557 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 9% 東日本で出店が軌道に乗り、1000店に迫る 利益 143 億円 · PER 20.0 倍 · 株価時価総額 5,450 円2,863 億円
東日本の出店が軌道に乗る10年である。関東・東北の新店が関西の旗艦店に近い売上を上げ、直営は760店まで増える。調理道場での人づくりが追いつき、出店ペースの壁だった店長の養成が詰まらなくなる。値上げは物価並みに通り、客数も崩れない。人件費の上昇は、厨房の省力化と値上げで吸収できる。直営の営業利益率は9%台半ばまで戻り、直営店の収益力が過去の山に近づく。FC向けの食材販売も店数の微増で伸びる。国内1000店体制という看板が、数字としてほぼ見えてくる筋書きだ。FCの店も少し増え、食材の販売も店数に沿って伸びる。ただ、この姿には出店・値上げ・人件費の吸収が10年そろう必要がある。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.5億円×10年×1=15億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 直営店(餃子の王将):数量 760(直営店数(店))× 価格 2.61(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 1,981 億円・営業利益 188 億円。直営の営業利益率 9.5%
- FC向け食材販売:数量 190(FC店数(店))× 価格 0.73(1店あたり年間の食材販売額(億円))→ 売上 139 億円・営業利益 21 億円。食材販売の営業利益率 15.0%
倍率:事業の純利益 143 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.0 倍。全体の PER 20.02 倍、時価総額 2,863 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店の加速・値上げの定着・人件費の吸収が10年そろう必要があり、過去10年は直営がほとんど増えていないので、高くは置けない。
やや楽観 23% 出店は進み、値上げで人件費を吸収する 利益 121 億円 · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 4,393 円2,308 億円
出店は計画に近いペースで進み、直営は690店になる。東日本の新店は関西ほどは売れないが、赤字にはならない。人件費は毎年重くのしかかるが、値上げを重ねて利益率は9%前後を保つ。客数は人口の減少と競合の厚みで、1店あたりでは少しずつ減る。デリバリー需要は一巡したあとも、小さな柱として残る。FC店はほぼ横ばいで、食材販売の利益が小さく積み上がる。派手さはないが、店数と値上げで利益が名目で伸び続ける姿である。純現金は出店の原資と還元に回り、財務の厚さは保たれる。東日本では店長の養成と立地の確保に時間がかかり、出店の足取りは慎重なままである。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.5億円×10年×1=15億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 直営店(餃子の王将):数量 690(直営店数(店))× 価格 2.57(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 1,771 億円・営業利益 159 億円。直営の営業利益率 9.0%
- FC向け食材販売:数量 180(FC店数(店))× 価格 0.73(1店あたり年間の食材販売額(億円))→ 売上 132 億円・営業利益 19 億円。食材販売の営業利益率 14.5%
倍率:事業の純利益 121 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.1 倍。全体の PER 19.07 倍、時価総額 2,308 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店と値上げが計画に近く進む現実的な上振れ。財務が厚く、出店の原資に困らない点が確率を支える。
中立 33% 中立:店数は緩やかに増え、利益は物価並みに伸びる 利益 104 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 3,621 円1,902 億円
出店は緩やかに進み、直営は620店になる。過去10年は直営がほとんど増えなかったので、出店が一気に加速するとは置かない。東日本の新店は、売上も利益率も関西の既存店より低い。値上げは物価並みに通るが、客数は1店あたりで3%ほど減る。人件費の上昇は、値上げと厨房の効率化でほぼ吸収し、直営の営業利益率は8%台半ばで落ち着く。FC店は170店前後で横ばい。利益は物価に沿って名目で伸びるが、実質ではほぼ横ばいという姿である。純現金は出店と還元に回り、財務の厚さは保たれる。東日本では店長の養成と立地の確保に時間がかかり、出店の足取りは慎重なままである。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.5億円×10年×1=15億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 直営店(餃子の王将):数量 620(直営店数(店))× 価格 2.53(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 1,568 億円・営業利益 133 億円。直営の営業利益率 8.5%
- FC向け食材販売:数量 170(FC店数(店))× 価格 0.73(1店あたり年間の食材販売額(億円))→ 売上 125 億円・営業利益 18 億円。食材販売の営業利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 104 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍。全体の PER 18.29 倍、時価総額 1,902 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直営は緩やかに増え、利益は物価に沿って伸びるという中心の筋書き。直近の客数減と利益の落ち込みを織り込み、やや慎重な側に寄せた。
やや悲観 24% 人件費と客数減で利益が伸び悩む 利益 68 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,295 円680 億円
人件費の上昇に値上げが追いつかず、利益が伸び悩む10年になる。ベースアップ(賃金の底上げ)が毎年5%を超える状態が続き、値上げを重ねるほど客数が減る。直営は570店と、今より少し増えるだけに終わる。出店した東日本の店は赤字すれすれで、閉店も出る。直営の営業利益率は6%台に落ち、デリバリーとテレビ露出の反動で1店あたりの客数も細る。家賃と人件費という固定費が重く、売上が少し減っただけで利益が大きく減る構造が表に出る。FC店は160店に減る。名目の利益は今とほぼ同じで、実質では3割ほど減った姿である。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.5億円×10年×0.75=11.2億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 直営店(餃子の王将):数量 570(直営店数(店))× 価格 2.45(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 1,397 億円・営業利益 84 億円。直営の営業利益率 6.0%
- FC向け食材販売:数量 160(FC店数(店))× 価格 0.71(1店あたり年間の食材販売額(億円))→ 売上 114 億円・営業利益 14 億円。食材販売の営業利益率 12.0%
倍率:ROE 8.6%(純利益 68 億円 ÷ 自己資本 794 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 6.75% + 残る割合 1/2 ×(8.6 − 7.5)= 8.0%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 14.3 倍。伸びと堀の持ちを低く見て、やや悲観は上限の 7 割の 10.0 倍に置いた。
確率:直近の四半期は営業利益が半分に減り、人件費の上昇は毎年5%超が続く。単一業態で値上げが客数に響きやすく、慎重な見方の方が強いので確率を厚くした。
悲観 11% 客離れと固定費の重みで稼ぐ力を失う 利益 26 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 396 円208 億円
客離れと固定費の重みで、稼ぐ力を大きく失う10年になる。値上げで客が逃げ、1店あたりの客数が大きく減る。直営の店数は不採算店の閉鎖で450店まで減る。店は多くが賃借で、家賃と人件費は売上が落ちても減らない。営業利益率は3%まで低下し、純利益は今の3分の1以下になる。FC店も130店まで減り、食材販売の利益も細る。味と価格の評判という堀は残るが、強いチェーンが同じ客を取りに来て、勝ち筋を失う。それでも店と調理の技術は残るため、事業が消えるわけではない。ただ、利益の大半は家賃と人件費に消え、株主に残る分は小さくなる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.5億円×10年×0.5=7.5億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 直営店(餃子の王将):数量 450(直営店数(店))× 価格 2.24(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 1,006 億円・営業利益 30 億円。直営の営業利益率 3.0%
- FC向け食材販売:数量 130(FC店数(店))× 価格 0.66(1店あたり年間の食材販売額(億円))→ 売上 85 億円・営業利益 7 億円。食材販売の営業利益率 8.0%
倍率:ROE 3.0% と谷の利益で、稼ぐ力(事業の純利益 26 億円 ÷ k 6.75% = 347 億円)を上限とみて、事業の稼ぐ力が細ったチェーンとして PER 8.0 倍に置いた。純現金はリースの約束と運転資金でほぼ消え、資産の床は立てない。
確率:事業は黒字が長く続き、財務も厚いので、稼ぐ力が失われる確率は高くない。ただ固定費の重い店舗商売で、外食の中でも谷が深くなりうるため、5%を超える確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
直営店(餃子の王将)
中華の定番と餃子を出す直営店。店長に権限を渡し、店ごとに品ぞろえを変える。売上の約92%を占める。
| 数量直営店数(店) | 価格1店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 551 | 1.94 | 1,072 | 90 |
| 10 年後 中立 | 620 | 2.53 | 1,568 | 133 |
取り方:2026年3月期の直営店売上は約1,072億円、直営店数は551店(うち海外2店)。1店あたり売上は割り算で出した。セグメントの営業利益は開示されないため、全社104億円からFC向け食材販売の推定14億円を引いた90億円(利益率約8.4%)と推定した。先の1店あたり売上は、値上げが物価並みに通る一方、客数は人口減とデリバリー需要の一巡で1店あたり少し減るとみて、中立で10年1.30倍(物価1.34倍より低い)に置いた。
FC向け食材販売
フランチャイズ(FC)加盟店に、餃子などの食材を卸す。FC店は177店で、売上の約8%。
| 数量FC店数(店) | 価格1店あたり年間の食材販売額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 177 | 0.55 | 97 | 14 |
| 10 年後 中立 | 170 | 0.73 | 125 | 18 |
取り方:2026年3月期の食材販売売上は約97億円、FC店は177店。1店あたりの販売額は割り算で出した。利益率は開示がなく、食材卸の一般的な水準から約14%と推定した。先の販売額は食材の値上がりと値上げを合わせ、中立で10年1.34倍に置いた。
リスクと懸念
人件費の上昇
ベースアップ(賃金の底上げ)は2025年度に平均8.2%、2026年度も5.9%を予定する。値上げで吸収できなければ、利益率を直接削る。2026年4〜6月の営業利益が前年から半分に落ちたのは、その表れである。
出店が進まない
中期経営計画は国内1000店を掲げるが、直営の店数は過去数年ほとんど動いていない。東日本は店長の養成と立地の確保が壁で、出店が遅れれば利益の伸びは物価分にとどまる。新店は関西の既存店より売れにくい点も重い。
客数の減少と需要の反動
前年の売上は、テレビ番組での露出とデリバリー需要で大きく伸びた。その反動と節約志向で、2026年4〜6月の売上は約5%減り、8月の既存店も客数が1.5%減った。値上げが客数に響く局面が長引くと、単価の伸びだけでは補えなくなる。
競合との客の取り合い
日高屋、大阪王将、餃子の満洲、リンガーハットなど、似た客を取り合う相手が多い。餃子とラーメンの味は、まねされやすい。競合が値下げや新商品で攻めてくれば、値決めの力が弱まる。
固定費の重み
店は人と家賃が固定費の中心で、売上が落ちても減らない。新しいリース会計の基準が2028年3月期から適用され、貸借対照表に家賃の約束が載ると、純現金の見かけはさらに小さくなる。
食材の価格と品質
餃子の主原料である小麦、豚肉、野菜の価格は、円安と天候で動く。食材は自社の工場で作るため、一度品質の問題が起きれば全国の店に広がる。調達の集中が強みであると同時に、弱みにもなる。
資本の戻し方
2025年に約155億円の大型の自社株買いを行い、純現金は331億円から215億円に減った。同じペースの還元は続けられない。今後の配当と自社株買いが、利益の伸びより厚くなりすぎると、出店の原資が細る。
今後の分かれ目
- 直営の店数が3年で50店以上増えたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。東日本の出店が実際に回り始めたと見る。
- 既存店の客数が数か月連続で前年を下回り続けたら
- やや悲観・悲観に重みを移す。値上げが客離れを招いていると見る。
- 営業利益率が8%を割り込み、通期予想が下方修正されたら
- 人件費を吸収できていないと見て、利益率の前提を下げる。
- 新店の1店あたり売上が関西の既存店の7割を超えたら
- 東日本の出店に収益性があると判断し、店数の増加を前向きに見る。
- 大型の自社株買いや増配を再び出したら
- 純現金が減っても、事業に必要な分を超えた現金を返す動きと見る。ただし出店の原資が細らないかを確かめる。
- 他社が買収の提案をしてきたら
- 10年以内のTOBは参考値で約18%ある。提案の価格を、中立の本質価値と比べて判断する。
見ておくもの
- 直営の店数の増減(四半期ごと)と、東日本の出店ペース
- 既存店の客数と客単価(月次)
- 営業利益率と、人件費・原材料費の比率
- 新店の1店あたり売上と、新店の立ち上がり
- 自社株買いと配当の方針、純現金の推移
倍率と資本コストの決め方
店数(実質)×1店あたり売上(名目)で積み上げ、倍率は式の上限の7〜8.5割に置いた。今の株価や過去の倍率から置いてはいない。悲観は稼ぐ力で測り、PBRの床は立てなかった。直営と食材販売の利益の分け方は推定。新リース会計基準で数字の形が変わるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.6→20.02 倍・やや楽観 PER 13.9→19.07 倍・中立 PER 13.1→18.29 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality 0 を足した 7.5%。四つの目安はいずれも普通で、財務の厚さや過去の安定で k を下げない。1000店構想の遅れや人件費の上昇は k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は黒字で傾いておらず上乗せも置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 6.75%。