結論
ヤマナカは名古屋を地盤に、愛知・岐阜・三重で食品スーパーを営む老舗だ。筆者の結論は「割高」で、理由は稼ぐ力の弱さにある。自己資本は 180 億円と厚いのに、営業利益率は過去 12 年で 2% を超えたことがない。
この会社には地元の常連と、店の土地という資産がある。高級業態の「フランテ ロゼ」は名古屋の東部で根強い人気を持ち、電子マネーと優待で地元の客をつなぎ止めている。財務も借金に追い込まれるほど弱くはない。
ただ、まわりの競争は厳しい。東海はバローやアオキスーパー、イオン系の店に加え、食品を安く売るドラッグストアが多い地域だ。ヤマナカの売上は 10 年で 2 割近く減り、2026 年 3 月期の営業利益はほぼゼロだった。
10 年の中立では、客は少しずつ減り、利益率は 1% 前後にとどまる。ROE は 2% 台で、資本コストの 3 分の 1 に届かない。筆者は、厚い自己資本を「価値」ではなく「稼がない資本」と見る。今の値段は帳簿の半分ほどだが、稼ぎから見ればそれでも高い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ヤマナカは「帳簿は厚いが、持ち続けたい事業ではない」会社だ。
オーナーとして見た稼ぎは、ほとんど残らない。年の償却前の利益は 20 億円前後あるが、その大半は店の改装と設備の更新に消える。株主のものになる利益は年に数億円で、それも配当でほぼ配り切っている。
堀は無い。食品スーパーは生活に欠かせないが、だからこそ競合も多い。ヤマナカの客は、近くにより安い店ができれば移る。フランテ ロゼの小さな強みは、会社全体を変えるほど大きくない。
帳簿の自己資本が時価総額の倍近くあることを、安全域と見る人もいるだろう。筆者はそう見ない。資本コストの 3 分の 1 しか稼がない資本は、帳簿どおりの値打ちを持たない。土地を売って株主に返す決断でも無い限り、その資本は店の中に眠ったままだ。
何で稼ぐ会社か
事業は食品スーパーの単業だ。売上 832 億円(2026 年 3 月期)のほとんどを、東海三県に約 60 店ある「ヤマナカ」と高級業態の「フランテ ロゼ」で稼ぐ。
主力のヤマナカは、郊外と住宅地の普段使いの店だ。生鮮と総菜を強みに、近所の主婦と高齢者が毎日のように通う。電子マネーを自社で持ち、ポイントと優待で客を囲う。衣料品や生活雑貨の売場もあったが、18 店で縮小し、食品に売場を回している。
フランテ ロゼは覚王山・八事・白壁という名古屋の高級住宅地に 3 店を構え、輸入食品や質の高い総菜を売る。店の数は少ないが、ほかのスーパーと値段で比べられにくい客を持つ。
稼ぎ方は薄利多売だ。粗利から人件費・家賃・電気代・物流費を引くと、売上の 1% も残らない年が多い。店の多くは自社で土地か建物を持ち、借りる店より家賃は軽いが、その分だけ資本が重い。有利子負債は約 77 億円で、借り換えのたびに金利が上がる。
10 年の稼ぎを左右するのは、店の数より 1 店あたりの客の数と粗利だ。新しい店を大きく増やす余力は乏しく、今ある店をどれだけ食品と総菜に寄せて効率よく回せるかが、利益率の分かれ目になる。
優良さと弱いところ
優良さは低い。食品スーパーは生活に欠かせないので売上は崩れにくいが、ヤマナカにはその安定を利益に変える力が乏しい。
堀、つまり他社がまねできない強みはほとんど無い。フランテ ロゼの客層と地元の知名度は小さな強みだが、店の 9 割以上を占める普段使いの店では、値段と品ぞろえで近くの競合と比べられる。東海はバローやアオキスーパー、マックスバリュ東海に加え、ゲンキーやスギ薬局のような食品を安く売るドラッグストアが多く、値上げは通りにくい。
資本の効率は業界でも最も低い部類に入る。ROE は過去 10 年の中央値で 2.5%、直近は 0.6% だ。同じ領域のライフやバローが 7〜9% を出すのと比べると差は大きい。規模が小さく、仕入れと物流で大手に勝てないことが根にある。
経営は保守的だ。創業家の資産管理会社と取引先の持株会が大株主に並び、外からの圧力は弱い。配当は利益が減っても 1 株あたりの額を保ち、2026 年 3 月期の配当性向は 180% を超えた。株主への姿勢は誠実だが、稼ぐ力を上げる手は遅れている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
食品スーパーの市場は、人口の減少で数量が細っていく。東海三県は全国の中では人口が保たれているが、郊外と地方の住宅地では高齢化と人口減が進む。客数は 10 年で 1 割近く減ると筆者は見る。
値段の側では、物価の上昇が続き、客単価は上がる。ただ、客は値上げに敏感で、買う点数を減らしたり、安い店に移ったりする。売上が増えても客数は減る、という形が業界全体で見られる。
東海の競争は特に厳しい。地元のバローとアオキスーパー、イオン系のマックスバリュ東海が店を増やし、ドラッグストアのゲンキー・スギ薬局・クスリのアオキが食品の売場を広げている。ドラッグストアは薬と化粧品で利益を稼ぎ、食品を安く売れる。中堅の食品スーパーには不利な戦いだ。
費用の側では、人件費と電気代が物価以上に上がる。セルフレジや総菜の工場化で人を減らせる会社と、そうでない会社の差が開く。規模の大きい会社ほど投資の余力がある。
業界は再編の途中にある。全国でアークスやバロー、イオン系による地方チェーンの統合が続いている。ヤマナカのような中堅は、組む相手を選ぶ側から選ばれる側に回りつつある。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、総額で年 1.9 億円ほどだ。2026 年 3 月期は利益が 1 億円しかなく、配当性向は 180% を超えた。2027 年 3 月期も同じ額を予定する。株主優待は 100 株から自社の電子マネーなどを配るが、費用は年 0.2 億円に届かないとみて、還元の額には足していない。
自社株買いはほとんど無い。資本の使い道は店の改装と、衣料品売場から食品への置き換えだ。大きな買収の話は無い。
大株主には創業家の資産管理会社と取引先の持株会が並び、合わせて 4 分の 1 を持つ。安定株主が厚いので、外からの買収や株主提案の圧力は弱い。逆に言えば、東海の再編で大手と組む判断も、経営と創業家が決める。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
帳簿の自己資本は 180 億円あり、今の時価総額の倍近い。店の多くは自社で土地を持ち、名古屋の住宅地という場所の価値もある。仮に事業をやめても、株主に残る値打ちは今の値段に近い。
事業も底を打ちつつある。衣料品の売場を食品と総菜に置き換え、不採算の店を整理している。会社は 2027 年 3 月期に営業利益 5 億円、2028 年 3 月期に 6 億円を見込み、赤字すれすれの状態から抜け出す道筋を示した。
東海の再編も追い風になりうる。大手が地方の中堅を取り込む流れは全国で続き、ヤマナカの土地と常連の客は、組む相手にとって魅力がある。資本業務提携や統合が実現すれば、仕入れと物流の改善で利益率は大きく上がる。
高級業態のフランテ ロゼも見落とせない。名古屋の高級住宅地で値段の比較に巻き込まれない客を持ち、店を少し増やすだけで全社の利益率を押し上げる。物価が上がる中で、質の高い食品に払う客は減っていない。
慎重な見方
過去 12 年、ヤマナカの営業利益率が 2% を超えた年は無い。会社の計画が当たっても利益率は 0.7% にすぎず、資本コストを大きく下回る。厚い自己資本は、稼がない資本が積み上がった結果だ。
競争は厳しくなる一方だ。東海はドラッグストアが食品を安く売る激戦地で、ゲンキーやスギ薬局が店を増やしている。バローやアオキスーパーも価格で攻める。規模の小さいヤマナカは、仕入れと物流で勝てない。客数は 10 年で 2 割近く減った。
土地の値打ちも、売らなければ株主のものにならない。創業家と取引先の持株会が大株主で、土地を売って還元する圧力は弱い。借入は 77 億円あり、金利が上がれば利払いが利益を食う。帳簿の厚さを安全域と見るのは誤りだ。
配当も危うい。2026 年 3 月期の配当性向は 180% を超え、利益の倍近くを配った。利益が戻らなければ、配当を保つために内部の資金を削り、いずれ減配に追い込まれる。株主に誠実な姿勢も、稼ぐ力が無ければ長くは続かない。
どちらに重みを置いたか
帳簿と土地の値打ちという強気の見方の論点は事実だが、それを株主が受け取る道筋が見えない。稼ぐ力の弱さを突く慎重な見方の方が強い。中立は利益率 1% 前後に置き、確率はやや悲観に厚く寄せた。土地の値打ちは悲観の床として数えたが、それでも本質価値は今の時価総額を大きく下回る。再編で組む相手が現れれば楽観が近づくが、それを待つ値段としても今は高い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 293 円56 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 89 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 189 円36 億円、今との差 −63.5%、 期待の年率 −3.0%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 704 円134 億円 | 131 円25 億円 | +61.6% | +4.9% | 67 円13 億円 |
| やや楽観 | 20% | 469 円89 億円 | 116 円22 億円 | +13.1% | +1.2% | 117 円22 億円 |
| 中立 | 38% | 253 円48 億円 | 105 円20 億円 | −30.7% | −3.6% | 136 円26 億円 |
| やや悲観 | 22% | 147 円28 億円 | 47 円9 億円 | −62.4% | −9.3% | 43 円8 億円 |
| 悲観 | 12% | 116 円22 億円 | 42 円8 億円 | −69.5% | −11.2% | 19 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 293 円56 億円 | 89 円17 億円 | −26.2% | −3.0% | 382 円73 億円 |
今の株価時価総額 517 円98 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 東海の再編で組む相手を得て、利益率が業界並みに 利益 11 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 704 円134 億円
東海の食品スーパーの再編が進み、ヤマナカは大手のグループと資本業務提携を結ぶ。仕入れと物流、電子マネーの仕組みを共にし、粗利率と販管費の両方が改善する。
客数は今の水準を保ち、客単価は物価をやや上回って上がる。高級業態のフランテ ロゼが名古屋の東部で客をつかみ、総菜の強化も効く。営業利益率は 1.8% と、業界の中位に近づく。
配当は利益に合わせて増える。借入は少しずつ返し、利払いの重さも和らぐ。それでも ROE は 5% 前後で資本コストには届かず、自己資本の厚さに比べて稼ぎが細い構図は残る 10 年だ。
- 食品スーパー(ヤマナカ・フランテ ロゼ):数量 4,160(来店客数(万人・年、推定))× 価格 0.28(客単価(億円 ÷ 万人、名目))→ 売上 1,165 億円・営業利益 21 億円。来店 4160 万人 × 客単価 2.80 千円、営業利益率 1.8%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 134 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 1.8% は過去 30 年の最良期(2021 年 3 月期 2.1%)に近く、単独では届いていない。大手との提携か統合で仕入れと物流を共にする必要があり、1 割未満にとどめた。
やや楽観 20% 衣料を絞り、食品と総菜に集中して黒字が定着 利益 8 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 469 円89 億円
衣料品の売場を食品と総菜に置き換え、店の生産性が上がる。客数は今の 0.96 倍と少し減るが、客単価は物価をやや上回って上がる。
電子マネーと優待で地元の常連をつなぎ止め、ドラッグストアや大手に客を取られる流れはゆるやかになる。営業利益率は 1.4% と、過去の良い年の水準に戻る。
配当は 1 株あたりの額を少し増やす。借入の利払いは金利の上昇で増えるが、利益の改善がそれを上回る。フランテ ロゼも名古屋の東部で 1〜2 店を足す。ROE は 4% 前後で、まだ資本コストの半分にとどまる 10 年になる。
- 食品スーパー(ヤマナカ・フランテ ロゼ):数量 3,990(来店客数(万人・年、推定))× 価格 0.28(客単価(億円 ÷ 万人、名目))→ 売上 1,101 億円・営業利益 15 億円。来店 3990 万人 × 客単価 2.76 千円、営業利益率 1.4%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 89 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:衣料品売場の縮小や不採算店の整理はすでに始まっている。会社予想の 2028 年 3 月期の営業利益率 0.7% を少し上回る形で、2 割を置いた。
中立 38% 客は少しずつ減り、利益率は 1% に届くかどうか 利益 4 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 253 円48 億円
東海三県の人口はゆるやかに減り、ドラッグストアやディスカウント店が食品を安く売る。ヤマナカの客数は 10 年で 1 割近く減る。客単価は物価並みに上がり、売上は名目で 1 千億円を少し超える。
人件費と電気代は物価以上に上がるが、セルフレジや総菜の工場化で一部を吸収する。営業利益率は 1.0% 前後と、過去の平均より少し良い水準に落ち着く。借入の利払いは、借り換えのたびに増える。
配当は 1 株あたり今の額を保ち、利益の大半を配る。ROE は 2% 台で資本コストの 3 分の 1 にも届かない。土地と店を持つ会社として自己資本は厚いが、それが稼ぎにつながらない 10 年になる。
- 食品スーパー(ヤマナカ・フランテ ロゼ):数量 3,830(来店客数(万人・年、推定))× 価格 0.27(客単価(億円 ÷ 万人、名目))→ 売上 1,042 億円・営業利益 10 億円。来店 3830 万人 × 客単価 2.72 千円、営業利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 48 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 12 年の営業利益率は 0〜2% で、中央は 0.8% 前後だ。人口の減少と競争の厳しさは変わらず、利益率がこの範囲に戻る形を中心に 4 割弱を置いた。
やや悲観 22% 値上げが通らず、赤字すれすれが続く 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 147 円28 億円
ドラッグストアと大手の食品スーパーが近くに店を増やし、ヤマナカの客数は今の 0.85 倍に減る。客単価は物価並みに上がるが、値下げの競争で粗利は削られる。
人件費と電気代の上昇を吸収しきれず、営業利益率は 0.3% と赤字すれすれが続く。借入の利払いが増え、最終損益はわずかな赤字になる。不採算の店を閉じる費用もかさみ、衣料の縮小で空いた売場も埋めきれない。
配当は半分に減らすが、無配にはしない。金利の上昇で借入の利払いも重くなる。株主に残る値打ちは、稼ぐ力よりも、持っている店の土地や建物の値打ちで決まるようになる 10 年だ。
- 食品スーパー(ヤマナカ・フランテ ロゼ):数量 3,540(来店客数(万人・年、推定))× 価格 0.27(客単価(億円 ÷ 万人、名目))→ 売上 949 億円・営業利益 3 億円。来店 3540 万人 × 客単価 2.68 千円、営業利益率 0.3%
倍率:最終損益がわずかな赤字なので PER は当てず、今の自己資本 180.6 億円に PBR 0.155 倍を掛けた。床の資産(自社の店の土地を売った税後から有利子負債を返した残り、約 28 億円)と同じで、市場の値付けは使っていない。営業利益がほぼゼロの年なので EV÷営業利益(30 倍超)は意味が薄く、床の資産で見た。
確率:2023 年 3 月期と 2026 年 3 月期に営業利益はゼロ近くまで落ち、2027 年 3 月期の第 1 四半期も営業赤字だった。今の延長線にある弱い形として 2 割強を置いた。
悲観 12% 大手に客を奪われ、店を減らして縮む 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 116 円22 億円
大手の食品スーパーとドラッグストアの出店が続き、ヤマナカの客数は今の 0.75 倍に落ちる。値下げで対抗しても客は戻らず、店を減らすしかなくなる。
営業赤字が続き、店を閉じるたびに減損が出る。借入の返済のために土地を売り、自己資本は 150 億円まで減る。配当は大きく減らし、優待も縮める。
店の数は 10 年で 2 割ほど減り、残った店も改装の資金が足りない。最後は大手のグループに安い値段で組み込まれる話も出る。株主に残る値打ちは、売れる土地の税後の価値から借入を返した残りだけになる 10 年だ。
- 食品スーパー(ヤマナカ・フランテ ロゼ):数量 3,120(来店客数(万人・年、推定))× 価格 0.26(客単価(億円 ÷ 万人、名目))→ 売上 811 億円・営業利益 −5 億円。来店 3120 万人 × 客単価 2.60 千円、営業利益率 -0.6%
倍率:赤字なので PER は当てず、今の自己資本 180.6 億円に PBR 0.122 倍を掛けた。床の資産(店の土地を売った税後から借入と閉店の費用を引いた約 22 億円)と同じで、市場の値付けは使っていない。
確率:地方の中堅スーパーが大手やドラッグストアに押されて縮むのは、全国でよく見る形だ。過去にも 5 期の最終赤字がある。1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品スーパー(ヤマナカ・フランテ ロゼ)
愛知・岐阜・三重の食品スーパー約 60 店。生鮮・総菜が強み。
| 数量来店客数(万人・年、推定) | 価格客単価(億円 ÷ 万人、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,160 | 0.20 | 832 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3,830 | 0.27 | 1,042 | 10 |
取り方:客数の開示は無いので、売上 832 億円を客単価 2 千円・年 4,160 万人(1 店 1 日約 1,900 人)と推定した。客数は実質の数量、物価は客単価に入れる。
リスクと懸念
ドラッグストアと大手の出店
東海はゲンキー・スギ薬局・クスリのアオキなどのドラッグストアが食品を安く売り、バローやアオキスーパーも店を増やしている。近くに出店されれば、ヤマナカの客は値段で移る。客数は 10 年で 2 割近く減っており、この流れは止まっていない。
人件費と電気代
パートの賃金は最低賃金とともに年 3% を超えて上がり、冷蔵・冷凍の電気代も重い。利益率が 1% に満たない会社では、費用が 1% 上がるだけで利益が消える。セルフレジや総菜の工場化に投じる余力も大手より小さい。
借入と金利
有利子負債は約 77 億円ある。借り換えのたびに金利は上がり、10 年で利払いは年 2 億円ほど増えるとみる。営業利益が数億円の会社には重い負担だ。
稼がない資本
自己資本は 180 億円と厚いが、ROE は 2% 前後にとどまる。店と土地に資本が眠り、株主に戻る道筋が見えない。創業家と取引先の持株会が大株主で、土地を売って還元する圧力は弱い。
配当の持続
2026 年 3 月期の配当性向は 180% を超えた。利益が戻らなければ、配当を保つために内部の資金を削ることになる。いずれ減配に追い込まれる可能性がある。
今後の分かれ目
- 大手の食品スーパーと資本業務提携や統合を発表したら
- 仕入れと物流の改善が見込めるとみて、楽観とやや楽観に重みを移す。
- 営業利益率が 1% を超え、2 期続いたら
- 衣料の縮小と食品への集中が効いたとみて、中立の利益率を上げる。
- 店の土地を売って借入を返したり、還元を増やしたりしたら
- 眠った資本が株主に戻り始めたとみて、悲観の床を上げる。
- 近くにドラッグストアの出店が続き、既存店の客数が年 3% 以上減ったら
- やや悲観の形が近いとみて、重みを移す。
- 減配したら
- 稼ぐ力の弱さが還元に及んだとみて、悲観に重みを移す。
見ておくもの
- 既存店の客数と客単価
- 営業利益率(1% を超えるか)
- 有利子負債と利払い
- 店の新設・閉鎖と土地の売却
- 東海の食品スーパーの再編の動き
倍率と資本コストの決め方
ROE が過去も先も k 8.5% を大きく下回るので、倍率は 1÷k の 12.9 倍を上限に、ROE÷k に合わせて下げた。今の PBR 0.55 倍は使わず、帳簿の自己資本も価値の根拠にしていない。悲観側は店の土地を売った税後から借入を引いた床で置いた。2028 年 3 月期からのリースの計上で数字の形が変わるが、10 年後は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→11.76 倍・やや楽観 PER 10→11.76 倍・中立 PER 9.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.25%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 8.50%。