結論
イズミは広島を本拠に、中国・四国・九州で大型商業施設「ゆめタウン」と食品スーパーを営む地域小売である。連結の店舗は264店。筆者の結論は、10年後の本質価値は今の時価総額とほぼ同じで、割安でも割高でもない、というものだ。
事業の核は食品と、人を集める器としての大型店だ。ゆめタウンは衣料・飲食・専門店を一つの建物に束ね、食品の売上とテナント料を稼ぐ。2024年には西友から九州の「サニー」約70店を引き継ぎ、食品スーパーの足場が一気に広がった。
強みは地域での店の密度と、財務の堅さだ。イオンと正面から競りながら、営業利益率は5%前後を保ってきた。自己資本比率は約49%で、借金の重荷は軽い。弱みは稼ぐ力の天井が低いことだ。直近のROEは6%弱で、資本コストの7.5%に届かない。
会社は2031年2月期に営業利益350億円を掲げる。前の計画は450億円だったが、実績は272億円にとどまった。筆者は、今回も計画どおりには進まないと見る。物価は10年で3割強上がるが、人口が減る西日本の売場は数量が伸びない。伸ばせるのは食品スーパーの店数と、カード・飲食などの周辺事業だ。
中立では、10年後の営業利益は約400億円、純利益は約260億円。ROEは6%台で、資本コストをわずかに下回る。この水準の会社に高い倍率は付けられない。結論として、今の値段は妥当な範囲にある。割安と言い切るには、サニーの黒字化とROEの改善が数字で見える必要がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、イズミは「悪くない会社だが、安く買える会社でもない」と見る。
まず、10年後も事業は残る。食品は毎日の必需で、地域の店は簡単には消えない。堀は広くないが、財務が堅いので悪い年にも耐えられる。
次に、利益の使い道だ。利益の約4割を配当に回し、残りを店とM&Aに使う。問題は、その新しい投資が資本コストを上回るかどうかだ。直近のROEが6%弱ということは、積み上げた自己資本の多くが、資本コストを下回る稼ぎしか生んでいない。価値を増やす鍵は、サニーを含む食品スーパーの利益率を3%近くまで引き上げられるかにある。
安全域は、今の値段にはほぼない。中立の価値は今の時価総額に近い。ただ、悪い方に倒れても、売れる資産の床が今の時価総額の5〜6割はある。堅実さに値段が見合っている、というのが筆者の評価だ。
買い増したくなるのは、ROEが資本コストを超える見通しが立った時か、市場が悲観に傾いて安全域が出た時である。
何で稼ぐ会社か
イズミの稼ぎは、大きく3つに分かれる。
1つ目は大型店だ。ゆめタウン、ゆめテラスなど、衣料・食品・飲食・専門店を一つの建物に集めた店で、広島・岡山・山口・福岡・熊本などの郊外と都市部にある。自分で売る直営売場に加え、入居するテナントの賃料も収益になる。会社は大型店と食品スーパーを分けて開示しないが、筆者は営業利益の約6割をこの大型店が生むと推定している。
2つ目は食品スーパーだ。小商圏向けの「ゆめマート」に、2024年に承継した九州の「サニー」、大分のサンライフ、ゆめマート北九州などが加わる。店数は大型店よりずっと多いが、1店の売上は小さく、利益率は2%前後と薄い。この事業を、今の200店規模から増やすことが第三次中計の柱である。
3つ目は小売周辺事業だ。クレジットカードの「ゆめカード」、ミスタードーナツなどの飲食、公共施設の管理を担うイズミテクノが入る。2026年2月期の営業収益は約540億円、営業利益は60億円。売上の1割弱で、利益の2割強を稼ぐ。ゆめカードは営業利益14億円で、来店客がそのまま会員になる仕組みだ。
仕入れでは、2018年に提携したセブン&アイのセブンプレミアムを置いてきた。会社は2025年に自社ブランド「ゆめイチ」を立ち上げ、セブンプレミアムの取り扱いは2027年2月で終える予定だ。ブランドを自前に切り替え、粗利を自分で取りにいく狙いである。
優良さと弱いところ
イズミは「地域で勝つ堅実な会社」だが、「高収益の会社」ではない。
強みは立地の密度にある。広島を軸に郊外の大型店で人の流れを握り、同じ商圏でイオンと競ってきた。独占ではないが、地域の客はゆめタウンに慣れている。この集客力が、営業利益率5%前後を保たせてきたと筆者は見る。
資本効率は弱い。ROEは2018年2月期の14.7%から、2025年2月期には4.2%まで落ち、直近も6%弱だ。利益が横ばいのまま、自己資本だけが積み上がってきた。前の期はシステム障害とサニー承継の費用も重なった。
財務は堅い。自己資本比率は約49%、営業利益は支払利息の20倍を超える。純有利子負債は自己資本の3割で済む。筆者はここを高く評価する。ただし店舗の一部は賃借で、家賃は毎年必ず払う約束だ。借金の軽さを、見かけどおりには受け取れない。
経営は創業家と生え抜きの二人三脚である。2025年に創業家以外で初めて、町田繁樹氏が社長に就いた。山西泰明氏は会長、山西大輔氏は副社長で、創業家の資産管理会社が約28%を持つ筆頭株主だ。長期で動ける一方、少数株主の声は届きにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
西日本の小売は、人口が減る市場で、店の数と中身を入れ替える競争になっている。
食品の需要は人口とともに細る。中国・四国・九州は全国より高齢化が早く、数量は10年で1割弱減る前提が現実的だ。物価は年3%で上がるので、客単価が名目の売上を支える。ただし人件費や光熱費も同じ速さで上がり、利益率が自然に上がるわけではない。
競争の軸は食品スーパーの再編だ。イオン系のマックスバリュ西日本はフジと統合し、広島に大きな連合が生まれた。九州では西友がサニーを手放し、イズミが受け皿になった。ディスカウント店やドラッグストア、コンビニとの業態を越えた競争も続く。店の密度を作れた会社が、仕入れと自社ブランドで有利に立つ。
大型店は姿を変えている。衣料はネット通販と専門店に流れ、2026年2月期のライフスタイル(衣料など)の既存店売上は前年の約98%だった。食料品は約103%で堅い。大型店が生き残る条件は、食品・飲食・テナントで「毎日来る理由」を作ることだ。
イズミは西日本の地場小売では最大級だが、全国規模のイオンとは体力の差がある。そこで全国型の勝負は避け、地域に密着した食品スーパーの店数を伸ばす道を選んだ。
資本政策と M&A
資本政策は「安定配当と成長投資の両立」である。配当は性向30%以上の累進配当が方針で、直近は約38%だった。2026年3月には1株を3株に分割した。自社株買いは資本構成に応じて行う姿勢で、大型の実績は乏しい。
成長投資の中心はM&Aだ。第三次中計は5年で約550億円を見込み、広島・福岡・熊本・山口に兵庫(播磨)を加えた5エリアで食品の首位を狙う。大分や四国はM&Aを主役にする。食品加工・製パンなど川上も対象にし、2026年10月には担担麺店の運営会社を買収した。
過去のM&Aは、スーパー大栄、ユアーズ、デイリーマート、サンライフなど小粒の積み重ねだ。最大は2024年のサニーで、のれんの償却が当面の利益を押し下げる。九州の食品スーパー3社は2027年3月に統合する予定だ。
筆者がいちばん気にするのは、買う値段と、買った店の利益率である。売上を買うことと、利益を買うことは違う。創業家が筆頭株主なので、買われる側になる可能性は低いと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
イズミは、競合が手を出せない地域の密度をすでに作っている。広島・福岡・熊本・山口に播磨を加えた5エリアに絞って店を重ねれば、物流と仕入れの効率が上がる。食品スーパーは店数が増えるほど、1店当たりのコストが下がる。
2024年に引き継いだサニー約70店は、福岡市内に41店を持つ。九州最大の市場で足場を得た意味は大きい。のれんの償却が終わり、自社ブランド「ゆめイチ」が定着すれば、食品スーパーの利益率は今の2%台から3%台、うまくいけば4%に届く。ゆめマート熊本・北九州・サンライフの統合も、2027年3月に控える。
大型店は新設を抑え、改装で価値を高める。新しい投資を絞るぶん、利益はそのまま株主に残る。ゆめカードの手数料収入は伸びており、飲食も主力業態が堅調だ。周辺事業は利益率が10%を超え、店数に連動して稼ぐ。
物価が3%で上がる世界では、土地と建物を自前で持つ店の価値が目減りしない。借金も軽く、M&Aの資金は自前で出せる。10年で営業利益は550億円を超え、ROEは資本コストを上回りうる。
慎重な見方
会社は前の計画で営業利益450億円を掲げたが、実績は272億円だった。今回の350億円も、同じ癖が出る恐れがある。売上を買うM&Aは、利益を伴わないことが多い。サニーは薄利で、のれんの償却と統合の費用が当面の足を引っ張る。
西日本は人口が減る。食品の数量は10年で1割弱減り、衣料はネット通販と専門店に流れる。ライフスタイルの既存店売上は前年を下回っている。大型店は、新設を抑える方針ゆえに、集客の新陳代謝が止まる心配もある。
競争は厳しい。イオンはフジとマックスバリュ西日本の統合で広島の足場を固めた。全国規模の体力で、値下げ競争になれば、地場のイズミは体力で劣る。ドラッグストアやディスカウント店も、食品の客を奪っている。
ROEは2018年の14%台から、直近は6%弱まで落ちた。自己資本を厚くため込み、使い道が限られている。資本コストを下回るROEでは、利益が伸びても価値は増えない。金利が上がれば、約900億円の純有利子負債の利払いも重くなる。
創業家が約28%を持つ構造は、少数株主に不利な資本配分を許す余地もある。
どちらに重みを置いたか
強い方は、慎重な見方である。強気の筋書きは、食品スーパーの利益率が3%台に乗ることを前提にしているが、前の中計の未達と、サニーの承継費用の重さが、その実現を遠くしている。一方で、財務の堅さと地域の密度は本物で、悲観に寄せすぎるのも筋が悪い。
確率は、中立に38%を置き、やや悲観を26%、悲観を11%と、悲観側に少し厚くした。楽観は6%、やや楽観は19%とした。同じ領域のイオン(悲観12%)よりは財務が堅いので悲観を薄くし、前の計画の未達を理由に楽観を薄くした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,434 円3,014 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 366 円770 億円)。 今の値に割り戻すと 970 円2,040 億円、今との差 +6.4%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,580 円5,424 億円 | 571 円1,200 億円 | +245.5% | +13.2% | 189 円397 億円 |
| やや楽観 | 19% | 1,957 円4,114 億円 | 452 円950 億円 | +164.1% | +10.2% | 458 円962 億円 |
| 中立 | 38% | 1,699 円3,572 億円 | 404 円850 億円 | +130.6% | +8.7% | 799 円1,680 億円 |
| やや悲観 | 26% | 788 円1,656 億円 | 285 円600 億円 | +17.7% | +1.6% | 279 円586 億円 |
| 悲観 | 11% | 517 円1,088 億円 | 167 円350 億円 | −25.0% | −2.8% | 75 円158 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,434 円3,014 億円 | 366 円770 億円 | +97.4% | +7.0% | 1,800 円3,784 億円 |
今の株価時価総額 912 円1,917 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 6% 改装と食品スーパーが当たり、利益率が上がる 利益 373 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 2,580 円5,424 億円
ゆめタウンの改装が当たり、大型店の客数が戻る。食品スーパーでは、サニーで磨いた低コスト運営を既存の「ゆめマート」にも広げ、利益率が4%に近づく。自社ブランド「ゆめイチ」が定着して粗利が厚くなり、九州の食品スーパー3社の統合効果も出る。
M&Aの枠550億円を使い切り、福岡・熊本・広島で食品の首位に近づく。カードや飲食の周辺事業も店数とともに伸び、利益率は13%まで上がる。
営業利益は560億円台に乗る。会社が2036年2月期に掲げる400億円を、物価込みで大きく超える姿だ。それでもROEは8%で、資本コストをわずかに超える程度である。利益が増えても、自己資本も積み上がるためだ。
- 大型店(ゆめタウン等):数量 40.0(大型店の店舗数(店))× 価格 120(1店当たり年間営業収益(億円・名目))→ 売上 4,784 億円・営業利益 263 億円。直営売場の改装が当たり、1店当たりが実質で5%伸びる。利益率5.5%
- 食品スーパー(ゆめマート・サニー等):数量 270(食品スーパーの店舗数(店))× 価格 15(1店当たり年間営業収益(億円・名目))→ 売上 4,008 億円・営業利益 160 億円。サニー・新規SM型が軌道に乗り、利益率4.0%
- 小売周辺・その他(カード・飲食・施設管理等):数量 330(連結店舗数(店)に連動する周辺事業)× 価格 3.29(1店舗当たり周辺事業の営業収益(億円・名目))→ 売上 1,084 億円・営業利益 141 億円。カード・飲食が店数とともに伸び、利益率13%
倍率:事業の純利益 373 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.55 倍、時価総額 5,424 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:食品スーパーの利益率が4%に届き、大型店の改装も当たる必要があり、前の中計の未達の経緯からも成功の型は重ねにくいので、薄く6%。
やや楽観 19% 食品スーパーが育ち、堅実に増益 利益 298 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,957 円4,114 億円
食品スーパーは出店とM&Aで255店に増え、サニーの黒字化が進んで利益率は3%台に乗る。大型店は改装で数量を保ち、1店当たりも実質で小幅に増える。
ゆめカードと飲食は店数とともに伸びる。営業利益は460億円ほどで、会社の2036年2月期の目標400億円を物価込みで上回る。
ROEは6.6%と、資本コストにはなお届かない。自己資本の積み上がりが利益の伸びに追いつくためだ。それでも、食品の必需性と地域の密度は保たれ、「普通に稼ぎ続ける地場の雄」という姿になる。
九州の食品スーパー3社の統合は計画どおり進み、物流と仕入れの重複が減る。人口減による数量の目減りは、物価による客単価の上昇でほぼ打ち消される。
- 大型店(ゆめタウン等):数量 39.0(大型店の店舗数(店))× 価格 115(1店当たり年間営業収益(億円・名目))→ 売上 4,487 億円・営業利益 224 億円。改装で実質1%増。利益率5.0%
- 食品スーパー(ゆめマート・サニー等):数量 255(食品スーパーの店舗数(店))× 価格 14(1店当たり年間営業収益(億円・名目))→ 売上 3,677 億円・営業利益 121 億円。店数を増やし、利益率3.3%
- 小売周辺・その他(カード・飲食・施設管理等):数量 295(連結店舗数(店)に連動する周辺事業)× 価格 3.14(1店舗当たり周辺事業の営業収益(億円・名目))→ 売上 925 億円・営業利益 111 億円。利益率12%
倍率:事業の純利益 298 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 4,114 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:食品スーパーの店数増と周辺事業の伸びで、会社の計画(350億円)に近い増益は十分ありうる。財務の堅さと地域の密度が下支えするので、やや厚く19%。
中立 38% 中立:人口減の中で店数と物価で増える 利益 259 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,699 円3,572 億円
西日本の人口は減り、大型店の数量は伸びない。ゆめタウンは新設を抑え、改装で客数を守るが、衣料の弱さは残る。店数は38へ微減し、1店当たりは実質で2%ほど減る。
食品スーパーは、M&Aと出店で245店まで増える。ただサニーの黒字化は遅れ、利益率は3%に届かず2.8%にとどまる。周辺事業は店数に連動して堅実に伸びる。
営業利益は約400億円。会社の2036年2月期の目標と同水準だが、物価で名目は4割ほど増えるので、実質ではほぼ横ばいである。ROEは6%台で、資本コストをわずかに下回る。会社は「普通の地方小売」として落ち着く。
- 大型店(ゆめタウン等):数量 38.0(大型店の店舗数(店))× 価格 112(1店当たり年間営業収益(億円・名目))→ 売上 4,242 億円・営業利益 204 億円。店は38へ微減、1店当たりは実質2%減。利益率4.8%
- 食品スーパー(ゆめマート・サニー等):数量 245(食品スーパーの店舗数(店))× 価格 15(1店当たり年間営業収益(億円・名目))→ 売上 3,568 億円・営業利益 100 億円。M&Aと出店で245店、利益率2.8%
- 小売周辺・その他(カード・飲食・施設管理等):数量 285(連結店舗数(店)に連動する周辺事業)× 価格 2.99(1店舗当たり周辺事業の営業収益(億円・名目))→ 売上 851 億円・営業利益 98 億円。店数に連動、利益率11.5%
倍率:事業の純利益 259 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 3,572 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:食品スーパーの店数増と物価で利益は名目では増えるが、人口減で数量は伸びず、前の中計の未達の型も残る。2人の主張の落としどころとして中心に38%を置いた。
やや悲観 26% 競争で大型店が細り、利益率が下がる 利益 156 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 788 円1,656 億円
イオン・フジ連合との値下げ競争が福岡・熊本まで広がり、食品スーパーの利益率が2%まで下がる。サニーの承継は黒字化したものの、値引きで利益が吸われる。
大型店は、衣料の客離れで34店まで閉店と縮小が進み、直営売場の利益率は3.5%に下がる。賃借の店は、売上が落ちても家賃が残る。
M&Aの枠は使うが、買った店は期待を下回り、のれんの一部を減らす。営業利益は260億円ほどで、物価で名目が増えても、今とほぼ変わらない。ROEは4%まで下がる。
配当は性向を保つので、利益の減りとともに還元の額も小さくなる。財務は堅いまま、成長しない会社として評価は低くなる。
- 大型店(ゆめタウン等):数量 34.0(大型店の店舗数(店))× 価格 106(1店当たり年間営業収益(億円・名目))→ 売上 3,602 億円・営業利益 126 億円。閉店と客数減で34店、利益率3.5%
- 食品スーパー(ゆめマート・サニー等):数量 215(食品スーパーの店舗数(店))× 価格 14(1店当たり年間営業収益(億円・名目))→ 売上 2,948 億円・営業利益 59 億円。215店、値引き競争で利益率2.0%
- 小売周辺・その他(カード・飲食・施設管理等):数量 245(連結店舗数(店)に連動する周辺事業)× 価格 2.90(1店舗当たり周辺事業の営業収益(億円・名目))→ 売上 710 億円・営業利益 71 億円。利益率10%
倍率:ROE 4.0%(純利益156億円÷自己資本3,890億円)で資本コストを大きく下回る。ためた利益は額面より小さい価値しかなく、成長しても価値が増えないので、上限の1÷k=13.3倍を引き上げず、約75%の10.0倍に置いた。PBRは約0.40倍で、中立の約0.70倍を下回る。
確率:イオン系との競争、人口減、衣料の弱さが重なって、利益率が数年かけて下がる筋書き。前の中計の未達の経緯と、サニーの薄利を考えて、悲観側に少し厚い26%。
悲観 11% 構造的に稼ぐ力を失う 利益 −120 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 517 円1,088 億円
西日本の人口減と、ネット通販・ディスカウント・ドラッグストアの攻勢で、大型店の客数が細り、28店まで閉店と縮小が進む。家賃・人件費は売上ほど落ちず、利益はほぼ消える。
食品スーパーでは値引き競争で利益率が0.5%になり、サニーを含むM&Aで積んだのれんを大きく減損する。カードは貸倒れが増え、周辺事業の利益も落ちる。
財務が堅いので倒れはしないが、資産の切り売りで資本を守る展開になる。それでも、土地と建物という資産は残り、再編や売却で別の形の価値が引き出される余地は残る。
創業家が筆頭株主なので、他社への身売りよりは、不採算店の閉鎖と資産の売却による延命が現実的な道になる。
- 大型店(ゆめタウン等):数量 28.0(大型店の店舗数(店))× 価格 100(1店当たり年間営業収益(億円・名目))→ 売上 2,807 億円・営業利益 14 億円。28店まで縮み、家賃・人件費が残って利益率0.5%
- 食品スーパー(ゆめマート・サニー等):数量 190(食品スーパーの店舗数(店))× 価格 13(1店当たり年間営業収益(億円・名目))→ 売上 2,498 億円・営業利益 13 億円。190店、値下げ競争で利益率0.5%
- 小売周辺・その他(カード・飲食・施設管理等):数量 215(連結店舗数(店)に連動する周辺事業)× 価格 2.69(1店舗当たり周辺事業の営業収益(億円・名目))→ 売上 578 億円・営業利益 35 億円。カードの貸倒れと飲食の不振で利益率6%
倍率:ROEが資本コストを大きく下回り、純利益も赤字で、稼ぐ力では測れない。売れる資産の税後から有利子負債を引いた約1,100億円(floor_assets_oku)を床とし、今の自己資本2,940億円に対するPBR 0.37倍で置いた。営業利益は61億円と小さく、EV÷営業利益は(1,088億円+純有利子負債904億円)÷61億円で約33倍と高く出るが、谷の一年の利益で測る数字ではなく、資産の床で測った。
確率:人口減と競合の攻勢が重なり、大型店・食品スーパーの両方で利益が消える筋書き。財務が堅く、不動産も持つので、致命的にはならないが、10年では起きうるので11%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
大型店(ゆめタウン等)
ゆめタウン・ゆめテラスなど、衣料・食品・飲食・専門店を一つの建物に集めた大型商業施設。直営売場の売上とテナント賃料が収益。
| 数量大型店の店舗数(店) | 価格1店当たり年間営業収益(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 40.0 | 85 | 3,400 | 164 |
| 10 年後 中立 | 38.0 | 112 | 4,242 | 204 |
取り方:会社は大型店と食品スーパーを分けて開示しない。小売事業の営業収益5,510億円・営業利益208億円を、大型店約40店と食品スーパー約200店に分けた推定。大型店は1店85億円(テナント込み)、利益は小売利益の約8割と置いた。
食品スーパー(ゆめマート・サニー等)
小商圏の食品スーパー。ゆめマート、2024年に西友から承継したサニー、サンライフ、ゆめマート北九州など。
| 数量食品スーパーの店舗数(店) | 価格1店当たり年間営業収益(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 200 | 11 | 2,110 | 44 |
| 10 年後 中立 | 245 | 15 | 3,568 | 100 |
取り方:小売事業の営業収益5,510億円から大型店の推定3,400億円を引いた約2,110億円を、約200店で割った推定。サニー約70店の承継費用とのれん償却を含む利益で、利益率は約2%。
小売周辺・その他(カード・飲食・施設管理等)
ゆめカード(クレジット)、ミスタードーナツなどの飲食、指定管理施設を担うイズミテクノ、卸など。店舗網に付いてくる周辺事業。
| 数量連結店舗数(店)に連動する周辺事業 | 価格1店舗当たり周辺事業の営業収益(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 264 | 2.23 | 589 | 62 |
| 10 年後 中立 | 285 | 2.99 | 851 | 98 |
取り方:小売周辺事業539億円とその他49.5億円の合計588.5億円を、連結店舗数264店で割った。利益は小売周辺の60億円にその他の分を足した推定。
リスクと懸念
計画未達の癖
前の第二次中計は2026年2月期に営業利益450億円を掲げたが、実績は272億円だった。第三次の350億円も、M&Aの上積みを前提にしている。過去の計画の当たり外れを割り引いて見る必要がある。
サニー承継の消化
サニー約70店は薄利の店が多く、のれんの償却と初期費用が当面の利益を押し下げる。九州の食品スーパー3社の統合(2027年3月予定)で重複を省けるかが、利益率の鍵になる。
イオンとの競争
中国・四国・九州は、イオン・フジの連合とのシェア争いが続く。値下げ競争になれば、体力で劣るイズミの粗利が先に削られる。ディスカウント店やドラッグストアも食品の客を奪う。
人口減と大型店の老朽化
西日本は人口が減り、食品の数量は10年で1割弱減る見込みだ。ゆめタウンは新設を抑え改装で支える方針だが、衣料の既存店売上は前年割れで、改装投資が稼ぎに結びつかない恐れがある。
金利上昇と家賃の固定費
純有利子負債は約900億円で、借り換えのたびに利払いが増える。店舗の一部は賃借で、家賃は売上が落ちても減らない。2028年2月期から新リース会計基準で、賃借が貸借対照表に載り自己資本比率が下がる。
創業家支配と資本配分
創業家の資産管理会社が約28%を持つ筆頭株主だ。長期の経営ができる反面、資本効率の改善が遅れても外から迫る力が弱い。ROE6%の目標も控えめで、還元の強化は成果が見えてからとされる。
今後の分かれ目
- サニーを含む食品スーパーの営業利益率が3%台に乗ったら
- 稼ぐ力の改善が確認でき、中立とやや楽観の確率を上げる。
- 第三次中計の1〜2年目に営業利益が計画を継続して下回ったら
- 前の中計と同じ未達の型とみて、やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- M&Aで高い値段を払い、のれんの減損が出たら
- 資本配分の規律に疑いが出るので、悲観側に重みを移す。
- ROEが資本コストを超える水準へ上がる見通しが立ったら
- 倍率の上限が上がるので、中立の倍率を引き上げて見直す。
- イオン系との値下げ競争が福岡・熊本で激しくなったら
- 食品スーパーの利益率を下げ、やや悲観側に寄せる。
- 創業家以外の株主への還元が強化されたら
- 資本配分への懸念が和らぎ、中立の倍率を上げる余地が出る。
見ておくもの
- 食品スーパー(サニー・ゆめマート)の営業利益率と既存店売上
- 九州食品スーパー3社の統合(2027年3月)の進み具合
- 第三次中計(2031年2月期に営業利益350億円・ROE6%)の進捗
- M&Aの金額と買った会社の利益率、のれんの動き
- 配当性向・自社株買いの方針変更とROEの推移
倍率と資本コストの決め方
大型店・食品スーパーは店数×1店当たり営業収益(名目)、周辺事業は連結店舗数×1店当たりで積み、利益率は物価で動かさなかった。大型店と食品スーパーの分け方は開示が無いため推定で、小売事業の合計に合わせた。自己資本は今の値に純利益を足して還元を引いて流し、ROEは結果として出した。中立のROEが資本コスト以下なので、正当化PERの上限は1÷k(約13.3倍)で、利益の質(薄利・のれん・前の中計の未達)を見て上限の約86%に置いた。悲観は市場の倍率や過去の底ではなく、売れる資産の税後から有利子負債を引いた床で置いた。新リース会計基準で2028年2月期から営業利益は少し増え、純有利子負債と自己資本比率の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ家賃を費用に入れた形でそろえた。今の株価に寄せていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→14.55 倍・やや楽観 PER 12→13.79 倍・中立 PER 11.5→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本の7.5%に quality 0を足して7.5%。事業は黒字で傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。ガバナンスや M&A の実行の個別リスクは k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。同じ領域のイオン(quality +0.2%)より財務が堅く、H2O(+0.5%)より食品の比率が高いので、やや低く置いた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.25%。