結論
ヒマラヤは、岐阜に本社を置く全国101店のスポーツ用品の大型店チェーンだ。ゴルフ、アウトドア、シューズなどを幅広く売る。筆者は、今の値段を割高と見る。純資産より安く見えても、それは稼ぐ力の弱さを映した値段にすぎない。
売上は600億円あるのに、営業利益は3億円にとどまる。営業利益率は0.5%で、過去の最良でも3.5%だ。2025年8月期の純利益は、ほぼゼロだった。
今期も立て直しは遅い。暖冬で冬物の在庫処分が膨らみ、第3四半期までの営業利益は半分に減った。中期経営計画は売上690億円、経常利益30億円から、620億円・5億円へ取り下げた。
資産は厚い。純資産は163億円で、自己資本比率は47%。ただ、そのうち商品が162億円、つまり売上の3か月分以上を占める。在庫が重く、借入も48億円ある。
筆者がいちばん見ているのは、在庫を減らして利益率を戻せるかだ。店は減らず、家賃も固定のまま、利益が薄い構造は変わっていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この事業に魅力は乏しい。売上600億円で営業利益が3億円では、投下した資本に対する稼ぎが小さすぎる。純資産163億円は見かけの厚みで、中身の6割近くが在庫だ。
在庫は帳簿の価値どおりには売れない。型落ちやシーズン外の品は、値引きしないと動かない。しかも、仕入れ先への支払いが先に出る。筆者は、帳簿の純資産を安全域と見ない。
店は借り物が多く、家賃は固定の約束だ。客が減っても家賃は減らない。差入保証金が約29億円あり、貸主の事情で戻らない恐れも残る。
今の値段は純資産の6割台だが、稼ぐ力に対しては高い。利益が戻る前提でも、営業利益率が2%台に届くかどうかだ。筆者は、割安とは見ない。
待つなら、冬物の在庫処分が終わり、利益率が谷から戻った場面だろう。
経営者が株を持つ点は安心材料だが、利益が出ない限り評価は変わらない。
何で稼ぐ会社か
事業は、郊外の大型店で売るスポーツ用品の小売りだ。店は2025年8月期末で101店、売場面積は約22万平方メートルある。岐阜・愛知が各10店で最も多く、山口9店、福岡8店と西日本にも広がる。
商品は幅広い。2025年8月期の売上の6割強がシューズ・ウェア・用具などの一般スポーツで、ゴルフが17%、アウトドアが14%、スキー・スノーボードが5%だ。気温に左右される品が多い。
通販も柱の一つだ。本部の売上のうち、ネット通販を含む部分は約147億円で、全体の4分の1ほどある。ネット通販の専用の物流センターを整え、将来は売上300億円の体制を目指す。
独自商品(プライベートブランド)も育てている。ゴルフなどで自社の名で売り、粗利を高める狙いだ。ただ、中計で掲げた比率の目標は、まだ道半ばである。
従業員は連結で721人、パートなどの臨時従業員が年平均で約1,400人いる。店の運営は人手が多く、人件費の上昇が利益を削る。
出店の中心は郊外の幹線道路沿いで、駐車場の広い大型店だ。家族連れが車で来て、複数の売り場をまとめて見られる点が売りになる。
優良さと弱いところ
強みは、品ぞろえの幅と、郊外の大型店だ。スポーツの専門店と、ホームセンターやディスカウントの中間のような位置に立つ。ゴルフからアウトドア、学校用品までそろえ、家族連れを呼べる。
しかし、堀とは呼べない。ネット通販や専門店、ブランドの直営店が同じ商品を並べ、値段は簡単に比べられる。同社は在庫の整理で粗利率を落とした経緯があり、値決めの力は弱い。
利益率は低いまま長く推移した。過去12年の営業利益率は、最良の2022年8月期で3.5%、赤字の年もあった。2024年と2025年は0.5%まで落ちている。
在庫の重さも弱点だ。商品が162億円と売上の約27%を占め、売れ残れば値引きで粗利を削る。アウトドアの流行の変化で、在庫整理に追われた年もあった。
経営は2021年に創業者一族の資産管理会社が、三菱商事の持分を引き受けた。いまの社長は小田学氏で、構造改革の途上にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
スポーツ用品の小売りは、人口減少とネット通販で苦しい。国内は店舗が飽和し、会社自身が「オーバーストア」と認める。物価高で消費者は財布のひもが固く、ゴルフやアウトドアの勢いも鈍った。
天候の影響が大きい業種だ。暖冬の年はスキーや防寒の売上が落ち、在庫処分が増える。2026年8月期は暖冬の影響で、粗利率が前期に届かなかった。
競合は多い。ゴルフ専門店、アウトドアの専門店、ホームセンター、ネット通販の大手、メーカーの直営店が、同じ客を取り合う。ネット通販では、価格比較が簡単にでき、店の優位は薄れる。
追い風もある。健康志向でランニングやウォーキングの需要は底堅く、学校の部活動や地域のスポーツ参加は続く。大型店が体験の場として価値を持つ可能性は残る。
人手の面では、最低賃金の上昇とパートの確保難が重い。店の運営費は年3〜5%上がり、売上の伸びがそれに追いつかなければ利益は消える。
学校や地域のスポーツ用品の需要は、人口減で少しずつ細る。一方で、中高年のゴルフやウォーキングは底堅い。
小売り全体で賃上げが続き、人手の取り合いも激しい。
資本政策と M&A
配当は年の配当総額は3億円強で、中間と期末に分けて払う。2026年8月期の予想も同額で、利益が薄くても維持する方針に見える。自社株買いは小規模にとどまる。株主優待は100株以上に値引券を年2回出すが、費用の開示は確認できず、売上に比べれば小さいと見る。
投資は年10億円規模で、新店3店と改装2店が中心だった。2025年8月期は減損など4億円の特別損失を出し、投資有価証券の売却益1.4億円で一部を埋めた。
借入は48億円ほどで、変動金利のものを含む。金利が上がれば利払いが増える。現預金は37億円あり、純有利子負債は12億円。純現金ではなく、余った現金として分けられない。
中計は2025年10月に取り下げ、主力7店の大規模改装とネット通販の利益率改善を優先する方針に変えた。
創業者一族が合計で15%台を持つとされる。TOBや非公開化の公表はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
値段は純資産の6割台で、資産の厚みに比べて安い。自己資本比率は47%、借入も純有利子負債12億円にとどまり、倒れる心配は小さい。店の7店を大規模改装し、売り場を強化すれば、既存店の収益は上がる。
ネット通販は売上の4分の1を占め、専用の物流センターで効率が上がる。利益率の改善を優先する方針に変え、規模を追う無理を止めた。独自商品の比率が上がれば、粗利率は2ポイント上がる余地がある。
今期の不振は、暖冬という天候の一時要因が大きい。冬物の在庫処分が終われば、来期は営業利益が4億円台に戻る。過去には営業利益20億円を稼いだ年もあり、体制が整えば3%台に戻れる。
配当は3%程度の利回りを保ち、持ち続ける間の安心材料になる。創業者一族が株を持ち、経営の安定にも寄与する。
株価が純資産を下回る水準にあるため、利益が少し戻るだけでも見直しの余地は大きい。財務に余裕があり、改装の投資を続けられる点も強みになる。
慎重な見方
稼ぐ力が足りない。営業利益率は2年続けて0.5%で、純利益はほぼゼロだ。中期経営計画は経常利益30億円から5億円へ、6分の1に取り下げた。目標が現実から離れていた証拠だ。
在庫が162億円と重い。売れ残れば値引きで粗利が削られ、帳簿の純資産も実質は目減りする。ゴルフやアウトドアの流行が変われば、在庫整理が再び必要になる。
店は100店規模でオーバーストア、家賃は固定、人件費は上がる。ネット通販は価格比較に晒され、利益を出しにくい。第3四半期までの営業利益は半分に減り、通期の4億円も達成は難しい。
借入は変動金利を含み、金利が上がれば利益を食う。純資産に対する値段の低さは、市場がこの弱さを見抜いている印と見るべきだ。
純資産の中身は在庫が大半で、売れなければ価値が減る。利益が戻らないまま時間が過ぎれば、配当の維持も難しくなる。
中期計画の取り下げが続けば、経営への信頼も傷つく。ネット通販も、物流費をかけて売るほど利益が薄くなりやすい。
どちらに重みを置いたか
資産の厚さは確かだが、利益が薄い構造のまま変わっていない点が重い。強気が指す改装やネット通販の効率化は、会社が数年前から掲げてきた施策で、結果が伴っていない。
確率は中立を最も厚くしつつ、やや悲観を3割近くに寄せた。悲観は、在庫の傷みと赤字の長期化が重なる筋書きとして1割強に置いた。
見るのは、在庫と粗利率の動きだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/08 期)
確率で加重した株価時価総額 927 円114 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 245 円30 億円)。 今の値に割り戻すと 551 円67 億円、今との差 −35.5%、 期待の年率 +3.2%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,339 円286 億円 | 535 円66 億円 | +236.6% | +12.9% | 172 円21 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,507 円184 億円 | 380 円47 億円 | +120.9% | +8.2% | 340 円42 億円 |
| 中立 | 36% | 935 円114 億円 | 261 円32 億円 | +40.1% | +3.4% | 431 円53 億円 |
| やや悲観 | 28% | 480 円59 億円 | 132 円16 億円 | −28.3% | −3.3% | 172 円21 億円 |
| 悲観 | 12% | 373 円46 億円 | 114 円14 億円 | −42.9% | −5.4% | 59 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 927 円114 億円 | 245 円30 億円 | +37.3% | +3.2% | 1,173 円144 億円 |
今の株価時価総額 854 円105 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 改装とネット通販の効率化が実り、利益率が4%に戻る 利益 24 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,339 円286 億円
主力店の大規模改装が当たり、既存店の売上が伸びる。独自商品の比率が上がり、粗利率が2ポイント改善する。ネット通販は専用の物流センターで効率が上がり、赤字の出荷が減る。
営業利益率は4%に戻り、売上は1,000億円近くになる。在庫の回転が早まり、借入は返す。配当は性向5割に向けて増える。
店は230千平方メートルに増えるが、家賃の負担は売上の伸びで吸収する。人件費の上昇も、省人化で抑えられる。
新店を増やさず、既存の店の質を高めることで、設備投資の負担も抑えられる。
数量は売場面積とネット通販の件数、価格は物価の1.34倍を入れた。
- 実店舗(大型スポーツ用品店):数量 230(売場面積(千平方メートル))× 価格 2.79(売場1千平方メートルあたりの売上(億円・名目))→ 売上 642 億円・営業利益 26 億円
- ネット通販・本部:数量 280(ネット通販の出荷件数(万件・推定))× 価格 1.20(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 336 億円・営業利益 13 億円
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.83 倍、時価総額 286 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改装と独自商品、ネット通販の利益改善がすべて実り、過去の最高を超える姿。営業利益率が2年続けて0.5%の現実から、1割未満にとどめた。
やや楽観 18% 在庫を整理し、利益率は3%まで戻る 利益 17 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,507 円184 億円
冬物の在庫処分が終わり、粗利率が戻る。主力店の改装で既存店が持ち直し、売場面積は220千平方メートルで落ち着く。ネット通販は利益率を優先し、緩やかに伸びる。
営業利益率は3%で、過去の山に並ぶ。売上は900億円ほど。配当は性向5割で、借入は少しずつ減る。
独自商品の比率が上がり、粗利率が改善する。ただ、競合の安売りが続くため、過去の最高を超えるまでには至らない。
暖冬のような一時の要因が消えれば、利益は着実に戻る。ただ、大きな跳ね上がりは見込まない。
数量は売場面積とネット通販の件数、価格は物価の1.34倍を入れた。
- 実店舗(大型スポーツ用品店):数量 220(売場面積(千平方メートル))× 価格 2.75(売場1千平方メートルあたりの売上(億円・名目))→ 売上 605 億円・営業利益 18 億円
- ネット通販・本部:数量 245(ネット通販の出荷件数(万件・推定))× 価格 1.18(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 289 億円・営業利益 9 億円
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 184 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:暖冬の影響が薄れ、在庫の正常化が進む姿。過去にも3%台を記録した実績があるので、実績に近い上振れとして2割弱に置いた。
中立 36% 売上は物価並みに伸びるが、利益率は2%にとどまる 利益 10 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 935 円114 億円
売上は830億円ほどになる。店は215千平方メートルとやや縮み、1平方メートルあたりの売上は物価でほぼ上がる。ネット通販は件数が3割増え、利益率を重視して伸ばす。
営業利益率は2%で、直近の0.5%よりは改善するが、過去の最高には届かない。人件費と家賃は物価で上がり、値上げで取り返すのが精いっぱいだ。在庫は重いままで、天候による振れは続く。
配当は年3億円規模を維持する。借入は変動金利で、利払いがじわりと重くなる。
店と在庫の構造が変わらない以上、劇的な改善も悪化も起きにくい。これが最もあり得る姿だ。
数量は売場面積とネット通販の件数、価格は物価の1.34倍を入れた。
- 実店舗(大型スポーツ用品店):数量 215(売場面積(千平方メートル))× 価格 2.71(売場1千平方メートルあたりの売上(億円・名目))→ 売上 582 億円・営業利益 12 億円
- ネット通販・本部:数量 215(ネット通販の出荷件数(万件・推定))× 価格 1.17(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 251 億円・営業利益 5 億円
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 114 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物価の分だけ売上は伸びるが、店の飽和と家賃・人件費の上昇で利益率は低いまま。過去の営業利益率の中央値に近い水準を置いた。最も確からしい姿として最大の確率にした。
やや悲観 28% 家賃と人件費に押され、利益率は1%まで下がる 利益 4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 480 円59 億円
ネット通販と専門店に客を奪われ、実店舗の売上は物価に追いつかない。店は200千平方メートルまで縮み、閉店の費用と減損が続く。
営業利益率は1%に下がる。家賃は固定のまま残り、売上が落ちても減らない。在庫の傷みで粗利率はさらに削られ、売上は720億円ほどにとどまる。
配当は維持するが、利益は配当に届かない年が出る。借入の金利負担も重くなり、財務の余裕は薄れる。
売上の減少を値引きで補おうとすると、粗利率がさらに下がる悪循環に入る。
数量は売場面積とネット通販の件数、価格は物価の1.34倍を入れた。
- 実店舗(大型スポーツ用品店):数量 200(売場面積(千平方メートル))× 価格 2.55(売場1千平方メートルあたりの売上(億円・名目))→ 売上 510 億円・営業利益 5 億円
- ネット通販・本部:数量 190(ネット通販の出荷件数(万件・推定))× 価格 1.10(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 209 億円・営業利益 2 億円
倍率:事業のROEは資本コストを大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)より、継続企業としての売れる資産の税後が上回るため、今の自己資本に0.36倍を掛けた。
確率:オーバーストアと物価高で売上が伸びず、費用の上昇に押される姿。直近の営業利益率が0.5%まで落ちている事実から、3割近くに置いた。
悲観 12% 在庫の傷みと赤字が続き、店を畳む 利益 −8 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 373 円46 億円
ネット通販と専門店に客を奪われ、実店舗の売上が縮む。店は170千平方メートルまで減り、閉店と減損の費用がかさむ。ネット通販も価格競争で利益が出ない。
在庫は売れ残り、大幅な値引きで粗利率が崩れる。営業利益率は赤字になる。家賃は固定で、閉店しても違約金や保証金の未回収が残る。
配当は減らさざるを得ない。借入の返済が重く、純資産は削られる。それでも会社は存続するが、規模を大きく縮める。
最終的には店の整理が進み、規模は小さくても黒字の体質へ作り直す段階になる。
数量は売場面積とネット通販の件数、価格は物価の1.34倍を入れた。
- 実店舗(大型スポーツ用品店):数量 170(売場面積(千平方メートル))× 価格 2.35(売場1千平方メートルあたりの売上(億円・名目))→ 売上 400 億円・営業利益 −6 億円
- ネット通販・本部:数量 150(ネット通販の出荷件数(万件・推定))× 価格 1.00(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 150 億円・営業利益 −2 億円
倍率:事業は赤字で、稼ぐ力では床を測れない。売れる資産の税後から負債を引いた額を床とみて、今の自己資本に0.28倍を掛けた。
確率:在庫の評価損と赤字の長期化、家賃の固定費が重なる構造的な負け。会社が計画を取り下げた経緯を踏まえ、1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
実店舗(大型スポーツ用品店)
全国の郊外の大型店で、一般スポーツ・ゴルフ・アウトドア・ウインター用品を売る。
| 数量売場面積(千平方メートル) | 価格売場1千平方メートルあたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 220 | 2.08 | 457 | 2 |
| 10 年後 中立 | 215 | 2.71 | 582 | 12 |
取り方:売上457.3億円は2025年8月期の店舗の売上(総合レジャー399.7億円、専門33.0億円、その他の店舗約24.6億円の合計)。売場面積219,506平方メートルは同期末の開示。営業利益は全社2.85億円を売上で割り振った推定値。
ネット通販・本部
自社のネット通販と、本部の売上。専用の物流センターで出荷する。
| 数量ネット通販の出荷件数(万件・推定) | 価格1件あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 164 | 0.90 | 147 | 1 |
| 10 年後 中立 | 215 | 1.17 | 251 | 5 |
取り方:売上147.2億円は2025年8月期の本部区分の売上。件数は開示がなく、1件あたり約0.9万円と置いた推定(164万件)。営業利益は全社を売上で割り振った推定値。
リスクと懸念
在庫の重さと傷み
商品が162億円と売上の約27%を占める。冬物やアウトドアなど流行と天候に左右される品が多く、売れ残れば値引きで粗利を削る。暖冬の今期も在庫処分が利益を圧迫した。
薄利と費用の上昇
営業利益率は0.5%まで落ちた。最低賃金の上昇とパートの確保難で、店の運営費は年3〜5%上がる。少しの費用増で利益が消える。
家賃という固定の約束
店は賃借が中心と見られ、差入保証金は約29億円ある。家賃は売上が落ちても減らず、貸主の事情で保証金が戻らない恐れもある。新リース会計の適用で負債は見かけ上増える。
ネット通販との競争
価格比較が簡単で、専門店やメーカー直営とも競合する。ネット通販の物流費と値引きが利益を削り、利益率の改善を優先する方針と規模の拡大が両立しにくい。
中計の未達と信頼
中期経営計画は経常利益30億円から5億円へ取り下げた。2023年8月期も計画の24億円に対し実績は11億円だった。計画に対する信頼が揺らいでいる。
変動金利の借入
借入は48億円ほどで、変動金利を含む。金利が上がれば利払いが増える。在庫が重く、運転資金を借入に頼る体質である。
今後の分かれ目
- 冬物の在庫処分が終わり、粗利率が前の期の水準に戻ったら
- 営業利益率2%超の筋書きに近づく。やや楽観の確率を上げる。
- 主力7店の改装後、既存店の売上が前年を上回り続けたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 商品の在庫が売上の3割を超えて増えたら
- 値引きと評価損の恐れが強まる。やや悲観の確率を上げる。
- 営業赤字が2年続いたら
- 悲観の筋書きに近づく。配当の維持と店舗の閉鎖計画を点検する。
- 金利が上がり、変動金利の借入の利払いが増えたら
- 純利益を削る。借入の返済ペースを見る。
見ておくもの
- 四半期の粗利率と商品在庫の金額
- 既存店売上と主力7店の改装後の動き
- ネット通販の売上と利益率
- 営業利益率(会社予想は今期0.7%)
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。ROEが資本コストを下回る筋書きは、PERの上限が1÷kなので、その7〜8割に置いた。今のPERや純資産倍率(PBR)は使っていない。数量は売場面積とネット通販の件数、価格は1平方メートルまたは1件あたりの売上で、物価の1.34倍は価格にだけ入れた。ネット通販の件数は推定である。償却は物価では増やしていない。リースは新リース会計(2028年8月期ごろ)で負債が見かけ上増えるが、数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.64→11.83 倍・やや楽観 PER 9.44→11.11 倍・中立 PER 8.33→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。