結論
丸井グループは、いまやカード会社である。稼ぎの 8 割はエポスカードが生み、百貨店の流れをくむ店は、若い客にカードを作ってもらう入口として働く。筆者の見立ては、事業の質は高いが、金利が上がる世界では利益の伸びが鈍り、今の値段はその先まで織り込みすぎている、というものだ。
稼ぎ方は単純だ。会員がカードを使うたびに加盟店から手数料が入り、分割・リボ払いには利息が付く。家賃や公共料金の定期払いまで取り込み、年間の取扱高は約 5 兆円になった。この 5 期は増収増益が続いている。
弱みは元手にある。貸し出しは借金で賄い、その借金は約 7,100 億円で貸出残高の 9 割に当たる。調達金利が 1% 台から 3.5% 前後へ上がると、利払いが営業利益を食う。値上げで一部は転嫁できるが、全部は難しい。
中立で 10 年先を描くと、営業利益は 1,000 億円ほどと今の 2 倍になる。それでも純利益は 4 割も増えない。利払いが増えた分を、営業利益が吸い取られるからだ。時価総額は約 5,400 億円、配当を足しても今の値段には届かない。
景気の谷では貸倒が増え、リーマン期には赤字に落ちた。今の値段は、5 期連続の好調と会社の計画をほぼそのまま織り込んでいる。総合では本質価値が今より 2 割ほど低く、やや割高と判断する。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見て、丸井は「いい事業を、少し高めの値段で売っている」会社だ。
事業の本質は、若い会員との長い付き合いにある。カードは使われ続ける限り、毎年のように手数料と利息を生む。会員が増え、メインカードになるほど、1 人当たりの稼ぎは大きくなる。この点は評価できる。
一方、オーナー利益(株主が自由に使える利益)という目では、見え方が変わる。カードの貸出を増やすには、借金を増やさなければならない。利益の大半は、貸出の元手を支える利払いに消える。金利が上がる局面では、見かけの営業利益ほど株主の手に残らない。
経営の資本配分は、堅実である。配当と自社株買いで利益の全額を返しており、無駄な買収で価値を壊した形跡はない。ただし、貸し出しの伸びと同じ速さで自己資本が増えないため、安全域は厚くない。
10 年先もこの事業はあるか。ある、と筆者は考える。ただ、利益がどれだけ株主に残るかは、金利と貸倒しだいだ。わからない部分が大きいので、確信度は中くらいに留める。
払う値段の見方は、こうだ。営業利益が 2 倍になっても、純利益は 4 割も増えない前提で見ると、今の値段は将来の配当を足しても十分な利回りにならない。安全域は、今の値段では見えない。
何で稼ぐ会社か
丸井グループの事業は 2 つに分かれる。フィンテック(エポスカードなど)と小売(マルイ・モディの店舗)だ。直近の営業利益で見ると、フィンテックが 470 億円、小売が 112 億円。稼ぎの重心はとうにカード側にある。
フィンテックの収入源は 3 つある。1 つ目は加盟店からの手数料で、カード取扱高は約 5 兆円、手数料率は下期で 1.22%。2 つ目は分割・リボ払いの利息で、手数料収入は約 690 億円まで育った。3 つ目はキャッシングなどの貸付だ。若い世代を会員に取り込み、ゴールドカードへの切り替えで利用額を引き上げる。いま力を入れるのが、家賃払いや公共料金の定期払いである。毎月必ず使われるので、メインカードになりやすい。
小売は、売る商売から貸す商売へ形を変えた。売場の約 7 割が、物を売らないテナント(飲食・サービス・体験)になった。自分で在庫を持つ百貨店型をやめ、家賃収入と顧客の来店を狙う。店の役目は、売上よりもカード会員の入口だ。渋谷マルイは木造の商業ビルへ建て替える計画を発表している。
資金の面では、カードの貸出残高が 7,137 億円、有利子負債が 7,163 億円。会社は、有利子負債を営業債権の約 9 割に保つ方針を掲げる。社債・借入・債権の流動化を組み合わせて調達する。
従業員は連結で約 3,800 人。フィンテックと小売がほぼ半々だ。少人数でこの取扱高をさばけるのは、カード事業が仕組みとして完成しているからである。
優良さと弱いところ
筆者がまず見るのは、会員という資産だ。エポスカードは若い世代の会員を軸に育ち、いったんメインカードにされれば、家賃や公共料金の引き落としと結びつき、乗り換えにくい。これが堀、つまり他社がまねしにくい強みである。入会 3 年後にメインカードへ切り替わっていない会員が約 3 割いるという会社の資料もある。取りこぼしは大きいが、裏返せば伸びしろだ。
資本の使い方は、悪くない。小売の店舗は、有価証券報告書を見る限り、土地を持つ店と借りる店が混ざる。都心の好立地が多い。ここ数年は、利益の薄い物販を減らし、テナントに切り替えて利益率を上げた。配当は株主資本に対する率(DOE)で 10% を目安にし、自社株買いも続ける。政策保有株は原則持たない方針で、持ち合いの売却を進めている。
弱い所も、はっきりある。1 つ目は規模だ。業界のショッピング取扱高は約 135 兆円で、丸井はおよそ 4%。三井住友カードや楽天カードは数倍の規模だ。価格の決定力も強くない。2 つ目は財務だ。自己資本比率は約 21% と薄く、借金の大半はカード債権を賄うためのものだ。3 つ目は景気への弱さで、2009 年 3 月期は赤字になった。
ROE(自己資本に対する純利益)は約 12% と高い。ただし、その高さは、低い金利に支えられた面がある。会社は 2026 年 3 月期で終えた前の計画で ROE 13% 以上を掲げ、届かなかった。堀は普通の強さ、利益の読みやすさは平均より少し劣る、と筆者は見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
カード業界は、キャッシュレス化の追い風が続いている。日本クレジット協会によると、2025 年のショッピング取扱高は約 135 兆円で、前の年より 15% 増えた。国のキャッシュレス比率は 58%、そのうちカード払いが 8 割強を占める。まだ現金の席が残っている。
ただし、追い風は丸井だけのものではない。三井住友カードのショッピング取扱高は約 39 兆円、楽天カードは約 24 兆円で、どちらも丸井の数倍だ。ポイントの還元合戦や、コード決済・タッチ決済との競争が続く。加盟店手数料は、下がる圧力を受けやすい。
丸井が選んだ道は、規模では戦わず、若い世代と定期払いで会員を深く握ることだ。家賃や公共料金は、毎月の固定の支払いなので、カードを変えにくい。最近の決算でも、定期払いの伸びが取扱高を押し上げた。会社は、2031 年 3 月期にメインカード化率を 23% から 35% へ、グループ総取扱高を約 5 兆円から 10 兆円へ引き上げる目標を掲げる。
もう 1 つの風は金利だ。カード会社は、借金で貸出を賄い、貸出金利で稼ぐ。貸出金利は法律に上限があり、調達金利が上がっても全部は転嫁できない。分割手数料の見直しや加盟店手数料の改定で、どこまで取り戻せるかが勝負になる。
景気への感応度は小売より金融のほうが深い。景気が冷えると、遅れて払えない客が増え、貸倒の費用が先に膨らむ。利息返還(過去に取りすぎた利息を返す義務)の備えも、今期は 15 億円積んだ。
小売の側では、百貨店の客数は戻りきらず、郊外の大型モールやネット通販に押されてきた。丸井は物販を減らし、飲食・サービスのテナントを増やして対抗する。この流れは続くが、小売が稼ぎを押し上げる力は小さい。
資本政策と M&A
配当は株主資本に対する率(DOE)で 10% を目安に、増配を続ける方針だ。2026 年 3 月期は増配で、支払った配当は約 214 億円。自社株買いは同期に 77 億円で、2031 年 3 月期までの 6 年間で 300 億円を計画する。配当と自社株買いを足すと、純利益とほぼ同じ金額になる。株主にほぼ全部を返す姿勢だ。
その代わり、自己資本は増えない。貸出残高を増やすたびに、借金だけが増えていく。自己資本比率が約 21% と低いのは、この還元の厚さの結果でもある。筆者は、成長を狙いつつ全部を返す今の形は、利益が落ちる局面で窮屈になると見る。
M&A は、これまで目立った大型の買収をしていない。共創投資と呼ぶ少額の出資を、スタートアップなどに行う。TOB(株式公開買付け)の対象になる可能性は、市場の見方では 10 年以内に約 16% と試算されるが、時価総額が 5,000 億円規模で借金も重いため、現実味は高くない。
政策保有株は原則として持たない方針で、MUFG やノジマの株を売却した。東宝の株は約 215 億円分(帳簿価額)を持つ。ここは含み益の源になるが、金額は事業の規模に比べて小さい。
店の賃借も見ておく。有価証券報告書に、建物の賃借面積が約 32.8 万㎡と載る。家賃は固定の約束だ。新しいリース会計基準が 2028 年 3 月期から適用されると、借りている店が貸借対照表に載り、借金が見かけ上増える。
還元の置き方:配当はDOE10%を目安に増配を続け、自社株買いは2031年3月期までの6年で300億円。配当と自社株買いの合計は純利益とほぼ同じ金額で、10年の中立は純利益の合計の84%とした。
点検済み:中立の営業利益率21.7%が過去の山(18.1%)と会社の予想(18.7%)を超え、利払いが5倍になる同じ筋書きの文章と食い違っていたため、フィンテックを24.5%(今は24%)、小売を14%に置き直した(全社20%)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
丸井は、5 期連続の増収増益を続け、カード取扱高も前期比 10% 増えた。この流れは、まだ半ばだ。
キャッシュレス比率は 58% で、国はさらに上を目指している。丸井は、そのなかで若い世代に強く、ゴールドカードへの切り替えと「好き」を応援するカードで、会員 1 人当たりの利用額を上げられる。会社の計画どおりにメインカード化率が 35% に届けば、取扱高は 10 兆円に近づく。
家賃や公共料金の定期払いは、景気の影響を受けにくく、毎月の取扱高の土台になる。そのうえ、物価が年 3% で上がるなら、取扱高は名目でも勝手に増える。貸出金利も、分割手数料の見直しや加盟店手数料の改定で、調達コストの上昇のかなりの部分を転嫁できる。実際、直近の分割・リボ手数料は 94 億円増えた。
小売は、テナント化で利益率が上がり、売上は前期比 7% 伸びている。店を持つ強みは、リアルの接点としてカードの入会窓口になることだ。
さらに、DOE 10% の高い還元が続く。利益の全額を返しても、利益が伸びるので配当も伸びる。ROE は 15% に近づき、PER も 16〜17 倍が続いて、株価は 10 年で大きく上がる。
慎重な見方
営業利益が 5 年連続で伸びたのは、金利がほぼゼロだったからだ。借金で賄うカード事業は、その恩恵を最も受けた会社の 1 つで、その追い風はもう終わった。
借金が約 7,100 億円ある。調達金利が 1% 台から 3.5% に上がると、利払いは数百億円増える。貸出金利は法律の上限があり、転嫁できる範囲に限界がある。加盟店手数料も、国やライバルから下げる圧力を受ける。営業利益が増えても、純利益に残らない。
貸倒も心配だ。若い世代は、不況のときに支払いが遅れやすい。2009 年 3 月期に赤字になったのは、そのためだ。利息返還の備えも、今期は 15 億円積み増した。法律が変われば、分割・リボ払いの収益源が細る恐れがある。
ライバルは三井住友カードと楽天カードで、取扱高の規模が数倍ある。ポイント還元の競争では勝ちにくい。メインカード化率 35% は、会社の目標であって、確かな約束ではない。前の計画も、ROE 13% 以上の目標に届かなかった。
還元が利益の全額なので、自己資本は増えず、自己資本比率は 21% と薄いまま、貸出だけが増える。利益が落ちた年に、配当を維持できなくなる。PER が 16 倍を超える今の値段は、事業の質を過大に評価している。
どちらに重みを置いたか
強い方は、慎重な見方だ。事業の強さは疑わない。問題は、利益が株主に届くまでの道に、金利という大きな穴があることだ。会社が示す取扱高の伸びは認めても、転嫁できる分は全部ではないので、純利益の伸びは営業利益より低くなる。
確率は、中立を 4 割弱に置き、やや悲観と悲観を合わせて 3 割とした。楽観側は合わせて 3 割。景気の谷での貸倒急増と金利の上昇が重なる筋書きを、軽く見ない。ただし、会員基盤と定期払いの強みは本物なので、悲観を 1 割で止めた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,050 円5,156 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,478 円2,498 億円)。 今の値に割り戻すと 2,419 円4,089 億円、今との差 −13.5%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,942 円1.00 兆円 | 1,834 円3,100 億円 | +178.1% | +10.8% | 622 円1,052 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,645 円7,852 億円 | 1,716 円2,900 億円 | +127.5% | +8.6% | 1,399 円2,365 億円 |
| 中立 | 38% | 3,200 円5,409 億円 | 1,584 円2,678 億円 | +71.1% | +5.5% | 1,818 円3,073 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,185 円2,002 億円 | 1,331 円2,250 億円 | −10.0% | −1.1% | 553 円936 億円 |
| 悲観 | 10% | 766 円1,294 億円 | 592 円1,000 億円 | −51.5% | −7.0% | 136 円229 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,050 円5,156 億円 | 1,478 円2,498 億円 | +61.9% | +4.9% | 4,529 円7,655 億円 |
今の株価時価総額 2,797 円4,727 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:10 兆円を達成し、転嫁も通る 利益 599 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 5,942 円1.00 兆円
メインカード化率が 35% に届き、エポスカードは家賃・公共料金・給与受取を握る生活の口座になる。取扱高は実質で今の 1.85 倍に伸びる。
分割・リボの利息と手数料が増え、調達コストの上昇の 4 割ほどを、料率の改定で転嫁できる。貸倒は、景気の波が来ても会社の想定内で収まる。
ライバルとの競争では、定期払いの囲い込みが効き、加盟店手数料の低下も小幅で済む。小売は、テナントの家賃が物価並みに上がり、利益率を保つ。
営業利益は 1,500 億円に近づくが、借金も 1 兆 8,000 億円規模に膨らみ、利払いは 600 億円を超える。それでも純利益は 600 億円前後と、今の 2 倍になる。ROE は 16% 近くまで上がる。
- 小売(マルイ・モディの店舗):数量 473(店舗の営業面積(千㎡、推定))× 価格 27(1㎡当たり年間売上収益(万円))→ 売上 1,276 億円・営業利益 217 億円。面積 105%・価格 1.50 倍・営業利益率 17.0%
- フィンテック(エポスカード):数量 91,834(カードクレジット取扱高(億円、今の物価で実質))× 価格 0.05(取扱高に対する収益率(今の物価。物価の指数を掛けた値))→ 売上 4,854 億円・営業利益 1,383 億円。取扱高(実質)1.85 倍・収益率 1.34 倍・営業利益率 28.5%
倍率:事業の純利益 599 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍。全体の PER 16.64 倍、時価総額 9,967 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画どおりにメインカード化が進み、取扱高が実質で 1.85 倍に。確率は 1 割弱。
やや楽観 22% やや楽観:計画の遅れ 3 年で到達 利益 485 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 4,645 円7,852 億円
メインカード化は 30% 台前半まで進み、取扱高は実質で今の 1.65 倍になる。会社が掲げる 10 兆円は、目標より数年遅れで届く。
利息収入と手数料が伸び、貸倒は景気の波に応じて増減するが、赤字に落ちるほどは崩れない。
調達コストの上昇のうち 3 割強を転嫁し、フィンテックの営業利益率は 27% 台を保つ。小売は、店の更新が進み、利益率が少し上がる。
営業利益は 1,250 億円ほど。借金は 1 兆 6,000 億円に増え、利払いは 550 億円前後になる。純利益は 490 億円、ROE は 14% だ。
- 小売(マルイ・モディの店舗):数量 450(店舗の営業面積(千㎡、推定))× 価格 26(1㎡当たり年間売上収益(万円))→ 売上 1,183 億円・営業利益 189 億円。面積 100%・価格 1.46 倍・営業利益率 16.0%
- フィンテック(エポスカード):数量 81,906(カードクレジット取扱高(億円、今の物価で実質))× 価格 0.05(取扱高に対する収益率(今の物価。物価の指数を掛けた値))→ 売上 4,265 億円・営業利益 1,173 億円。取扱高(実質)1.65 倍・収益率 1.32 倍・営業利益率 27.5%
倍率:事業の純利益 485 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍。全体の PER 16.03 倍、時価総額 7,775 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:取扱高は実質で 1.65 倍。転嫁もおおむね通る。確率は 2 割強。
中立 38% 中立:カードは倍増、利益は 3 割増 利益 356 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 3,200 円5,409 億円
カード取扱高は、実質で今の 1.45 倍になる。物価分を足すと名目では 2 倍弱で、会社が掲げる 10 兆円に、5 年ほど遅れて届く。
金利は 3.5% 前後に落ち着き、借金は 1 兆 4,000 億円ほどに増える。利払いは約 490 億円で、今の 5 倍以上になる。
分割手数料や加盟店手数料の見直しで、調達コストの増加の 3 割ほどは取り戻す。貸倒は、景気の波があっても平均では今の水準に戻る。
小売は、売場面積が少し減り、テナントの家賃が物価並みに上がる。利益率は 14% 台を保つ。
営業利益は 970 億円と今の 1.9 倍だが、純利益は 356 億円と 25% しか増えない。全社の営業利益率は 20% ほどで、会社の予想(19%弱)の延長にとどめる。ROE は 12% で、配当と自社株買いは利益のほぼ 9 割を返す。
- 小売(マルイ・モディの店舗):数量 437(店舗の営業面積(千㎡、推定))× 価格 26(1㎡当たり年間売上収益(万円))→ 売上 1,116 億円・営業利益 156 億円。面積 97%・価格 1.42 倍・営業利益率 14.0%
- フィンテック(エポスカード):数量 71,978(カードクレジット取扱高(億円、今の物価で実質))× 価格 0.05(取扱高に対する収益率(今の物価。物価の指数を掛けた値))→ 売上 3,691 億円・営業利益 904 億円。取扱高(実質)1.45 倍・収益率 1.30 倍・営業利益率 24.5%
倍率:事業の純利益 356 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 14.99 倍、時価総額 5,332 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:取扱高は実質で 1.45 倍。転嫁は 3 割。確率は 4 割弱。
やや悲観 22% やや悲観:転嫁できず、貸倒も重い 利益 153 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 1,185 円2,002 億円
消費の伸びが鈍り、取扱高は実質で 1.2 倍にとどまる。ライバルのポイント競争と、加盟店手数料の低下が収益を押し下げる。
調達金利が 3.5% に定着し、借金も 1 兆 2,000 億円まで増えるが、料率の改定は 1 割ほどしか通らない。貸倒は景気の波のたびに膨らむ。
フィンテックの営業利益率は 21% に落ち、営業利益は 630 億円。利払いが 410 億円かかり、純利益は 150 億円ほどに縮む。ROE は 6% で、資本コストを下回る。
配当は DOE 10% を守れず、自社株買いは止まる。売場面積は 8% 減り、小売の利益率も 1 割台前半にとどまる。
- 小売(マルイ・モディの店舗):数量 414(店舗の営業面積(千㎡、推定))× 価格 24(1㎡当たり年間売上収益(万円))→ 売上 999 億円・営業利益 110 億円。面積 92%・価格 1.34 倍・営業利益率 11.0%
- フィンテック(エポスカード):数量 60,561(カードクレジット取扱高(億円、今の物価で実質))× 価格 0.05(取扱高に対する収益率(今の物価。物価の指数を掛けた値))→ 売上 2,914 億円・営業利益 612 億円。取扱高(実質)1.22 倍・収益率 1.22 倍・営業利益率 21.0%
倍率:ROE 6.4%(純利益 153 億円 ÷ 自己資本 2,383 億円)。事業の ROE が資本コスト 8% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.1 倍。ROE が資本コストを下回り、転嫁できず貸倒も重いので、やや悲観は上限の 8 割 の 9.7 倍に置いた。
確率:取扱高は伸びるが、利益率が落ちる。確率は 2 割強。丸井は景気と金利に弱く、この筋書きを厚めに置いた。
悲観 10% 悲観:構造的に負け、優良ではなくなる 利益 −73 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 766 円1,294 億円
楽天カード・三井住友カードなど大手との競争に負け、若い会員の新規が頭打ちになる。取扱高は実質で今と同じ水準にとどまる。
法律の見直しで分割・リボの料率に上限が設けられ、貸倒は景気の谷で急増する。調達金利は 3.5% と高止まりし、借金は 1 兆円近い。
フィンテックの営業利益は 280 億円に縮み、小売も店の閉鎖で売場面積が 15% 減る。営業利益は 250 億円で、利払いを払うと赤字になる。
利益で測れない会社になるので、PBR で測る。東宝株などの持ち株と店舗不動産の含み益が、下の床を支える。配当は大きく削るが、10 年の還元は純利益の合計を上回り、差は東宝株などの売却と自己資本から払う。
- 小売(マルイ・モディの店舗):数量 383(店舗の営業面積(千㎡、推定))× 価格 22(1㎡当たり年間売上収益(万円))→ 売上 826 億円・営業利益 50 億円。面積 85%・価格 1.20 倍・営業利益率 6.0%
- フィンテック(エポスカード):数量 49,640(カードクレジット取扱高(億円、今の物価で実質))× 価格 0.04(取扱高に対する収益率(今の物価。物価の指数を掛けた値))→ 売上 2,154 億円・営業利益 280 億円。取扱高(実質)1.00 倍・収益率 1.10 倍・営業利益率 13.0%
倍率:谷の年・構造的負けの年で利益が赤字のため、稼ぐ力では測れない。売れる資産の税後からカード債権の貸倒を引いた約 1,300 億円(floor_assets_oku)を床とし、今の自己資本 2,442 億円に対する PBR 0.53 倍で測った。純有利子負債(今の値 6,627 億円)を足した EV ÷ 営業利益 32 倍は谷の営業利益が小さく大きく出るが、借金の大半はカード債権の元手で、貸倒を引いた谷の利益では測れないので、EV でなく売れる資産の床で見た。
確率:大手との競争と規制と景気の谷が重なり、事業の収益性が大きく落ちる。確率は 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
小売(マルイ・モディの店舗)
物販を減らし、飲食・サービスなどのテナントから家賃を得る形へ移した店舗事業。売場の約 7 割が非物販。来店客はカードの入会窓口になる。
| 数量店舗の営業面積(千㎡、推定) | 価格1㎡当たり年間売上収益(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 450 | 18 | 810 | 112 |
| 10 年後 中立 | 437 | 26 | 1,116 | 156 |
取り方:営業面積は開示を確認できず、有価証券報告書の賃借面積(約 32.8 万㎡)に自社所有分を足した推定 45 万㎡。売上収益 810 億円を割って 1㎡当たり約 18 万円。価格は物価並みの上昇に、テナント化による単価の上がりを少し乗せる。
フィンテック(エポスカード)
カードの加盟店手数料、分割・リボの利息、キャッシングなどで稼ぐ金融事業。家賃・公共料金などの定期払いで、利用額を積み上げている。
| 数量カードクレジット取扱高(億円、今の物価で実質) | 価格取扱高に対する収益率(今の物価。物価の指数を掛けた値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 49,640 | 0.04 | 1,958 | 470 |
| 10 年後 中立 | 71,978 | 0.05 | 3,691 | 904 |
取り方:カード取扱高 4 兆 9,640 億円に対する売上収益 1,958 億円で収益率 3.94%。営業利益は利払いの前で、利払いは営業利益の下にある。数量は物価を除いた実質で置き、物価の上昇は価格の指数に入れる。
リスクと懸念
調達金利の上昇が利益を削る
借金は約 7,100 億円で、貸出残高の 9 割に当たる。調達金利が 1% 台から 3.5% 前後に上がると、利払いは数百億円増える。貸出金利には法律の上限があり、転嫁には限りがある。営業利益が増えても、株主の手に残る分は小さい。
景気の谷で貸倒が急増する
カードの貸出は、不況のとき真っ先に傷む。若い世代は収入が不安定で、支払いの遅れが出やすい。2009 年 3 月期には赤字になった。自己資本比率は約 21% と薄く、貸倒が膨らむと配当の余力も細る。利益の全額を返す方針は、谷の年には守れない。
法律の見直し
貸金業法や割賦販売法の見直しで、分割・リボの料率や与信の基準が変わる恐れがある。利息返還の備えは、今期も 15 億円積んだ。分割・リボの手数料収入は約 690 億円あり、ここが細ると収益の土台が揺らぐ。法の変更は予測しにくく、起きれば一度に効く。
大手との競争
三井住友カード(取扱高約 39 兆円)や楽天カード(約 24 兆円)は、丸井の数倍の規模でポイント還元の力がある。加盟店手数料の引き下げ圧力もある。大手と同じ土俵では、勝ち続けにくい。メインカード化率 35% の目標が届かなければ、成長の物語が崩れる。
計画の未達
前の計画は ROE 13% 以上・営業利益 600 億円を掲げたが、実績は 12% 弱・502 億円だった。新しい計画は 2031 年 3 月期に取扱高 10 兆円・ROE 15% 以上と、さらに高い。数字が積み上がらなければ、倍率の期待が崩れる。
店の賃借とリース会計の変更
店のうち一部は他社から借りており、建物の賃借面積は約 32.8 万㎡。家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。新しいリース会計は 2028 年 3 月期から適用され、借金と自己資本比率の見かけが悪化する。実態は変わらないが、市場の見方が揺れる恐れがある。
今後の分かれ目
- 調達金利が想定より早く上がり、手数料の見直しも通らなかったら
- 純利益の伸びが止まり、やや悲観の筋書きが中心になる。配当と自社株買いの余力も細る。
- メインカード化率が 2028 年 3 月期までに 30% を超えたら
- 取扱高の伸びが計画に近づき、やや楽観の重みを増やしてよい。定期払いの深さが利益率を支える。
- 景気が悪化して貸倒の費用が前期の 2 倍以上になったら
- 悲観の筋書きに近づく。利益は 1 年で半分以下になりうる。配当の維持も難しくなる。
- 分割・リボ払いの料率に上限を設ける法改正が決まったら
- 分割・リボの手数料収入(約 690 億円)が細り、フィンテックの利益の前提が崩れる。やや悲観以下の筋書きを重くする。
- 自社株買いを大きく拡大し、DOE の目標を引き上げたら
- 株主還元は増えるが、自己資本が減って財務が薄くなる。純利益の伸びが鈍るため、価値は増えない。
- 大手カードが丸井の定期払い・若年層に本格参入したら
- 新規会員の伸びが落ち、メインカード化の物語が崩れる。取扱高の実質成長が 1 割以上下がる。
見ておくもの
- メインカード化率とカード取扱高の四半期の伸び(会社の決算説明資料)
- 調達金利の平均と固定金利の比率、利払いの増え方
- 貸倒の費用と遅れて払う会員の比率
- 分割・リボの手数料収入と、料率の改定の動き
- 小売のテナント面積の比率と、既存店の営業利益
- 自社株買いの実績と、自己資本比率の動き
倍率と資本コストの決め方
今の値段には倍率を寄せていない。中立は、ROE 約 12% と資本コスト 8%(基本 7.5% に品質の調整 +0.75%)から出した上限の 9 割に置いた。悲観は市場の倍率や過去の底でなく、売れる資産の税後からカード債権の貸倒を引いた床(概算 1,300 億円)で置いた。純有利子負債は時価総額の 1.4 倍あるが、大半はカード債権の元手なので、EV÷営業利益は事業の借金として読む(今は約 23 倍、10 年中立は約 18 倍)。純現金の会社ではないので、余った現金は立てていない。店の賃借(約 32.8 万㎡、家賃は固定の約束)は営業費用に入っている。新リース会計の適用(2028 年 3 月期から)で営業利益は少し増え借金は見かけ上増えるが、ここでは今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.4→16.64 倍・やや楽観 PER 12.9→16.03 倍・中立 PER 12.8→14.99 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality +0.75% を足した 8.25%。景気で貸倒が膨らむ点を循環 +0.5%、自己資本の薄さを借金 +0.25%、値決めと寿命は普通の 0。黒字が続き存続に疑いは無く上乗せ(extra)は置かない。10 兆円目標の実行といった個別のリスクは k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 8.00%。