結論
マックスバリュ東海は、静岡を軸に愛知・三重・神奈川で249店を営む食品スーパーで、親会社はイオンだ。筆者の結論は「今の値段はほぼ妥当で、安全域は厚くない」。堅実な会社だが、利益を大きく伸ばす筋書きは描きにくい。
稼ぎの源は単純で、店の数と、1店が1年に売る額の掛け算だ。人口は減り、客数は伸びない。値上げで売上は増えても、客が買う量は減っている。2026年2月期の既存店は客単価で増収を保ったが、賃上げの重さで営業利益は減った。
強みは財務だ。純現金は478億円と時価総額の半分に迫り、借金はない。ただ、その現金は仕入先への支払いを待ってもらう商売の裏返しでもある。筆者が余った現金とみるのは250億円だけだ。しかも親会社が議決権の64.6%を握るので、株主に戻るのは半分と置いた。
10年の中立は、店が9つ増え、営業利益率は3.5%のまま、売上が5千億円台に乗る姿だ。純利益は今の1.4倍まで伸びる。それでも年率にすれば穏やかで、割り引いた価値は今の時価総額をわずかに上回る程度にとどまる。総合は「適正」とみる。
イオンが親子上場を解消する流れは追い風に見える。しかし買い取りの値段を決めるのは買う側だ。価値を測る物差しにはならない。
バリュー投資の観点から
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、見かけの純利益より小さい。食品スーパーは新店と改装に毎年お金がかかり、減価償却55億円に対して設備投資は65〜105億円ある。賃上げも利益を削る。
堀は静岡の店網とイオンの調達力にある。ただ値決めの力は弱く、10年後に今より強くなっていると言える根拠は薄い。人口が減る地域の食品スーパーは、持ち続けても利益が増えにくい。
資本の使い方は堅実だが、物足りない。借金はなく現金は積み上がるのに、配当は利益の4分の1にとどまる。親会社が6割超を握るため、現金が株主へ戻る強い力も働かない。純現金478億円は魅力に見えるが、買掛金約320億円という仕入先への支払い待ちと表裏で、自由に使える額ではない。
安全域は薄い。確率を重ねた価値は今の時価総額を5%ほど上回る程度で、見込みが外れた時の余裕は小さい。悪い筋書きでも大きく崩れないのは、純現金の厚みのおかげだ。ただ良い筋書きの上振れも限られる。値段を払って持ち続けたい会社というより、良い値段が来るのを待って考える会社だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は食品スーパーの店舗だ。2026年2月期末の店は249で、内訳は静岡109、愛知61、三重48、神奈川16、岐阜8、滋賀6、山梨1。静岡に厚く店を置き、愛知と三重へ広げてきた。2019年にマックスバリュ中部を吸収して今の形になった。
店のほかに、移動スーパーが43台、山あいや団地を回っている。無人店舗「Maxマート」も広げており、会社は2030年に店以外の売上を全体の5%にしたいという。規模は小さいが、人口が減る地域で客を逃がさない手になる。
売るのは生鮮、総菜、日配品と、トップバリュなどのプライベートブランド(自社ブランド)だ。仕入れではイオングループの規模を使える。店舗の賃貸や決済(WAON・クレジット)でも、グループ各社との取引が多い(有価証券報告書の事業内容)。親会社が64.6%を持つので、グループの方針から離れて動く余地は小さい。
利益は薄い。営業収益3,849億円に対し営業利益は135億円で、販売費及び一般管理費(販管費)は960億円と、営業利益の7倍にのぼる。わずかなコスト増が利益を大きく削る。賃上げを値上げと生産性でこなせるかが、店の数より効く。
2025年の下期には、名古屋で都市型小型店「マックスバリュエクスプレス」を4店開いた。大きな郊外店と違って売場が小さく、出しやすい。ただ1店の稼ぎも小ぶりになる。完全子会社のデリカ食品(総菜・米飯の製造)は2026年9月に吸収合併し、商品づくりを本体に取り込む。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、静岡の店網の密度とイオンの調達力だ。ただし幅は広くない。食品スーパーは地域ごとに客を奪い合う商売で、西部は遠鉄ストア、静岡市はしずてつ・富士屋・田子重、愛知はバローとドミーが手ごわい。値段を決めるのは競合とドラッグストアで、会社が決められる部分は小さい。
資本効率は並みだ。ROEの10年の中央値は7.8%、直近は10.6%だが、中国子会社の清算に伴う税負担の減少が押し上げた。ならした純利益は85億円ほどで、ROEは9%弱とみる。営業利益率は3.5%で、会社が掲げる4%に届かない。中計の営業利益155億円も未達だ。
経営は慎重で、無理な買収をしない。大きな動きは2019年のマックスバリュ中部との合併くらいだ。借金はほぼなく、財務の安定は食品スーパーの中で上位に入る。
弱点は、成長の手立てが出店と改装に偏り、客数を増やす決め手が見えないことだ。既存店の客数は0.5%増でも、買い上げ点数は2.6%減った。値上げで売上を保ち、客1人が買う量が減る形は、長くは続かない。
親会社の存在は両刃だ。調達力と信用力は得られる一方、少数株主の利益よりグループ全体の都合が優先されうる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
食品スーパーの数量は、人口の減少で伸びない。売上の伸びは物価の上昇が支える形だ。物価は年3%と置くので客単価は上がるが、客は買う量を減らす。2026年2月期の既存店は、一品単価が4.0%上がり、買い上げ点数が2.6%減った。これが今の姿だ。
静岡では競争が激しい。西部は遠鉄ストアが地区の食品の16%余りを占め(2021年3月期)、静岡市はしずてつなど地場が強い。愛知は事情が違い、バローとドミーなど競合が厚く、マックスバリュ東海のシェアは低い。伸びしろがある反面、後発の不利もある。
ドラッグストアとディスカウントの食品強化、ネットスーパーが、客を少しずつ奪う。人件費は最低賃金の上昇で年3〜5%のペースで上がる。セルフレジなどの自動化で吸収できるかが分かれ目だ。
足元は重い。2026年上期の経常利益は15%減で、客数の減少、荒利益率の低下、物流費と人件費の増加が重なった。通期の営業利益147億円の計画は下期頼みになっている。
イオンの側では、サンデーやジーフットなど上場子会社の整理が進む。スーパーではUSMH、マックスバリュ関東、ダイエーなどが2026年3月に「イオンフードスタイル」へ統合された。マックスバリュ東海はこの統合の当事者に入っていない。地域スーパーの再編は、業界の大きな流れだ。
資本政策と M&A
資本政策の鍵は、イオンが議決権の64.6%を握っていることだ。配当は増えてきたが、利益に対する割合は26%前後と低い。自社株買いはほとんどなく、純現金は2019年2月期の170億円から478億円へ積み上がった。ROE10%を目標に掲げながら、余った現金の使い道は見えにくい。
投資は積極に振った。2024〜2026年度の中計は3年で約500億円で、前の計画の2.5倍にあたる。新店、改装、都市型小型店、ノンストアに回す。設備投資は2025年2月期に約105億円、2026年2月期に約65億円。営業キャッシュフローは約197億円で、投資をまかなって余る。
M&Aでは、デリカ食品を2026年9月に吸収合併する。イオンは親子上場を解消する動きを強めており、サンデーはTOBで完全子会社にし、ジーフットも非公開にする。マックスバリュ東海にも同じ日が来る可能性はある。
ただTOBは買う側が決める値段で、本質価値ではない。少数株主にとっては、買収よりも、現金が株主へ戻るかどうかのほうが確かな材料だ。
株主優待は年約1.3億円(会社の費用ベース。優待券5,000円×単元株主約3.6万人(額面1.8億円)×使われ率7割)。優待の費用は販管費として利益から引き済みなので、株主が受け取る分として10年の還元に「年額×10年×続く見込み(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)」を足した(中立+13億円)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
商売の底は硬い。食品は景気が悪くても買われ、静岡と愛知で249店を持つ。会社の2027年2月期の計画は営業利益147億円で、2026年2月期の135億円から8%増える。賃上げを値上げと改装でこなし、都市型小型店とMaxマートで新しい客を取れば、営業利益率は中計が掲げる4%に届く。
純現金は478億円あり、借金はない。金利が上がれば、手元の現金の利息だけで税引き前の利益が年に9億円ほど増える。
イオンの動きも味方だ。サンデーやジーフットなど上場子会社の整理を進めており、マックスバリュ東海が完全子会社になる日が来れば、少数株主は買い取りの上乗せを受け取る。それがなくても、配当は利益の26%と低いので、還元を厚くする余地は大きい。ROE10%を目標に置くなら、現金を使うか戻すしかない。
愛知はシェアが低い分、伸びしろが大きい。バローなど競合は強いが、名古屋の都市型小型店は、郊外型が届かない客をつかむ。10年で店が25ほど増え、1店の売上が物価ほど上がれば、売上は5,800億円に迫る。
慎重な見方
客数が増えないまま、人件費だけが上がる。2026年2月期は増収でも営業利益は減り、買い上げ点数は2.6%減った。2026年上期の経常利益は15%減で、通期の増益計画は下期に大きく頼っている。中計の営業利益155億円は未達で、会社が置いた営業利益率4%にも届かない。
利益が薄い。販管費は営業利益の7倍あり、荒利益率が0.4ポイント落ちるだけで営業利益の約1割が消える。ドラッグストアとディスカウントが食品を安く売り、愛知ではバローとドミーが先に店網を作っている。値上げが通らなくなれば、売上を保っても利益が削られる。
現金の478億円は見かけほど自由ではない。買掛金が約320億円あり、手元の現金預金は129億円。残りは貸付金などとみられ、使い道は親会社の意向に左右される。配当は利益の26%で、現金が株主へ戻る保証もない。イオンが完全子会社にするときも、値段を決めるのはイオンだ。
10年たっても人口は減っている。店を増やしても、1店の売上は物価に追いつかず、営業利益率は3%台前半に落ち着く。それなら中立の筋書きでも、今の時価総額にROE9%弱の利益が付くだけだ。
どちらに重みを置いたか
稼ぎの安定では強気の見方が上だが、成長と現金の使い道では慎重な見方に分がある。会社の計画は毎期下振れしており、中計の目標も届いていない。一方で借金がなく、需要が景気に左右されにくい点は強い。
確率は中立を最も厚くし、やや悲観をやや楽観より少し厚くした。悲観は、愛知での競争に負けて店を畳む筋書きとして1割を置いた。強気の根拠である値上げの定着と小型店の成功は、まだ数字に出ていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 7,232 円2,306 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,141 円364 億円)。 今の値に割り戻すと 4,509 円1,438 億円、今との差 +42.5%、 期待の年率 +10.2%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 11,841 円3,776 億円 | 1,640 円523 億円 | +326.0% | +15.6% | 1,079 円344 億円 |
| やや楽観 | 22% | 9,961 円3,176 億円 | 1,371 円437 億円 | +258.0% | +13.6% | 2,493 円795 億円 |
| 中立 | 36% | 8,389 円2,675 億円 | 1,176 円375 億円 | +202.2% | +11.7% | 3,444 円1,098 億円 |
| やや悲観 | 24% | 3,908 円1,246 億円 | 906 円289 億円 | +52.1% | +4.3% | 1,155 円368 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,353 円431 億円 | 671 円214 億円 | −36.0% | −4.4% | 202 円65 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,232 円2,306 億円 | 1,141 円364 億円 | +164.5% | +10.2% | 8,373 円2,670 億円 |
今の株価時価総額 3,165 円1,009 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 出店が実り、小型店とノンストアが客を呼ぶ 利益 170 億円 · PER 19.5 倍 · 株価時価総額 11,841 円3,776 億円
愛知と三重で都市型小型店が当たり、10年で店は275まで増える。マックスバリュエクスプレスは名古屋の住宅地に広がり、郊外型が届かない客と、買い物に出にくい高齢の客をつかむ。Maxマートと移動スーパーは、店以外の売上を全体の1割近くまで押し上げる。
1店当たりの売上は物価並みの1.36倍まで伸び、客数の減りは新しい客が埋める。トップバリュと総菜の自前化(デリカ食品の吸収)で荒利益率が上がり、賃上げは自動化でこなす。営業利益率は4%を超えて4.3%に届き、会社が掲げた水準を10年かけて実現する。
イオンは配当を引き上げ、余った現金も使って、ROEは11%台に乗る。親子上場の解消は進まないが、少数株主への還元は厚くなる。
- 食品スーパー(店舗・移動販売・ネット):数量 275(店舗数(店))× 価格 21(1店当たり年間営業収益(億円・名目。物価が乗る))→ 売上 5,783 億円・営業利益 249 億円。275店 × 1店21.03億円(今の1.36倍)、営業利益率 4.3%
倍率:事業の純利益 166 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.7% が k 6.95% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)250 億円。全体の PER 19.47 倍、時価総額 3,492 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げの定着、小型店の成功、現金の還元が同時に実現する必要があり、会社の計画は毎期下振れしているため低く置いた。
やや楽観 22% 計画どおりに出店と値上げが進む 利益 144 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 9,961 円3,176 億円
会社の計画に近い10年になる。店は266まで増え、愛知と三重の出店が計画どおりに立ち上がる。値上げは客数の目減りを最小限にとどめ、1店当たりの売上は物価の1.33倍まで伸びる。
営業利益率は3.9%と、過去の最良に近い水準で定着する。賃上げの負担は、セルフレジと物流の効率化でおおむね吸収する。配当は利益の4割近くまで引き上げられ、純現金の積み上がりは止まる。
ただ人口は減り、大きな飛躍はない。静岡の既存店は客数が横ばいで、伸びは愛知の新店と客単価が担う。デリカ食品の吸収で総菜の品質と原価が改善し、ノンストアも店以外の売上を少しずつ増やす。イオンは親子上場を続け、完全子会社化の話は出ない。堅実な増収増益が続く、地味だが安定した10年だ。
- 食品スーパー(店舗・移動販売・ネット):数量 266(店舗数(店))× 価格 21(1店当たり年間営業収益(億円・名目。物価が乗る))→ 売上 5,470 億円・営業利益 213 億円。266店 × 1店20.56億円(今の1.33倍)、営業利益率 3.9%
倍率:事業の純利益 140 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 6.95% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)250 億円。全体の PER 18.7 倍、時価総額 2,877 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画に近い姿。賃上げを吸収できれば届くが、直近の上期は計画を下回っており、確率は中立より低く置いた。
中立 36% 中立:店は少し増え、利益率は今の水準に落ち着く 利益 122 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 8,389 円2,675 億円
10年後の店は258。出店は続くが、閉店と統合を引くと純増は9店にとどまる。1店当たりの売上は物価の1.30倍まで上がるが、客の買う量が減るので、物価ほどは伸びない。売上は5,200億円弱になる。
営業利益率は3.5%と今のまま動かない。賃上げと物流費の増加を、プライベートブランドの強化と省人化がちょうど打ち消す。会社が掲げる4%には届かず、中計の目標は先送りが続く。
純利益は金利の上昇で現金の利息が増える分を含めて120億円台になり、今のならした水準の1.4倍だ。配当は利益の3割台半ばまで上がる。イオンの持ち株比率は変わらず、親子上場は続く。普通に続く優良な食品スーパー、という評価に収まる。 株主優待の費用は利益から引き済みで、還元には受け取り分(年約1.3億円×10年)を足している。
- 食品スーパー(店舗・移動販売・ネット):数量 258(店舗数(店))× 価格 20(1店当たり年間営業収益(億円・名目。物価が乗る))→ 売上 5,186 億円・営業利益 182 億円。258店 × 1店20.10億円(今の1.30倍)、営業利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 118 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 6.95% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)250 億円。全体の PER 17.87 倍、時価総額 2,368 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店の増え方も利益率も今の延長で、いちばんありうる姿。直近の下振れと、需要が景気に左右されにくい点の両方を踏まえ、最も厚く置いた。
やや悲観 24% 愛知で伸び悩み、利益率がじわり下がる 利益 84 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 3,908 円1,246 億円
愛知と三重の出店が計画より伸びず、店は248にとどまる。バローとドミーが先に網を張った地域で、都市型小型店の1店当たり売上が低く、閉店も出る。1店当たりの売上は物価の1.25倍までしか上がらない。
ドラッグストアとディスカウントに客を奪われ、値上げが通りにくくなる。営業利益率は2.6%まで下がる。賃上げは続くが、価格に転嫁しきれない。
中計の目標は何度も先送りされ、ROEは6%台に落ちる。それでも静岡の店網とイオンの調達力は残るので、会社が崩れるわけではなく、配当も維持される。純現金は新店と改装の投資に使われて少し減り、金利の上昇で増える利息も、利益率の低下に打ち消される。成長の物語が消え、静かに利益が痩せていく10年だ。
- 食品スーパー(店舗・移動販売・ネット):数量 248(店舗数(店))× 価格 19(1店当たり年間営業収益(億円・名目。物価が乗る))→ 売上 4,793 億円・営業利益 125 億円。248店 × 1店19.33億円(今の1.25倍)、営業利益率 2.6%
倍率:ROE 6.0%が k 6.95%以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、PERは1÷k=13.9倍が上限。構造的に稼ぐ力が落ちた会社として、上限の0.7割の10.0倍に置いた。余った現金は帳簿187億円のうち戻り方0.5を掛けた額だけを足した(純利益から現金の利息2.6億円を引いてPERを掛ける)。
確率:賃上げと競争で利益率が削られる姿は、直近の実績に近く、やや楽観より少し厚く置いた。
悲観 10% 愛知の競争に負け、店を畳みながら薄利になる 利益 34 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,353 円431 億円
愛知と三重で大型の競合に負け、不採算店を閉じる。店は232まで減り、1店当たりの売上も物価の1.15倍にとどまる。価格競争で荒利益率が落ち、賃上げは価格に転嫁できない。営業利益率は1.2%まで下がり、2015年2月期の水準に近づく。
家賃は固定の約束なので、売上が落ちても減らない。店を閉じるときの減損も重なる。ためた現金の一部は、失敗した改装と出店に消える。
配当は削られ、親会社の意向で現金が戻る見通しもなくなる。ROEは資本コストを大きく下回り、会社は普通の薄利の地域スーパーとして評価される。
- 食品スーパー(店舗・移動販売・ネット):数量 232(店舗数(店))× 価格 18(1店当たり年間営業収益(億円・名目。物価が乗る))→ 売上 4,125 億円・営業利益 50 億円。232店 × 1店17.78億円(今の1.15倍)、営業利益率 1.2%
倍率:ROE 2.6%が k 6.95%以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、PERは1÷k=13.9倍が上限。構造的に稼ぐ力が落ちた会社として、上限の0.7割の9.5倍に置いた。余った現金は帳簿125億円のうち戻り方0.5を掛けた額だけを足した(純利益から現金の利息1.8億円を引いてPERを掛ける)。
確率:愛知での競争に負けて店を畳む構造的な負け。純現金が厚く借金もないので、そこまで崩れる確率は1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品スーパー(店舗・移動販売・ネット)
静岡を軸に愛知・三重・神奈川などで営む食品スーパー。生鮮・総菜・プライベートブランドが中心で、移動スーパー43台とネット・無人店舗も含む。
| 数量店舗数(店) | 価格1店当たり年間営業収益(億円・名目。物価が乗る) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 249 | 15 | 3,850 | 136 |
| 10 年後 中立 | 258 | 20 | 5,186 | 182 |
取り方:2026年2月期の営業収益3,850億円を、期末の店舗数249で割って1店当たりを出した(移動スーパー・ネット・無人店舗の売上も入るので、店だけの値より少し高い)。先の1店当たりは物価の1.34倍から、客数の目減りと小型店の比重増を引いて、中立で1.30倍に置いた。数量は店舗数で、中立は10年で9店の純増(出店は年5店前後でも、閉店と統合を引く)。
リスクと懸念
賃上げと人手不足
販管費960億円は営業利益の7倍で、3期連続の大幅な賃上げがすでに利益を押し下げた。最低賃金は上がり続けるため、値上げと省人化で吸収できなければ、売上が伸びても利益が減る。食品スーパーでいちばん現実的な危険だ。
客数と買い上げ点数の減少
2026年2月期は既存店の客数が0.5%増にとどまり、買い上げ点数は2.6%減った。2026年上期は客数減が減益の原因に挙がる。値上げで売上を保つ形は、客が買う量を減らす限り長くは続かない。
愛知・三重での競争
愛知はバローとドミーなどが先に店網を作った地域で、マックスバリュ東海のシェアは低い。都市型小型店は出しやすいが、1店の稼ぎは小さい。出店が計画どおりに立ち上がらなければ、投資の回収が遅れる。
親会社の支配と少数株主
イオンが議決権の64.6%を持つ。現金が株主へ戻る力は弱く、完全子会社化の値段もイオンが決める。サンデーなど先行した例はあるが、マックスバリュ東海に買い取りが来る時期も条件も分からない。
現金の見かけ
純現金478億円は時価総額の半分に迫るが、買掛金約320億円という仕入先への支払い待ちと表裏で、手元の現金預金は129億円にすぎない。残りの使い道は親会社の意向に左右される。全額が株主のものとは言えない。
新リース会計基準と家賃の固定費
店を借りて営むため、家賃は毎年必ず払う約束だ。新リース会計基準は2028年2月期から適用が見込まれ、貸借対照表の形が変わる。売上が落ちても家賃は落ちないので、悪い筋書きでは固定費として利益率を押し下げる。
今後の分かれ目
- 2027年2月期の営業利益が計画の147億円に届かず、下期も減益が続いたら
- やや悲観に確率を移す。計画が毎期外れる会社だと確かめることになり、利益率3.5%の維持も疑う。
- 既存店の客数が増え、買い上げ点数の減少が止まったら
- 値上げが客離れを起こさない証拠になる。やや楽観と楽観の確率を上げる。
- 配当性向を引き上げる、または自社株買いを始めたら
- 余った現金の戻り方を0.5から1.0へ上げて見直す。価値は今の時価総額の6%ほど増える。
- イオンが完全子会社化の公開買付けを発表したら
- 価格は買う側が決める。公開買付けの価格と、10年の中立の価値を比べて判断する。価格が低ければ少数株主の利益が損なわれる。
- 名古屋の都市型小型店の売上が計画を下回り、閉店が出たら
- 愛知での競争に負ける筋書きに近づく。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 賃上げを価格に転嫁でき、荒利益率が上がったら
- 営業利益率4%の目標が現実になる。中立の利益率を上げて見直す。
見ておくもの
- 月次の既存店売上高・客数・客単価(会社が毎月開示)
- 営業利益率と、会社が掲げる4%・ROE10%の達成状況
- 配当性向・自社株買いなど、現金の使い道の発表
- イオンの上場子会社の整理(完全子会社化の公開買付け)の動き
- 愛知・三重の出店数と都市型小型店の1店当たり売上
倍率と資本コストの決め方
店舗数(実質)×1店当たり営業収益(物価が乗る名目)で売上を積み、利益率は物価で動かさず、純利益は営業利益に金利の増分を足して過去の純利益÷営業利益(中央値0.61)に近い比で出した。自己資本は今の値に純利益の合計を足し、還元を引いて流し、ROEは結果とした。倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(k 6.95%、g 3.7%)の上限の9割前後に置き、中立はROEがkを少し超えるだけなので下限の1÷kに近い。悲観は稼ぐ力から置いた。今の株価は最後に比べただけで、倍率を今の値段に寄せていない。店は賃借が多い業態で、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。新リース会計基準で2028年2月期から営業利益と純有利子負債の形が変わる点に注意する。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.4→19.47 倍・やや楽観 PER 14.6→18.7 倍・中立 PER 13.9→17.87 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。