結論
ショクブンは、名古屋を地盤に、夕食の食材を家庭に毎日届ける会社だ。献立に合わせて切った肉や野菜を、自社の社員が配る。米の卸の神明ホールディングスが株の過半を持つ。筆者の結論は「割高」。稼ぐ力がほとんどなく、今の値段を事業の利益では説明できない。
売上は 10 年前の 9 割から 6 割まで縮んだ。顧客は高齢の世帯が多く、年を追って減っている。共働きの世帯は、ミールキットのオイシックスや生協の宅配、スーパーのネットに流れた。値上げは通ったが、顧客の減りは止まっていない。
筆者がいちばん重く見るのは、営業利益が売上の 0.5% しかないことだ。配送の人件費と燃料が物価とともに上がる中で、この薄さは回復の余地も小さい。
持っている土地は簿価で 21 億円ある。ただ工場と配送の拠点として使っており、親会社が決める限り、売って株主に戻る形にはなりにくい。
10 年後の姿は、顧客がさらに 3 割減り、薄い利益のまま続く会社だと筆者は見る。今の値段には、その姿に見合わない期待が乗っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を持ち続けたい理由は見つけにくい。稼ぐ力が薄く、その力が年々弱まっているからだ。
事業の価値は、毎年どれだけの現金を株主に残せるかで決まる。ショクブンの営業利益は 0.3 億円で、配送網と工場の更新に使う額にも届かない。資本コストを上回る稼ぎは、10 年先にも見えにくい。
値段の支えになりそうなのは土地だ。ただ工場と配送の拠点として使っており、売れば事業が止まる。親会社が過半を持つ以上、少数株主が売却を求めることもできない。
今の値段は自己資本の 1.5 倍で、事業の利益から見ると高すぎる。筆者は、神明による買い取りへの期待が値段に乗っていると見る。ただそれは事業の価値ではない。
筆者なら、顧客数の下げ止まりと、利益率の回復が 2 年続くのを見るまで、この値段は払わない。持ち続けたいと思える事業の姿は、まだ見えていない。値段が下がっても、まず稼ぐ力の回復を確かめたい。
何で稼ぐ会社か
事業は 1 本だ。夕食の献立に合わせた食材を、平日の毎日、家庭に届ける。顧客は献立表から選び、肉や魚、切った野菜が 1 回分ずつ届く。食品の加工は自社の工場で行い、配送も自社の社員が担う。
地盤は愛知・岐阜・三重の東海 3 県で、関西にも広げてきた。顧客の中心は、買い物に出にくい高齢の世帯と、料理の手間を省きたい家庭だ。代金は月ごとに受け取る。前期にキャッシュレスへ切り替え、配達員が現金を集める手間をなくした。
稼ぎ方は、食材の仕入れ値と売値の差から、工場と配送の費用を引いたものだ。配送は 1 軒あたりの件数が多いほど効率が上がる。逆に顧客が減ると、同じ道を回っても売上が落ち、費用はあまり減らない。この仕組みが、今の利益の薄さを生んでいる。
2021 年に神明ホールディングスが第三者割当で過半を取得した。神明は米の卸の最大手で、ショクブンの食材と米を組み合わせる提携を結んでいる。
売上の大半は家庭向けで、残りは施設や事業所向けの業務用の食材だ。工場は名古屋の近くにあり、加工から配送までを一つの流れで回す。自前の配送網を持つことは強みでもあり、顧客が減る時には重荷にもなる。
優良さと弱いところ
優良さは低い、と筆者は見る。営業利益率は 0.5% で、3 年続けて最終赤字だ。値段を上げても顧客が離れるので、値決めの力は弱い。
堀、つまり他社がまねできない強みは、東海で 50 年近く続く名前と、毎日届ける配送網にある。ただ同じ地域にはヨシケイや生協が配送網を持ち、オイシックスはネットで全国に届ける。配送網そのものは、他社が持てない資産ではない。
財務は数字の上では悪くない。自己資本比率は 53% ある。ただ自己資本の大半は土地で、現金は 5 億円ほど、借入とリースが 13 億円ある。営業の現金はマイナスで、借入を返す力は弱い。
経営は神明の意向で動く。親会社の支えは倒れにくさを生むが、株主への戻り方は親会社が決める。
資本の使い方にも見るべき点は少ない。成長のための投資は小さく、利益で借入を返すのが精一杯だ。神明の傘の下で、どこまで独自の工夫を出せるかが問われる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
食材宅配の市場は、二つに割れている。伸びているのは、ネットで頼む共働き向けのミールキットだ。オイシックス・ラ・大地や生協の宅配、スーパーのネットスーパーがここを取り合う。縮んでいるのは、紙の献立表と配達員の訪問で回す昔ながらの型で、ショクブンはこちらに近い。
数量は人口とともに細る。東海の人口は横ばいに近いが、ショクブンの顧客は高齢の世帯が中心で、入れ替わりが遅い。若い世帯はスマートフォンで頼む先を選ぶ。LINE や TV CM で新しい顧客を呼び込む取り組みは始まったばかりだ。
費用の側も厳しい。配送はトラックと人の仕事で、運転手の不足と燃料の高騰が続く。物流の 2024 年問題で、運転手の時間外労働に上限が付いた。宅配の費用は物価より速く上がる恐れがある。
筆者は、この型の市場が 10 年でさらに 3 割ほど縮むと見る。生き残るのは、ネットの注文と効率の良い配送を両方持つ会社だ。
高齢の世帯の増加は追い風に見えるが、介護の配食や弁当の宅配、コンビニの配達も同じ需要を狙う。夕食の食材を自分で調理する高齢の世帯は、年を追って減っていく。
価格の面では、食材の値上げは通りやすい。
資本政策と M&A
還元は細い。配当は年 0.4 億円ほどで、赤字でも続けている。自己株は発行済の 1 割強あるが、買い増しはしていない。
株主優待は、500 株以上の株主へのパックご飯だ。神明の米を使ったもので、会社の費用は年 0.1 億円に届かないと見る。
資本政策の鍵は神明である。2021 年に第三者割当で過半を取り、資本の厚みは戻った。親会社が残りを買い取る道もあるが、今は発表も観測記事もない。
前期は子会社の食文化研究所を吸収合併し、非連結の決算に移った。借入は返済が進み、短期の借入を 5 億円減らした。
親会社が決める以上、少数株主の声は届きにくい。資本の効率を上げる手立ても示されていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
神明という強い親会社がいる。米の卸の最大手で、食品の仕入れと物流に厚みがある。神明の米や食材をショクブンの献立に組み込めば、仕入れ値は下がり、商品の質も上がる。親会社の支えがある限り、資金繰りで倒れる心配はない。
値上げは通った。前期は主力商品を値上げしても、顧客から一定の理解を得たと会社は言う。キャッシュレス化で、配達員を新しい顧客の獲得に回せるようになった。LINE と TV CM で若い世帯への入り口も作った。
高齢の世帯は東海でも増える。買い物に出にくい人ほど、毎日届く夕食の食材を手放せない。顧客の減りが止まれば、配送の効率が戻り、営業利益率は 2021 年ごろの 3% 台に戻れる。そうなれば利益は今の 10 倍近くになる。
今の値段が自己資本を上回るのは、市場がこの回復と神明の支えを見ているからだ。土地 21 億円という資産もあり、事業がうまくいかなくても値の支えは残る。東海の地盤で名前が通っていることも、新しい顧客を呼ぶ時の力になる。
慎重な見方
顧客は 10 年近く減り続けている。売上は 10 年前の 6 割だ。値上げ、キャッシュレス化、TV CM と手を打っても、前期の会社の言葉は「顧客数の回復に至らず」だった。若い世帯はスマートフォンで頼む先を選び、紙の献立表の会社には来ない。
費用は上がる。運転手の不足と燃料の高騰は続き、物流の 2024 年問題で配送の人手はさらに締まる。顧客が減って 1 軒あたりの配送が非効率になれば、利益率はマイナスに沈む。
土地を当てにするのも危うい。工場と配送の拠点は事業に要り、売れない。営業の現金はマイナスで、借入とリースが 13 億円ある。神明が支えるとしても、少数株主に有利な形とは限らない。
今の値段は自己資本の 1.5 倍で、ROE が 2% に満たない事業にはどう見ても高い。土地も、親会社が決める限り少数株主の手には届かない。神明による買い取りを期待するのは、事業ではなく相手の都合に賭けることだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が強い。顧客の減りは、打てる手を打っても止まっていない。利益率の回復を言うなら、顧客数が下げ止まる証拠が先に要る。神明の支えは倒れにくさを生むが、利益の厚みにはまだ結び付いていない。確率は中立とやや悲観に厚く置いた。
今の値段は、この回復が起きる前提に立っているように見える。筆者はその前提を置かない。資本コストに届く姿は楽観の中にも無い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 40 円6 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 18 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 29 円5 億円、今との差 −87.3%、 期待の年率 −13.0%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 100 円15 億円 | 33 円5 億円 | −43.0% | −5.5% | 9 円1 億円 |
| やや楽観 | 15% | 63 円10 億円 | 29 円5 億円 | −60.4% | −8.8% | 14 円2 億円 |
| 中立 | 38% | 40 円6 億円 | 23 円4 億円 | −73.0% | −12.3% | 24 円4 億円 |
| やや悲観 | 27% | 23 円4 億円 | 7 円1 億円 | −87.4% | −18.7% | 8 円1 億円 |
| 悲観 | 13% | 18 円3 億円 | 3 円1 億円 | −90.7% | −21.2% | 3 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 40 円6 億円 | 18 円3 億円 | −75.2% | −13.0% | 58 円9 億円 |
今の株価時価総額 232 円36 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 神明との組み合わせで顧客の減りが止まる 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 100 円15 億円
神明の米と食材を組み込んだ献立が当たり、ネットの注文も育つ。顧客の減りは年 1〜2% に緩み、10 年で 15% 減にとどまる。値上げは物価並みに通る。
配送の効率が戻り、営業利益率は 3.5% と、2021 年ごろを少し上回る。営業利益は 2 億円を超え、最終利益は 1 億円台に乗る。
借入は返し終わり、配当は利益に合わせて増える。ただ ROE は 5% 前後で、資本コストには届かない。神明が残りの株を買い取る話も出るが、ここでは事業の価値だけで見る。
顧客の減りが止まれば、配送網の固定費が軽くなり、利益は大きく戻る。
資本コストとの差は埋まらず、株主の価値は大きくは増えない。
- 食材宅配:数量 18,700(利用世帯の換算(世帯・推定))× 価格 0.00(1 世帯あたりの年間購入額(億円))→ 売上 69 億円・営業利益 2 億円。世帯 0.85 倍・単価 1.34 倍・利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 15 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10 年近く続く顧客の減りが止まり、利益率が 2021 年ごろの水準を超える筋書き。手を打っても回復に至っていない前期の実績から、低く置いた。
やや楽観 15% 顧客の減りが緩み、利益率が少し戻る 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 63 円10 億円
顧客は 10 年で 22% 減る。LINE とネットの注文で若い世帯を少しずつ取り込み、高齢の世帯の減りを一部埋める。値上げは物価をわずかに下回る 1.32 倍で通る。
配送の効率は大きくは戻らないが、キャッシュレス化と献立の見直しで、営業利益率は 2.5% まで上がる。営業利益は 1.5 億円台になる。
最終利益は 1 億円近くまで戻り、配当は今の額を保つ。借入は少しずつ減る。神明の子会社という立場は変わらない。
若い世帯の比率が上がれば、10 年後の顧客の減りはさらに緩む。ただ、資本コストを上回る稼ぎには届かない。
資本コストとの差は埋まらず、株主の価値は大きくは増えない。
- 食材宅配:数量 17,160(利用世帯の換算(世帯・推定))× 価格 0.00(1 世帯あたりの年間購入額(億円))→ 売上 62 億円・営業利益 2 億円。世帯 0.78 倍・単価 1.32 倍・利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.3% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 10 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ネットの注文と若い世帯の取り込みが一部実り、顧客の減りが緩む筋書き。値上げが通った前期の実績を根拠に置いた。
中立 38% 顧客が 3 割減り、薄い利益が続く 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 40 円6 億円
顧客は 10 年で 3 割減る。高齢の世帯が少しずつ抜け、若い世帯の取り込みはそれを埋めきれない。値上げは物価をやや下回る 1.30 倍で通り、売上は 55 億円まで縮む。
値上げと配送ルートの見直しで、営業利益率は 1.8% まで戻る。ただ運転手の給与と燃料は上がり続け、それ以上は難しい。営業利益は 1 億円に届かない。
最終利益は 0.5 億円前後で、配当はほぼ全部を使う。借入は返済が進むが、配送車と工場の更新で現金は残りにくい。10 年の償却は今の 1.6 億円前後で、物価では増えない。神明の子会社として事業は続く。
資本コストとの差は埋まらず、株主の価値は大きくは増えない。
- 食材宅配:数量 15,400(利用世帯の換算(世帯・推定))× 価格 0.00(1 世帯あたりの年間購入額(億円))→ 売上 55 億円・営業利益 1 億円。世帯 0.70 倍・単価 1.30 倍・利益率 1.8%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 6 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:顧客の減りがこれまでよりやや緩みながら続く標準の姿。売上は 10 年前の 9 割から 6 割へ縮んだ流れの延長で、値上げと効率化で利益率を少し戻すところまでを置いた。
やや悲観 27% 顧客の減りが続き、赤字が定着する 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 23 円4 億円
顧客は 10 年で 4 割強減る。若い世帯の取り込みは進まず、高齢の世帯は抜けていく。値上げは物価に追いつかず 1.22 倍にとどまり、売上は 43 億円に縮む。
配送の 1 軒あたりの件数が減り、運転手の給与と燃料が重くのしかかる。営業利益はほぼゼロで、利払いを引くと最終赤字が続く。
配当は止まる。配送の拠点と工場の統合を進めるが、閉鎖の費用が先に出る。神明が資金を支え、事業は続く。
資本コストを上回る稼ぎは見えず、事業の値はほとんど付かない。少数株主に残るのは、親会社が決める範囲の資産の取り分だけだ。
- 食材宅配:数量 12,760(利用世帯の換算(世帯・推定))× 価格 0.00(1 世帯あたりの年間購入額(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 0 億円。世帯 0.58 倍・単価 1.22 倍・利益率 0.3%
倍率:最終赤字なので PER は当てない。稼ぐ力では値が付かず、今の自己資本 23.4 億円に 0.15 倍。土地の売却で戻る分は親会社が決め、少数株主に戻る割合を 0.5 と見て、下の床の近くに置いた。EV(時価総額+純負債 6 億円)÷ 営業利益は 69 倍と高く出るが、営業利益がほぼゼロのためで、利益の倍率では測れない姿として床の資産で置いた。
確率:顧客の減りがこれまでの速さで続き、配送の費用が売上の縮みに追いつかない筋書き。前期まで 3 年続いた最終赤字の延長として厚めに置いた。
悲観 13% 顧客が半分を割り、事業を畳む方向へ 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 18 円3 億円
構造的に負ける。顧客は 10 年で半分を割り、売上は 30 億円に縮む。値上げはほとんど通らず、1.10 倍にとどまる。
配送網は維持できず、営業は赤字が続く。拠点を閉じ、工場を統合し、人員を減らす費用で純損失が膨らむ。自己資本は損失と減損で半分近くまで減る。
神明が残りの株を安い値で買い取るか、事業を他社に渡す形になりうる。値の支えは土地の売却額だが、借入とリースを返すと多くは残らない。
少数株主には、残った資産のうち親会社が認める分だけが戻る。
配送網を他社に渡す場合も、値段は買い手が決める。少数株主の取り分は、ほとんど残らない。
- 食材宅配:数量 9,900(利用世帯の換算(世帯・推定))× 価格 0.00(1 世帯あたりの年間購入額(億円))→ 売上 30 億円・営業利益 −1 億円。世帯 0.45 倍・単価 1.10 倍・赤字
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。今の自己資本 23.4 億円に 0.12 倍で、土地の売却から借入と閉鎖の費用を引いた残りに、少数株主に戻る割合を掛けた床に合わせた。
確率:構造的に負ける筋書き。紙の献立と訪問配送の型が縮み、売上が半分を割る。利払いの倍率が 1.5 倍しかない財務の弱さも踏まえて置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食材宅配
夕食の献立に合わせた食材を自社工場で加工し、自社の社員が平日毎日家庭に届ける。東海 3 県が地盤。
| 数量利用世帯の換算(世帯・推定) | 価格1 世帯あたりの年間購入額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 22,000 | 0.00 | 60 | 0 |
| 10 年後 中立 | 15,400 | 0.00 | 55 | 1 |
取り方:売上 60.1 億円・営業利益 0.28 億円(2026/03 短信、単一セグメント)。顧客数の開示がないため、1 世帯の購入額を月 2.3 万円・年 27.3 万円と見て 22,000 世帯の換算とした推定。業務用の食材の売上もこの換算に含む。
リスクと懸念
顧客の減り
顧客は高齢の世帯が中心で、10 年近く減り続けている。値上げ、キャッシュレス化、TV CM を打っても、前期の会社の言葉は「顧客数の回復に至らず」だった。
配送の費用
運転手の不足と燃料の高騰が続き、物流の 2024 年問題で時間外労働にも上限が付いた。顧客が減ると 1 軒あたりの配送が非効率になり、費用だけが残る。
競合
生協とヨシケイは同じ地域に配送網を持ち、オイシックスはネットで全国に届ける。スーパーのネット販売も広がる。若い世帯はスマートフォンで頼み先を選ぶ。
財務の細さ
営業の現金は前期マイナスで、借入とリースは 13 億円ある。利払いの倍率は 1.5 倍しかなく、金利が上がれば最終利益はさらに削られる。
親会社との利害
神明が過半を持つ。土地の売却や事業の再編、残りの株の買い取りの値段は親会社が決め、少数株主に有利とは限らない。
今後の分かれ目
- 顧客数が 2 年続けて前年を上回ったら
- 減りが止まった証拠として、やや楽観と楽観の確率を上げる。
- 営業利益率が 2% を超えて 2 年続いたら
- 値上げと配送の効率化が定着したとみて、中立の利益率を見直す。
- 神明が残りの株の公開買付けを発表したら
- 事業の価値ではなく買付けの値段で決まる。分析は止め、その値段だけを見る。
- 拠点や工場の土地を売却したら
- 売った額と、借入の返済・配当への回り方を見て、床の見積もりを直す。
- 最終赤字が続き、借入の返済が遅れたら
- 悲観の確率を上げ、資本コストに上乗せを付けるかを検討する。
見ておくもの
- 顧客数(利用世帯)の増減
- 営業利益率
- ネット・LINE からの注文の比率
- 配送の人件費と燃料費
- 神明の持株比率と提携の中身
- 借入とリースの残高
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE が k を大きく下回るので PER の上限 1÷k = 11.1 倍の 75〜90% に置いた。今の PBR 1.5 倍・PER(赤字で無し)は根拠にしていない。土地は事業で使っているので稼ぐ力の外に足さず、悲観の床だけで売却額を数え、親会社が過半を持つため少数株主に戻る割合 0.5 を掛けた。2028/03 期から店舗と配送車のリースが負債に載るが、10 年後は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.76 倍・やや楽観 PER 9→11.76 倍・中立 PER 8.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% + quality 1.5% = 9.0%。赤字は小さく、親会社の神明が過半を持ち資金繰りの存続に疑いはないので、上乗せ(distress)は付けない。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.75%。