結論
焼肉坂井ホールディングスは、焼肉屋さかい、肉匠坂井、平禄寿司、村さ来などを運営する外食会社だ。直営290店とフランチャイズ158店を持ち、売上は約240億円になる。親会社のジー・コミュニケーションが議決権の過半を持つ。
筆者の結論は、割高である。10年後の価値は今の時価総額の2割にも届かない。理由は、売上が240億円あっても営業利益が1億円台しか出ず、稼ぐ力に対して値段が高すぎることだ。
足元は苦しい。2026年3月期の営業利益は約1.6億円で、前の期の3分の1だった。原材料、物流、人件費、水光熱費がそろって上がった。最終損益は減損と税の調整で4億円の赤字になり、赤字は2期続いた。
多業態を寄せ集めた会社で、店舗の入れ替えにお金と手間がかかる。出店や買収に12億円を使い、借入が増えた。店は賃借で、家賃は景気が悪くても払う固定費だ。
優待は年2回の割引券と優待券で、費用は小さい。ただ、優待があっても本業の利益は増えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は買いたい企業ではない。事業の稼ぐ力が弱く、10年後も強くなると言い切れないからだ。
外食は、店を開けば賃金と家賃と食材がかかる商売だ。売上が240億円あっても、営業利益は2億円に満たない。オーナーの手元に残るお金は、会計上の利益より少ない。店の改装と出店に年12億円を使い、減価償却の約5億円を大きく上回る。
資本の使い方は評価しにくい。M&Aで業態を増やしたが、赤字と減損が続き、自己資本は減っている。借入は増えた。
安全域もない。時価総額165億円に対し、自己資本は約62億円、純利益は赤字だ。事業の稼ぐ力ではなく、期待で値段が付いている。
悲観では、家賃が固定費として残り、利益が急に落ちる。純有利子負債は約26億円と軽く見えるが、店の賃借の約束は、それより重い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、駅前や郊外の外食店だ。業態は幅が広い。焼肉は肉匠坂井と焼肉屋さかい、寿司は平禄寿司、居酒屋は村さ来ととりあえず吾平、軽食はおむらいす亭と長崎ちゃんめんなどを運営する。
店は直営が290店、フランチャイズが158店で、当期は5店を出し、4店を譲り受け、9店を閉じた。海外は中国、台湾、インドネシアなどに18店がある。
子会社は、関西のタケモトフーズ、イタリアンとうどんの壁の穴、寿司の丸七、水族館内の飲食を担うジー・アクアパートナーズなど。豊洲市場の買参権を持つエコー商事もある。
事業は外食の単一セグメントで、ブランド別の売上は開示されていない。
店は賃借で、差入敷金・保証金が約21.5億円ある。家賃は売上の7%前後、約17億円と筆者は推定した。景気が悪くなって客が減っても、家賃は減らない。
人員は連結で719人、このほかに平均で約1,500人のパートが働く。賃金の上昇は、そのまま利益を削る。
仕入れは、肉や魚の輸入が多く、為替と国際相場に左右される。売上の大半は直営の店で、FC店からはロイヤルティと食材の販売で稼ぐ。
優良さと弱いところ
優良さは、弱い。筆者は、強い堀を認めない。
数ある外食の中で、特別に強い業態は見当たらない。ブランドは多いが、それぞれの売上は開示がなく、全体で赤字と減損を繰り返してきた。2025年3月期は事業撤退損が約7億円、減損が約3億円。2026年3月期も減損が約2億円出た。
利益率の推移も良くない。2015年3月期は3%台、2020年から2022年は赤字、直近は1%を切った。10年間の純利益の合計は大きな赤字だ。
強みは、親会社のグループ力と、店舗を入れ替える柔軟さだ。猪木氏の著作権の使用契約など、親会社との取引もある。
弱みは三つある。食材の輸入依存、人手の確保、店の老朽化だ。借入は約74億円で、営業利益は支払利息の1.6倍しかない。自己資本比率は35%で、減損が続けば薄くなる。
経営は赤字の2期を経て、既存業態の見直しと新業態、DXを掲げる。ただ、明示された中期計画はなく、EBITDAの目標が前期に未達だった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食は、人口減で客数が細る一方、物価で客単価が上がる産業だ。日本フードサービス協会によると、市場はコロナ後に回復したが、店舗数は飽和している。
10年の数量は、客数が実質で5%ほど減ると筆者は置いた。人口が減り、中食にも客が流れる。価格は、値上げが通る範囲で物価に沿う。客単価は10年で1.34倍を基本とした。
外食の利益は、値上げとコストの綱引きで決まる。賃金は最低賃金の上昇で毎年上がり、食材は輸入の牛肉や魚で円安の影響を受ける。値上げが通るのはブランド力のある大手で、同社のような多業態の中堅は価格の主導権が弱い。
競争は、焼肉ではあみやき亭、牛角を持つレインズ、安楽亭、寿司では大手の回転寿司がいる。居酒屋は縮む市場だ。
自動化は、配膳ロボットなどで人手を補う。だが、投資できる資金が要る。同社は借入で出店と改装をしており、投資の余力は限られる。
分かれ目は、既存店の客数が戻るか、値上げがコストを上回るか、大型の閉店と減損が止まるかの3点だ。
焼肉は牛肉の輸入価格の上昇で原価率が上がりやすい。寿司は魚の相場、居酒屋は宴会需要の回復に左右される。三つの業態の波が重なる点が、多業態の難しさだ。
資本政策と M&A
資本政策は、安定配当が基本だが、実際の配当は1株あたりごく小さく、総額は約1.2億円で、赤字の中でも出している。
自社株買いはない。借入が増えているため、利益が出ない限り還元を増やす余力はない。筆者は10年の配当を中立で12億円ほどと置いた。
株主優待は年2回あり、100株以上に10%の割引券、1,000株以上に優待券が出る。費用は有報に書かれておらず、筆者は年1億円ほどと推定した(根拠は弱い)。優待は株主が受け取る還元なので、10年で10億円を還元に足した。費用は利益から引き済みで、自己資本の流れには入れていない。
親会社のジー・コミュニケーションが過半を持つ。M&Aは新業態の獲得に使うが、買収した店を入れ替えるたびに減損が出ている。関係会社への貸付も7億円ある。親会社の関係者との取引の透明性は、少数株主には見えにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
赤字の主因は減損と税の調整で、営業利益は黒字を保った。2027年3月期は営業利益4億円、純利益1億円を会社が見込む。人材の定着と既存業態の見直しが進めば、利益は戻る。
外食は、値上げが通る環境にある。物価が上がる中で、客単価を上げられれば、売上は伸びる。親会社のグループ力があり、新業態や店舗の譲り受けで店を増やせる。海外の店は18店と小さいが、FC方式で資本をかけずに広げられる。
店舗の入れ替えが一巡すれば、減損も止まる。EBITDAは前期の6億円から、会社の目標では9億円に増える。その段階で営業利益は3%を超え、過去の最高圏に近づく。優待も株主を支える。
看板に頼らず、仕入れを共通化する余地がある。同じ親会社の下でグループの店舗に共通の食材を回せば、仕入れ値が下がる。
売上は242億円と一定の規模があり、損益分岐点を超えると利益が急に増える構造だ。固定費をまかなえれば、追加の売上の多くが利益になる。会社が見込む2027年3月期の営業利益4億円は、その入り口にあたる。
慎重な見方
会社は何年も赤字と減損を繰り返してきた。営業利益率は1%を切り、人件費と食材費の上昇を吸収できていない。会社の目標のEBITDA11億円も未達だった。
外食は人口減で客数が細る。多業態は、それぞれが小さく、規模の経済が働かない。M&Aと出店に12億円を使い、借入が増えた。営業利益は支払利息の1.6倍しかなく、金利が上がると利益が消える。
店は賃借で、家賃は景気が悪くなっても減らない。悲観では売上が落ちたぶんだけ赤字が広がる。優待があっても、本業の稼ぐ力は変わらない。
時価総額は自己資本の2.7倍で、純利益は赤字だ。期待で値段が付いており、実績の裏づけはない。親会社が過半を持つので、少数株主には事業の方向を決める力がない。
新しい業態を買っても、既存の店の改装ばかりに投資が回り、成長の種が育たない。借入で買って減損する構図が、何年も繰り返されている。
2026年3月期の最終赤字は、減損と税の調整が理由だが、前の期も撤退損で赤字だった。一過性と呼ぶには回数が多すぎる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がはるかに強い。稼ぐ力が弱く、回復は会社の計画にしか根拠がない。
確率は中立に4割を置き、悲観側に4割弱を厚く置いた。上振れは2割強にとどめた。10年後の価値は今の時価総額を大きく下回る。バリュー投資の目では、期待だけで高い値段が付く事業に安全域はない。
バリュー投資の目では、稼ぐ力に見合う値段を大きく上回る株に、上振れの確率を厚く置く理由はない。親会社の関係者との取引が多い点も、評価を下げる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 18 円42 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 8 円20 億円)。 今の値に割り戻すと 13 円31 億円、今との差 −80.9%、 期待の年率 −9.4%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 52 円122 億円 | 15 円35 億円 | −4.8% | −0.5% | 3 円8 億円 |
| やや楽観 | 17% | 30 円72 億円 | 12 円28 億円 | −39.6% | −4.9% | 7 円17 億円 |
| 中立 | 40% | 17 円40 億円 | 9 円22 億円 | −62.4% | −9.3% | 11 円25 億円 |
| やや悲観 | 26% | 11 円25 億円 | 6 円14 億円 | −76.4% | −13.4% | 4 円10 億円 |
| 悲観 | 12% | 3 円8 億円 | 2 円5 億円 | −92.1% | −22.4% | 1 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 18 円42 億円 | 8 円20 億円 | −62.9% | −9.4% | 26 円61 億円 |
今の株価時価総額 70 円165 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 5% 楽観:業態の整理が実り、利益率が4%台に乗る 利益 10 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 52 円122 億円
不採算の業態を閉じ、焼肉と寿司に資源を集める。客数は実質で5%増え、客単価は1.4倍に上がる。営業利益率は4%台と、過去12年の最高の3.4%を超える。フランチャイズが国内外で広がり、直営の比率が下がって利益の質が上がる。
賃金の上昇は値上げで吸収し、DXと配膳ロボットで人手を減らす。EBITDAは会社の目標を大きく超える。10年後の売上は350億円台になる。この水準に達しても、資本コストを大きく上回るほどの稼ぎにはならない。
親会社のグループが新業態を後押しし、海外のFCも広がる。赤字と減損の歴史が終わり、投資の効率が改善する。ここまで良くなっても、10年後のROEは資本コストを少し超える程度だ。
- 外食店舗の運営(直営290店・FC収入):数量 9.1(延べ来店客数(百万人。推定))× 価格 3.92(客単価(千円・名目))→ 売上 356 億円・営業利益 16 億円。客数 9.09 百万人(今の 1.05 倍)× 客単価 3.92 千円(今の 1.40 倍)、営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.72 倍、時価総額 122 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:楽観は、多業態の整理と値上げ、新業態が同時に当たる筋書き。赤字の実績から確率は低めに置いた。
やや楽観 17% やや楽観:目標に近づくが、利益率は3%台前半 利益 6 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 30 円72 億円
既存店の客数は横ばいで、客単価が物価並みに1.37倍に上がる。不採算店を閉じ、減損が止まる。営業利益率は3%台前半と、過去12年の最高圏に並ぶ。10年後の売上は330億円ほど、営業利益は11億円になる。
親会社のグループ力で新業態を買い、うまく入れ替える。ただし、賃金の上昇と家賃で、利益率は3%台を超えない。
優待の費用は小さく、客の来店のきっかけとしてむしろ売上に寄与する。10年後の自己資本は80億円台に積み上がる。売上は10年で330億円ほどに伸びるが、その大半は物価による客単価の上昇で、客数は増えない。
- 外食店舗の運営(直営290店・FC収入):数量 8.7(延べ来店客数(百万人。推定))× 価格 3.84(客単価(千円・名目))→ 売上 332 億円・営業利益 11 億円。客数 8.66 百万人(今の 1.00 倍)× 客単価 3.84 千円(今の 1.37 倍)、営業利益率 3.3%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 72 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:やや楽観は、会社の目標のEBITDAに近づく筋書き。
中立 40% 中立:赤字は脱するが、利益率は2%台 利益 3 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 17 円40 億円
客数は実質で5%ほど減り、客単価は物価並みに1.34倍に上がる。値上げは通るが、賃金と食材費の上昇に追いつく程度で、利益率は2%台にとどまる。10年後の売上は310億円、営業利益は7億円になる。純利益は3億円台だ。
店の入れ替えは続き、改装や出店の投資は年12億円ほど。減価償却は今の設備のぶんは増えず、新しい設備のぶんだけが足される。賃金と家賃は物価で上がる。優待の費用は年1億円ほどで、利益から引き済みだ。還元は配当が10年で12億円、優待の受け取りが10億円と置いた。
10年後のROEは4〜5%で、資本コストの9.5%に届かない。事業の稼ぐ力は、積み上がる自己資本を使いこなせていない。
- 外食店舗の運営(直営290店・FC収入):数量 8.2(延べ来店客数(百万人。推定))× 価格 3.75(客単価(千円・名目))→ 売上 309 億円・営業利益 7 億円。客数 8.23 百万人(今の 0.95 倍)× 客単価 3.75 千円(今の 1.34 倍)、営業利益率 2.2%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 40 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中立は、赤字を脱するが利益は薄く、資本コストに届かない筋書き。
やや悲観 26% やや悲観:客数が減り続け、営業利益は今と同水準 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 11 円25 億円
客数は実質で1割以上減り、値上げは客離れにつながって客単価は1.28倍にとどまる。賃金と家賃は物価並みに上がる。営業利益率は1%を切り、今の水準が続く。10年後の売上は270億円、営業利益は1億円台になる。
減損が続き、店舗の入れ替えに使う資金も細る。借入の利息が重く、配当を維持するのがやっとだ。優待は続けるが、金額は縮める。
還元(配当と優待の受け取り)は利益の合計を上回り、手元の現金と借入で払う形になる。自己資本は横ばいで、事業の成長はない。店舗は少しずつ減り、残った店の改装にお金を使い続ける。営業利益は今と同じ水準で、10年を通して資本コストに届く年はない。
- 外食店舗の運営(直営290店・FC収入):数量 7.6(延べ来店客数(百万人。推定))× 価格 3.58(客単価(千円・名目))→ 売上 273 億円・営業利益 1 億円。客数 7.62 百万人(今の 0.88 倍)× 客単価 3.58 千円(今の 1.28 倍)、営業利益率 0.5%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロか赤字なので、売れる資産の換金価値で置く。今の自己資本 62 億円×0.40=約 25 億円。営業利益がほぼ出ない筋書きなので EV ÷ 営業利益は意味を持たない。
確率:やや悲観は、人口減と中食への流出で客数が減り、利益が出ない筋書き。
悲観 12% 悲観:家賃が残り、赤字が広がる 利益 −7 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 3 円8 億円
景気の悪化と中食への流出で、客数が実質で2割以上減る。値上げは通らず、客単価は1.15倍にとどまる。売上が落ちても家賃は減らず、営業利益率は−3%に沈む。借入を返せなくなる場面が出て、親会社の支援が前提になる。
減損が続き、自己資本は薄くなる。優待は半分に縮め、配当は止まる。株主の取り分は、事業の存続を前提にした小さな価値になる。
親会社が支えるか、事業を売るかの岐路に立つ。売れる資産は店舗設備と差入敷金で、家賃の約束を引くと、ほとんど残らない。食材の高騰と賃金の上昇が重なり、値上げしても追いつかない。多業態のうち、人気の業態だけが残る。
- 外食店舗の運営(直営290店・FC収入):数量 6.8(延べ来店客数(百万人。推定))× 価格 3.22(客単価(千円・名目))→ 売上 217 億円・営業利益 −7 億円。客数 6.75 百万人(今の 0.78 倍)× 客単価 3.22 千円(今の 1.15 倍)、営業利益率 -3.0%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロか赤字なので、売れる資産の換金価値で置く。今の自己資本 62 億円×0.13=約 8 億円。営業利益がほぼ出ない筋書きなので EV ÷ 営業利益は意味を持たない。
確率:悲観は、売上が落ちても家賃が残り、赤字が広がる構造的な負けの筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
外食店舗の運営(直営290店・FC収入)
焼肉、寿司、居酒屋などの直営店の売上と、FC店からの収入。
| 数量延べ来店客数(百万人。推定) | 価格客単価(千円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.7 | 2.80 | 243 | 2 |
| 10 年後 中立 | 8.2 | 3.75 | 309 | 7 |
取り方:客数と客単価は開示がなく、売上242.5億円を客単価約2.8千円(焼肉・寿司・居酒屋の平均の推定)で割り、延べ約866万人とした。百万人×千円×10=億円。FC収入は直営の売上に含めた。営業利益は全社の1.6億円(単一セグメント)。
リスクと懸念
原材料・人件費の上昇を転嫁できない
牛肉や魚は輸入に頼り、賃金は毎年上がる。値上げが客離れを招けば、利益は消える。2026年3月期は営業利益が前の期の3分の1になった。
店舗の賃借と固定費
店は賃借で、家賃は売上が落ちても減らない。家賃は年17億円ほどと推定され、解約不能の約束は純有利子負債より重い。新リース会計基準で数字の形が変わっても、約束の重さは変わらない。
減損と事業撤退の繰り返し
2025年3月期は撤退損と減損で約10億円、2026年3月期も減損が約2億円出た。店舗の入れ替えのたびに自己資本が削られる。
借入の増加と金利
当期は長期借入で33億円を調達し、19億円を返した。営業利益は支払利息の1.6倍しかない。借入の金利が3.5%に上がると、利払いが利益を直接削る。
親会社との関係
親会社のジー・コミュニケーションが議決権の50.3%を持つ。資金援助と経営指導を受け、著作権の使用契約もある。少数株主は経営の方向を決められない。
食中毒・人手不足
広域の食中毒が起きれば営業停止になり、多業態のブランドが傷つく。人手の確保と定着は引き続き難しく、賃金の上昇が止まらない。
今後の分かれ目
- 営業利益が2期続けて5億円を超えたら
- 店舗の整理が進んだとして、中立の利益率を上げ、やや楽観側の確率を上げる。
- 減損が3期続けて出たら
- 店舗の入れ替えの失敗が続くとして、悲観側に確率を寄せる。
- 既存店の客数が前年を上回り続けたら
- 客数の前提を上げ、中立を見直す。
- 親会社が出資比率を引き上げたり、非上場化を提案したりしたら
- 価値の計算には入れていないので、別に見る。
- 長期借入がさらに増え、自己資本比率が30%を割ったら
- 財務の安全度が下がったとして、quality の借金の項を上げる。
- 優待の内容が縮小されたら
- 株主還元の受け取りが減るため、優待の見込みを下げる。
見ておくもの
- 営業利益と減損の有無
- 既存店の客数・客単価
- 借入と自己資本比率
- 優待の内容と配当
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。k は 8.5%(quality の合計 +2.0%)、g は 4%、ROE が k 未満の中立は上限 1÷k 以下に置いた。今の PER・PBR や、同業の倍率には寄せていない。悲観側は稼ぐ力でなく売れる資産の換金価値で置いた。客数と客単価は開示がなく推定なので、数量は客数の変化率で動かした。家賃は固定費として残り、売上が落ちる筋書きで利益率に入れた。新リース会計基準(2028年3月期から)で借入とリース負債が増えるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。減価償却は今の設備のぶんを増やさず、改装・出店のぶんだけ足した。優待は費用ベースで年1億円(推定)として、還元に足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.7→12.72 倍・やや楽観 PER 9.5→11.76 倍・中立 PER 9.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality 2.0%=9.5%。赤字が続くが、財務の存続に疑いがあるほどではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 8.50%。