結論
一家ホールディングスは、「屋台屋博多劇場」など低価格の居酒屋を首都圏で 87 店営む会社だ。東京タワー前の結婚式場と、バーベキューやリゾートのレジャー施設も持つ。筆者の結論は、今の値段は割高だというものだ。
理由は、稼ぐ力に比べて値段が高すぎることにある。2026/03 期の営業利益は 2.5 億円、純利益は 0.8 億円で、今の時価総額は純利益の 60 倍を超える。飲食の利益率は 5% 弱にとどまり、結婚式場とレジャーはまだ赤字だ。
財務も薄い。自己資本は 10 億円しかなく、借金は手元の現金を差し引いても 20 億円ある。店の家賃は年 12 億円と、営業利益の 5 倍近い固定の約束だ。客が減っても家賃は減らない。
10 年で見ると、店を増やしながら 1 店あたりの稼ぎを保てるかが分かれ目になる。低価格の居酒屋は若い人の酒離れと人手の不足に挟まれ、市場は細る方向にある。筆者は、店がうまく増えても、今の値段に見合う利益まで届くのは楽観の筋書きだけだと見る。株主優待の食事券は手厚いが、それを足しても値段の高さは埋まらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は長く持ちたい事業に入りにくい。低価格の居酒屋は参入が簡単で、値上げも難しい。利益は薄く、景気や感染症の流行のような出来事で一度に消える。10 年後の稼ぎを自信を持って言えない事業だ。
オーナー利益はさらに少ない。店を出すたびに内装と設備に投資が要り、古い店も数年ごとに手を入れる必要がある。減価償却は昔の値段のままでも、新しい店の内装は建築費の上昇で高くなる。家賃は毎年必ず払う約束で、借金と同じように重い。
経営者の意思決定の速さは評価できるが、結婚式場やリゾートへの広がりは、居酒屋で稼いだ利益を薄める結果になっている。資本の使い方としては疑問が残る。
安全域で見ると、今の値段は純利益の 60 倍を超える。店が順調に増えても、この値段に見合うのは楽観の筋書きだけだ。払う値段に対して、安全域は見当たらない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は居酒屋だ。主力の「屋台屋博多劇場」は、博多の屋台の雰囲気を店の中に再現し、もつ鍋や焼き鳥を安く出す。2026/03 期末で 47 店あり、会社の店の半分を占める。ほかに「大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん」が 15 店、寿司とおでんの「にのや」が 10 店、「こだわりもん一家」「肉のウヱキ」「韓国屋台ハンサム」が続く。すべて直営で、首都圏の駅前が中心だ。
飲食の売上は 89 億円、利益は 4.2 億円で、利益率は 4.7% だった。1 店あたりの売上は年 1 億円ほどで、小さな店を数多く回す形をとる。毎年数店を出し、売れない店は業態を変えるか閉じる。2026/03 期は 3 店を出し、4 店を閉じた。
二つ目はブライダルだ。東京タワー前の「The Place of Tokyo」で結婚式と法人の宴会を運営し、売上は 22 億円ある。立地の良さで客を集めるが、利益はほぼ出ていない。
三つ目はレジャーで、バーベキューとビアガーデンの 3 店と、2025 年 11 月に開いたボタニカルリゾート「林音」を持つ。売上は 5 億円で、立ち上げの費用が重く 1.6 億円の赤字だった。
店は借りて営む。家賃は年 12 億円で、売上の 1 割にあたる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。低価格の居酒屋は参入が簡単で、駅前には同じような店が並ぶ。博多の屋台という見せ方は楽しいが、料理も値段も他社がまねできないものではない。客は安さと雰囲気で店を選び、飽きれば次の店に移る。
会社の強みは業態を作り替える力だ。売れない店をすぐに別の業態に変え、ジンギスカンや寿司など新しい看板を次々に試してきた。社長の武長太郎氏が大株主として経営を率い、意思決定は速い。
弱みは財務と利益の薄さだ。コロナの時期に赤字を出して自己資本は細り、今も自己資本比率は 15% しかない。借金は手元の現金を引いても 20 億円あり、家賃と合わせた固定の約束は重い。ROE は過去 5 年の中央値で 8% と、資本コストに届かない。
結婚式場とレジャーは、居酒屋で稼いだ利益を食っている。異なる事業に手を広げることで、経営の力が分散している面もある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
居酒屋の市場は長い目で見て細っている。若い人の酒離れが進み、会社の飲み会も減った。コロナの間に多くの人が家で飲む習慣を身につけ、夜の外食はまだ以前の水準に戻りきっていない。人口が減る中で、客の数は年に少しずつ減る方向にある。
一方で、低価格の居酒屋には根強い需要がある。物価が上がる中で、安く飲める店は財布にやさしい。訪日客も、日本らしい居酒屋の雰囲気を求めて足を運ぶ。駅前の好立地の店は、客の数を保ちやすい。
費用の面では逆風が強い。食材の値段は上がり続け、アルバイトの時給も毎年上がる。人手が足りず、店を開けたくても人が集まらない例も増えている。低価格を売りにする店は、値上げをすると客が離れるので、上がった費用を値段に転嫁しにくい。
競合は多い。鳥貴族やワタミ、ヨシックスの「や台ずし」、ホリイフードサービスなど、低価格の居酒屋を営む会社がひしめく。大手は仕入れの量で原価を下げ、店の作業を機械で省いている。小さな会社が勝ち残るには、業態の新しさと出店の場所選びで差をつけるしかない。
筆者は、10 年で市場の量はやや減り、強い店と弱い店の差が広がると見る。値段は物価にやや負けるだろう。
資本政策と M&A
配当は設立以来出していない。利益を店の出店と借金の返済に回す方針だ。代わりに株主優待で食事券を配る。3 月と 9 月の年 2 回、持ち株の数に応じて電子の食事券が届き、100 株でも年に数千円分の食事ができる。
優待の費用の開示は見つからなかった。上位 12 名の株主が 4 割弱を持ち、残りは多くの個人株主に散らばる。筆者は、株主が 1 万人前後、会社の負担は食材の原価で年 1.6 億円ほどと見る。これは株主への還元で、10 年の還元に入れた。費用はすでに利益から引かれており、自己資本の流れには入れていない。
大きな買収の歴史は無く、資本は自前の出店と、結婚式場やリゾートの開業に使われてきた。社長と資産管理の会社で 3 割強を持ち、経営の方針は社長の判断が強く効く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会社は店を増やす力を持っている。博多の屋台、ジンギスカン、寿司とおでんと、新しい業態を作っては当て、売れない店はすぐに作り替える。2026 年の春から秋だけで 7 店の出店を予定しており、首都圏の駅前にはまだ出す場所がある。10 年で店の数が 5 割増えるのは無理な話ではない。
利益も回復の途中だ。コロナの赤字と、レジャーの立ち上げの費用で利益が抑えられていたが、2026/03 期は黒字に戻った。林音が通年で稼ぎ、結婚式場も宴会の需要が戻れば、赤字の事業が利益に変わる。会社の予想では、利益はこの先も伸びる。
低価格の居酒屋は、物価が上がる世界でこそ選ばれる。安く飲める店は財布にやさしく、訪日客も日本らしい雰囲気を求めて来る。株主優待の食事券は手厚く、個人の株主を引きつけている。自己資本が薄いぶん、利益が少し増えるだけで ROE は大きく上がる。
出店の余地、業態の作り替え、赤字の事業の黒字化という三つの道があり、どれか一つが当たれば利益は今の数倍になる。経営者が大株主で、決断が速いのも強みだ。
慎重な見方
今の値段は純利益の 60 倍を超える。利益が倍、さらに倍になっても、ようやく普通の値段に届く程度だ。成功を何重にも先取りしている。
居酒屋の市場は細っている。若い人は酒を飲まなくなり、会社の飲み会も減った。食材とアルバイトの時給は上がり続けるが、低価格を売りにする店は値上げをすると客が離れる。利益率は 5% 弱で、費用が少し上がるだけで消える。鳥貴族のような大手は仕入れの量と店の作業の省力化で原価を下げており、小さな会社は不利だ。
財務は薄い。自己資本は 10 億円で、借金は現金を引いても 20 億円ある。家賃は年 12 億円と営業利益の 5 倍近い。客が 1 割減れば、家賃と人件費が残って赤字になる。コロナの時期にはその通りのことが起きた。結婚式場とレジャーは、居酒屋の稼ぎを食い続けている。
株主優待は手厚いが、利益が細れば真っ先に縮められる。優待を目当てに集まった株主は、優待が細れば一斉に離れる。今の値段を支えているものの多くは、事業の稼ぎではない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。店を増やす力と業態を作り替える速さは本物だが、それは今の値段の高さを正当化するほどのものではない。居酒屋の市場は細り、費用は上がり、家賃という固定の約束は重い。確率は中立を中心に置き、やや悲観と悲観にも十分な重みを置いた。楽観の筋書きでようやく今の値段を超える。店の数が増えることと、株主の価値が増えることは別の話だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 619 円46 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 200 円15 億円)。 今の値に割り戻すと 370 円27 億円、今との差 −46.1%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 9.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,675 円123 億円 | 290 円21 億円 | +186.6% | +11.1% | 157 円12 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,109 円82 億円 | 248 円18 億円 | +97.8% | +7.1% | 271 円20 億円 |
| 中立 | 36% | 668 円49 億円 | 224 円17 億円 | +30.0% | +2.7% | 321 円24 億円 |
| やや悲観 | 22% | 80 円6 億円 | 168 円12 億円 | −63.8% | −9.7% | 55 円4 億円 |
| 悲観 | 14% | 41 円3 億円 | 67 円5 億円 | −84.4% | −16.9% | 15 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 619 円46 億円 | 200 円15 億円 | +19.4% | +1.8% | 819 円60 億円 |
今の株価時価総額 686 円51 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 店を 130 店に増やし、赤字の事業も稼ぐ 利益 9 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,675 円123 億円
会社は新しい業態を次々に当て、首都圏の外にも店を広げる。10 年で店は 130 店に増え、1 店あたりの売上は物価を少し上回って伸びる。訪日客が日本らしい居酒屋を求めて増え、駅前の店は混み合う。仕入れの量が増えて原価が下がり、飲食の利益率は 6.5% に上がる。結婚式場は宴会の需要で黒字に戻り、林音も通年で稼ぐ。借金は増えずに済み、利払いは年 1 億円ほどにとどまる。会社は配当を始め、株主優待も続ける。ROE は資本コストを大きく上回る。出店の費用は自前の利益で賄え、財務の薄さは解消に向かう。優待の費用は毎年の利益からすでに引かれており、株主の受け取りとして還元に足している。
- 飲食(居酒屋):数量 130(直営の店の数(店・期末))× 価格 1.41(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 184 億円・営業利益 12 億円。130 店 × 1 店 1.41 億円(今の 1.38 倍)、営業利益率 6.5%
- ブライダル:数量 1,250(婚礼・宴会の件数(件・年、推定))× 価格 0.02(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。1250 件 × 1 件 2484 万円(今の 1.38 倍)、営業利益率 6.0%
- レジャー:数量 7.0(施設の数(か所))× 価格 1.63(1 か所あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。7 か所 × 1 か所 1.63 億円(今の 1.40 倍)、営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.8% が k 9.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.25 倍、時価総額 118 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新しい業態が当たり続け、首都圏の外にも店を広げ、結婚式場とレジャーも黒字になる筋書き。三つの事業が同時にうまくいく必要があり、確率は低く置いた。
やや楽観 20% 店を増やし、居酒屋で堅く稼ぐ 利益 6 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 1,109 円82 億円
毎年数店ずつ店を出し、売れない店を作り替えながら、10 年で 115 店になる。1 店あたりの売上は物価並みに上がる。食材と人件費の上昇は値上げで吸収し、飲食の利益率は 5.8% を保つ。結婚式場は小さな黒字に戻り、林音とビアガーデンもようやく利益を出す。借金は出店の分だけ増えるが、利払いは年 1 億円ほどで済む。配当はわずかに始まり、株主優待は今と同じく続く。ROE は資本コストを上回るが、利益の規模はまだ小さい。財務は少しずつ厚くなり、家賃の重さも和らぐ。優待の費用は毎年の利益からすでに引かれており、株主の受け取りとして還元に足している。
- 飲食(居酒屋):数量 115(直営の店の数(店・期末))× 価格 1.37(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 158 億円・営業利益 9 億円。115 店 × 1 店 1.37 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 5.8%
- ブライダル:数量 1,150(婚礼・宴会の件数(件・年、推定))× 価格 0.02(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。1150 件 × 1 件 2412 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 4.0%
- レジャー:数量 6.0(施設の数(か所))× 価格 1.60(1 か所あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。6 か所 × 1 か所 1.60 億円(今の 1.37 倍)、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.3% が k 9.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.43 倍、時価総額 78 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:毎年数店ずつの出店が続き、レジャーの赤字が消える形。2026 年の出店の計画と業績の回復の流れを延ばせば届く。
中立 36% 店は少し増えるが、利益は薄いまま 利益 4 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 668 円49 億円
10 年後の店の数は 100 店前後だ。新しい店を出す一方で、客が減った店は閉じる。居酒屋の市場が細る中で、1 店あたりの客数は少しずつ減り、1 店あたりの売上は物価に少し負けて今の 1.3 倍にとどまる。飲食の利益率は 5% で、食材と人件費の上昇を値上げでぎりぎり吸収する形だ。結婚式場は婚礼の減りを宴会で補い、小さな利益を出す。林音は黒字になるが、規模は小さい。借り換えで利払いは年 1 億円ほどに増える。配当は出さず、株主優待だけが続く。自己資本は利益の積み上げで少しずつ厚くなるが、家賃の約束の重さは変わらない。優待の費用は毎年の利益からすでに引かれており、株主の受け取りとして還元に足している。
- 飲食(居酒屋):数量 100(直営の店の数(店・期末))× 価格 1.33(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 133 億円・営業利益 7 億円。100 店 × 1 店 1.33 億円(今の 1.30 倍)、営業利益率 5.0%
- ブライダル:数量 1,100(婚礼・宴会の件数(件・年、推定))× 価格 0.02(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。1100 件 × 1 件 2340 万円(今の 1.30 倍)、営業利益率 2.0%
- レジャー:数量 5.0(施設の数(か所))× 価格 1.56(1 か所あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。5 か所 × 1 か所 1.56 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.4% が k 9.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.39 倍、時価総額 48 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店の数は出店と閉店を差し引いて少し増え、利益率は 2026/03 期並みに落ち着く形。居酒屋の市場の細りと費用の上昇を見ると、最もありそうな姿だ。
やや悲観 22% 客が減り、家賃と人件費が利益を食う 利益 1 億円 · PER 8.7 倍 · 株価時価総額 80 円6 億円
若い人の酒離れが進み、会社の飲み会もさらに減る。客を呼ぶための値下げと、上がり続けるアルバイトの時給に挟まれ、飲食の利益率は 3% に落ちる。人が集まらず、店を閉じる例も出る。店の数は 85 店に減る。家賃は客が減っても下がらず、固定の費用として利益を削る。結婚式場は婚礼の減りで赤字になり、林音も客が伸びない。利払いは年 1 億円を超え、最終利益はわずかしか残らない。株主優待は縮められる。財務は薄いまま、次の谷に備える余力も乏しい。優待の費用は毎年の利益からすでに引かれており、株主の受け取りとして還元に足している。
- 飲食(居酒屋):数量 85.0(直営の店の数(店・期末))× 価格 1.25(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 106 億円・営業利益 3 億円。85 店 × 1 店 1.25 億円(今の 1.22 倍)、営業利益率 3.0%
- ブライダル:数量 900(婚礼・宴会の件数(件・年、推定))× 価格 0.02(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 −1 億円。900 件 × 1 件 2160 万円(今の 1.20 倍)、営業利益率 -3.0%
- レジャー:数量 4.0(施設の数(か所))× 価格 1.40(1 か所あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。4 か所 × 1 か所 1.40 億円(今の 1.20 倍)、営業利益率 -8.0%
倍率:事業の ROE 3.9% が k 9.75% を下回るので PER は 1÷k の 10.8 倍まで。稼ぐ力(純利益÷k)を上限に、その 8 割の 8.7 倍。
確率:居酒屋の客離れと人件費の上昇が重なる形。低価格の店は値上げで客を失いやすく、慎重な見方に十分な重みを置いた。
悲観 14% 客が戻らず、借金と家賃が残る 利益 −5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 41 円3 億円
感染症の流行や深い不況で、夜の外食が長く冷え込む。客足は戻らず、会社は店を 60 店まで減らす。閉じた店の内装は減損で消え、原状回復の費用もかかる。家賃と人件費が残り、飲食は赤字になる。結婚式場は手放すか規模を縮め、レジャーも閉じる。借金の返済のために、銀行の求めで資産を売る。株主優待は数年でやめる。薄い自己資本は損失で削られ、株主に残るのは、敷金と保証金の回収から借金を返した後のわずかな正味だけになる。優待の費用は毎年の利益からすでに引かれており、株主の受け取りとして還元に足している。会社は存続しても、もう店を増やして育つ会社とは呼べない姿になる。
- 飲食(居酒屋):数量 60.0(直営の店の数(店・期末))× 価格 1.13(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 68 億円・営業利益 −2 億円。60 店 × 1 店 1.13 億円(今の 1.10 倍)、営業利益率 -3.0%
- ブライダル:数量 600(婚礼・宴会の件数(件・年、推定))× 価格 0.02(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 −1 億円。600 件 × 1 件 1980 万円(今の 1.10 倍)、営業利益率 -10.0%
- レジャー:数量 2.0(施設の数(か所))× 価格 1.28(1 か所あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 −1 億円。2 か所 × 1 か所 1.28 億円(今の 1.10 倍)、営業利益率 -20.0%
倍率:赤字なので PBR で。稼ぐ力は残らず、敷金と保証金の回収から借金を返した後の正味(約 3 億円)を床とし、今の自己資本に 0.29 倍を掛けた。
確率:感染症の流行や深い不況で夜の外食が長く冷え込む、コロナの再来に近い筋書き。自己資本が薄く家賃の約束が重いので、無視できない重みを置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
飲食(居酒屋)
屋台屋博多劇場・大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん・にのやなど、低価格の居酒屋を首都圏中心に直営で営む。
| 数量直営の店の数(店・期末) | 価格1 店あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 87.0 | 1.02 | 89 | 4 |
| 10 年後 中立 | 100 | 1.33 | 133 | 7 |
取り方:店の数は 2026/03 末の直営 87 店(開示)。価格は飲食の売上 89.05 億円 ÷ 87 店。期中の出退店で既存店の 1 店あたりの売上とは少しずれる。1 店あたりの売上は客数 × 客単価で、客数は実質、物価は客単価に入れる。
ブライダル
東京タワー前の The Place of Tokyo で結婚式と宴会を運営する。
| 数量婚礼・宴会の件数(件・年、推定) | 価格1 件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,200 | 0.02 | 22 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,100 | 0.02 | 26 | 1 |
取り方:件数の開示は無いので推定。ブライダルの売上 21.59 億円を、婚礼と法人の宴会を合わせて年 1,200 件・1 件あたり平均 180 万円とみた。
レジャー
バーベキュー・ビアガーデンの 3 店と、2025 年 11 月に開いたボタニカルリゾート「林音」。
| 数量施設の数(か所) | 価格1 か所あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 1.17 | 5 | −2 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 1.56 | 8 | 0 |
取り方:施設の数は 4 か所(開示)。価格はレジャーの売上 4.67 億円 ÷ 4。林音は 2025 年 11 月の開業で、通年の売上はまだ入っていない。
リスクと懸念
家賃という固定の約束
店の家賃は年 12 億円で、営業利益の 5 倍近い。客が減っても家賃は減らず、売上が 1 割落ちれば利益は消える。2028/03 期からは新しいリース会計で家賃の約束が借金と同じように貸借対照表に載り、財務の薄さがよりはっきり見えるようになる。
人手の不足と人件費
居酒屋はアルバイトに支えられている。時給は毎年上がり、人が集まらずに店を開けられない例も増えている。低価格を売りにする店は、上がった人件費を値段に乗せにくい。
居酒屋の市場の細り
若い人の酒離れと会社の飲み会の減少で、居酒屋の市場は長い目で見て細っている。業態の寿命も短く、当たった店もいずれ飽きられる。新しい業態を当て続けられなければ、店の数を保てない。
薄い財務
自己資本は 10 億円で、自己資本比率は 15% しかない。借金には財務の特約が付いたものもあり、赤字が続けば返済を求められるおそれがある。コロナのような出来事がもう一度起きれば、資本は一気に削られる。
赤字の事業
結婚式場とレジャーは 2026/03 期に合わせて 2 億円近い赤字を出した。婚礼の数は人口とともに減り、リゾートの集客も読みにくい。居酒屋で稼いだ利益を食い続ければ、会社全体の稼ぐ力は上がらない。
今後の分かれ目
- 既存店の売上が 2 年続けて前の年を下回ったら
- 居酒屋の客離れが進んでいるとみて、やや悲観と悲観に重みを移す。
- 飲食の利益率が 6% を超えて定着したら
- 仕入れと店の効率が上がった証拠とみて、やや楽観の重みを上げる。
- 林音と結婚式場が通年で黒字になったら
- 赤字の事業が利益に変わるとみて、中立の利益を見直す。
- 配当を始めたら
- 還元の方針が変わったとみて、還元の額を見直す。
- 閉店と減損が年に 5 店を超えたら
- 業態の寿命が短くなっているとみて、中立の店の数を下げる。
見ておくもの
- 既存店の売上と客数の前年比
- 店の数(出店と閉店)
- 飲食の利益率と人件費の比率
- 結婚式場とレジャーの損益
- 純有利子負債と家賃の額
倍率と資本コストの決め方
倍率は市場の値付けから置かず、事業の ROE と資本コスト 9.75% から正当化 PER を出し、その 8 割前後にした。今の PER 60 倍台には寄せていない。悲観は赤字で PBR を使い、床は敷金と保証金の回収から借金を返した後の正味にした。株主優待は原価で年約 1.65 億円と推定して還元に足し、自己資本の流れには入れていない(費用は利益から引き済み)ので、自己資本は今+純利益の合計で流した。新リース会計(2028/03 期から)で家賃の約束が負債に載るが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.17→13.25 倍・やや楽観 PER 10.96→12.43 倍・中立 PER 10.89→11.39 倍)。
資本コスト 9.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。