結論
アクシアル リテイリングは、新潟を地盤に原信、ナルス、フレッセイの3つの旗で食品スーパー131店を営む会社だ。売上は3000億円に近く、純現金は300億円を超える。新潟で圧倒的な地位を持ちながら、会社自身が今期は減益を見込む。
筆者は、10年の本質価値はおおむね今の値段の近辺とみる。強みは地域での店の密度と、自社の工場やPBで粗利を守る力だ。弱みは、人口が減る地盤、ドラッグストアや地元チェーンとの値引き競争、そして薄い利益率にある。営業利益率は4%前後で、1ポイント動けば利益が4分の1動く。
余った現金は100億円強あるとみる。ただ毎年積み上がり、戻しは安定していない。筆者は半分だけ価値として数え、残りは足元の運転資金と店の更新に使われるとみた。
結論は、強気にも慎重にも寄せにくいということだ。中立では利益が年3%ほど伸び、還元を加えて今の値段に見合う。地元で勝ち続ける力は評価するが、安全域といえるほどの余裕はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「わかる事業」だ。10年後も人は食べ物を買い、新潟の人は原信で買い続ける可能性が高い。
ただ、わかりやすい事業が、すなわち利益が伸びる事業とは限らない。食品スーパーは薄利で、1店ごとの収益は大きくない。経営者が資本を賢く使う余地は、実は大きくない。
オーナーとして見るなら、気になる点は3つある。1つ目は、営業利益率が4%前後で頭打ちに近いこと。2つ目は、純現金が時価総額の約3割あり、戻し方が安定していないこと。3つ目は、新しい商圏への出店で成功した実績がまだ薄いことだ。
反対に好ましい点もある。借金がなく、金利が上がっても利益が減りにくい。むしろ現金の利息で少し増える。累進配当を掲げ、安定株主も厚いので、株主の不利益になる行動は取りにくい。
払う値段の安全域は、薄い。中立の価値は、今の値段と大差ない。余った現金を全部価値と数えれば割安にみえるが、それは戻る前提が要る。安全域といえるのは、悲観でも事業の価値がゼロにならない点だけだ。筆者は、このまま持ち続けたい会社ではあるが、どんな値段でも買いたい会社ではないと考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、毎日の食卓に並ぶ生鮮、総菜、日配品だ。新潟県を中心に、富山、長野、群馬へ店を広げ、2026年3月末で131店ある。内訳は原信が68店、フレッセイが50店、ナルスが13店だ。
原信は新潟の中心ブランドで、品ぞろえと鮮度で選ばれる。ナルスは新潟市周辺で、やや広域の商圏を狙う。フレッセイは群馬県で、地域の生活に密着した店づくりをしている。会社は商圏を広域向けの大型店と、小商圏向けの小型店に分けて出す方針を立てている。
儲けの質を決めるのは粗利だ。自社工場で総菜や加工品を作り、産地から直接仕入れる量を増やすことで、他社と同じ商品でも利益を残す。物流センターから店舗まで2時間で届けられる範囲を、出店の目安にしている。毎日の納品を基本にし、鮮度で差をつける考えだ。
今後の拡大は、甲信、北陸、北関東の新しい商圏が中心になる。長野のエリアセンターが動き出せば、長野方面の店は増やしやすい。ただし物流が回るまでは赤字を出しやすく、初期投資も重い。
人件費の上昇に備え、AIによる自動発注、スマートカート、セルフレジなど省人化を最重要テーマに置いている。
優良さと弱いところ
筆者の見立てでは、堀、つまり他社がまねできない強みは、新潟での店の密度と工場の内製にある。一方で、全国規模の優位ではなく地域の優位だ。
新潟の上位に位置するため、物流と広告費で有利に働く。自社工場で総菜を作る力も、同じ商品を同じ値段で売る相手に差をつける。ただドラッグストアは食品を価格の武器にし、地元のウオロクなども店を持っている。値決めは市場に握られやすい。
営業利益率は10年間ほぼ4%前後で、驚くほど安定している。景気が悪くても食品は売れるためだ。一方で、利益率が上がる局面も限られた。10年のROEは中央値で約10%。自己資本比率が66%と厚く、借金はない。この安全さは、資本効率を押し下げてもいる。
経営は堅実で、無理な買収をしない。社長の原和彦氏は個人でも株を持つ。第四北越銀行や個人の安定株主が控え、敵対的な買収には遭いにくい。その分、自社株買いの規律が弱くなりがちだ。
弱みは、新しい商圏の出店で採算を取れるかだ。過去20年に2回、株が増えて1株の価値が薄まった時期もある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
食品スーパーは国内の成熟市場だ。人口は減り、1店舗当たりの客数は細る。それでも売上が伸びるのは、物価で客単価が上がるからだ。
構造の変化は3つある。1つ目は、ドラッグストアや安売り業態が食品の取り扱いを広げ、価格比較が当たり前になったこと。2つ目は、最低賃金の上昇で人件費が毎年3〜5%上がること。3つ目は、中小の地元チェーンが再編され、持株会社化が進んでいることだ。
新潟はウオロクが県内で46店を出し、2022年にはマルイと提携した。群馬でも北関東の有力チェーンが並ぶ。地元の勝者が1社に絞られる市場ではなく、競争は続く。
セブン&アイやイオンのような全国チェーンは、グループの調達力で値下げの余力を持つ。ただ新潟のような積雪地では、冬の物流や店舗の運営力が差になる。地場の知名度と信頼で守れる部分は大きい。
10年後の需要は、量では横ばいから微減、金額では物価分だけ伸びる。営業利益率は粗利と人件費の押し合いで決まり、勝者でも4%前後が上限といえる。会社自身の予想(2027年3月期の営業利益117億円、前期比4%減)も、粗利の低下を理由にしている。
資本政策と M&A
還元は、配当と自社株買いの組み合わせだ。配当は連結の1株利益の約30%を目安とし、2027年3月期から5年は前期の水準を保つか増やす。
自社株買いは年ごとにばらつく。2026年3月期は約13億円、2025年3月期は約8億円で、2022年と2023年の3月期はゼロだった。配当と合わせた総還元は、利益の4割前後にとどまる。
その間に純現金は219億円(2025年3月期)から304億円(2026年3月期)に積み上がっている。筆者は、成長投資がまだ少ないことと、還元が控えめであることの両方がこの現金をつくっているとみる。
大株主には、第四北越銀行が約4.5%、個人の植木威行氏が約4%、社長の原和彦氏が個人と資産管理会社で約5%という構成だ。外から経営を動かす株主はまだ見当たらない。
M&Aでは、過去に1990年にこたやストアーの経営権を取った実績がある。直近の買収は確認できない。地方スーパーの再編は続いており、買う側にも買われる側にもなり得る。時価総額1,100億円で純現金が厚い点は、買われる側として魅力が高い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
原信の強さは数字に出にくい。新潟では店舗網が密で、物流と工場で他社より鮮度を保てる。この優位は10年たっても崩れにくい。
営業利益率はこの10年、3.9%から4.7%の範囲に収まった。景気が悪化しても食品の需要は落ちないので、利益の下振れが小さい。人件費が上がっても、省人化の投資とAI発注で吸収できる。
借金がなく、純現金が300億円ある。金利が3%まで上がると、現金の利息で利益が増える。会社は累進配当を打ち出しており、自社株買いも続けている。ためた現金はいずれ戻る。
成長の余地もある。長野のエリアセンターが動き、甲信、北陸、北関東の新しい商圏が開く。200店規模になれば、物流や仕入れの効率が一段と上がる。
さらにこの規模のスーパーは、買われる側としての魅力も大きい。全国チェーンが新潟を取りにくれば、大きなプレミアムが付く。時価総額が小さいうえ、純現金が厚いからだ。
結局、強気の核心は「地元で勝っている会社が、同じ型を隣の県に広げられる」という点にある。これが成り立てば、利益は物価を超えて伸び、現金の戻しも増える。
慎重な見方
今期の会社予想は営業利益で4%減だ。理由は競合激化による粗利率の低下で、すでに商売の環境が変わったことを会社自身が認めている。
ドラッグストアは食品を集客の道具にし、薬で利益を取るので食品を安く売れる。ディスカウントも広がる。地元のウオロクも店を増やし、価格競争は新潟と群馬で終わらない。これを自社工場とPBだけで押し返せるとは限らない。
人件費は毎年3〜5%ずつ上がる。売価を同じ速度で上げれば客が逃げる。1ポイントの利益率の低下が、営業利益で約4分の1の減少になる薄利の事業だ。
ためた現金も、見かけほど強くない。店は一部が賃借で、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。仕入れ代金の支払いを待ってもらう部分もあり、全部が自由に使える現金ではない。戻し方も年ごとにばらつく。
新商圏への出店は、物流が回り始めるまで赤字になりやすい。広域の商圏には大手が先に入っている。ROEは10%程度で、資本コストを大きく超えない。
どちらに重みを置いたか
どちらにも根拠があるが、中立に厚く置いた。強気の材料は地域の密度と、借金のない安定感だ。慎重な材料は、会社自身が認める粗利の圧力だ。
慎重な見方の方が足元の事実に近いので、確率は悲観側にやや寄せた。やや悲観を23%とし、楽観は8%にとどめた。ただ事業の価値がなくなる筋書きまでは置いていない。悲観は10%の構造的な負けにとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,001 円1,738 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 537 円466 億円)。 今の値に割り戻すと 1,394 円1,211 億円、今との差 +6.5%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 7.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,023 円2,625 億円 | 645 円560 億円 | +180.2% | +10.9% | 293 円255 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,548 円2,213 億円 | 599 円520 億円 | +140.4% | +9.2% | 692 円601 億円 |
| 中立 | 37% | 2,243 円1,948 億円 | 576 円500 億円 | +115.4% | +8.0% | 1,043 円906 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,350 円1,172 億円 | 461 円400 億円 | +38.3% | +3.3% | 416 円362 億円 |
| 悲観 | 10% | 583 円507 億円 | 345 円300 億円 | −29.0% | −3.4% | 93 円81 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,001 円1,738 億円 | 537 円466 億円 | +93.9% | +6.8% | 2,538 円2,204 億円 |
今の株価時価総額 1,309 円1,137 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 北関東・信越で勢圏が広がり、利益率も上がる 利益 145 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 3,023 円2,625 億円
原信、ナルス、フレッセイの3つの旗は、10年後に150店規模になる。長野の物流拠点が動き、甲信と北陸で出店が続く。地元チェーンの買収が加わる可能性もある。
売りの柱は、自社工場で作る総菜と生鮮、そして選ばれるPBだ。ほかのスーパーやドラッグストアが値引きで客を呼ぶ中でも、品質で客数を保つ。1店舗当たりの売上は、物価の分がほぼそのまま上乗せされる。
利益率は4.5%まで上がる。工場の内製、物流の集約、省人化が人件費の上昇を吸収する。ためた現金は配当と自社株買いで戻り続け、1株の価値も上がる。
10年後の姿を、ひとことで言えば「新潟の覇者が、隣県でも通用する会社になる」形だ。他社が真似しにくいのは、店ではなく、工場と物流の仕組みである。
- 食品スーパー事業:数量 150(店舗数(店))× 価格 30(1店舗当たり年間売上(億円。名目。来店客数の減りを含む))→ 売上 4,534 億円・営業利益 204 億円。営業利益率4.5%
倍率:事業の純利益 143 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 7.05% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 17.26 倍、時価総額 2,564 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自前の工場とPBで粗利を守り、新しい商圏にも出せるという筋は成り立つが、競合がすでに厳しい地域で、会社自身が予想で減益を見込んでいる。強気が全部そろう形は8%にとどめた。
やや楽観 22% 出店は計画どおり、利益率は今の水準を保つ 利益 123 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 2,548 円2,213 億円
店舗は140店前後まで増える。新潟、群馬、富山の既存の地盤を深め、長野方面に少しずつ出る。老朽店は建て替えか移転で入れ替える。
客数は人口減で細るが、中食と生鮮の強さで買上点数を守る。そのため1店舗当たりの売上は、物価の伸びから客数減を少し引いた程度で伸びる。
営業利益率は4.3%と、今よりわずかに高い。省人化の投資が人件費の上昇と釣り合い、競合の値下げ圧力も粗利をじわじわ削る程度にとどまる。配当は累進で増え、自社株買いも続く。
この筋書きの前提は、新しい商圏に出した店が、数年で黒字になることだ。初期の赤字が長引けば、利益率は4%台を保てない。
- 食品スーパー事業:数量 140(店舗数(店))× 価格 29(1店舗当たり年間売上(億円。名目。来店客数の減りを含む))→ 売上 4,126 億円・営業利益 177 億円。営業利益率4.3%
倍率:事業の純利益 121 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.05% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 16.72 倍、時価総額 2,118 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ドミナントの強さと累進配当は信じてよい材料。ただ粗利の圧力が足元で出ており、今の利益率を保つだけでも楽ではない。強気に寄せすぎず22%。
中立 37% 店は少し増え、利益率は今よりやや低い 利益 111 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 2,243 円1,948 億円
店舗は140店に届くかどうか。新潟と群馬では人口が減り、店を増やすより入れ替えが中心になる。長野方面の新店は、物流が回り始めるまで利益に貢献しにくい。
1店舗当たりの売上は物価に沿って伸びるが、来店客数は年0.5%ほど細る。結果として売上は10年で3割強の増加だ。
営業利益率は4.0%。今の4.1%と、会社が今期予想で示す3.9%の間に収まる。値上げは通るが、人件費と電気代の上昇が同じ速さで利益を削る。ROEはkをわずかに上回る程度で、再投資の稼ぎは普通になる。
筆者がいちばん現実に近いとみる筋書きだ。大きな成功も大きな失敗もなく、地元の強さが静かに続く。
- 食品スーパー事業:数量 140(店舗数(店))× 価格 29(1店舗当たり年間売上(億円。名目。来店客数の減りを含む))→ 売上 4,021 億円・営業利益 161 億円。営業利益率4.0%
倍率:事業の純利益 109 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.05% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 16.14 倍、時価総額 1,854 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:地域で圧倒的な位置にあり、必需品で需要は安定する。一方で会社の予想が減益で、粗利率の低下は競争が戻ってきた証拠。両方を受け止め、強気と慎重の中間に厚く置く。
やや悲観 23% 値引き競争で粗利が削られ、店の入れ替えも重くなる 利益 88 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 1,350 円1,172 億円
ドラッグストアの食品売場、ディスカウント、地元の有力チェーンとの値引き競争が長引く。原信は価格より品質で戦ってきたが、買い回りの客が減ると来店客数が年1%ずつ細る。
人件費が毎年上がるのに売価を上げ切れず、営業利益率は3.3%に下がる。家賃など固定費があるため、売上が横ばいでも利益が減る。
店は135店で止まり、新商圏への出店は様子見になる。利益は今の7割ほどに落ちる。余った現金は不採算店の整理と設備更新に回り、株主への還元もふくらまない。
物価で売上は伸びるが、利益は伸びない。働く人の賃金だけが上がり、株主に残る利益は細る形だ。
- 食品スーパー事業:数量 135(店舗数(店))× 価格 28(1店舗当たり年間売上(億円。名目。来店客数の減りを含む))→ 売上 3,755 億円・営業利益 124 億円。営業利益率3.3%
倍率:事業のROEは約6%でkを下回る。RONICは約6.8%で正当化PERは約12.5倍。構造的に値付けを市場に握られる姿なので、約9割弱の11.5倍に置いた。余った現金は谷で食う前提で今の0.75倍。
確率:会社自身が競合激化を理由に減益を予想している。ドラッグストアの食品強化やディスカウントの進出は止まらない。慎重な見方にも十分な根拠があるので23%。
悲観 10% 広域の競合に押され、店が減る構造的な負け 利益 47 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 583 円507 億円
北陸と信越の地盤に大手が本格的に入り、ドラッグストアも生鮮と総菜に踏み込む。原信は価格でも品質でも突き抜けず、客数が年2%ずつ減る。
新商圏への出店は赤字を出して撤退し、店は128店に減る。人件費は上がり、家賃や物流費は売上が落ちても減らない。営業利益率は2%台前半まで下がる。
利益は今の4割ほどになる。それでも食品を扱う事業は残るため、稼ぐ力に見合う価値までは落ちるが、ゼロにはならない。純現金は赤字店の整理と設備更新で目減りする。
この筋書きでは、買収される側になる可能性もある。ただ、その場合の上乗せは確率に入れていない。
- 食品スーパー事業:数量 128(店舗数(店))× 価格 26(1店舗当たり年間売上(億円。名目。来店客数の減りを含む))→ 売上 3,289 億円・営業利益 72 億円。営業利益率2.2%
倍率:ROEは3%台でkを大きく下回る。事業の純利益約46億円をk 7.05%で割った稼ぐ力は約630億円。そこに現金を谷で食う前提で今の半分を足す形で、PER10倍に置いた。
確率:悲観は、地盤を崩されて優良な食品スーパーでなくなる筋書き。必需品の需要が消えるわけではないので、確率は1割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品スーパー事業
原信・ナルス・フレッセイの食品スーパー131店。生鮮・総菜・日配の販売が中心。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円。名目。来店客数の減りを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 131 | 23 | 2,955 | 122 |
| 10 年後 中立 | 140 | 29 | 4,021 | 161 |
取り方:単一事業で、店舗数131店(原信68・フレッセイ50・ナルス13)に1店舗当たり売上約22.6億円を掛けた。10年では、店舗数を新潟・群馬の入れ替えと甲信・北陸への出店で増減させ、1店舗当たりは物価の1.34倍から来店客数の減りを引いて置いた。
リスクと懸念
粗利率の低下が止まらない
会社は2027年3月期に、競合激化による粗利率の低下で営業利益が4%減ると予想している。ドラッグストアや安売り業態が食品を集客の道具にし、値引きの水準が一段下がると、営業利益率が4%台から3%台に落ちる。1ポイントの低下で利益は約4分の1動く。
新しい商圏への出店が採算に乗らない
甲信、北陸、北関東への進出は、長野のエリアセンターが回り始めるまで物流の効率が悪い。先に大手が入っている商圏では、客数が集まらず赤字店が残る恐れがある。撤退すれば減損と店の整理費用がかかる。
人件費の上昇を売価に転嫁し切れない
最低賃金は毎年上がり、パートの確保も難しくなっている。売価を上げれば客が離れ、上げなければ利益が減る。省人化の投資は先に費用がかかり、効果が出るのは数年先だ。薄利の事業なので、少しの遅れが利益に響く。
地盤の人口減と客数の細り
新潟県は人口の減りが全国でも速い。1店舗当たりの来店客数は物価に関係なく細り、売上の伸びは客単価の上昇に頼る。長期では店の数を維持するだけで精一杯になり得る。
余った現金が使い道なくたまり続ける
純現金は2025年3月期の219億円から2026年3月期の304億円に積み上がった。自社株買いは年ごとにばらつき、配当だけでは使い切れない。使い道が見つからないまま積み上がれば、価値は目減りしたままになる。
店舗の賃借の固定費
店舗の一部は賃借で、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。純現金や自己資本比率の厚さは、その約束を差し引いて見る必要がある。2028年3月期から新リース会計基準で使用権資産と負債が貸借対照表に載り、見かけの純現金は減る。
今後の分かれ目
- 月次の既存店売上で、客数が前年を割る月が続く
- 客数の減りが想定より速い。やや悲観側に重みを移す。
- 粗利率が会社予想よりさらに落ち、営業利益が100億円を割る
- 競争の水準が変わったと判断し、悲観の確率を引き上げる。
- 長野のエリアセンターが動き、新しい商圏の店が黒字化する
- 中立から楽観寄りに確率を移す。新商圏の収益性を確認する。
- 自社株買いや増配で、余った現金の戻しが明確に厚くなる
- 戻り方の係数を引き上げ、価値を上げて見る。
- 地方スーパーの再編で、全国チェーンや同業から買収提案が出る
- 提案がつく場合の上振れを楽観の筋書きに入れて見直す。
- 新リース会計基準の適用で、使用権資産と負債が貸借対照表に載る
- 純現金は減って見えるが、利益の質は変わらない。形をそろえて見直す。
見ておくもの
- 月次の既存店売上と来店客数
- 粗利率と人件費率の動き
- 長野エリアセンターと新店の黒字化の時期
- 自社株買いの実施額と純現金の残高
倍率と資本コストの決め方
店舗数に1店舗当たり売上を掛けて売上を積み、利益率は競合との値引き競争から置いた。倍率は式(k 7.05%、g 3.8%、残る割合1/2)で出し、中立はROEがkをわずかに上回るため、下限の1÷k(約13.7倍)に置いた。市場の倍率や今の株価からは置いていない。余った現金は、運転資金とリースの約束を除いて120億円とし、戻り方0.5で足した。悲観は稼ぐ力で測り、今の自己資本に掛けた形にはしていない。新リース会計基準の適用で形が変わるが、10年後の数字は今と同じ、家賃を営業費用に入れた形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→17.26 倍・やや楽観 PER 14→16.72 倍・中立 PER 13.7→16.14 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に、値決めの弱さと地盤の人口減を考えて、同領域のアークスやバローと同じ水準の7.3%とした。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.30% → 7.05%。