結論
大戸屋は、注文を受けてから店で調理する定食チェーンである。国内に約320店、海外に約140店を持つ。筆者の結論は割高だ。いちばんの理由は、今の利益が過去20年でも最良の水準にあり、そこに高い値段が乗っているからである。
事業の核は、店内調理という手間のかかる売り方にある。ここが他の定食店と違う点だが、手間は人件費に直結する。物価と賃金が毎年3%上がる世界では、値上げが追いつくかどうかで利益が決まる。足元は値上げと広告が当たり、既存店売上は58か月続けて前年を上回った。営業利益率は6%に近づいたが、2000年代初めの水準と大差ない。
親会社のコロワイドが議決権の約47%を持つ。2020年の敵対的な買付けで経営権を握り、仕入れや店舗運営を作り替えてきた。この関係は支えにも重しにもなる。海外はフランチャイズ中心で店数は伸びるが、本部の収入は小さい。
10年後の中立では、営業利益は30億円台前半、純利益は約19億円とみる。いまの利益の1.5倍ほどに育つが、時価総額に直すと今の水準を大きく下回る。TOBで親会社が買い増す可能性はあるが、その時の値段は価値に含めていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「今の利益を信じてよいか」が最初の問いになる。店内調理は温かみのある売り方だが、堀とまでは言えない。利益率は2020年の赤字から急回復したが、直近の約6%は過去の最良に近い。山の利益に高い値段を払うのは、安全域のない買い物になる。
再投資の質も見たい。直営店は改装や出店に資金がかかり、見た目の営業利益より、株主に残る利益は薄い。海外はFCなので資金は軽いが、1店あたりの収入が小さく、利益全体を動かすほどには育たない。
経営と資本配分は、親会社の影響下にある。コロワイドは外食の買収を重ねてきた会社で、規律はあるが、少数株主の取り分を最優先にする立場ではない。
10年かけて利益が1.5倍に育っても、今の時価総額は、そこへ届く前に大きく前借りしている。筆者は、事業の質を認めたうえで、この値段では持ち続ける理由を見つけにくいと考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は二つある。一つは国内の直営店で、売上の約9割を占める。もう一つは、国内のフランチャイズ(FC)と海外から入る本部の収入である。
直営店は「大戸屋ごはん処」を中心に、おおよそ170店と推定する。注文後に店で焼き、煮て、盛り付ける。主力は千円前後の定食で、ロードサイドよりも駅前や商業施設に多い。客層は女性や一人客が厚い。店内調理は「できたて」という価値になるが、調理人の確保が必要で、人手不足の影響を受けやすい。
本部の収入は、FCの店から入る加盟料・ロイヤルティと、食材などの卸売である。国内FCは約150店、海外はタイ・台湾・米国など8か国・地域に約140店あり、海外はほぼFCで、直営は9店にとどまる。海外は店が増えても、1店から本部に残る額は小さい。
セグメントの開示はないため、直営と本部収入の分け方は筆者の推定である。直営を店数×1店の売上、本部収入を店数×1店から入る額で積み上げた。リースについては、直営店の家賃が毎年の固定の支払いとして重くのしかかる。国内の店は駅前や商業施設の賃貸が中心で、売上が落ちても家賃は変わらない。
優良さと弱いところ
筆者が評価するのは店内調理の個性である。ただし、これは堀というより差別化にとどまる。他社が真似できないほどの仕組みではなく、客が離れれば値下げに走るしかない。
数字がそれを物語る。営業利益率は2015年からの4年間で2%台、2020年以降のコロナ禍では赤字に沈み、自己資本は14億円まで細った。今の約6%は、値上げ、広告、メニュー刷新が重なった結果であり、2000年代初めに記録した7%台に近い。山の利益を永続のものと見るのは危うい。
資本効率は見かけが良い。ROEは30%に達するが、これは自己資本が41億円と薄いためである。分母が小さいだけで、強い事業の証拠ではない。
経営面では、コロワイドの傘下に入ってから仕入れと店舗運営の見直しが進んだ。一方で、利益の多くが親会社の都合で使われる懸念は残る。上場している少数株主の立場から見ると、親会社の意向が資本の使い道を左右する。会社の規模が小さく、単一ブランドに頼る点も弱みである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食は国内の客数が頭打ちで、売上の伸びの多くは値上げから来る。定食・和食の領域は、ロイヤルホスト・やよい軒(プレナス)・ガスト・松屋・吉野家など競合が多く、価格帯が千円前後で重なる。やよい軒は、おかわり自由と炊き立てのご飯で大戸屋と客を取り合う。
最大の逆風は人件費である。最低賃金は上がり続け、パートの確保も難しくなる。セルフレジや配膳ロボットで一部を減らせるが、店内調理の大戸屋は調理工程そのものを減らしにくい。物価が3%で進む世界では、賃上げに見合う値上げができる店と、できない店で利益が分かれる。
外食は景気にも弱い。景気後退では、会食や外食の回数が減り、既存店売上が2割ほど落ちる谷がありうる。吉野家やすき家のような低価格チェーンは落ち込みが浅いが、千円前後の定食店は低価格とは言えない。
海外は日本食の人気を追い風に伸びているが、大戸屋にとっては本部収入の小さな上積みにすぎない。業界ノートの前提を使い、市場の見通しは他社と揃えた。大戸屋が競うのは、牛丼や回転寿司よりも、手の込んだ家庭の味を売る定食の領域だ。この領域は市場が小さく、一社が大きなシェアを握る形にもなりにくい。
資本政策と M&A
コロワイドが議決権の約47%を持ち、IFRSの実質支配で連結している。2020年の敵対的な買付け(直前の株価に約46%を上乗せした値段)で経営権を得た。役員は11人中10人が入れ替わった。
還元は小さい。利益の多くは店の改装、出店、海外の支援に回っている。自社株買いの実績は見当たらない。
今後の分かれ目は親会社の出方である。完全子会社化に動けば少数株主は買付けの値段で手放すことになるが、その値段は価値の計算に入れない。TOBの可能性は参考値で約17%とされる。
資本の使い方で気がかりなのは、親会社との取引が条件の甘い形で続くことと、純現金が25億円ある一方で家賃の約束が毎年重いことである。純現金は見かけほど余裕があるわけではないので、余った現金としては切り分けない。
点検済み(割高の見落とし点検 2026-10-19):起点の利益と会社予想、台帳の株数(726 万株)、倍率と ROE・k の整合を確かめた。親会社コロワイドの完全子会社化は価値に入れていない。
株主優待は年およそ 0.2 億円(推定)で、利益から引かれ済み。還元に足しても 1 億円に届かず、差は 1 ポイント未満のため数字は変えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
大戸屋は、店内調理という個性を武器に、物価上昇の局面で値上げを通せる数少ない定食店になった。テレビ広告と限定メニューで客数が戻り、既存店売上は58か月続けて前年を超えている。この勢いは単なる反動ではない。コロワイドの調達網と中央の仕入れで原価を抑えつつ、メニューを強くしてきた成果である。
海外は伸びしろが大きい。日本食の人気で、タイ・台湾・米国などに約140店まで広がった。FCなので資金が軽く、店が1,000店近くまで増えれば、本部収入だけで利益率の高い柱になる。
国内も、人手不足で小さな定食店が閉まる中、残った大戸屋がシェアを拾える。親会社は買収の実績が豊富で、必要なら資金も支える。直営の営業利益率が7%に乗り、本部収入が積み上がれば、10年後の純利益は今の2倍を超える。
親会社が完全子会社化に動けば、少数株主にとっても上振れの余地になる。ここまでが強気の見立てで、筆者もこの方向の可能性は否定しない。
慎重な見方
直近の利益は山である。営業利益率は6%近くあるが、コロワイド傘下に入る前は2%台で、コロナ禍では赤字だった。値上げと広告で客が戻っただけで、競合の追随で値上げの効果は薄れる。
店内調理は人件費がかさむ。最低賃金の上昇と人手不足が続けば、調理人の確保が利益を削る。自動化も、他社より進めにくい。景気が後退すれば、千円前後の定食は削りやすい支出になる。
海外はFCで資金は軽いが、1店から入る額が小さく、店が増えても利益全体への寄与は限られる。品質管理を誤ればブランドも傷む。
さらに、直営店の家賃は毎年の固定の約束である。売上が2割落ちても家賃は落ちないため、利益は急に赤字へ傾く。2020年から2021年にかけて、自己資本が14億円まで細ったのは、その実例だ。
親会社の都合で資本が使われる点も、少数株主には重い。こうした点が、慎重な見方の核心である。山の利益を前提にした値段は、利益が少し戻るだけで大きく崩れる。筆者は、この非対称さを重く見る。
どちらに重みを置いたか
確率は慎重な側に寄せた。強気の見方の中で、値上げと広告が当たった点、海外FCの広がりは事実として強い。だが、利益率が過去最良に近い点と、固定費の家賃が重い点は、慎重な見方のほうが強い。
中立では、直営の営業利益率を5%台まで戻し、10年後の純利益は約19億円とみた。今の利益の1.5倍にはなるが、自己資本が厚くなるぶん、堀の弱い会社の倍率は伸びない。時価総額は今の水準を大きく割る。
悲観の確率を13%にしたのは、家賃の固定費と人手不足が重なる負け筋が現実的で、小さな単一ブランドは立て直しに時間がかかるからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,443 円323 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 814 円59 億円)。 今の値に割り戻すと 2,623 円190 億円、今との差 −72.4%、 期待の年率 −5.8%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,450 円614 億円 | 1,225 円89 億円 | +1.7% | +0.2% | 774 円56 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,875 円499 億円 | 1,088 円79 億円 | −16.3% | −1.8% | 1,593 円116 億円 |
| 中立 | 32% | 5,623 円408 億円 | 964 円70 億円 | −30.7% | −3.6% | 2,108 円153 億円 |
| やや悲観 | 27% | 2,059 円150 億円 | 702 円51 億円 | −71.0% | −11.6% | 746 円54 億円 |
| 悲観 | 13% | 282 円21 億円 | 0 円0 億円 | −97.0% | −29.7% | 37 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,443 円323 億円 | 814 円59 億円 | −44.7% | −5.8% | 5,257 円382 億円 |
今の株価時価総額 9,510 円691 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 海外 FC が柱に育ち直営も利益率が上がる 利益 28 億円 · PER 19.8 倍 · 株価時価総額 8,450 円614 億円
海外 FC が日本食の人気に乗って 1,000 店近くまで増え、本部収入が利益率の高い柱になる。国内では小さな定食店の閉店が続き、大戸屋が客を拾う。直営は 190 店ほどに増え、値上げが通る。
調理の自動化と、親会社との共同仕入れで原価が下がり、直営の営業利益率は 7% に乗る。広告費も売上に見合う水準に収まる。
親会社は買収の実績が豊富で、必要なら資金も支える。10 年後の純利益は今の 2 倍を超える。それでも店内調理という手間のかかる売り方は変わらず、利益率の天井は 7% 台にとどまる。それでも、大戸屋が定食の専門店として確かな地位を築く、うまくいった 10 年である。
- 国内直営店:数量 190(国内直営の店数(店))× 価格 2.72(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 516 億円・営業利益 36 億円。営業利益率7.0%
- FC・海外の本部収入:数量 520(FC 店と海外店の合計店数(店))× 価格 0.18(1 店から本部に入る年間収入(億円))→ 売上 96 億円・営業利益 21 億円。営業利益率22%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 39.5% が k 7.95% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 18.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.8 倍。全体の PER 19.83 倍、時価総額 555 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店内調理の人手不足を自動化で吸収し、海外 FC が約 500 店増えるうえ、親会社の仕入れ網も効き続ける必要があり、連続で成功する確度は低い。
やや楽観 20% 値上げが定着し海外 FC が着実に増える 利益 23 億円 · PER 19.4 倍 · 株価時価総額 6,875 円499 億円
値上げと広告が効いた今の勢いは数年は続く。直営は 185 店ほどに増え、1 店の売上は物価並みに伸びる。直営の営業利益率は 6% 台で、今より少し高い。
海外 FC は 450 店ほどまで増える。ただし 1 店から本部に入る額は小さく、利益全体を大きく動かすほどにはならない。
人件費の上昇は、値上げと自動化で一部が吸収される。親会社との関係は安定し、仕入れも効き続ける。メニューの入れ替えと広告の打ち方も上手くいき、既存店の客数は大きく崩れない。山の利益を守り、なだらかに伸ばす 10 年になる。急成長ではないが、事業としては堅実な部類に入る。
- 国内直営店:数量 185(国内直営の店数(店))× 価格 2.60(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 481 億円・営業利益 30 億円。営業利益率6.2%
- FC・海外の本部収入:数量 450(FC 店と海外店の合計店数(店))× 価格 0.18(1 店から本部に入る年間収入(億円))→ 売上 83 億円・営業利益 17 億円。営業利益率21%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 35.1% が k 7.95% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 17.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.4 倍。全体の PER 19.35 倍、時価総額 445 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げと広告の勢いが数年は続くが、10 年続くかは別問題で、上位レンジに近い現実的な上振れとして置いた。
中立 32% 値上げで利益率は保つが店数は横ばい 利益 19 億円 · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 5,623 円408 億円
直営は 175 店ほどと、ほぼ横ばいで成熟する。値上げは物価並みに通り、1 店の売上は伸びる。ただし人件費の上昇で、直営の営業利益率は今の 5% 前後から 5% 台にとどまる。
海外 FC は 380 店ほどに増え、国内 FC と合わせて本部収入は 70 億円ほどに育つ。利益率は高いが、全体への寄与は小さい。
親会社との関係は変わらず、完全子会社化も起きない。店内調理という個性は残り、定食の専門店として生き残るが、特別な超過利益を生むほどの堀にはならない。派手さはないが、赤字にも落ちず、利益がゆっくり伸びる 10 年である。
- 国内直営店:数量 175(国内直営の店数(店))× 価格 2.60(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 455 億円・営業利益 25 億円。営業利益率5.4%
- FC・海外の本部収入:数量 380(FC 店と海外店の合計店数(店))× 価格 0.18(1 店から本部に入る年間収入(億円))→ 売上 70 億円・営業利益 14 億円。営業利益率20%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 30.9% が k 7.95% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 15.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍。全体の PER 18.83 倍、時価総額 358 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の中心値と、値上げで山をほぼ維持するが過去最良の水準から少し戻るという組み合わせを、中心の筋書きとして置いた。
やや悲観 27% 人件費が値上げを上回り利益率が後退 利益 11 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 2,059 円150 億円
人件費の上昇が値上げを上回り、直営の営業利益率は 4% まで戻る。店内調理の工程は自動化しにくく、調理人の確保に苦しむ。1 店の売上は物価ほどには伸びず、値上げに踏み切るたびに客足が鈍る。
不採算の直営店が閉まり、直営は 160 店ほどに減る。海外 FC は 300 店ほどで頭打ちになる。本部収入は増えるものの、1 店あたりの額が小さく、直営の利益の減りを埋めきれない。
景気の谷では来店が落ち、広告を打っても客を戻しにくい。親会社の支援は続くが、利益の多くは店の維持と改装に消える。株主に残る利益は細り、成長の物語は途切れる。
- 国内直営店:数量 160(国内直営の店数(店))× 価格 2.52(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 404 億円・営業利益 16 億円。営業利益率4.0%
- FC・海外の本部収入:数量 300(FC 店と海外店の合計店数(店))× 価格 0.18(1 店から本部に入る年間収入(億円))→ 売上 53 億円・営業利益 9 億円。営業利益率17%
倍率:ROE 10.6%(純利益 11 億円 ÷ 自己資本 104 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、堀が弱いので残る割合 1/3 で RONIC = k 7.95% + 1/3 ×(10.6 − 8.0)= 8.9%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 13.7 倍。今の稼ぎは残るが、伸びと堀の持ちを低く見て、上限の 7.7 割の 10.5 倍に置いた。
確率:人手不足と最低賃金の上昇が続くという業界共通の逆風が、店内調理の大戸屋にはより強く効く。過去の赤字の経験も踏まえ、厚めに置いた。
悲観 13% 家賃の固定費と人手不足で赤字に沈む 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 282 円21 億円
景気の後退で既存店売上が落ち、直営の家賃はそのまま残る。調理人の賃上げも止まらず、直営の営業利益率は 0 に近づく。2021 年のような赤字の年が混じる。
直営は 130 店ほどまで減り、海外 FC も店の閉鎖が相次ぐ。本部収入は 30 億円ほどに縮む。
親会社は支援を続けるが、店内調理という個性は客を呼べず、値下げ競争に巻き込まれる。家賃の高い店から順に閉めても、本部の固定費は残る。純現金の 25 億円は、店の閉鎖費用と家賃の支払いで目減りする。優良さを失ったまま、立て直しに時間がかかる 10 年になる。
- 国内直営店:数量 130(国内直営の店数(店))× 価格 2.41(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 313 億円・営業利益 2 億円。営業利益率0.5%
- FC・海外の本部収入:数量 200(FC 店と海外店の合計店数(店))× 価格 0.16(1 店から本部に入る年間収入(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。営業利益率8%
倍率:事業の純利益はほぼ 0 なので稼ぐ力(純利益 0 ÷ k 7.95%)は価値にならず、純現金 25 億円から店の閉鎖費用と家賃の支払いを引いた売れる資産の税後 20 億円を床とみて、今の自己資本 41 億円に PBR 0.5 倍を掛けた。谷の年の EV ÷ 営業利益は意味を持たない。
確率:景気の谷と人手不足が重なる負け筋は、2020 年から 2021 年の実例があり、小さな単一ブランドは立て直しに時間がかかる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内直営店
「大戸屋ごはん処」を中心とする国内の直営店。注文を受けてから店内で調理する定食を売る。
| 数量国内直営の店数(店) | 価格1 店あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 170 | 1.94 | 330 | 17 |
| 10 年後 中立 | 175 | 2.60 | 455 | 25 |
取り方:開示がないため推定。国内 320 店(FC 含む)から FC 約 150 店を引いた直営約 170 店とし、全社売上 370 億円のうち直営を約 330 億円とみて 1 店あたり売上を逆算した。営業利益は直営の利益率約 5% として 17 億円。10 年の店数は人口減で横ばいから微増に置き、1 店の売上は中立で物価並みの 1.34 倍とした。
FC・海外の本部収入
国内 FC と海外店(ほぼ FC)から入る加盟料・ロイヤルティと、食材などの卸売の収入。
| 数量FC 店と海外店の合計店数(店) | 価格1 店から本部に入る年間収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 291 | 0.14 | 40 | 8 |
| 10 年後 中立 | 380 | 0.18 | 70 | 14 |
取り方:開示がないため推定。国内 FC 約 150 店と海外約 140 店の合計約 290 店に、本部収入を約 40 億円とみて 1 店あたりを逆算した。営業利益率は卸売が混じるため約 20%。海外店の増加で店数は伸びるが、1 店の収入は小さい。中立の価格は物価並みの 1.34 倍。
リスクと懸念
人件費と調理人の確保
店内調理は調理の工程を減らしにくく、最低賃金の上昇と人手不足が直接、利益率を削る。自動化も他社より進めにくい。値上げが賃上げに追いつかなくなった時、営業利益率は 2% 台へ戻りうる。
利益の山を永続と見るリスク
直近の営業利益率は約 6% で、過去 20 年でも最良に近い。値上げと広告が当たった結果で、競合の追随や客の慣れで効果は薄れる。山の利益に高い値段をつけると、戻った時の落ち込みが大きい。
家賃という固定の約束
直営店の家賃は売上が落ちても減らない。純現金が 25 億円あっても、家賃の約束は年 25 億円規模(推定)で、見かけほど余裕はない。2028 年 3 月期からの新リース会計で、貸借対照表の形も変わる。
親会社コロワイドとの関係
議決権の約 47% を持つ親会社の意向で、資本の使い道や取引条件が決まる。完全子会社化の動きが出れば、少数株主は親会社の決めた値段で手放すことになりうる。
景気の谷での来店減
千円前後の定食は、景気が悪くなれば真っ先に削られる外食だ。2020 年から 2021 年にかけて、赤字で自己資本が 14 億円まで細った実例がある。
海外 FC の品質管理
海外は約 140 店のほぼ全てが FC で、品質のばらつきがブランドを傷める恐れがある。本部の収入は 1 店あたり小さく、店が増えても利益全体への寄与は限られる。
今後の分かれ目
- 既存店売上の前年超えが止まり、客数が前年を下回り始めたら
- 山の利益が崩れ始めたと見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 直営の営業利益率が 6% を超えて定着したら
- 値上げと自動化で人件費を吸収できていると見て、やや楽観の確率を上げる。
- 海外 FC の店数が 500 店を超えて、本部収入が目に見えて増えたら
- 本部収入の柱化が進んでいると見て、楽観側の確率を上げる。
- コロワイドが完全子会社化の方針を示したら
- 少数株主の取り分は親会社の決める値段に左右されるので、事業の価値とは切り離して見る。
- 最低賃金の上昇率が値上げ率を上回る年が続いたら
- 調理人の確保コストが利益を削る形が定着したと見て、やや悲観に寄せる。
- 不採算の直営店の閉鎖が続いたら
- 店数の縮みが始まったと見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 月次の既存店売上高と客数(前年比)
- 直営の営業利益率と、人件費・原価の比率
- 海外 FC の店数と本部収入の推移
- 親会社コロワイドの持株比率と取引条件の変化
- 直営店の出店・閉店の数
倍率と資本コストの決め方
倍率は市場の PER ではなく、式(正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g))に ROE と k を入れて決めた。堀が弱いので残る割合は 1/3、楽観から中立は上限の 8〜9.5 割、中立は 1÷k の下限に合わせた値で置いた。やや悲観・悲観は稼ぐ力と売れる資産で置き、7 割へ引き上げていない。今の PER が 50 倍超でも、その数字は倍率に使っていない。新リース会計(2028/03 期)で BS の形が変わるが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→19.83 倍・やや楽観 PER 13→19.35 倍・中立 PER 12.5→18.83 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality +0.5% を足した 8.0%。外食は景気で客数が動き、小さな単一ブランドで寿命の不安もある。親会社の影響などの個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は黒字で傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.95%。