結論
銚子丸は、千葉を地盤に東京・埼玉・神奈川で93店を直営する「江戸前」の回転寿司チェーンだ。大手より高い客単価で、魚と職人の握りを売りにする。2026年2月期の売上は237億円と過去最高で、営業利益は16億円。自己資本比率は72%、純現金は42億円ある。
筆者の結論は割高だが、事業の質は悪くない。回転寿司の中で、価格競争に巻き込まれにくい位置にいる。2回の価格改定を通し、客単価は7.5%上がった。2026年9月には、今期の営業利益を19億円へ上方修正した。
それでも割高とみるのは、今の利益が最高水準にあるからだ。直近の営業利益率は6〜7%で、過去12年の山である8%に近い。ここから10年かけて、人件費と魚価の上昇が利益率を削る。客数も、2025年の上期は前年比6%減った。
中立では、10年後の純利益は14億円、時価総額は210億円ほどと、今の水準を少し下回る。株主優待は2026年2月期から拡充されたが、費用は利益から出ており、受け取る側の価値は還元として足した。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「持ち続けたい事業」に近い。全店直営で品質を守り、価格改定で客単価を上げられる。職人の腕という、簡単にまねできない強みがある。借入は無く、純現金が厚い。
不安は、記録的な利益の水準だ。営業利益率が8%に迫る今は、人件費と魚価の上昇が続く中で、山の近くにある。山の利益に高い倍率を掛けると、買値を誤る。筆者は、10年の中立の利益率を6%前後に戻した。
資本の使い方は、悪くないが慎重すぎる面もある。ROEは10%台だが、純現金が積み上がると、ROEは薄まる。自社株買いや優待で株主に返す姿勢は評価できる。米国の合弁は、小さく試す形で、失敗しても傷が浅い。
安全域は、今の時価総額にはない。純現金と事業の質を考えれば、割高の幅は小さく、確信度は高めだ。値段が下がれば、持ちたい会社になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方はシンプルだ。「すし銚子丸」を直営で出し、店で握る寿司を客単価の高めな価格帯で売る。2025年2月末の91店は、千葉県39、東京都36、埼玉県10、神奈川県6で、全店が直営だ。2026年夏までに93店に増えた。
直営だけで運営するため、フランチャイズの本部収入は無く、店の利益がそのまま会社の利益になる。ロイヤルティで広げる競合と違い、品質の統一と引き換えに、出店のペースは遅い。
店以外にも柱を育てている。第一は出張回転寿司で、店舗ではなくイベント会場や法人の場所に出向いて提供する。第二は立ち食い寿司の新業態「Standing 鮨 Bar Yasuke」で、都内の駅ナカに1店ある。第三は米国で、ロイヤルホールディングスと双日との合弁を2024年3月に設立し、カリフォルニアに2025年12月と2026年3月に2店を出した。2027年度末までに4店をめざす。
なお決算期は5月末から2月末へ変わった。2025年2月期は9か月の変則決算だったため、前年との比較には注意が要る。店はすべて賃借で、駅前や幹線沿いの路面、ビルの中に出す。1店の売上は2.6億円ほどと、回転寿司の中では大きい部類だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、ブランドと現場にある。店で職人が握る寿司は、大手のレーンで流す寿司と客層が違う。千葉と東京に集まる店網は、物流と仕入れの面でも効く。
値段の決定権は、外食の中では強い。2024年6月と12月の2回の価格改定で、客単価は7.5%上がった。一方で客数は6.3%減っており、値上げが客を削る面は残る。TV企画の反動と会社は説明するが、全部は説明しきれない。
資本の効率は悪くない。過去10年のROEの中央値は7.5%、直近は11.5%と上がった。営業利益率は2024年5月期に8.0%で山をつけ、直近は6.7%。
財務は硬い。純現金は42億円、自己資本比率は72%。ただし全店が賃借で、家賃は売上の1割弱、年20億円前後と筆者はみる。この固定の約束を考えると、純現金は見かけほど余裕がない。大株主の上位2名が5割強を持ち、経営の方針は安定している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
回転寿司は外食の中でも成長した業態だ。大手のスシロー(FOOD & LIFE COMPANIES)、くら寿司、はま寿司(ゼンショー)、かっぱ寿司(コロワイド)が低価格で客を集め、元気寿司が続く。銚子丸は、これらより高い価格帯の「ひとつ上の回転寿司」に位置する。
競争の軸は二つある。大手は注文のロボット化と価格で規模の経済を働かせる。銚子丸は、職人と鮮度で差をつける。どちらが勝つかではなく、客層が分かれている。
費用の面では、魚価と人件費が重い。円安の150円の世界では輸入魚介の仕入れが物価以上に上がる。最低賃金の上昇も続き、深夜営業が無い分だけ居酒屋よりは軽い。
数量は、人口が減る首都圏でもほぼ横ばいか微減とみる。千葉は人口が減るが、東京は横ばい。ここで増えるのは出店による店数だ。訪日客が高単価の寿司を求める流れも追い風になる。
一方で、輸入魚介と国産魚の両方で仕入れ値が上がっており、外食の中でも原価率が高い業態だ。回転寿司は、皿の値段が安いものから高いものまで幅広く選べるため、不況期には安い店に客が流れる。銚子丸の客層は比較的所得が高く、景気の悪化に強いが、完全には免れない。
資本政策と M&A
還元は安定配当が基本で、株主資本配当率2%を目安にする。2026年2月期の配当性向は28%。2027年2月期は配当を増やす予定だ。自社株買いは、前の期に約19億円を行った。
優待は2月末と8月末の年2回で、2026年2月期から拡充された。100株で2枚、500株で7枚、1,000株で13枚の優待券(1枚は5百円分)がもらえる。優待の費用額は会社が開示していない。筆者は年1.4億円ほどと推定し、10年の還元に足した。根拠は、株主数を1万数千人とみた券面の合計が年3.6億円ほどで、使用率が95%、原価率が4割という掛け算だ。ここは大きくぶれる。
資本政策の注目点は、純現金の使い方だ。中期計画は3年で65億円のキャッシュインを、出店・改装・DX・海外・新業態・M&Aと株主還元に配分するとしている。米国の合弁は目標に届いていないと社長が認めており、投資が実を結ぶかが問われる。
大株主は有限会社オール・エム31.3%、個人株主が22.4%で、上位2名で5割強を持つ。再編のTOBが起きる可能性は低く、少数株主は経営の方針に従う形になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
銚子丸は、回転寿司という成長業態の中で、高い価格帯を取った数少ない会社だ。2026年2月期は売上237億円、営業利益16億円と過去最高に近く、9月には今期の営業利益を19億円に上方修正した。第1四半期は営業利益が47%増えた。
価格改定は2回通り、客単価は7.5%上がった。客数の減りは、前年のTV特需の反動で、一時的だ。出張回転寿司は新しい顧客を取り込み、立ち食い寿司の新業態は駅ナカで2号店、3号店をめざす。
全店直営で品質が保たれ、ブランドが傷つきにくい。純現金は42億円で、借入が無く、金利上昇に強い。2026年2月期からは優待も拡充され、個人株主の裾野が広がる。
米国の合弁は小さく始めた実験だが、成功すれば大きな選択肢になる。10年で店は125店に広がり、利益率が過去最高の水準を保つ道は十分にある。純現金を成長投資に回せる余力があるのも、競合にない強みだ。職人の技を人材として育てる仕組みも持ち、板前を育てた経験が米国の合弁でも活きる。大手が機械化に進む中で、人の手の価値を打ち出せる差別化は、客単価の高さに直結している。
慎重な見方
今の利益は山にある。2024年5月期の営業利益率8.0%が山で、直近の6.7%はその近くにいる。人件費の上昇は続き、魚価は円安で重い。山の利益を前提にした値段は、危うい。
客数は2025年の上期に前年比6.3%減った。会社はTV特需の反動と説明するが、2回の価格改定による客離れも含まれる。客単価で補う動きは、長くは続かない。
店は首都圏の東側に偏り、競合のスシローやくら寿司、はま寿司が出店を続ける。大手は価格とロボット化で攻め、規模の差は広がる。出店のペースが遅く、新店の立ち上がりにも時間がかかる。
米国の合弁は目標に届いていないと社長が認めている。純現金は厚いが、全店賃借で家賃の約束は年20億円前後あり、見かけほど余裕はない。上位2株主が5割強を持ち、少数株主の意見は届きにくい。今の時価総額は、すでに最高益の継続を織り込んでいる。優待も、費用は利益から出ており、会社の稼ぎを細らせる。さらに、決算期の変更で2025年2月期が9か月の変則決算となり、前年との比較がしにくく、増益の質を見誤りやすい点にも注意が要る。
どちらに重みを置いたか
強気の見方に説得力はあるが、足元の最高益は山の近くにあるとみる。確率は中立を38%に最も厚く置き、やや楽観を22%、やや悲観を22%と均した。悲観は10%にとどめた。純現金と自己資本の厚さが下値を支え、2020年の赤字でも持ちこたえた実績がある。上振れの合計は30%、下振れは32%で、ほぼ釣り合う。それでも中立の本質価値が今の時価総額を下回るため、割高と判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,953 円245 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 598 円75 億円)。 今の値に割り戻すと 1,337 円168 億円、今との差 −21.4%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,065 円509 億円 | 1,022 円128 億円 | +198.8% | +11.6% | 407 円51 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,101 円389 億円 | 862 円108 億円 | +132.9% | +8.8% | 872 円109 億円 |
| 中立 | 38% | 2,038 円255 億円 | 607 円76 億円 | +55.4% | +4.5% | 1,005 円126 億円 |
| やや悲観 | 22% | 649 円81 億円 | 403 円51 億円 | −38.2% | −4.7% | 231 円29 億円 |
| 悲観 | 10% | 281 円35 億円 | 72 円9 億円 | −79.3% | −14.6% | 35 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,953 円245 億円 | 598 円75 億円 | +49.9% | +4.1% | 2,551 円320 億円 |
今の株価時価総額 1,702 円213 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 首都圏の出店が進み、利益率が過去最高を保つ 利益 25 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 4,065 円509 億円
筆者が描く最良の姿は、江戸前の回転寿司というブランドが首都圏で広がる道だ。店数は10年で125店ほどになる。千葉と東京の核の外に、神奈川や埼玉の駅前、ビルの中の小型店が増える。
客単価は物価に加えて、職人の握りという付加価値で上積みされる。1店当たり売上は10年で1.40倍に伸びる。店ごとの営業利益率は11.5%と、2024年5月期の8%台を上回る。
立ち食い寿司の新業態は駅ナカで定着し、出張回転寿司も法人と自治体のイベントで広がる。米国の合弁は小さな黒字で、持分法の利益として乗る。本社費は物価で増える。
営業利益は37億円、純利益は25億円となる。現金が積み上がり、自己資本は160億円ほどに増え、ROEは15%。還元も厚くなり、配当と自社株買い、優待を合わせて約130億円になる。
- 国内の店舗(すし銚子丸・出張回転寿司・新業態):数量 125(店舗数(直営、店))× 価格 3.61(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 451 億円・営業利益 52 億円。店ごとの営業利益率11.5%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 18.97 倍、時価総額 509 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店の余地、客単価の上積み、新業態の成功が重なる必要がある。記録的な利益の上にさらに積むため、確率は低めに置く。
やや楽観 22% 出店が続き、客単価の上積みが客数減を吸収する 利益 20 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 3,101 円389 億円
出店は年1〜2店ペースで続き、10年で115店になる。神奈川や埼玉の空白地に出す。店の質を保つため、出店のペースは速めない。
客単価は物価を少し上回る率で上がり、客数は小さく減る。1店当たり売上は10年で1.36倍。店ごとの営業利益率は10.8%と、2024年5月期の水準を維持する。
原材料の魚価は円安で重いが、価格改定で吸収する。出張回転寿司が新しい顧客層を取り込む。
営業利益は29億円、純利益は20億円となる。自己資本は160億円ほどに増え、ROEは13%。配当と自社株買い、優待を合わせて約108億円を株主に返す(優待の費用は利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
- 国内の店舗(すし銚子丸・出張回転寿司・新業態):数量 115(店舗数(直営、店))× 価格 3.51(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 403 億円・営業利益 44 億円。店ごとの営業利益率10.8%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 17.84 倍、時価総額 389 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の2期連続の最高益、2回の価格改定の定着、純現金の厚さを考えると、上振れの確度は高い。ただし客数は落ちており、全部がうまくはいかない。
中立 38% 首都圏の高めの回転寿司として、今の利益水準を保つ 利益 14 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 2,038 円255 億円
中立の姿は、今の収益力をほぼ保つ首都圏の優良チェーンだ。店数は105店まで増え、年1店ほどのペースで出店する。客単価は物価並みに上げ、客数は小さく減る。1店当たり売上は10年で1.32倍。
店ごとの営業利益率は9.5%で、直近の6〜7%の全社の利益率に本社費を戻した水準だ。魚価と人件費の上昇は、価格改定を重ねて転嫁する。2024年6月と12月の価格改定は客数を一時的に減らしたが、客単価は戻らない。
営業利益は20億円、純利益は14億円となる。自己資本は150億円ほど。現金が積み上がるので、配当に加えて自社株買いを時々行い、10年の還元は優待を含めて約76億円とした。
優待は2026年2月期から拡充され、年1.4億円ほどの費用になると筆者は推定する。
- 国内の店舗(すし銚子丸・出張回転寿司・新業態):数量 105(店舗数(直営、店))× 価格 3.40(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 357 億円・営業利益 34 億円。店ごとの営業利益率9.5%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 16.1 倍、時価総額 255 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2期連続の最高益と純現金、直近の上方修正が示す底堅さに対し、客数減、魚価、人件費の三つの重しがある。この二つの中間に最も厚みを置く。
やや悲観 22% 客数が戻らず、価格改定の効果が薄れる 利益 7 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 649 円81 億円
客数が年1%のペースで減り、価格改定の効果も薄れる。店は95店で下げ止まり、出店も控えめになる。1店当たり売上は10年で1.25倍にとどまる。
魚価と人件費が増え、店ごとの営業利益率は7.5%まで下がる。本社費は物価で増える。出張回転寿司や新業態は小さく、全体を支えない。
営業利益は9億円、純利益は6.5億円まで下がる。自己資本は130億円弱でROEは5%と、資本コストを下回る。配当は利益に連れて薄くなり、優待は3/4に縮む。10年の還元は約50億円。
米国の合弁は赤字が続き、持分法の損失が出る。
- 国内の店舗(すし銚子丸・出張回転寿司・新業態):数量 95.0(店舗数(直営、店))× 価格 3.22(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 306 億円・営業利益 23 億円。店ごとの営業利益率7.5%
倍率:ROE 5.1%(純利益 6.5 億円 ÷ 自己資本 128 億円)が資本コスト 7.75% 以下なので、PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。ためた利益は額面の価値に届かない。稼ぐ力が弱く、ためた現金を使い切れないので、上限の 8.0 割の 10.0 倍に置いた。
確率:2025年の上期は客数が前年比6%減だった。TV企画の反動とされるが、価格改定後の客離れも混ざっている。この傾向が続く姿には十分な根拠がある。
悲観 10% 首都圏の競争に負け、赤字が続く 利益 −6 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 281 円35 億円
大手の回転寿司が価格を下げ、首都圏の客がそちらに流れる。店は78店まで減り、1店当たり売上は10年で1.15倍にとどまる。魚価と人件費の上昇が価格に転嫁できない。
店ごとの営業利益率は2%に落ち、本社費を引くと営業赤字が続く。閉店で減損が出て、自己資本は減る。
米国の合弁は撤退する。配当は止まり、優待も半分に縮む。ただし純現金と差入保証金があり、倒れる姿ではない。ブランドが傷つけば、価格改定が通らず、客単価の上積みが止まる。人手不足で職人の確保が難しくなり、品質の維持にもコストがかかる。清算されない限り、現金の使い方は少数株主には決められないため、床は純現金の半分ほどとみる。
- 国内の店舗(すし銚子丸・出張回転寿司・新業態):数量 78.0(店舗数(直営、店))× 価格 2.96(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 231 億円・営業利益 5 億円。店ごとの営業利益率2%
倍率:稼ぐ力が赤字なので、床は純現金と差入保証金に近い。今の自己資本88億円に0.4倍を掛けて置いた(家賃の約束と閉店費用を引き、現金の使い道を少数株主が決められないことを考えた)。
確率:回転寿司は大手の価格競争が激しく、2020年5月期のように赤字になった実績がある。ただ、純現金と自己資本の厚さがあり、確率は1割にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の店舗(すし銚子丸・出張回転寿司・新業態)
千葉・東京・埼玉・神奈川の直営店と、出張回転寿司、立ち食い寿司の新業態。会社の売上のほぼ全部を占める。
| 数量店舗数(直営、店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 91.8 | 2.58 | 237 | 26 |
| 10 年後 中立 | 105 | 3.40 | 357 | 34 |
取り方:2026年2月期の売上237億円を期中の平均店数約92店で割り、1店当たり約2.6億円。出張回転寿司と新業態の売上は小さく開示が無いので店に含めた。店ごとの営業利益26億円(11%)は、営業利益15.75億円に本社費約10億円を足し戻した筆者の推定。先の1店当たり売上は、客数の小さな減りを反映し、中立で10年1.32倍(物価1.34倍)。
リスクと懸念
客数の減少
2025年の上期は客数が前年比6.3%減った。TV企画の反動と会社は説明するが、2回の価格改定で客単価が7.5%上がったことの裏返しでもある。客数が戻らなければ、値上げの余地は尽きる。
魚価と人件費の上昇
原価率は約4割と高く、魚価の上昇は利益に直結する。円安の150円の世界では輸入魚介が物価以上に上がり、最低賃金の上昇も続く。価格改定で転嫁しきれなければ利益率が削られる。
最高益の水準と山の利益
直近の営業利益率は6.7%、2024年5月期は8.0%で山をつけた。山の近くにある利益に高い倍率を付けると、10年後に買値を誤る。上方修正も上期に偏り、下期は前年並みの予想。
家賃の固定費
全店が賃借で、家賃は売上が落ちても出ていく固定の約束。年20億円前後と筆者はみる。純現金が厚く見えても、10年分の家賃の約束を考えると余裕は小さい。新リース会計基準でBSが膨らむ点にも注意。
米国と新業態の投資
米国の合弁は目標に届いていないと社長が認めている。2店の赤字が続けば、持分法の損失になる。立ち食い寿司も1店で、成否は未確認。投資が実を結ばない可能性は十分ある。
支配株主と少数株主
上位2株主で5割強を持つ。経営は安定する一方、買収や再編の局面では少数株主の意見が届きにくい。純現金の使い方も、支配株主の判断に左右される。
今後の分かれ目
- 客数が前年を上回る期が続き、価格改定後も客単価が維持されたら
- 楽観・やや楽観の確度を上げる。値上げが客を失わない証拠になる。
- 営業利益率が6%を割り込み、魚価と人件費の上昇が価格改定で転嫁できなくなったら
- やや悲観・悲観に重みを寄せる。利益の山を過ぎたと判断する。
- 純現金を使った大型のM&Aや、米国での追加の大型投資が発表されたら
- 資本配分の質を見直す。成功の確度が低い投資なら、現金の価値を下げる。
- 立ち食い寿司の新業態が3店以上に広がり、1店当たり利益が確認できたら
- 新業態の成長を中立に取り込み、確度を上げる。
- 優待の縮小が発表されたら
- 還元の受け取り分を減らして見直す。会社の利益には影響しない。
見ておくもの
- 既存店の客数と客単価(月次)
- 原価率(魚価)と人件費率の推移
- 営業利益率(6〜8%の水準が保たれるか)
- 出店数と新店の立ち上がり
- 米国の合弁の店数と損益
- 純現金の推移と使い道
倍率と資本コストの決め方
店数×1店当たり売上で10年を積み、利益率は2024年5月期の山(8.0%)を下回る6%前後に置いた。今の最高益の水準は、利益率の山とみて、10年中立は戻した。倍率は式(RONIC=k+残る割合1/2×(ROE−k)、g=4%)から出し、ROEが資本コスト以上なので1÷k=12.5倍を下限に12.6倍とした。今の株価や過去のPER・PBRには寄せていない。純現金のうち事業に要らない分25億円(運転資金と改装資金を除く)を分けて足し、戻している実績があるので戻り方は1.0とした。悲観の床は純現金に戻り方0.5を掛けた額と差入保証金から置いた。優待は年1.4億円と推定して還元に足した。新リース会計基準でBSが膨らむが、10年後は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。減価償却は取得時の値段のままとして本社費だけを物価で増やした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→18.97 倍・やや楽観 PER 13.5→17.84 倍・中立 PER 12.7→16.1 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+0.5%を足して8.0%。借入が無く赤字も続いていないので、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。