結論
富士山マガジンサービスは、雑誌の定期購読をネットで売る国内最大手だ。出版社に代わって読者を集め、毎号を届ける。いまは売上の4割を、読み放題サービスにデジタル雑誌を卸す取次が占める。筆者の結論は「割高」だ。紙の雑誌の市場は毎年縮み、営業利益率は10年前の15%から1〜3%まで落ちた。
手元の現金は時価総額の6割を超えて見える。ただし、その半分近くは読者から前に受け取った購読料と、出版社に払う前のお金だ。本当に余っているのは15億円余りで、それも高額の株主優待と、予備校などの買収に使われつつある。
強みはある。450万人の会員と、出版社の購読の管理を丸ごと引き受ける仕組みは、他社がすぐにはまねできない。それでも、雑誌という縮む商品の上で、稼ぎが資本コストに届く姿は描きにくい。今の値段は、利益の回復と現金の還元をともに前払いしている。
10年の中立の姿で積み上げると、今の時価総額の半分にも届かない。現金の厚さだけで値段を正当化するのは難しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、縮む市場で小さく稼ぐ仲介の事業だ。会員の基盤と出版社とのつながりは本物だが、商品そのものが年々減っている。仲介の取り分は出版社と大手の運営会社に挟まれ、増やしにくい。
オーナーとして見ると、資本の使い方が気になる。本業が縮む中で、予備校という離れた事業を買い、のれんと赤字を抱えた。株主には現金に近い優待を厚く配るが、それは株主の数を増やすための費用でもある。手元の現金は、本業に要らないなら株主に戻すのが筋だが、会社は買収に使うと言っている。
値段には安全域が無い。今の時価総額は、事業の稼ぎより現金の厚さに支えられている。その現金の一部は読者と出版社のお金で、残りも買収に流れうる。筆者が見方を変えるのは、デジタル雑誌の取次が再び伸び、営業利益率が5%を超えて戻った時だ。それまでは、利回りの高い優待に引かれて買う種類の会社ではないと見る。
何で稼ぐ会社か
事業は三つに分けて見るとわかりやすい。2025年12月期の売上58億円のうち、紙の雑誌の定期購読が約32億円、デジタル雑誌の取次が約24億円、予備校のEdTechが約2億円だった。
紙の定期購読は、サイトの「Fujisan.co.jp」で読者から申し込みを受け、出版社から雑誌を届ける。売上は購読料の総額で計上し、出版社に払う分を引いた差が粗利になる。読者が1年分を前払いするので、お金は先に入る。出版社の既存の購読者の管理や配送も引き受ける「Fujisan VCS」で、出版社の手間を肩代わりしている。継続して課金する読者は約48万人いる。
デジタル雑誌は、電通との合弁のmagaportを通じて、dマガジンなどの読み放題サービスに雑誌のデータを卸す。出版社と読み放題の運営会社の間に立つ取次だ。図書館流通センターと組んで電子図書館にも広げている。
EdTechは、横浜と大阪の医学部受験の予備校を買って始めた。規模は小さく、赤字が続く。会社はこの事業の上場や他社との提携も考えている。
売上の大半は購読料の総額で、手元に残る粗利はその一部にすぎない。
優良さと弱いところ
優良さは、会員の数と出版社とのつながりにある。450万人の登録会員と、数千誌の購読を一つのサイトで扱える品ぞろえは、新しく入る会社には作りにくい。出版社にとっても、購読者の管理と配送を任せられる相手は少ない。
ただし、値段を決める力は弱い。雑誌の値段は出版社が決め、この会社が受け取るのはその一部だ。読み放題の取次でも、出版社と大きな運営会社に挟まれ、取り分を上げにくい。
利益の質は年々落ちている。営業利益率は2016年12月期の16%から、2025年12月期は3%を切った。新しい読者の獲得に費用がかかり、カードの本人確認が厳しくなって継続の読者も減った。
資本の使い方にも疑問が残る。予備校の買収は本業とつながりが薄く、のれんと赤字を生んでいる。500株以上の株主に年2.5万〜3.5万円相当のデジタルギフトを配る優待は、純利益に比べて重い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
雑誌の市場は長く縮んでいる。2026年1〜6月の雑誌の推定販売額は前年より4%減の1,751億円で、書店の返品率は45%に達する。休刊が続き、残る雑誌も部数を減らしている。紙の定期購読は、書店が減るほど相対的に便利になるが、市場全体の縮みには逆らえない。
デジタル雑誌は伸びてきたが、成熟しつつある。dマガジンのような読み放題は、スマホで多くの雑誌を読める手軽さで会員を集めた。ただ、出版社は紙の売上を食われることを嫌い、配信の条件を厳しくする動きもある。読み放題の運営会社が出版社と直接組めば、取次の役割は細る。
競合は、紙では出版社の自前の直販とアマゾンの定期おトク便、デジタルではほかの電子取次だ。10年の中立では、紙の購読者の数は年4〜5%ずつ減り、デジタルは横ばいからやや減ると見る。値段は出版社が紙の値上げを続けるので物価並みに上がるが、取次の取り分は増えない。人件費とシステムの費用は物価で上がるので、利益率を戻すのは容易ではない。
この会社の取り分は、市場の縮みと仲介の細りの両方にさらされている。
資本政策と M&A
配当は1株あたりの額を保ち、純利益の大きく落ちた2026年12月期も据え置く。株主優待は手厚く、500株以上で年2.5万円、半年以上の保有で3.5万円相当のデジタルギフトを配る。対象の株主が想定より増え、2026年には優待の引当金を新たに積んだ。優待の費用は推定で年0.5億円前後で、配当と合わせて純利益を上回る。
財務の見かけは強い。現金は33億円あり、借入は5.5億円だ。ただし、出版社への未払金13億円と前受けの購読料12億円が負債にある。本当に自由に使える現金は15億円余りだ。
会社は業績を戻すため、買収による事業開発を進めると言う。予備校の買収の実績を見る限り、現金が本業より利回りの低い所へ流れる恐れがある。大株主は西野伸一郎会長が27%、図書館流通センターが11%、ABEJAが9%を持つ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社の足場は固い。450万人の会員と数千誌の品ぞろえは、雑誌の定期購読で国内に代わりが無い。書店が減るほど、家に届く定期購読は便利になる。出版社の購読者の管理を丸ごと引き受けるFujisan VCSは、出版社の人手不足とともに広がる。
デジタル雑誌の取次は、売上の4割まで育った第二の柱だ。読み放題サービスに加え、図書館流通センターと組んだ電子図書館や、記事単位の配信という新しい売り先もある。雑誌の中身は、形を変えて読まれ続ける。
利益の落ち込みは一時のものだ。2026年の減益は優待の引当金と子会社のつまずき、買収の費用が重なったためで、本業の雑誌販売支援は黒字を保っている。現金は借入を差し引いても20億円以上あり、時価総額の半分を超える。会社が買収で新しい稼ぎ頭を見つければ、利益はすぐに戻る。配当と優待も手厚く、株主を大事にする会社だ。
今の値段は、現金を除けば事業を利益の数倍で買う計算になる。
慎重な見方
商品が縮んでいる。雑誌の販売額は毎年4%前後減り、休刊も止まらない。継続して課金する読者は減り始めた。デジタルの読み放題も成熟し、出版社が条件を厳しくすれば取次の取り分は細る。運営会社が出版社と直接組めば、仲介の役割そのものが要らなくなる。
利益率は10年で16%から3%を切るまで落ちた。新しい読者の獲得に費用がかかり、人件費とシステムの費用は物価で上がる。会社の2026年の純利益の予想は0.1億円で、配当すらまかなえない。
現金も見かけほど厚くない。負債には出版社への未払金と前受けの購読料が合わせて25億円ある。自由に使えるのは15億円余りで、そこから高額の優待と、本業と関係の薄い予備校の買収にお金が出ていく。買収による事業開発を強めると言うが、これまでの買収はのれんと赤字を生んだだけだ。
現金の厚さで値段を正当化するのは、使い道を決められない少数株主には危うい。会社の稼ぎが資本コストに届かない限り、現金はたまっても株主の価値にはなりにくい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。会員の基盤と出版社とのつながりは認めるが、市場の縮みと利益率の低下は10年続いている。手元の現金は預かりの分を除くと半分になり、それも買収と優待に流れやすい。確率は中立に4割弱、楽観側に2.8割、悲観側に3.5割を置いた。本業が黒字を保ち現金もあるので、会社が消える筋書きは厚くしない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 757 円25 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 255 円8 億円)。 今の値に割り戻すと 514 円17 億円、今との差 −55.7%、 期待の年率 −1.4%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,823 円60 億円 | 333 円11 億円 | +85.7% | +6.4% | 172 円6 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,235 円41 億円 | 303 円10 億円 | +32.5% | +2.9% | 308 円10 億円 |
| 中立 | 37% | 796 円26 億円 | 288 円10 億円 | −6.6% | −0.7% | 401 円13 億円 |
| やや悲観 | 23% | 245 円8 億円 | 197 円7 億円 | −61.9% | −9.2% | 102 円3 億円 |
| 悲観 | 12% | 109 円4 億円 | 136 円5 億円 | −78.9% | −14.4% | 29 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 757 円25 億円 | 255 円8 億円 | −12.8% | −1.4% | 1,012 円33 億円 |
今の株価時価総額 1,161 円38 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% デジタルの取次が新しい売り先で伸びる 利益 4 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 1,823 円60 億円
雑誌のデータの売り先が広がる。読み放題サービスに加え、電子図書館や企業向けの記事配信、AIの学習用の使用許諾まで、雑誌の中身を束ねて卸す仕事が増える。出版社にとって、数千誌をまとめて扱えるこの会社は欠かせない窓口になる。デジタルの売上は今の2倍近くになる。
紙の定期購読も、書店の減少で家に届く便利さが見直され、読者の減りは緩やかになる。出版社の購読者の管理の代行も広がる。営業利益率は7%台に戻り、ROEは8%台に上がる。予備校の事業は外に出し、本業に集中する。
それでも稼ぎは資本コストにわずかに届かない。雑誌の値段と取次の取り分は出版社が握るからだ。
- 紙の雑誌の定期購読:数量 40.0(継続して課金する読者(万人))× 価格 0.90(1人あたりの年間売上(億円÷万人))→ 売上 36 億円・営業利益 3 億円。40万人×1人あたり1.35倍、利益率8%
- デジタル雑誌の取次:数量 900(取次先の読み放題サービスの会員(万人、推定))× 価格 0.05(会員1人あたりの年間の取次売上(億円÷万人))→ 売上 45 億円・営業利益 4 億円。900万人×1人あたり1.25倍、利益率9%
- EdTech(医学部受験の予備校):数量 0.0(生徒の数(人、推定))× 価格 0.00(1人あたりの年間の授業料(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。事業を外に出す
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)12 億円。全体の PER 14.71 倍、時価総額 60 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:読み放題、電子図書館、記事単位の配信がそろって伸び、紙の縮みを補う姿。出版社の協力が要るので1割未満。
やや楽観 20% デジタルが紙の縮みを埋める 利益 2 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 1,235 円41 億円
紙の定期購読の読者は10年で3割近く減るが、出版社の購読の代行が広がり、1人あたりの売上は物価並みに上がる。デジタルの取次は、読み放題の会員の伸びと電子図書館で今の1.5倍になる。
買収の費用と優待の引当金が一巡し、営業利益率は6%前後に戻る。予備校は他社との提携で手を離す。営業利益は3億円台で、2021年ごろの水準に近い。
配当は今の額を保ち、優待も続く。ROEは6〜7%で資本コストに届かないが、現金は大きくは減らない。
現金を食う大きな買収を避ければ、株主の取り分は少しずつ積み上がる。予備校を手放せば、経営の目も本業に戻る。
- 紙の雑誌の定期購読:数量 35.0(継続して課金する読者(万人))× 価格 0.89(1人あたりの年間売上(億円÷万人))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。35万人×1人あたり1.34倍、利益率7%
- デジタル雑誌の取次:数量 750(取次先の読み放題サービスの会員(万人、推定))× 価格 0.05(会員1人あたりの年間の取次売上(億円÷万人))→ 売上 36 億円・営業利益 3 億円。750万人×1人あたり1.2倍、利益率8%
- EdTech(医学部受験の予備校):数量 0.0(生徒の数(人、推定))× 価格 0.00(1人あたりの年間の授業料(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。提携で手を離す
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)12 億円。全体の PER 13.86 倍、時価総額 41 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:デジタルの取次が少しずつ伸び、紙の読者の減りを補って利益率が4〜6%に戻る姿。電子図書館などの芽があるので2割。
中立 37% 紙は縮み、デジタルは横ばい 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 796 円26 億円
紙の定期購読の読者は年4〜5%ずつ減り、10年で30万人になる。雑誌の値上げで1人あたりの売上は物価並みに上がるが、読者の減りを埋めきれない。デジタルの取次は会員の数が横ばいで、出版社の条件が厳しくなり、取り分は物価ほど上がらない。
売上は55億円前後で今とほぼ変わらない。人件費とシステムの費用は物価で上がり、営業利益率は3%台にとどまる。予備校の事業は売却か提携で外に出る。
配当と優待は続くが、純利益の多くを使い切る。余った現金は大きくは増えず、一部は小さな買収に使われる。ROEは4%台で、資本コストの半分に届かない。
- 紙の雑誌の定期購読:数量 30.0(継続して課金する読者(万人))× 価格 0.89(1人あたりの年間売上(億円÷万人))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。30万人×1人あたり1.34倍、利益率6%
- デジタル雑誌の取次:数量 600(取次先の読み放題サービスの会員(万人、推定))× 価格 0.05(会員1人あたりの年間の取次売上(億円÷万人))→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。600万人×1人あたり1.2倍(出版社の条件で物価を下回る)、利益率7%
- EdTech(医学部受験の予備校):数量 0.0(生徒の数(人、推定))× 価格 0.00(1人あたりの年間の授業料(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売却か提携で外に出る
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)12 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 26 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:紙の読者が今の速さで減り、デジタルは横ばいで、利益率は3%台にとどまる姿を中心に置いた。
やや悲観 23% 取次の取り分が細り、現金が買収に消える 利益 0 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 245 円8 億円
読み放題の運営会社が大手の出版社と直接契約を結び始め、取次を通す雑誌が減る。残る雑誌の取り分も下がる。紙の定期購読は読者の減りが速まり、10年で半分になる。
営業利益はほぼゼロになる。会社は業績を戻そうと買収を重ねるが、本業とつながりの薄い事業は育たず、のれんの償却と減損が出る。余った現金は10億円まで減る。
配当は減らし、優待も縮める。会社は小さく黒字を保つが、株主に残る稼ぎはほとんど無い。
手元の現金の厚さは、買収の失敗で少しずつ削られていく。株主は、配当と優待が細るのを見ながら待つことになる。紙とデジタルの両方で、仲介の値打ちが少しずつ下がる10年だ。
- 紙の雑誌の定期購読:数量 25.0(継続して課金する読者(万人))× 価格 0.85(1人あたりの年間売上(億円÷万人))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。25万人×1人あたり1.27倍、利益率3%
- デジタル雑誌の取次:数量 500(取次先の読み放題サービスの会員(万人、推定))× 価格 0.04(会員1人あたりの年間の取次売上(億円÷万人))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。500万人×1人あたり1.1倍、利益率4%
- EdTech(医学部受験の予備校):数量 0.0(生徒の数(人、推定))× 価格 0.00(1人あたりの年間の授業料(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退
倍率:本業の稼ぎはほぼゼロで、純利益0.2億円は現金の利息がほとんど。稼ぐ力(純利益÷k)の倍率に、買収で減った余った現金10億円を戻り方0.75で足す。
確率:出版社と運営会社が直接組み始め、取次の取り分が細る姿。利益率の低下が10年続いているので2割余り。
悲観 12% 仲介が要らなくなり赤字に沈む 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 109 円4 億円
大手の出版社が紙の雑誌を次々に休刊し、残る雑誌もデジタルに移る。読み放題の運営会社は出版社と直接組み、取次の役割は消える。定期購読の読者は今の4割を切る。
売上は今の半分になり、システムと人の固定費が残って営業赤字が続く。会社は現金を使って新しい事業を買うが、うまくいかない。余った現金は5億円まで減る。
配当は止まり、優待も廃止される。10年後、会社は小さな現金を抱えた縮んだ仲介業者として残る。
株主に残るのは、細った現金だけだ。優待を目当てに集まった株主も去り、値段は残る現金の額をも下回る。会員の基盤も、商品が消えれば値打ちを失う。
- 紙の雑誌の定期購読:数量 18.0(継続して課金する読者(万人))× 価格 0.80(1人あたりの年間売上(億円÷万人))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。18万人×1人あたり1.2倍、収支とんとん
- デジタル雑誌の取次:数量 350(取次先の読み放題サービスの会員(万人、推定))× 価格 0.04(会員1人あたりの年間の取次売上(億円÷万人))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。350万人、収支とんとん
- EdTech(医学部受験の予備校):数量 0.0(生徒の数(人、推定))× 価格 0.00(1人あたりの年間の授業料(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退
倍率:赤字なのでPBRで置く。稼ぐ力は無く、床は残る余った現金5億円に戻り方0.75を掛けた約3.75億円。今の自己資本24億円に0.15倍を掛けた額でほぼ同じになる。
確率:紙の雑誌が急速に消え、デジタルの取次も要らなくなる構造的な負け。現金があるので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
紙の雑誌の定期購読
Fujisan.co.jpでの定期購読と、出版社の購読者の管理・配送の代行。
| 数量継続して課金する読者(万人) | 価格1人あたりの年間売上(億円÷万人) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 48.0 | 0.67 | 32 | 2 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 0.89 | 27 | 2 |
取り方:継続課金ユーザー約48万人。売上はデジタルの売上比率41.7%とEdTechを除いた残りから約32億円と推定し、1人あたり年約0.67万円。利益は雑誌販売支援のセグメント利益を紙とデジタルに半分ずつと推定。
デジタル雑誌の取次
magaportを通じて読み放題サービスや電子書店、電子図書館に雑誌のデータを卸す。
| 数量取次先の読み放題サービスの会員(万人、推定) | 価格会員1人あたりの年間の取次売上(億円÷万人) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 0.04 | 24 | 2 |
| 10 年後 中立 | 600 | 0.05 | 29 | 2 |
取り方:売上は売上比率41.7%から約24億円と推定。会員数の開示は無く、dマガジンなど取次先の会員を合わせて約600万人と推定し、1人あたり年約0.04万円。
EdTech(医学部受験の予備校)
横浜と大阪の医学部受験の予備校。Fujisan Academia Group。
| 数量生徒の数(人、推定) | 価格1人あたりの年間の授業料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 200 | 0.01 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
取り方:2026年中間期の売上0.71億円と通年の季節性から年約2億円と推定。生徒数の開示は無く、医学部の予備校の授業料を年約100万円と置いて約200人と推定。
リスクと懸念
雑誌の市場の縮み
雑誌の販売額は毎年4%前後減り、休刊が続く。継続して課金する読者もすでに減り始めた。出版社が紙をやめれば、定期購読の商品そのものが消える。
取次を飛ばされる
読み放題の運営会社が大手の出版社と直接組めば、デジタル雑誌の取次は要らなくなる。売上の4割を占める柱が細る。出版社が配信の条件を厳しくしても取り分は下がる。
現金の使い道
会社は買収による事業開発を強めると言う。本業と離れた予備校の買収は、のれんと赤字を生んだ。現金が利回りの低い事業に流れれば、株主の価値は減る。
優待の重さ
500株以上の株主に年2.5万〜3.5万円相当のデジタルギフトを配る。対象の株主が増え、2026年には引当金を新たに積んだ。純利益に比べて費用が重く、業績が悪ければ縮める恐れもある。
読者の獲得の費用
新しい読者を集めるネット広告の費用が上がり、カードの本人確認の厳格化で継続の読者も減った。獲得の費用を絞れば読者が減り、増やせば利益が減る。
今後の分かれ目
- デジタル雑誌の売上が年1割以上伸び続ける
- やや楽観の筋書きに近づく。紙の縮みを補える。
- 大手の出版社が読み放題の運営会社と直接契約する
- やや悲観から悲観の筋書きに寄る。取次の取り分と量がともに細る。
- 大きな買収を発表する
- 本業とのつながりと買う値段しだいで、余った現金の価値が下がる。
- 優待を縮めるか廃止する
- 費用は減って利益は戻るが、優待を目当ての株主が離れる。還元の合計はあまり変わらない。
- 営業利益率が5%を超えて戻る
- 中立とやや楽観の間に寄る。稼ぐ力の回復の証拠になる。
見ておくもの
- 継続課金ユーザー数
- デジタル雑誌の売上の伸びと売上比率
- 営業利益率と優待の費用
- 買収の発表と使った現金
- 雑誌の推定販売額(出版指標)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去のPERから置いていない。中立のROEは4%台でk8.25%に遠く届かないので、PERの上限は1÷kの11.1倍で、その約90%の10倍を事業の純利益に掛け、余った現金16億円を戻り方0.75で別に足した。手元の現金のうち、出版社への未払金と前受けの購読料など預かりの分は余った現金から外した。悲観側は稼ぐ力と残る現金で置いた。優待の費用は利益から引き済みで、還元にはその受け取り分を足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→14.71 倍・やや楽観 PER 10→13.86 倍・中立 PER 10→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に質の上乗せ1.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.75%。