結論
カネ美食品は、スーパーの売場で惣菜と寿司を作って売り、コンビニ向けの弁当とおにぎりを工場で作る中食の会社だ。売上は870億円弱。2025年8月からドン・キホーテを営むパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の連結子会社になった。筆者の結論は「割高」で、理由は事業の力ではなく、現金の行き先にある。
稼ぐ力は確かに戻っている。2027年2月期の営業利益は33億円弱の計画で、上期の経常利益は4割増えた。赤字に沈んでいた外販事業は黒字に戻った。PPIHは「ロビン・フッド」など食品に強い新業態を伸ばし、総菜を客を呼ぶ柱に据える。カネ美の新工場は、その供給役を担う。
それでも株主に回る分は細い。利益のうち配当に出るのは約2割で、残りは社内に残る。純現金は158億円と時価総額の4割強に達するが、約49億円は新工場に消え、運転資金にも40億円ほどが要る。余る約70億円も、親会社が4割を握る会社で少数株主に戻る保証は薄い。半分だけ数えた。
10年後の中立でも、時価総額は今とほぼ同じにとどまる。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を4割台半ば下回る。上振れの鍵は、PPIHが資本政策を動かす場合だ。完全子会社化の可能性は残るが、その値段が事業の価値を超える保証もない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、カネ美食品は「事業は分かりやすいが、持ち主の都合に左右される会社」だ。惣菜を毎日作って売る仕事は需要が安定し、理解しやすい。しかし値段を決める力は取引先にあり、堀、つまり他社がまねできない強みは、会社のものとは言いがたい。
目を引くのは158億円の純現金だ。時価総額の4割強にあたる。だが、バリュー投資家が見るのは帳簿の額ではなく、株主の手に届く額だ。新工場に約49億円、運転資金に40億円前後が要り、余る分は約70億円になる。利益の2割しか配当に出さず、親会社が4割を握る会社では、その半分が戻れば上出来だと筆者は見る。
資本の使い方は、PPIHの戦略に沿って決まる。新工場がグループの総菜を支える役目を果たせば、事業としては筋が通る。だが投資の回収は2029年2月期以降で、稼ぎが資本コストを超えるかは未確認だ。
安全域は見当たらない。10年後の中立でも、時価総額は今とほぼ同じ水準にとどまる。買い取りという上振れの可能性はあるが、それを前提に今の値段を払うのは、安全域のない賭けになる。確信度は中程度だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は2つある。1つめはテナント事業で、売上の55%を占める。ユニー、UDリテール、ドン・キホーテ、長崎屋の店内に、総合惣菜店、寿司店、洋風惣菜店を出す。店は285、中京エリアが中心だ。回転寿司「寿司御殿」も営む。2026年2月期の利益率は6.1%と、前の期の4.6%から上がった。
2つめは外販事業で、売上の45%を占める。13の工場でコンビニ向けの弁当、おにぎり、惣菜を作る。納品先の柱はファミリーマートで、全社売上の3割だ。残りはPPIHグループなどになる。2026年2月期は売上が12%減り、1億円ほどの赤字に落ちた。前の期は9億円の黒字だった。会社が一部の工場で生産体制を絞ったためだ。
取引先の偏りは大きい。ユニーが34%、ファミリーマートが30%で、2社で6割を超える。PPIHは2019年にユニー・ファミリーマートホールディングスから約27%を取得し、2023年に業務提携を結び、2025年に議決権が40%を超えて子会社とした。ユニーもPPIH傘下なので、売上の3分の1は親会社グループの売場から入る。
働き手は正社員1,121人に、臨時雇用が3,499人つく。惣菜の製造と売場は人手がかかり、最低賃金の上昇が直接響く。設備は2027年2月期に約80億円を投じる計画で、そのうち48.7億円が愛知県扶桑町の新工場だ。稼働は2028年3月、収益への貢献は2029年2月期以降とされる。
優良さと弱いところ
強みは、売場に張りついた製造小売であることだ。売場の裏で毎日作る惣菜と寿司は、鮮度と品ぞろえで差がつく。コンビニ向けの工場も、温度管理や配送の仕組みを備えており、新しい業者が簡単に入れる市場ではない。惣菜市場は2024年に11兆円を超え、3年連続で過去最高を更新した。
弱みは、その強みが会社のものではなく取引先のものだということだ。量も値段も、ユニーとファミリーマートの意向で決まる。外販事業が2026年2月期に赤字へ落ちたのは、その典型だ。営業利益率は過去12年で3.6%が山で、2017年3月期から3期連続の赤字もあった。工場を閉じて立て直したが、体質が変わったかは、まだ見極めの途中だ。
資本の使い方にも課題がある。自己資本利益率の10年の中央値は5.4%で、資本コストに届かない。稼ぎが悪いというより、現金に近い資産を抱えすぎているためだ。PPIH傘下に入り、現金を新工場に回す方向が見えてきた。投資が資本コストを上回る稼ぎを生むかは、2029年2月期以降の数字を見るまでわからない。
親会社の存在は両刃だ。販路が安定し、新業態の供給役という役割が与えられる点は、事業にとって大きい。一方、少数株主の取り分は、親会社の都合の後ろに置かれやすい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
惣菜市場は、日本惣菜協会の集計で2024年に11兆2,882億円となった。前年比2.8%増で、3年連続の過去最高だ。ただし増加の多くは値上げで、食べる量が増えたわけではない。区分でみると、コンビニが3.5兆円、食品スーパーが3.4兆円、惣菜専門店が3.1兆円で、総合スーパーは全体の8.6%にとどまる。
伸びの差が、カネ美の立ち位置を示す。2024年の伸びは、専門店が4.4%、食品スーパーが3.9%、コンビニが1.7%で、総合スーパーは0.9%減った。テナント事業の売場は総合スーパーの中にあり、市場の中で伸びにくい区分に身を置く。外販の主力であるコンビニも、伸びは遅い。
この向きを変えようとしているのがPPIHだ。同社は2035年6月期に売上4.2兆円を目指す長期計画で、総菜を来店の動機に位置づけた。食品を柱にした新業態「ロビン・フッド」を、2035年までに200から300店出す構想もある。ピアゴなどの総合スーパーをこの業態に転換していく。惣菜の需要が増えれば、供給元の工場が要る。扶桑町の新工場は、その受け皿だ。
競合では、セブン-イレブン向けのわらべや日洋、専門店のロック・フィールドが近い。各社に共通する重荷は人件費と原材料で、最低賃金の上昇と米の値上がりがじわじわ利益を削る。値上げが取引先に通るかどうかが、利益率を分ける。
資本政策と M&A
株主への還元は薄い。年間の配当は2023年2月期から同額で据え置かれ、利益に対する割合は約2割だ。2025年8月には最大21万株の自己株式取得を行った。その結果PPIHの議決権割合が40%を超え、同社の子会社になった。資本効率を高めるという名目だが、親会社の持ち分を押し上げる効果もあった。
株主優待は、100株以上で年2回、3千円相当のグルメ便がもらえる。300株で5千円、1,000株で1万円相当だ。株主数は開示が確認できなかったので、費用は年0.3億円前後と推定した。年1億円に満たない小さな額なので、10年の還元に3億円だけ足した。
設備投資は大きく変わる。2027年2月期は約80億円で、新工場の取得見込額は48.65億円を自己資金で賄う。純現金は158億円から、100億円台前半へ減る見込みだ。借り入れはほとんどなく、財務に不安はない。
大株主はPPIHが40.5%、日本アクセスが7.8%、ファミリーマートが4.4%だ。上場子会社を完全子会社にする例は多く、kabufuの推定では10年以内の買収確率は約2割にのぼる。ただ、買い取り価格が事業の価値に見合う保証はない。新リース会計基準は2029年2月期から強制になるが、有報の設備表にリース資産の計上はなく、影響は小さいとみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
カネ美食品は、ドン・キホーテの親会社が総菜を成長の柱に据えた、その供給役になった。ユニーの売場だけでなく、ロビン・フッドとドンキの総菜売場が増えれば、扶桑町の新工場は満杯になる。2028年3月の稼働までに需要は確保されており、投資の失敗リスクは小さい。
稼ぐ力はすでに戻り始めている。2027年2月期は営業利益が33億円弱の計画で、上期の経常利益は4割増えた。外販事業は赤字から黒字に戻った。生産体制の絞り込みの効果が出ており、これから先は売上の質が上がる。
財務は盤石だ。純現金が158億円あり、新工場を自己資金で建てても借り入れは要らない。親会社には、少数株主を置いたまま現金を溜め込むより、配当を増やすか、完全子会社にして一体で経営する動機がある。どちらに動いても、株主は今の値段より良い扱いを受ける。
人口減の下でも、単身世帯と共働きの増加で、惣菜の需要は伸びてきた。市場は3年連続で最高を更新している。値上げが通りやすい局面でもあり、利益率が過去の山を超える余地はある。
慎重な見方
売上の6割超を、ユニーとファミリーマートの2社が占める。値段も量も、取引先の都合で決まる。外販事業が2026年2月期に赤字へ落ちたことが、この構造の弱さを示した。営業利益率は過去12年で3.6%が山で、薄い利益が人件費の上昇で簡単に消える。
現金の見かけに惑わされてはいけない。158億円のうち約49億円は新工場に使われ、40億円ほどは運転資金に要る。残る約70億円も、配当性向が2割にとどまり、親会社が4割を握る会社では少数株主に戻る見通しが立たない。2025年8月の自己株式取得は、PPIHの持ち分を子会社化の水準に押し上げる効果をもった。
新工場の収益貢献は2029年2月期以降だ。それまでは減価償却と立ち上げの費用が先に出る。投資額は48.65億円で、自己資本利益率が資本コストに届かない会社が、さらに投資を重ねる形になる。
総合スーパーは惣菜市場の中でもっとも伸びが弱い区分だ。ユニーの店舗が転換や閉鎖で減れば、テナント事業の売場も消える。ファミリーマートが調達先を分散させれば、外販の稼働率も下がる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、事業の回復と親会社の後押しに根拠がある。慎重な見方は、現金の行き先と取引先への依存を突く。勝つのは慎重な見方だと筆者は考える。回復は本物だが、それは過去最高に近い3%台半ばの利益率での話だ。10年伸ばしても、資本コストに届く稼ぎにはならない。
確率は、慎重な側にやや寄せた。やや悲観を25%、悲観を12%に置き、楽観とやや楽観の合計は25%にとどめた。親会社による資本政策の動きは上振れの材料だが、その価格が事業の価値を超える保証はないため、強気側の確率は上げなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 3,653 円344 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 709 円67 億円)。 今の値に割り戻すと 2,087 円197 億円、今との差 −46.3%、 期待の年率 +1.2%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,701 円631 億円 | 1,593 円150 億円 | +113.5% | +7.9% | 581 円55 億円 |
| やや楽観 | 18% | 5,149 円485 億円 | 1,062 円100 億円 | +59.9% | +4.8% | 1,118 円105 億円 |
| 中立 | 38% | 4,324 円407 億円 | 722 円68 億円 | +29.9% | +2.7% | 1,918 円181 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,073 円195 億円 | 425 円40 億円 | −35.7% | −4.3% | 624 円59 億円 |
| 悲観 | 12% | 793 円75 億円 | 212 円20 億円 | −74.1% | −12.6% | 121 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,653 円344 億円 | 709 円67 億円 | +12.3% | +1.2% | 4,361 円411 億円 |
今の株価時価総額 3,885 円366 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% PPIHの食品の製造拠点として伸び、現金も事業とグループに回る 利益 43 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 6,701 円631 億円
ロビン・フッドが計画どおり200店規模まで増え、ドンキとユニーの総菜売場が広がる。扶桑町の新工場は早くに満杯となり、PPIHグループ向けの外販が食数で4割ほど伸びる。ファミリーマート向けは縮むが、その穴をPPIH向けが埋めてなお余る。
テナントは店数を保ち、総合スーパーの大型ドンキ転換で総菜の売場が広がる。食数は今より4%増え、客単価は値上げの定着で物価をやや上回る。営業利益率は全社で4.4%まで上がる。過去12年の山の3.6%を超えるが、PPIH向けの稼働率と自動化の効果が積み重なる形だ。
資本の面では、PPIHが少数株主を厚く扱う。配当性向を引き上げ、自己株式取得も続ける。10年の還元の合計は150億円に達する。それでも純現金は積み上がり、ためた現金の一部は事業に回る。自己資本利益率は10%台前半まで上がる。
- テナント事業(総合スーパー内の惣菜店・寿司店):数量 130(年間の販売食数(百万食))× 価格 524(1食あたりの平均単価(円))→ 売上 681 億円・営業利益 42 億円。営業利益率6.2%
- 外販事業(コンビニ・PPIHグループ向け製造):数量 189(年間の納品食数(百万食))× 価格 394(1食あたりの平均納入単価(円))→ 売上 747 億円・営業利益 21 億円。営業利益率2.8%
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 13.43 倍、時価総額 631 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:PPIHの出店計画、新工場の立ち上げ、外販の黒字化の3つが10年続いてうまくいき、利益率が過去の山を明確に超える必要がある。足元の回復は事実だが、取引先2社への依存は10年消えない。確率は7%にとどめた。
やや楽観 18% 外販が黒字で定着し、PPIH向けが増える 利益 35 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 5,149 円485 億円
外販事業の黒字が定着し、PPIH向けの納品がファミリーマート向けの減少を上回る。食数は今より3割増え、扶桑町の工場は稼働率を高く保つ。単価は物価並みに上がり、外販の営業利益率は2%まで戻る。
テナントは店数も食数もほぼ変わらない。総合スーパーの店舗転換で一部の店が入れ替わるが、新店でも惣菜の売場は確保される。利益率は6%弱で安定し、全社の営業利益率は3.8%になる。
配当は利益の3割ほどに高まり、自己株式取得も時々行われる。10年の還元の合計は100億円。自己資本利益率は9%台で、資本コストを上回る。ただ、親会社が4割を握る構図は変わらず、余った現金の戻りは半分にとどまる。
- テナント事業(総合スーパー内の惣菜店・寿司店):数量 125(年間の販売食数(百万食))× 価格 517(1食あたりの平均単価(円))→ 売上 645 億円・営業利益 37 億円。営業利益率5.8%
- 外販事業(コンビニ・PPIHグループ向け製造):数量 176(年間の納品食数(百万食))× 価格 392(1食あたりの平均納入単価(円))→ 売上 689 億円・営業利益 14 億円。営業利益率2.0%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 12.2 倍、時価総額 485 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:外販の黒字転換と上期の4割増益は、すでに数字に出ている。新工場の需要がPPIHの出店計画に支えられる点も確かだ。ただしファミリーマート向けは減っており、確率は18%にとどめた。
中立 38% PPIHの専属工場に近づくが、稼ぎは過去の山の手前にとどまる 利益 30 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,324 円407 億円
10年後、カネ美はPPIHグループの専属工場に近い立場になる。外販はPPIH向けが増え、ファミリーマート向けは縮み、全体の食数は今の1.18倍にとどまる。単価は物価並みに上がり、外販の営業利益率は1.5%で、赤字を脱した水準に落ち着く。
テナントは、総合スーパーの店舗減を新業態への転換が穴埋めし、食数は4%減る程度。客単価は物価並みに上がり、利益率は5.6%に落ち着く。全社の営業利益率は3.5%で、過去12年の山である3.6%の手前だ。
配当は利益の25%前後まで緩やかに上がるが、基本の姿は変わらない。10年の還元の合計は68億円。純現金は新工場の分だけ減ったあと、利益の蓄積で戻る。自己資本利益率は6%台前半で、資本コストに届かない。PPIHの意向が少数株主に有利にも不利にも働かない、という置き方だ。
- テナント事業(総合スーパー内の惣菜店・寿司店):数量 120(年間の販売食数(百万食))× 価格 509(1食あたりの平均単価(円))→ 売上 610 億円・営業利益 34 億円。営業利益率5.6%
- 外販事業(コンビニ・PPIHグループ向け製造):数量 160(年間の納品食数(百万食))× 価格 389(1食あたりの平均納入単価(円))→ 売上 620 億円・営業利益 9 億円。営業利益率1.5%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)71 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 407 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:PPIHの後ろ盾と足元の回復を考えれば、大きな崩れは考えにくい。一方で、取引先2社への依存、人件費の上昇、新工場の償却負担という重しも10年続く。中立が最も厚い38%。慎重な見方がやや強いため、やや悲観を25%と厚めにした。
やや悲観 25% 人件費と取引先の圧力で、利益率が2%台に戻る 利益 18 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,073 円195 億円
最低賃金と米・食材の高騰が、値上げで吸収しきれない。取引先が単価を抑え、価格は物価の伸びを下回る1.28から1.30倍にとどまる。ユニーの店舗の閉鎖が進み、テナントの食数は12%減る。
外販はファミリーマートが調達先を分散し、PPIH向けの伸びも計画より遅れる。新工場の稼働が低く、減価償却が重荷になる。外販の利益率は0%台、全社の営業利益率は2.4%まで下がる。
配当は今の水準を保つのが精一杯で、10年の還元は40億円。純現金は設備投資で減り、自己資本利益率は4%台にとどまる。余った現金は、谷で食われる分があるとみて、今の額の4分の3で置いた。
- テナント事業(総合スーパー内の惣菜店・寿司店):数量 110(年間の販売食数(百万食))× 価格 494(1食あたりの平均単価(円))→ 売上 543 億円・営業利益 24 億円。営業利益率4.4%
- 外販事業(コンビニ・PPIHグループ向け製造):数量 135(年間の納品食数(百万食))× 価格 371(1食あたりの平均納入単価(円))→ 売上 502 億円・営業利益 2 億円。営業利益率0.3%
倍率:事業の自己資本利益率は4%台で、資本コスト8.5%を大きく下回る。上限の1÷k(12.9倍)のうち、ためた利益の目減りと利益率2%台の脆さを織り込み、約7割の9.0倍に置いた。
確率:取引先が2社で6割超、最低賃金の上昇は毎年続く、外販は2026年2月期に実際に赤字を経験した、という事実がある。2017年から3期続けて赤字になった過去もある。25%と厚めに置いた。
悲観 12% 取引先の組み替えで外販が崩れ、新工場も減損する 利益 5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 793 円75 億円
ファミリーマートが調達先を絞り込み、外販の納品が2割減る。PPIH向けの新規需要は計画に届かず、新工場は稼働が低いまま減損となる。単価は取引先に押され、物価の上昇を下回る。
ユニーの閉鎖と転換が進み、テナントの食数は25%減る。人件費と店の固定費は売上ほど減らず、営業利益率は2.5%に落ちる。外販は赤字となり、全社の営業利益率は1%に届かない。
配当は大きく減らされ、10年の還元は20億円。時価総額は、純現金と売れる資産の床で値が付く。事業としては残るが、もう優良な製造小売とは見なされない。親会社が支えるため清算には至らない、という位置だ。
- テナント事業(総合スーパー内の惣菜店・寿司店):数量 93.6(年間の販売食数(百万食))× 価格 475(1食あたりの平均単価(円))→ 売上 445 億円・営業利益 11 億円。営業利益率2.5%
- 外販事業(コンビニ・PPIHグループ向け製造):数量 108(年間の納品食数(百万食))× 価格 348(1食あたりの平均納入単価(円))→ 売上 377 億円・営業利益 −6 億円。営業利益率-1.5%
倍率:稼ぐ力(事業の純利益÷資本コスト)は小さいため、床の資産で値を付ける。床は純現金と売れる資産の税後を、今の自己資本に対する倍率で置いた。減損で自己資本は360億円に減るが、床は今の自己資本に掛ける。
確率:構造的に負ける筋書きだ。ファミリーマートの取引縮小、総合スーパーの閉鎖加速、新工場の需要不足が重なる必要がある。親会社の後ろ盾があるため、倒産に近い崩れは考えにくく、12%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
テナント事業(総合スーパー内の惣菜店・寿司店)
ユニー・UDリテール・ドン・キホーテなどの売場に惣菜店・寿司店を出して売る。売上の約55%。
| 数量年間の販売食数(百万食) | 価格1食あたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 125 | 380 | 474 | 29 |
| 10 年後 中立 | 120 | 509 | 610 | 34 |
取り方:テナント事業の売上474.2億円を、惣菜・寿司・弁当をならした1食あたり単価380(円)で割り、年間の販売食数を約1.25億食と推定した(食数の開示は無い)。数量は人口減と総合スーパーの店舗減で10年0.96倍を中立に置く。価格は物価並みの1.34倍。市場の大きさは、惣菜市場全体の11.3兆円のうち約0.4%に当たる。競合は専門店のロック・フィールド、各地のスーパー自前の惣菜、デパ地下の専門店。
外販事業(コンビニ・PPIHグループ向け製造)
13の工場で弁当・おにぎり・惣菜を作り、ファミリーマートとPPIHグループなどへ納める。売上の約45%。
| 数量年間の納品食数(百万食) | 価格1食あたりの平均納入単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 135 | 290 | 392 | −1 |
| 10 年後 中立 | 160 | 389 | 620 | 9 |
取り方:外販事業の売上392.3億円を、弁当・おにぎり・惣菜をならした納入単価290(円)で割り、年間の納品食数を約1.35億食と推定した(開示は無い)。内訳はファミリーマート向け262.6億円、PPIHグループ・その他が約130億円。数量は、ファミリーマート向けの縮小とPPIH向けの拡大(新工場)を合わせ、10年1.18倍を中立に置く。価格は物価並みの1.34倍。コンビニの惣菜市場は3.5兆円で、ファミリーマート向けはその約0.7%。競合はわらべや日洋ほか各ベンダー。
リスクと懸念
取引先2社への依存
売上の約64%がユニーとファミリーマートだ。単価と量を握られており、調達先の分散や出店方針の変更が、そのまま利益を揺らす。外販事業が2026年2月期に赤字へ落ちたのが実例だ。
最低賃金と人手不足
臨時雇用を含め約4,600人が働く労働集約の事業だ。最低賃金の上昇は毎年続き、値上げが通らなければ営業利益率は2%台に沈む。自動化は新工場で進めるが、既存の13工場には及ばない。
新工場の投資回収
取得見込額は48.65億円で、収益への貢献は2029年2月期以降だ。稼働までは建設と立ち上げの費用が先行する。PPIH向けの需要が計画に届かなければ、償却が重荷になり、減損の可能性もある。
総合スーパーの店舗減
テナントの売場の中心はユニーとUDリテールの総合スーパーだ。総合スーパーの惣菜は市場の中で最も伸びが弱く、2024年は前年を下回った。店舗の閉鎖や転換が進めば、テナントの売場も減る。
親会社の都合が優先される
PPIHは議決権の4割を握る。配当、現金の使い道、取引条件のいずれも、親会社の戦略が優先されやすい。少数株主に現金が戻る保証は薄く、完全子会社化の価格が事業の価値を超える保証もない。
食材の高騰と食品事故
米や食用油などの値上がりは原価に直撃する。2025年にはテナントの利益が米の高騰の影響を受けた。工場の火災や食中毒が起これば、出荷停止と信用の傷みが長引く。
今後の分かれ目
- PPIHが完全子会社化の公開買い付けを発表したら
- 買い取り価格が事業の価値と余った現金を合わせた額を超えるかを確かめる。超えるなら楽観側の確率を上げ、満たなければ現状の見立てを変えない。
- 外販事業の黒字が通期で定着し、利益率が2%を超えたら
- やや楽観以上の確率を上げる。低採算の絞り込みが終わり、新工場の需要も見えてきた証拠になる。
- 新工場の稼働が遅れる、または計画の投資額が膨らんだら
- 投資の回収時期がずれる。減損のリスクを織り込み、やや悲観の確率を上げる。
- ファミリーマート向けの売上が前年比で2桁減る月が続いたら
- 外販の取引構造が変わり始めた合図。PPIH向けで穴が埋まるか、売上の合計で確かめる。埋まらなければ悲観に寄せる。
- 配当性向の引き上げや大きな自己株式取得が発表されたら
- 余った現金の戻り方を0.5から引き上げて見直す。現金の価値が上がり、本質価値は改善する。
- 最低賃金の引き上げが物価を大きく上回る年が続いたら
- 営業利益率の天井を下げる。やや悲観の確率を上げる材料になる。
見ておくもの
- 外販事業のセグメント利益と、ファミリーマート向け・その他の売上の月次
- 扶桑町の新工場の建設進捗と投資額、2028年3月の稼働
- PPIHの総菜強化とロビン・フッドの出店数
- 配当性向・自己株式取得などPPIHの資本政策
- 最低賃金の改定とテナント事業の利益率
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに食数と単価から10年を積み、倍率は自己資本利益率と資本コスト8.5%から決めた。事業の自己資本利益率は余った現金を除いても6から7%台で、PERの上限は1÷kの12.9倍。中立は約88%に置き、今の株価のPER(約20倍)には寄せていない。今の株価は純現金を満額で見ているが、余った現金は戻り方0.5で数えた点が差の主因だ。純現金の利息は、短期金利2%への上昇で今より約3億円増えるとみて純利益に入れた。新リース会計基準でBSの形が変わるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた(有報の設備表にリース資産の計上は無い)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→13.43 倍・やや楽観 PER 12.4→12.2 倍・中立 PER 11.4→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+0.25%を足して7.75%。事業は傾いておらず上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 8.50%。