結論
ヤマザワは、山形県と宮城県でスーパー 62 店とドラッグストア 67 店を営む地域の流通会社だ。惣菜工場も持ち、軽自動車で売る移動スーパーも走らせる。
筆者の結論は、割高だ。営業利益率は 1% 前後と薄く、資本コストを回収できない年が多い。帳簿の自己資本は 267 億円と時価総額の 2 倍超あるが、そのほとんどは店舗の土地・建物で、売って現金化できる前提ではない。
2025 年の秋に、会社は動いた。秋田の不採算のスーパー事業を 26 億円で切り離し、自社株も約 5% を公開買付けで買った。選択と集中を掲げる、建て直しの局面だ。
今期の経常利益は前期の 3 分の 2 まで減る見通しで、回復は途上にある。前の中期計画は、経常利益 40 億円の目標に 11 億円で終わった。
株主優待は年 2 回の買物券で、見えにくい還元になっている。ただし費用は小さく、評価を変えるほどではない。筆者は、改革の実行を確かめるまでは慎重に見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「帳簿が厚く、稼ぎが薄い会社」だ。
自己資本は時価総額の 2 倍以上ある。だが、それは店舗の土地や建物であって、利益を生む力に結びついていない。ROE は過去 10 年の中央値で 1% 台、資本コストの 8% に遠く及ばない。
事業の経済性は弱い。薄利多売の商売で、値決めの力は小さく、人件費は物価で上がる。規模の拡大でも利益率は上がりにくい。
経営の動きは評価できる。不採算の事業を切り離し、自社株を買った。ただ、前の中期計画の大幅な未達を考えると、実行力はこれから証明する段階だ。
安全域は帳簿にあるが、取り出せる資産ではない。事業の稼ぎで測れば、今の値段は先取りしすぎだと見る。
株主優待は、費用が小さい分、評価を変えない。優待を目当てに買う株主が増えても、事業の価値は変わらない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、食品スーパーだ。2026 年 2 月期の売上 1,054 億円のうち、スーパー事業が 923 億円、ドラッグストア事業が 131 億円を占める。
スーパーは山形に 44 店、宮城に 18 店ある。生鮮食品と惣菜が中心で、客単価は 2 千円台前半と見る(推定)。粗利益は薄く、人件費・光熱費・物流費の上昇が、そのまま利益を圧迫する。
ドラッグストアは子会社のヤマザワ薬品が営み、調剤薬局を含む。市販薬を縮め、調剤を伸ばす方針で、前期は営業損益が約 1 億円の赤字だった。
グループにはサンコー食品がある。スーパーの惣菜や加工品を作り、店の作業を減らす狙いだが、前期は約 2 億円の営業赤字だった。
2025 年 12 月、秋田の「よねや」のスーパー 6 店とフィットネス、不動産を、東北ナイスへ 26 億円で譲った。以後の事業は山形・宮城に集まる。今期の売上は 997 億円の予想で、前期より 5% 余り減る。
店舗は自社保有と賃借が混じり、賃借の分は家賃が固定の約束になる。惣菜や総菜の自社製造で、店の作業を減らす狙いもある。
優良さと弱いところ
堀は、地域での顔なじみの強さにとどまる。山形・宮城の店舗網、惣菜工場、移動スーパー、優待券が客をつなぎ止める。ただし価格を自分で決める力は弱く、利益率は 1% 前後で動く。
良い点は三つある。第一に、自己資本比率が 5 割を超え、店舗の土地・建物を持つ。第二に、秋田の事業を整理し、自社株買いも実行して、経営が動き始めたこと。第三に、AI 自動発注や電子棚札で、業務量を 15% 減らす計画があること。
悪い点も三つある。第一に、稼ぐ力だ。営業利益率は過去 10 年で −1% から 2% の間で、赤字の年が 3 回ある。第二に、人口が減る地方で、競争相手は大手スーパーとドラッグストアだ。値下げ競争に付き合えば利益が出ず、値上げが遅れれば客が逃げる。第三に、前の中期計画で目標の 4 分の 1 しか達成できなかった実行力の弱さだ。
筆者は、事業としては堅実だが、株主のための資本の使い方は途上にあると見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
食品スーパーは、成熟した地域産業だ。
山形・宮城は人口が減り、食べる量も実質で細る。若い世代は市街地に出て、郊外の店は客を失う。一方、物価は上がり、販売価格は上がるが、客は安さに敏感で、値上げは難しい。
競争はきびしい。大手のスーパー、地域のスーパー、ドラッグストア、ディスカウントストアが、同じ客を取り合う。ドラッグストアが食品を安く売るため、スーパーの来店頻度は下がっている。
人件費の上昇も重い。パートの賃金は物価以上に上がり、省人化の投資が欠かせない。セルフレジや電子棚札、AI による自動発注は、業界全体の課題だ。
追い風は、買い物弱者への対応だ。移動スーパー「とくし丸」は 25 台が動き、高齢者の需要に応える。
リースの固定費にも注意が要る。店舗の賃借料は売上が落ちても減らない固定の約束だ。
全国では、地方のスーパーが統合や撤退で再編されている。大手が地方のチェーンを買収し、仕入れと物流の規模を取る動きが続く。山形・宮城でも、規模の小さい会社は単独で生き残るのが難しくなる。ヤマザワは地域密着を強みに、独立を保つ道を選んでいる。
資本政策と M&A
還元は穏やかだ。配当は年 3 億円弱で、配当性向は 2 割前後。2022 年 2 月期から同じ額が続き、増配の方針は見えない。
2025 年の秋、公開買付けで自社株を発行済みの約 5% 取得した。約 5.4 億円で、株価の割安さを認めた動きとも読める。ただし規模は小さい。
株主優待は年 2 回の買物券で、100 株で年 4 千円相当。1,000 株以上で額が上がる。費用は年 0.25 億円と推定する。優待券は現金でなく、使える店が限られる。
借入は短期 22 億円、長期 31 億円、リース債務 33 億円。現預金は 50 億円。
大株主の構成は確かめられなかった。親会社はないとみられる。10 年以内に買収される確率は、外部の推計で 27% とされる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
自己資本は 267 億円あり、時価総額の 2 倍を超える。店舗の土地・建物の多くは自社保有で、地価と建築費の上昇で実際の価値は帳簿を上回る。
会社は変わり始めた。赤字の秋田事業を 26 億円で切り離し、自社株も買った。今期は売上が減っても、利益率は上向く見通しだ。AI 自動発注と電子棚札で業務量を 15% 減らし、サンコー食品の惣菜で店の作業も減らす計画がある。
物価が上がる世界では、食品の売価も上がり、売上は名目で伸びる。人件費は上がるが、省人化の効果が相殺する。2030 年度に営業利益 10 億円、ROE 3% の目標を掲げており、達成すれば利益は今の倍に近づく。
地方スーパーの再編が進めば、買収の対象にもなる。株主優待もあり、長期の株主を引きつける。
賃金が上がる局面では、省人化に先に投資した会社が差をつける。電子棚札やセルフレジは、導入した店ほど作業が減り、人手不足の地方でも店を開けられる。
慎重な見方
利益が出ない構造は、10 年変わっていない。営業利益率は 1% 前後で、赤字の年が 3 回あり、前の中期計画は目標の 4 分の 1 で終わった。経営の実行力には疑問が残る。
人口が減る山形・宮城で、数量は実質で細る。大手スーパーとドラッグストアが同じ客を取り合い、値上げは通りにくい。人件費は物価以上に上がり、利益率は更に薄くなる。
自己資本は店舗の土地・建物で、売って現金化できない。事業をやめない限り、価値は利益で測るしかない。ROE が 1% 台の会社に、帳簿の厚みを理由に高い値は付けられない。
リースと借入の固定費も重い。売上が落ちても、賃借料と利払いは減らない。
秋田の整理は赤字の手じまいにすぎず、成長への一手ではない。自社株買いの規模も 5 億円台と小さい。
第 4 次計画の目標も、前の計画と同じく、コストと価格転嫁の読みに依存している。読みが外れれば、再び大幅未達になる。再編で大手の傘下に入るにしても、少数株主への価格は事業の稼ぎで決まる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。帳簿の厚みは事実だが、利益で測れば資本コストを大きく下回る。経営の改革は始まったばかりで、実績がないため、楽観側の確率は 2 割余りにとどめた。地方スーパーの再編で買収される可能性は残るが、買収価格が帳簿を反映するかは分からず、確率は中立に置いた。実行の確認を待つ姿勢を取った。改革が数字に出れば、見方は変わりうる。中立の確率を 38% とし、やや悲観と悲観を合わせて 40% に寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 519 円53 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 274 円28 億円)。 今の値に割り戻すと 418 円43 億円、今との差 −63.5%、 期待の年率 −3.6%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,477 円152 億円 | 414 円43 億円 | +65.2% | +5.1% | 132 円14 億円 |
| やや楽観 | 15% | 891 円92 億円 | 355 円37 億円 | +8.9% | +0.9% | 187 円19 億円 |
| 中立 | 38% | 504 円52 億円 | 292 円30 億円 | −30.5% | −3.6% | 303 円31 億円 |
| やや悲観 | 28% | 243 円25 億円 | 232 円24 億円 | −58.5% | −8.4% | 133 円14 億円 |
| 悲観 | 12% | 185 円19 億円 | 129 円13 億円 | −72.6% | −12.1% | 38 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 519 円53 億円 | 274 円28 億円 | −30.8% | −3.6% | 793 円81 億円 |
今の株価時価総額 1,145 円118 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 省人化と調剤の拡大が実り、営業利益が今の倍に近づく 利益 13 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,477 円152 億円
AI 自動発注と省人化で業務量を 15% 減らし、人件費の上昇を吸収する。サンコー食品の惣菜が黒字化し、店の作業も減る。
調剤の拡大で薬品事業が黒字になり、スーパー事業は新店と改装で来店客が増える。物価は価格に転嫁され、客単価は 1.33 倍まで上がる。
営業利益は 21 億円に増え、利益率は 1.7% に届く。配当性向を 3 割まで上げ、自社株買いも続ける。ただし山形・宮城の人口は減り、この水準を保つ難しさは残る。地域の人手不足を省人化の先行投資で逆手に取り、競合より早く店を開け続ける。その結果、客数の減りは小さく、シェアがわずかに上がる。
- 食品スーパー事業:数量 3,900(年間の来店客数(万人))× 価格 3.05(客 1 人あたりの買上額(千円))→ 売上 1,190 億円・営業利益 19 億円。客数 3,900 万人(秋田分を除いた今の 1.03 倍)× 客単価 3.05 千円(1.33 倍)、営業利益率 1.6%
- ドラッグストア・調剤事業:数量 620(年間の来店客数(万人))× 価格 3.40(客 1 人あたりの買上額(千円))→ 売上 211 億円・営業利益 3 億円。客数 620 万人(1.23 倍)× 客単価 3.40 千円(1.31 倍)、営業利益率 1.2%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 152 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新計画が計画通りに進み、利益が目標を超える筋書き。前計画の未達を考えると難しいので 7%。
やや楽観 15% 改革が一部実り、営業利益は 14 億円に増える 利益 8 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 891 円92 億円
不採算店の整理と省人化が進み、利益率は 1.2% に上がる。客数は微減にとどまり、客単価は物価の 9 割ほど上がる。
ドラッグストアは調剤が伸び、黒字化する。サンコー食品の赤字は縮まるが、解消はしない。
営業利益は 14 億円。配当性向は 3 割へ上がり、優待も続く。それでも ROE は 3% に届かず、資本コストを下回り続ける。ただし山形・宮城の人口減は続き、客数の伸びは見込めない。利益は改善するが、成長はなく、資本の効率は低いままである。優待と配当で株主に応える姿だ。改革の効果が出るまでには時間がかかり、回復は後半に偏る。
- 食品スーパー事業:数量 3,700(年間の来店客数(万人))× 価格 3.00(客 1 人あたりの買上額(千円))→ 売上 1,110 億円・営業利益 13 億円。客数 3,700 万人(0.97 倍)× 客単価 3.00 千円(1.30 倍)、営業利益率 1.2%
- ドラッグストア・調剤事業:数量 560(年間の来店客数(万人))× 価格 3.30(客 1 人あたりの買上額(千円))→ 売上 185 億円・営業利益 2 億円。客数 560 万人(1.11 倍)× 客単価 3.30 千円(1.27 倍)、営業利益率 0.8%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.6% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 92 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:秋田の整理と省人化が効くが、競争で価格転嫁が遅れる筋書き。実現性は比較的高いが、実績が乏しいので 15%。
中立 38% 人口減で客数が細り、物価の転嫁で売上は保つが、利益は薄いまま 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 504 円52 億円
山形・宮城の人口減で客数は今の 9 割強に減る。物価の転嫁は遅れ、客単価は 1.30 倍にとどまる。調剤の公定価格も物価ほど上がらない。
人件費は物価以上に上がり、省人化が追いつかない。営業利益率は 0.8% 前後で、利益は 8 億円台にとどまる。
配当は据え置きに近く、性向は 2 割台。優待も続く。利益の大半は留保されるが、ROE は 1% 台で資本コストに届かない。秋田の整理で身軽になっても、残る店の利益率は上がりにくい。第 4 次計画の目標は、時期をずらして半分ほど達成する程度にとどまる。
- 食品スーパー事業:数量 3,500(年間の来店客数(万人))× 価格 2.99(客 1 人あたりの買上額(千円))→ 売上 1,047 億円・営業利益 9 億円。客数 3,500 万人(0.92 倍)× 客単価 2.99 千円(1.30 倍)、営業利益率 0.9%
- ドラッグストア・調剤事業:数量 520(年間の来店客数(万人))× 価格 3.10(客 1 人あたりの買上額(千円))→ 売上 161 億円・営業利益 1 億円。客数 520 万人(1.03 倍)× 客単価 3.10 千円(1.19 倍。調剤は公定価格で物価ほど上がらない)、営業利益率 0.4%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 1.5% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 52 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:秋田の整理と省人化は進むが、値上げが遅れ人件費が嵩む。計画の目標は届かない。もっとも自然な筋書き。
やや悲観 28% 競争に押されて客数が細り、利益がほぼ消える 利益 0 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 243 円25 億円
客数は今の 8 割台に減り、値上げは通らず客単価は 1.26 倍にとどまる。人件費は物価で上がり、利益率は 0.3% 台に落ちる。
店舗の閉鎖と減損が続き、特別損失が出る。営業利益は 1 億円を割り、純利益も小さい。
配当は据え置きが難しくなり、減配する。優待は 3 割縮小する。価値は事業の稼ぎでなく、店舗資産を整理した後の床に近づく。ドラッグストアの食品強化が続き、スーパーの来店頻度が下がる。値引き競争に付き合わざるをえず、粗利益が薄くなる。リースの固定の賃借料も重くのしかかる。撤退する店の跡地の処分も、時間と費用を要する。
- 食品スーパー事業:数量 3,200(年間の来店客数(万人))× 価格 2.90(客 1 人あたりの買上額(千円))→ 売上 928 億円・営業利益 3 億円。客数 3,200 万人(0.84 倍)× 客単価 2.90 千円(1.26 倍)、営業利益率 0.35%
- ドラッグストア・調剤事業:数量 480(年間の来店客数(万人))× 価格 2.95(客 1 人あたりの買上額(千円))→ 売上 142 億円・営業利益 0 億円。客数 480 万人(0.95 倍)× 客単価 2.95 千円(1.13 倍)、営業利益率 −0.3%
倍率:ROE がほぼ 0% で k を大きく下回り、稼ぐ力では床を満たさない。今の自己資本 267 億円に PBR 0.094 倍(約 25 億円)を掛けた。減損 15 億円で、自己資本は今の水準を超えない。 EV÷営業利益が高く出るのは、営業利益がほぼ消える筋書きだから。純有利子負債は小さく、稼ぎでなく店舗資産の床で測った。
確率:大手とドラッグストアが山形・宮城に出店を増やし、客を奪う筋書き。すでに進む変化の延長で、厚めに 28%。
悲観 12% 大手の出店で客を失い、赤字と店舗閉鎖が続く 利益 −5 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 185 円19 億円
競合の出店と人口減で、客数は今の 7 割に減る。値上げは通らず、客単価は物価の半分しか上がらない。
売上の落ち込みに店舗数の縮小が追いつかず、営業損益は赤字になる。減損損失と閉鎖費用で自己資本が 40 億円ほど減る。
配当は大幅に減り、優待は半分になる。経営は店舗の売却や他社との統合を迫られる。店舗の売却や他社との統合を迫られ、株主にとっては事業の継続より整理後の価値が焦点になる。優待は廃止され、配当は無配に近づく。山形・宮城の食品流通の再編が、一気に進む姿である。従業員の整理や取引先への影響も大きく、地域の雇用にも響く。
- 食品スーパー事業:数量 2,700(年間の来店客数(万人))× 価格 2.70(客 1 人あたりの買上額(千円))→ 売上 729 億円・営業利益 −4 億円。客数 2,700 万人(0.71 倍)× 客単価 2.70 千円(1.17 倍)、営業利益率 −0.5%
- ドラッグストア・調剤事業:数量 400(年間の来店客数(万人))× 価格 2.80(客 1 人あたりの買上額(千円))→ 売上 112 億円・営業利益 −1 億円。客数 400 万人(0.79 倍)× 客単価 2.80 千円(1.08 倍)、営業利益率 −1%
倍率:ROE がマイナスで稼ぐ力は付けられない。今の自己資本 267 億円に PBR 0.071 倍(約 19 億円)を掛けた。事業用の土地・建物を急いで売る前提の床である。
確率:競争に敗れ、客数が 3 割近く減って赤字が続く。起これば自己資本が大きく目減りする筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品スーパー事業
山形 44 店・宮城 18 店のスーパー。生鮮・惣菜・食品。前期は秋田のよねや 6 店を含む。
| 数量年間の来店客数(万人) | 価格客 1 人あたりの買上額(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 4,013 | 2.30 | 923 | 14 |
| 10 年後 中立 | 3,500 | 2.99 | 1,047 | 9 |
取り方:売上 923 億円をセグメント開示から取った。客数 4,013 万人と客単価 2.3 千円は、この売上を成り立たせる推定(開示は金額のみ)。前期は秋田のよねや(12 月に譲渡)の約 9 か月分を含む。営業利益 14 億円はセグメント開示。
ドラッグストア・調剤事業
ヤマザワ薬品が営む。市販薬を縮め、調剤を伸ばす方針。
| 数量年間の来店客数(万人) | 価格客 1 人あたりの買上額(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 504 | 2.60 | 131 | −1 |
| 10 年後 中立 | 520 | 3.10 | 161 | 1 |
取り方:売上 131 億円・営業損失 1 億円をセグメント開示から取った。客数と客単価は推定。 調剤は公定価格で、薬価の改定は物価ほど上がらない前提を置く。
リスクと懸念
薄利の構造
営業利益率は 1% 前後で、赤字の年が 10 年に 3 回ある。人件費の上昇と値上げの遅れで、少しの変化が赤字に直結する。
地方の人口減
山形・宮城は人口が減り、客数は実質で細る。店舗網を維持する固定費は減らず、不採算店の整理が続く。
リースと借入の固定費
短期・長期の借入 53 億円とリース債務 33 億円があり、店舗の賃借料も固定の約束だ。売上が落ちても減らず、新リース会計基準で BS の見かけの借金が増える。
競争の激化
大手スーパー、ドラッグストア、ディスカウントストアが同じ客を取り合う。値下げ競争に付き合えば利益が出ない。
計画の実行力
前の中期計画は経常利益 40 億円の目標に 11 億円で終わった。新計画の AI 自動発注や省人化が実を結ぶかは、これから問われる。
AI エージェント代替の影響は小さい
店頭の接客と物流は現場の体が中心で、AI エージェントが代替する部分は事務に限られる。本部の事務の効率化は、むしろコスト削減の機会になる。
今後の分かれ目
- 営業利益が 3 期続けて 10 億円を超える
- 第 4 次計画の中身が実を結んだ証拠。中立の利益率を引き上げ、楽観の確率を上げる。
- 不採算店の閉鎖や売却が進み、店舗の土地・建物の売却益が出る
- 帳簿の資産が現金に変わる。還元の増額と合わせて見直す。
- 配当性向を 4 割以上へ引き上げる、または自社株買いを繰り返す
- 留保した利益が株主に戻る確度が上がる。中立の倍率を引き上げて見る。
- ドラッグストアや大手が山形・宮城で出店を急ぐ
- 客の奪い合いが激しくなる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 他の地域スーパーとの統合、または公開買付けの発表
- 買付価格が基準になり、帳簿の資産をどこまで評価するかが焦点になる。
見ておくもの
- スーパー事業の営業利益率と既存店の客数
- ドラッグストア・調剤事業の黒字化
- サンコー食品の損益
- 配当性向と自社株買い、優待の見直し
倍率と資本コストの決め方
本業の営業利益を数量×単価から積み、帳簿の自己資本は利益を生まないので倍率を式の上限 8 割台に抑えた。自己資本が時価総額の 2 倍超でも、ROE が k を大きく下回る会社の倍率は 1÷k が上限で、市場の PER や PBR は根拠にしていない。店舗の土地・建物は事業用で売る方針が無く、含みは数えていない。優待の費用は小さく、payout に年 0.25 億円を 10 年分で足した。新リース会計基準でリース債務が BS に載るが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→12.05 倍・やや楽観 PER 9→12.05 倍・中立 PER 8.5→12.05 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。