結論
クリエイトSDは、神奈川を地盤に約 810 店を構えるドラッグストアだ。筆者の結論はやや割安で、決め手は、薄利でも崩れにくい低価格の商売と、現金が借金を上回る財務にある。
稼ぎの源は、薬と日用品の安売りに、食品と調剤を重ねた大きな店だ。客は車で来て、まとめて買う。調剤を併設した店が増え、処方箋が来店の理由を一つ足している。営業利益率は 5% 前後と高くはない。だが売上は長く減ったことがない。
経営は、大手の統合に加わらない道を選んだ。仕入れの規模では劣るが、地域に店を密に置いて戦う。創業家系の個人が大株主に残り、方針は短期の都合で動きにくい。
弱点は、新しい店を増やしにくくなったことだ。前の計画の 850 店には届かず、831 店で終わった。今後は店の大型化と調剤薬局の買収で伸ばす。10 年後の純利益は、中立の見立てで約 300 億円になる。
資本コストで今に割り戻すと、本質価値は今の時価総額を 3 割近く上回る。ただし食品スーパーや調剤の買収を誤れば、利益は伸びず、この余裕は消える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「分かりやすく、長く続く商売を、堅実に広げる会社」に見える。薬と食品は人が毎日使う。安く売る仕組みは、景気が悪くなっても客を逃さない。10 年後も存在し、今より大きいと見てよい。
気になるのは堀の浅さだ。値段で競う事業は、勝ち続けても利益率が上がらない。5% 前後の営業利益が、10 年かけて 6% になる見込みは薄い。強気に見る人の言う「規模の経済で利益率が上がる」は、この会社では期待しすぎだ。
オーナーとして見ると、利益の使い方に好感が持てる。稼いだお金を店に戻し、売上は 20 年以上、減っていない。一方で、利益の 6 割強を再投資に回し、現金が増えない点は、株主にとって配当が少ないことを意味する。再投資の稼ぎが資本コストを超え続けるかが分かれ目だ。
安全域は、今の値段にある。10 年後の純利益を、物価と店の増加から堅く見積もっても、今の値段は割り戻した価値を下回る。ただし余裕は大きくない。買収が続く以上、利益の質を見続ける必要がある。
何で稼ぐ会社か
主力は、神奈川・東京・千葉・静岡・愛知などで展開する「クリエイトエス・ディー」だ。2026 年 5 月末で、ドラッグストアが 811 店、調剤専門の薬局が 48 店ある。医薬品、化粧品、日用品に加えて、生鮮を含む食品を並べる。「医と食」を一つの店で買える形にして、小さな商圏の客を囲い込む。
値段は毎日安く置く方針だ。特売で客を呼ぶのでなく、いつ来ても安いと思わせる。利益は、安売りの薄い粗利を、調剤と大きな店の効率で補って出す。調剤併設店の割合は 2023 年に 4 割台後半で、10 年前より大きく上がった。2026 年 5 月期の調剤薬局の売上は、前の期より 15% 近く伸びた。
2020 年に食品スーパーの百合ヶ丘産業を傘下に入れ、2025 年には調剤薬局のサンエフと、青果を軸とする八百半ホールディングスを加えた。自力の出店だけでは好立地が減り、買収を足す形に変えたことが分かる。
中期経営計画「Next STAGE 2030」は、2030 年 5 月期に売上 6,800 億円と ROE 12% 以上を掲げる。北関東と甲信越へ新しく入り、小さな既存店を閉めて大きな店に建て替える。来期は、ドラッグストア 50 店、調剤薬局 45 店を出す予定だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、地域での店の密度と、調剤と食品を一つにした店の形にある。神奈川の住宅地で、駅前でなく車で寄れる場所に、広い売場を持つ。この土地の取り合いは、あとから来た大手には楽でない。薬剤師を確保し、処方箋の流れを作るのにも時間がかかる。
ただし堀は深くない。価格を決めるのは競争で、安売りの旗を降ろせば客が逃げる。化粧品で都市型の店に差をつけられる強みも、調剤報酬のような規制に守られた稼ぎも、大手ほど厚くはない。営業利益率が 5% 前後で動かないのは、そのせいだ。
資本効率は悪くない。ROE は 11% で、資本コストを 3 ポイント半ほど上回る。店を増やすたびに資金が要るので、ためた利益は現金でなく店に変わっている。純現金は 10 年間、350 億円から 420 億円の間で動かず、自己資本だけが増えた。
経営は堅実だ。2012 年に外部から迎えた廣瀬泰三氏のもと、安く売り、調剤を足す路線を続けてきた。半面、食品スーパーの買収は未経験の領域で、八百半の統合はこれからが勝負になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ドラッグストアは、人口が減る国で伸びてきた珍しい業態だ。2024 年度の業界の売上は初めて 10 兆円を超えた。食品の売上が 1 割以上伸び、調剤も 9% 伸びた。薬だけの店から、食品と調剤まで買える店に変わったことが、客を増やした。
この追い風は、これから弱まる。店は全国で 2 万 3 千店を超え、出店余地は細っている。次に伸びるのは、1 店あたりの売上だ。調剤と食品の比率が上がり、大きな店が増える。10 年では、店の数は横ばいに近づき、再編でシェアが上位に集まる。
競争の形も変わった。イオンの傘下で、ウエルシアとツルハが統合した。マツキヨとココカラも一つになった。大手は仕入れで有利になり、価格を下げる力が増す。2026 年 1 月には、イオンが地方チェーンを連結子会社にした。
クリエイトSDは、この再編に加わらない。仕入れ規模の差は縮まらないが、地域の店の密度は大手にも簡単には崩せない。神奈川の中心部は店が多く、新しい店の取り合いが厳しい。北関東や甲信越への進出は、店の密度を一から作り直す挑戦になる。
逆風は、調剤報酬の引き下げと、薬のネット販売の緩和だ。調剤は利益の厚い部分で、報酬が切り下げられると、全体の利益率が削られる。反対に、高齢化は調剤の患者数を押し上げ続ける。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。2026 年 5 月期の配当性向は 35% 前後(2026 年 5 月期)にとどまる。2027 年 5 月期も増配の予想だ。自社株買いは目立たず、利益の 6 割強は店と買収に回している。
資金の使い道は、出店と買収だ。毎年、ドラッグストアと調剤薬局を合わせて 90 店ほど出す計画で、小さな店を閉めて建て替える費用もかかる。ためた現金が増えないのは、そのためだ。
M&A は、食品スーパーと調剤薬局が中心になる。百合ヶ丘産業、サンエフ、八百半と、小さな案件を重ねてきた。大型の合併には動いていない。今後も、同じ規模の買収を続けるだろう。
株主は、創業家系の個人が上位を占める。外から見て、経営権が揺らぐ可能性は小さい。同時に、大手が買収を仕掛けても、創業家が首を縦に振らない限り成立しにくい。参考として、kabufu の推計では、10 年以内に買収される確率は 20% だ。
点検済み(見落とし点検 2026-10-19):起点の純利益 170 億円に特別益は見当たらない。純現金 353 億円は家賃・運転資金・出店資金で余らないと見て足していない。店数は実物、値段は調剤報酬の鈍さを織り込んで物価より低く置き、二重がけなし。中立の営業利益率 4.9% は今と同じ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
クリエイトSDは、大手の統合が進むほど、独立の価値が増す会社だ。大手が仕入れで勝つほど、地域の店の密度で戦う会社は少なくなる。神奈川の住宅地で築いた店の網は、一朝一夕には作れない。
調剤の伸びも追い風だ。2026 年 5 月期の調剤薬局の売上は 15% 近く伸びた。高齢化は 10 年以上続き、処方箋の枚数は増える。調剤を併設した店は、食品と薬を同じ客に売れるので、1 店あたりの売上が上がる。
買収の成果もこれから出る。百合ヶ丘産業で食品を学び、サンエフで調剤を加え、八百半で青果の強みを足した。店の大型化が進めば、売上は物価を超えて伸びる。
財務は強い。借金より現金が多く、金利が上がっても利払いは増えない。出店のための資金は、自力で賄える。ROE が 12% を超える日は近い。
さらに、創業家系の株主が長く持ち続けているので、短期の利益を追って店の質を落とす心配が小さい。10 年先を見て、店の大型化と買収を腰を据えて進められる。これは上場企業では意外に珍しい強みだ。
慎重な見方
営業利益率は 5% 前後で、10 年以上、上がっていない。値段で勝負する会社は、物価が上がるたびに仕入れと人件費の上昇を追いかける。大手の統合で仕入れ力の差が広がれば、安さの旗は守れなくなる。
新しい店を増やせないことは、成長の限界を示している。前の計画は 850 店を狙ったが届かなかった。大きな店に建て替える投資は、費用が先に出て、稼ぎが遅れる。
買収の腕も未知数だ。食品スーパーは利益率が低く、ドラッグストアの経営とはやり方が違う。八百半の統合に失敗すれば、減損と本業の人手の分散が同時に来る。
調剤は利益の厚い部分だが、国の報酬で決まる。引き下げが続けば、全体の利益率が下がる。しかも店の多くは借りもので、売上が落ちても家賃は下がらない。
最後に、大手が仕入れで先を行く以上、今の 5% 前後の利益率を守るだけでも簡単ではない。成長のために店を増やすほど、競争の激しい場所に入ることになり、新しい店の稼ぎは薄れやすい。
どちらに重みを置いたか
薄利と堀の浅さは、慎重な見方が正しい。だが売上が長く減らず、現金が増えない代わりに店が増えてきたことは、強気な見方の裏付けになる。
確率は、中立を中心に、やや楽観に少し寄せた。悲観の確率は 11% とやや厚く置いた。買収の失敗と調剤報酬の引き下げが重なる筋書きは、無視できないからだ。結果として、10 年の本質価値は今を 3 割近く上回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 7,099 円4,586 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,326 円856 億円)。 今の値に割り戻すと 4,554 円2,942 億円、今との差 +42.3%、 期待の年率 +10.2%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 12,356 円7,982 億円 | 1,858 円1,200 億円 | +344.2% | +16.1% | 1,137 円735 億円 |
| やや楽観 | 22% | 9,753 円6,301 億円 | 1,559 円1,007 億円 | +253.5% | +13.5% | 2,489 円1,608 億円 |
| 中立 | 36% | 8,024 円5,184 億円 | 1,353 円874 億円 | +193.0% | +11.4% | 3,376 円2,181 億円 |
| やや悲観 | 23% | 4,052 円2,618 億円 | 1,176 円760 億円 | +63.4% | +5.0% | 1,203 円777 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,314 円849 億円 | 697 円450 億円 | −37.2% | −4.5% | 221 円143 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,099 円4,586 億円 | 1,326 円856 億円 | +163.3% | +10.2% | 8,425 円5,443 億円 |
今の株価時価総額 3,200 円2,067 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 北関東・甲信越でも密度を築き、規模の利益が出る 利益 431 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 12,356 円7,982 億円
独立路線が実を結ぶ 10 年になる。神奈川の店は大型に建て替わり、調剤併設と食品強化で 1 店あたりの売上が伸びる。北関東と甲信越にも店の密度ができ、新しい商圏が稼ぎ頭に加わる。
買収は小さな案件を重ね、食品スーパーの運営も軌道に乗る。仕入れは物流と自社ブランドの拡大で改善し、利益率は 5% を超えて 5.4% に上がる。
調剤は高齢化で患者が増え、専門薬局の店数が 260 店規模まで広がる。ROE は 13% 近くに上がり、ためた利益は店に変わって、さらに利益を生む。独立のまま、地域の最強チェーンの一角に収まる。
- ドラッグストア事業(食品スーパーを含む):数量 1,300(標準店換算の店舗数(今の 1 店の売場・品ぞろえを 1 とした数。大型化・調剤併設の進みも含む))× 価格 1.36(値段の指数(今 = 1.0。物価と調剤報酬の動きを合わせたもの))→ 売上 10,619 億円・営業利益 573 億円。営業利益率 5.4%
- 調剤専門薬局事業:数量 260(調剤専門薬局の店舗数(店))× 価格 1.32(値段の指数(今 = 1.0。調剤報酬の改定の影響を受ける))→ 売上 715 億円・営業利益 43 億円。営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 431 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍。全体の PER 18.52 倍、時価総額 7,982 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新しい商圏で店の密度を作り、買収も成功し、利益率が上がる連続成功が要る。実現すれば強いが、確度は高くない。
やや楽観 22% 店の大型化と調剤で、堅実に伸びる 利益 358 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 9,753 円6,301 億円
今の路線がほぼ計画どおりに進む。小さな店を閉めて大きな店に建て替え、調剤併設の割合が上がる。1 店あたりの売上は、物価を少し上回って伸びる。
北関東への出店は、神奈川ほどの密度には届かないが、赤字を出さずに根づく。大きな店は、食品の品ぞろえで日々の買い物の場所になる。買収は食品スーパーが小さな黒字にとどまるものの、調剤薬局は着実に増える。
利益率は 5% を少し超える。ROE は 11% 台で、10 年の売上は今の 2 倍ほどになる。大手との価格競争は続くが、地域の密度で守り切る。配当は利益の 4 割弱で、毎年少しずつ増える。大きな驚きはないが、堅実に積み上がる 10 年だ。
- ドラッグストア事業(食品スーパーを含む):数量 1,160(標準店換算の店舗数(今の 1 店の売場・品ぞろえを 1 とした数。大型化・調剤併設の進みも含む))× 価格 1.34(値段の指数(今 = 1.0。物価と調剤報酬の動きを合わせたもの))→ 売上 9,336 億円・営業利益 481 億円。営業利益率 5.1%
- 調剤専門薬局事業:数量 200(調剤専門薬局の店舗数(店))× 価格 1.30(値段の指数(今 = 1.0。調剤報酬の改定の影響を受ける))→ 売上 542 億円・営業利益 31 億円。営業利益率 5.8%
倍率:事業の純利益 358 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍。全体の PER 17.6 倍、時価総額 6,301 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:調剤の伸びと大型化の効果が続き、買収も大きな失敗なく進む。業界の上位レンジに近い想定。
中立 36% 中立:地域の独立系として、物価並みに伸びる 利益 297 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 8,024 円5,184 億円
10 年後も、神奈川を軸とした地域のドラッグストアとして安定する。店の数はゆるやかに増え、1 店あたりの売上は大型化で少し伸びる。物価に調剤報酬の鈍さを織り込むと、値段は 10 年で 1.32 倍になる。
営業利益率は 4.9% で、今とほぼ変わらない。人件費の上昇は、店の大型化と物流の効率化で吸収する。調剤専門の薬局は 160 店ほどに増えるが、利益への貢献は小さい。
大手の価格攻勢は続くが、地域の密度で客を守る。自社株買いは目立たず、配当は利益の 4 割弱で増え続ける。驚きの少ない、堅実な 10 年になる。
- ドラッグストア事業(食品スーパーを含む):数量 1,030(標準店換算の店舗数(今の 1 店の売場・品ぞろえを 1 とした数。大型化・調剤併設の進みも含む))× 価格 1.32(値段の指数(今 = 1.0。物価と調剤報酬の動きを合わせたもの))→ 売上 8,166 億円・営業利益 400 億円。営業利益率 4.9%
- 調剤専門薬局事業:数量 160(調剤専門薬局の店舗数(店))× 価格 1.30(値段の指数(今 = 1.0。調剤報酬の改定の影響を受ける))→ 売上 433 億円・営業利益 24 億円。営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 297 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.16 倍、時価総額 5,096 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の中心値と、独立系として今の位置を保つ筋書きを合わせた中心の見立て。
やや悲観 23% 大手の価格攻勢と調剤報酬の引き下げで、利益率が下がる 利益 207 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 4,052 円2,618 億円
大手の仕入れの差が、10 年かけて価格に出てくる。クリエイトSDは値下げで対抗せざるを得ず、1 店あたりの売上の伸びは物価に届かない。
調剤報酬の引き下げが続き、専門薬局は期待ほど稼げない。大型店の建て替えは費用が先に出て、稼ぎは遅れる。店の多くが借りものなので、売上が鈍っても家賃は残り、利益率は 4% に下がる。
北関東への出店は密度が作れず、一部を見直す。食品スーパーの買収は利益を出せず、重荷になる。ROE は 8% 弱で、資本コストをわずかに上回る程度にとどまる。売上は増えても、利益はほとんど増えない。株主にとっては、物価に追いつくだけの 10 年になる。
- ドラッグストア事業(食品スーパーを含む):数量 940(標準店換算の店舗数(今の 1 店の売場・品ぞろえを 1 とした数。大型化・調剤併設の進みも含む))× 価格 1.27(値段の指数(今 = 1.0。物価と調剤報酬の動きを合わせたもの))→ 売上 7,170 億円・営業利益 287 億円。営業利益率 4.0%
- 調剤専門薬局事業:数量 120(調剤専門薬局の店舗数(店))× 価格 1.20(値段の指数(今 = 1.0。調剤報酬の改定の影響を受ける))→ 売上 300 億円・営業利益 11 億円。営業利益率 3.5%
倍率:ROE 7.7%(純利益 207 億円 ÷ 自己資本 2,683 億円)。ROE が資本コスト 7.0% をわずかに上回る程度で、RONIC = 7.4%、正当化 PER = 15.0 倍(1÷k は 14.3 倍)。新しい店の稼ぎが薄く、堀も持ちにくいので、上限の 8 割強の 12.1 倍に置いた。
確率:イオン連合の仕入れの差が価格に出て、調剤報酬も切り下げられ、利益が伸びにくくなる。家賃は売上が落ちても残る。
悲観 11% 地域の優位を失い、薄利が赤字すれすれまで落ちる 利益 72 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 1,314 円849 億円
構造的に負ける 10 年になる。大手が神奈川にも本格的に出店し、価格競争が激しくなる。クリエイトSDは値下げで客数を守るが、利益率は 2% まで落ちる。
調剤報酬の大幅な引き下げで、併設の調剤は稼げなくなる。食品スーパーなどの買収は失敗し、約 200 億円の減損が出る。出店は止まり、一部の店を閉じる。
借金がないので、倒れることはない。だが店を閉じても家賃の約束はすぐには消えないので、利益はさらに削られる。それでも財務は耐え、配当は減らしながら続く。会社は残るが、優良な成長企業ではなくなる。自己資本の厚さが、倒れない理由になる。
- ドラッグストア事業(食品スーパーを含む):数量 760(標準店換算の店舗数(今の 1 店の売場・品ぞろえを 1 とした数。大型化・調剤併設の進みも含む))× 価格 1.20(値段の指数(今 = 1.0。物価と調剤報酬の動きを合わせたもの))→ 売上 5,478 億円・営業利益 110 億円。営業利益率 2.0%
- 調剤専門薬局事業:数量 70.0(調剤専門薬局の店舗数(店))× 価格 1.10(値段の指数(今 = 1.0。調剤報酬の改定の影響を受ける))→ 売上 160 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 1.0%
倍率:ROE 3.6% と薄い利益で、稼ぐ力(事業の純利益 72 億円 ÷ k 7.0%)は約 1,030 億円。売れる資産の税後は約 760 億円(floor_assets_oku)で、稼ぐ力より小さい。今の自己資本 1,543 億円に PBR 0.55 倍を掛けた。ためた利益は床に入れない。
確率:大手の攻勢、調剤報酬の大幅な引き下げ、買収の失敗が重なる複合の筋書き。事業は残るが、優位は失われる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ドラッグストア事業(食品スーパーを含む)
クリエイトエス・ディーを軸に、調剤併設・食品強化の大型店を出す。食品スーパーの子会社の売上もここに入れた。
| 数量標準店換算の店舗数(今の 1 店の売場・品ぞろえを 1 とした数。大型化・調剤併設の進みも含む) | 価格値段の指数(今 = 1.0。物価と調剤報酬の動きを合わせたもの) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 811 | 1.00 | 4,871 | 236 |
| 10 年後 中立 | 1,030 | 1.32 | 8,166 | 400 |
取り方:ドラッグストア 811 店に、全社売上 4,971 億円から調剤専門薬局の推定分 約 100 億円を除いた 4,871 億円を割り、1 店あたり 6.0 億円とした。食品スーパー子会社の売上は開示が無く、ここに含めた(推定)。営業利益は全社の 240 億円から調剤専門と本社費を除いた推定値。数量は店の数と大型化を合わせた実質、値段は物価 3% に調剤報酬の鈍さを織り込んだ指数で、中立 10 年 1.32 倍(物価の 1.34 倍より低いのは、売上の約 2 割を占める調剤の報酬が物価ほど上がらないため。売上に占める調剤の割合は未開示で推定)。
調剤専門薬局事業
サンエフの買収などで広げる、ドラッグストアに併設しない調剤専門の薬局。
| 数量調剤専門薬局の店舗数(店) | 価格値段の指数(今 = 1.0。調剤報酬の改定の影響を受ける) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 48.0 | 1.00 | 100 | 6 |
| 10 年後 中立 | 160 | 1.30 | 433 | 24 |
取り方:調剤専門薬局 48 店(2026 年 5 月)に 1 店あたり 2 億円を置いて 約 100 億円と推定した(開示が無いため。併設型より処方箋が多い専門薬局の水準を想定)。調剤の値段は国の報酬で決まり、物価ほど上がらないとして、中立 10 年 1.30 倍。営業利益率は 6% と推定。 数量は実物(店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
リスクと懸念
大手の統合による価格競争
イオン傘下のウエルシア・ツルハと、マツキヨココカラが仕入れ力で先を行く。差が価格に出ると、クリエイトSDは安さの旗を守りにくくなる。営業利益率が 5% を割る筋書きの出発点だ。
調剤報酬の引き下げ
調剤は利益の厚い部分で、国の報酬で値段が決まる。引き下げが続けば、併設で稼ぐ形が崩れる。物価が 3% で上がる世界でも、調剤の値段は物価ほど上がらないと見ている。
食品スーパーの買収の失敗
百合ヶ丘産業、八百半と、食品スーパーを重ねてきた。ドラッグストアと違い利益率が低く、運営も別物だ。統合が進まなければ、減損と本業の人手の分散が同時に来る。
出店余地の細り
前の計画は 850 店を狙い、実績は 831 店だった。好立地が減り、大きな店への建て替えが主な成長手段になる。費用が先に出て、稼ぎが遅れる局面が続く。
店舗の家賃という固定の約束
店の多くは借りもので、家賃は売上の 4% 前後と推定される(開示が無く推定)。売上が落ちても家賃は下がらない。2028 年 5 月期以降は新リース会計基準でリース負債が載り、自己資本比率は 60% から大きく下がって見える。中身は今と同じだ。
人件費の上昇
最低賃金の上昇と、薬剤師・パートの不足が続く。大きな店は人手も多く要る。値上げで吸収できなければ、利益率が削られる。
今後の分かれ目
- ウエルシア・ツルハが神奈川の中心部で出店と価格攻勢を強めたら
- やや悲観・悲観の筋書きに重みを移す。既存店の客数と営業利益率を確かめる。
- 八百半を含む食品スーパーが、2 年以内に黒字化し、既存店も伸びたら
- やや楽観の筋書きに重みを移す。食品の売上割合と店あたりの売上の伸びを確かめる。
- 調剤報酬の改定で、調剤の利益率が大きく下がったら
- 利益率を引き下げ、悲観側に確率を寄せる。調剤併設店の割合を確かめる。
- 北関東・甲信越の新しい店が、2〜3 年で黒字になったら
- 出店の余地が残ると見直し、楽観側の確率を上げる。
- イオンなどの大手が、創業家から株を買い取る動きが出たら
- 買収の可能性が上がる。創業家の持分と大手の意図を確かめる。
見ておくもの
- 既存店売上高と客数の月次推移(神奈川・新商圏別)
- 調剤売上高と調剤併設店の割合
- 大型店への建て替えの進み具合と、1 店あたりの売上の変化
- 食品スーパー(百合ヶ丘産業・八百半)の損益
- ウエルシア・ツルハ統合のシナジーと価格戦略
- 地代家賃の年額と、新リース会計基準で載るリース負債の額
倍率と資本コストの決め方
倍率は、数量×値段で積んだ利益とその時の ROE から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) を出し、中立は上限の 8.5 割に置いた(値段で競う事業で堀が普通のため)。今の株価や同業の倍率は使っていない。資本コストは基本 7.5% に quality −0.5% を足した 7.0%(同じ領域のツルハ・スギ・サンドラッグと同じ。家賃の約束は k に足さず、悲観の利益率で表した)。今の株価は最後に比べただけ。店舗の家賃は売上の 4% 前後と推定され(開示が無い)、悲観では固定費として残す。新リース会計基準(2028 年 5 月期から)で営業利益とリース負債の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。ドラッグストアの同業は全て日本基準。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.7→18.52 倍・やや楽観 PER 15.6→17.6 倍・中立 PER 14.3→17.16 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality −0.5% を足した 7.0%。同じ領域のスギ・サンドラッグ・ツルハと同じ水準。家賃の約束は k でなく悲観の利益率で表した。大手との価格競争や買収の失敗といった個別のリスクは k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。