結論
テンアライドは、旬鮮酒場天狗、和食れすとらん天狗、テング酒場、神田屋、てんぐ大ホールなど7ブランドの居酒屋を、首都圏を中心に102店営む。筆者の結論は、大きく割高だ。
2026年3月期の売上は121億円と前期比1.7%増えたが、営業損失1.2億円、純損失4.6億円。人件費と食材の上昇が値上げを上回り、減損損失とリース解約損失も出た。会社の2027年3月期の予想は営業利益1.1億円、純利益0.5億円にすぎない。ただ第1四半期は営業損失0.8億円で、予想の達成も楽ではない。
10年の中立は、店が減り客数が細り、客単価は物価に遅れて上がる姿。営業利益率は2%にとどまり、過去25年でも最良は3%台前半という会社だ。
財務は借入を返し、自己資本比率40%と持ち直した。しかし新株予約権の行使などで食いつないできた経緯があり、純現金は時価総額の1割にすぎない。
配当は出さず、株主への還元は優待が中心。この経営では、利益が積み上がるより、固定費に食われる可能性のほうが高いとみる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「持ち続けたい事業」とは言いにくい。居酒屋は参入が容易で、客が逃げやすく、値段を自分で決められない。昭和から続く天狗の名は強みだが、客単価を物価以上に上げる力にはなっていない。
オーナー利益、つまり再投資を引いた手取りは、ほぼゼロかマイナス。営業活動で入る現金は2026年3月期にわずか0.5億円で、設備投資の3.3億円を賄えず、現金は7億円減った。
堀は薄い。駅前の立地とセントラルキッチンは価値があるが、店賃と人件費の固定費が利益を食う構造は変わらない。
経営は、財務の立て直しには動いた。短期借入6億円を返し、純現金を保っている。しかし、増資で株数が増え、種類株式の配当も払い、普通株には配当がない。
安全域は、自社の資産にある。敷金15億円と土地2.5億円、純現金。ただ悲観の床は時価総額の1割に満たない。
今の値段は、利益の回復を大きく織り込んでいる。筆者の結論は、大きく割高である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、店で酒と料理を出す居酒屋の直営が中心で、売上のほぼすべてを占める。2026年3月末の店数は102店で、フランチャイズは1店。旬鮮酒場天狗5店、和食れすとらん天狗14店、テング酒場14店、神田屋24店、てんぐ大ホール40店、ミートキッチンlog50が2店、湊や磯吉食堂3店。首都圏が大半で、東京都だけで59店ある。
ほかに、セントラルキッチンで作った自社製品の販売や、仕込み代行も手がけるが、売上の中心は直営の店だ。1店あたりの売上は約1.2億円。
費用は、原材料費が売上の約3割。販売費及び一般管理費が売上の約7割で、人件費と店賃が大半を占める。店賃の開示は確認できなかったが、居酒屋の相場から売上の1割前後と推定する。
従業員は正社員261人、パートは年間延べ2,266人。設備投資は2026年3月期に3.3億円で、新店4店とリニューアル4店、DX化に使った。
2027年3月期は新店5店と改修に計1.5億円の計画。株主優待は3月と9月の年2回、100株以上に自社店舗で使える食事券を配る。
優良さと弱いところ
優良さは、弱いと見る。強みは、昭和から続く天狗ブランドの知名度、首都圏の駅前を中心とした立地、セントラルキッチンを持つ仕入れの規模。ただ、これらは値段を自分で決める力に変わっていない。
弱みは4つある。第一に利益が薄い。営業利益率が3%を超えたのは1990年代だけで、直近10年でも最良の年が2%台。第二に赤字が多い。2026年3月期まで13期の赤字を数える。第三に店賃と人件費の固定費が重い。第四に、閉店や減損が毎期のように出る。
資本効率は低い。ROEは過去10年の中央値がマイナス11%で、直近の2025年3月期でも5%。
財務は持ち直した。借入は返済が進み、自己資本比率は2026年3月期に40.3%。ただ新株予約権の第三者割当による増資に頼った経緯があり、種類株式の配当も払っている。
経営は、小型店の出店、大型店の小型化、二毛作業態、DXを課題に挙げる。方向は妥当でも、数字で結果が出た段階ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
居酒屋は、外食の中でも最も厳しい業態の一つ。市場はコロナ前の水準を回復しきれず、客数は飲酒機会の減少と若い世代の居酒屋離れで細る。
数量は、店数と客数の積。会社の売上は10年で年2.5%ほど縮んできた(2015年3月期の155億円から2026年3月期の121億円)。コロナで売上が3分の1まで落ち込んだ後、回復途上にある。10年では、大型店の閉鎖が続き、店数は微減。客数も、人口減と飲酒機会の減少で細る。
価格は客単価。人件費と食材の上昇を転嫁したい一方、居酒屋は客が他店に逃げやすく、物価の1.34倍まで上げるのは難しい。
費用は、最低賃金の上昇で名目で年3〜5%増え続け、自動化で吸収できる会社とできない会社に分かれる。
景気の循環では、不況の谷に最も弱い。リーマン時のような景気後退では、会食や宴会が削られ、既存店売上が2〜3割落ちる可能性がある。会社は今、黒字転換を図る立ち上がりの局面にあり、第1四半期はまだ赤字だった。
資本政策と M&A
資本政策は、配当を出していない。2026年3月期まで普通株の配当はゼロで、予想も同じ。方針は安定配当だが、利益が出ていない。
株主への還元の中心は優待。3月末と9月末の株主に、100株以上で自社店舗で使える食事券を年2回送る。額面は100株で年2千円分、500株で年1万円分、1,000株で年2万円分、1,500株以上は継続保有で年3万6千円分。2026年8月に電子化が発表された。優待の費用は開示が確認できないので、額面を年2〜3億円、使えるのは自社店のみで原価は3割ほどとして、会社の費用を年1億円弱と推定した(推定)。費用は販管費に入っており、利益から引き済み。
増資は2022年4月と2023年12月に新株予約権の第三者割当で実施した。2026年3月期の行使で2.5億円を調達し、発行済株式数は約3,950万株から約4,046万株に増えた。種類株式の剰余金の配当も0.6億円払っている(残高は未確認)。自社株買いの実績はない。
大株主には個人のほか、取引先とみられる法人が並ぶが、直近の持株比率と順位は確認できなかった。10年の買収の確率は17%と見られるが、価値には入れない。
新リース会計基準は2028年3月期から強制される。店賃の約束が資産と負債に乗り、営業利益は見かけ増える。自己資本比率は下がる。実態は変わらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
底は過ぎた。2026年3月期の純損失4.6億円には、減損とリース解約損の特別損失2.9億円が入っており、本業の赤字は営業損失1.2億円にとどまる。会社は2027年3月期に営業利益1.1億円、純利益0.5億円の黒字転換を予想し、売上も129億円と6.7%増を見込む。
店舗では、不採算の大型店を小型店や二毛作業態へ変える転換が進み、設備投資も新店5店に回る。借入は6億円返し、自己資本比率は40%まで戻った。
天狗は昭和からの知名度があり、首都圏の駅前に102店を持つ。賃金と食材が上がる世界では、固定費の店賃を借りて営業している店の価値も、物価で上がる。純現金は11億円あり、倒産の心配は遠のいた。
株数は増えたが、増資で資金繰りは安定した。優待の電子化は費用を抑え、株主の裾野を広げる。
賃金が上がる世界でも、二毛作業態で昼と夜の両方に客を呼べれば、店あたりの稼ぎは上がる。小型店は初期投資が小さく、失敗しても損失が限られる。電子化した優待が新しい個人株主を呼び込めば、株価の下支えにもなる。
慎重な見方
赤字の常連だ。13期の赤字があり、営業利益率が3%を超えたのは1990年代まで。2027年3月期の会社予想でも営業利益は1.1億円、売上比0.8%にすぎない。第1四半期は営業損失0.8億円で、予想の達成は遠い。
人件費と食材は物価で上がるのに、居酒屋は客が逃げやすく、客単価は上げ切れない。直近の2026年3月期は売上が増えても販管費が3.3億円増え、利益を食った。
営業活動の現金は0.5億円で、設備投資の3.3億円に届かない。増資と新株予約権の行使で食いつなぎ、種類株式の配当も払っている。借入の返済も5億円が1年内に来る。
新リース会計で店賃の約束が負債に乗れば、純現金の見え方も変わる。店は賃借が中心で、土地の保有は小さい。
優待の費用も年1億円ほどかかり、普通株の配当がない中で株主への還元は食事券頼りだ。店賃の固定費が重く、売上が数%落ちれば赤字に戻る。回復を待つ間に再び増資があれば、株の価値は薄まる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、赤字の底は過ぎたと言う。慎重な見方は、薄い利益と固定費を突く。会社の予想自体が営業利益率0.8%なので、強気にも限度がある。慎重な見方がやや強く、やや悲観を30%、悲観を13%に厚く置いた。上振れの合計は21%で、最良でも今の時価総額の6割どまり。
中立は、黒字が戻るが利益率は2%にとどまる姿に置いた。特別損失を除けば本業の赤字は小さいが、それは黒字の定着を意味しない。確率は慎重な見方側に厚く置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 59 円24 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 14 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 35 円14 億円、今との差 −87.7%、 期待の年率 −12.8%(資本コスト 8.6%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 223 円89 億円 | 22 円9 億円 | −15.1% | −1.6% | 12 円5 億円 |
| やや楽観 | 16% | 126 円50 億円 | 22 円9 億円 | −48.7% | −6.4% | 24 円10 億円 |
| 中立 | 36% | 52 円21 億円 | 20 円8 億円 | −75.1% | −13.0% | 26 円10 億円 |
| やや悲観 | 30% | 22 円9 億円 | 7 円3 億円 | −89.8% | −20.4% | 9 円4 億円 |
| 悲観 | 13% | 20 円8 億円 | 2 円1 億円 | −92.0% | −22.4% | 3 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 59 円24 億円 | 14 円6 億円 | −74.5% | −12.8% | 74 円30 億円 |
今の株価時価総額 289 円116 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.6% を下回るほど割高。
楽観 5% 小型店と二毛作が当たり、居酒屋の利益率が5%に乗る 利益 7 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 223 円89 億円
小型店の出店が当たり、不採算の大型店は小型化や業態転換で整理が進む。延べ来店客数は10年で8%増え、客単価は物価並みの1.34倍まで上がる。
配膳ロボットやテーブルオーダーなどの投資が人手を減らし、営業利益率は5%に乗る。営業利益は9億円弱、純利益は種類株の配当を引いて6.6億円ほど。
当たり年の利益はまだ小さく、自己資本は61億円まで積み上がる。ROEは10%台で資本コストをわずかに上回る。配当は出さず、還元は優待の原価ベース年0.9億円ほどを10年で9億円とした。優待の費用は利益から引き済みなので、自己資本の流れには足し戻していない。
利益は今期の黒字転換から着実に増える道を置いたため、自己資本は検査の簡易な流れより厚い。
- 直営の居酒屋・和食店(天狗ブランド):数量 1.1(年間の延べ来店客数の指数(今を1.00))× 価格 1.34(客単価の指数(今を1.00))→ 売上 175 億円・営業利益 9 億円。利益率5.0%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 8.65% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 12.98 倍、時価総額 86 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は小型店の新規出店と二毛作業態で収益構造を変えると言う。ただ、過去25年で営業利益率が3%を超えたのは1990年代だけで、5%は前例のない水準。確率は薄く置いた。
やや楽観 16% 黒字が定着し、利益率が3%台に乗る 利益 4 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 126 円50 億円
新規出店は年に数店で、大型店の小型化が進む。延べ来店客数は10年でほぼ横ばい、客単価は物価よりやや遅れて1.30倍になる。
売上は157億円ほどで、営業利益率は3.5%まで戻る。ここは過去25年で営業利益率が3%を超えた年が1990年代以降ほとんどない水準で、人件費の上昇を値上げと自動化で吸収し切った場合の上振れである。
営業利益は5億円台、純利益は4億円ほど。自己資本は37億円まで戻る。配当は出さず、優待の原価ベースで10年に9億円を還元する。
利益は黒字転換から徐々に増える道なので、自己資本は検査の簡易な流れより厚い。
- 直営の居酒屋・和食店(天狗ブランド):数量 1.0(年間の延べ来店客数の指数(今を1.00))× 価格 1.30(客単価の指数(今を1.00))→ 売上 157 億円・営業利益 6 億円。利益率3.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 8.65% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.6 倍、時価総額 50 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の会社予想は黒字転換で、新規出店と改修の計画も出ている。無理のない上振れとして、楽観より厚く置いた。
中立 36% 小さく守る居酒屋、利益率は2%どまり 利益 2 億円 · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 52 円21 億円
店は少しずつ減り、延べ来店客数は10年で7%減る。客単価は人件費と食材の上昇を転嫁しきれず、物価の1.34倍に届かない1.25倍。
売上は140億円ほどで、営業利益率は2%。最良の年でも2018年3月期の2.2%という会社なので、これを上限の目安とした。営業利益は2.8億円、純利益は種類株の配当を引いて1.8億円ほど。
自己資本は30億円前後で、ROEは6%と資本コストを下回る。配当は出さず、優待の原価ベース年0.8億円ほどを10年で8億円とした。
店賃や人件費の固定費が重く、黒字は薄い。会社予想の黒字転換が1年遅れるだけでも、10年の利益は大きく削られる。自己資本の流れは、黒字転換後に積み上がる道を置いたため、検査の簡易な流れより厚い。
- 直営の居酒屋・和食店(天狗ブランド):数量 0.9(年間の延べ来店客数の指数(今を1.00))× 価格 1.25(客単価の指数(今を1.00))→ 売上 141 億円・営業利益 3 億円。利益率2.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 8.65% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.6 倍。全体の PER 11.56 倍、時価総額 21 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の予想は2028年3月期でも営業利益率1%台で、過去10年も赤字が続いた。黒字が戻るが薄いままという姿を最も厚く置いた。
やや悲観 30% 客数の減りが続き、利益が出ない状態が戻る 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 22 円9 億円
延べ来店客数は10年で2割減る。客単価は1.15倍までしか上げられず、売上は111億円ほどに縮む。
店賃と人件費は物価で増え続け、営業利益はゼロ近辺、純利益は種類株の配当を引くと小さな赤字になる。新店は止まり、閉店で敷金の回収と原状回復の費用が出る。
自己資本は21億円に減るが、借入の返済は進むので純現金は残る。優待は縮め、10年の還元は原価ベースで3億円にとどめた。
利益が出ない会社に稼ぐ力の値は付かず、値は自己資本の4割台となる。自己資本は黒字を保つ道より薄い。
還元の優待3億円は、利益が出ない中で現金を取り崩して払う。純現金が細る分、自己資本の流れ(検査の簡易な流れ)より厚く見えるのは、黒字だった初期の数年を含めているため。
- 直営の居酒屋・和食店(天狗ブランド):数量 0.8(年間の延べ来店客数の指数(今を1.00))× 価格 1.15(客単価の指数(今を1.00))→ 売上 111 億円・営業利益 0 億円。利益率0.0%
倍率:事業の利益が出ないので、値は純資産に対する倍率で置く。ROEは負で、資本の値打ちに届かない。10年後の自己資本21億円の0.42倍(今の自己資本に対しては約0.32倍)に置いた。
確率:直近も純損失で、13期もの赤字がある会社。人件費の上昇を値上げで吸収できない筋書きは、過去の実績に近く、厚めに置いた。
悲観 13% 客離れと賃金高に耐えきれず、店を大きく畳む 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 20 円8 億円
飲酒機会の減少と景気の後退が重なり、延べ来店客数は4割減る。客単価は1.05倍にとどまり、売上は76億円まで縮む。
店賃と人件費の固定費が重く、営業損失が続く。店舗の閉鎖を進めて損失を抑え、10年の終わりには店は半数以下になるが、閉店損と減損で自己資本は大きく減る。
借入の返済期限が重なり、増資や資産売却に頼る。優待は事実上やめ、還元は1億円とした。
底を支えるのは、店に預けた敷金と、自社保有の土地だ。純現金は赤字と閉店費用で食われる前提とした。
景気の後退が長引けば、居酒屋の需要は戻らず、会社は店を売るか縮小して延命を図ることになる。会社予想の黒字転換が崩れ、営業活動の現金がマイナスに転じた場合の姿である。
- 直営の居酒屋・和食店(天狗ブランド):数量 0.6(年間の延べ来店客数の指数(今を1.00))× 価格 1.05(客単価の指数(今を1.00))→ 売上 76 億円・営業利益 −2 億円。利益率-3.0%
倍率:事業の利益は出ないので、値は今の自己資本27億円に掛けるPBR0.30倍(約8億円)。資産が売れる範囲を床とした。
確率:赤字が続いた過去があり、増資で食いつないだ経緯もある。居酒屋は景気後退と飲酒機会の減少の影響が最も深く出る業態で、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
直営の居酒屋・和食店(天狗ブランド)
旬鮮酒場天狗、和食れすとらん天狗、テング酒場、神田屋、てんぐ大ホールなど7ブランド、102店(うちFC1店)。売上のほぼ全部。仕込み代行・自社製品販売は小さく合算した。
| 数量年間の延べ来店客数の指数(今を1.00) | 価格客単価の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 1.00 | 121 | −1 |
| 10 年後 中立 | 0.9 | 1.25 | 141 | 3 |
取り方:来店客数と客単価の開示はなく、売上120.9億円÷102店で1店あたり約1.2億円。数量は延べ客数、価格は客単価の指数で、積が売上になるよう今を1.00とした(推定)。営業利益は連結の-1.2億円。
リスクと懸念
赤字の再発と固定費
2026年3月期は営業損失1.2億円、純損失4.6億円で、13期の赤字がある。店賃と人件費の固定費が重く、売上が数%落ちるだけで赤字に戻る。会社予想の営業利益1.1億円は薄く、第1四半期は営業損失0.8億円だった。
人件費と食材の上昇
最低賃金の上昇と円安で、人件費と仕入原価は物価以上に増えやすい。居酒屋は客が他店へ逃げやすく、値上げで吸収しきれない。2026年3月期は販管費が3.3億円増えて利益を食った。
資金繰りと増資の希薄化
営業活動の現金は2026年3月期に0.5億円で、設備投資3.3億円を賄えなかった。新株予約権の第三者割当による行使で株数が増えており、また資金が足りなくなれば再び希薄化する。長期借入5億円が1年内に来る。
種類株式の配当と残高
2026年3月期に種類株式に係る剰余金の配当0.6億円を資本剰余金から払った。残高と条件は確認できず、普通株主の取り分を先に削る。
店舗の減損と賃借の約束
店は賃借が中心で、敷金及び保証金は15億円。閉店や減損は毎期のように出る。新リース会計基準で店賃の約束が負債に乗り、自己資本比率と純現金の見かけが変わる。
食中毒と風評
食品衛生の事故が起きれば営業停止や許可取り消しがありうる。店が首都圏に偏るため、感染症や災害の影響も大きい。
今後の分かれ目
- 月次の既存店売上が前年を3か月続けて上回り、営業黒字が定着したら
- 黒字が定着した証拠なので、中立からやや楽観へ確率を寄せる。
- 2027年3月期の通期で営業黒字を達成できなかったら
- 会社予想の黒字転換が崩れたので、やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 新株予約権の行使や増資で、発行済株式数がさらに増えたら
- 資金繰りの不安が現実になったので、悲観側へ確率を寄せる。
- 小型店や二毛作業態の既存店売上が、大型店を上回って伸びたら
- 収益構造が変わる証拠なので、楽観側へ確率を寄せる。
- 普通株の配当が再開されたら
- 利益が安定した証拠なので、強気側を厚くする。
見ておくもの
- 月次の既存店売上高と客数
- 営業利益と営業損益の黒字化
- 新店数と退店数、減損損失
- 人件費率と原価率
- 発行済株式数と新株予約権の残り
- 種類株式の残高と配当
倍率と資本コストの決め方
数量は延べ来店客数、価格は客単価の指数で、開示がないため売上÷店数から推定した(推定)。営業利益率は会社の過去25年(最良の年でも2%台、1990年代で7.7%)から置き、同業の4〜5%には寄せていない。ROEが資本コスト8.65%以下の中立のPERの上限は1÷k=10.8倍で、その約8割の9.0倍に置いた。今の株価や過去のPER・PBRには寄せていない。店賃は開示が確認できず、居酒屋の相場から売上の1割前後と推定した。新リース会計基準は入れず、今と同じ形で10年後の数字をそろえた。純現金11億円は借入返済と店賃の約束を引いて余らないと見て、余った現金には立てていない。優待は原価ベースで年1億円弱と推定した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.98 倍・やや楽観 PER 10.8→12.6 倍・中立 PER 9→11.56 倍)。
資本コスト 8.6% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+1.8%を足して9.3%。個別のリスクは筋書きと確率で表し、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.30% → 8.65%。