結論
インターメスティックは、低価格帯の眼鏡チェーン「Zoff」を育ててきた会社である。2025年にメガネスーパーを傘下に収め、約650店舗を擁する眼鏡・コンタクトレンズ小売グループへ変わった。筆者の結論は「やや割安」だ。2026年10月23日の時価総額約490億円に対し、既存株主の希薄化を考慮した10年価値は、基本計算で約624億円となる。
この会社を評価するとき、2025年の売上高502億円だけを見てはいけない。メガネスーパーを含む買収先の資産と負債は2025年末の貸借対照表に入ったが、同年の損益には入っていない。2026年会社予想の売上高858億円、営業利益75億円が、買収後の稼ぐ力を考える適切な出発点となる。ただし、買収で増えた売上がそのまま株主利益になるわけではない。
長く持つ株主にとっての魅力は、眼鏡が流行だけで消える商品ではないことだ。視力矯正の必要性は続き、高齢化は遠近両用レンズなどの需要を支える。Zoffは手頃な価格とデザイン性、調光レンズなどの追加販売を組み合わせ、既存店の販売単価を引き上げている。買収先のコンタクト顧客に眼鏡やサングラスを提案する余地もある。
一方、眼鏡は乗り換えが容易で、ブランドだけで価格を独占できない。JINSや眼鏡市場との競争に加え、店舗賃料、人件費、買収借入、のれん償却が利益を圧迫する。2026年夏以降の月次売上にも弱さが見える。上振れの利益は大きいが、買収が裏目に出た場合の資産価値は薄い。したがって、割安という結論は、強い安全資産に支えられたものではなく、事業を長く維持して利益を増やせることに依存している。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、眼鏡という商品そのものは好ましい。十年後も視力矯正は必要であり、店舗での検眼やフィッティングにも役割がある。Zoffは手頃な価格と品ぞろえを通じて生活に入り込んだブランドで、買い替え需要を継続的に受け取れる。顧客が追加のレンズ代を払ってくれる実績も、商品力の証拠として評価できる。
しかし、店頭の営業利益がそのまま株主の自由になるわけではない。新店には内装、レンズ加工設備、敷金、在庫、人材採用が必要であり、既存店にも改装と設備更新がある。店舗賃料は来客が減っても簡単には消えない。インフレで売上単価が上がっても、次の改装工事や出店費用は高くなるので、会計上の利益と自由に使える現金を分けて考えるべきだ。
買収は評価を難しくしている。Zoffの良いブランドと、買収先の反復購入されるコンタクト販売を組み合わせる発想には合理性がある。だが、買収によって財務の強さを使い、のれんと借入を背負った事実も同じ重さで見る必要がある。もし統合後の利益率が改善しないなら、拡大した売上は株主価値の拡大には結びつかない。
筆者が最も重視するのは、2036年にも高い広告費をかけずに顧客がZoffを選び、VHの店舗網が安定して現金を生んでいるかである。そうなれば、今の時価総額は長期の稼ぐ力に対して控えめだ。一方、業績の予測可能性は独占的な消費財企業ほど高くない。割安性は認めるが、負債と買収資産が厚い以上、悲観時の資産の床に頼らず、継続利益を基準に保有の可否を考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はZoffである。フレームとレンズの企画、調達、店舗販売を一体で管理し、顧客が選びやすい価格で眼鏡を提供する。売上は眼鏡の販売本数と客単価で決まるが、利益を左右するのはレンズの追加料金、商品構成、店舗ごとの客数である。2026年上期のZoff事業は売上高約284億円、営業利益約40億円を計上した。
Zoffの国内店舗は2026年6月末で345店ある。ショッピングセンターを中心に、若年層や家族客を取り込み、ECやアニメ・スポーツなどとの協業商品で来店のきっかけを作る。有料レンズの購入率は上期に64.8%となり、前年同期の58.1%から上昇した。眼鏡を買う人数だけでなく、一人の顧客が何を追加購入するかが、今後の採算を決める。
メガネスーパーなどを抱えるVH事業は、国内302店を通じて眼鏡とコンタクトレンズを販売する。Zoffより年齢層が高く、路面店や視力矯正への専門的な接客に強みがある。2026年上期は売上高約150億円、営業利益約15億円だった。コンタクトレンズは反復購入される半面、メーカー商品への依存が強く、眼鏡ほど高い粗利益率を取りにくい。
海外はまだ小規模で、シンガポールの直営店と香港のフランチャイズが中心となる。海外展開が将来の成長余地であることは確かだが、現時点では国内のZoffとVHが企業価値の大半を生む。2036年の販売数量は、国内Zoff、海外Zoff、VHの眼鏡、VHのコンタクトの四つに分けた。VHの眼鏡とコンタクトは同じ店舗を利用するため、両者の店舗数を足して実店舗数と誤認しない。
優良さと弱いところ
Zoffの強みは、低価格であっても安売りだけに依存しないブランドを築いたことだ。フレームのデザイン、薄型レンズ、調光レンズ、サングラス、協業商品を組み合わせ、顧客に追加料金を払う理由を示している。2026年上期は既存店売上高が前年同期比11.0%増え、販売単価も5.9%上昇した。値決め力を示す実績だが、単年度の好調を恒久的な堀と見なすことはできない。
堀、つまり他社が容易に奪えない強みは、ブランド認知、調達規模、店舗網、商品開発と販売データの積み重ねにある。約650店舗の網は広告や仕入れを効率化し、買収によって顧客層も広がった。眼鏡の加工や視力測定を店舗で提供できるため、完全なオンライン移行も起こりにくい。一方、処方データを持っていても客は別の店で眼鏡を買えるので、乗り換え費用は高くない。
資本効率は高いが、数字の読み方には注意を要する。過去6年のROE中央値は22.1%だが、上場前の小さい自己資本を分母にした期がある。2025年末には買収後の資産と負債が入り、自己資本約260億円に対し純有利子負債は約80億円となった。これからの増分利益は、買収価格と追加投資を含む資本に対して測る必要がある。
AIエージェント代替の定型的な人月・席課金・広告運用事業には該当しない。AIによって需要予測や接客業務は省力化されても、レンズ、フレーム、検眼、加工という現物の需要は残る。長期の脅威はAIそのものより、他社による低価格化、スマートグラスの普及、店舗生産性の低下である。堀は普通以上のブランド力を持つが、顧客を囲い込むほど強固ではないため、評価上は通常の堀とする。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の眼鏡小売市場は成熟している。会社資料が引用する2024年の国内アイウェア小売市場は5,868億円で、コンタクトレンズの国内市場は3,474億円である。ただし、前者にも一部のコンタクト関連売上が含まれるため、単純に足して正確な市場規模とすることはできない。眼鏡は生活必需品に近いが、買い替え周期が長く、総需要が人口を大きく上回って伸びる市場ではない。
競争相手の規模も大きい。眼鏡市場を展開するメガネトップは2025年3月期に売上高約946億円、店舗数1,063店を公表している。JINSの2025年8月期国内アイウエア事業売上高は約767億円だった。会社の2026年予想を眼鏡部分に分けると、ZoffとVHの眼鏡売上は合計約684億円と推定される。これを2024年の市場規模と比較した金額シェアは約12%となるが、対象年度と商品範囲が一致しないため概算である。同じ方法ではメガネトップ約16%、JINS約13%が参考値となる。
国内の実質的な眼鏡購入数量は、人口減少と長寿命化によって横ばいから微減が基本だろう。高齢化は老眼鏡や遠近両用レンズを支え、紫外線対策やファッションとしてのサングラスが新しい購入機会を生む。会社は国内サングラス装用率を2025年の24.5%から2030年に50%へ高める目標を掲げる。ただし、これは市場啓発の目標であって、会社の販売数量が同じ割合で増える約束ではない。
中立の2036年には、国内の眼鏡需要の実数量は現在とほぼ同程度にとどまると見る。その中でZoffが中小店から顧客を獲得し、国内店舗を460店まで広げる。VHは眼鏡とコンタクトの併売を強めるが、大幅な店舗純増は期待しない。価格は物価上昇を中心に伸ばし、Zoffの店舗当たり売上も実質では急増させない。眼鏡販売市場の長期的な勝者は、価格を上げる会社より、値上げ後も客数を維持できる会社である。
資本政策と M&A
最大の資本配分は、2025年10月のHorus HDなどを通じたビジョナリーホールディングスの買収である。取得価額は約191億円で、銀行借入約180億円を組み合わせた。Zoffの顧客層とメガネスーパーの顧客層は異なり、買収の戦略的な意味はある。しかし、買った顧客や店舗からどれだけ追加の現金を生めるかは、まだ十分に実証されていない。
2025年末の暫定のれんは約238.7億円に達した。2026年の取得原価配分では、のれん約141億円に加え、商標権約79億円、顧客関連資産約44億円が識別されている。これらの償却は年間約13億円規模の負担となる。現金支出を伴わない償却であっても、取得した超過収益力が時間とともに失われることを示す費用であり、価値評価から無条件に除くべきではない。
還元方針は配当性向30〜35%を目安とするもので、2025年から2026年予想にかけても増配を続ける。株主優待制度は確認されない。売上高・営業利益・ROEを複数年にわたり拘束する独立した数値付き中期経営計画は確認できず、DOE、自社株買い額、総還元性向についても数字の約束なしである。2030年のサングラス普及目標は販売戦略上の指標であり、利益目標とは区別する。
大株主上位10名の保有比率は2025年末で約79%あり、主要株主の影響力は大きい。ただし、増配の実績があるため、余剰資金が株主へ戻る割合を一律に半分とはしない。一方、配当性向は過半に届かず、自社株買いの継続的な約束もない。残る新株予約権による既存株主の希薄化も、買収の成果を評価するときに忘れてはならない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
Zoffは単なる格安眼鏡店ではない。調光レンズ、薄型レンズ、サングラス、協業商品を使い、手頃な入口価格を維持しながら購入単価を上げられる。2026年上期の既存店売上高11%増、有料レンズ購入率64.8%という数字は、ブランドが顧客の財布を開かせている証拠である。国内には依然として中小の独立系眼鏡店が多く、ブランド力、調達規模、デジタル販促を持つチェーンが市場シェアを奪う余地は大きい。
メガネスーパー買収は、Zoff単独では届きにくかった高齢層とコンタクト利用者を一度に獲得した。コンタクトレンズは眼鏡ほど利益率が高くないものの、継続購入がある。若い頃にZoffを使った顧客が年齢を重ねてもグループから離れない仕組みを作れる。商品仕入れ、販売管理、広告、店舗運営を共通化できれば、買収時に支払った価額を上回る価値を生む可能性がある。
成長は必ずしも国内人口の増加を必要としない。眼鏡市場全体の購入数が横ばいでも、Zoffが競合から客を取れば売上は増える。2036年までに国内店舗を増やし、サングラスを第二の購買機会として定着させられれば、売上と利益は現在の買収後の規模から大きく伸びる。現在の時価総額は、買収後の収益力とこうした増分利益を十分には評価していない。
海外展開もまだ小さく、成功すれば上振れ余地がある。香港のフランチャイズとシンガポールの店舗運営から学び、店舗当たり投資を抑えて周辺市場へ広げることができれば、国内市場の成熟を補える。統合に必要な償却費が続いても、その負担を上回って現金利益を増やせるなら、今回の買収は株主にとって価値を生む判断になる。
慎重な見方
眼鏡店の顧客は、次の買い替え時に簡単に別ブランドへ移れる。JINSや眼鏡市場との違いは価格、立地、デザイン、キャンペーンに左右され、継続率を保証する契約は存在しない。2026年上期の好調も、協業商品や調光レンズの販売が一時的に強かっただけかもしれない。実際、夏以降の月次既存店売上高には前年割れの月が現れており、高成長が続く前提は危うい。
買収はむしろ弱点を増やした可能性がある。Zoffの店舗とメガネスーパーの店舗は立地、客層、商品価格、接客方法が異なる。統一すればそれぞれの魅力を失い、分けて運営すれば期待した管理費の削減が進まない。コンタクトレンズの売上は大きくても、メーカーとの価格競争にさらされ、粗利益率は眼鏡より低い。売上高が増えて連結利益率が下がる構造が固定化する懸念がある。
財務面にも安全域は乏しい。買収によって純有利子負債が約80億円に転じ、帳簿上の自己資本の大きな部分をのれんが占める。賃貸店舗は不況でも家賃を払う必要があり、撤退には原状回復費などがかかる。借入金利が上がり、改装費が膨らみ、来客が減るという事態が重なれば、売上の減少以上に利益が傷む。
さらに、今後行使される可能性のある新株予約権は既存株主の取り分を減らす。大型買収を今後も重ねるなら、売上を伸ばすたびに財務負担と希薄化が増える危険がある。消費者に選ばれるブランドであり続けても、資本配分が悪ければ株主が豊かになるとは限らない。
どちらに重みを置いたか
眼鏡需要の持続性とZoffの値上げ実績は高く評価するが、買収の成否については慎重な見方に分がある。下に寄せる理由は、買収先の収益力がまだ十分に検証されておらず、のれん、借入、固定賃料が同時に重くなったことだ。このため、上側27%に対し下側43%の確率を配した。それでも、現在の時価総額が買収後の長期的な利益機会に対して小さく、希薄化を考慮した価値は現値を約27%上回る。結論は強い確信を伴う割安ではなく、やや割安である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 3,655 円1,121 億円(+ 還元の換算額還元の合計 598 円183 億円)。 今の値に割り戻すと 2,190 円672 億円、今との差 +41.1%、 期待の年率 +11.7%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 8,524 円2,614 億円 | 1,038 円318 億円 | +516.1% | +22.0% | 861 円264 億円 |
| やや楽観 | 18% | 5,965 円1,829 億円 | 849 円260 億円 | +339.0% | +17.6% | 1,226 円376 億円 |
| 中立 | 30% | 4,519 円1,386 億円 | 686 円210 億円 | +235.3% | +14.2% | 1,561 円479 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,661 円509 億円 | 440 円135 億円 | +35.4% | +3.5% | 567 円174 億円 |
| 悲観 | 16% | 63 円19 億円 | 173 円53 億円 | −84.8% | −23.3% | 38 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,655 円1,121 億円 | 598 円183 億円 | +174.1% | +11.7% | 4,253 円1,304 億円 |
今の株価時価総額 1,552 円476 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 全国ブランドの地位を固め、買収の相乗効果が大きく実る 利益 154 億円 · PER 16.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 8,524 円2,614 億円
Zoffの機能性レンズとサングラスが、生活必需品とファッション商品の両方として定着する。国内の眼鏡購入数量は大きく増えないが、独立系店舗からZoffへの顧客移行が進み、国内店舗網は600店に達する。眼鏡市場やJINSとの競争では商品の価格だけでなく、デザイン、レンズの機能、店舗の利便性で選ばれるようになる。
メガネスーパーの再生も成功する。既存顧客がコンタクトレンズと眼鏡を同じグループで購入し、顧客当たり売上が増える。VHは350店程度を維持しながら店舗の収益性を改善し、Zoffとは異なる年齢層を取り込む。仕入れと管理の共通化が進み、のれん・顧客関連資産の償却を吸収する。
海外ではシンガポールや香港での経験を生かし、直営とFCを適切に使い分ける。買収後の借入は営業キャッシュフローから返済し、出店投資と配当を両立する。2036年の段階でもブランド力が残り、新たに投じる資本から資本コストを十分上回る利益を生み続ける。
- 国内Zoff・眼鏡とサングラス:数量 600(国内稼働店舗の店年・店。年度途中の出店は年換算で補正する)× 価格 2.40(1店年当たり名目売上高・億円。EC配賦分と有料レンズの売上を含む)→ 売上 1,440 億円・営業利益 202 億円。国内600店年、店当たり年商2.40億円。2026年推定単価の1.51倍。レンズとサングラスの高付加価値販売が定着
- 海外Zoff・直営とフランチャイズ:数量 85.0(直営・FCの合算店舗換算数・店。店舗形態が違うため経済的な換算数量)× 価格 0.90(1店舗換算当たりグループ計上売上高・億円)→ 売上 77 億円・営業利益 7 億円。海外85店舗換算。直営拡大とFCからの収入増加がともに進む
- VH・眼鏡とサングラス:数量 350(VHの眼鏡販売を担う稼働店舗の店年・店)× 価格 0.68(1店年当たり眼鏡・サングラス売上高・億円)→ 売上 238 億円・営業利益 31 億円。VH350店で眼鏡売上が拡大。専門接客と高付加価値レンズで利益率も改善
- VH・コンタクトレンズ:数量 350(VHのコンタクト販売を担う稼働店舗の店年・店。眼鏡部門と同じ店舗を使用)× 価格 0.78(1店年当たりコンタクト関連売上高・億円)→ 売上 273 億円・営業利益 16 億円。反復購入客を維持し、コンタクト関連販売を安定拡大
倍率:k7.5%、2036年ROE154÷944.8=16.3%、通常の堀で超過ROEの半分が長期に残るとするとRONIC=7.5%+0.5×(16.3%−7.5%)=約11.9%。2036年以降のgは名目3%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約16.62倍で、楽観側の上限そのもの。売上2,027.5億円、営業利益231.805億円、純利益154億円は会社全体であり、株式希薄化は最後にholder_shareで反映する。調整費24億円には本社費、ブランド・顧客関連資産の償却、共通システム費用を含む。
確率:国内Zoff600店への拡大、海外FCを含む85店舗換算、VH店舗網の再生、有料レンズとサングラスの定着、営業利益率の維持が同時に必要となる。実現すれば価値は大きいが、競合から継続的にシェアを奪う難しさを考えて確率は9%とした。
やや楽観 18% Zoffのシェア拡大とVHの改善が順調に進む 利益 110 億円 · PER 16.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,965 円1,829 億円
Zoffは国内の手頃な眼鏡ブランドとしての地位を保ち、独立系眼鏡店の減少に伴って顧客を獲得する。価格競争は続くが、調光レンズやサングラスの販売によって購入単価を維持する。国内店舗は520店まで増え、店舗当たり売上も物価上昇を上回る小幅な改善を示す。
VH事業では不採算店舗の整理とコンタクト顧客への眼鏡提案が進む。眼鏡市場などの大型チェーンに対して全面的な優位を得るわけではないが、既存の顧客基盤を守りながら利益率を改善する。会社が目指す購買データの活用や仕入れの共通化も、緩やかな費用削減につながる。
海外は国内ほど急速には大きくならないものの、FCと直営を合わせて事業規模を広げる。買収による会計上の償却は続くが、店舗の利益が増えることで吸収できる。配当を増やしながらも成長に必要な利益を社内に残し、ROEは資本コストを十分に上回る。
- 国内Zoff・眼鏡とサングラス:数量 520(国内稼働店舗の店年・店。年度途中の出店は年換算で補正する)× 価格 2.20(1店年当たり名目売上高・億円。EC配賦分と有料レンズの売上を含む)→ 売上 1,144 億円・営業利益 149 億円。国内520店年。高付加価値レンズの販売が定着し、原材料・賃料の増加を吸収
- 海外Zoff・直営とフランチャイズ:数量 60.0(直営・FCの合算店舗換算数・店。店舗形態が違うため経済的な換算数量)× 価格 0.75(1店舗換算当たりグループ計上売上高・億円)→ 売上 45 億円・営業利益 3 億円。海外60店舗換算。小規模ながら黒字を確保
- VH・眼鏡とサングラス:数量 330(VHの眼鏡販売を担う稼働店舗の店年・店)× 価格 0.61(1店年当たり眼鏡・サングラス売上高・億円)→ 売上 201 億円・営業利益 22 億円。VH330店で専門接客を強化し、眼鏡の収益性を改善
- VH・コンタクトレンズ:数量 330(VHのコンタクト販売を担う稼働店舗の店年・店。眼鏡部門と同じ店舗を使用)× 価格 0.70(1店年当たりコンタクト関連売上高・億円)→ 売上 231 億円・営業利益 13 億円。コンタクトは反復購入を維持するが、メーカー商品との価格競争は残る
倍率:ROE110÷784.8=14.0%、k7.5%、通常の堀の残存割合0.5からRONICは約10.76%。長期g3%で正当化PER=(1−0.03÷RONIC)÷(0.075−0.03)=約16.03倍。事業の利益の質をkとRONICに反映済みなので、上限から追加で割り引かない。本社費・PPA償却などの調整は20億円。
確率:国内Zoffの着実な増店と有料レンズ販売の継続は十分にあり得る。一方、VHの店舗当たり利益改善と海外成長も必要であるため、上振れ側として18%を配した。
中立 30% 国内シェアを少しずつ広げ、買収先も堅実に維持 利益 85 億円 · PER 15.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,519 円1,386 億円
眼鏡は2036年にも必要とされているが、国内市場全体の実質数量は大きく伸びない。Zoffは新規出店、レンズの追加販売、ECの拡大によってシェアを増やす。国内店舗数は460店となり、店舗当たり売上はおおむね物価上昇に沿って増える。客数と実質単価の両方が毎年大きく伸びることまでは期待しない。
VHは既存店舗の収益性を改善しながら、眼鏡とコンタクトの顧客接点を維持する。眼鏡市場やJINSに対して明確な優位を得るほどではないが、高齢顧客への専門接客とコンタクトの反復購入が利益を支える。グループの国内店舗網は増えるものの、ブランドを無理に統一せず、異なる客層を生かした経営が続く。
海外は香港とシンガポールを中心に緩やかに拡大する。店舗賃料や人件費は物価とともに増え、買収に伴う償却も利益を押し下げるが、売上の増加で吸収できる。大きな追加買収は想定せず、成長投資と利益の約3分の1の配当を続ける。2036年には利益額が2026年の買収後水準を上回るが、ROEは上場前の高水準には戻らない。
- 国内Zoff・眼鏡とサングラス:数量 460(国内稼働店舗の店年・店。年度途中の出店は年換算で補正する)× 価格 2.10(1店年当たり名目売上高・億円。EC配賦分と有料レンズの売上を含む)→ 売上 966 億円・営業利益 111 億円。国内460店年。店当たり名目売上は2026年推定値の約1.32倍で、ほぼ物価上昇に沿う
- 海外Zoff・直営とフランチャイズ:数量 45.0(直営・FCの合算店舗換算数・店。店舗形態が違うため経済的な換算数量)× 価格 0.66(1店舗換算当たりグループ計上売上高・億円)→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。海外45店舗換算。直営の拡大は限定的でFCを併用
- VH・眼鏡とサングラス:数量 320(VHの眼鏡販売を担う稼働店舗の店年・店)× 価格 0.60(1店年当たり眼鏡・サングラス売上高・億円)→ 売上 190 億円・営業利益 19 億円。VH眼鏡320店年。店当たり売上は物価並みに増え、利益率は10%
- VH・コンタクトレンズ:数量 320(VHのコンタクト販売を担う稼働店舗の店年・店。眼鏡部門と同じ店舗を使用)× 価格 0.71(1店年当たりコンタクト関連売上高・億円)→ 売上 227 億円・営業利益 11 億円。同じVH320店年を利用するコンタクト販売。反復需要が続くが薄利
倍率:2036年ROE=85÷711.8=11.94%、k7.5%。通常の堀の残存割合0.5でRONIC=7.5%+0.5×(11.94%−7.5%)=約9.72%。長期名目g3%から正当化PER=(1−0.03÷RONIC)÷(0.075−0.03)=約15.36倍。過去や同業の市場PERは使用しない。全社営業利益129.772億円から純利益85億円への差には、法人税、金利2%から3.5%前後への借換え、金融収支等を含む。VH買収による償却を調整費13.5億円に反映し、営業利益率を会社全体で約9.2%とした。
確率:市場の購入実数量はほぼ横ばいとし、Zoffは中小店からのシェア移転によって増店する。VHの再生効果は一部にとどまり、連結利益率は過去のZoff単独より低い。下に寄せる理由:買収によるのれん、借入、家賃負担が重く、2026年夏以降の既存店月次にも減速が見られるため、下振れの合計確率を上振れより高くした。
やや悲観 27% 値上げが鈍り、買収した店舗網の採算が重荷になる 利益 38 億円 · PER 11.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,661 円509 億円
Zoffはブランドとして存続するが、競合の値下げや店舗の飽和によって市場シェアを思うように伸ばせない。新店の出店余地が狭まり、国内店舗数は390店程度にとどまる。来客数を確保するため販売促進費が増え、客単価は物価ほど上げられない。調光レンズや協業商品だけでは店舗賃料と人件費の増加を十分に補えなくなる。
VHでは眼鏡とコンタクトの顧客基盤を維持するものの、店舗の統廃合が続く。コンタクト販売は売上を支えるが、薄利のためグループ全体の利益率を押し上げにくい。買収で取得した商標や顧客関連資産の償却は残り、規模を大きくした利点が十分な株主利益に転化しない。
海外展開も小さな事業にとどまり、国内の利益減速を埋められない。それでも眼鏡そのものの需要はなくならず、店舗を閉めながら一定の利益は維持する。配当は利益に合わせて減るが、事業を継続できる程度の自己資本は残る。優良な成長企業というより、資本コストを十分に上回れない成熟小売業へ変わる筋書きである。
- 国内Zoff・眼鏡とサングラス:数量 390(国内稼働店舗の店年・店。年度途中の出店は年換算で補正する)× 価格 1.73(1店年当たり名目売上高・億円。EC配賦分と有料レンズの売上を含む)→ 売上 675 億円・営業利益 57 億円。国内390店年。低価格競争のため店当たり名目売上は物価上昇に追いつかない
- 海外Zoff・直営とフランチャイズ:数量 25.0(直営・FCの合算店舗換算数・店。店舗形態が違うため経済的な換算数量)× 価格 0.56(1店舗換算当たりグループ計上売上高・億円)→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。海外は25店舗換算、損益均衡にとどまる
- VH・眼鏡とサングラス:数量 295(VHの眼鏡販売を担う稼働店舗の店年・店)× 価格 0.51(1店年当たり眼鏡・サングラス売上高・億円)→ 売上 150 億円・営業利益 9 億円。VH眼鏡295店年。専門接客は残るが販管費負担が重くなる
- VH・コンタクトレンズ:数量 290(VHのコンタクト販売を担う稼働店舗の店年・店。眼鏡部門と同じ店舗を使用)× 価格 0.63(1店年当たりコンタクト関連売上高・億円)→ 売上 183 億円・営業利益 5 億円。コンタクト取扱店290店年。メーカー商品との競争で利益率3%
倍率:ROE=38÷554.8=約6.85%となり、資本コスト7.5%を下回る。したがって成長から追加価値を得るとは考えず、1÷k=13.33倍を稼ぐ力の上限とする。競争が激化した後の利益の持続に不確実性があるためPER11.5倍で評価した。純利益38億円には借換え金利の上昇と固定費負担を反映する。
確率:JINS・眼鏡市場との競争でZoffの既存店客数が伸び悩み、VHの低い粗利益率と賃料負担が利益を圧迫する可能性は高い。買収後の利益率低下が実際に起きていることを踏まえ、やや悲観を27%と厚めに評価した。
悲観 16% 競争に敗れ、VHの取得価値が大きく損なわれる 利益 −8 億円 · PBR 0.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 63 円19 億円
JINS、眼鏡市場、ネット通販との競争が強まり、Zoffは店舗を増やすどころか閉鎖を迫られる。国内店舗は280店まで減り、安いフレームを販売しても広告費や賃料を賄えなくなる。サングラス需要の開拓も期待ほど進まず、商品開発と販促にかけた費用を回収できない。ブランドは残るが、高収益のチェーンという位置を失う。
VHの買収も失敗に終わる。客数が減ったメガネスーパーの路面店を閉めると原状回復費が発生し、残る店舗でもコンタクトの薄利販売が中心になる。取得したのれん、商標権、顧客関連資産について減損が必要となり、貸借対照表上の自己資本が大きく削られる。財務を守るため成長投資は止まり、配当も縮小する。
2036年の営業利益は赤字であり、過去の高ROEには戻らない。眼鏡の販売拠点と残存する顧客関係には多少の価値があるが、現金は借入の返済や撤退費用に優先して使われる。事業の存続は可能でも、既存株主の経済的な取り分は小さくなり、拡大経営の失敗が明らかになる。
- 国内Zoff・眼鏡とサングラス:数量 280(国内稼働店舗の店年・店。年度途中の出店は年換算で補正する)× 価格 1.33(1店年当たり名目売上高・億円。EC配賦分と有料レンズの売上を含む)→ 売上 372 億円・営業利益 11 億円。国内280店年まで縮小。店当たり名目売上は現在推定値さえ下回る
- 海外Zoff・直営とフランチャイズ:数量 10.0(直営・FCの合算店舗換算数・店。店舗形態が違うため経済的な換算数量)× 価格 0.40(1店舗換算当たりグループ計上売上高・億円)→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。海外のFC・直営の縮小が続き、赤字となる
- VH・眼鏡とサングラス:数量 230(VHの眼鏡販売を担う稼働店舗の店年・店)× 価格 0.34(1店年当たり眼鏡・サングラス売上高・億円)→ 売上 78 億円・営業利益 −4 億円。VH眼鏡230店年。固定費負担と閉店費用で営業赤字
- VH・コンタクトレンズ:数量 245(VHのコンタクト販売を担う稼働店舗の店年・店。眼鏡部門と同じ店舗を使用)× 価格 0.48(1店年当たりコンタクト関連売上高・億円)→ 売上 118 億円・営業利益 1 億円。コンタクト取扱245店年。反復需要は残るが利益はほぼ消失
倍率:2036年の純利益が赤字のためPERを使わない。2025年末自己資本259.7億円を基準に、PBR0.077による約20億円の残存価値を評価する。これは過去の市場PBRの谷から導いた数字ではなく、2025年末の暫定のれん238.65億円を帳簿の自己資本から除外し、賃貸店舗の撤退費用や借入返済を考えた清算に近い価値に、事業再建の可能性を少額加えたもの。2036年自己資本262.6億円をそのまま処分可能資産とは扱わない。
確率:Zoffの既存店不振、VH店舗の撤退、買収関連資産の減損、借入返済の負担が重なる複合的な筋書きである。眼鏡の需要自体は残るため最頻の結果とはしないが、買収後の財務に実物資産の床が乏しいことから16%を無視できない確率として評価した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内Zoff・眼鏡とサングラス
国内直営店を中心に、フレーム、レンズ、サングラス、関連商品を販売する。EC売上は店舗網に配賦して評価する。
| 数量国内稼働店舗の店年・店。年度途中の出店は年換算で補正する | 価格1店年当たり名目売上高・億円。EC配賦分と有料レンズの売上を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12・会社通期予想を基にした分解推計 | 345 | 1.59 | 550 | 66 |
| 10 年後 中立 | 460 | 2.10 | 966 | 111 |
取り方:会社開示の2026年6月末国内Zoff345店と、2026年上期Zoff事業売上283.55億円を出発点とする。会社の2026年通期連結売上予想858億円から、筆者はZoff事業560億円、VH事業298億円と概算した。Zoff560億円のうち国内550億円、海外10億円と推定。550÷345=1.5942億円を国内1店年当たり売上とした。店舗数は期末代表値なので厳密な平均稼働店数ではない。眼鏡の販売本数と単価の個別開示が不足するため、店数×店当たり年商で数量と価格を近似する。Zoffの国内市場シェアは2024年国内アイウェア小売市場5,868億円に対し、この推定売上なら約9.4%。実績の2025年連結売上501.5億円とは買収の連結開始時期が異なるので混同しない。
海外Zoff・直営とフランチャイズ
シンガポール直営店舗と香港フランチャイズを中心とする小規模な海外事業。ロイヤルティーや商品供給収益も含む。
| 数量直営・FCの合算店舗換算数・店。店舗形態が違うため経済的な換算数量 | 価格1店舗換算当たりグループ計上売上高・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12・会社資料に基づく推計 | 20.0 | 0.50 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 45.0 | 0.66 | 30 | 2 |
取り方:2026年夏の会社説明ではシンガポール直営3店、香港のFC17店という構成が確認できる。FCと直営では売上の計上額が大きく違うため、20店を単純な直営店数としては扱わず店舗換算とした。海外売上10億円は国内ZoffとVHの推定を優先して残差的に配分した筆者推計で、会社が開示した海外セグメント通期売上ではない。将来もFCの拡大は店舗数ほど連結売上を増やさない。
VH・眼鏡とサングラス
メガネスーパーなどの店舗における眼鏡、レンズ、サングラスの販売。視力測定と専門的な接客が中心。
| 数量VHの眼鏡販売を担う稼働店舗の店年・店 | 価格1店年当たり眼鏡・サングラス売上高・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12・VH通期売上を商品別に分けた筆者推計 | 302 | 0.44 | 134 | 14 |
| 10 年後 中立 | 320 | 0.60 | 190 | 19 |
取り方:2026年6月末のVH店舗数302店を用いる。2026年上期のVH売上149.57億円を通期化し、全社会社予想858億円との整合からVH通期売上を298億円と見積もった。会社への取材ではVHはコンタクトレンズ売上が眼鏡売上を上回ると説明されているため、眼鏡134億円、コンタクト164億円に分解した。この商品別金額は非開示のため推定値であり、134÷302=約0.444億円を店当たり眼鏡売上とした。
VH・コンタクトレンズ
メガネスーパーの既存顧客に対するコンタクトレンズ、ケア用品の販売。メーカー商品の仕入れと反復購入を中心とする。
| 数量VHのコンタクト販売を担う稼働店舗の店年・店。眼鏡部門と同じ店舗を使用 | 価格1店年当たりコンタクト関連売上高・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12・VH通期売上を商品別に分けた筆者推計 | 302 | 0.54 | 164 | 8 |
| 10 年後 中立 | 320 | 0.71 | 227 | 11 |
取り方:VHの通期推定売上298億円のうち、眼鏡134億円を除いた164億円をコンタクト関連に配分する。商品別の実売上、販売箱数、店舗別の単価は確認できず、164÷302=約0.543億円という店当たり売上を代理指標にした。コンタクト市場規模は2024年3,474億円だが、これはメーカー・卸の出荷額を含み小売売上と定義が異なる。VHのコンタクトシェアを164÷3,474=4.7%と厳密に断定しない。VH眼鏡部門と同一の302店を利用するため、実店舗数は二重計上していない。
リスクと懸念
VH買収の統合失敗と買収価格の回収
2025年の大型買収により、従来のZoffとは客層、店舗立地、商品構成が異なる事業を抱えた。2026年上期のVHの利益は好調だったが、統合による恒常的な増分利益が十分に立証されたわけではない。仕入れ、広告、店舗運営の相乗効果が出ず、取得したのれんや顧客関連資産に減損が生じる場合、帳簿上の自己資本と株主価値の双方が傷む。
固定賃料と店舗数拡大の逆回転
眼鏡店は売上が落ちても賃料と最低限の人員を維持する必要がある。2026年上期だけでもグループの店舗賃借料は50億円規模に達しており、年間では大きな固定の支払約束となる。閉店時には原状回復や在庫処分の費用も発生する。2028年12月期から予定する新リース会計基準の適用後は、使用権資産とリース負債が貸借対照表に現れる点にも注意を要する。
値決め力の弱体化と既存店客数の減少
2026年上期のZoffは有料レンズ購入率と販売単価を引き上げたが、同年夏以降には既存店売上高が前年割れした月もある。眼鏡は比較購入が容易で、JINSや眼鏡市場が価格を下げれば、Zoffの客数や追加レンズ購入率が下がりうる。商品価格を上げても顧客が離れないという実績が複数年続くかが、ブランドの本当の強さを測る条件となる。
借換え金利と短期借入への依存
2025年末には買収に伴う借入が約180億円に増え、純有利子負債は約80億円となった。資金調達コストが3.5%前後へ上がる世界では、低金利時代と同じ利益を前提にできない。買収先のキャッシュフローが計画を下回れば、借入の返済、出店投資、配当が競合する。見かけの自己資本比率だけで安全だとは判断できない。
コンタクトレンズ販売の薄利化
コンタクトレンズは反復購入がある反面、メーカーが製品価値を握り、顧客はECや量販店で同じ商品を購入できる。VHの売上が伸びても、低い粗利益率の販売が増えるだけならグループ利益率は改善しない。2026年上期に連結粗利益率が前年同期から低下したことは、売上高の拡大と稼ぐ力の拡大が同義でないことを示している。
スマートグラスと視力矯正手段の変化
将来、スマートグラス、視力矯正手術、コンタクトレンズ技術の進歩などによって、眼鏡の購入場面や価値の中心が変わる可能性がある。Zoffが高機能レンズや新しいフレームを取り込めれば機会になるが、電子機器メーカーに顧客接点を握られれば価格交渉力は下がる。ただし現時点で通常の眼鏡需要を十年以内に全面代替する証拠はない。
ストックオプションと支配株主の資本配分
2025年末に存在した新株予約権は約120万株分で、2026年上期の株数増加を差し引いても約114万株分の行使余地がある。全て行使されれば既存株主の持分は約3.6%薄まる。加えて主要株主の持株比率が高く、次のM&Aや資金配分を少数株主が直接決めることはできない。増配を続けながら資本コストを下回る買収をしないかが重要となる。
今後の分かれ目
- Zoffの既存店売上高が客数の増加を伴って3年以上、年率3%以上伸び続けたら
- 物価だけの値上がりではなく市場シェア拡大が進んでいると判断する。国内Zoffの店年数量と店舗生産性を上方修正し、やや楽観の確率を高める。
- 有料レンズ購入率が65%前後以上で安定し、販売単価の上昇と営業利益率の維持が同時に確認できたら
- 商品の追加価値に顧客が対価を払っている証拠が強まる。Zoffの値決め力を再評価し、中立の営業利益率を上方修正する。
- VHの営業利益率が2年以上10%前後で安定し、グループの本社費・PPA償却を含めても増益が続いたら
- 買収先の収益力と統合効果が定着したと判断する。買収失敗の確率を下げ、VHの眼鏡部門とコンタクト部門の利益率をそれぞれ見直す。
- 国内Zoffの既存店客数が長期間減少し、広告費を増やしても改善しなくなったら
- 値上げによる一時的な単価上昇では店舗の競争力を守れないと判断する。中立の店舗数と売上単価を下げ、やや悲観の確率を増やす。
- 借入返済が進まず、純有利子負債が営業利益の3倍を継続的に超えたら
- 買収によるキャッシュフローの創出力が弱いと評価する。配当余力を下げ、金利負担と資金調達リスクを悲観側の純利益に反映する。
- VHの閉店が加速し、のれん・商標権・顧客関連資産の大幅な減損が発生したら
- 買収時の超過収益力が維持できなかったと判断する。悲観の筋書きに近づいたものとして長期の店舗数と利益率を下方修正し、資産の床も再点検する。
- 2030年に向けてサングラスの購入者数が増え、眼鏡の買い替えとは独立した販売増が開示されたら
- 国内の眼鏡需要が成熟していても新しい購入機会を作れる証拠となる。Zoffの実質販売数量を増やす余地として評価する。ただし市場全体の装用率の上昇を、そのままZoffの売上増とはしない。
見ておくもの
- 国内Zoff既存店売上高を客数と客単価に分解した月次推移
- 有料レンズ購入率と有料レンズ単価の継続性
- Zoff国内店舗数、店舗当たり年商、閉店数、新店投資額
- VHの眼鏡・コンタクト別売上高とそれぞれの利益率
- VHの店舗数、統合費用、シナジーの実現額
- Zoff・VHのセグメント営業利益と本社調整・PPA償却額の差
- 国内眼鏡市場規模と眼鏡市場・JINS・Zoffのシェア推移
- 純有利子負債、借入金利、返済期限、営業キャッシュフロー
- 店舗賃料、改装投資、店舗当たり投下資本と増分営業利益
- 買収関連資産の減損、商標権・顧客関連資産の償却残高
- 株主還元性向、新株予約権の行使残高、追加M&Aの有無
- 2026年11月公表予定の第3四半期決算と2026年下期の既存店動向
倍率と資本コストの決め方
2025年実績は売上501.5億円、営業利益59.9億円、純利益41.2億円、自己資本259.7億円、純有利子負債80億円を起点とした。ただし2025年末に買収先の貸借対照表だけが連結されたため、数量・価格の出発点には2026年会社予想売上858億円を分解した暫定的な店舗別年商を用いた。事業の2036年売上と利益からROEを算出し、資本コスト7.5%、通常の堀、長期成長率3%を使って正当化PERを決めた。今の株価や過去・同業の市場PERは倍率の決定に使用していない。
中立の全社売上は1,413.3億円、営業利益129.772億円、純利益85億円、時価総額約1,306億円となる。10年間の配当・自社株買いは218億円で、自己資本は2025年末約260億円に期間純利益の合計約663億円と新株予約権払込約7.6億円を加え、還元218億円を差し引いた約712億円と整合させた。悲観はのれん238.65億円を売却資産の床から除き、純現金がないことと賃貸店舗の撤退費用を確認した。
5つの筋書きの確率加重価値を、2036年時価総額は10年7.5%で、期間還元は平均5年7.5%で割り引くと、会社全体の価値は約647億円となる。新株予約権の将来行使による既存株主の取り分96.42%を掛けた現在価値は約624億円で、時価総額約490億円を約27%上回る。2036年までの余剰資金の追加還元価値は過大に二重計上しない。2028年12月期からの新リース会計基準によりBSの形は変わるが、10年後の営業利益は現行と同じく店舗賃料を営業費用に含める基準でそろえた。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%の合計を基本とする。個別のM&A失敗や店舗競争は資本コストに上乗せせず、利益の筋書きと確率に反映する。