結論
ジョイフル本田は、茨城・千葉・埼玉・群馬などの郊外に、売場が桁違いに広い大型ホームセンターを構える会社だ。資材、園芸、ペット、リフォームまで一か所で揃う。築いてきたのは「わざわざ行く店」という立ち位置である。
筆者の結論は、今の値段は割高だ。理由は二つある。一つは客数が細り続けていること、もう一つは稼ぐ力が資本コストにわずかに届かないことだ。自己資本比率は75%、純現金もある。守りは厚いが、厚いだけでは株主の取り分は増えない。
中期経営計画は2028年6月期に売上1,500〜1,600億円、ROE8%以上を掲げる。専門店の小型出店と、2025年に18億円で買った本田(土浦市)が支える。筆者は、この計画は数字の上で届きうるが、ROEは資本コスト並みにとどまると見ている。
もう一つの論点は、持っている資産だ。現金に加え、上場株式(2023年6月期の有価証券報告書で約417億円)を抱える。ただ創業家が安定株主として並ぶ会社で、この資産がそのまま株主に戻るとは限らない。戻り方は半分と見て、計算に入れた。
10年後の中立は、売上が1,700億円台、純利益が90億円ほどになる。確率で重みをつけた本質価値は、今の時価総額を下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「持ち続けたい事業」とは言いにくい。広大な店は魅力だが、客数が減り続け、利益を増やす新しい投資先も見えにくいからだ。
評価できる点は、安全域の厚さである。自己資本比率は75%、純現金が約150億円あり、上場株式も抱える。事業が傷んでも、資産が株主の取り分を支える。経営陣が配当方針を引き上げたことは、資本の使い方が良い方向へ動いている証拠だ。
気になる点は二つだ。第一に、事業で稼ぐ力が資本コストにほぼ届かない。値段が高い店を守っても、投じた資金に見合う利益が増えない。第二に、積み上げた資産の戻り方が見えない。創業家が安定株主で並ぶ会社では、現金や株が時価の割引なしに株主へ戻るとは限らない。
だから払ってよい値段は、事業の稼ぐ力に、資産の半分ほどを足したところになる。今の値段はそれをやや上回る。割安で買える会社ではないと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、大型店のホームセンターだ。有価証券報告書の店舗一覧では、大規模小売店が17店、専門小売店が6店並ぶ(2023年6月期)。大型店は5万平方メートルを超える敷地に立つものもあり、一般的なホームセンターの数倍の売場を持つ。
売れるのは資材・工具・園芸・ペット用品・家具・家電など、住まいと暮らしの全般だ。顧客は工務店、農家、DIYの個人、ペットの飼い主まで幅広い。商品の種類が桁違いに多く、車で来て一度に買う客が主役になる。同じ郊外型でも、コメリのような小型店の数で攻める会社とは稼ぎ方が違う。
近年は専門店を増やしている。2026年6月期は新業態を含め7店を出す計画だ。ペット専門館、資材館、リフォームの設計から商材までを束ねる「Studio.Re」など、大型店の客を細かく取り込む狙いがある。
2025年8月には、土浦市の本田の全株を18億円で取得した。ホームセンター2店、木材販売、エクステリア・リフォームの会社だ。取得で生じた負ののれん益が、2026年6月期の純利益を約19億円押し上げた。報告セグメントは単一で、大型店と専門店の内訳は開示が薄い。
優良さと弱いところ
堀は、店の広さと商品の厚みにある。広大な敷地を確保した店は、後から同じものを作れない。工務店や農家の客は、探し物が必ず見つかる店に通い続ける。この点は筆者が評価する。
ただ、堀は広がっていない。売上は10年前の1,600億円台から1,300億円台へ縮んだ。2026年6月期は客数の減少が続き、計画より売上が届かなかった。営業利益率も2022年の9.9%をピークに、6.6%まで下がっている。
資本効率は低い。ROEは7%前後で、過去10年の中央値は7.1%だ。自己資本比率が75%と厚く、現金と株が利益を産まないまま抱えられていることが効いている。2025年に格付けのA−を取るなど、財務の安定は確かだ。それは安全域であって、稼ぐ力ではない。
経営の資本の使い方は、改善の途上にある。配当は2026年6月期からDOE4%以上へ引き上げ、累進配当を掲げた。変化は歓迎できる。ただ、千葉店の建て替えで売場を倍にして2019年に減損を出したように、大型の投資が実らない例もある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ホームセンターは、人口減と店数の飽和で、実質の需要が伸びにくい。住宅の着工、リフォーム、農業・ペットの需要に左右され、既存店は横ばいから微減が基本だ。市場規模は協会推計で4兆円ほどと大きいが、伸びるのは物価の分だけである。
競争は、全国のカインズ、DCM、コーナン、コメリなどが仕入れを共同化し、プライベートブランドを増やす方向に進んでいる。規模の小さい会社は、仕入れの面で不利になる。ジョイフル本田は北関東の1地域で戦い、全国チェーンの出店が重なる地域でもある。
さらに、ネット通販と、ドラッグストアや均一ショップが、日用品の一部を持っていく。資材と園芸は、まだ店に来る理由が残る。大型店の「一か所で全部揃う」価値は、客が車で来る限り続く。
同社の特徴は、単独で動く点だ。業界の統合の輪には入らず、買収も小規模にとどまる。独立を守る強みはあるが、仕入れの規模で劣る弱みも抱える。2028年6月期の目標は売上1,500〜1,600億円で、そのうち本田や専門店の上乗せが大きい。大型店だけで見れば、成長は物価の分に頼る形だ。
資本政策と M&A
還元は強まりつつある。DOE(自己資本に対する配当の割合)を4%以上へ引き上げ、累進配当を掲げた。2026年6月期の通期配当は前期より増配を予定する。自己資本が1,200億円を超える中、これが年50億円ほどの現金を株主に返す計算になる。
買収は小粒で、本田の18億円が直近の例だ。大型の買収で価値を壊すタイプではない。一方、積み上がった現金と上場株式(2023年6月期で約417億円)が、事業の外で眠っている。
創業家は、野村信託銀行の信託口、個人、財団を通じて安定株主として並ぶ。経営が守られる反面、売却や持ち合いの解消、自社株買いを迫る圧力は弱い。時点の食い違いがあるため持ち株比率は書かないが、買収防衛と資本政策の両面で、外からの圧力は小さい会社だ。TOBの可能性は、kabufuの参考値で10年以内に約2割だが、筆者は創業家の意向が決め手だと考える。
還元の置き方:DOE4%以上の累進配当は下限の約束で、10年の中立は純利益の合計の72%(年65億円ほど、DOE4%の下限より少し上)。余った現金450億円は時価総額側で足している。
株主優待は、100株以上で年3千円〜2.8万円分の商品券・カタログギフト・寄付(保有3年以上は増額)。年1.6億円と見込む(2026年6月の有報(個人その他の株主 50,233 人・約27.7万単元)から受け取る約5万人の額面合計を約2.1億円とみて、小売の費用/額面0.75を掛けた。有報に優待引当金の記載は無く、Y3 の「引当金276百万円」は原本で確認できなかった(アークランズの数字との取り違えの疑い))。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立・やや楽観・楽観1.0、やや悲観0.75、悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
大型店は、同じものを他社が作れない資産だ。敷地が広く、品ぞろえが桁違いで、工務店や農家の固定客が毎週通う。ネット通販が日用品を奪っても、資材や園芸は店に来る理由が残る。
専門店という小さな業態が当たり始めている。2026年6月期に7店を出し、新築で安く作るモデルも固まった。本田の連結化で、木材とリフォームの川上へ手が伸びた。中期計画の売上1,500〜1,600億円、ROE8%以上は、無理のない目標だ。
財務は鉄壁に近い。自己資本比率75%、純現金に上場株式が加わる。DOEを4%以上へ引き上げ、累進配当を掲げた。余った資金が配当や自社株買いで戻り始めれば、ROEは資本コストを超える。人件費が上がる時代でも、物価高の価格転嫁は大型店の客単価に出る。10年で営業利益は100億円台の後半まで戻りうる。
競合の動きも追い風に変わりうる。全国チェーンは小型店や都市部に軸足を移し、郊外の超大型店は新設しにくい。広い敷地と品ぞろえを持つ店は、数が増えないぶん希少になる。大型店の客が戻れば、固定費が薄まり、利益は大きく跳ねる。
慎重な見方
客数は減り続けている。2026年6月期の売上は計画に届かず、10年前の1,600億円台から1,300億円台へ縮んだ。人口が減る北関東で、これが反転する材料は乏しい。営業利益率も9.9%から6.6%まで落ちた。
カインズ、DCM、コーナンなど全国チェーンは仕入れとプライベートブランドで攻め、ネット通販が日用品を削る。ジョイフル本田は統合の輪の外にいて、仕入れの規模で劣る。千葉店の建て替えが減損になったように、大型投資が収益に結びつかない例もある。
厚い財務は安全だが、稼ぐ力ではない。ROEは過去10年の中央値で7.1%と、資本コストに届かない。創業家が安定株主として並ぶため、現金や株が株主へ戻る保証もない。さらに2028年6月期から新リース会計基準が入り、借りている土地や店の数字の形が変わる。10年後に利益が伸びず、資産だけが残る姿が十分ありうる。
専門店の増加も、本田の連結も、売上の穴を埋める規模にはまだ遠い。小型店は一店ごとの売上が小さく、人手がかかる割に利益が薄い。経営が目標を掲げても、客数の減少という流れを逆転させた実績は、直近の決算に表れていない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、財務の厚さと専門店という新しい成長の芽に説得力がある。ただ、事業の稼ぐ力そのものが資本コストにほぼ届かない点と、客数の減少が続く点は、慎重な見方のほうが強い。
確率は、中立を中心に、やや悲観側へ寄せた。大きく負ける筋書きは、資産の厚みが床になるため、深くは置いていない。結論は、本質価値が今の時価総額を下回るという割高寄りの判断だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 1,847 円1,113 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 991 円598 億円)。 今の値に割り戻すと 1,616 円974 億円、今との差 −30.3%、 期待の年率 +2.0%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,718 円2,241 億円 | 1,520 円916 億円 | +125.9% | +8.5% | 367 円221 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,814 円1,696 億円 | 1,271 円766 億円 | +76.1% | +5.8% | 735 円443 億円 |
| 中立 | 38% | 2,130 円1,284 億円 | 1,105 円666 億円 | +39.5% | +3.4% | 1,229 円741 億円 |
| やや悲観 | 27% | 920 円554 億円 | 717 円432 億円 | −29.4% | −3.4% | 442 円266 億円 |
| 悲観 | 10% | 221 円133 億円 | 428 円258 億円 | −72.0% | −12.0% | 65 円39 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,847 円1,113 億円 | 991 円598 億円 | +22.4% | +2.0% | 2,838 円1,710 億円 |
今の株価時価総額 2,319 円1,398 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 専門店と店の建て替えが実り、ROEが資本コストを超える 利益 140 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 3,718 円2,241 億円
専門店が当たり、新築の低コスト出店が定着して、店数は30に増える。大型店の客数は横ばいに近づき、客単価は物価以上に伸びる。本田の木材とリフォームが大型店の客を呼び込み、営業利益率は7.8%まで戻る。工務店や農家の固定客が戻り、広い店が持つ固定費の重さが逆に武器に変わる。競合が小型店へ移るなか、広い売場の希少さが客を呼ぶ。
配当はDOE4%以上を守って累進し、自社株買いも加わって、10年の還元は900億円ほどになる。余った現金と株の一部が株主へ戻り、ROEは9%台に上がる。創業家も、資本効率を求める声に合わせて持ち株の使い方を変える10年になる。
- 大型店(ホームセンター大規模店):数量 39.6(年間の来店客数(百万人))× 価格 3,920(客単価(円))→ 売上 1,552 億円・営業利益 109 億円。営業利益率7.0%
- 専門店・本田・リフォーム等:数量 30.0(店舗数(店))× 価格 19(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 555 億円・営業利益 56 億円。営業利益率10.0%
倍率:事業の純利益 134 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)450 億円。全体の PER 17.76 倍、時価総額 2,824 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 15.72 倍・時価総額 2,226 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:客数の減少が止まり、専門店と本田の相乗効果が出て、さらに積み上がった現金が戻る必要がある。実現すれば強いが、客数が細る業界で10年続くことは難しい。
やや楽観 18% 中期計画どおりROE8%前後へ 利益 114 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 2,814 円1,696 億円
専門店が毎年数店ずつ増え、本田も連結に定着して、売上は計画の水準に届く。大型店は客数が1割ほど減るが、客単価の物価上昇で売上は守る。営業利益率は、人件費の上昇を専門店の増収で吸収して、5%台の後半から6%台に戻る。
配当はDOE4%を守り、10年の還元は750億円ほどになる。資産の戻りは緩やかで、ROEは8%近くに上がるが、資本コストを大きく超えることはない。創業家の安定株主の構図も変わらず、大きな資本政策の変更は起きない。大型店は建て替えを最小限にして、投資を専門店に回す。計画の数字は届くが、驚きはない。
- 大型店(ホームセンター大規模店):数量 38.0(年間の来店客数(百万人))× 価格 3,836(客単価(円))→ 売上 1,458 億円・営業利益 95 億円。営業利益率6.5%
- 専門店・本田・リフォーム等:数量 26.0(店舗数(店))× 価格 18(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 460 億円・営業利益 41 億円。営業利益率9.0%
倍率:事業の純利益 108 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)450 億円。全体の PER 16.65 倍、時価総額 2,243 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 14.51 倍・時価総額 1,680 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:2028年6月期の売上1,500〜1,600億円、ROE8%以上という計画が、専門店の増加と本田の上乗せで概ね実現する想定。会社が自ら掲げた目標で、確度は中程度ある。
中立 38% 客数は細り、物価の分だけ売上が伸びる 利益 90 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,130 円1,284 億円
大型店の客数は10年で1割ほど減り、客単価は物価並みに上がって、売上はほぼ物価の分だけ伸びる。専門店は店数が22まで増えるが、1店舗の売上は旗艦店より小さく、全体の伸びを押し上げる力は限られる。
営業利益率は人件費と減価償却で5%台の後半に下がり、営業利益は110億円ほどにとどまる。配当は、DOE4%の約束どおり年60億円台を保ち、10年で650億円ほど還元する。ROEは6%台で、資本コストを下回る。厚い財務のおかげで経営は安定するが、株主の取り分はそれほど増えない10年になる。大型店の建て替えは延ばされ、店の老朽化が少しずつ進む。 還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年1.6億円×10年×1.0=16億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 大型店(ホームセンター大規模店):数量 36.4(年間の来店客数(百万人))× 価格 3,752(客単価(円))→ 売上 1,366 億円・営業利益 79 億円。営業利益率5.8%
- 専門店・本田・リフォーム等:数量 22.0(店舗数(店))× 価格 17(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 378 億円・営業利益 30 億円。営業利益率8.0%
倍率:事業の純利益 84 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)450 億円。全体の PER 14.75 倍、時価総額 1,685 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 13.79 倍・時価総額 1,268 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:客数の減少が続き、専門店で補うが大型店の穴は完全には埋まらない、最も筋の通った中心の筋書き。確度が高い。
やや悲観 27% 客数減が加速し、専門店も伸び悩む 利益 57 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 920 円554 億円
大型店の客数は1.5割以上減り、客単価の物価上昇が追いつかなくなる。専門店は出店が続くが、新しい店ほど立地が弱く、1店舗の売上が伸びない。営業利益率は4%台に落ち、人件費の上昇と減価償却を吸収できない。
配当は維持するが、10年の還元は420億円ほどにとどまる。上場株式や現金の戻りは遅れ、積み上がったまま、事業の稼ぐ力は資本コストを大きく下回る10年になる。経営は専門店の増加で流れを変えようとするが、客数の穴は埋まらず、計画の下方修正が続く。2028年6月期の目標にも届かず、無理な出店は避けて投資を絞る。
- 大型店(ホームセンター大規模店):数量 33.9(年間の来店客数(百万人))× 価格 3,640(客単価(円))→ 売上 1,234 億円・営業利益 49 億円。営業利益率4.0%
- 専門店・本田・リフォーム等:数量 20.0(店舗数(店))× 価格 17(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 330 億円・営業利益 20 億円。営業利益率6.0%
倍率:ROE 4.1%(純利益 57 億円 ÷ 自己資本 1,374 億円)。事業の ROE が k 7.25% を大きく下回るので、伸びても価値は増えず、PER は 1÷k = 12.9 倍より低い。客数減が続く構造を考え、9 倍に置いた。余った現金は筋書きに書かず、やや悲観として 0.75 倍で足した。
確率:客数の減少が早まり、全国チェーンの出店とネット通販に押される、十分ありうる筋書き。2026年6月期にも客数減が続いており、現実味がある。
悲観 10% 客数が崩れ、大型店が重荷になる 利益 4 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 221 円133 億円
大型店の客数は2割以上減り、客単価の値上げも通らなくなる。売場の広い店は固定費が重く、利益は急に縮む。専門店の出店も止まり、営業利益はほぼ消える。全国チェーンが北関東の隙間へ入り、ネット通販が資材や園芸の一部まで持っていく。
配当は維持できず減配し、10年の還元は250億円ほどにとどまる。それでも現金と上場株式が残り、店の土地を含めた資産価値を元に、事業の再編や売却、創業家による見直しが議論される10年になる。減損も出て、積み上がった株の売却で資金をつなぐ場面もある。人件費だけが物価で上がり、店の効率を落とす。
- 大型店(ホームセンター大規模店):数量 30.3(年間の来店客数(百万人))× 価格 3,360(客単価(円))→ 売上 1,018 億円・営業利益 3 億円。営業利益率0.3%
- 専門店・本田・リフォーム等:数量 15.0(店舗数(店))× 価格 15(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 218 億円・営業利益 2 億円。営業利益率1.0%
倍率:赤字に近い谷の利益で、稼ぐ力(事業の純利益 4 億円 ÷ k 7.25%)は小さい。今の自己資本 1,264 億円に PBR 0.105 倍を掛けた 133 億円は、純現金と上場株式の税後を合わせた床(floor_assets_oku)の水準で測った。
確率:全国チェーンとネット通販に客を奪われ、大型店の固定費が重荷になる複合の筋書き。ただ、現金と株という床があり、深くは崩れにくいため、確率は低めに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
大型店(ホームセンター大規模店)
茨城・千葉・埼玉・群馬などの郊外に立つ、売場の広い大型ホームセンター。資材・園芸・ペット・家具・家電まで揃える。
| 数量年間の来店客数(百万人) | 価格客単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 40.4 | 2,800 | 1,131 | 68 |
| 10 年後 中立 | 36.4 | 3,752 | 1,366 | 79 |
取り方:報告セグメントは単一で内訳は開示が薄い。大規模店17店(2023年6月期の店舗一覧)で連結売上1,328億円の約85%を占めると推定し、客単価をホームセンター並みの約2.8千円と仮置きして客数を逆算した推定値。営業利益率は6.0%と置いた。客数は人口減と競合で10年で10〜15%減るが、客単価は物価の1.34倍が基本で、そこへ実質の上乗せは置かない。
専門店・本田・リフォーム等
ペット専門館や資材館などの小型専門店、2025年に取得した本田(ホームセンター2店・木材・エクステリア)、リフォーム部門。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 15.0 | 13 | 198 | 18 |
| 10 年後 中立 | 22.0 | 17 | 378 | 30 |
取り方:連結売上1,328億円から大型店の推定分を引いた約200億円を、専門店・本田の店とリフォーム部門を合わせた15店分と仮置きして割った推定値(店数の開示は薄い)。営業利益率は9%と置いた。新店が既存の旗艦店より小さいため、1店舗当たりの売上は10年で物価の1.34倍より低めに置く。
リスクと懸念
客数の減少が続く
2026年6月期も客数の減少が続き、売上は計画に届かなかった。人口が減る北関東の郊外では、反転する材料が乏しい。客数が減れば、広大な店の固定費が重くのしかかり、利益率が下がる。
全国チェーンの仕入れの規模
カインズ、DCM、コーナンなどは仕入れとプライベートブランドで力を増している。統合の輪の外にいるジョイフル本田は、仕入れの規模で劣り、粗利益率が圧迫されるおそれがある。
大型投資が実らない
千葉店の建て替えで売場を倍にしたが、2019年に減損を出した。大型店の建て替えや新築は、投じた額に見合う客数と売上が戻らないと、資本効率をさらに下げる。
資産が株主へ戻らない
現金や上場株式が積み上がっているが、創業家が安定株主として並ぶため、自社株買いや持ち合いの解消への圧力は弱い。資産が事業の外で眠り続けると、値段に反映されにくい。
人件費の上昇
最低賃金の上昇とパート不足で、広い店を回す人件費は物価以上に上がりうる。セルフレジなどの自動化で吸収できないと、営業利益率が削られる。
新リース会計基準と借地
2028年6月期から新しいリース会計基準が入る。店の土地は自己所有と賃借が混在し、賃借分は固定の約束になる。数字の形が変わり、純現金や自己資本比率が見かけほど強くないことが表に出る。
小さな買収の失敗
本田の取得は18億円と小粒で、負ののれん益が出た。ただ、今後も積極的に買収を検討する方針で、規模が大きくなれば、これまでより失敗の影響が大きくなる。
今後の分かれ目
- 大型店の客数の減少が止まり、既存店が増収に転じたら
- 中立から、やや楽観側に重みを移す。固定費が薄まり、営業利益率が反転する。
- 専門店の出店が加速し、1店舗の売上が旗艦店の水準に近づいたら
- 専門店の稼ぎを上方修正し、やや楽観側の確率を上げる。
- 自社株買いや上場株式の売却が具体的に始まったら
- 余った資産の戻り方を見直し、本質価値を上方修正する。
- 全国チェーンが北関東で大型店を出し、客数が急減したら
- やや悲観側に重みを移す。固定費の重い店ほど影響が大きい。
- DOE4%の累進配当を守れず、減配になったら
- 資本の使い方への信頼が崩れ、悲観側の確率を上げる。
- 創業家の持ち株の整理や、買収・TOBの動きが出たら
- 資産の戻り方が大きく変わる。内容を見て筋書きを組み直す。
見ておくもの
- 大型店の来店客数と客単価(決算説明会)
- 専門店の出店数と1店舗当たりの売上
- 中期経営計画(2028年6月期の売上1,500〜1,600億円、ROE8%以上)の進捗
- 配当・自社株買いと、上場株式の保有額
- 新リース会計基準の適用後の自己資本比率
倍率と資本コストの決め方
客数×客単価(大型店)と店数×1店舗の売上(専門店)で10年を積んだ。客数は実質で減らし、客単価は物価の1.34倍を基本にした。倍率は正当化PERの上限を基準に、ROEが資本コストを下回る筋書きでは1÷kを上限として8〜9割に置き、今の値段は見ていない。余った現金と株は半分だけ足し、悲観の床は純現金と上場株式の税後で置いた。2028年6月期からの新リース会計基準は、10年後の数字を家賃を営業費用に入れた今と同じ形にそろえている。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の調整+0.25%を足した7.75%。財務が堅いことでkは下げず、創業家が安定株主であることなど個別の事情はkに足さず、確率で表した。事業は傾いておらず上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.25%。