結論
井筒屋は、北九州の小倉に本店を置く地方の百貨店だ。山口市にも1店を持つ。筆者の結論は割高である。借金を毎年返し、財務は立ち直ってきた。だが本業の稼ぎは細く、資本の稼ぎ(ROE)は資本コストに遠く届かない。
2026年2月期の営業利益は6億円で、前の期の6割に減った。会社は2028年2月期に営業利益11億円を目指す。過去3年は10億円前後を稼いだので、届かない数字ではない。それでも、売上に対する利益は5%に届かない。
北九州の人口は減り続け、福岡の天神や博多の商業施設に客を奪われる。百貨店の客は高齢になり、若い客はネットと駅の専門店に流れる。筆者は、10年で売上は物価ほども伸びないとみる。
株主には、還元を求めるガバナンス・パートナーズが1割を超えて入った。店の土地を生かす再開発や還元の引き上げが進めば上振れする。ただ、土地の値打ちは、店を閉じて売る決断が無い限り株主には届かない。
借金の返済は着実で、倒れる心配は薄い。問題は、倒れないことと、株主に値打ちを生むことが別だという点にある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、井筒屋は「街の中心の土地の上で、細る商売を続ける会社」だ。土地の帳簿の額は会社の値段の数倍あり、資産だけ見れば安い。
だが、オーナーとして持ちたいかは、土地の上の商売が稼ぐかで決まる。商圏は縮み、若い客は福岡へ流れる。利益率は5%に届かず、借金の利払いが稼ぎの4割近くを食う。ROEは資本コストの半分にも届かない。
資本コストを下回る会社では、ためた利益は帳簿の額ほどの値打ちを持たない。借金を返して財務を固めるのは正しいが、それで稼ぐ力が上がるわけではない。
筆者は、外の株主の圧力で土地の使い方が変わるか、店を絞って利益率を上げる道筋が数字で出るまで、安全域は無いとみる。土地の値打ちは悲観の深さを和らげる程度にとどまる。
借金を返し終えた先に、何に資本を使うのか。その答えがまだ見えない。
何で稼ぐ会社か
井筒屋は1935年に小倉で開いた百貨店だ。いまは小倉の本店と山口市の山口店の2つの百貨店に、小さなサテライトの店を加えて営む。八幡西区の黒崎店は2020年8月に閉じた。
売上は約213億円で、ほぼ全部が百貨店だ。2023年2月期に売上が半分になったのは、取引先の商品を売った分を手数料だけで数える会計に変えたためで、商売が縮んだわけではない。
稼ぎ方は、衣料と化粧品、食品、贈答品を並べ、取引先から場所の代金と手数料を受け取る形が中心だ。食料品売場と贈答の季節が客を呼ぶ。友の会という、毎月の積み立てに上乗せを付けて買物券を渡す仕組みも持ち、固い常連の客をつなぎとめる。
店の土地と建物の多くは自社のものだ。土地の帳簿の額は240億円あり、会社の値段の数倍にあたる。一方で借入は130億円あり、そのほとんどは過去の店の投資と赤字の名残だ。
株主には西日本鉄道が9%を持つ。北九州の街づくりで、駅と商店街をつなぐ相手でもある。
売上の多くは、取引先が売場に商品を置き、売れた分だけ井筒屋が仕入れたことにする形で立つ。在庫の重さを取引先が負う代わりに、井筒屋の取り分は薄くなる。地方の百貨店に共通する稼ぎ方だ。
優良さと弱いところ
強みは、小倉の街の中心に自社の土地と建物を持つことだ。家賃に追われず、地元の贈答と食品の需要をほぼ一手に受ける。友の会の会員は、毎月の積み立てで店に通い続ける。
弱さは、商圏そのものが縮むことだ。北九州の人口は1979年の107万人をピークに90万人を割った。若い客と高い買物は、福岡の天神や博多へ電車で30分ほどで流れる。小倉駅のアミュプラザなど駅の商業施設とも客を取り合う。
資本の稼ぎも薄い。過去10年のROEの中央値は6%台だが、税の繰越の恩恵で利益が膨らんだ年が多い。2015年と2019年には店の減損で大きな赤字を出した。借金は10年で半分に減らしたが、利払いの負担は営業利益の4割に近い。
経営は財務の立て直しに長く追われてきた。還元は配当だけで、性向は1割台にとどまる。外の株主が入ったことで、資本の使い方を問われる局面に入っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
全国の百貨店の売上は2025年に5兆7千億円ほどで、30年前の半分に近い。都心の大きな店は訪日客で潤うが、地方の店は客数の減りが止まらない。地方の百貨店は、ここ10年で多くが閉店か、大手の傘下に入った。
北九州は、地方の百貨店にとって厳しい商圏だ。人口は年に0.7%前後減り、高齢化も政令市で最も進む。小倉の中心街には井筒屋のほかに大きな百貨店が無く、贈答と食品の需要は井筒屋に集まる。一方、若い客は博多と天神の大型店とネットに流れる。
物価の高い時代は、百貨店に両面で効く。衣料と化粧品の値上げは客単価を押し上げるが、年金で暮らす客は買物の回数を減らす。人件費と光熱費は物価以上に上がり、大きな売場ほど負担が重い。
10年の構図は、売場を食品と贈答、化粧品に絞り、空いた床をテナントや公共の施設に貸す形への転換だ。うまくいけば利益率は保てるが、売上は物価ほども伸びにくい。
地方の百貨店の再編の先は、大手の傘下か、地元の鉄道会社やデベロッパーとの組み直しが多い。北九州では西日本鉄道がその相手になりうる。ただ、どの道も百貨店の売場そのものを大きく伸ばすものではない。
資本政策と M&A
還元は配当だけだ。2026年2月期の配当の総額は0.7億円で、純利益の14%にとどまる。2027年2月期は少し増やす予定だ。自社株買いは行っていない。株主優待は、100株以上の株主に7%引きの買物券を贈る。費用は売上の値引きとして利益から引かれ、年に1億円には届かないとみる。
財務の柱は借金の返済だ。純負債は2015年の216億円から2026年の99億円まで減った。今後も年に10億円前後の返済が続けば、10年で利払いの負担はかなり軽くなる。
ガバナンス・パートナーズが2026年に株を買い増し、提案を行う目的で1割を超えて持つ。西日本鉄道も9%を持つ。還元の引き上げや、土地の有効な使い方を求める声は強まるとみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
財務は確実に良くなっている。純負債は10年で半分以下になり、今の返済の速さなら10年後には利払いの重さはほとんど消える。その分は純利益にそのまま乗る。
小倉の中心に自社の土地と建物を持ち、家賃に追われない。贈答と食品の需要は井筒屋に集まり、友の会の常連も固い。中期の計画の営業利益11億円は、2023年から2025年に稼いだ水準で、届かない数字ではない。
株主も動いた。ガバナンス・パートナーズが1割を超えて持ち、資本の使い方を問う。配当の性向は1割台と低く、引き上げの余地は大きい。土地の一部を再開発や賃貸に回せば、資産が稼ぎ始める。
西日本鉄道との関係も生きる。小倉の街の再開発で、百貨店の床の一部を公共の施設やホテルに変える選択肢もある。
物価の高い時代は、贈答と高い化粧品の値段を押し上げる。百貨店の客は値段より品ぞろえと信頼で店を選ぶので、値上げは通りやすい。売場を絞れば、人件費と光熱費の重さも軽くなる。
慎重な見方
商圏が縮む。北九州の人口は年に0.7%前後減り、若い客は博多と天神の大型店に流れる。小倉駅の商業施設も客を奪う。百貨店の売上は物価ほども伸びず、大きな売場の人件費と光熱費は物価以上に上がる。
2026年2月期の営業利益は前の期の6割に落ちた。過去3年の10億円前後は山だった可能性がある。2015年と2019年には減損で大きな赤字を出し、黒崎店を閉じた。山口店も同じ道をたどりうる。
借金はまだ130億円ある。借り換えの金利は上がり、返済が鈍れば利払いが利益を食う。土地の帳簿の額は大きいが、地方の中心街の大きな建物は買い手が限られ、帳簿ほどでは売れない。
外の株主が入っても、売場の稼ぐ力は変わらない。還元を増やせば借金の返済が遅れる。
資本の稼ぎは資本コストの半分にも届かない。借金を返し終えても、ためた利益は低い稼ぎの売場に寝るだけだ。山口店は中心街の商店街の中にあり、街ごと客が細る。
友の会の積み立ては、客から先に預かったお金で、店を続ける約束でもある。売場を大きく縮める決断を縛る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。財務の立て直しと外の株主は本物の追い風だが、商圏の縮みは10年で変わらない。中立を最も厚くし、やや悲観と悲観を合わせて38%に置いた。同じ領域の松屋や近鉄百貨店と比べ、訪日客の追い風が無い分、悲観を少し厚くした。土地の使い方の方針が出れば見直す。財務は良くなっても資本の稼ぎが資本コストに届かないことが、慎重な見方を強くした理由だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 563 円63 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 98 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 314 円35 億円、今との差 −14.8%、 期待の年率 +6.0%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,119 円124 億円 | 171 円19 億円 | +249.5% | +13.3% | 77 円9 億円 |
| やや楽観 | 18% | 883 円98 億円 | 144 円16 億円 | +178.2% | +10.8% | 185 円21 億円 |
| 中立 | 38% | 688 円76 億円 | 108 円12 億円 | +115.7% | +8.0% | 302 円34 億円 |
| やや悲観 | 24% | 262 円29 億円 | 72 円8 億円 | −9.5% | −1.0% | 80 円9 億円 |
| 悲観 | 14% | 88 円10 億円 | 27 円3 億円 | −68.8% | −11.0% | 16 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 563 円63 億円 | 98 円11 億円 | +79.1% | +6.0% | 661 円73 億円 |
今の株価時価総額 369 円41 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 借金をほぼ返し、売場を絞って利益率が5%を超える 利益 10 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,119 円124 億円
外の株主の圧力で、井筒屋が資本の使い方を大きく変える筋書きだ。売場を食品と贈答、化粧品に絞り、空いた床をホテルや公共の施設に貸す。西日本鉄道と組んだ小倉の再開発も進む。
売場の面積は変えずに、1千㎡あたりの売上は物価をわずかに上回って伸びる。利益率は5.3%に上がり、営業利益は15億円を超える。借金は年に10億円以上返し、10年後には利払いの負担がほぼ消える。
純利益は10億円に届く。配当は利益の4分の1まで上がり、自社株買いも始まる。土地の上の商売が稼ぎを取り戻し、資本の稼ぎは5%台に乗る。
小倉の中心街にも人の流れが戻り、百貨店は街の顔として残る。
- 百貨店(本店・山口店):数量 55.0(売場面積(千㎡・推定))× 価格 526(売場1千㎡あたりの年間の売上(百万円))→ 売上 289 億円・営業利益 15 億円。55千㎡×1.36倍、5.3%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 118 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:商圏が縮む中で、利益率を過去の山(2023年2月期の5.2%)より上げ、借金もほぼ返す筋は狭い。外の株主の圧力で土地の使い方が変わる可能性を含めて6%とした。
やや楽観 18% 中期の計画を達成し、借金の返済で利益が少しずつ厚くなる 利益 8 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 883 円98 億円
会社が中期の計画の営業利益11億円を達成し、その水準を保つ筋書きだ。食品と贈答の売場が客を呼び、友の会の会員も保たれる。
1千㎡あたりの売上は物価並みに近く伸び、利益率は4.6%になる。営業利益は13億円ほどだ。借金は年に10億円前後返し、利払いは今より軽くなる。純利益は8億円近くまで増える。
配当は少しずつ増え、性向は2割台に上がる。それでも資本の稼ぎは5%に届かず、資本コストには遠い。
山口店も地元の贈答の需要で売場を保ち、閉店は避けられる。外の株主の提案は配当の引き上げに向かい、土地の使い方までは変わらない。借金を返し終える頃には、手元の現金が少しずつたまり始める。
- 百貨店(本店・山口店):数量 55.0(売場面積(千㎡・推定))× 価格 511(売場1千㎡あたりの年間の売上(百万円))→ 売上 281 億円・営業利益 13 億円。55千㎡×1.32倍、4.6%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 93 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2023〜2025年に営業利益10億円前後を稼いだ実績があり、中期の計画の11億円は届く範囲にある。借金の返済が続く筋として18%とした。
中立 38% 売場を少し絞り、借金を返しながら細く稼ぐ 利益 6 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 688 円76 億円
井筒屋が今の形のまま、小倉の中心で細く稼ぎ続ける筋書きだ。客数は10年で1割ほど減るが、値上げで1千㎡あたりの売上は1.27倍になる。山口店の売場を少し絞り、面積は53千㎡になる。
人件費と光熱費は物価以上に上がり、利益率は4.0%にとどまる。営業利益は10億円ほどだ。借金は返済が続いて40億円台まで減り、利払いは2億円ほどに収まる。
純利益は6億円弱で、ROEは3%台にとどまる。配当は少し増えるが、性向は2割前後だ。土地の帳簿の額は大きいまま、株主の取り分は細い利益に見合う値段になる。
外の株主の提案は配当の小さな引き上げにとどまり、土地の使い方は大きくは変わらない。
- 百貨店(本店・山口店):数量 53.0(売場面積(千㎡・推定))× 価格 491(売場1千㎡あたりの年間の売上(百万円))→ 売上 260 億円・営業利益 10 億円。53千㎡×1.27倍、4.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.7% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 68 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:北九州の人口の減りと福岡への客の流れに、物価の分の値上げと借金の返済が打ち消し合う落としどころとして38%とした。
やや悲観 24% 客数の減りに値上げが追いつかず、利益が今の水準にとどまる 利益 3 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 262 円29 億円
客数の減りに値上げが追いつかない筋書きだ。若い客は博多と天神へ流れ、年金で暮らす常連は買物の回数を減らす。1千㎡あたりの売上は物価に届かず、山口店の売場をさらに絞って面積は50千㎡になる。
利益率は2.8%に下がり、営業利益は6億円台と今の水準にとどまる。借金の返済は鈍り、利払いは3億円近くに膨らむ。純利益は2億円台だ。
配当は今の水準に据え置かれる。土地の帳簿の額は残るが、稼がない土地は株主の取り分を支えない。
外の株主の提案も、稼ぐ力そのものは変えられない。ROEは2%を割り込み、ためた利益は低い稼ぎの売場に寝続ける。
- 百貨店(本店・山口店):数量 50.0(売場面積(千㎡・推定))× 価格 457(売場1千㎡あたりの年間の売上(百万円))→ 売上 228 億円・営業利益 6 億円。50千㎡×1.18倍、2.8%
倍率:ROEは2%に届かず資本コストを大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で見て、1÷kの11.1倍の7割の7.8倍。土地を売る方針は無いので資産は床に入れない。PBRは0.13倍と低いが、ROEが2%に届かない会社では帳簿の自己資本は床にならず、土地は店を続ける限り売られない。
確率:2026年2月期は営業利益が前の期の6割に落ちた。過去3年が山で、今の水準が続く筋として24%とした。
悲観 14% 山口店を閉じ、本店も赤字に沈む 利益 −6 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 88 円10 億円
地方の百貨店が構造的に負ける筋書きだ。山口店を閉じ、本店も売場を縮める。売場の面積は40千㎡に減り、1千㎡あたりの売上は物価にほとんど届かない。
大きな売場の人件費と光熱費が重く、営業は赤字に沈む。借金の返済は止まり、利払いが赤字を広げる。店の減損で自己資本は大きく減る。配当は止まる。
小倉の土地は残るが、地方の中心街の大きな建物の買い手は限られる。会社は店を続ける道を選び、少数株主は土地の売却を求められない。株主に残るのは、帳簿の自己資本の1割に満たない値段だ。
借金を返すために土地の一部を売るが、値段は帳簿を下回る。
- 百貨店(本店・山口店):数量 40.0(売場面積(千㎡・推定))× 価格 426(売場1千㎡あたりの年間の売上(百万円))→ 売上 170 億円・営業利益 −2 億円。40千㎡×1.10倍、−1.0%
倍率:赤字で稼ぐ力は床にならない。今の自己資本122億円に0.08倍を掛けた約10億円とみる。土地は帳簿の額ほどでは売れず、借入130億円と友の会の預りを先に返すので、少数株主に届く分は小さい。倒産には至らないが、減損で自己資本が大きく減る筋書き。
確率:黒崎店を閉じ、2015年と2019年に減損で大きな赤字を出した実績がある。地方の百貨店が構造的に負ける筋として14%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
百貨店(本店・山口店)
小倉の本店と山口店の百貨店、サテライトの店、友の会。
| 数量売場面積(千㎡・推定) | 価格売場1千㎡あたりの年間の売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 55.0 | 387 | 213 | 6 |
| 10 年後 中立 | 53.0 | 491 | 260 | 10 |
取り方:売場面積の開示が見つからず、本店約4万㎡と山口店約1.5万㎡の合計約55千㎡と推定。売上212.83億円を割った1千㎡あたり約387百万円(取引先の商品は手数料の純額で数えた形)。営業利益は全社の6.15億円。
リスクと懸念
商圏の縮み
北九州の人口は年に0.7%前後減り、高齢化も進む。若い客は博多と天神の大型店とネットに流れ、百貨店の客数は戻りにくい。
人件費と光熱費
大きな売場の人件費と電気代は物価以上に上がる。値上げが客数の減りで打ち消されれば、5%に届かない利益率はすぐに削られる。
借金と金利
借入は130億円ある。借り換えの金利が上がり、返済が鈍れば、利払いが営業利益の半分近くを食う。
店の減損と閉店
2015年と2019年に減損で大きな赤字を出し、黒崎店を閉じた。山口店の客数が細れば、同じ道をたどりうる。
土地の値打ちが届かない
土地の帳簿の額は会社の値段の数倍あるが、店を続ける限り株主には届かない。地方の中心街の大きな建物は、売るにも買い手が限られる。
今後の分かれ目
- 中期の計画の営業利益11億円を達成したら
- 過去3年の水準が実力とみて、やや楽観の確率を上げる。
- ガバナンス・パートナーズの提案で還元の方針が数字で示されたら
- 資本の使い方が変わるとみて、上側の確率を見直す。
- 本店の床の一部をホテルや公共の施設に貸す再開発が決まったら
- 土地が稼ぎ始めるとみて、中立の利益率を見直す。
- 営業利益が2期続けて5億円を割ったら
- やや悲観に重みを移す。
- 山口店の閉店か大きな減損を発表したら
- 悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 本店の売上と客数
- 営業利益率
- 純負債の減り方
- ガバナンス・パートナーズの提案と持株
- 小倉の中心街の再開発の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPBRを見ずに、ROEとk 8.5%から決めた。中立のROEは3%台で資本コストに遠いので、PERは1÷kの11.1倍の7.5割に置いた。同じ領域の松屋と同じkで、訪日客の追い風が無い分は筋書きの数量で引いた。利益率は過去12年の山(5.2%)より低く置いた。店の多くは自社の土地と建物で、2028年2月期からの新リース会計基準で形が変わる部分は小さいが、10年後の数字は今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.76 倍・やや楽観 PER 8.9→11.76 倍・中立 PER 8.3→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。