結論
ヤマノホールディングスは、着物と宝飾の販売、美容室とエステを柱に、学習塾や写真館、リユースへ広げる会社だ。2026 年 3 月期の売上は 147 億円、営業利益は 4 億円。筆者の結論は、10 年で見れば今の値段は割高だというものだ。
理由は、主力の着物市場が縮んでいることにある。呉服の小売市場は 2025 年に 2,030 億円と、2 年続けて減った。ヤマノの和装宝飾は売上の 6 割強を占める。店の数と客数は減り、値上げは買い控えを招く。
会社は事業承継型の買収で、教育やフォトなど別の柱を足している。方向は理にかなう。ただ、買収は資金を食い、自己資本比率は 17.7% と薄い。次の期は営業利益が 24% 減る見通しだ。
配当は年 0.5 億円ほどと小さく、株主優待が中心になっている。筆者は、買収で売上が増えても、利益は今の 3 割増し程度にとどまり、今の時価総額は支えにくいと見る。会社の中期計画は、事業承継型の買収で別の柱を育てる点が特徴だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を持ち続けたいとは思わない。
理由の第一は、主力が縮む市場にあることだ。呉服の小売は 2 年続けて減り、値上げは客を遠ざける。第二に、利益が薄い。営業利益率は 3% に届かず、少しの客数減で消える。第三に、資本の使い方が難しい。小さな会社が買収を重ねる形は、うまくいけば強いが、のれんの減損と財務の悪化という落とし穴がある。
良い点もある。美容という日常の需要を持つこと、店舗網と顧客名簿という資産があること、後継者のいない中小店を集める戦略が筋は通っていることだ。
安全域は見当たらない。今の時価総額は純利益の 14 倍で、10 年先も利益が今の 3 割増しなら、割高なままだ。筆者は、安く買わなければ手を出せない会社だと考える。経営は、縮む主力を抱えたまま買収に踏み出しており、資本の使い方の実績は乏しい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 3 つの基盤事業だ。和装宝飾は、全国 94 店で着物・宝飾・洋装を売る。ホテルなどでの合同の展示販売会が強みで、売上の 6 割強を占める。美容は、美容室とエステ 70 店を運営する。ライフプラスは、25 拠点で生活関連のサービスを手がける。
2026 年 3 月期は、この 3 つを「コアバリュー」とし、売上は 125 億円、セグメント利益は 4.5 億円だった。
もう 1 つの「ニューバリュー」は、教育 71 教室、リユース 7 店、フォト 5 店で、売上は 22 億円、利益は 1.2 億円。ここを買収で広げている。薬師スタジオやニューヨークジョーエクスチェンジ、アークネットがグループに入った。2026 年 10 月には、銀座の着物専門店を持つじゃぱんはあとの買収も決まった。
中期経営計画「Tsunageru2027」は、2027 年 3 月期に売上 175〜185 億円を掲げた。実績と予想は 147〜150 億円で、大きく届かない。店と教室、美容室が中心で、人手に頼る商売だ。
優良さと弱いところ
強みは、全国 94 店の和装の店網と、顧客の名簿、ホテルでの展示販売会の運営力だ。着物は高額品で、売り手の信頼と接客が購入を決める。ヤマノは長い歴史で顧客を積み上げてきた。美容は、美容室とエステという日常の需要がある。
堀は弱い。着物の購買は価格の高騰と生活の洋風化で縮んでいる。矢野経済の推計では、呉服小売は 2 年連続で減っている。競合は、全国の呉服チェーンや京都の呉服商、百貨店の和装売り場、ネットのリサイクルきものなど。価格を決める力は小さい。
収益の質は薄い。営業利益率は過去 10 年で 0.4〜2.8% にとどまる。2026 年 3 月期の 2.8% は、過去最高に近い。
財務は弱い。自己資本比率は 17.7% で、純有利子負債は 8 億円。店の賃借も多く、家賃が固定の約束として残る。買収が続く間は、のれんの減損が潜在リスクだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
和装は、縮む市場の中で買い手の高齢化と洋装化が進む業界だ。呉服の小売は 2025 年に 2,030 億円で、前年比 4% の減少。値上がりと物価高で買い控えが起きているとされる。成人式や結婚式、卒業式といった節目の需要はあるが、レンタルに流れる動きもある。筆者は、10 年で実質の販売数量は 3 割以上減ると見る。
競合は、全国の呉服チェーン、京都の老舗、百貨店、ネットのリサイクルきものなど。大手でも店を減らして回している。ヤマノのように展示販売会に頼る会社は、客の入りで売上が大きく振れる。
美容は、人口が減っても日常の需要があり、安定している。ただ、人手不足で美容師の確保が難しく、人件費が利益を削る。
教育・フォト・リユースは、後継者のいない中小店の買収が増える分野だ。ヤマノは事業承継型のM&Aでここに入る。規模を作れば、本社の管理の効率化で利益率を上げられる。ただし、買収の対価が高くなりすぎる危険と、人材の確保が課題になる。
新しい会計基準では、店の賃借が貸借対照表に載り、借金の見かけが変わる。
資本政策と M&A
資本政策は、小さな配当と優待、買収への資金だ。配当は小さな額を継続する方針で、年 0.5 億円ほど。純利益の 25% 程度にあたる。株主優待は、3 月末の 1,000 株以上に年 1 回、グループの店舗で使える優待券を出す。会社の費用は年 0.1 億円に満たないと見る。
買収は、中期経営計画の柱だ。薬師スタジオ、ニューヨークジョーエクスチェンジ、アークネット、じゃぱんはあとを次々に子会社にした。買収額は非開示で、規模の小さい案件が中心とみられる。
財務の規律は、自己資本比率が 17.7% と薄く、大型の買収は難しい。TOBやMBOの発表はない。時価総額が 29 億円と小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
事業承継型のM&Aは、後継者のいない中小の教育・フォト・リユース・和装店を集めて、本社の管理で利益率を上げる、実績のある型だ。2026 年 3 月期は、買収した薬師スタジオなどが加わり、ニューバリューの売上が 5 億円伸びた。
美容は、日常の需要で安定し、ヤマノビューティの店網がある。和装も、ティロワールのように SNS で新しい客を集める店を取り込めば、若い層の取り込みが進む。
コアバリューのセグメント利益は 2026 年 3 月期に 1.7 倍に増えた。買収の効果が出始め、営業利益率は 2.8% まで上がった。
中期経営計画の売上 175〜185 億円に近づけば、利益は今の 2 倍になる。今の値段は、その成長を織り込んでいない。新しく入った拠点の人材を引き留められれば、売上は積み上がる。後継者のいない中小店は全国に多く、買収の候補が尽きる心配は小さい。
筆者は、この強気の見方が成り立つ条件は、買収した会社が 1 年以内に黒字化することだと考える。
慎重な見方
主力の和装は、呉服小売が 2 年連続で減る縮む市場だ。ヤマノの和装宝飾は売上の 6 割強を占め、買い控えが続けば、店の数と客数は減る。値上げの余地も小さい。
2027 年 3 月期の会社予想は、増収でも営業利益が 24% 減る。中期経営計画の売上 175〜185 億円は、実績と予想の 147〜150 億円に大きく届かない。計画の達成力に疑いがある。
買収は、小さな案件を積み上げる形だが、のれんの償却と減損が利益を削る。自己資本比率は 17.7% と薄く、大型の買収は難しい。人材の確保も課題だ。
配当は年 0.5 億円で純利益の 25% 程度にとどまり、株主優待が中心で、還元は弱い。時価総額は純利益の 14 倍で、10 年で利益が 2 倍になっても、倍率は高い。売上の増える買収は、利益が増えるとは限らない。
縮む市場の主力と、買収頼みの成長という組み合わせは、バリュー投資では最も避けたい形だ。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は、買収による別の柱づくりだ。弱気の根拠は、主力の和装が縮む市場にあることだ。筆者は弱気が強いとみる。
和装宝飾は売上の 6 割強で、市場の縮みが 10 年続く。買収で売上は増えるが、利益の質は薄く、資本も細い。そこで、確率は中立に 4 割弱、やや悲観に 4 分の 1 を置き、楽観は 7% にとどめた。
悲観は、和装の縮みが速まり、買収ののれんを減損する筋書きだ。確率は 1 割とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 98 円34 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 14 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 51 円18 億円、今との差 −33.2%、 期待の年率 +3.8%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 247 円86 億円 | 26 円9 億円 | +254.2% | +13.5% | 19 円7 億円 |
| やや楽観 | 20% | 151 円53 億円 | 19 円7 億円 | +119.9% | +8.2% | 34 円12 億円 |
| 中立 | 38% | 114 円40 億円 | 16 円6 億円 | +69.6% | +5.4% | 50 円17 億円 |
| やや悲観 | 25% | 22 円8 億円 | 9 円3 億円 | −60.9% | −9.0% | 8 円3 億円 |
| 悲観 | 10% | 13 円5 億円 | 3 円1 億円 | −79.5% | −14.7% | 2 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 98 円34 億円 | 14 円5 億円 | +45.1% | +3.8% | 112 円39 億円 |
今の株価時価総額 77 円27 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 買収が当たり、和装も下げ止まって利益が 3 倍になる 利益 6 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 247 円86 億円
ニューバリューが 200 拠点近くまで増え、本社の管理で利益率が 7% に上がる。和装は、じゃぱんはあとのような SNS で客を集める店を取り込み、店数と単価を保つ。
美容も店を増やし、美容師の確保にも成功する。コア全体の利益率が 5% 近くに乗る。
売上は今の 1.7 倍になり、純利益は 3 倍近くに増える。配当は増えるが、資本効率は資本コストに届かない水準にとどまる。
筆者はこの筋書きの確率を小さく置く。事業承継型の買収で本社が成果を出した例はあるが、縮む主力を抱えながら全体を押し上げた例は少ない。
- 和装宝飾:数量 94.0(店舗数(店))× 価格 1.39(1 店あたり売上(億円))→ 売上 130 億円・営業利益 6 億円。店数±0・単価+38%
- 美容:数量 77.0(店舗数(店))× 価格 0.41(1 店あたり売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。店数+10%・単価+38%
- ライフプラス:数量 27.5(拠点数)× 価格 0.50(1 拠点あたり売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。拠点+10%・単価+35%
- ニューバリュー(教育・リユース・フォト):数量 199(拠点数(教室・店))× 価格 0.37(1 拠点あたり売上(億円))→ 売上 73 億円・営業利益 5 億円。拠点 2.4 倍・単価+35%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.9% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 76 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:事業承継型のM&Aが大成功し、和装の店数と単価も保つ筋書き。縮む市場の主力を抱えた状態でここまで届く確率は小さい。
やや楽観 20% 買収で売上が 1.5 倍になり、利益が 1.7 倍になる 利益 3 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 151 円53 億円
ニューバリューが 150 拠点ほどまで増え、利益率が 6% に上がる。和装は店数が 8% 減るが、単価は物価並みに上がり、売上を保つ。美容は店数を保つ。
本社費は物価で増えるが、買収した会社の管理を本社に集めて効率化する。営業利益は 7 億円前後まで伸びる。
純利益は今の 1.7 倍になる。配当は少額にとどまる。
この筋書きでは、会社がすでに進めている買収が計画どおりに実を結ぶ。大型の資金は要らない。
和装の合同展示販売会は客数を保ち、美容も店数を保つ。買収した会社の人材の定着が、利益の増加を支える。
- 和装宝飾:数量 86.5(店舗数(店))× 価格 1.34(1 店あたり売上(億円))→ 売上 116 億円・営業利益 4 億円。店数-8%・単価+33%
- 美容:数量 70.0(店舗数(店))× 価格 0.40(1 店あたり売上(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。店数±0・単価+33%
- ライフプラス:数量 26.3(拠点数)× 価格 0.49(1 拠点あたり売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。拠点+5%・単価+32%
- ニューバリュー(教育・リユース・フォト):数量 158(拠点数(教室・店))× 価格 0.36(1 拠点あたり売上(億円))→ 売上 56 億円・営業利益 3 億円。拠点 1.9 倍・単価+32%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.35 倍、時価総額 46 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:事業承継型のM&Aが計画に近く進み、和装の縮みを緩やかに抑える筋書き。
中立 38% 和装は縮み、買収で穴を埋め、利益は今の 3 割増しにとどまる 利益 3 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 114 円40 億円
呉服小売の縮みで、和装宝飾は店数が 15% 減る。単価は物価をやや下回って上がり、売上は微減から横ばい。利益率は 3% を保つ。
ニューバリューは買収で 1.5 倍の規模になり、売上は 2 倍近く伸びる。美容は店数を少し減らしつつ、単価を上げる。
本社費は物価で増え、営業利益は 5 億円前後。配当は年 0.5 億円ほどを保ち、優待を続ける。自己資本は 30 億円近くまで積み上がる。
大きな追い風も逆風もなく、10 年が過ぎる。主力の縮みと買収の拡大が相殺し、売上は増えても利益はほとんど増えない。
- 和装宝飾:数量 79.9(店舗数(店))× 価格 1.31(1 店あたり売上(億円))→ 売上 104 億円・営業利益 3 億円。店数-15%・単価+30%
- 美容:数量 66.5(店舗数(店))× 価格 0.40(1 店あたり売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。店数-5%・単価+32%
- ライフプラス:数量 25.0(拠点数)× 価格 0.48(1 拠点あたり売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。拠点±0・単価+30%
- ニューバリュー(教育・リユース・フォト):数量 125(拠点数(教室・店))× 価格 0.35(1 拠点あたり売上(億円))→ 売上 44 億円・営業利益 2 億円。拠点 1.5 倍・単価+30%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.78 倍、時価総額 34 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:和装の店数と客数が緩やかに縮み、買収の効果がそれを補う筋書き。いちばんありそうな筋書き。
やや悲観 25% 和装の縮みが速まり、買収も利益を生まず、利益がほぼ消える 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 22 円8 億円
呉服市場の縮みが速まり、和装宝飾は店数が 35% 減る。単価は物価に追いつかず、10 年で 1.2 倍。利益率は 1.5% に落ちる。
買収した教育・フォト・リユースは利益が出ず、のれんを償却するだけになる。本社費は物価で増える。営業利益はほぼゼロになる。
赤字の年が出て、配当は縮小する。自己資本は今の水準で止まり、自己資本比率はさらに薄くなる。
買収が増えるほど、のれんの償却と管理費が重くなる。縮む主力に、買収の利益が追いつかない筋書きだ。
人件費は物価で増え続け、美容や教育は講師・美容師の確保にも苦労する。店を減らしても固定費が残り、利益率は戻らない。
- 和装宝飾:数量 61.1(店舗数(店))× 価格 1.21(1 店あたり売上(億円))→ 売上 74 億円・営業利益 1 億円。店数-35%・単価+20%
- 美容:数量 59.5(店舗数(店))× 価格 0.36(1 店あたり売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。店数-15%・単価+20%
- ライフプラス:数量 22.5(拠点数)× 価格 0.45(1 拠点あたり売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。拠点-10%・単価+20%
- ニューバリュー(教育・リユース・フォト):数量 99.6(拠点数(教室・店))× 価格 0.31(1 拠点あたり売上(億円))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。拠点+20%・単価+15%(のれん償却)
倍率:稼ぐ力はほぼゼロ。評価は今の自己資本 15 億円に 0.5 倍を掛けた(中立の PBR 0.7 を下回る)。EV÷営業利益は意味を持たない。
確率:呉服市場の縮みが速まり、買収した会社も利益を生まない筋書き。縮む市場の主力を持つ会社には起こりやすい。
悲観 10% 和装が構造的に縮み、買収ののれんを減損して赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 13 円5 億円
呉服市場が構造的に縮み、和装宝飾は店数が 6 割減る。ホテルの展示販売会も成り立たなくなる。美容は人材確保に失敗して店を減らす。
買収した教育・フォト・リユースもうまくいかず、のれんを減損する。営業赤字が続き、自己資本が削られる。
配当は止まり、優待も廃止する。資金は借入や増資に頼り、少数株主の取り分は薄まる。
筆者はこの筋書きの確率を 1 割とする。呉服小売が 2 年続けて減る流れが、10 年のあいだに止まる保証はない。
自己資本比率はさらに薄くなり、金融機関の貸出姿勢も厳しくなる。資金繰りのために資産の売却や増資が必要になる。
- 和装宝飾:数量 37.6(店舗数(店))× 価格 1.11(1 店あたり売上(億円))→ 売上 42 億円・営業利益 −1 億円。店数-60%・単価+10%
- 美容:数量 49.0(店舗数(店))× 価格 0.33(1 店あたり売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。店数-30%・単価+10%
- ライフプラス:数量 18.8(拠点数)× 価格 0.41(1 拠点あたり売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。拠点-25%・単価+10%
- ニューバリュー(教育・リユース・フォト):数量 66.4(拠点数(教室・店))× 価格 0.28(1 拠点あたり売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 −1 億円。拠点-20%・単価+5%(のれん減損)
倍率:赤字で稼ぐ力は 0。値段の底は今の自己資本 15 億円に 0.3 倍を掛けた(のれん減損と店舗の撤退損失を見込む)。
確率:呉服市場が半分近くまで縮み、買収した会社ものれんを減損する筋書き。10 年で 1 割はありうる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
和装宝飾
全国 94 店での着物・宝飾・洋装の販売と、ホテルなどでの合同展示販売会。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 94.0 | 1.01 | 95 | 3 |
| 10 年後 中立 | 79.9 | 1.31 | 104 | 3 |
取り方:事業別の売上は開示を取れず、コア 3 事業の合計 124.8 億円(開示)から推定。2022 年 3 月期の和装宝飾 97.1 億円と店舗 94 から、約 94.5 億円。利益はコアの合計 4.5 億円(開示)からの推定。
美容
美容室とエステ 70 店の運営。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 0.30 | 21 | 1 |
| 10 年後 中立 | 66.5 | 0.40 | 26 | 1 |
取り方:2022 年 3 月期の美容売上 19.9 億円と店舗 70 から、約 21 億円の推定。利益は推定(4%)。
ライフプラス
生活関連のサービスを手がける 25 拠点(コアバリューの一部)。
| 数量拠点数 | 価格1 拠点あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 0.37 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 0.48 | 12 | 1 |
取り方:コア 3 事業の合計から和装宝飾と美容を引いた残りの推定 9.3 億円。利益は推定。
ニューバリュー(教育・リユース・フォト)
教育 71 教室、リユース 7 店、フォト 5 店。事業承継型 M&A で広げている。
| 数量拠点数(教室・店) | 価格1 拠点あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 83.0 | 0.27 | 22 | 1 |
| 10 年後 中立 | 125 | 0.35 | 44 | 2 |
取り方:ニューバリューの売上 22.44 億円・セグメント利益 1.2 億円(開示)。拠点は教育 71 教室・リユース 7・フォト 5 の合計 83。
リスクと懸念
呉服市場の縮み
呉服の小売市場は 2025 年に 2,030 億円で、2 年続けて減った。ヤマノの和装宝飾は売上の 6 割強を占め、市場の縮みと買い控えがそのまま売上と利益に響く。店の統廃合で補うにも限界がある。
買収の失敗とのれんの減損
事業承継型の買収は、小さな会社を積み上げる形だが、買収額が高くなりすぎれば、のれんの償却と減損が利益を削る。自己資本が 15 億円と小さく、減損の影響が大きい。
薄い自己資本と財務
自己資本比率は 17.7% で、純有利子負債は 8 億円。大型の買収は難しく、景気が悪化すれば、借り換えや追加の資金調達が必要になりうる。店の賃借も固定の約束として残る。
中期経営計画の未達
2027 年 3 月期に売上 175〜185 億円を掲げたが、予想は 150 億円。2027 年 3 月期の営業利益は 24% 減る見通しで、計画を達成する力に疑いがある。
人手の確保と人件費
美容と教育は、美容師や講師の確保が難しい。最低賃金と人件費は物価並みに上がり、利益率の薄い事業では、確保に失敗すると店や教室を維持できなくなる。
流動性の低さ
時価総額は 29 億円と小さく、売買が薄い。売りたい時に思った値段で売れないおそれがある。配当は年 0.5 億円ほどと小さく、株主優待が中心になっている。
今後の分かれ目
- 買収した教育・フォト・和装店が 1 年以内に黒字化する
- 買収の型が機能したことになり、楽観寄りに確率を寄せる。
- 呉服市場が 3 年連続で前年を下回る
- 縮みが続く前提が強まり、やや悲観の確率を上げる。
- のれんの減損や赤字の子会社が出る
- 買収のリスクが顕在化し、悲観の確率を上げる。
- 配当や自社株買いを増やす
- 株主還元の姿勢が変わり、戻り方の見方が改善する。
- 中期経営計画を見直し、現実的な目標に改める
- 計画の信頼性が回復し、中立の確率を保つ。
見ておくもの
- 呉服小売市場の推移(矢野経済)
- 和装宝飾の店舗数と展示販売会の売上
- 買収した会社の損益とのれんの残高
- 自己資本比率と純有利子負債
- 美容・教育の人材確保と人件費率
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化 PER の式(g 4%・k 8.75%・堀は弱いので残る割合 1/3)から置いた。ROE が k を下回る中立は上限 1÷k の 11.1 倍で、縮む市場の主力と買収頼みを見て 9.0 倍にした。今の PER や PBR、過去の水準は根拠にしていない。今の時価総額は最後に比べただけ。新リース会計基準で営業利益・借入の形が変わる点は、10 年後も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→13.7 倍・やや楽観 PER 9.5→13.35 倍・中立 PER 9→12.78 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5%。事業は傾いていない(黒字)。