結論
東和フードサービスは、首都圏で「椿屋珈琲」などの喫茶店とレストランを 109 店営む外食の中堅だ。売上の半分近くを、大正ロマンの内装で知られる椿屋珈琲が稼ぐ。
筆者の結論は割高。ブランドは本物だが、外食は人件費と家賃が先に上がる商売で、利益は物価ほど伸びない。今の時価総額は、その現実に比べて高い。
2026 年 4 月期は売上 133 億円、営業利益 10 億円。営業利益率は 7.4% で、外食としては高い。ただ、今期の会社予想は営業利益が 8 億円に落ちる。人件費、コーヒー豆、食材の値上がりが効く。
純現金は 17 億円あるが、店は全て賃借だ。家賃は年に 10 億円を超えると推定する。現金は見かけほど余らない。
10 年後の純利益は 9 億円前後で、自己資本利益率は 6% 台、資本コストに届かない。強気の筋書きでも、今の時価総額には届かない。
事業の質は悪くない。ただ、良い会社と割安な株は別の話だ。値段が先に走っている点が、筆者の気になるところである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見たとき、持ちたい会社かと問えば、事業は好き、値段は高いと答える。
椿屋珈琲のブランドは、競争が激しい外食でめずらしい資産だ。ただ、その資産は店の数と立地に縛られ、儲けを再投資して増やせる量に限りがある。稼いだ利益の大半が現金として積み上がっている。
外食は、人件費と家賃が物価より先に上がる商売で、利益は名目でも伸びにくい。10 年後の自己資本利益率は 6% 台で、資本コストに届かない。この水準の会社に払ってよい倍率は、利益の 11 倍ほどが上限だ。
今の値段は純資産の 2 倍強、利益の約 20 倍にあたる。安全域がない。
見直す条件は、営業利益率が 8% 近くを保つことと、余った現金が株主に戻ることだ。
どちらも、決算の数字で確かめられる。確かめられるまでは、今の値段は払い過ぎである。
何で稼ぐ会社か
事業は、東京・神奈川・埼玉・千葉の 1 都 3 県に集めた直営の喫茶店とレストランだ。2026 年 4 月期の売上は 133 億円で、店は 109 ある。
主力の椿屋珈琲は 52 店で、売上は 61 億円。大正ロマンを感じさせる内装と、自社焙煎のコーヒー、手作りのケーキとカレーが売りだ。店の 7 割は東京都にある。2026 年 4 月に開業 30 周年を迎えた。
残りは、ダッキーダック(18 店・売上 25 億円)、イタリアンダイニング ドナ(23 店・同 24 億円)、こてがえし・ぱすたかん(12 店・同 12 億円)、プロント(4 店・同 6 億円)だ。プロントだけは他社から権利を借りて営む。
方針は、東京圏の良い立地に、女性客向けの軽い食事を、自社生産で出すことにある。新規の出店と改装は、営業で得た資金で賄う。
稼ぎ方は単純で、客数と客単価の掛け算だ。ブランドの強さが客単価を支え、立地が客数を決める。固定費の大きい商売である。
店は全て賃借で、敷金と保証金として 18 億円ほどを預けている。店の数は、出店の資金と家賃の約束の大きさで決まる。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば、ブランドの強い小さな外食で、堀は普通よりやや深い。
強みは 3 つある。第一に、椿屋珈琲という 30 年続いた独自のブランドを持つこと。内装と接客の世界観はまねしにくく、客単価の高さを支える。第二に、女性客と東京圏に絞った立地の選び方。第三に、自己資本比率が 79% で、純現金を持つことだ。
弱みも明らかだ。ブランドの外では、ダッキーダックやこてがえしの売上が前期に落ち、店も減った。1 都 3 県だけの展開で、新しい成長の場所が少ない。
コロナ禍では営業赤字が 2 年続き、利益は景気と人出に大きく振れる。営業利益率は 5% 前後が普通で、前期の 7.4% は過去 12 年の最高に近い。筆者は資本コストを 7.3% と、基本より 0.3 ポイント高く置いた。裁量消費で景気に弱い点を、ブランドの値決め力が一部相殺する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食の数量は、店の数と客数で決まる。人口の減る日本では、店舗網の飽和が近い。市場規模は、2025 年の国内外食で 30 兆円台とされるが、これは物価の上昇を含む名目の数字で、実質ではほぼ横ばいだ。
価格は物価並みに上げられるかが分かれ目になる。コーヒー豆、乳製品、米、小麦は 3% を超えて上がりやすく、最低賃金の上昇で人件費は名目で年 3〜5% 増える。値上げが通る人気チェーンは利益率を守り、通らない店は削られる。椿屋珈琲は、世界観が評価されて値上げが通りやすい部類に入る。
競争は厳しい。コーヒーの専門店ではドトールやコメダ、レストランではサイゼリヤやすかいらーくが、規模と価格で上回る。東京圏はもともと出店競争が激しい。
10 年の見立ては、店数は椿屋珈琲で少し増え、他のブランドは減る。価格は物価並みに上がり、数量は全体で 1 割前後の増減にとどまる。
東京圏の好立地は家賃が高く、再開発で賃料が上がりやすい。人手不足で時給が上がり、店の運営を手薄にできない。人件費と家賃の両方が、物価より早く上がる前提で見るのが現実的だ。
資本政策と M&A
資本政策は、手堅く現金をためる型だ。配当は前期で純利益の約 24% にとどまり、純現金は 17 億円で、時価総額の 1 割弱になる。
ただし、純現金は見かけほど強くない。店は全て賃借で、敷金・保証金として 18 億円ほどを預けてある。家賃は売上の 1 割弱の年に 12 億円前後と推定する(開示は取得していない)。家賃は払い続ける固定の約束だ。余り現金としては分けない。
新リース会計(2028 年 4 月期から)で、賃借が資産と負債に載る。数字の形は変わるが、価値は変わらない。
株主優待は年 2 回、100 株で 3 枚(千円台半ば)などの食事券を贈る。株主数は未取得で、年の費用は 0.1 億円ほどと推定する。額が小さく、還元には加えていない。
設備は、新店と改装のための内装が中心で、償却は年に 4 億円前後と推定する。10 年以内の TOB は外部推計で 2 割弱だが、確かな根拠がなく、筋書きには織り込んでいない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
椿屋珈琲は、世界観そのものが商品で、値上げが通りやすい。2026 年 4 月期は椿屋珈琲の売上が 7% 増え、客数と客単価の両方が前年を上回った。30 周年を機に出店を加速すれば、東京圏の人気店として数が増える余地がある。
店の数が増え、物価に沿って値上げが通れば、売上は 10 年で 1.6 倍ほどになる。ブランドの力で利益率も 10% 近くを保てる。営業利益率は 2025 年 4 月期に 8.3% と、外食の中で高い水準を出した。
財務は強く、無借金で純現金がある。人件費が上がる局面で、強い現金が店の改装と出店を支える。配当を増やす余地もあり、持ち合いのない小型株として、事業会社に買われる可能性もある。その場合、ブランドの価値に応じた割増しの価格が付く。
30 周年を迎えたブランドは、これから 10 年の成長の土台になる。人件費の上昇も、世界観のある店ほど値上げで吸収しやすい。
客数と客単価が同時に伸びる局面は外食では少なく、今の勢いは評価に値する。
慎重な見方
今の利益は、外食の追い風の最後の数字に過ぎない。会社自身が、今期の営業利益を 8 億円へ 2 割落とす予想を出した。コーヒー豆や食材、人件費の上昇を、値上げで吸収しきれていない。
店の数と立地に縛られ、伸びる余地が小さい。ブランド以外の店は、前期に売上が落ち、店も減っている。1 都 3 県に集中しているため、地域の景気にも左右される。
家賃は固定費で、売上が落ちても下がらない。純現金 17 億円は、年 12 億円前後の家賃の 1.5 年分に過ぎず、見かけほどの余裕はない。コロナ禍の営業赤字 2 年が、固定費の重さを示している。
自己資本利益率は 7% 台から落ち、資本コストを下回る。ためた現金は、株主に戻らなければ価値を生まない。
椿屋珈琲の世界観は、出店しすぎれば薄まる。成長の場所が限られ、ブランドの外では売上が落ちている。この 2 つが、強気の見方の足を引っ張る。
どれだけ良い店でも、人の手で回す仕事の限界がある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。ブランドの強さは本物だが、物価と人件費の上昇が先に利益を削る。
強気の見方が当たるのは、椿屋珈琲の値決め力と財務の強さだ。確率は、楽観とやや楽観に 3 割弱、悲観側に 3 割台を置いた。固定費の重さと、過去に営業赤字が続いた事実を重く見た。
ブランドの強さは評価するが、物価の局面では強みになりにくい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 1,413 円114 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 278 円22 億円)。 今の値に割り戻すと 894 円72 億円、今との差 −58.2%、 期待の年率 −2.3%(資本コスト 7.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,498 円202 億円 | 400 円32 億円 | +35.5% | +3.1% | 232 円19 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,054 円166 億円 | 325 円26 億円 | +11.2% | +1.1% | 476 円38 億円 |
| 中立 | 38% | 1,651 円133 億円 | 270 円22 億円 | −10.2% | −1.1% | 730 円59 億円 |
| やや悲観 | 22% | 591 円48 億円 | 301 円24 億円 | −58.3% | −8.4% | 196 円16 億円 |
| 悲観 | 12% | 372 円30 億円 | 103 円8 億円 | −77.8% | −14.0% | 57 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,413 円114 億円 | 278 円22 億円 | −20.9% | −2.3% | 1,691 円136 億円 |
今の株価時価総額 2,138 円173 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 椿屋珈琲の出店が加速し、利益率が8%に乗る 利益 12 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 2,498 円202 億円
30 周年を機に、椿屋珈琲は東京圏の駅前と商業施設に出店を加速する。店は 10 年で 1.4 倍に増える。
客単価は物価を 4% 上回り、世界観が値上げを支える。営業利益率は椿屋珈琲で 10%、他のブランドで 7.5% に上がる。
全社の営業利益は 17 億円で、利益率は 8.0% と、過去の最高に並ぶ。ブランド以外の店は閉めずに維持できる。
純現金は積み上がり、配当も増える。ただ、利益の質は、東京圏の人出と競合の出店に左右される。
それでも自己資本利益率は 9% 前後で、資本コストをわずかに上回るだけだ。
- 椿屋珈琲グループ:数量 534(年間来店客数(万人・推定))× 価格 2,230(客単価(円・推定))→ 売上 119 億円・営業利益 12 億円。出店が加速し、値上げも通る
- その他ブランド(ダッキーダック・ドナ・ぱすたかん・プロント):数量 602(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,608(客単価(円・推定))→ 売上 97 億円・営業利益 7 億円。店数を維持し、利益率が回復
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.8% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.78 倍、時価総額 196 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店の加速、値上げ、利益率 10% の全部がそろう必要があり、外食の厳しさを考えて 8%。
やや楽観 20% 椿屋珈琲が育ち、営業利益率が7%台を保つ 利益 10 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 2,054 円166 億円
椿屋珈琲は店が 1.25 倍に増え、客単価は物価を 2% 上回る。営業利益率は 9.3% を保つ。
他のブランドは、ダッキーダックやこてがえしを中心に店と客が 3% 減るが、ドナは伸びる。営業利益率は 7.0% で、全社では 7.3% になる。
全社の営業利益は 14 億円で、前期の 10 億円の 1.4 倍だ。物価で売上が 1.5 倍に増えるため、実質ではほぼ横ばいに近い。
人件費の上昇は、世界観のある店で値上げが通ることで、おおむね吸収できる。
ただ、他のブランドの店舗数が減るため、全体の伸びは物価並みにとどまる。
- 椿屋珈琲グループ:数量 477(年間来店客数(万人・推定))× 価格 2,187(客単価(円・推定))→ 売上 104 億円・営業利益 10 億円。出店が進み、客数が増える
- その他ブランド(ダッキーダック・ドナ・ぱすたかん・プロント):数量 584(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,608(客単価(円・推定))→ 売上 94 億円・営業利益 7 億円。店が少し減る
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 7.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.8% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.04 倍、時価総額 156 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ブランドの強さが続き、椿屋珈琲の店数が増える展開。値決め力を評価して 2 割。
中立 38% 店は少し増えるが、人件費に食われて利益率は6%台半ば 利益 9 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 1,651 円133 億円
椿屋珈琲は店が 1.12 倍に増えるが、人件費と食材費の上昇が値上げを上回り、営業利益率は 8.5% に下がる。
他のブランドは不採算店が閉まり、客数が 5% 減る。営業利益率は 6.5% で、全社は 6.5% になる。前期の 7.4% より低い。
本社費は物価で 1.34 倍に増える。償却は年に 4 億円前後から 5 億円弱に増える。営業利益は 12 億円で、前期の 1.2 倍と、物価の伸びに届かない。
配当は純利益の 3 割で、現金がたまり続け、自己資本利益率は 6% 台にとどまる。
ためた現金は、利息が増えても事業の稼ぎには及ばず、資本効率を下げる。
- 椿屋珈琲グループ:数量 427(年間来店客数(万人・推定))× 価格 2,144(客単価(円・推定))→ 売上 92 億円・営業利益 8 億円。店数が少し増え、値上げは物価並み
- その他ブランド(ダッキーダック・ドナ・ぱすたかん・プロント):数量 572(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,608(客単価(円・推定))→ 売上 92 億円・営業利益 6 億円。不採算店が閉まり、客数が 5% 減る
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.8% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.12 倍、時価総額 121 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店数は少し増えるが、人件費と食材費が先に上がり、利益率は前期より下がる最もありそうな展開。38%。
やや悲観 22% 転嫁が遅れ、営業利益率が4%台に下がる 利益 5 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 591 円48 億円
人件費と食材費の上昇を、値上げで吸収しきれない。椿屋珈琲の客数は横ばいで、客単価は物価を 3% 下回る。営業利益率は 6.5% に下がる。
他のブランドは店の閉鎖が進み、客数が 15% 減る。営業利益率は 4.5% になる。全社は 4.3% で、コロナ前の水準に戻る。
全社の営業利益は 7 億円で、前期より 3 割減る。固定費の家賃と本社費は物価で膨らみ、利益を食う。
配当は維持され、純利益の 45% に高まる。純資産は伸びにくい。
財務は堅く倒れないが、成長の投資は絞られる。会社は守りの経営に入る。
- 椿屋珈琲グループ:数量 381(年間来店客数(万人・推定))× 価格 2,080(客単価(円・推定))→ 売上 79 億円・営業利益 5 億円。客数は横ばい、転嫁が遅れる
- その他ブランド(ダッキーダック・ドナ・ぱすたかん・プロント):数量 511(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,560(客単価(円・推定))→ 売上 80 億円・営業利益 4 億円。店の閉鎖で客数が 15% 減る
倍率:ROE 約 4.5% は資本コスト 7.3% を大きく下回り、稼ぐ力が落ちる筋書き。倍率は上限 12.8 倍に引き上げず、8.5 倍とした。
確率:今期予想の営業利益 2 割減の勢いが続き、転嫁が遅れる展開。実際に今期予想が減益で、2 割強。
悲観 12% 不況と固定費で営業赤字に戻る 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 372 円30 億円
景気が悪化し、外食の客数が 2 割減る。コロナ禍と同じように、家賃と人件費の固定費が残り、営業利益は赤字に沈む。
椿屋珈琲の客数は 2 割減、他のブランドは 3 割減る。客単価は物価を下回る。全社の営業利益は 0.7 億円の赤字になる。
店の閉鎖と減損で、純資産は 20 億円ほど削られる。純現金は、家賃の支払いで減る。配当は大きく減る。
清算に近い価値が下値になる。敷金・保証金と純現金の一部、ブランドの売却で、純資産の 4 割弱が残る。
買い手が現れても条件は低く、少数株主は会社の使い道に口を出せない。
- 椿屋珈琲グループ:数量 305(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,920(客単価(円・推定))→ 売上 59 億円・営業利益 1 億円。客数が 2 割減り、値下げ圧力
- その他ブランド(ダッキーダック・ドナ・ぱすたかん・プロント):数量 421(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,440(客単価(円・推定))→ 売上 61 億円・営業利益 0 億円。店の閉鎖が進み、客数が 3 割減る
倍率:営業赤字で稼ぐ力では測れず、清算に近い価値で測る。今の自己資本 78 億円に約 0.38 倍を掛けた額が、純現金と売れる資産の税後の合計と一致する。
確率:不況で客数が減り、固定費の家賃と人件費が残る構造的な負け。コロナ禍の営業赤字 2 年の実績もあり、12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
椿屋珈琲グループ
大正ロマンの喫茶店。自社焙煎の珈琲・ケーキ・カレー。52 店のうち 36 店が東京都。
| 数量年間来店客数(万人・推定) | 価格客単価(円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 381 | 1,600 | 61 | 6 |
| 10 年後 中立 | 427 | 2,144 | 92 | 8 |
取り方:売上は有価証券報告書の業態別(61.0 億円)。客単価は推定で千六百円前後とし、売上を割って客数を出した。利益は開示がなく、全社の営業利益 9.8 億円から他ブランドを引いた推定。
その他ブランド(ダッキーダック・ドナ・ぱすたかん・プロント)
イタリアンダイニング、パスタ・もんじゃの店、プロント(フランチャイジー)。57 店。
| 数量年間来店客数(万人・推定) | 価格客単価(円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 602 | 1,200 | 72 | 5 |
| 10 年後 中立 | 572 | 1,608 | 92 | 6 |
取り方:売上は業態別の合計(72.2 億円)。客単価は推定で千二百円前後とした。利益は推定で、2 つを足した 11.2 億円から本社費 1.4 億円を引くと営業利益 9.8 億円になる。
リスクと懸念
人件費・食材費・家賃の上昇
最低賃金は上がり続け、コーヒー豆や乳製品も高い。値上げを通せなければ、営業利益率は 5% 前後に戻る。今期の営業利益は 2 割減の予想だ。
固定費の重さと不況
店は全て賃借で、家賃は売上が落ちても下がらない。コロナ禍では営業赤字が 2 年続き、純現金を使い切る前に黒字化できるかが試された。不況で客数が減れば、利益は急速に削られる。
ブランドの限界と出店余地
椿屋珈琲の世界観は、出店しすぎると薄まる。他のブランドは前期に売上が減り、店も閉じた。新しい柱が育たなければ、成長は止まる。
地域の集中
1 都 3 県だけの展開で、東京圏の人出や再開発、競合の出店に左右される。海外や地方への分散はない。
ためた現金の使い方
純現金が時価総額の 1 割弱あるが、配当は純利益の 24% 程度だ。使い方が株主に戻らなければ、資本効率は下がり続ける。
今後の分かれ目
- 今期の営業利益が 8 億円を上回って着地する
- 値上げと客数の回復が思ったより強い証拠。楽観とやや楽観の確率を上げる。
- 椿屋珈琲の出店が年に 5 店を超えて続く
- ブランドを数に変える段階に入る。楽観の確率を上げる。ただし店の質が落ちるかを確かめる。
- 営業利益率が 6% を下回る年が続く
- 人件費と食材費の転嫁が追いつかない。中立から悲観側へ確率を移す。
- ためた現金を配当や自社株買いで株主に戻す方針が出る
- 資本効率が上がり、倍率の上限が上がる。強気の筋書きに寄る。
- 他社による TOB の提案が出る
- 買収価格が割増しとなり、短期の価値は上ぶれする。10 年の本質価値の見立ては変えない。
見ておくもの
- 営業利益率(8% を保てるか、5% に落ちるか)
- 椿屋珈琲の店数と既存店の客数・客単価
- 最低賃金、コーヒー豆・乳製品の価格
- 配当と自社株買い、純現金の増減
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や同業の PER から置かず、事業の自己資本利益率と資本コストから決めた。中立の自己資本利益率は 6.6% で、資本コスト 7.3% に届かないため、倍率の上限は 1÷k の 12.8 倍、置いた値はその 9 割だ。割引は資本コストに入れ、倍率では二重に引かない。外食の同領域の会社と比べ、資本コストは同じ +0.3% とした。椿屋珈琲のブランド力で値決めを少し下げ、裁量消費の循環で上げた。償却は年 4 億円前後と推定した(開示は取得していない)。既存の内装は物価で増やさず、新店と改装の分だけ新しい値段で上乗せした。本社費は物価で 1.34 倍に増やした。リースの約束(家賃は年に 12 億円前後と推定)は、悲観で固定費として残した。新リース会計で数字の形が変わる点は、今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。今の株価は計算に使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→15.78 倍・やや楽観 PER 11.54→15.04 倍・中立 PER 11.54→14.12 倍)。
資本コスト 7.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.3% を足して 7.8%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.80% → 7.30%。